あなたの予防法は大丈夫?感染症にかからないための基礎知識~ノロウイルスによる感染性胃腸炎やインフルエンザなど~
鹿児島県厚生連健康管理センター
宮原 広典2013.11.09 健康塾
こちらは、インフルエンザウイルス こちらは、ノロウイルス
次の方、どうぞ
とある、厚生連病院での出来事
急な発熱の患者さん
急な発熱
くしゃみ・鼻水
先生、見てください!
風邪? インフルエンザ?
インフルエンザと普通の風邪はどう違うのですか?
普通の風邪の多くは、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳などの症状が中心です。
一方、インフルエンザは、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が突然現れます。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、咳などの症状も見られます。
突然ですが、急な発熱
急な発熱
頭痛
喉の痛み、咳
全身の関節の痛み
だるさ・さむけ
くしゃみ・鼻水
なんだ、インフルエンザか
インフルエンザを甘く見ては行けません
「なんだ」ではありませんよ
某キャラクターのタイムマシーン
では、過去にさかのぼってみましょう
スペインかぜの惨状
時期:1918年~1919年感染者数:世界人口の25~30%死亡者数:約4,000万人死亡率:8~35%
これらの数値は感染症のみならず戦争や災害などすべてのヒトの死因の中でも、もっとも多くのヒトを短期間で死に至らしめた記録的なものである
日本におけるスペインかぜの流行状況
流行期間 患者数 死亡者数 死亡率
第1回 1918年8月~1919年7月 21,168,398 247,636 1.22
第2回 1919年8月~1920年7月 2,412,097 127,666 5.29
第3回 1920年8月~1921年7月 224,178 3,698 1.65
合計 23,804,673 379,000 1.63
内務省衛生局:流行性感冒,1922,内務省衛生局,東京.
1891年 ドイツのコッホ研究所の Pfeifferと北里柴三郎が、インフルエンザ患者の鼻咽頭から小型の桿菌を発見。
1892年 この小型の桿菌がインフルエンザの病原体であると発表。(これは間違いであった)
1933年 Smith, Andrews, Laidlow らは、ヒトのインフルエンザウイルスを初めて発見した。しかしながら、その後も、この桿菌の学名として、「Haemophilusinfluenzae:ヘモフィルス・インフルエンザ」が使用されている。
インフルエンザの病原体の発見
インフルエンザ発生状況(国内)寒くて、乾燥する
季節2009 pdm(H1N1)
インフルエンザ発生状況(海外)
Viboud C, Alonso WJ, Simonsen L. Influenza in tropical regions. PLoS Med. 2006 Apr;3(4):e89.
インフルエンザウイルスの構造
1)直径1万分の1ミリ(100nm)のRNAウイルスと呼ばれるウイルス。
2)核蛋白と膜蛋白の構造の違いによってA,B,C型の3つに大別。
3)A型はさらに、ウイルス表面のHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)という糖蛋白が、それぞれ1から16番、1から9番までの種類があり、これにより多くの亜型に分けられている。
4)B型も同様の糖蛋白を持っているが、1つの亜型しかない。
5)HAとNAの2つの糖蛋白の抗原性の変異で大きな流行が起こることがあるとされる。
1)ウイルスは細菌とは異なり、生きた細胞の中でしか増殖できないため、空気中や土壌中などの環境中では増殖しない。
2)ウイルスは鼻や,のどの粘膜表面の細胞にある糖(シアル酸)に吸着。
3)吸着した後、細胞に取り込まれ、膜融合によって核蛋白が細胞内に放出。核蛋白は細胞核へ輸送され、その中で増殖したのちに、ウイルス粒子の形でノイラミニダーゼの働きにより細胞から切り離され、細胞外へ放出される。
細胞への感染様式
新型インフルエンザ(H1N1)の起源
• 現在流行しているウイルスは、1918年にヒトで流行したスペインインフルエンザのウイルスが、ブタに入り、ブタのなかで感染持続、温存されてきたウイルス(古典的な豚型H1N1と呼ばれます)に端を発しており、この古典的な豚型H1N1とヒトA香港型H3N2と間で遺伝子交雑をおこし、更にこれがトリインフルエンザとの間で遺伝子交雑し、これが北米のブタの間で、温存されていました。
• このブタインフルエンザウイルスに、最後に、ユーラシア大陸のブタインフルエンザウイルスが交雑したものであるとされています。鳥と豚と人が暮らしている地域は
要注意!
新型インフルエンザ 死亡者数
地域名 累積総数
2010年2月14日まで
死亡例
WHOアフリカ地域 (AFRO) 167
WHOアメリカ地域(AMRO) 少なくとも7,433
WHO東地中海地域(EMRO) 1,018
WHOヨーロッパ地域 (EURO) 少なくとも4,056
WHO東南アジア地域 (SEARO) 1,562
WHO西太平洋地域(WPRO) 1,685
(日本) (122:死亡率0.00077%)
総計 少なくとも 15,921日本の対策は良かったと思
われます。
パンデミック(H1N1)2009の基礎知識現在は、季節性インフルエンザとなっています。
2010-2011 シーズン 2012-2013 シーズン
H3N2(香港型)の従来の季節性ウイルスに負けている!
感染症情報センター Q and AQ2:鳥からヒトに感染しますか?本来鳥インフルエンザウイルスは種の壁があるため、ヒトへは感染しないと考えられていました。(中略)ヒトは鳥インフルエンザウイルスの受容体をもっていないため、これには感染しないと考えられていたからです。しかしながら、研究が進むにつれ、肺胞上皮細胞がH5N1亜型のウイルスに感染していることが報告され(Emerg. Infect. Dis. 11:1036-1041,2005.)、ヒトの鼻粘膜、副鼻腔、気管、細気管支、肺胞上皮上で、ヒトインフルエンザに対する受容体と鳥インフルエンザウイルスに対する受容体の分布を検討した研究(NATURE 440(23):435-436,2006.)により、ヒトの終末細気管支と肺胞上皮には鳥インフルエンザウイルスに対する受容体があることが示されました。
しかしこれは肺の深部にあるために、鳥インフルエンザウイルスに大量に暴露された場合以外には、鳥からヒトに容易に感染することはなく、かつ、ヒトからヒトへも容易には感染しないことを示唆していると考えられます。
インフルエンザ感染のひみつ
どうやって、インフルエンザに感染するの?
①インフルエンザに感染している人が咳をする。↓
②インフルエンザウイルスが、直接、あるいは手などを伝わって、のどに達する。
↓③のどの粘膜に吸着する。
↓④のどの粘膜でウイルスの複製を行う。
↓⑤ウイルスが放出されて、全身に広がる。
空気感染:蒸発物の小粒子残留物(<5μm)(結核,麻疹,水痘など)
飛沫感染:飛沫(>5μm)(インフルエンザ菌,髄膜炎菌,マイコプラズマ,百日咳,アデノウイルス,インフルエンザウイルス,ムンプス,風疹など)
(感染源) (感受性宿主)(感染経路)
接触感染:直接あるいは間接(MRSA,VRE,O157,疥癬,ヘルペスウイルス,ウイルス性出血熱など)
院内感染の3因子と感染対策
①インフルエンザに感染している人が咳をする。
1~2mは飛ぶ!
②インフルエンザウイルスが、直接か、手などを伝わって、のどに達する
③のどの粘膜にウイルスが吸着
④のどの粘膜で増殖⑤ウイルスの放出
インフルエンザウイルスの環境での生存期間
インフルエンザウイルスの環境中での生存時間は,通常の飛沫が付着した場合には、およそ2-8時間程度であろうと考えられています。したがって、もし環境表面にウイルスが付着していたとしても、一晩経っていればそこから感染する可能性はまずないと考えて問題ありません。
インフルエンザウイルスは、その表面に脂質二重層の膜(エンベロープと言います)をもっているため、ウイルスの中では消毒薬には比較的弱い部類に入ります。56℃30分の加熱、紫外線、エーテルなどの脂質を溶かす溶媒や界面活性剤、次亜塩素酸ナトリウム、エタノール等により容易に不活化されます。
空気感染:蒸発物の小粒子残留物(<5μm)(結核,麻疹,水痘など)
飛沫感染:飛沫(>5μm)(インフルエンザ菌,髄膜炎菌,マイコプラズマ,百日咳,アデノウイルス,インフルエンザウイルス,ムンプス,風疹など)
(感染源) (感受性宿主)(感染経路)
接触感染:直接あるいは間接(MRSA,VRE,O157,疥癬,ヘルペスウイルス,ウイルス性出血熱など)
院内感染の3因子と感染対策
マスク
予防:ワクチン
手洗い(石鹸、アルコール)
治療:抗菌薬
①インフルエンザに感染している人が咳をする。
1~2mは飛ぶ!
②インフルエンザウイルスが、直接か、手などを伝わって、のどに達する
③のどの粘膜にウイルスが吸着
ワクチンにより産生された抗体
インフルエンザワクチンの有効性
1)65歳以下
①発病のリスクを0.1~0.3に低下2)65歳以上の一般高齢者
①肺炎などで入院するリスクを0.3~0.7に低下3)65歳以上の施設入所者
①発病のリスクを0.6~0.7に低下②肺炎などで入院するリスクを0.4~0.5に低下③死亡のリスクを0.2に低下
インフルエンザワクチンの目的
国立感染症研究所講演から
④のどの粘膜で増殖⑤ウイルスの放出
インフルエンザの治療薬にはどのようなものがありますか?
インフルエンザに対する治療薬としては、下記の抗インフルエンザウイルス薬があります。
•オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)
•ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)
•アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル)
•ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ)
•ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
• (商品名:イナビル)
飲み薬5日間
吸入薬5日間
点滴1回
吸入1回
タミフル服用後の異常行動について
[1]10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
[2]小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
「緊急安全性情報」 より
予防方法(咳エチケット:飛沫感染対策)
•咳、くしゃみの際は、ティッシュ等で口と鼻を被い、他の人から顔をそらす
•ティッシュは直ちにゴミ箱に捨てる
•咳やくしゃみ等の症状のある人にはマスクを着けてもらう(不織布製マスク)
(手洗い:接触感染対策)
•帰宅後や不特定多数の者が触るようなものに触れた後の手洗い・うがいを行う
•手洗いは、石鹸あるいはアルコール手指洗浄剤を使用する
•インフルエンザを発症した方が出入りしている施設などでは、頻繁に接触する環境表面(ドアノブなど)を適宜清拭する
手洗いをしそこないやすい部分
感染性胃腸炎とは
【概念】
感染性胃腸炎(Infectious gastroenteritis )とは,微生物が
原因となって惹き起こされる腸管病変を主体とした疾患群
【病原体】
多くの細菌、ウイルス、寄生虫が本疾患の起因病原体と
なりうる。細菌性のものではカンピロバクター,腸炎ビブリオ,
病原性大腸菌、腸結核,サルモネラなど、ウイルス性の
ものではノロウイルス、ロタウイルスなどがみられる。寄生
虫ではアメーバ赤痢などがあげられる。
感染性胃腸炎の季節性
• 細菌による感染性胃腸炎の多くは、食品や飲料水による食中毒として主に夏期に発生します。
• ウイルスによる感染性胃腸炎の多くは、嘔吐下痢症として主に冬期に集団感染が発生します。
細菌は高温,多湿で増殖
ウイルスは低温,乾燥で増殖
ノロウイルスの微生物学的特徴と感染症の臨床症状
【微生物学的特徴】
◎カリシウイルス科、一本鎖RNAウイルス、エンベロープなし◎ウイルス粒子直径 30~38nm 100個で感染が成立する。◎牡蠣などの二枚貝に蓄積する。
◎ヒト以外に感染しない。(感染源はヒトと食材のみ)
◎培養細胞で培養できない。
◎血清型40種類以上あり、再感染の可能性がある。◎ワクチンや治療薬がない。
◎患者の糞便1g中に1億個以上、吐物1gに100万個以上【臨床症状】
◎経口的に感染する。潜伏期間は1~2日。◎嘔吐、下痢、腹痛、発熱、筋肉痛。
◎死亡例はまれだが、高齢者が脱水と誤嚥性肺炎に
罹患することがある。
【エンベロープなし】アルコール系消毒薬に抵抗
空気感染:蒸発物の小粒子残留物(<5μm)(結核,麻疹,水痘など)
飛沫感染:飛沫(>5μm)(インフルエンザ菌,髄膜炎菌,マイコプラズマ,百日咳,アデノウイルス,インフルエンザウイルス,ムンプス,風疹など)
(感染源) (感受性宿主)(感染経路)
接触感染:直接あるいは間接(MRSA,VRE,O157,疥癬,ヘルペスウイルス,ウイルス性出血熱など)
院内感染の3因子と感染経路の分類
ノロウイルスの感染経路①多くは便や吐物に接触した手を介する接触感染
②それ以外に考えられる感染経路として以下のとおり
(A)吐物や下痢便の処理や、勢いよく嘔吐した人のごく近くに居た際に、嘔吐行為あるいは嘔吐物から舞い上がる「飛沫」を間近で吸入する経路(飛沫感染)
(B)吐物や下痢便の処理が適切に行なわれなかったために残存したウイルスを含む小粒子が、掃除などの物理的刺激により空気中に舞い上がり、それを間近とは限らない場所で吸入する経路(空気感染)
2007 年2 月16 日国立感染症研究所 感染症情報センター
ノロウイルスの集団感染事例
2012年第36週(9/3-9)~2013年第5週(1/28-2/3)に24道府県の飲食店、宴会場、事業所、幼稚園、小学校などにおける食中毒や保育所、小学校、中学校、高校、老人施設、福祉・養護施設、病院、ホテルなどにおける感染性胃腸炎の集団発生290事例からノロウイルスが検出されている。
◎宮崎の病院で集団感染、44名発症し、6人死亡。死因は誤嚥性肺炎(2012/12/24)
塩素系漂白剤
広範囲 完全防備