埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 1/28
電子工作実習テキスト
(第 8版)
埼玉工業大学工学部機械工学科
小西克享
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 2/28
はじめに
現代ではあらゆる製品に半導体やマイクロコンピュータが組み込まれるとともに,機械の製造
工程においても多くのセンサーを用いて高精度の加工や生産の効率化が図られるようになった.
機械系エンジニアといえども電子回路に関する基礎知識は不可欠のものとなっている.このよう
な観点から,埼玉工業大学では平成 10 年(1998)より,機械工学科 3 年生を対象に,電子回路
への基礎理解を深めることを目的として電子工作実習を実施している.この科目では機械系の学
生が理解しておくべき最低限の電子回路技術に限定して講義を行ったのち,実際に万能基板上に,
トランジスタ回路,オペアンプ回路,CMOS-IC 回路(論理回路および単安定マルチバイブレー
タ回路)をはんだ付けして完成させる作業を行っている.さらに,完成した回路をファンクショ
ンジェネレータとオシロスコープを用いて動作確認するとともに回路特性の測定を行うことに
より,これらの電子機器の操作を習得するよう工夫されている.
本テキストは,必要な知識や実習作業の要点を解説したものである.内容は今後とも加筆修正
の予定である.内容に関して不明な点やお気付きの点があれば著者までご連絡いただきたい.
平成 21 年 12 月 1 日
埼玉工業大学 工学部 機械工学科 小西克享
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目次
基礎編
第 1 編 電子回路の基礎
第 1 章 基礎知識 ・・・・・・・・・・・・・・ 4
第 2 章 基本電子回路部品
2.1 抵抗器 ・・・・・・・・・・・・・・ 5
2.2 半固定抵抗器 ・・・・・・・・・・・・・・ 6
2.3 コンデンサ ・・・・・・・・・・・・・・ 6
2.4 インダクタ ・・・・・・・・・・・・・・ 7
第 3 章 基本半導体素子
3.1 ダイオード ・・・・・・・・・・・・・・ 7
3.2 発光ダイオード(LED) ・・・・・・・・・・・・・・ 8
3.3 トランジスタ ・・・・・・・・・・・・・・ 8
第 4 章 アナログIC ・・・・・・・・・・・・・・ 8
第 5 章 デジタルIC
5.1 主な種類 ・・・・・・・・・・・・・・ 9
5.2 C-MOS 回路の基本=ゲート ・・・・・・・・・・・・・・ 9
5.3 C-MOS の基本回路例 ・・・・・・・・・・・・・・ 10
第2編 回路の製作
1.素子のピン配置 ・・・・・・・・・・・・・・ 11
2.素子への結線 ・・・・・・・・・・・・・・ 11
3.基板上の素子の配置と結線 ・・・・・・・・・・・・・・ 11
4.配線例 ・・・・・・・・・・・・・・ 12
実習編
電子工作実習配布パーツリスト ・・・・・・・・・・・・・・ 15
回路製作上の注意 ・・・・・・・・・・・・・・ 15
課題1 発光ダイオード点滅実験 ・・・・・・・・・・・・・・ 17
課題2 2 入力 NAND の論理動作確認 ・・・・・・・・・・・・・・ 17
課題3 ダイオードによる半波整流実験 ・・・・・・・・・・・・・・ 18
課題4 トランジスタによる信号増幅(電圧増幅)回路の実験 ・・・・・・・・・・・・・・ 19
課題5 オペアンプによる信号増幅(電圧増幅)回路の実験 ・・・・・・・・・・・・・・ 20
レポート用紙 ・・・・・・・・・・・・・・ 22
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基礎編
学習の目標
(1) 主要な電子回路部品について理解を深める.
(2) 基本電子回路の工作ができるようになる.
(3) 測定機器の操作を習得する.
(4) 問題解決能力を身につける.
必要となる学習態度
(1) 受身ではなく,自ら調べ,自ら解決策を考える態度を身につける.
(2) 教えられたことだけを覚えようとせず,自ら一歩踏み込んで勉強する.
(3) 考えもせずにすぐに正解を聞こうとしない.でないと,本当の実力は身につかない.
(3) 必ず,予習・復習を行う.
第 1 編 電子回路の基礎
第 1 章 基礎知識
電源:電子回路が動作するためには,エネルギの供給源である電源が必要となる.電源といえば
一般に電池や,コンセントを思い出すが,正確には直流電源と交流電源に分類される.電
子回路は基本的に直流電源で駆動する.直流電源には+極と-極があるが,極のプラス・
マイナスは大地の電位を0とした区分で,電源の供給の仕方によって,+電源もしくは-
電源と呼ばれる.たとえば,電池でもつなぎ方によって+電源にもなれば-電源にもなる
(下図参照).電子回路は+電源と-電源の両方もしくはどちらか一方を必要とする.+
電源は V+, VD, VDD, VCCなどと表記する.
グランド: GND と表記する.
回路内のゼロ電位となる場所{=大地(地球)}もしくは電極.
アース:
を用いて表す.もともとは,「接地」=地中に埋めた電極につなぐこと.回
路の一端をケース(グランド)に結線し,必要に応じて地中の電極とも結線する.一般的
には大地(=地球)の電位をゼロ電位と定義しているので,アースとグランドは同じ意味
となることが多い.
配線色(例):赤:+電源,青:-電源,黒:GND,緑:アース
+電源 -電源 交流電源
回路基板
アース線
機器筐体
アース端子
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第 2 章 基本電子回路部品
2.1 抵抗器
① 回路記号:右図
② 機能:回路に流れる電流を制限する.
③ 種類:
a. 炭素皮膜抵抗器
安価.小電力用(1/8, 1/4, 1/2W の 3 種類).もっ
とも一般的
b. ソリッド抵抗器(炭素体抵抗器)
炭素粉と樹脂を混合成形,堅牢.a より割高
c. 金属皮膜抵抗器
抵抗体:主に Ni-Cr.
温度に対して安定.精度良好.高価.小電力用
d. 金属酸化物皮膜抵抗器
抵抗体:金属酸化物
中電力用(数 W 用)
④ カラーコードの読み方
上記 d.の抵抗器の場合,抵抗値が数字で印刷されているが,それ以外ではカラーコードと呼ば
れる色の帯が使われることが多い.カラーコード表示から抵抗値を読み取れるようになることが
必要である.
もっとも一般的なものは 4 色表示で,このうち 3 色が抵抗値を示し,最後の色が抵抗値の許容
差を示している.色と数値の対応は下表の通り.
覚え方と注意
黒 0 黒い礼服「くろいれいふく」:礼→(0)
茶 1 茶を 1 杯
赤 2 赤いニンジン:ニ→(2)
橙 3 第 3 者「だいさんしゃ」:第→橙
黄 4 起死回生「きしかいせい」:起→(黄),死→(4)
緑 5 みどり児「みどりご」(=2 から 3 才までの子供):児→(5)
青 6 青二才の碌でなし「あおにさいのろくでなし」:碌→(6)
紫 7 紫式部(むらさきしちぶ)「式→しち?(7)」読み方,難あり
灰 8 ハイヤー「ハイ→(灰),ヤ→(8)」
白 9 ホワイトクリスマス「ホワイト→(白),ク→(9)」
金 -1
銀 -2
例 1 カラーコードが茶黒金金の場合
茶 黒 金 金
1 0 ×10-1±10%=1Ω±10%
例 2 カラーコードが茶黒黒金の場合
茶 黒 黒 金
1 0 ×100±10%=10Ω±10%
電圧 V
電流 I c
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例 3 カラーコードが黄紫赤金の場合
黄 紫 赤 金
4 7 ×102±10%=4.7kΩ±10%
2.2 半固定抵抗器
① 回路記号
② 機能:ネジを回すと抵抗値が変化する機構を持つ.
抵抗値を調整するために用いる.
③ 種類
a. 炭素皮膜系半固定抵抗器
抵抗体に炭素系皮膜を使用.もっとも安価.温度による抵抗変化大
b. サーメット系半固定抵抗器
抵抗体にサーメット系皮膜を使用.多回転(10~20 回転)のものもあり,抵抗値調整
が容易.a.より抵抗変化小.
c. 巻線型半固定抵抗器
抵抗体に巻線を使用.高精度が必要な用途向き.高価
2.3 コンデンサ
① 回路記号
② 機能:電荷を貯える.
③ 種類
a. アルミ電解コンデンサ
陽極にアルミ.電解液にエチレン・グリコール,グリセリン,ホウ酸,アンモニア水な
どの混合物(ペースト状)を使用
大容量コンデンサでは主流.周波数特性が悪く,低周波・電力回路用
b. タンタル電解コンデンサ
陽極にタンタル.電解液には二酸化マンガン(MnO2)を用いた固体電解型と硫酸を用
いた湿式の 2 種類がある.
周波数特性,温度特性に優れる.
c. セラミック・コンデンサ
セラミックを誘電体としたもの
d. フィルム・コンデンサ
フィルムを両側から電極箔ではさみ円筒状に巻き込んだ構造
フィルムの種類により
ポリエステル(マイラ)・コンデンサ
ポリプロピレン・コンデンサ
ポリスチレン・コンデンサ(スチコン)
回路記号
回路記号
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ポリカーボネイト・コンデンサ
注意:電解コンデンサにはリード線に極性(+-)が指定されており,+-を間違えて配線する
とコンデンサが破壊される可能性がある.タンタルコンデンサは特に逆電圧に弱いので注意しな
ければならない.電解コンデンサ以外のものは無極性である.
④ コンデンサ容量の読み方
一般にコンデンサの容量は 3 桁の数字でコンデンサ表面に印刷されている.読み方は以下の通
り.
例 100= 10×100=10 (pF)
103 = 10×103=104(pF)=0.01(μF)
223 = 22×103=2.2×104(pF)=0.022μF
2.4 インダクタ
① 回路記号
② 機能:磁界を発生させる.
③ 構造:導線を巻いたコイル状のもの.性能向上のためコアを用いる.
④ 用途:共振回路,高周波チョーク回路,高周波トランスなど
第 3 章 基本半導体素子
3.1 ダイオード
① 回路記号
② 機能:電流を一方方向(アノードからカソード)にのみ流す
ことのできる素子.ただし,定格以上の電流を流すと破壊する.
③ 実際の特性
右図の通り.
④ 回路例
図は,交流電源を印加しても,半導体の順方向(右回転方向)にのみ電流が流れる(半波整流).
A K
カソードアノード
ブレークダウン
順方向 逆方向
漏れ電流
0.6V を超え
ると急激に
電流が流れ
る
V 0.5V
I 1518 順電流(標準)10mA (最大)10mA
R=1k
回路記号
回路記号
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3.2 発光ダイオード(LED)
① 回路記号
② 機能:順方向電流が流れると発光する素子.
各種発光表示機器に応用されている.赤,緑,黄,
橙の 4 種が実用化されている.定格以上の電流が
流れると破壊するので,抵抗を直列に接続して電
流を制限する(電流制限抵抗).
③ 回路例:右図
3.3 トランジスタ
① 回路記号
② 機能:信号を増幅する素子
③ 基本回路例(エミッタ接地)
第 4 章 アナログIC
代表例:OPアンプ
オペレーショナル・アンプリファイア(演算増幅器)のこと
① 回路記号
② 機能:2つの入力の差を A 倍して出力する(差動増幅).A を増幅率と呼ぶ. ( )e A e e0 1 2= −
③ 基本回路例(反転増幅)
増幅率 A RR
kk
= = =2
1
101
10
R2の基準は一般に 10kΩを目安とする.
サンケン SEL1510 555nm, 30mcd 順電流(標準)10mA (最大)10mA
R=1k
E=5V
C
コレクタ
E エミッタ
B
ベース
CE=10μ
CIN=1μ
RR=1k
RB2= 5k
RB1= 130k
RE= 2k
出力波形 Vo Viと逆位相
入力波形 Vi
信号源
GND
IN
OUT
電源 12V RC=3.3k
回路記号
回路記号
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第 5 章 デジタルIC
ON か OFF の状態を組み合わせて動作させる回路.
5.1 主な種類
TTL:
電源+5V 固定,消費電力 8~100mA.取り扱い容易.
C-MOS:
電源+3~16V,消費電力微小(数 mA)
静電破壊に注意が必要.使用しないときはピンすべてを導通スポンジに刺しておく.不用
意にピンに触らない.
5.2 C-MOS 回路の基本=ゲート
C-MOS IC には多くの種類や機能を持つものがあるが,もっとも基本となるのがゲート IC と呼
ばれるものである.
① NAND ゲート
NAND ゲートは使い勝手のよさから多用される IC の一つである.
回路記号
� インバータ
NAND ゲートの入力ピン(Aと B)を短絡すると,インバータになる.
非反転入力 e1 反転入力 e2
-電源 or GND
+電源
+ -
出力 eo
入力 A 入力 B 出力 X
1 1 0
1 0 1
0 1 1
0 0 1
X
出力ピン
B A
入力ピン
入力 出力
1 0
0 1
+
-
出力 eo
LM358N 2 回路単電源 OPアンプ
入力 ei
+15V
4
8 1
3
2R1=1k
R2=10k
等価
回路記号
回路記号
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5.3 C-MOS の基本回路例
① インバータによる発振回路:無安定マルチバイブレータ
次の回路はインバータを用いた発振
回路の基本構成を示す.
出力される発振波形(矩形波)の周期
は
T C R∝ ×
回路の実例
Pin 17= VDD
Pin 14=VSS
VDD
1M
1M
1
A K
11
10
1213
9 8
6 5 4 3
2
0.1μ
1.5k
参考文献
トランジスタ技術編集部編;電子回路部品活用ハンドブック,CQ 出版社
別冊トランジスタ技術 SPECIAL No.1,CQ 出版社
トランジスタ技術増刊;アナログ IC 活用ハンドブック,CQ 出版社
白土義男;オペアンプ回路の手ほどき,日本放送出版協会
発振出力波形
R T
C
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第2編 回路設計
1 つの基板に①トランジスタ回路,②オペアンプ回路,③C-MOS IC 回路を製作する.あらかじ
め素子の配置を検討しておかないと,後から素子を付けるスペースが無くなってしまうので注意
が必要である.
1.素子のピン配置
トランジスタ(2SC1815) OP アンプ(LM358N) C-MOC IC(MC14011)
2.素子への結線
① 素子はできるだけ回路図上の配置に近い形に並べる.その際,素子の大きさや素子記号での
端子位置と実物の端子位置が一致しないことなどを考慮しなければならない.(配置は半田
付けを行う際に結線が確認しやすいように,基板の裏面(銅箔面)から見た素子の配置が回
路図とできるだけ一致するように考える)
② 配線の長さはできるだけ短くなるようにし,配線同士の交差もなくすことが望ましい.
3.基板上の素子の配置と結線
素子の配置図と結線図を作成する.素子およびパーツの基板上の占有スペースは以下の通り.
① テストピン 1 穴分(ただし,ピン間は 4 穴分~)
② 抵抗 立てる場合:2 穴分~,寝かせる場合:4 穴分~
③ コンデンサ 2 穴分
④ 発光ダイオード 2 穴分
⑤ トランジスタ(2SC1815) 3 穴分
⑥ スイッチ 3×4 穴分
⑦ OP アンプ(LM358N) 4×4 穴分
⑧ C-MOC IC(MC14011) 4×7 穴分
B C E
GND
VDD 8 7 6 5
4 3 2 1
-
+
+
-
VSS
VDD 14 13 12 11 10 9 8
7 6 5 4 3 2 1
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4.配線例
(1)トランジスタ(2SC1815)回路
CIN=0.1μ
RR=1k
RB2= 100k
RB1= 120k
RE= 1k
B C
E
GND
IN +
OUT
電源+5V
RC=2k
ECB
0.1μ
1k
100k
120k
1k GND
IN +
OUT
電源+5V
2k
端子側から 見た配置 2SC1815
(2)OP アンプ(LM358N)回路
+
-
出力 eo
LM358N
入力 ei
+5V
4
8 1
3
2 R1=1k
R2=10k G
VDD 8
7
6
5 4
3
2
1
+ -- +
IN OUT
R1=1k IN
R2=10k
OUT
使用しない
+5V
端子側から見たピン配置
LM358N
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(3)C-MOC IC(MC14011)回路
MC14011 には 2 入力 NAND が 4 つ含まれている.次の発光ダイオード点滅回路と 2 入力 NAND
の論理動作確認回路を製作する.
Pin 14= VDD
Pin 7=VSS
VDD
100k×2 Sw. B
MC14011
8
9 A
K
10 1.5k
1M
0.1μ
1
6 5 4 3
2 1.5k
VSS
VDD14
13
12
11
10
9
8 7
6
5
4
3
2
1
1.5k
Sw. B
Sw. A
Sw. A
100k
100k
+5V
1.5k
0.1μ
1M
A
K
A K
A
K
VD D 11
12 13
空きピン 12&13 は電源へ
素子の配置と結線の例
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実習編
電子工作実習配布パーツリスト
下記のパーツを各自のパーツケースに入れること.
抵抗 1k×3, 1.5k×2,2k×1,10k×1,100k×3,120k×1,1M×1
コンデンサ:0.1μ×2
ダイオード(1S1588)×1
発光ダイオード(LED)×2
トランジスタ(2SC1815)×1
OP アンプ(LM358N)×1
C-MOS IC(MC14011 相当品)×1:アルミフォイル巻き
IC ソケット 8 ピン×1,14 ピン×1
プッシュスイッチ×2
基板(ICB88)×1
テストピン×8
耐熱電線(φ0.32 単線,赤・黒・白・黄・緑・青・紫)各 1 巻
すずメッキ銅線(φ0.32 単線)1 巻
禁止事項
以下の行為を禁止します.指示に従わない場合,以後の授業を受けることはできません.
① 人体に危険が及ぶあらゆる行為.
② 半田ごてを机,コンテナ・パーツケース等の備品に押し当て,破損や変形させる行為.
③ はんだを切り取ること.
④ 工具や備品を持ち帰ること.
⑤ その他,教員の指示に従わない行為.
回路製作上の注意
1.はんだ付け
はんだごての先端が十分に暖まってから作業を行うこと.また,一回に要するはんだ付けの時
間はできるだけ短いことが望ましい.2 から 3 秒を目安とする.あまり長い時間はんだごてで加
熱を続けると,素子の熱的破壊や基板に接着されている銅箔の剥離などがおきる.
2.リード線の折り曲げ
基板のリード線を折り曲げると,素子が脱落しないため,はんだ付けの作業が簡単になる(左
下図).反面,はんだ付け後の取り外しが困難なため,素子の交換には苦労する.初心者のうち
はリード線を折り曲げたくなるが,回路製作上,素子の交換は必要不可欠であり,後のことを考
えてできるだけ折り曲げずにはんだ付けを行うように努力すること.その際,基板の孔にリード
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線が当たるようにリード線を加工するのがよい(右下図). リード線
基板 銅箔
3.リード線の切断
基板上にはんだ付けした素子のリード線をニッパーで切断する際,リード線の切れ端が勢いよ
く飛び出すことがある.側で作業をする人にとって危険なため,切断する際には必ず切断される
側を指で押さえるなどして,飛び出さないように処理すること.
4.IC ソケットの向き
IC ソケットには IC を差し込む際に方向を間違わないようにするための切り欠き部が設けられ
ている.ソケットのはんだ付けおよび IC の挿入時には注意のこと.
IC ソケット IC
11
上から見た状態
1
IC
切り欠き部 ピン番号
5.IC ソケットのはんだ付け
IC ソケットを基板にはんだ付けする際には,ソケットが基板に密着するように注意すること.
左下図のようにソケットが基板から離れていると,IC を差し込む際に右下図のように銅箔が基板
から外れ,ソケットがぐらぐらすることがある.
ソケット
IC
基板
6.はんだ付けの順番
できるだけ背の低い素子からはんだ付けする.
7.テスター使用上の注意
次の誤った操作を行うとテスター内部の回路が破損する.
① 間違ったレンジでの測定
② 大定格入力電圧を超えた電圧・電流測定
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③ 測定中のレンジ切り換え
8. 発光ダイオード(LED)の点灯テスト
テスターを使って,発光ダイオードの点灯を確認することができる.
① テスターのレンジ切り換えつまみを回して,Ω×10 を選択.(3V 動作)
② 赤黒のテストピンをショートし,指針の動きを確認する.
③ 赤のテストピンを LED の一端に,黒のテストピンを他方に接触させる.
④ LED が点灯するかどうかを確認する.
⑤ テストピンを入れ替えて,再度,点灯を確認する.
⑥ テストピンを LED の両端から離す.
⑦ 指針が 0Ω方向に移動した際の黒のテストピン側のリード線が A(アノード),赤側のリー
ド線が K(カソード)と判定される.
課題1 発光ダイオード点滅実験
内容: 2 入力 NAND C-MOS IC による発振回路
を製作し,発光ダイオードの点滅を確認する.
作業:
① 回路図を参考にして素子の配置および配線位
置を決定し,配線図を完成させる.必ず,電源+-の入力ピンを設けること.
② 回路を万能基板上に製作する.
注意:IC の誤動作を防止するため,空き入力ピンは電源に短絡すること.
動作の確認: 半田付けが終了したら,基板を教員に提出してください.教員は回路のチェック
後に IC を挿入し点滅動作の確認を行います.問題なく動作すれば合格で次の課題に進むことが
出来ます.
問題1: 点滅の時間間隔を 2 倍にするには,回路をどのように変更すればよいか.方法を述べ
よ.
答え:以下の余白に記入し,教員のチェックを受けること.
課題2 2 入力 NAND の論理動作確認
内容: C-MOS IC 回路を製作し,2 入力 NAND の論理動作
を確認する.
作業:
Pin 14= VDD
Pin 7=VSS
1M
1
A K6 5 4 3
2
0.1μ
1.5k
VDD
100k×2 Sw. B
8
9 A
K
10 1.5k
Sw. A
Pin 14= VDD
Pin 7=VSS
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① 素子の配置および配線位置を決定し,配線図を完成させる.
② 回路を万能基板上に製作する.
注意:IC の誤動作を防止するため,空き入力ピンは電源に短絡すること.
動作の確認: 半田付けが終了したら,基板を教員に提出してください.教員は回路のチェック
後に IC を挿入し論理動作の確認を行います.問題なく動作すれば合格で次の課題に進むことが
出来ます.
論理の確認方法: 2 つのスイッチを押し,発
光ダイオードの点灯の変化を調べます.
問題2: 空きゲート(ピン 12,13)を利用して,AND 回路の論理(スイッチを両方同時に押す
と点灯)となるように回路を変更せよ.(回路の変更が終了したら,教員のチェックを受けるこ
と)
課題3 ダイオードによる半波整流実験
内容: ダイオードを使って,交流が半波整流されることを確認する.
使用部品
ダイオード 1S1588×1
抵抗 1M×1
みの虫コード ×1
方法
以下の手順に従って,ファンクションジェネレータ
の出力とダイオードのカソード出力をオシロスコープ
に入力して波形を観察してみよう.
① オシロスコープの電源を入れる.
② ファンクションジェネレータ(FG)の電源を入れる.
③(FG)の FUNCTION ボタンで sin 波を選択する.
④(FG)の FREQ RANGE で 100 を選択する.
⑤(FG)のカウンタを見ながら(FG)の FREQUENCY ノブを回して,周波数を 50Hz 前後に調
整する.
⑥ オシロスコープの 1ch.で(FG)の出力信号を確認する.
Sw. A Sw. B 発光ダイオード
1(押す) 1(押す) 0(無発光)
1(押す) 0(離す) 1(発光)
0(離す) 1(押す) 1(発光)
0(離す) 0(離す) 1(発光)
1588 順電流(標準)10mA
R=1M
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⑦(FG)の DUTY ノブを反時計方向に止まるまで回す.(波形調整)
⑧(FG)の AMPL ノブを回して,振幅を約 1V に調整する.
⑨ 回路図にしたがって,みの虫コードでダイオードと抵抗を接続する.
⑩ ファンクションジェネレータの出力ケーブルをダイオード・抵抗間の両端に接続する.
⑪ オシロスコープの 1ch.で(FG)の出力信号,2ch.でダイオードのカソード側の信号を観察する.
⑫(FG)の FREQUENCY ノブを回して周波数を変化させ,信号の変化を観察する.
問題3:sin 波に対する半波整流回路の出力波形を図に描け.図が完成後教員のチェックを受け
ること.合格の場合,次の課題に進むことができます.
① 入力信号 sin 波 20 kHz ② 入力信号 sin 波 20 Hz
課題4 トランジスタによる信号増幅(電圧増幅)回路の実験
トランジスタによる信号増幅回路を製作する.ファンクションジェネレータを入力側に接続し,
交流電圧を印加する.周波数を変えて出力波形の変化を調べる.
① 回路を製作する.
③ スイッチング電源より,+5V の電圧を電源ピンに印加する.
④ ファンクションジェネレータの出力信号の電圧を 小(0.1V 程度以下)に調整する.
⑤ OFFSET ADJ つまみを引き,入力信号のオフセットを0にする.
⑥ 回路に信号を入力する.
⑦ トランジスタの出力波形をオシロスコープで観察する.
問題4:次の問題を完成し,教員のチェックを受けること.合格の場合,次の課題に進むことが
できます.
1. 増幅率は
電圧入力
電圧出力
入力信号振幅
出力信号振幅増幅率
PeaktoPeakPeaktoPeak
==
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 20/28
で定義される.表に指示された入力信号の周波数に対して増幅率を計算し,表を完成せよ.
2. 表の値を用いて下の周波数特性図を完成せよ.
課題5 オペアンプによる信号増幅(電圧増幅)回路の実験
オペアンプによる信号増幅回路を製作する.ファンクションジェネレータを入力側に接続し,
交流電圧を印加する.入力信号のオフセット電圧や周波数を変えて出力波形の変化を調べる.
① 回路を製作し,教員のチェックを受けること.
② IC をソケットに差し,IC ソケットの向きに注意すること.
③ スイッチング電源より,+5V の電圧を電源ピンに印加する.
④ ファンクションジェネレータの出力信号の電圧を 小(0.1V 程度以下)に調整する.
周波数 Peak to Peak (V)
増幅率 入力信号 出力信号
10Hz
100Hz
1kHz
10kHz
100kHz
1MHz
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
1 10 100 1000 104 105 106 107
増幅
率
入力信号周波数 (Hz)
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 21/28
⑤ 回路に信号を入力する.
⑥ トランジスタの出力波形をオシロスコープで観察する.
⑦ OFFSET ADJ つまみを引き,入力信号のオフセットを変更しながら出力波形の変化を確認する.
注意:+電源で駆動するため,2 ピンの入力信号は-電位の場合のみ増幅される.
問題5:次の問題を完成し,教員のチェックを受けること.
1. 増幅率は
電圧入力
電圧出力
入力信号振幅
出力信号振幅増幅率
PeaktoPeakPeaktoPeak
==
で定義される.表に指示された入力信号の周波数に対して増幅率を計算し,表を完成せよ.
2. 表の値を用いて下の周波数特性図を完成せよ.
周波数 Peak to Peak (V)
増幅率 入力信号 出力信号
10Hz
100Hz
1kHz
10kHz
100kHz
1MHz
1 10 100 1000 104 105 106 1070
2
4
6
8
10
12
増幅率
入力信号周波数 (Hz)
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 22/28
レポート用紙
学籍番号 氏名 日付:平成 年 月 日
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 23/28
学籍番号 氏名 日付:平成 年 月 日
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 24/28
学籍番号 氏名 日付:平成 年 月 日
問題1: 点滅の時間間隔を 2 倍にするには,回路をどのように変更すればよいか.方法を述べ
よ.
課題2 2 入力 NAND の論理動作確認
問題2: 空きゲート(ピン 12,13)を利用して,AND 回路の論理(スイッチを両方同時に押す
と点灯)となるように回路を変更せよ.(回路の変更が終了したら,教員のチェックを受けるこ
と)
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 25/28
学籍番号 氏名 日付:平成 年 月 日
問題3:sin 波に対する半波整流回路の出力波形を図に描け.図が完成後教員のチェックを受け
ること.合格の場合,次の課題に進むことができます.
① 入力信号 sin 波 20 kHz ② 入力信号 sin 波 20 Hz
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 26/28
学籍番号 氏名 日付:平成 年 月 日
問題4:次の問題を完成し,教員のチェックを受けること.合格の場合,次の課題に進むことが
できます.
1. 増幅率は
電圧入力
電圧出力
入力信号振幅
出力信号振幅増幅率
PeaktoPeakPeaktoPeak
==
で定義される.右表に指示された入力信号の周波数に対して増幅率を計算し,表を完成せよ.
2. 表の値を用いて下の周波数特性図を完成せよ.
周波数 Peak to Peak (V)
増幅率 入力信号 出力信号
10Hz
100Hz
1kHz
10kHz
100kHz
1MHz
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
1 10 100 1000 104 105 106 107
増幅率
入力信号周波数 (Hz)
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 27/28
学籍番号 氏名 日付:平成 年 月 日
問題5:次の問題を完成し,教員のチェックを受けること.
1. 増幅率は
電圧入力
電圧出力
入力信号振幅
出力信号振幅増幅率
PeaktoPeakPeaktoPeak
==
で定義される.右表に指示された入力信号の周波数に対して増幅率を計算し,表を完成せよ.
2. 表の値を用いて下の周波数特性図を完成せよ.
1 10 100 1000 104 105 106 1070
2
4
6
8
10
12
増幅率
入力信号周波数 (Hz)
埼玉工業大学(小西克享) 電子工作実習テキスト(第 8 版) 28/28
電子工作実習テキスト(第 8 版)
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Lecture/CircuitPractice/CircuitPractice_8thAll.pdf
電子工作実習テキスト 平成 10 年 4 月 1 日 初版
電子工作実習テキスト(第 2 版) 平成 11 年 4 月 1 日 第 2 版
電子工作実習テキスト(第 3 版) 平成 13 年 4 月 1 日 第 3 版
電子工作実習テキスト(第 4 版) 平成 14 年 4 月 1 日 第 4 版
電子工作実習テキスト(第 5 版) 平成 16 年 4 月 1 日 第 5 版
電子工作実習テキスト(第 6 版) 平成 17 年 4 月 1 日 第 6 版
電子工作実習テキスト(第 7 版) 平成 18 年 4 月 1 日 第 7 版
電子工作実習テキスト(第 8 版) 平成 21 年 4 月 1 日 第 8 版
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著者 小西克享
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