妊婦さん Do & Don’t Ayako Shibata
抗生剤は? CT ・ X 線は?MRI 検査は?
痛み止めは?解熱薬は?
頻度の多い主訴に対する対応をみながら
妊婦さんに対する
① 薬の使い方 ②検査の注意点 を学ぶ
* レクチャ-はガイドライン 2014 に基づいています
レクチャーの目標
本日のまとめ
妊婦診療の大原則1. 母体の生命・バイタル安定が最優先 その後に胎児への影響を考慮
2 <Red flag> お腹がいつもより張る
性器出血、破水感、腹痛 • 抗生剤: ペニシリン系 or セフェム系が望ましい
• 鎮痛薬・解熱薬: アセトアミノフェンが望ましい
(妊娠中期以降の NSAID は動脈管閉塞のリスクあり)
症例 1 :妊婦の発熱
あなたは研修医です。
今日は救急当直! ( ; ´Д ` )
看護師さんから連絡が・・・・・・
妊婦の発熱
ナースより・・・・・
30 歳、2経産婦、妊娠8週の方です。子供が2日前から発熱しており、ご本人も今朝から寒気が出現し、発熱38度あるため来院されました。インフルエンザと診断されたそうです。
お腹の張りや性器出血は無いそうです。
問題 1. インフルエンザと妊婦
インフルエンザの妊婦への対応
1. 薬は出さずに、対処療法で経過観察
2. 妊娠初期の発熱は奇形リスクが上がると説明
3. タミフル・リレンザの用量は通常より少量
4. 発熱がなくても、濃厚接触時は、 タミフルやリレンザを処方することが出来る
回答 1. インフルエンザと妊婦
1. 薬は出さずに、対処療法で経過観察
2. 妊娠初期の発熱は奇形リスクが上がると説明
3. タミフル・リレンザの用量は通常より少量
◎ 発熱がなくても、濃厚接触時は、 タミフルやリレンザを処方することが出来る
インフルエンザと妊婦
● 感染妊婦・褥婦 ( 推奨レベル B)
タミフル・リレンザ処方 OK
● 濃厚接触妊婦・褥婦 ( 推奨レベル C)
タミフル・リレンザ処方を検討する
●インフルエンザワクチンは全妊娠期間 OK
※ 薬の用量は通常どおり※妊婦はインフルエンザが重症化しやすい
産婦人科ガイドライン 2014, p54
症例 2 :妊婦の感染症次のような妊婦さんには、どのように対応したらいいでしょうか?
● 肺炎になった妊娠10週の妊婦さん。 使える抗生剤は?
● 妊婦さんから「膀胱炎のような症状がある」 と言われた。 どうする?
●妊婦さんから「歯が痛みます」。 どうする?
質問 2. 妊婦と感染症1. 膀胱炎や細菌尿には、なるべく抗生剤を 処方せず飲水励行を指示する
2. 歯科治療は麻酔や薬剤を使用するので なるべく分娩後に通院してもらう
3. ペニシリン系やセフェム系の抗生剤は 通常どおりの用量で使用できる
4. 全身状態が良好であれば、抗生剤は なるべく使用せず対処療法を行う
回答 2. 妊婦と感染症1. 膀胱炎や細菌尿には、なるべく抗生剤を 処方せず飲水励行を指示する
2. 歯科治療は麻酔や薬剤を使用するので なるべく分娩後に通院してもらう
◎ ペニシリン系やセフェム系の抗生剤は 通常どおりの用量で使用できる
4. 全身状態が良好であれば、抗生剤は なるべく使用せず対処療法を行う
妊婦と感染症 大原則1)臓器 : 子宮内? その他? なりやすい疾患 :腎盂腎炎 診断しにくい疾患:虫垂炎
2)病原体: 細菌か? ウイルスか? ・ SIRSや sepsisでは子宮収縮がおこりやすい
3)治療薬: ペニシリン系・セフェム系は OK4)効果判定: 全身状態の改善は重要5) Red flag お腹がいつもより張る 性器出血、破水感、腹痛
妊婦と虫垂炎妊娠中に発症する急性腹症の中でもっとも頻度が高い。
穿孔すると早産や胎児死亡のリスクが上昇
妊婦と腎盂腎炎妊婦の 1~2% に発症。重症化しやすい
右腎臓 妊娠子宮による
水腎症が必発
Image: Medscape文:日産誌 60巻6 号
妊娠初期の無症候性細菌尿は積極的に治療する
妊婦と抗生剤
■使用可能な抗生剤 ・ペニシリン系 ・セファロスポリン系 ■添付文章で禁忌 ・ニューキノロン系 ・ ST合剤
■胎児への影響が報告されている抗生剤 ・テトラサイクリン系 歯の着色 ・アミノグリコシド系
産科ガイドライン 2014, p62
妊婦と歯科治療
妊娠中は歯科疾患が進行しやすいので、
う歯・歯周病について相談をうけたら 歯科受診を勧める ( 推奨度 B)
解説 ・内分泌環境の変化・唾液の分泌低下・つわり時の歯磨き
の困難さ等が因子として上げられている
・鎮痛薬はアセトアミノフェンを勧める。産科ガイドライン 2014, p284
● 肺炎になった妊娠10週の妊婦さん。 使える抗生剤は? →ペニシリン系・セフェム系は通常通り使用
● 妊婦さんから「膀胱炎のような症状がある」 と言われた。 どうする? →膀胱炎・無症候性細菌尿は抗生剤で治療
●妊婦さんから「歯が痛みます」。どうする? → 妊娠中は歯科疾患が進行しやすいので、 歯科受診を進める
症例 3 :妊婦と画像検査
妊婦さんに対する画像検査、どんな点に注意したらいいでしょうか?
●虫垂炎疑いの妊娠 14 週の妊婦エコーでは診断出来なかった。 CT は?
●2 週間前から咳が続く妊娠 16週妊婦胸部レントゲンは?
質問 3.妊婦と画像検査について
1.妊娠初期~中期のレントゲン・ CT 検査は禁忌
2.必要時は、どの週数でも検査するが 奇形のリスクが高くなることを説明する
3.ガドリニウム造影は可能な限り避ける
4.MRI はどの週数でもおこなって良い
回答 3.妊婦と画像検査について
1.妊娠初期~中期のレントゲン・ CT 検査は禁忌
2.必要時は、どの週数でも検査するが 奇形のリスクが高くなることを説明する
◎ ガドリニウム造影は可能な限り避ける
4.MRI はどの週数でもおこなって良い
画像検査と妊婦 大原則
■妊娠 10 週まで: 50mGy未満では奇形発生率を増加させない
■妊娠 10~ 27週: 100mGy未満では影響しない
・ MRI は妊娠 14 週以降に行うのが望ましい (p281) ( 妊娠初期の安全性を調べた研究がないため、という理由 )
・ガドリニウム造影剤は胎児毒性は不明 (p281)
産婦人科ガイドライン 2014, p58
産婦人科ガイドライン 2011, p58
画像検査と妊婦 解説
・受精後 10 日まで:奇形発生率の上昇なし ・妊娠 10 週まで:奇形を発生する可能性はあるが、
50mGy未満では奇形発生率を増加させない
・妊娠 10~ 27 週:中枢神経障害を起こす可能性があるが、
100mGy未満では影響しない
・妊娠 28週以降:中枢神経系に悪影響なし
産婦人科ガイドライン 2014, p48
1.虫垂炎疑いの妊娠 14 週の妊婦 エコーでは診断出来なかった。 CT は? → CT ・単純MRI を検討
2. 2 週間前から咳が続く妊娠 16週妊婦 胸部レントゲンは? → 可能 ( 腹部を遮蔽すればなお良い )
妊婦と薬妊婦さんに対する処方、どんな点に注意したらいいでしょうか?
例・妊娠 10 週の妊婦さんから「喉と咳・鼻水がキツイです。薬をのんではだめでしょうか?」と質問・妊娠 13 週の人から「花粉症の薬がないと、辛いです・・・」・妊娠 30 週の人から「アトピーなんですが、ステロイド軟膏は 使わない方がいいんでしょうか?」
質問 4 .妊婦と薬について
1. 妊娠 10 週までは胎児の器官形成期のため 可能なら内服薬は出来る限り避ける
2. 花粉症に関しては対処療法を推奨する
3. ステロイド軟膏は使用出来る
4. 湿布や点眼・点鼻薬は問題ない
解説 4 .妊婦と薬について
1. 妊娠 10 週までは胎児の器官形成期のため 可能なら内服薬は出来る限り避ける
2. 花粉症に関しては対処療法を推奨する
◎ ステロイド軟膏は使用出来る
4. 湿布や点眼・点鼻薬は問題ない
妊婦と薬 大原則・妊娠前~妊娠 3 週末まで ごく少量の薬を除き胎児奇形率は増加しない
・妊娠 4~7週末:奇形を起こし得る薬あり ワーファリン、抗てんかん薬 etc
・妊娠 8~12 週:小奇形を起こし得る
・妊娠12週以降:奇形は無いが、胎児機能障害の可能性あり NSAID( 動脈管閉鎖 )、テトラサイクリン (歯黄色沈着 )
産婦人科ガイドライン 2014 p62
●市販の湿布 NSAID が入っているので使用は避ける
●サプリメント ビタミン A が大量に入っているのは避ける
●漢方 大黄・センナがはいっているものは避ける
●軟膏 ストロングのステロイドは避ける
● 点眼・点鼻 :基本的に OK注意
まとめのお時間デスっ!
妊婦診療の大原則1. 母体の生命・バイタル安定が最優先 その後に胎児への影響を考慮
2 <Red flag> お腹がいつもより張る
性器出血、破水感、腹痛 • 抗生剤: ペニシリン系 or セフェム系が望ましい
• 鎮痛薬・解熱薬: アセトアミノフェンが望ましい
(妊娠中期以降の NSAID は動脈管閉塞のリスクあり)
妊婦と感染症 大原則1)臓器 : 子宮内? その他? なりやすい疾患 :腎盂腎炎 診断しにくい疾患:虫垂炎
2)病原体: 細菌か? ウイルスか? ・ SIRSや sepsisでは子宮収縮がおこりやすい
3)治療薬: ペニシリン系・セフェム系は OK4)効果判定: 全身状態の改善は重要5) Red flag お腹がいつもより張る 性器出血、破水感、腹痛
画像検査と妊婦 大原則
■妊娠 10 週まで: 50mGy未満では奇形発生率を増加させない
■妊娠 10~ 27 週: 100mGy未満では影響しない
・ MRI は妊娠 14 週以降に行うのが望ましい ( 妊娠初期の安全性を調べた研究がないため、という理由 )
・ガドリニウム造影剤は妊娠中には極力使用しない
産婦人科ガイドライン 2014, p45
妊婦と薬 大原則・妊娠前~妊娠 3 週末まで ごく少量の薬を除き胎児奇形率は増加しない
・妊娠 4~7週末:奇形を起こし得る薬あり ワーファリン、抗てんかん薬 etc
・妊娠 8~12 週:小奇形を起こし得る
・妊娠12週以降:奇形は無いが、胎児機能障害の可能性あり
NSAID( 動脈管閉鎖 )、テトラサイクリン (歯黄色沈着 )
産婦人科ガイドライン 2014 p62
産婦人科ローテーション時に
学会HPからダウンロード可 2014年版は購入が必要http://www.jsog.or.jp/activity/guideline.html
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SHIBATA AYAKO