Task Force on National Greenhouse Gas Inventories
IPCCインベントリータスクフォース(TFI)
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)公開シンポジウム
地球温暖化問題について考えよう!
最新の科学と温室効果ガス排出量監視の取りくみ田辺清人(IPCC TFI 技術支援ユニット 部長)
WG3WG2
WG1
TFI誕生の背景 (1)人間の活動によりCO2など温室効果ガスが発生
CO2など温室効果ガスの大気中濃度が上昇
気温上昇、降水量・パターンの変化、海面上昇など自然界の変化
水資源や生態系への影響、健康被害、災害発生など社会経済的側面の変化
変化に適応する必要性 変化を緩和する必要性
各国からの温室効果ガス排出量は?
TFI誕生の背景 (2)
IPCC総会IPCCビューロー
WG1自然科学
IPCC/OECD/IEAインベントリプログラム
WG2影響、適応、脆弱性評価
WG3緩和
事務局
1988年 IPCC設立
1990年 IPCCが最初の評価報告書を発表
第2回世界気候会議が気候問題に関する国際条約の必要性を指摘
1991年 国連総会決定に基づき、条約についての政府間交渉会合(INC)開始
IPCC/OECD/IEAインベントリプログラム開始
1992年 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択
1994年 IPCC/OECD/IEAインベントリプログラムが最初のガイドラインを完成
1995年 UNFCCC第1回締約国会議(COP1)が開催され、IPCCガイドライン使用を決議
IPCC総会IPCCビューロー
WG1自然科学
IPCC/OECD/IEAインベントリプログラム
WG2影響、適応、脆弱性評価
WG3緩和
事務局
TFI誕生
IPCC総会IPCCビューロー
WG1自然科学
WG2影響、適応、脆弱性評価
WG3緩和
TFIGHGインベントリ
事務局
1997年 UNFCCC第3回締約国会議(COP3)の開催(地球温暖化防止京都会議)
京都議定書の採択
1998年 IPCC総会第14回会合が、従来のインベントリプログラムを拡充するためタスクフォースを新設することを決定
• GHG推計方法論の継続的な改善の必要性
• COP3後、高まるインベントリの重要性(排出量削減目標に関連)
• 日本政府が資金支援を約束
1999年 日本のIGESにTFIの技術支援ユニット(TSU)が設置され、TFIが本格始動
TFI-TSUの日本への設置WG1 TSU
(英)WG3 TSU
(蘭)
WG2 TSU(米)
IPCC事務局(在スイス)
各作業部会の技術支援ユニット(TSU): 1999年当時
TFI TSU(日本)
TFI-TSUの日本への設置WG1 TSU(スイス)
WG3 TSU(独)
WG2 TSU(米)
IPCC事務局(在スイス)
各作業部会の技術支援ユニット(TSU): 2013年現在
TFI TSU(日本)
TFIの活動の目的
国からの温室効果ガス排出量・吸収量を計算及び報告するための国際的に合意された方法論を開発・改善すること。
IPCC参加国やUNFCCC締約国によるその方法論の活用を促進すること。
TFIは、科学的根拠に基づき、特に発展途上国では
情報・データが不足しがちなことに配慮しつつ、すべての国が使用できる温室効果ガスインベントリ作成方法の開発と評価を行うことを任務としている。
タスクフォースビューロー TFIの活動を監督。14名のメンバーから構成。
(1)と(2)の組み合わせは、一つのポジションを2名でシェア。
氏名 国 氏名 国
Mr. Leonidas OsvaldoGIRARDIN
アルゼンチン Mr. Taka HIRAISHI 日本
Mr. Robert STURGISS オーストラリア(1)
Ms. Andrea BRANDON ニュージーランド(1)
Ms. Thelma KRUG ブラジル Mr. Sadeddin KHERFAN シリア(2)
Ms. Detelina PETROVA ブルガリア(2) Mr. Emmanuel MPETA タンザニア
Ms. Dominique BLAIN カナダ Ms. SirinthotutepTOWPRAYOON
タイ
Mr. Sergio GONZALEZ MARTINEAUX
チリ Mr. Jim PENMAN 英国
Ms. Lingxi ZHOU 中国 Mr. William IRVING 米国
Mr. Rizaldi BOER インドネシア Mr. Washington ZHAKATA
ジンバブエ
IPCCガイドライン
温室効果ガス排出・吸収量について、国際的に合意された計算方法を提示
人為的な排出のみを計上
原則として領土内の排出すべてを計上(例外あり)
さまざまな排出・吸収源エネルギー工業プロセス有機溶剤、その他製品使用農業土地利用変化及び林業廃棄物その他
さまざまなガス
CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6、・・・NOX、CO、NMVOC、SO2
IPCCガイドライン開発・改定の歴史
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
1995年IPCCガイドライン
1996年改訂IPCCガイドライン
グッドプラクティスガイダンス
土地利用、土地利用変化及び林業に関するグッドプラクティス
ガイダンス
2006年IPCCガイドライン
構築・運用開始
排出係数データベース(EFDB)
科学的・技術的知見の進歩や国際社会のニーズを反映するため定期的に改定
IPCCガイドラインの補助ツールとしてユーザーをサポート
1999年より日本政府がTFI TSUをサポート
湿地補足ガイダンス
京都議定書用補足ガイダンス
IPCCガイドラインの開発IPCCが作計画を
承認
各国政府等による執筆者候補の
推薦
執筆者決定
執筆者会議の開催
1次ドラフトの完成
専門家レビュー
執筆者会議の開催
2次ドラフトの完成
専門家/政府レビュー
執筆者会議開催
最終ドラフト完成
各国政府による最終検討
IPCC総会による承認
2006年ガイドラインの場合
2003.11
2003.11 –2004.01
2004.04
2004.05 –2005.01
2005.02
2005.02 –2005.04
2005.07
2005.09
2005.09 –2005.11
2005.12
2006.03
2006.03 –2006.04
2006.04
2年半の歳月をかけ、250人以上の専門家が執筆に参加
UNFCCCとの関係(1)• 気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で、締約国にIPCC
ガイドラインの使用が義務づけられている。
UNFCCC
1992 UNFCCC採択
1994 UNFCCC発効
1995 COP1(ベルリン)
IPCCガイドライン使用義務化
1996 COP2(ジュネーブ)
IPCCガイドライン使用義務強化・再確認
1997 COP3(京都)
1996年改訂版IPCCガイドラインの使用義務再確認
IPCC1991 インベントリープログラム発足
1994 1995年IPCCガイドライン完成
1996 1996年改訂版IPCCガイドライン完成
UNFCCCとの関係(2)UNFCCC
1998 SBSTA8(ボン)GPGの検討をIPCCに要請
2000 SBSTA12(ボン)附属書I国によるGPG2000使用義務化
2001 COP7(マラケシュ)GPG-LULUCF作成をIPCCに要請
2002 SBSTA17(ニューデリー)IPCCガイドライン改定をIPCCに要請
2003 COP9(ミラノ)附属書I国によるGPG-LULUCF使用義務化
2005 COP/MOP1(モントリオール)京都議定書の下で附属書I国による1996年改訂版IPCCガイドライン、GPG2000、GPG-LULUCF使用義務化
IPCC-TFI
1999 GPG2000作成開始2000 GPG2000完成
2002 GPG-LULUCF作成開始
2003 GPG-LULUCF完成
2004 2006年IPCCガイドライン作成開始
UNFCCCとの関係(3)UNFCCC
2006 SBSTA24(ボン)2006年IPCCガイドラインを歓迎
2009 SBSTA30(ボン)附属書I国は2006年ガイドラインを2015年から使用することを決定
2010 SBSTA33(カンクン)湿地に関するガイダンス(2006年IPCCガイドライン対補)作成をIPCCに要請
2011 COP/MOP7 (ダーバン)京都議定書第2約束期間用の森林等に関するガイダンス作成を要請
2013 SBSTA39(ワルシャワ)
IPCC-TFI2006 2006年IPCCガイドラ
イン完成
2011 湿地補足ガイドライン作成開始
2012 京都議定書用補足ガイドライン 作成開始
2013 両補足ガイダンス完成
IPCCによる改訂・進化
UNFCCCとの関係(4)
1995年ガイドライン
1996年改訂ガイドライン
GPG2000(森林等以外)
GPG2003(森林等)
2006年ガイドライン
現在、UNFCCCおよび京都議定書の下で世界各国が使用
附属書I国(主に先進国)は2015年
から使用附属書I国(主に先進国)は使用義務
非附属書I国(主に途上国)は使用奨励
IPCCガイドラインのユーザー支援各種
• Primer for 2006 IPCC Guidelines(2006年ガイドラインの入門書)
• FAQ (よくある質問とその回答集)
• 排出係数データベース
– 排出量・吸収量計算のために使う各種データを収集・提供
• 2006年IPCCガイドラインのソフトウェア
– 最新版は以下からダウンロード可能。
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/support/support.html
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/faq/faq.html
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/EFDB/
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/software/index.html
原油の燃焼によるCO2 from排出量の計算:CO2 排出量 (Gg/年) = CEF • AD • 44/12 • 10-3
CEF = 原油の炭素排出係数 (単位量あたりの炭素含有量)(t-C/TJ)AD = 燃焼した原油の量(熱量単位ベース) (TJ)
アジピン酸の生産に伴うN2O 排出量の計算:N2O 排出量 (Gg/年) = EF • AD • 10-6
EF = 排出係数(生産量1トンあたりの排出量) (kg / t (アジピン酸生産量))AD =アジピン酸生産量 (t)
乳牛の消化管内発酵によるCH4 排出量の計算:CH4 排出量 (Gg/年) = EF • AD • 10-6
EF = 排出係数 (kg/頭/年)AD = 乳牛の数 (頭)
排出係数データベース (EFDB)
活動量 に関するデータ(AD) は、多くの場合、国家統計などから入手することができる。しかし、適切な排出係数 (EF) を得るのは容易ではない。
EFDB: 発展・拡大を続けるライブラリ• 排出係数データベースは「ライブラリ」として機能:
さまざまな排出係数等データ (温室効果ガス排出量・吸収量の計算に使える各種データ)を、その背景情報とともに収蔵。データは:
査読された論文
政府の報告書、各種会議の報告書
などから入手したものが主に収蔵されている。
インターネット経由、またはCDROMでアクセス可能。
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/EFDB/各データが、どのような条件の下で適用可能か、という情報を含む。
新たなデータの収集が継続的に行われており、発展・拡大を続けている。
研究者等にとっては、新たな研究成果や測定データを他に広めるためのコミュニケーション・プラットフォームとしても機能し得る。
データは、世界中の専門家から構成される編集委員会(Editorial Board)によってチェックされ、一定の条件を満たしたものが収蔵される。
• データベースのユーザーは、自身の責任でデータを選択・使用することが求められる。
EFDBへのアクセスの仕方は二通り。
インターネット版(http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/EFDB/)– インターネットが使えるユーザーなら誰でもアクセス可
– 自分のデータを登録したい場合は、インターネット経由でアクセスして申請
CDROM版
– 特にインターネット接続が難しいユーザー(発展途上国のユーザー等)はCDROM版によりオフラインでアクセス可
TFIの活動への評価と期待
TFI TSU(日本)
2006年IPCCガイドラインの完成・承認の後、IPCCを代
表してパチャウリ議長から、小池環境大臣(当時)に手紙が送られた。
TFIの数々の活動を賞賛
TFIに対する日本の支援について、深い感謝を表明
今後もTFIの活動の重要性は高まることを指摘
2007年にはTFIも含めてIPCCがノーベル平和賞を受賞。
UNFCCCからの期待は今後も高まると見込まれる。
ご清聴ありがとうございました。IPCC TFIに関するさらなる情報は以下をご参照ください。
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/