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鉄骨造の Ds、 他

佐藤邦昭著 「技術基準による鋼構造の設計」2011.7.10鹿島出版会 から抜粋

(3)筋かいと幅厚比が決め手の構造特性係数 Ds地震エネルギーは,建物各部に伝わり弾性振動エネルギー,累積塑性エネルギー,お よ

び振動減衰エネルギーなどに消費される。ルート3では幅厚比の制限はない。しかし,骨

組各部が塑性化 して累積塑性エネルギーとなるわけであるが,部材が座屈するとエネル

ギーの吸収能力が急速に低下する。部材の座屈には局部座屈と,長柱の座屈がある。前者

は部材の板要素の幅厚比が関係し,その値が小さいと局部座屈せず塑性化し,変形能力が

大きくエネルギー吸収能力は高まる。

一方,長柱の座屈については,主にブレースが吸収するエネルギーに関係する。すなわ

ち,細長比が小さいと弾塑性座屈するが,細長比が大きいと座屈しやすく変形能力が低下

するので吸収エネルギーは小さい。

したがって,塑性域での変形量を弾性域での変形量で除した値をηとすれば模式的に

Ds=Dん /72η +1と 表すことができる。ここで,Dん は鉄骨造で1.25,そ の他は1.00と

する。

このように,s値 *11は変形能力に依存するが,そ の評価方法は表 2.8に集約して示し

た。柱・梁群の種別は表 2.4に 示したように幅厚比によって FAか らFDま で分類されて

いる。

表 2.8筋かいと柱・梁の幅厚比から決まるDs 平 19国交告第 596号

注 1.FA,FB,FC,FDの 幅厚比による種別は梁の横座屈対策,柱・梁接合部・筋かい端の保有耐力接合が条件であ

る。βしは筋かいの水平耐力の和を保有水平耐力の数値で除した数値である。2.柱とそれに接着する梁の種別が異なる場合には,いずれか最下位のものによる。なお,崩壊メカニズムの明快な

場合には,塑性ヒンジの生ずる部材の種別のうちの最下位のものによってよい。

*1l Ds値 とは構造特性係数という。構造物の変形性能,振動時の減衰性などを考慮した低減係数で,弾性応

答による層せん断力と等価な必要保有層せん断耐力と評価できる。

分類 BA BB BC

筋かい

有効細長比

一般式 495一√

<〓

λ 得<為 ≦愕まれまた≧響 絆<為 <響400N級F=235

λe≦ 32 32<λ e≦ 58ま たはλc≧ 128 58<λ c<128

490N級F==325

λc≦ 27 27<λe≦ 49ま たはλe≧ 109 49<λa<109

筋かいの負担比 またはβυ=0 βし≦0.3,0.3<βυ≦0.7,βし>0.7 βし≦0.3,0.3<βし≦0.5,βし>0.5

Ds

の種別

・梁群

FA 0.25 04

∩υ 0.3 0.35 0.3 0.35 04

FB つ0

nυ 0.3 0.3 0.35 03

Qじ

nυ 04

FC 035 0.35 0.35 04 0.35 0.4 0.45

上以

記外FD 0.4 0.4 0.45 0.5 0.4 0.45 0.5

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表 2.4柱・梁の種別 と幅厚比制限

部材

鋼種

幅厚比制限の値

部材断面部位

板幅 と板厚

柱・梁の種別

FA(塑性域 ) FB FC(弾性域 ) FD

1.H形柱

不―

α

 

 

 

〒―中ユ

一可

占工

Hフ ランジ

b/t∫

計算式

400N級

490N級

9.5ν/235/F

9.5

8.1

12ャ/235/F

12

102

155ν//235/F

15.5

13.2

Hウ ェブ

d/ιυ

計算式

400N級

490N級

43ν/235/F

43

366

45ャ/235/F

45

38.3

48ν/235/F

48

40.8

下lαl上

形角2 フランジ・

ウェブ

α/ι

計算式

400N級

490N級

33v/235/F

33

28.1

37∨/235/F

37

31.5

48ャ/235/F

48

40.8

蟄 径厚比

Iフ /t

計算式

400N級

490N級

50(235/F)

50

36.2

70(235/F)

70

50.6

100(235/F)

100

72.3

H形梁

不―lαll立

′́マr

 

 

 

r″

〒―中型

占工

Hフ ランジ

b/t∫

計算式

400N級

490N級

9ャ/235/F

9

7.7

11ャ/235/F

ll

9.4

15.5ャ/′235/F

15.5

13.2

Hウ ェブ

d/tυ

計算式

400N級

490N級

60~/235/F

60

51

65″

65

55.3

71、/′235/F

71

604

5.山形鋼 ι

山ら

突出部分

α/t

計算式

400N級

490N級

044ν713

11

注 1 1~ 4.項は建告 1792(改平 19国交告 596)に規定した値,5.項は学会鋼構造設計規

Ⅸ鶴蜆事鉤曇i」を凸」けに

飩冤注 5 許容応力度設計において,種別 FDの部材を用いたときは図の斜線部分を無効 とみな

し,FC相 当の断面について応力度を検定する。ただし岡」比,細長比の計算には全断面

を用いる。

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(4)保有耐力接合

1)筋かい

筋かい軸部の全断面積が降伏するまで筋かい端部は破断しないよう式 (2.15)を 満足 し

なければならない。計算方法は 5。 5。 1「筋かいの設計」表 5.17を参照のこと。

五グ

ここで,為

σし≧1.2Ag・ F

接合部の破断形式に応じた接合部の有効断面積 (mm2)

=min{Иα,4♭ ,ス c,∠ d,スε}

(2.15)

ただ し,スα

∠b

Ac

スd

五e

筋かいの有効断面積

接合ファスナーで破断する場合

フアスナーのはしあき部分で破断する場合

ガセットプレー トで破断する場合

溶接部で破断する場合

接合部の環断形式に応 じた接合部の材料の破断応力度 (N/mm2)筋かい材の全断面積 (mm2)

筋かい材の基準強度 (N/mm2)

(a) 車由 吉「 (b)ポルト (c)は しあき (d)ガセットブレート (e)'容接部

図 2.29接合部の破断形式

2)柱・梁接合部

梁端が全塑性曲げモーメン

リ確認しなければならない。

地 ≧α・f‰ (2.lo

(b)柱図 2.30部材端降伏の場合における塑性化領域

ここで,ユ亀 :柱 。梁接合部の最大曲げモーメントνЬ:梁の全塑性曲げモーメント (=ら .F)

α:接合部係数,梁材が400N級の場合=1.3,490N級 の場合=1.23)柱および梁の継手

接合部係数の値は,柱・梁接合部に準じ,図 2.30に示す塑性化が予想される領域での

継手は保有耐力接合する。

卜場 に達 しても接合部は破断しないことを式 (2.16)に よ

Z2/10ま たは 2D2の,う ち大きい値

〃1/10ま たは2Dlの うち大きい値

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5。 5.1 筋かいの設計

(1)各ルートにおける筋かいの扱い

1)共通の規定

技術基準では筋かいは軸部が降伏する前に筋かい端部の接合部が破断しない保有耐力接

合を規定している。その接合部係数は 1.2以上とし,具体的な検討方法は,第 2章 2.5。 2

「耐震設計の 3つのルー ト」における,(2)「層間変形角」および「保有耐力接合」 (式

(2.15))で 述べたとおりである。

2),レー ト1

地震時の標準せん断力係数を0.3以上に割増して許容応力度設計し,筋かい部分も靭性

が確保されたとみなされる。しかし筋かいを設けて偏心率几が15/100を 超える場合に

は,ルー ト3を適用するのが望ましい。

3)クレー ト2

水平力を負担する筋かいを設けた階 (地階を除 く)を含む建築物は,当該階の規定によ

る地震力による応力に表 5.16の数値を主要な構造部材に乗じて設計 しなければならない

(技術基準)。 筋かい付き架構のエネルギー吸収能力を補 うためである。

注 :β は,地震力による各階に生ずる水平力に対

する当該階の筋かいが負担する水平力の比

ラーメン構造に水平繰返 し荷重を加えると,図 5.78(a)の荷重・変形曲線が示すよう

に履歴ループを描きエネルギー吸収量が大きい。しかし筋かいの水平力の負担が 70%を

超える細長比の大きい筋かい架構は,同図 (b)に 示すようにスリップ形のループを描き

エネルギー吸収量が小さくなる傾向がある。したがつて筋かいの細長比を小さくして強度

を増 し,あ わせて筋かいを囲む柱・梁の強度を増すことにより,同図 (c)の ようにエネル

ギー吸収能力が改善することが実験で知 られているからである。

表 5.16に示すその階の応力の割増 しは軸組筋かい架構を強 くしてラーメンに近い耐震

性能をもたせるためである。

三 (b)λ が大きい筋かい (c)λ が小さい筋かい

図 5.78ル ープが示すエネルギーの吸収能力

4)ルート3

ルート3では保有層せん断力が,必要保有層せん断力より大きいことを示すことが条件

である。この規定に従えば,筋かいの有効細長比と,柱・梁群の幅厚比からエネルギー吸

収能力に相当するDs値 (構造特性係数)が決まるので設計者の選択の余地が広まったと

もいえる。

表 5.16筋 かいを有する階の応力の割増 し

筋かいの負担率β その階の応力の割増 し

β≦5/7の場合 1+0.7β

β>5/7の場合

(a)ラ ーメン構造

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表 5.17筋かい接合部の破断形式 とその耐力

箇破断形式・破断状況

破断面の有効断面積,

式 (5.138)の右辺ま

たは破断箇所

′)

破断応力度

(σし)

破断耐カ スプ・σu

1 軸部

Иα

スα=ん 一αo

ぬ :4章表 4.7

b」Fし

S】/1400,400NSW1490,490N

(4,一 αo)biL

Иα=ス,一 αO― α0

4θ :全断面積

α。:左斜線部分

同上 (4,一αo―αo)b几

2 ボルト

ノ生b

ボルト

箇所 π

π:ボルト本数

9し

1本当た りのせ

ん断破断強さ

4章表 47

π・9υ

 

ブレース材のはしぬけ

4c2(ν +c)tb

凸一√

2(p+e)ι b 曇√

/ ιg:ガセット厚ガセットプレートのはじぬけ

スc

2(P+e)tgユ一√

2(p tt c)ι g ユ一桁

4 ガセット

π:ボルト本数

P:ボルトピッチ

αO:ボルトr断猿

スd

:0・ ιg

b=会ι・t,一α0Z=(η -1)p

g几ガセットプレー

ト最大引張強さ

:0・ t,・ ,見

5

溶接

Zel=ιl-2sιe2==J2~2ss:隅肉溶接の

サイズ

ノle

2α・Zel+2α・Ze2

α:隅肉溶接ののど厚

υ 島

√たCel+リチ

注)bIら の添字の意味 :π :究極・終局,b:ブレース,θ :ガセツト,υ :溶接400N級のブレースのbrL=400N/mm2,490N級のガセットプレートの♂Ъ=490N/mm2

図 5.80筋かいの座屈長さ