クリーンルームにおける扉開閉に伴うクロスコンタミネーションの制御手法とその効果検証
平成 21年 1月 16日
NEE研究会 第13回講演討論会日本機械学会 環境工学部門
製薬施設における品質・歩留まり向上への提案
生産室内では室圧制御によって、菌の流入・製剤粉末の流出を抑えている.しかし、扉が開閉すると室圧が乱れる → 解決したい
1
1.背景と目的1.背景と目的
クリーンルーム・化学研究施設・病院の無菌管理室・製薬施設などでは,室圧を計画し、生産環境の清浄度を維持したり、管理物質が外部へ流出するのを防ぐ
+++
+++
++
+
+--
--
-
--
+++ > ++ > + > 0
+,- は圧力大きさを示す
-
+++
室圧の計画
共通理解のため、基礎的なところから
+
平面計画 立面
2
背景と目的背景と目的 室圧を確立する方法 ( 目的は,粒子等の流れを規定する )
・オフセット風量 (=給気風量-排気風量) を制御する/確認しながら調整する
・室圧を直接検出してダンパ・ファンを制御する
・室間の気流方向を確認しながら調整する (差圧ダンパやスモークで確認)
瞬間的な外乱,特に扉の開閉などにより,室圧が乱れる
・室圧制御 → 検出する圧力が扉を開いた状態では,隣と同じになる. 制御できない. 復帰時にオーバーシュートを起こす
・オフセット風量制御,気流方向 →流れ方向は保たれるが,流速は極端に落ちるので,気流は揺らぎ逆転する
場合もある.給気の気流の影響で部分的な逆転が起きる
給気
規定したい方向
逆転
流れの方向が不定
3
背景と目的背景と目的 国内では室圧制御が主流
・オフセット風量 (=給気風量-排気風量) は、周囲との関係が崩れると気流方向が逆転することがある.
・室圧制御は、調整がほとんど必要ない.フィルター目詰まりなどに追従する.施設の運用状況に追従する
→ 運用後も長期にわたって室圧が確立される
・室間の気流方向は、運用状況・フィルターの目詰まりなどで変化することがある差圧ダンパはホコリが溜まる.開口部があると余分な空調エネルギーが発生する
100
100
100 200200
100 +300 +300
200
生産排気などは,運用の都合でオペレータが変更してしまうことがある管理者には伝わらない
4
室内を陽圧化する室圧制御室内を陽圧化する室圧制御
給気側 :一定風量 (換気回数)を維持するため,定風量装置(CAV)が用いられる
清浄廊下
製造室1
PCD
EF-3
EF-2
EF-1
PCD
AHU
還気側 :室内の圧力をモニタリングし,圧力コントロールダンパ(PCD)でフィードバック制御を行う
CAV CAV
CAV
PCD PCD
製造室2 製造室3
CAV
システム構成例 (室圧制御)
( 生産装置の排熱除去,清浄度確保のため,換気回数を規定 )
1.背景と目的
5
20 Pa 10 Pa
(*) (*)
(*)扉隙間などから若干の流出がある
清浄域( クリーンルーム)
非清浄域( パスルーム)
断面図平面図
給気 給気
排気 排気モータダンパ, VAV
20 Pa 10 Pa
圧力勾配に応じて,気流が発生する ⇒ 気流方向をコントロール
( 外部からの気流の侵入を防ぐ )
0 Pa
扉開閉に伴うクロスコンタミネーションのリスク室圧制御の課題室圧制御の課題1.背景と目的
6
扉を開いた直後は,扉開口部で気流がぶつかり,コンタミネーションのリスクが発生する
扉を開いた直後は,扉開口部で気流がぶつかり,コンタミネーションのリスクが発生する
給気 給気
排気
15 Pa 15 Pa
○ 扉が開いた場合
扉開口部での摩擦抵抗がなくなるので,室圧は等しくなる.
*もれていたわずかな気流より,室内の気流の揺らぎのほうが大きい
ダンパを閉じて室圧を上げようとする.
15 Pa 15 Pa
( 室圧が設定値とならないので )
ダンパを開いて室圧を下げようとする.
給気 ≫ 排気 給気 ≪ 排気
扉開閉に伴うクロスコンタミネーションのリスク室圧制御の課題室圧制御の課題1.背景と目的
7
○ 扉を閉めると
100Pa以上 負圧に
過剰空気となり,室圧は急上昇過剰空気となり,室圧は急上昇
・隙間に圧力勾配が集中し,強い気流が発生する.⇒ 大きな摩擦や局所的な応力により,⇒シールを破損させるなど,構造体の劣化を促す.継続により,壁が倒壊する場合も
・室内での急激な圧力変化⇒ 室内での気流の変動,拡散が活発化 ( 通常とは違う風の動き )⇒ 生産ラインから遠くの粒子を室内全体へ
清浄域( クリーンルーム)側では,
非清浄域( パスルーム)側では,
空気不足となり,室圧は急下降空気不足となり,室圧は急下降
・周囲環境との室圧の逆転が起こる.⇒ わずかな隙間からでも,粒子を吸い込む.
扉開閉に伴うクロスコンタミネーションのリスク( オーバーシュート)
室圧制御の課題室圧制御の課題
単に圧力監視のグラフの数字がはねがあがるだけではない
1.背景と目的
8
扉開閉に伴うクロスコンタミネーションのリスクを低減する
既往の研究既往の研究
・前室・エアロックでは,
すべての部屋の前に設置する?
・人の動きの妨げになる,建築コストの上昇・床面積の縮小・エアロック内で気流をシャットアウトするには, 60~150 回/hで30~60秒待たなければならない
有効に機能させるのは,実質的に不可能
・扉が開かれた場合に,制御を停止する.(柴田 2005, 高橋特開1988-247542)
圧力のトレンドグラフ上は非常に有効
しかし,本来のコンタミネーション防止の目的からは外れてしまう
1.背景と目的
9
扉開閉に伴うクロスコンタミネーションのリスクを低減するシステムの提案・開発・効果検証
研究方針研究方針
・通常時は,計画圧力をきちんと確立できる室圧制御を行う・外乱(扉開閉)時は,フィードバック制御は行わない
*悪影響が出てからの制御となり間に合わない気流方向をきちんと確保したい
→外乱(扉開閉)に応じて,制御を切り替える → ハイブリッド室圧制御
・扉開閉の検知には,施工・メンテナンス面を考慮して安価で入手が容易, かつ, 設置・交換が簡単なもの
1つのモータで二つの制御が行えるモータダンパ
・複雑な室圧計画にも対応できる設定が容易なアルゴリズム
*システムの重奏化を避ける(コスト・設置スペースを抑える) →既存システムの構成からできるだけ離れない*給気側は,換気回数を規定しているので CAV
→排気側圧力コンロローラ(PCD)に着目
→風量をベースとした演算
1.背景と目的
10
・どうすればオーバーシュートを防げるか
研究の課題研究の課題
オーバーシュートが防げる
→オーバーシュートは扉が閉まったときにおきる
・フィードバック制御では,扉が閉まって,オーがーシュートが起こってから動作する
→扉が閉まったときに,ダンパの開度が不適切であり圧力の過上昇・過低下が起こる・フィードバック制御では,扉が開いている間にダンパの開度が不適切な位置まで動いてしまう
・扉開放中のフィードバック制御を停止する
扉が閉まったときにダンパ位置が開く前のいちにあればいい
閉まりかけているときは? 開口がある程度あれば,ダンパはどの位置でも,室圧は大きく変動しない.
・オーバーシュートは防げても,扉開口部での気流方向は確立されていない.
本来の目的である清浄度の維持ができていないクロスコンタミネーションのリスクがある
1.背景と目的
11
・どうすれば気流方向(一方向気流)が形成できるか
研究の課題研究の課題
・どのくらいの風速が必要か
評価はどのようにして行うか
制御的な要件
扉動作とPCDの反応速度ファン側の安定性, ダンパの制御幅
実用的な要件
浮遊菌・浮遊粒子が入らない
・扉そのものの動作の影響
・人や物の通過
→扉動作は早いほうが望ましいか,遅いほうが望ましいか
設備的には対応できないリスク
シミュレーションによる把握
部屋全体の気流の変化
1.背景と目的
12
・どうすれば扉の位置を認識できるか
研究の課題研究の課題
アナログ信号 vs デジタル信号
どんなセンサが有効か
軸の回転検知
変移センサ
赤外線センサ(人を検知)
比例 vs 多段階
機械的な接点
マグネットセンサ
トリガースイッチ
・制御信号は,状態量 vs 経過に左右される値か
ある程度の距離 (50mm程度)で検知
リミットセンサ
途中で信号が途絶えたり,エラーが混じったときに動作が不安定になる
1.背景と目的
13
ダンパ特性
510 CMH
20Pa, 38%
0
150
300
450
600
750
900
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ダンパ開度 [%]
風量
[C
MH
]
-20
0
20
40
60
80
100
圧力
[P
a]
風量 (室2)圧力 (室2)
・アルゴリズムの構築
研究の課題研究の課題
複雑な扉の開閉の組み合わせに対応
重ね合わせで考える
風量を基準に考える
扉が閉鎖している状態を基準とする
標準排気風量 ( 扉が閉まっている時の排気風量 )
ーΣ稼動している生産用局所排気装置の排気風量
ーΣ開いている扉の扉通過風量(扉から出て行く風量)
=求める排気風量
排気風量とダンパ開度には相関がある
標準排気風量を適宜取得できればよい
1.背景と目的
14
ハイブリッド制御は,扉の開閉状態に応じて,制御方法を切り替わるシステムです。
扉が閉まっている状態では,従来の室圧制御 を行い,室圧を一定に維持する.
扉が開いている状態では,風量制御 を行い,清浄域から非清浄域へ一定の風速を確保することで,汚染物質が気流の混合により清浄域に入り込むのを防ぐ.
( 室圧の状態にかかわらず,風量を制御する.)
( 平 均 風 速 0.05 m/s )
風量 400 m3/h 以上
システム概要 (ハイブリッド制御)システム概要 (ハイブリッド制御)2.ハイブリッド室圧制御
15
20 Pa
①室圧をセンサリング
室圧制御 ‥ 排気風量を操作し,室圧を一定に維持する.
給気(一定風量)
②ダンパ開度を操作③排気風量が変化
④室圧が変化
フィードバック制御 ( P制御)
○変動を吸収できる
・パラメータが適正でないと,ハンチングやオーバーシュートが発生する.
・外乱が起こってからの追従対応となる.
・制御幅を超える外乱には対応できない.→ 操作値がおかしくなる.
・連続的な緩やかな変化には強い・不連続,急激な変化には弱い
用語の定義用語の定義2.ハイブリッド室圧制御
16
20±5 Pa
①風量をセンサリング
風量制御 ‥ 排気風量を一定に維持する.
給気(一定風量)
・ダンパ開度(抵抗)を一定
②ダンパ開度を操作
室圧は成り行き
○安定している
・外乱に追従しない
・状態が復帰したときに,速やかに対応できる.
( 風量差 ∝ 室圧 )
状況が変化しなければ,ほぼ一定の排気風量
( ΔP ∝ ξρ )V22
・不連続な外乱,急激におこり急激に復帰する外乱に強い
フィードバックがなければ,
・予測可能な外乱には,フィードフォワード制御で対応で
きる→ 扉の開閉,局所排気装置の発停
用語の定義用語の定義2.ハイブリッド室圧制御
17
+15Pa
+7.5Pa
+7.5Pa室圧制御
風量制御
風量制御
+15Pa
+7.5Pa
+7.5Pa室圧制御
風量制御
風量制御
15Pa 8P
a 8Pa室圧制御
風量制御
風量制御
No
[ 制御ループ ]
開いた扉がある?
Yes開いた扉に隣接する室のモータダンパは「風量制御」を行う
(右図)
残りのモータダンパは「室圧制御」を行う
エンド
スタート ハイブリッド制御室圧制御と風量制御の
切替/並立
( 室圧制御 ←→風量制御 )制御アルゴリズム制御アルゴリズム2.ハイブリッド室圧制御
18
スイングドア
400 CMH
扉の開き角度
0 CMH 0~15°
400 m3/h
扉の開き角度
0 m3/h 30°程度
( 風量制御, 2段階で風量をコントロール )
Yes
No
扉が開ききっている
扉の通過風量を所定の風量とする
扉の通過風量を0 CMHとする
エンド
扉の通過風量を実現するモータダンパ開度とする
扉開放時のフロー
[ 風量制御]スタート
( 400 CMH以上)
Yes
No
扉が開ききっている
扉の通過風量を所定の風量とする
扉の通過風量を0 m3/hとする
エンド
扉の通過風量を実現するモータダンパ開度とする
扉開放時のフロー
[ 風量制御]スタート
( 400 m3/h以上)
所定の開度(設定値)
制御アルゴリズム制御アルゴリズム
2.ハイブリッド室圧制御
19
扉が閉まる直前の状態で,扉の動きを検知して,スムーズに室圧を回復させる.( 扉が閉まる前に,扉を通過する風量を 0 m3/h とする. )
0 m3/h
15 Pa 15 Pa15 Pa 15 Pa 20Pa 10
Pa(20Pa) (10 Pa)
ハイブリッド室圧制御ハイブリッド室圧制御
20
モータダンパコントローラ( アクチュエーター )
ハイブリッド制御盤
ハイブリッド制御は,・ハイブリッド制御盤,・モータダンパ,モータダンパコントローラ(圧力センサー内蔵)・扉センサーにより構成されている.
( 以下は,3室の構成例であるが,何室でも対応可能. )
システム構成システム構成2.ハイブリッド室圧制御
21
(b)マグネットスイッチ扉の開き角度30°検知
(a)トリガーセンサノブの回転検知
扉の開き角度
30° 程度
開口部を一定風量400 m3/h
扉 ノ ブ閉
風量制御
扉の開放
スイングドア(ヒンジタイプ) スライドドア
リミットスイッチ2個2段階に検知
室圧制御
扉 ノ ブ開
室圧制御
所定の開度
扉開閉状態の検知方法扉開閉状態の検知方法 スペーサが多くなると角度が大きくなる
2.ハイブリッド室圧制御
22対策例
扉開閉時のクロスコンタミ防止対策扉開閉時のクロスコンタミ防止対策
1)室圧のオーバーシュートを防ぐ扉を開いていると,廊下と室内の差圧
はなくなる従来制御では,扉を閉めたときにオー
バーシュートが発生する.バリアスマートでは,大きく乱れずに設
定の室圧に戻る
オーバーシュート
扉開
バリアスマート 従来制御
扉開
-100
-80
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
14:48 14:53 14:58
時刻
室圧
[Pa]
清浄廊下G系造粒室G系整粒室G系混合室X系造粒室X系FC室
扉開 扉開
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
14:48 14:53 14:58
時刻
ダン
パ開
度[%
]
清浄廊下G系造粒室G系整粒室G系混合室X系造粒室X系FC室
バリアスマートでは,扉が閉まる前に通常の開度に戻るが,従来制御では,扉が閉まってからダンパが閉まりだすので間に合わない
3.効果検証
23
室圧の経時変化 (ハイブリッド制御)
05
1015202530
-30 0 30 60 90
経過時間 [s]
圧力
[P
a]
室圧 設定20Pa
室圧 設定10Pa
▽ 開 ▽閉扉の開放
設定室圧の回復10秒程度
室圧の経時変化 (従来の室圧制御)
-10
010
20
3040
50
-30 0 30 60 90
経過時間 [s]
圧力
[P
a]
室圧 設定20Pa室圧 設定10Pa
▽ 開 ▽ 閉
扉の開放
設定室圧の回復60秒以上
廊下を基準圧とした各屋の室圧経時変化
廊下と室圧の逆転
⇒扉閉鎖直前に、安定開度に即座に移行〇扉閉鎖後に設定室圧の逸脱が無い〇設定差圧に約10秒程度で回復
〇扉閉鎖後に設定室圧を大きく逸脱する〇設定差圧回復に60秒以上で経過
3.効果検証
扉開閉に伴う圧力変動扉開閉に伴う圧力変動
24
扉開口部で 400 m3/h の通過風量
ハイブリッド制御
制御を停止する方法
(空調機を停止)
気流は低清浄度側へ
気流は真直ぐ上
へ
気流はゆらぎ,
どちらの側へも
写真-1
写真-2
ハイブリッド制御においては、低清浄度側への一方向流の形成を確認
扉
高清浄度側 低清浄度側
トレー
サー
400m3/h
3.効果検証
扉開放中の扉通過気流の可視扉開放中の扉通過気流の可視
25
廊下側室内側
水蒸気ミスト
扉開口部
2)扉開放中に一方向流を作る扉開放中は清浄廊下と室内の維持できなくな
るので,室内の粒子が廊下に出る可能性が高くなる.バリアスマートでは室内側の排気ダンパを開くことで,清浄廊下の空気が室内へと流れる
気流方向の確認方法
中央部の流れの様子の一例
下部の流れの様子の一例
3.効果検証
扉開放中の扉通過気流の可視扉開放中の扉通過気流の可視
26
バリアスマートバリアスマート通常のシステム通常のシステム
クリーンエリアにダーティ側空気が残留クリーンエリアにダーティ側空気が残留 クリーンエリアが清浄空気で保護クリーンエリアが清浄空気で保護
クリーンエリア クリーンエリアダーティエリア ダーティエリア
上から見た図
3.効果検証
扉を開け閉めした場合の空気の動き扉を開け閉めした場合の空気の動き
27
測定機器:超音波式三次元風速計 ULTRASONIC社ANEMOMETER MODEL WA-3900.1s間隔で10分間
860[mm]
▽FL
430 430150 150 150 150 130130
2,050
1,000
1,050
250
250
250
250
250
250
550
中央
扉開口部
x
z y
センサー部
本体
3.効果検証
扉開口部の気流分布扉開口部の気流分布
28
0.116
0.035
0.197
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0 100 200 300
時間 [s]
-y方
向の
風速
成分
[m
/s] 測定値
平均値
+標準偏差×2
-標準偏差×2
0.00
0.05
0.10
0.15
0.01
0.04
0.06
0.09
0.11
0.14
0.16
0.19
0.21
0.24
-y方向の風速成分 [m/s]
確率
密度
[-]
測定値
正規分布平均値
標準偏差×2 (95%)
標準偏差
経時的な変動傾向の一例(中央点)
風速は,平均値と標準偏差で表現できる
風速の表現 ( 正規分布が仮定できるので )
平均値 ±標準偏差×295.4% の風速平均値 ±標準偏差×399.7% の風速
図-4図-5
3.効果検証
扉開口部の気流分布の確認 ( 扉開放時 )扉開口部の気流分布の確認 ( 扉開放時 )
29
0
0.1
0.2
0.3
0 250 500 750 1,000 1,250 1,500 1,750 2,000z方向の距離 [mm]
風速
[m
/s] 95%
95%
0
0.1
0.2
0.3
0 200 400 600 800
x方向の距離 [mm]
風速
[m
/s]
平面的な風速分布 ( xy平面 )
平面的な風速分布 ( yz平面 )
検証環境では,給排気口の配置による極端な影響は見られない
扉開口部の風速分布は,ほぼ一様である.
測定ポイント
1,000
1,050
x
z y
430 430
図-6
3.効果検証
扉開口部の気流分布の確認 (扉開放時)扉開口部の気流分布の確認 (扉開放時)
30
従来の室圧制御:排気側VAV
扉 が 開 いた
回復
扉 が 閉 まる
室圧を一定に維持するためにダンパが開度を変える
粒子数の変化
1,000秒10
100
1,000
10,000
-300 0 300 600 900 1200 1500
経過時間 [s]
粒子
数 [
Cou
nts/
CF]
0.3μm0.5μm扉開扉閉
扉の開放
測定点
3.効果検証
扉開閉に伴う浮遊粒子数の変化 (1)扉開閉に伴う浮遊粒子数の変化 (1)
31
粒子数の変化
100秒10
100
1,000
10,000
-300 0 300 600 900 1200 1500
経過時間 [s]
粒子
数 [
Cou
nts
/CF
]
0.3μm0.5μm扉開扉閉
扉の開放 扉 が 閉 まる
扉が開いた
制御を停止した場合
室内の風量バランスが一定に保たれる
扉の開放
気流はゆらぎ,どちらの側へも
3.効果検証
扉開閉に伴う浮遊粒子数の変化 (2)扉開閉に伴う浮遊粒子数の変化 (2)
32
扉が開く
(途中)
開いた 閉まる
(途中)
ハイブリッド室圧制御
扉の開閉時は風量バランスを保ち,扉開放時は一方向流を生じる
扉の開放
粒子数の変化
100秒10
100
1,000
10,000
-300 0 300 600 900 1200 1500
経過時間 [s]
粒子
数 [
Cou
nts
/CF
]
0.3μm0.5μm扉開扉閉
扉の開放
一方向流
3.効果検証
扉開閉に伴う浮遊粒子数の変化 (2)扉開閉に伴う浮遊粒子数の変化 (2)
33
扉通過風速は,浮遊粒子に有効だろうか?
◎
500
扉壁
測定点
高さ 床上 1,000
[mm]
×
x
y高清浄側 低清浄側
低清浄側から入ってくる粒子を防げるだろうか?
扉通過気流
初速 0.5 m/s
模擬の汚染
( 菌を溶かした液)
測定の様子
×噴霧位置
◎サンプリング位置
◎
×
xy
低清浄側
扉開口部
模擬の汚染を用いて評価した
3.効果検証
模擬汚染と測定ポイント模擬汚染と測定ポイント扉は常時開放の状態で測定
34
y = 364038e-140.39x
R2 = 0.99941.E+00
1.E+01
1.E+02
1.E+03
1.E+04
1.E+05
1.E+06
0 0.05 0.1 0.15
風速 [m/s]
浮遊
粒子
濃度
[ヶ
/m3]
0.3μm以上 0.5μm未満0.5μm以上 1.0μm未満1.0μm以上 5.0μm未満5.0μm以上 10.0μm未満10.0μm以上 25.0μm未満バックグラウンド 0.5μm推奨値 0.042 m/s
0.3μm
0.5
1.0
5
10
0.042 m/s 浮遊粒子濃度 推奨値の移行率
0.5μm基準 [m/s]0.001% 0.0910.01% 0.0750.1% 0.058
1% 0.04210% 0.026
100% 0.009
扉通過風速は,浮遊粒子に有効だろうか?
入ってくる粒子濃度と出ていく粒子濃度がつり合う(0.5μm) 0.042m/s
→ 到達濃度の移行率を,室のグレードに応じて設定する [提案]
大きな粒子は慣性力があるので,ある程度の風速 ( 0.05m/s以上 ) が必要
一般環境の浮遊粒子濃度市街地 1×108 ~5×108 ヶ/m3
一般室内 1×108 ~1×109 ヶ/m3
* 0.5μm以上
3.効果検証
浮遊粒子に対する扉通過風速の有効性浮遊粒子に対する扉通過風速の有効性
35
y = 366.9e-46.261x
R2 = 0.9789
1
10
100
1,000
0.00 0.05 0.10 0.15
扉通過風速 [m/s]
菌数
[C
FU/m
3 ]
測定値
推奨値 0.10 m/s
移行率 1%
扉通過風速は,浮遊粒子に有効だろうか?
浮遊菌の測定結果
培養例
枯草菌枯草,牛乳,土壌,味噌,醤油,空気中など自然界に汎生している.病原性のない極めて安全性の高い菌である.(納豆菌も分類上は同じ菌種)
浮遊粒子の測定結果
高清浄側への浮遊菌の侵入低減に,扉通過風速を設
定することは効果があるということが分かった.
侵入の可能性を1%に抑える0.10m/s 以上を推奨値とする(*扉開口面積 2 m2で, 720 m3/h )
浮遊粒子濃度 推奨値の移行率
[m/s]0.001% 0.2490.01% 0.1990.1% 0.149
1% 0.10010% 0.050
100% 0.000
3.効果検証
浮遊菌に対する扉通過風速の有効性浮遊菌に対する扉通過風速の有効性
36
扉開口部で浮遊粒子や浮遊菌の侵入に対して有効な風速を求めるための検証を行った.
以下,得られた知見を示す.
1)扉開口部全体で風速分布を測定し,ほぼ一様な分布であることを確認した.
また,風速の測定値はおおむね正規分布を形成していた.
2)高清浄側から低清浄側へ扉通過風速を設定することは,浮遊菌・浮遊粒子濃度の
移行を抑制するのに有効であり,移行率で評価できる.
3)5.0 ~ 25 μm未満の粒子は慣性力の方が気流への追従性より強いため,
0.05m/s以上に扉通過風速を設定することが必要である.
なお,本報の実験は,扉そのもの動きや人や物品が扉を通過したことに伴う
汚染物質の移送がない,静的な条件を前提としている.実際の設計においては,
さらに扉の動さや人・物品の通過など運用面を含めて検討する必要があるが,
本報の実験結果はその基礎的データとなると考える.
3.効果検証
扉通過風速の有効性のまとめ扉通過風速の有効性のまとめ
37
まとめ
技術的成果技術的成果 課題に応えられたか
今後の展望今後の展望
扉の開閉に対して,これまでは室圧のオーバーシュートを抑制することは可能であったが,扉開口部での気流の行き来が起こり清浄環境の低下は抑止できていなかった.
われわれのハイブリッド室圧制御システムにより,室圧のオーバーシュートを抑制するとともに扉開口部で一方向の気流を生じて扉開放中の清浄環境の低下も低減できるようになった.
施設の生産管理において,これまでの課題を克服した,より良質の生産環境を提供できるようになった.
局所排気装置の稼動など発生が検知でき,外乱時の動作を特定できる場合にはこのハイブリッド室圧制御システムは拡張して適用可能である.一方,外風圧の変動による室圧変動などまだ対応できない外乱は存在し,さらなる研究が必要である.
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局所排気装置への対策局所排気装置への対策
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
11:03:30 11:04:00 11:04:30 11:05:00 11:05:30
時刻 [時:分:秒]
室圧
[P
a]
0
20
40
60
80
100
120
140
160
ダン
パ開
度 [
%]
室圧 (室1) 室圧 (室2)ダンパ開度 (室1) ダンパ開度 (室2)
ON OFF
-20
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0
5
10
15
20
10:56:30 10:57:00 10:57:30 10:58:00 10:58:30
時刻 [時:分:秒]
室圧
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ダン
パ開
度 [
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室圧 (室1) 室圧 (室2)ダンパ開度 (室1) ダンパ開度 (室2)
ON OFF
1)局所排気装置のON/OFF切り替え時には,急激に風量のバランスが崩れる.
従来制御では,過渡的に負圧になるなどして室内に埃などを吸引する可能性がある
バリアスマートでは,変動をできるだけ少なくし,汚染のリスクを軽減する
バリアスマートでは,局所排気装置のON/OFF信号による予測制御を行うため室圧の変動が安定しているが,従来制御では,一旦範囲からの逸脱が起こってから動作するので間に合わない
他の外乱への拡張