Transcript

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䞖界の数千人のプレヌダヌ「党員」が積極的に「参加」し、「助け合う」堎500 Startups

・どんな「党員参加」が起こっおいるのか

・なぜ頑匵れる どう頑匵れる 

・なぜ支える そのメリットは

・「党員参加」を可胜にする合理、情熱、信頌

 COLUMN日本䌁業の「党員参加」に足りないもの 本物のチヌム

霋藀りィリアム浩幞氏むンテカヌ 代衚取締圹瀟長

COLUMN日本䌁業の「党員参加」に足りないもの 2 面癜い!!ずいう感芚

本荘修二氏 本荘事務所代衚 倚摩倧孊倧孊院客員教授

6 シリコンバレヌに芋る党員が参加する組織の可胜性SECTION 1

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C O N T E N T S

ピラルキヌの匷い䌝統的ピラミッド型の経営構造を逆転。珟堎の力を匕き出す゚むチシヌ゚ル・ゞャパン

・倉革のステップは どう倉わっおいった

・実際に今、組織はどう動いおいる

 COLUMN日本䌁業の「党員参加」に足りないもの 効率より効果

オリ・ブラフマン氏

20 倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するにはSECTION 2

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はじめに「ここに橋を架けたい」。その気持ちに持おる力を差し出した5

党員参加のマネゞメント4

合理ず、情熱ず、信頌ず。

特集

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本誌に掲茉されおいるデヌタは平成25幎3月19日珟圚のものです。©株匏䌚瀟リクルヌトホヌルディングス本誌蚘事・写真・むラストの無断転茉を犁じたす。

たくさんの人が、䞊䞋巊右のないオヌプンな堎で぀ながり、䞀人ひずりの匷みを掻かし合う。そんなハッピヌな䞖界が圢になろうずしおいたす。

STAFF

発行人倧久保幞倫線集長䞭重宏基線集入倉由理子、荻野進介、荻原矎䜳、五嶋正颚、湊 矎和、䞭野史子執筆泉 圩子、勝芋 明、千葉 望、広重隆暹フォトグラファヌ新井啓倪、刑郚友康、勝尟 仁、䜐藀 掋、鈎朚慶子衚玙アヌトディレクタヌ氞井雄二デザむンホヌス衚玙ディレクタヌ友田光亮、枡邉掋治郎、五十嵐枅倏衚玙デザむナヌ䌊藀雅矎、阿保雄倪デザむンホヌス衚玙むラストレヌタヌ䌊藀雅矎アヌトディレクタヌ高瀬 薫  デザむナヌアむコ・オオノ・グラナヌドス、村本和矎むラストレヌタヌノグチナミコ印刷進行リクルヌトメディアコミュニケヌションズ校正ディクション  印刷北斗瀟

䞀人ひずりが球の衚面積であれ。絊䞎、評䟡制床が基盀の党員参加型組織ディヌ・゚ヌ・゚ヌ

情報共有や意思決定はそのずき、その堎で。オフィスの仕掛けがその文化を促す゚バヌノヌト

「党員参加」の組織をいかに぀くり、いかにマネゞメントするか

たずめ「党員参加」は厳しく、そしお爜やかである

䞭重宏基本誌線集長

28「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒントSECTION 3

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Works線集アドバむザヌ

有沢正人カゎメ 執行圹員 経営䌁画本郚 人事総務郚長倧谷友暹

ダマトホヌルディングス 人事戊略担圓シニアマネヌゞャヌ黒須宏兞

日枅補粉グルヌプ本瀟 総務本郚 劎務郚長叀寺猛生

゜ニヌ 人事郚門 副郚門長菅原明圊

日立補䜜所 グロヌバル人財本郚 副本郚長むンド、アゞアパシフィック、䞭囜担圓曜山哲人

サむバヌ゚ヌゞェント 取締圹 人事本郚長 二宮倧祐

むオン グルヌプ人事郚 郚長䞉浊卓広

゚むベックス・グルヌプ・ホヌルディングス 執行圹員 総務人事本郚 本郚長 和光貎俊

䞉菱商事 人事郚 郚長代行 

※50音順・敬称略

進化する人ず組織 

アオキ 代衚取締圹瀟長 青朚豊圊氏

ダむガクセむのミカタ 

VOL.8 目暙達成を党員が確信し、

倚様な人材が集たるチヌムで高い成果

成功の本質 

監修野䞭郁次郎氏䞀橋倧孊名誉教授

第66回 日本航空

若手を腐らせるな 

VOL.21 “䜓眰”問題に組織はどう向き合うか

Career Cruising 

枡蟺正行氏お笑い芞人

人事の哲孊 東掋思想が斬る、ニッポンの今 

⑀雇甚ずいう関係性の本質は䜕か

FROM EDITORIAL OFFICE

INFORMATION

連茉ペヌゞ

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党員参加の マネゞメント合理ず、情熱ず、信頌ず。

Make Your Employees Happy!

Text = 入倉由理子437P  Photo = 刑郚友康

4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

党員参加の マネゞメント合理ず、情熱ず、信頌ず。

Make Your Employees Happy!

サンフランシスコで初めおゎヌルデンゲヌトブリッゞを芋たずき、感動した。サンフランシスコからゎヌ

ルデンゲヌト海峡の察岞に、玄2.7キロメヌトルの橋が架かる。この倧きな橋ですら、最初、たった1人の誰

かが「ここに橋を架けたい」ず、この海峡に立っお匷く念じたこずが始たりだったのだろう――。

9ペヌゞに登堎するサミヌル・パテル氏は、むンタビュヌのなかでこう話した。19䞖玀半ば、ゎヌルドラ

ッシュに沞き、開拓者粟神に溢れる人々が䞖界䞭からこの地を目指しおやっおきた。その象城ずもいえるの

がこの橋である。「橋を架けたい」ずいう匷い意志に、お金を持぀人は資金を、知恵や技術力を持぀人はそ

れを差し出した。倧きなむノベヌションにしおも、小さな仕事の完遂にしおも、泚目されがちなのはアむデ

アを出した人、それを牜匕した人だ。しかし、実際には倚くの人が自らの持おるものを出し合っお、それを

結合させなければうたくいかない。「持おる力を出し合う」、぀たり「党員参加」である。

党員参加には、2぀の芁玠が必須だ。1぀は「オヌナヌシップ」である。「ここに橋を架ける」こずに真剣

に向き合い、そこで自分ができるこずを考え、完遂しようずするスタンスがそれだ。もう1぀は、盞手が、

その堎が必芁ずするものは䜕かに思いを巡らす「助け合い」の気持ちである。マヌカス・T・オガワ氏12

ペヌゞは、「シリコンバレヌで新しい䟡倀が次々ず生たれ、その掻力を支える芁玠の1぀は、“How can I

help you?”の粟神だ」ず蚀った。新しい䟡倀が生たれない。組織に掻力がない。日本䌁業のそうした課題

の䞀因は、「オヌナヌシップ」ず「助け合い」の欠劂ではないか。

私たちはたず、米囜シリコンバレヌで急速に広がるむンキュベヌションシステムの1぀、500 Startupsに、

党員参加が機胜する組織ずはどのようなものかを芋に行った。これがSECTION1である。SECTION2では

むンド発のグロヌバル䌁業HCLを䟋に、倧䌁業が党員参加の組織に転換するためには䜕をすべきかを暡玢

した。そしお、SECTION3では、党員参加を実珟する制床、仕掛けのヒントを探し、日米2瀟に泚目した。

若手がダメ。ミドルは元気がない。シニアは数が倚すぎる  。もはや、そんな䞖代間闘争をしおいる堎

合ではない。党員参加に突砎口がある。私たちは、そう確信しおいる。      入倉由理子本誌線集郚

はじめに

「ここに橋を架けたい」。その気持ちに持おる力を差し出した

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米囜シリコンバレヌずいえば、

ITずベンチャヌ䌁業の集積地であ

る。ここに2000幎代半ば過ぎから登

堎したのが、アクセラレヌションプ

ログラムず呌ばれるスタヌトアップ

䌁業のむンキュベヌションシステム

だ。぀の堎に起業家の卵や起業し

たばかりの䌁業を集め、さたざたな

支揎をしながら、資金調達に結び付

けおいく。その぀が、2010幎に誕

生し、既に回のアクセラレヌショ

ンプログラムを実斜するファンド運

営䌚瀟、500 Startupsである。

その仕組みは、右ペヌゞの図を参

照いただきたい。人をチヌ

ムずするスタヌトアップ䌁業を玄30

遞抜し、シリコンバレヌにある500

Startupsのオフィスでカ月間のプ

ログラムを実斜する。

私たちが泚目したのは、むンキュ

ベヌションの仕組みではなく、その

支揎のあり方だ。支揎者のメむンは、

200人に䞊る「メンタヌ」である。

圌らは基本的に、無償で圌らの時間

ず知識を提䟛する。そのほか、500

Startupsが抱える玄1000人の起業家、

グヌグルや、れネラル・゚レクトリ

ックGEずいった倧手䌁業も参加

チヌムを支える。スタヌトアップ䌁

業を育おるずいう目的に向かっお、

プレヌダヌ「党員」が積極的に「参

加」し、「助け合う」堎なのである。

なぜ支えるのか。どう支えるのか。

そしお、その支揎を受けおスタヌト

アップ䌁業はどう頑匵るのか。この

問いにペヌゞから向き合っおいく。

SECTION 1

事業抂芁ベンチャヌ䌁業ぞの投資、スタヌトアップ䌁業のむンキュベヌション、それに䌎うむベントなどの運営 蚭立2010幎 埓業員数本䜓は玄20人 展開囜50カ囜以䞊

500 Startups䞖界の数千人のプレヌダヌ「党員」が積極的に「参加」し、「助け合う」堎

スタヌトアップ䌁業支揎の仕組

みに内圚するオヌナヌシップず

助け合いの文化ずは、どのよう

なものかをレポヌトする。

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

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500 Startupsの仕組み

基本的にそれぞれの参加チヌムはその期間に事業や補品のブラッシュアップをし、カ月目に開催される「デモデヌ」で投資家、倧手䌁業などに向けおプレれンテヌションする。その間、500 Startupsのメンバヌを䞭心に、数癟人に䞊る人々が参加チヌムを支揎する。

出兞500 Startupsぞの取材をもずに、線集郚䜜成

1カ月 2カ月 3カ月START !4カ月

デモデヌ

アクセラレヌションプログラム

トレヌニング、メンタリング期間 ピッチの緎習

箄30のスタヌトアップ䌁業が参加

500 Startupsのプログラム、200人のメンタヌ、先茩起業家、パヌトナヌ䌁業、投資家などが支揎

こんな堎で

米囜カリフォルニア州サンフランシスコにほど近い、シリコンバレヌの䞀角、 マりンテンビュヌに500 Startupsのオフィスはある。オフィスビルのフロアを「占拠」し、参加チヌムの䜜業スペヌス、セミナヌなどを行うむベントスペヌスのほか、広々ずしたキッチンもある。

パヌトナヌシップ

グヌグル、マむクロ゜フト、GE、PayPalなど、錚々たる倧手䌁業やベンチャヌ䌁業が協賛しおいる。

䞖界の凝瞮

ワヌクスペヌスには、玄30チヌムが「雑居」。米囜のほか、アゞア、南米、ペヌロッパなど䞖界䞭から集たっおいる。ここは倚様性に満ちた、䞖界の凝瞮である。

デモデヌ

4カ月のプログラムの終わりには、投資家などを前にしたプレれンテヌションむベント「デモデヌ」が行われる。各参加チヌムの持ち時間は3分。ここでいかに自瀟の魅力を䌝えられるかが、資金や協力者を獲埗できるかどうかを決める。

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もう少し、詳しく仕組みを芋おい

こう。プログラムはカ月である参

加チヌムは、その前埌カ月も500

Startupsのオフィスを䜿甚できる。

そのうち最初のカ月はトレヌニン

グ、メンタリング期間ず呌ばれる。

500 Startupsが補品開発、資金調達、

マヌケティング、法埋や䌚蚈など、

さたざたな領域の専門家によるセミ

ナヌを週に数床、開催する。

そしお、ここで掻躍するのが200

人にも及ぶメンタヌたちだ。メンタ

ヌは月に少なくずも時間、参加チ

ヌムのために時間を䜿うこずを矩務

づけられおいる。メンタヌの「本業」

は、成功した起業家、䌚蚈や法埋の

専門家、経営コンサルタント、投資

家などさたざただ。本業や経隓によ

っお培われた豊富な知恵や技術を、

無償で提䟛しおいるずいうわけだ。

メンタヌの人、 ゞェヌムズ・

レノィン氏は、プログラムがスタヌ

トするず、党参加チヌムず面談の時

間をずる。「そこで事業の内容だけ

でなく、ファりンダヌ創業者や

そのチヌムの経隓、匷み、匱み、珟

状の課題を知ろうず努力したす」ず、

レノィン氏は話す。レノィン氏のよ

うに党員ず面談しなくおも、興味が

あるチヌムに声を掛けるメンタヌも

いる。たた、「ダッシュボヌド」ず

いう、メンタヌず参加チヌムを結ぶ

りェブ䞊のシステムも重芁な圹割を

果たす。メンタヌの専門領域を閲芧

し、「この人の話を聞きたい」ず思

えば、アポむントがずれる。

そしお、残りのカ月は、「ピッチ」

ず呌ばれるデモデヌでのプレれンの

緎習を、500 Startupsやメンタヌが

支揎する。既述の通り、投資家など

を前にした分の勝負だ。事業の可

胜性、チヌムの魅力を短時間で䌝え

るために緎習を繰り返す参加チヌム

に察し、アドバむスする期間である。

「ピッチの緎習を芋おいるず、プロ

グラムを経お、驚くほど成長するチ

ヌムがある」ず話すのは、゚ンゞェ

ル投資家のゞュン・リヌ氏写真13

ペヌゞだ。500 Startupsは、ある

皮の人材育成システムずもいえる。

ハッピヌアワヌや食事など

「内茪」になるための努力

500 Startups、メンタヌ、参加チ

どんな「党員参加」が起こっおいるのか

James Levine_父がコンピュヌタ関係の起業家だったため、幌少時からコンピュヌタに觊れながら育぀。シリコンバレヌでIT業界に携わっお20幎以䞊経぀。珟圚は日本䌁業を䞭心に、シリコンバレヌ進出の支揎を行う。

Mentor

参加者ず長い時間を過ごし、「内茪」になっお、より有効なアドバむスを心掛ける

Silicon Valley Entry Specialist

ゞェヌムズ・レノィン 氏

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

ヌムの関係は、ビゞネスラむクなも

のだけではない。500 Startupsのオ

フィスでは、毎週金曜日の倕方、「ハ

ッピヌアワヌ」が催される。参加チ

ヌムやメンタヌ、協賛䌁業の埓業員、

500 Startupsの面々が䞉々五々やっ

おきお、ビヌルを飲みながらコミュ

ニケヌションをずる堎だ。その埌、

気が合ったもの同士がカラオケや食

事に行くこずもある。

レノィン氏のこずを倚くの人が

「ベストメンタヌ」ず呌ぶ。「私が

500 Startupsで過ごす時間がいちば

ん長いからだず思う」ず、レノィン

氏は分析する。「オフィスで長い時

間を過ごすのは、参加者をよく知り、

気軜な関係になるため。『ダッシュ

ボヌド』を䜿っお、あらたたった圢

で面談をするだけでなく、立ち話を

したり、食事を䞀緒にしたり。そう

やっお個人的に深く知り合えば、開

瀺しおくれる情報が増える。するず、

より有効なアドバむスができたす」

レノィン氏ず、「内茪」になるこ

ずの重芁性を匷調する。

よりよいアドバむスをする目的の

ためだが、そのベヌスずしお「信頌

関係を築くこずが倧事」レノィン

氏だずいう。

支揎はあくたで支揎

「自ら考えさせる」こずが倧事

このように、500 Startupsには事

業を成功に導くためのプログラムが

あり、芪身になっお盞談に乗っおく

れるメンタヌもいる。

ずはいえ、「ここに来れば必ず成

功する、人、䌚瀟が育぀ずいうもの

ではない」ずリヌ氏は指摘する。「結

局は自分次第。効率的にしおあげる

こずはできるけれど、我々メンタヌ

がいるから成功する、ずいうマむン

ドではうたくいかない。どれだけ参

加チヌム自身が情熱を持っおいるか

にかかっおいたす」リヌ氏

レノィン氏は「メンタヌになった

圓初は、参加者の成功を願い、感情

的に入れ蟌んでアドバむスしおいた

した。しかし、結局䌚瀟を成長させ

るのは本人たち。だから今は、少し

距離を眮き、方向性を瀺すこずを倧

切にしおいたす」ず語る。

自身も起業経隓を持぀サミヌル・

パテル氏も、「答えを教えるのでは

なく、リスクなどこういう偎面を考

えなさい、ずフレヌムワヌクを提䟛

しおいたす。自分の時代には成功で

きたけれど、今日の正解は明日の正

解ではないこずを、私たちは理解し

おいるからです」ず話す。「䜕か新

しい䟡倀を生み出そうずするずき、

そのアむデアは起業家から。メンタ

ヌはそれをあくたでチュヌニングす

るだけなのです」パテル氏

事業の成功の起点は、起業家の情

熱や意欲にある。それに察し、メン

タヌが必芁に応じお自らの持おる力

を惜しみなく提䟛し、チュヌニング

を詊みる。そうやっお成功の確率を

高める。これが、アクセラレヌショ

ンプログラムの「党員参加」の基本

的な構造である。

Samir Patel_むンドから米囜に移䜏。シリコンバレヌでむンタヌネット技術を身に付けた。スタヌトアップ䌁業やむヌベむでの勀務を経お、コヌネル倧孊でMBAを取埗。そこでオンラむンチュヌタリング事業で起業。その埌、広告業界での起業を経お、経営コンサルタントずしお独立。

Mentor

答えを教えるのではなく、起業家のアむデアをチュヌニングする圹割

neoDigital, Inc. Founder President & CEO

サミヌル・パテル 氏

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ここでは芖点を倉えお、参加チヌ

ム偎から500 Startupsの仕組みを芋

おみよう。500 Startupsには、党米

はもずより、䞖界から海を越えお参

加チヌムが集たっおいる。その動機

は䜕か。そもそも圌らにはメリット

は倚い。 プログラムスタヌト時、

500 Startupsがたず、各参加チヌム

に䞇ドルず぀出資する。参加チヌ

ムはその䞇ドルを圓面の資金ずし

お、事業や補品のブラッシュアップ

に努める。ずはいえ、スタヌトアッ

プ䌁業にずっお䞇ドルは、そう倧

きな金額ではない。開発費やランニ

ングコストだけで、すぐに底を぀い

おしたう。぀たり、その䞻芁な目的

は䞇ドルを出資しおもらうこずだ

けではないはずだ。

埗られるネットワヌクの

質の高さが最倧のメリット

ワシントンに本拠地を構えながら、

プログラムぞの参加のためにシリコ

ンバレヌにやっおきたサラ・りェア

氏は、「ITの領域の優れた専門家や

投資家のネットワヌクが埗られ、サ

ポヌトを受けられるこずがずおも貎

重でした」ず、参加理由を話す。

実際に参加したメリットに぀いお、

やはり真っ先に挙がるのはそのネッ

トワヌクの質の高さだ。ダン・オブ

リンガヌ氏はIBMのワト゜ン研究所、

囜防総省の研究者を経お、起業の道

を遞んだ。「500 Startupsのメンタ

ヌには、むンタヌネットの創成期に

高い実瞟を出し、䞖の䞭を倉えた立

圹者が倚いのです。そういう方々か

ら盎接アドバむスをもらえる機䌚は、

そうありたせんし、私たちが䜜戊レ

ベルたで質問を具䜓化しおいれば、

圌らはきちんず耳を傟けおくれた

す」ずオブリンガヌ氏は話す。りェ

ア氏は、「メンタヌのアドバむスに

よっお、消費者向け䞭心のビゞネス

から、パブリッシャヌやブロガヌ向

けの補品に切り替えた経隓もある」

ず、その有効性を話す。「このシリ

コンバレヌは、20幎前䜕をしたかず

なぜ頑匵れるどう頑匵れる

Participant

Sarah Ware_ワシントンでクヌポン共同賌入倧手のLivingSocialに勀務埌、゜ヌシャルブックマヌクのプラットフォヌムを提䟛するMarker lyht tp ://www.markerly.com/を起業。2012幎9月から、500 Startupsのプログラムに参加。 Leo Chen_ワシントン倧孊卒業埌、マネゞメントコ

ンサルタントずしお起業したが、資金が底を぀いお廃業。䞊海のアマゟン、スタヌトアップ䌁業での勀務を経お、ファッションのハむ゚ンド向けEC事業Monogramhttp://www.getmonogram.comを蚭立。2012幎3月からのプログラムに参加。

ITの領域の優れた専門家や投資家のネットワヌクが埗られる

Markerly CEO, Co-Founder

サラ・りェア 氏

カゞュアルな付き合いのなかで、お互いの持おるものを差し出しおいる

Monogram CEO, Co-Founder

レオ・チェン 氏

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

1 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 1 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

か、元囜防総省だずかは関係ありた

せん。重芁なのは、ここで求められ

おいるこずに盎結した経隓です。

億ドルの䌚瀟、事業郚を぀くりた

した。だからこそ、その蚀葉に説埗

力があるのです」オブリンガヌ氏

同時に、参加チヌム同士の「助け

合い」に蚀及する声も倚く聞かれた。

ハむ゚ンドのファッションECサむ

トを手掛けるレオ・チェン氏は、「私

が投資を䟝頌した投資家から、残念

ながらNOの返事が来たのです。そ

のずき、その投資家の投資条件に合

臎するかもしれないず思ったほかの

チヌムを玹介したこずがありたし

た」ず振り返る。たた、技術者の採

甚に悩むほかのチヌムに、人材を玹

介するずいった助け合いもある。

圌らはカ月間のうちにビゞネス

プラン、補品をプレれンテヌション

できるレベルたで高めなければなら

ず、倚忙を極める。それにもかかわ

らず、なぜ、ほかのチヌムに手を差

し出す䜙裕があるのか。「参加チヌ

ム同士の切磋琢磚が力になるからで

す。もちろん倚忙ですが、ここでは

ハッピヌアワヌもあれば、バヌベキ

ュヌ倧䌚もある。ちょっずした立ち

話をする堎もある。そこで生たれる

カゞュアルな付き合いのなかで、お

互いの持おるものを差し出しおいる

だけなのです」チェン氏

圌らには、起業を目指すずいう共

通点がある。お互い高め合う気持ち

があるから助け合い、それぞれから

いいフィヌドバックず刺激を受けお

いる。「参加チヌムを芋おいるず面

癜い。匷いチヌムは匷いチヌムず固

たる。匱いチヌムは孀立しおいく。

するず、匱いチヌムも巻き返しを図

ろうずするのです」リヌ氏

支揎しおくれる人の

ためにも頑匵りたい

参加チヌムのほずんどは、寝る間

も惜しんで仕事に没頭する。なぜ、

そこたで頑匵れるのか。もちろん、

起業家ずしお成功したい、この機䌚

を有効掻甚したい、ずいう思いがい

ちばんである。

䞀方で「私たちを支揎しおくれる

500 Startupsやメンタヌにも還元し

たいから」ずいう、トレヌシヌ・ロ

ヌレンス氏の声もあった。「私は自

分が成長できただけでなく、ここに

参加するすべおの人ずビゞネスの盞

談のみならず、カラオケをしたり、

ゞョギングをしたりするなかで、埗

難い信頌関係を構築できたした。圌

らにいただいたものが倧きいから、

私も頑匵っお、できるこずは䜕でも

しおあげたいず思いたす」ロヌレ

ンス氏

ここに参加し、情熱を傟けお専心

できるのは、メンタヌたちの支揎に

メリットず感謝を感じおいるから。

支えおもらっおいるからこそ、自分

にできるこずをしようず思える。そ

んな堎ができあがっおいるこずが芋

おずれる。

Tracy Lawrence_南カリフォルニア倧孊圚孊䞭に携垯アプリ事業で独立するが、倱敗。その孊びを掻かしたいず考え、オンラむンのケヌタリングビゞネス、Chewsehttps://www.chewse.com/を起業。2012幎9月からのプログラムに参加。

Dan Oblinger_IBMワト゜ン研究所、囜防総省に人工知胜の研究者、プログラムディレクタヌずしお勀務する傍ら、コロンビア倧孊講垫も務める。その埌、共同創業者ずずもにPayByGrouphttp://paybygroup.com/を蚭立。2011幎9月からのプログラムに参加。

1億ドルの䌚瀟を぀くった。だからこそメンタヌの蚀葉に説埗力がある

PayByGroup Co-Founder&CTO

ダン・オブリンガヌ 氏

埗難い信頌関係を構築できた。私もできるこずは䜕でもしたい

Chewse CEO, Co-Founder

トレヌシヌ・ロヌレンス 氏

Participant

1 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 1 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

ここたで芋おきたように、メンタ

ヌたちの支揎がこの堎における倧き

なカギずなっおいる。しかしながら、

私たちが取材を始める前の最倧の疑

問は、「なぜ、メンタヌたちは無償

で参加チヌムを支揎するのか」であ

った。参加チヌムには、既述の通り、

メリットがある。500 Startupsはフ

ァンド運営䌚瀟であり、参加チヌム

を支揎し、圌らの事業が成長すれば

盎接、リタヌンがある。メンタヌた

ちはどうか。

メンタヌを突き動かす぀の理由

は、シリコンバレヌ独特の「゚コシ

ステム」にある。「シリコンバレヌ

には、『皆が友だち。だからみんな

䞀緒に成功しよう』ずいう文化があ

りたす」ず話すのは、投資䌚瀟を営

むマヌカス・T・オガワ氏だ。

成功ず倱敗が繰り返される

゚コシステムが瀟䌚の基盀

「誰かが成功すれば、必ず自分も成

功ぞず連れおいっおくれる。だから

誰かが助けを必芁ずすれば、自分が

できるこずは䜕でも手を差し䌞べる。

倱敗者にも成功者から敗者埩掻のチ

ャンスが䞎えられる。そうやっおあ

ちこちで助け合いが起こり、倱敗ず

成功が繰り返されお新陳代謝が起き、

掻力を保ち続けるナニヌクな゚コシ

ステムになっおいるのです」オガ

ワ氏

経隓がたったくない起業家が、知

人の぀おをたどっおスヌパヌ技術者

や有名なベンチャヌ䌁業の創業者に

盞談する、ずいうようなこずが普通

に起こる瀟䌚だずいう。人ず人の぀

ながりにおいお、瀟䌚的地䜍やお金

の有無は関係ない。党員参加の条件

の぀、助け合いが瀟䌚の前提条件

になっおいる。

「もちろん、䞊䞋関係や階局を倧事

にする人は、シリコンバレヌにもい

たす。そういう人は『評刀』が䞋が

り、い぀の間にか瀟䌚に淘汰されお

いきたす」ず、オガワ氏は蚀う。「こ

こにいる倚くの人が、ゆるやかに぀

ながりを持ち、お互いにどんな人か、

どんな匷みを持った人なのかを知っ

おいる。知らない人でも、呚囲の人

に尋ねれば、その評刀を聞くこずが

できたす。評刀あっおこその信頌で

あり、階局を気にしたり、自分の利

なぜ支えるそのメリットは

Marcus T Ogawa_小孊生たで日本で暮らし、その埌、父が起業し、サンフランシスコに移䜏。5幎前より投資家ずしお掻動を始め、投資する䌁業は40瀟以䞊、14瀟の䌁業の取締圹を務める。

Mentor

誰かが成功すれば、必ず自分も成功ぞず連れおいっおくれる

Quest Venture Partners Managing Partner

マヌカス・T・オガワ 氏

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

1 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 1 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

益だけを远求したり、ずいったこず

ができない仕組みが出来䞊がっおい

るのです」オガワ氏。皆が倧切に

する䟡倀芳に共感する人は、自由に

参加でき、合わない人は、自然に退

出しおいく。だからこそ、30幎の月

日を経おも、シリコンバレヌはシリ

コンバレヌずしおあり続けおいるの

だろう。

メンタヌにもたらされる

さたざたな「利」

そうした助け合いの文化が前提に

ある䞀方で、メンタヌに「利益」が

ないわけではない。

リヌ氏は、「500 Startupsが我々

メンタヌに、メンタヌになるメリッ

トをこう説明しおいたす」ず教えお

くれた。「たずは、500 Startupsの

ブランド䟡倀。500 Startupsでメン

タヌをしおいるず蚀えば、それなり

に評䟡されたす。次に500 Startups

のネットワヌク。ここで情報や知識、

人のネットワヌクを効率的に埗られ

たす。そしお、投資によるリタヌン。

500 Startupsが組成したファンドぞ

の投資もできれば、参加チヌムのな

かに自らの投資察象を探すこずもで

きるのです」リヌ氏

どのメリットを享受するかは、人

それぞれである。

リヌ氏はこれたでの参加チヌム数

瀟に投資しおいるし、レノィン氏の

ように「か぀お投資しおいたが、も

うしない」ずいう人もいる。その理

由に぀いお、レノィン氏は「私は参

加チヌムを『内茪』ずしお支揎した

い。投資するず、どうしおも『倖偎』

の人になっおしたう」ず話す。そん

なレノィン氏にずっおのメリットは、

自身のシリコンバレヌ゚ントリヌス

ペシャリストずいう肩曞きに密接に

かかわっおいる。レノィン氏は珟圚、

シリコンバレヌに進出しようずする

䌁業の支揎を䞻な事業ずしおいる。

「500 Startupsのメンタヌでいるこ

ずで、シリコンバレヌで今、䜕が起

こっおいるかを抂芳できる。さたざ

たなスタヌトアップ䌁業、ほかのメ

ンタヌや投資家に接するこずで、自

分なりのIT産業、シリコンバレヌ

の俯瞰図を埗られたす。それが、私

にしか持ち埗ないナニヌクなノりハ

りに぀ながっおいるのは間違いあり

たせん」レノィン氏

パテル氏はたた、異なるメリット

を実感しおいる。「私たちメンタヌ

は、䞀方的に教えおいるだけではあ

りたせん。たずえば、クラりド゜ヌ

シングやワヌクロヌドを䞖界に分散

させるなど、新しいビゞネスの手法

を参加チヌムから孊ぶこずが少なく

ないのです」パテル氏。18ペヌゞ

に登堎する本荘修二氏も同様に、

500 Startupsのメンタヌの人であ

る。パテル氏ず同様に、そのネット

ワヌクから受ける刺激や面癜さがメ

ンタヌを続けおいる理由だずいう。

「助け合い」ず聞くず、慈善的偎面

が前に出がちだが、その文化の基盀

には、金銭的、非金銭的な「利」が

もたらされる぀ながりがある。そん

な党䜓像が浮かび䞊がっおきた。

Jun Li_北京倧孊卒業埌、日本で倧手総合電機メヌカヌに勀務。半導䜓のスタヌトアップ䌁業に転職し、1994幎からシリコンバレヌで展開。その埌、米囜に移䜏し、半導䜓関連やIT関連䌁業の起業、売华を経お、珟圚は投資家ずしお䞻に掻動する。米囜、日本、䞭囜でベンチャヌ䌁業を支揎する。䞊海ではむンキュベヌションオフィス「むノベヌションキャンプ」を運営しおいる。

Mentor

ここで情報や知識、人のネットワヌクを効率よく埗られる

CEO of EDA company, Anova Solutions inc.

ゞュン・リヌ 氏

「党員参加」を可胜にする合理、情熱、信頌

合理

情熱

衚者ずしお、メッセヌゞや思いを発

信し、衚珟しなければならない。぀

たり、私は『アンバサダヌ』なので

す」マクルヌア氏

メンタヌの1人、本荘修二氏18

ペヌゞはマクルヌア氏の行動を「桁

違い」ず衚珟する。「今日日本にい

たず思えば、明日はブラゞル、ずい

うように神出鬌没で䞖界を駆け巡り、

500 Startupsのビゞョンを䌝えおい

る。そしお、ツむッタヌでも呟き続

けおいる。圌がアむコンずなっお、

500 Startupsの䞖界芳を決定づけお

いたす」本荘氏

たずえシリコンバレヌでも、「組

織が倧きくなっおいく過皋で倧䌁業

病に陥るこずがある」ず、先に登堎

したサミヌル・パテル氏は蚀った。

「組織の硬盎化、指瀺埅ち䜓質に陥

らないためには、組織に参加する党

員が、䜕のために仕事をしおいるの

かを垞に共有するこずが重芁」パ

テル氏である。500 Startupsが

500 Startupsであるために、マクル

ヌア氏は情熱を持っおビゞョンを発

信し続ける。だから、このネットワ

ヌクは陳腐化しない。

合理的関係を基盀ずした ファミリヌ的信頌関係

そしお、このネットワヌクず぀な

がりを持った人すべおを、500

Startupsでは「ファミリヌ」ず呌ぶ。

「ファミリヌだから䞀緒に食事もす

いうスタンスだからだず思いたす」

ずマクルヌア氏は話す。

運営組織の内蚳は、むベントチヌ

ム、アクセラレヌションチヌム、投

資家チヌムなどだ。その先に膚倧な

数の倖郚の関係者がいお、意思決定

は珟堎に任せる分散型だ。それぞれ

が自埋的に動ける仕組みである。そ

の掻動や意思決定を支揎するのが

500 Startupsの圹割だずいうのだ。

「代衚者の私でも、すべおを把握し

おいるわけではない」マクルヌア

氏ずいうように、1人のカリスマ

がすべおを統括する、カスケヌド匏

の指揮呜什系統があるわけではない。

だからこそ、プレヌダヌ党員がオヌ

ナヌシップを持おるのである。

共通のビゞョンで結ぶ そこに必芁なのは、情熱

しかしネットワヌクが分散すれば

するほど、それが倧切にする䟡倀芳

が倱われがちだ。その維持のために

機胜するのがビゞョンである。

500 Startupsのりェブサむトを芋

るず、「ほかのベンチャヌファヌム

がずらない方法で、ベンチャヌ䌁業

の成功を支揎する」ずある。「500

Startupsの呚りには、こうした私た

ちの思いに共感しお専門家や起業家、

技術者、投資家、倧手䌁業などが䞖

界䞭から集たる」マクルヌア氏。

そこにビゞョンを䌝えるこずこそ、

マクルヌア氏の圹割だずいう。「代

それぞれが情熱を持っお、自らの

圹割を果たすオヌナヌシップを持ち

ながら、お互いを助け合う。しかも、

そこに参加するプレヌダヌ党員に䜕

らかの「利」がもたらされる。こう

した堎をどのように぀くっおいるの

か。たた、リヌダヌはどんな圹割を

担うのか。500 Startupsのファりン

ディング・パヌトナヌであるデヌブ・

マクルヌア氏ず、ベンチャヌ・パヌ

トナヌのゞョヌゞ・ケラマン氏に問

い掛けおみた。

マクルヌア氏は、500 Startupsを

「それぞれが自埋しお掻動する『ゲ

リラ的組織』」だず定矩づけた。圌

らはそもそもファンド運営䌚瀟であ

る。アクセラレヌションプログラム

を通じた投資以倖にも䞖界各囜のベ

ンチャヌ䌁業に投資しおおり、䞖界

各囜でベンチャヌを支揎するむベン

トなども行っおいる。蚭立からたっ

た3幎で、投資したのは䞖界で50カ

囜以䞊、450瀟にも及ぶ。

「メンタヌが200人、起業家ネット

ワヌクは1000人、協賛䌁業は400

瀟、そのほか投資䌚瀟、アクセラレ

ヌションプログラムぞの参加チヌム

ず卒業生  。このような巚倧なネ

ットワヌクであるにもかかわらず、

500 Startupsの運営組織は20人皋

床。ずおも軜いのです。それが可胜

なのは、私たちがネットワヌク党䜓

をコントロヌルするのではなく、そ

れぞれの自埋的な掻動を支揎するず

1 4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

信頌れば、カラオケにも行く。助けたい

ずも思う」ずケラマン氏は話す。決

しおリップサヌビスではなく、圌ら

はビゞョンに集たっおくる人々を心

からファミリヌず認め、それぞれの

情熱ずオヌナヌシップを信じお真剣

に支揎し、暩限委譲する。支揎され

る偎、任される偎は「ファミリヌ」

ずしおの責任を果たそうず、自らす

べきこずに党力を泚ぐ。ゆるやかな

぀ながりながら、たるで離れた堎所

に自立しお䜏む家族のような信頌関

係が、確かにここに存圚する。

䞀方で、「500 Startupsは慈善事

業家ではない。ファンド運営䌚瀟ず

しお、投資家に察する責任を負っお

いたす」ずケラマン氏は断蚀する。

「投資先である起業家が倱敗したら、

私たちも倱敗する。私たちが倱敗し

たら、圌らも远加投資が受けられな

い。だから䞀生懞呜支揎するし、力

の限り頑匵るのです」ケラマン氏

500 Startupsのネットワヌクに参

加する党員に金銭的・非金銭的な

「利」があるず既に曞いた。䞀蓮托

生ず蚀えば倧げさだが、自分の頑匵

り、差し出す支揎が結果的に自分に

返っおくる。利ず助け合い、信頌関

係は盞反するように芋えるが、実は

利をもたらす合理がすべおの瀎にな

り、その䞊に助け合いも、信頌関係

も成り立っおいるこずが芋えおくる。

ここに、500 Startupsからの孊びが

あるのだず思う。

500 Startupsはそれぞれが自埋しお掻動する「ゲリラ的組織」

500 Startups Founding Partner

デヌブ・マクルヌア 氏

ファミリヌだから信頌できるし、助けたいずも思う

500 Startups Venture Partner

ゞョヌゞ・ケラマン 氏

George Kellerman_青森の䞉沢米軍基地に勀務埌、ハワむ倧孊を経お、茚城県庁の囜際亀流課に勀務。カリフォルニア倧孊バヌクレヌ校のロヌスクヌルで孊んだ埌、匁護士資栌を取埗。再来日し、ダフヌゞャパン囜際経営戊略郚長、デルゞャパンのコンシュヌマヌ事業本郚長を経お、500 Startupsに参加。

Dave McClure_Founders Fund、Facebook fbFund、PayPal、Mint.com、Simply Hiredなどを経お、2010幎に500Startupsを蚭立。米囜シリコンバレヌを拠点にしながら、䞖界䞭を巡り、むベントの開催や支揎、起業家の支揎を行う。

1 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

本物のチヌム日本䌁業の「党員参加」に足りないもの 1

「日本にはシリコンバレヌのような

掻力がない。その原因は䜕か。それ

は、『チヌム』がないこずだ」

霋藀りィリアム浩幞氏は日系アメ

リカ人ずしお米囜西海岞で育ち、高

校時代に起業。米囜で成功を収めた

埌、日本に本拠地を移し、珟圚はベ

ンチャヌ支揎を䞭心に掻動しおいる。

「日本に移䜏しようず思ったのは、

恩返しのような気持ちからです。私

の成功は、日本の倧手メヌカヌずの

協業なしには成し埗なかったので

す」ず、霋藀氏は話す。そしおあら

ためお日本の瀟䌚に身を眮いおみる

ず、か぀お米囜で日本の倧䌁業ず協

業した時代よりも、ずっず日本が掻

力を倱っおしたっおいるこずに驚い

た。「䜕が問題なのだろう」ず問い

続け、そこで気付いたのが、冒頭の

「チヌムがない」ずいう事実だった

のである。

霋藀氏によれば、チヌムの本質ず

は「個人ず個人、組織ず組織が共通

の目的に向かっお汗を流し、ヘルプ

し、補完し合う関係」だずいう。助

け合っおお互いの足りない郚分を補

い合うこずが、目暙の達成に぀なが

るこずをメンバヌそれぞれが理解し

おいる。メンバヌは、その目暙の達

成においお自らができるこずを䞻䜓

的にやろうずする。぀たり、チヌム

ずいう抂念には、そもそも「党員参

加」ずいう抂念が内包されおいる。

日本人の倚くは、米囜人に察しお

個人䞻矩ずいう印象を持぀。「実際

には、個人䞻矩化が進んでいるのは

日本であっお、チヌムが機胜しおい

るのが米囜だず思う。米囜の䞭孊や

高校では、進孊の評䟡基準にもされ

るくらい、自発的なボランティア掻

動が瀟䌚のなかで重芖されおいたす。

人を助け、自分ができるこずをやる

ずいう粟神が、OSずしお埋め蟌た

れおいるのです」霋藀氏

霋藀氏の目には、日本の組織がど

う映るのか。「䞊が決めたこずを間

違いなく凊理するだけの『グルヌプ』

の集合䜓にしか芋えたせん。若い人

や階局が䞋の人が思ったこずを蚀え

る雰囲気もない。ずおも颚通しが悪

いず感じたす」霋藀氏

「このグルヌプの集合䜓である組織

が、日本の成長を支えおいた時代が

あった」ず、霋藀氏は指摘する。高

床成長期からバブル期に至る、事業

環境の倉化が比范的ゆるやかで、補

品サむクルが今よりも長かった時代

である。

環境倉化の激しい時代には もう「グルヌプ」はいらない

「むノベヌションは、S字曲線を描

いお進んでいきたす。最初、それた

での抂念を芆すような砎壊的むノベ

ヌションが起こりたす。それはあた

りにも新しいので䞀郚の人にしか受

け入れられたせん。その埌、䞀般消

費者が受け入れやすいようにそれを

改善する挞進的むノベヌションのプ

ロセスに入りたす。それが普及し尜

くすず、たた、砎壊的むノベヌショ

ンに向かいたす。このなかで日本䌁

業は、挞進的むノベヌションが圧倒

的に埗意でした」霋藀氏

もちろん、゜ニヌのりォヌクマン

個人ず個人、組織ず組織が共通の目的に向かっお汗を流し、ヘルプし合うのがチヌムだ

↓↓↓

1 6 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

など、砎壊的むノベヌションを起こ

した日本のメヌカヌもある。しかし、

倚くの日本䌁業は、補品の量産化、

軜量化、゚ネルギヌ効率の向䞊、䜎

䟡栌化など、挞進的なむノベヌショ

ンをコツコツず積み䞊げるこずによ

り、䞖界で勝ち䞊がっおいった。

「挞進的むノベヌションは、䞎えら

れた目暙に向かっお、コツコツず専

門領域の仕事を積み䞊げる、グルヌ

プによっおなされたす。だからこそ、

日本は勝おた。しかし、今は補品サ

むクルが短くなり、S字カヌブの暪

幅がどんどんせたくなっお、次のむ

ノベヌションがあっずいう間に起こ

りたす。挞進的むノベヌションのフ

ェヌズがほずんどなくなり、グルヌ

プはもはや必芁ずされなくなっおき

おいるのです」霋藀氏

自動車産業のS字カヌブの時間軞

は、30幎。少しず぀改善しお、垂

堎に投入しおも消費者の関心を喚起

するこずはできた。しかし、たずえ

ば音楜を䟋にずれば、レコヌドから

CDには玄100幎。その埌、音楜配

信サヌビスたで数十幎。そしお、ク

ラりドたでは数幎しか芁しなかった。

もはや、グルヌプだけでは勝おない。

本圓のチヌムが必芁である。そう霋

藀氏は断蚀する。

心を開き、匱みを芋せるこずが チヌムづくりの第䞀歩

では、チヌムをどう぀くるのか。

その解を埗るには、なぜ米囜でチヌ

ムが生たれたかを考える必芁がある。

「米囜は倚様な瀟䌚です。“”を聞

いお“10”を知るような、『あうん

の呌吞』が難しい。ですから、話者

は盞手の顔を芋おわかっおいるのか

いないのかをうかがいながら、説明

の仕方を倉えおいくし、聞き手もわ

からないこずがあればすぐに質問し

たす。この双方向の察話が、盞手を

理解し、尊重するチヌムの醞成に぀

ながっおいるのです」霋藀氏

チヌムを぀くるには、「たずお互

い心を開き、理解し合うこずが第䞀

歩」だず霋藀氏は蚀う。心を開くず

は、「本音を蚀い合い、匱みを盞手

に芋せられる状態になるこず」霋

藀氏。盞手の匱みがわからなけれ

ば、䜕を助けおやれるかわからない。

わからなければ、そこに補完関係は

むンテカヌ 代衚取締圹瀟長

霋藀りィリアム浩幞 氏

William H. Saito_カリフォルニア倧孊ロサンれルス校医孊郚卒業。高校圚孊䞭にI/O゜フトりェアを蚭立。テレビ䌚議システムなどの事業を経お、生䜓認蚌暗号システムの開発で成功を収め、2004幎に䌚瀟をマむクロ゜フトに売华した。その埌、東京に拠点を移し、コンサルティング䌚瀟むンテカヌを蚭立。むノベヌションや起業で生じる倚様な課題に察し、アドバむザヌずしお、資本支揎もしながら珟圚に至る。著曞に『ザ・チヌム 日本の䞀番倧きな問題を解く』日経BP瀟などがある。

か぀おはグルヌプを必芁ずする挞進的むノベヌションの期間は、ゆるやかに長く続いおいた。これが、日本䌁業が匷かった時代である。しかし、図のように挞進的むノベヌションの期間はどんどん短くなり、本物のチヌムなしに䌁業が勝぀のは難しくなっおきた。

技術の進化のS字カヌブ

出兞『ザ・チヌム』霋藀りィリアム浩幞著日経BP瀟

チヌムの時代砎壊的むノベヌション

グルヌプの時代挞進的むノベヌション

チヌムの時代砎壊的むノベヌション

1 7N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

面癜い !!ずいう感芚日本䌁業の「党員参加」に足りないもの 2

囜内倖のベンチャヌ䌁業を支揎し、

むノベヌションや起業家粟神の研究

を行う本荘修二氏は、6ペヌゞから

玹介した500 Startupsのメンタヌの

1人である。日本に拠点を眮きなが

ら、基本的にはオンラむン䞊で、時

にはシリコンバレヌを蚪問しお、ス

タヌトアップ䌁業を支揎する。

本荘氏によれば、「500 Startups

のようなアクセラレヌションプログ

ラムを持぀むンキュベヌタヌ、シヌ

ド段階を察象ずする投資家が増えた

こずで、シリコンバレヌの゚コシス

テムに倉化があった」ずいう。「より、

『倚産倚死』になりたした。か぀お

よりも容易にスタヌトラむンに立お

るので、スタヌトアップ䌁業過剰状

態になり、すぐに朰れる䌁業も倚く

なりたした。そのため、むンキュベ

ヌタヌなどに察する批刀があるのも

事実です」本荘氏

しかし、朰れそうな䌁業を攟眮し

おいるわけではない。「たずい、ず

思ったらメンタヌがアドバむスす

る」本荘氏し、それでもうたく

いきそうもない堎合、「Fail-fast」倱

敗するなら迅速にず、芋切りを付

けるこずを奚励する。そのほうがダ

メヌゞは小さく、次の事業を手掛け

る力が残る。「メンタヌは黒子にす

ぎないものの、゚コシステムの新陳

代謝を促すうえで、重芁な圹割を果

たすのは事実」ず本荘氏は匷調する。

こうしたメンタヌネットワヌクを、

日本䌁業に組み蟌めないだろうか。

経隓豊富なミドル、シニアを倚く抱

える日本䌁業で、若手人材の仕事や

新芏事業を支える存圚ずしお、メン

タヌネットワヌクは有効ではないだ

ろうか。私たちは本荘氏にそう問い

掛けた。「䌁業ずむンキュベヌタヌ

では条件が違う」ずいう前提で、本

荘氏は2぀のポむントを挙げた。

個人は「組織人」ではなく あくたで個人か

1぀は䌚瀟、そしお埓業員本人の

「個人」のずらえ方の問題だずいう。

「日本人は組織に雇甚されおいるず、

䌁業も埓業員も個人を『組織人』ず

ずらえる傟向が匷い。䞀方、米囜で

生じない。

倱敗を蚱容しなければ、 本圓のリヌダヌは育たない

もう1぀は、「倱敗を蚱容し合う

こず」だずいう。霋藀氏は珟圚、倚

くの起業家に投資しおいるが、その

投資条件の1぀は日本の䞀般的な考

え方からするず、かなり異質だ。そ

れは、「1床は倱敗しおいるこず」

だず蚀うのである。「いい䌁業に共

通しおいる芁因は、成功するたでに

䜕床も倱敗しおいるこずです。『チ

ヌム』はお互いの倱敗を蚱容し合い、

それを孊びに倉えお成長するこずが

できるのです」霋藀氏

シリコンバレヌの掻力を支えおい

るのも、この倱敗を蚱容する文化だ。

たずえ䌁業同士は競争しおいおも、

お金を持っおいる人はお金を、知恵

を持っおいる人は知恵を出す。それ

は、倱敗者に察しおも同様である。

倱敗した人は成功者の100倍いる。

その人は、倱敗によっお孊びを蓄積

した人だ。その孊びが、シリコンバ

レヌの先進性に぀ながっおいるず霋

藀氏は説く。

「䞊から蚀われたこずを蚀われた通

りに実行するグルヌプは、倱敗しな

いこずが圓たり前です。このグルヌ

プを束ねるマネゞャヌは、倱敗する

こずができない。そんな人がそのた

た䞊に䞊がり、瀟長になったずしお

も、リスクをずれない『スヌパヌマ

ネゞャヌ』にしかなり埗ないのです」

霋藀氏↓↓

1 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

シリコンバレヌに芋る 党員が参加する組織の可胜性 S E C T I O N 1

は組織に属しおいようがなんだろう

が、個人はあくたで自立した個人で

す。ですから、終業埌は基本的に䜕

をやっおも自由。500 Startupsのメ

ンタヌやむベントの参加者には倧手

䌁業に勀務する人もいたすが、その

人たちは『○○䌚瀟の××』ではな

く、『△△に぀いおアドバむスでき

る××』です。自埋した個人ずしお

自由を䞎えられおいなければ、自由

に掻動できたせん」本荘氏

これを日本の組織内に眮き換えお

みよう。䌚瀟も埓業員本人も、個人

を「○○郚△△課の××」ず認識す

る。䌚瀟からの呜がなければ、他者、

他郚眲、他事業郚の仕事に銖を突っ

蟌むこずはない。グヌグルのような

「20は奜きな仕事をやっおいい」

ずいう制床が日本では話題になるよ

うに、個人の仕事の裁量は小さい。

他者、他郚眲、他事業郚のプロゞェ

クトの支揎をする、興味を持っお話

を聞きに行く、ずいったアクション

は攟っおおけばほずんど起こらない。

そしお、そもそも他者や他郚眲、

他事業郚の仕事に興味を持たない、

持぀仕組みがない、ずいう問題が2

぀目のポむントだ。

新しいヒントが人の぀ながりで 埗られるこずを皆知っおいる

繰り返しになるが、500 Startups

のメンタヌは無償である。なぜ、メ

ンタヌをやるのか、ず聞くず、「面

癜いから、に尜きる」ず本荘氏は答

えた。「自らがかかわった䌚瀟が、

自らのアドバむスで少しでもよくな

る。他のメンタヌや投資家、同期の

参加者の知恵が集たっおぐんぐん成

長しおいく。そんな姿を芋るのがう

れしくお、面癜いのです」本荘氏

そこにあるのは、単に支揎したい、

貢献したいずいう気持ちだけではな

い。「皆、新しいこずを孊ぶこず、

ヒントを埗るこずに貪欲。メンタヌ

も、投資家も、そしお倧手䌁業勀務

者すら、それが人の぀ながりによっ

おもたらされるこずをよく知っおい

る。だから興味を持おるし、自ら支

揎しようず思えるのです」本荘氏

シリコンバレヌも、その゚コシス

テムの䞀郚である500 Startupsも、

成功の陰にはその数十倍以䞊の倱敗

がある厳しい堎だ。それでも、人は

そこを目指しお自ら事を起こそうず

し、それを支揎しようずする人も集

たる。その理由は「そこから必ず未

来を創る䌚瀟が生たれるから」本

荘氏。その倢に、皆が賭ける。

組織ずしお個人が倢を生み続ける

堎を持ち、それにプレヌダヌずしお

だけでなく、支揎者ずしお賭けよう

ずする個人が生たれる。そこに䌚瀟

は自埋を䞎える。支揎者ずしおの参

加を促すこうした仕組みは、組織の

なかで個人が蓄積しおきた知恵を移

転する意味で、欠かせないのではな

いだろうか。

本荘事務所代衚倚摩倧孊倧孊院客員教授

本荘修二 氏

Honjo Shuji_東京倧孊工孊郚を卒業埌、ボストン コンサルティング グルヌプに入瀟。退瀟埌ペンシルベニア倧孊に留孊しMBAを取埗、垰囜埌にベンチャヌ䌁業、倧手䌁業向けの新芏事業コンサルティングを行う本荘事務所を蚭立。CSK・セガグルヌプにお䌚長付、米系ベンチャヌキャピタルの日本代衚を歎任。

そこから必ず未来が生たれる。それに皆が賭ける。そんな堎をいかに぀くるか

1 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

HCLは、むンドの倧IT䌁業の

䞀角をなすグロヌバルカンパニヌで

ある。HCLは䞖界31カ囜に拠点を

持ち、珟圚、グルヌプ党䜓で埓業員

数は䞇人、幎間売䞊高は63億ドル。

珟圚も、高い成長率を維持し続けお

いる。

しかし、ほんの幎前の2005幎、

HCLのITサヌビス郚門HCLテクノ

ロゞヌズ以䞋HCL)の代目CEO

珟副䌚長兌JMDのノィニヌト・

ナむアヌ氏は、同瀟の行く末を案じ

おいた。圓時、幎率の成長率は30。

それでもほかのIT䌁業の成長率か

ら比べれば確実に鈍化し、垂堎にお

けるマむンドシェアが䜎䞋しおいた

こずが、ナむアヌ氏を悩たせおいた

のである。

果たしおナむアヌ氏は、倧胆な䌁

業倉革をスタヌトした。その栞心ず

SECTION 2倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するには倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するには

事業抂芁グロヌバルITサヌビス 本瀟所圚地東京郜千代田区むンド本瀟はノむダ 蚭立1998幎本瀟は1976幎 展開囜31カ囜

゚むチシヌ゚ル・ゞャパンHCLゞャパンピラルキヌの匷い䌝統的ピラミッド型の経営構造を逆転。珟堎の力を匕き出す代衚取締圹 営業統括担圓

ニヌランゞャン・バッタチャルゞヌ 氏

Neelanjan Bhattacharjee_むンドのIT業界に玄30幎携わる。ペヌロッパ、日本ずほずんどの期間をむンド囜倖で暮らす。技術者からセヌルスマヌケティングに職務転換。2003幎にHCLに入瀟し、2006幎にむンドに垰囜。再び2008幎に来日。2012幎より珟職。

グルヌプマネヌゞャヌ–人事

サダンタン・バスヌ 氏

Sayantan Basu_むンドのビゞネススクヌルでMBAを取埗。2006幎HCLにシニアマネゞメントトレヌニングプログラム18カ月ごずに異動を行うコアマネゞメント育成プログラムで入瀟。戊略人事や犏利厚生などを経隓埌、2009幎に来日、珟職に就く。

合理、信頌、情熱を䜵せ持぀党員参加の組織に倧手䌁業も倉革

できる。むンドの倧手IT䌁業、HCLを䟋にその方法を考える。

2 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するには S E C T I O N 2

なったのが、「Employees First,

Customers Second以䞋、埓業員

第䞀䞻矩」ずいう経営理念である。

「顧客第䞀䞻矩」は、よく聞く蚀葉

である。それを同瀟ではあえお、「埓

業員が第䞀、顧客は第二」ず蚀い切

った。

その理由を、珟圚HCLゞャパン

の代衚取締圹を務めるニヌランゞャ

ン・バッタチャルゞヌ氏は「顧客に

察しお真の䟡倀を創出するのは、垞

に顧客接点にある珟堎の埓業員です。

顧客ず珟堎の埓業員の間にバリュヌ

ゟヌンがあり、䟡倀を最倧化するに

は、埓業員を第䞀にするこずが重芁

なのです」ず説明する。これを圢に

すべく、HCLでは経営陣を頂点に

眮くピラルキヌの匷い䌝統的ピラ

ミッド型の経営構造を逆転させ、経

営陣は埓業員を第䞀に考え、埓業員

が仕事に取り組むうえで必芁なツヌ

ルず基盀を提䟛するこずに重点を眮

くようになった。

䌝統的ピラミッド型組織では、䞊

から䞋りおくる指瀺を実行するのが

䞋、ずいう構造になりがちだ。この

ピラミッドをひっくり返すず、珟堎

が最もパワヌを持぀こずになる。珟

堎が経営に倧きな圱響をもたらす、

理にかなった「党員参加型」の぀

のあり方なのである。

ピラミッドず逆ピラミッド

が合䜓したハむブリッド

しかし、「誀解しおはならないの

は、階局がなくなったわけではあり

たせん。䟝然、CEOはCEOですし、

マネゞャヌはマネゞャヌです。それ

ぞれの圹割定矩が倉わり、組織図ず

は逆のピラミッドが同時に存圚する

ずいうのが、珟圚の圓瀟です」ず説

明するのは、HCLゞャパンのグル

ヌプマネヌゞャヌ–人事のサダンタ

ン・バスヌ氏だ。䞊の図を参照しお

ほしい。倧きな戊略を決め、党䜓を

霟霬なくコントロヌルする機胜は、

埓来のピラミッド型組織が担う。「䞀

方、逆ピラミッド型組織は、埓業員

の゚ンパワヌ、぀たり、珟堎の責任

ず暩限を倧きくするこずが目的で

す」ず、バスヌ氏は説明する。

「今期の目暙はこうである」ず、䞊

から䞋りおくる。これは、䞀般の䌁

業ず同じで、ピラミッド型組織構造

が機胜しおいる。しかし、目暙に異

論があれば䞊叞にそれを蚀い、䞊叞

はその目暙の背景を珟堎が玍埗する

たで説明するアカりンタビリティ

説明責任を負う。この時点でピ

ラミッドは確実に逆転する。そしお、

それが䌚瀟の利益になる限り、どの

ようにやるかは珟堎に完党に任せる。

たた、珟堎の仕事を滞らせる芁因が

瀟内の問題であれば、䞊叞や管理郚

門は早急に解決しなければならない

―。端的な䟋で瀺せば、珟圚の

HCLはこのような組織である。

この倧胆な倉革が実珟したカギは

なんだろうか。バッタチャルゞヌ氏

は、「透明性」だず蚀った。「透明性

がカギ」ずはどういうこずか。そし

お、どのように透明性を持たせおい

ったのか。次ペヌゞから、その倉革

のプロセスを振り返る。

埓来のピラミッド型構造を残しながら、珟堎の責任ず暩限を倧きくするこずで、珟堎の埓業員を経営陣やマネゞャヌ、管理郚門が支える独特の組織圢態をずる。

出兞HCLゞャパンぞのむンタビュヌをもずに、線集郚䜜成

HCLの組織構造

埓来のピラミッド型組織→目的はコントロヌル

+ =

CEO

珟堎バリュヌゟヌン

珟堎バリュヌゟヌン

CEO

逆ピラミッド型組織→目的ぱンパワヌメント

コントロヌルも゚ンパワヌメントも

可胜な組織

2 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

2 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 2 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

たずは、倉革前のHCLがどんな

組織だったか、觊れおおこう。「倉

革が始たったころ、私は日本法人で

働いおいたしたが、本瀟ずの物理的

な距離や蚀語の問題などで、日本の

組織にずっお本瀟は遠い存圚でし

た」ず、バッタチャルゞヌ氏は話す。

珟堎はどうだったのだろうか。

シニアビゞネスディベロップメン

トマネヌゞャヌのスリハルシャ・K

氏の同瀟ぞの入瀟は、倉革前の2001

幎。入瀟しおカ月はむンドで勀務

し、その埌、日本に赎任した。「む

ンドでも日本でも同じでしたが、匊

瀟はトップダりンで動く䌚瀟でした。

トップの指瀺通りに動き、珟堎には

枠が決められおいたした。たずえそ

れが日本のマヌケットに察する戊略

でも、決めるのはむンドの本瀟です。

毎日䌚瀟に来お、蚀われたこずをこ

なす。そんな毎日でした」ず、スリ

ハルシャ氏は圓時を振り返る。

そしお2005幎、倉革は始たった。

䞀遍にすべおが倉わったわけではな

く、「段階的に倉わっおいった」ス

リハルシャ氏 ずいう。「圓時の

CEOが䞖界䞭の拠点を歩いお、瀟

員ず察話を始めたこずが倉革の始た

りでした」スリハルシャ氏

これが、䞋の図の「倉革のステッ

プ」の「」に圓たる。組織の珟状

を、たずは透明にしたのである。

ナむアヌ氏の著曞、『瀟員を倧切

にする䌚瀟』英治出版によれば、

このずき、単に「今、うちの䌚瀟は

こういう状況である」ずいう、䞀方

的な発信では満足しなかった。むン

ド、米囜、ロンドン、フランクフル

ト、東京など䞻芁な拠点を巡り、䞻

にそこで働く埓業員数千人に「HCL

の課題は䜕か」「珟堎で䜕が起こっ

おいるか」を問い掛けた。それぞれ

が自ら気付くこずによっお、珟状に

察する深い理解を促し、「倉わりた

い」ずいう意識を醞成しおいったの

である。

オヌプンな家族のような

信頌関係を構築する

問題は、「どう倉わるか」である。

ナむアヌ氏は顧客ずの察話のなかで、

ITサヌビスを手掛ける同瀟にあっ

お、顧客が匷く信頌し、䟡倀を芋出

しおいるのは同瀟の補品そのもので

はなく、顧客接点にある珟堎の埓業

員の知恵や技術、頑匵りであるこず

を知った。そこでナむアヌ氏に飛来

したビゞョンが、「埓業員第䞀」だ

ったのである。この浞透が、第、

第のステップである。

埓業員第䞀䞻矩を組織に浞透させ

倉革のステップは どう倉わっおいった

HCLの倉革のステップ

自分たちの珟状を明らかにした1.

思い切っお珟実を芋詰め、自分たちの珟時点を明らかにし、自分たちが埌退しおいるこずを認識した。

透明性による信頌、倉革の文化を生み出した2.

倉革ぞの共感を行動に倉えるために、「信頌を構築」し、「透明性の限界」に挑んだ。事実を明らかにしお、問題点を公にしたら、埓業員は圓事者意識を持぀ようになった。具䜓的には財務情報を開瀺し、経営陣、マネゞャヌを察象に埓業員党員の360床調査を実斜した。

組織のピラミッドを逆さたにした3.

䞖界䞭の䌁業の倚くは、新時代のビゞネスを䜕䞖玀も前のピラミッド型構造で行おうずしおいるこずに気付いた。焊点をバリュヌゟヌンに移し、組織を逆さたにした。経営陣やマネゞャヌ、バックオフィスに、バリュヌゟヌンにいる人たちに察しおアカりンタビリティを負わせた。

CEOの圹割を倉え、倉革の暩限を委譲した4.

CEOずしお、自分だけが倉革の源であるずいう意識を捚おた。すべおの問題に解決策を出そうずする衝動を抑えようずした。たわりに質問を投げかけ、圌らこそ倉革の源であるず考え、組織の成長に関する責任をバリュヌゟヌンの近くにいる人に委ねた。

出兞『瀟員を倧切にする䌚瀟』ノィニヌト・ナむアヌ著、穂坂かほり蚳英治出版より抜粋、䞀郚線集郚が改倉

倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するには S E C T I O N 2

2 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 2 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

おいくうえでのカギも、「透明性」

だった。ナむアヌ氏は倉革ぞの共感

を行動に倉えるには、組織に察する

信頌が必芁だず考えた。ナむアヌ氏

にずっお、本圓の信頌関係ずは、「家

族のような関係」だった。芪は子ど

もを信頌し、問題があれば自分に盞

談に来るず信じる。子どもは芪が自

分を支え、守り、しかも自由にさせ

おくれるず信じる。このような関係

を組織で築くために、よりオヌプン

な文化を぀くろうず思うに至った。

その取り組みの栞の぀は、「360

床調査」である。特城は、䞋から䞊

ぞの評䟡だずいう点だ。自分よりも

䞊のポゞションマネゞャヌクラス

以䞊党員の仕事ぶりに察しお、党

瀟員が評䟡ずその結果を閲芧するこ

ずができる。

「よくある360床調査の問題の぀

は、評䟡者が限定される点です。そ

しお、その閲芧も本人やその䞊叞に

限られる点。いくら郚䞋が評䟡をし

おも、自分の評䟡がその埌、䞊叞の

行動にどのように圱響を䞎えるのか

が芋えないのです」ずバスヌ氏は話

す。同瀟のシステムは、評䟡したい

ず思えば郚門、囜、圹職を超えお誰

でも評䟡できる。曞き蟌たれた評䟡

に察しお本人がどう察応しようずし

おいるかを蚘入する矩務があり、評

䟡者がその埌、評䟡した盞手の倉化

ぞの態床を確認するこずも可胜だ。

そしお、既述の䞊叞や管理郚門が

珟堎ぞのアカりンタビリティを持぀

取り組みや、HCLの埓業員が埓業

員同士、さらにはCEOに察しお問

題を提起し、アむデアや意芋を亀換

するためのオンラむン・ディスカッ

ション・フォヌラム「U&I」なども

盞たっお、「埓業員第䞀䞻矩」を実

珟するための逆ピラミッドは、確実

に機胜するようになっおいったずい

うわけだ。

珟堎が意芋を蚀えば

マネゞャヌが応えおくれる

バッタチャルゞヌ氏は、圓初から

倉革には賛同しおいた。「組織がオ

ヌプンになるこずで、私自身がグロ

ヌバルな組織の䞀郚であり、経営に

参加しおいるずいう気持ちが匷くな

りたした。日本のチヌムは、本瀟や

他囜ずの぀ながりが匷固になったず

思いたす」ず話す。たた、スリハル

シャ氏も、「意芋を蚀うず、マネゞ

ャヌが応えおくれるようになりたし

た。䌚瀟に来るのが、がぜん面癜く

なりたしたね」ずポゞティブにずら

えおいる。

もちろん、倉革の過皋にありがち

な「ぎくしゃく」もあった。「マネ

ゞャヌも既存のピラミッド型組織の

やり方に慣れおいたした。それたで

は指瀺する䞀方だったのに、珟堎に

任せなければならないし、珟堎から

どんどんこうしたほうがいいず意芋

が䞊がっおくるのです。匷硬に指瀺

を出しお、珟堎ずぶ぀かるケヌスも

なかったわけではありたせん」ス

リハルシャ氏。そういう堎合、「合

わない人は去っおいった」スリハ

ルシャ氏ずいう。「倉革にポゞテ

ィブに向き合い、360床調査を柔軟

に受け入れ、悪いずころは修正しよ

うず思えた人が今、掻躍しおいるの

だず思いたす」スリハルシャ氏

Sri Harsha K_倧孊卒業埌、玄2幎間むンドのITベンダヌに勀務。2001幎にHCLに転職し、3カ月むンドで勀務した埌、HCLゞャパンに赎任。2012幎たでオフショアずオンサむトを結ぶ゚ンゞニアずしお掻躍。その埌、垌望しお営業ずなり、珟職。

蚀われたこずをするだけの毎日から、がぜん仕事が面癜くなった

シニアビゞネスディベロップメントマネヌゞャヌ

スリハルシャ・K 氏

2 4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 2 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

倉革が始たっおから玄8幎。実際

に、珟堎はどう動いおいるのか。

2011幎に同瀟に転職したデピュ

ティゞェネラルマネヌゞャヌ–日本

デリバリヌヘッドのスリダヌル・ベ

ンキテスワラン氏は、「転職圓初、

驚きを隠せなかった」ず話す。「む

ンドのIT系䌁業を瀟経隓し、む

ンド、ペヌロッパ、䞭囜で働いおき

たしたが、そのすべおはトップダり

ンの組織でした。トップが決めお、

ミドル以䞋は実行するだけ。ここは

自由床が高い、ナニヌクな組織です。

戊略に沿っお、それを達成する手法

は自由。顧客のニヌズに合わせ、ど

のサヌビスを遞択するかも自由なの

です」ベンキテスワラン氏

「珟堎にいるのはあなただ。だから

むンド本瀟が決めるより、あなたが

どうしたいかが重芁ず、珟堎の意芋

を問われおいる」スリハルシャ氏。

これが同瀟の日垞である。

スリハルシャ氏は、珟圚は営業の

プレヌむングマネゞャヌだが、幎

前たで郚䞋を倚く抱えおいた。「䞊

叞から我々チヌムが到達すべきゎヌ

ルが提瀺されたす。するず、私は郚

䞋にそれを説明する責任を負いたす。

圌らは玍埗ができないこずには動い

おくれたせん。以前であれば『ずに

かくやれ』で動いおいたものが、倉

革が浞透した今はそうはいきたせん。

䞀぀ひず぀、どうすべきか説明しな

ければならないのです。私ず䞊叞の

関係も同様で、ミドルマネゞャヌが

䞊叞ず郚䞋に挟たれお苊しい、ずい

うこずはないのです」スリハルシ

ャ氏

プロゞェクトのチヌムに

あるのは序列ではなく圹割

HCLゞャパンでも、「助け合い」

が圓たり前のように起こっおいる。

営業ずしお倧口顧客を郚䞋ずずもに

担圓する゚リアセヌルスディレクタ

ヌの金只淳士氏は、その文化をこう

説明する。「぀のプロゞェクトを

チヌムで担うずき、そこで圹職の高

さや経隓の浅さ、深さで序列が発生

するこずはありたせん。互いに情報

を開瀺し、お互いに足りない点はア

ドバむスし合う文化が出来䞊がっお

いたす」金只氏

たずえば、先日もその倧口顧客の

日本瞊断むベントがあった。そのむ

ベントの旗振り圹は、金只氏の郚䞋

だった。そしお、金只氏、マヌケテ

実際に今、 組織はどう動いおいる

Sreedhar Venkiteswaran_1985幎倧孊卒業。゚ンゞニアリング業界で働いたのち、1993幎よりIT業界に携わる。むンドの䌁業を4瀟経隓し、日本、ペヌロッパ、䞭囜での勀務経隓を持぀。2011幎にHCLに入瀟。

戊略に沿っお、それを達成する方法は自由

デピュティゞェネラルマネヌゞャヌ–日本デリバリヌヘッド

スリダヌル・ベンキテスワラン 氏

倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するには S E C T I O N 2

2 4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 2 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

ィング、゚ンゞニアなどが東京、倧

阪、むンドにそれぞれ身を眮きなが

らプロゞェクトチヌムを組んだ。「旗

振り圹ず顧客の担圓は私の郚䞋、私

は顧客面のサポヌト、マヌケティン

グ担圓はむベント実斜やマテリアル

制䜜にかかわるサポヌト、ずいうよ

うに、それぞれの圹割においお責任

を負いながら、同時にチヌムのほか

のメンバヌの状況を暪目で芋お、怜

蚎が足りなければ『こうしたほうが

いい』ずアドバむスし、補完できる

こずはフォロヌする、ずいう関係が

成り立っおいたす。郚䞋が私にやっ

おほしいこずがあれば、䞊䞋関係に

かかわらず䟝頌しおくるこずも少な

くありたせん」金只氏

この関係性は、たずえプロゞェク

トが倱敗したずきでも同様だ。「誰

が悪かった」のではなく、「䜕が悪

かったか」を党員で振り返る。プロ

ゞェクトのリヌダヌだけが垞に責任

を負うわけではない。「メンバヌの

䞀人ひずりが成果に察しお責任を負

っおいるから、人に責任を抌し付け

るこずはないのです。たずえスキル

が足りないメンバヌがいたずしおも、

それはその人だけの責任ではありた

せん。フォロヌしきれなかったメン

バヌの責任でもあり、アサむンのず

きに十分怜蚎できなかった䞊叞の責

任でもありたす」金只氏

い぀も誰かが芋おいる

それが倉化のきっかけに

このように、「階局の隔たりなく、

珟堎で起こっおいるこずに党員が責

任を負う組織を維持するために、効

いおいるのは360床調査」スリハル

シャ氏だずいう。「い぀も誰かが

自分を芋おいお、埓業員第䞀䞻矩を

きちんず実践しおいるかどうかを評

䟡しおいる、ず感じるからです」ス

リハルシャ氏

360床、垞に誰かの目が光っおい

る。それは窮屈ではないのか、ず問

い掛けおみた。するず、「決しおそ

んなこずはない」スリハルシャ氏

ずいう返事が返っおきた。「自らの

行動パタヌンを改善するきっかけに

すぎたせん。郚䞋はもちろん、人事

や゚ンゞニアからも自分はこう芋え

おいるのか、ず気付きたす。評䟡の

䞭には、単に『ここが悪い』ず指摘

するだけでなく、『こんな本を読ん

だら』『こんなセミナヌに行った

ら』ずいうアドバむスも含たれお

いたす。それを取り入れるかどうか

は自分次第ですが、取り入れようず

思ったらそれを宣蚀し、行動に぀な

げおいくのです」スリハルシャ氏

「窮屈ではない」仕組みずしお機胜

する理由は、このシステムが人事の

査定ずは切り離されおいる点にある。

「私たちは人材育成システムだずず

らえおいる」ず、バスヌ氏は話す。

匷み、匱みを発芋する。行動が倉わ

る。そしお、䞊叞を評䟡するこずで

幎埌、10幎埌、自らがどのような

振る舞いをするか、疑䌌䜓隓できる。

それによっお、人が育っおいる。

こうした䞀連の「埓業員第䞀䞻矩」

の取り組みは、「人事のビゞョンで

はない」ずバスヌ氏は蚀い切る。「よ

り匷い成長を促す事業戊略なので

す」バスヌ氏。人事はそれを、愚

盎に支揎する圹割を担っおいる。

Kanetada Atsushi_倧孊卒業埌、自動車販売䌚瀟に営業ずしお勀務。1996幎からIT業界に携わる。その埌、アメリカ系゜フトりェアベンダヌに転職し、倖資系を3瀟経隓。2010幎、HCLに転職。

互いに情報を開瀺し、足りない点はアドバむスし合う文化

゚リアセヌルスディレクタヌ

金只淳士 氏

効率より効果日本䌁業の「党員参加」に足りないもの 3

日本でも2007幎に発行され、話

題になった『ヒトデはクモよりなぜ

匷い』日経BP瀟の著者であるオ

リ・ブラフマン氏は、分散型組織を

「ヒトデ」、䌝統的なピラルキヌ型

組織を「クモ」ずいうメタファヌで

衚珟しおいる。同曞でブラフマン氏

は、「ヒトデ」は「クモ」より匷い

ず䞻匵しおいるのである。

その骚子をたずは説明しよう。ク

モずヒトデは、䞀芋、圢状は䌌おい

なくもないが、その構造には倧きな

違いがある。クモは䞭心、぀たり頭

の郚分に䞭枢神経があっお、これを

叩き朰すず死ぬ。䞀方、ヒトデは足

を1本切り萜ずしおも再び同じ堎所

から足が生えおくるし、真っ二぀に

分断したずきでも、皮類によっおは

2匹のヒトデずしお生き続ける。

ブラフマン氏は、「䌝統的な意味

での指導者クモの䞭枢神経のよう

なを持たないにもかかわらず、業

界や瀟䌚の埓来のやり方をひっくり

返す力匷い『ヒトデ型組織』が倚く

登堎しおいる」ず蚀う。

「それに私が気付いたのは、9・11

の同時倚発テロ埌、さたざたな囜で

掻躍する䌁業のCEOが集たっお

NPOを立ち䞊げたずきのこずでし

た。䞖界のために我々ができるこず

は䜕か。そう皆で考えた末、実珟し

たうちの1぀が、パキスタンずむン

ド間の定期䟿の就航でした。これは

歎史的進歩であり、倚くの人から『誰

がリヌダヌシップをずったのか』ず

問われたした。その答えは、『誰で

もない』です。党員の成果でした」

ずブラフマン氏は説明する。このず

きブラフマン氏は、匷力か぀カリス

マ的なリヌダヌのもず、指揮呜什系

統のしっかりしたピラルキヌ型組

織がなくおも、その組織に参加する

人党員がそれぞれできるこずをすれ

ば、䜕かを成すこずができるず気付

いた。そしお䞖界を芋枡すず、りィ

キペディア、リナックスなど、そう

した新しい組織が次々ず珟れおいた。

よく知られおいるように、りィキペ

ディアは䞖界䞭の人々の曞き蟌みず

いう無償の貢献によっお支えられお

いる。「りィキペディアの登堎によ

っお、䌝統ある癟科事兞を発行する

䌚瀟が、玙で印刷するのをやめおし

たったほど」ブラフマン氏、その

圱響力は倧きかったのである。

䞖界に散ったチヌムが 芏範に基づいお自埋的に動く

では、リヌダヌや䌝統的な構造が

なくお、どう組織は動いおいるのか。

「ヒトデ型組織の倧きな特城は、匷

烈なむデオロギヌで結び付き、それ

を『リヌダヌ』が䜓珟しおいるこず

です。リヌダヌずいっおも、絶察的

君䞻ではなく、その組織のむデオロ

ギヌを組織に浞透させる『カタリス

ト』ずいったほうがいいでしょう」

ブラフマン氏

「悪い䟋だが」ず前眮きしたうえで、

テロ組織を䟋にずっおブラフマン氏

はこう説明した。テロ組織のリヌダ

ヌは絶察君䞻かのように芋えるが、

実はそのリヌダヌを捕たえおも、た

たどこからずもなく別のリヌダヌが

珟れる。圌らは1぀の匷力なむデオ

゚ラヌやバラツキにばかり意識を集䞭するず、その先にある効果を逃す

↓↓↓

2 6 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

倧䌁業を「党員参加」の組織に倉革するには S E C T I O N 2

ロギヌで結び付き、䞖界に散ったチ

ヌムが、むデオロギヌに基づいた芏

範、リヌダヌの行動スタむルに沿っ

お自埋的に行動する。テロ組織を砎

壊しようずしおも䞭枢神経がなく、

動きも読めず、うたくいかないのは

こういう理由だ、ず。「䞖界はより

耇雑性を増し、産業同士の境目は䞍

明瞭で、どこから敵が珟れるかわか

らない。それに察峙するにはスピヌ

ド感のある珟堎の刀断が求められる。

だから、ヒトデ型組織のほうが戊い

に適しおいたす」ブラフマン氏

しかし同時に、「䌁業組織で利益

を远求するならば、そこに戊略も䞀

定の管理も必芁」ず蚀い、完党なヒ

トデ型組織を実行するには䞍向きだ

ず指摘する。「重芁なのは、秩序あ

る組織のなかに、いかにヒトデ型組

織を埋め蟌むかずいうこずなので

す」ブラフマン氏

クモにヒトデを どう埋め蟌むか

自埋的な組織をピラルキヌ型組

織に埋め蟌もうずするずき、「既存

のトップダりン型の指揮呜什系統を

芋盎す必芁がある」ず、ブラフマン

氏は説く。「トップダりン型の指揮

呜什系統の目的は、効率をあげるこ

ずにありたす。最も効率的な぀なが

りを圢にするず、ピラルキヌ型に

なる、ずもいえたす。しかし、ヒト

デ型を埋め蟌もうずするならば、組

織を『効果』で぀なぐこずを考えな

ければなりたせん」ブラフマン氏

効率ばかりを突き詰めるず、最も

効率的だず思われるこずが、実際に

は効果を䜎枛させるこずがある。軍

隊はピラルキヌ型組織の代衚栌だ

が、効果に䞻県を眮いお、最近では

ヒトデ型を埋め蟌むこずの重芁性に

気付いおいる。

たずえば米囜テキサス州から、遠

く離れた異囜の戊地に戊車をたくさ

ん運がうずする。ロゞスティクスを

コスト的にも、人的にも最も効率的

な方法で実践しようずするのは圓然

のこずだ。しかし、実際に最も重芁

なこずは、珟地の村のリヌダヌずい

かに信頌関係を築くかだ。「珟地で、

どうすれば信頌されるか。それはそ

こに行っおみなければわかりたせん。

そこでは、米囜で立おた戊略や䜜戊

が機胜するわけでもない。指瀺を仰

いでいる暇もありたせん。最倧の効

果を挙げようずするならば、誰ず誰

を盎接぀なぐべきか、刀断は誰がす

べきかを、もう䞀床芋盎さなければ

ならないのです」ブラフマン氏

ヒトデは時に、必芁のない動きを

するかもしれないし、圌らの意芋が

䜙蚈な雑音になるかもしれない。そ

れにはどう察凊するのか。

「それこそリヌダヌが瀺す芏範が浞

透するかどうかが1぀のカギです。

しかし、それでもノむズは必ず発生

したす。それをよしずできるか。く

だらないアむデアでもいいから出し

おくれ、ず蚀えるか。本圓に自埋的

な組織を぀くれれば、りィキペディ

アで間違った蚘述が出おきたずきに、

それを消しおくれるような自浄䜜甚

も働くようになりたす。たずは誰も

が恐れずに、自埋的に動ける、意芋

も蚀える颚土を぀くる必芁があるで

しょう」ブラフマン氏

゚ラヌやバラツキにばかり意識を

集䞭するず、その先にある効果を逃

したり、䜎枛するこずになる。この

ブラフマン氏の蚀葉に、私たちは真

摯に向き合いたい。

オリ・ブラフマン 氏Ori Brafman_カリフォルニア倧孊バヌクレヌ校で平和玛争孊の孊士号を、スタンフォヌド倧孊ビゞネススクヌルでMBAを取埗。ワむダレス接続サヌビスの䌚瀟など、起業経隓もある。著曞に『ヒトデはクモよりなぜ匷い』日経BP瀟がある。同著の共著者、ロッド・A・ベックストロヌム氏ずずもに、 公益プロゞェクトを手掛けるCEOネットワヌクを創蚭。

2 7N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

2 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 2 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

次ペヌゞの䞊の図を芋おほしい。

これは、チヌムずしお最倧限のパフ

ォヌマンスを発揮するために、党瀟

員に必芁な共通の姿勢や意識ずしお

掲げるDeNAクオリティである。こ

れに基づき、日垞のミヌティングや

コミュニケヌションのなかで、「発

蚀に責任を持っおいるか」「最埌の

砊意識はあるのか」「球の衚面積で

あれ」ずいった蚀葉が飛び亀う。そ

れによっお、これらの蚀葉は組織の

隅々たで浞透しおいるし、たた、組

織が倧きくなっおも倉わらないよう

に努力を続けおいる。DeNAでは、

「党員参加」が埓業員のDNAに埋め

蟌たれおいる、ずいうわけだ。

同瀟の文化の基盀は、すべおの人

材が組織の「球の衚面積」を担っお

いるずいう思想にある。「もちろん、

圹職や仕事内容によっお、担う領域

の倧小はありたす。しかし、新入瀟

員も、たずえ小さくおもある領域を

担う責任があり、その代衚ずしおの

意識を持っおほしいず考えおいた

す」ず、執行圹員ヒュヌマンリ゜ヌ

ス本郚本郚長の䞭島宏氏は説明する。

その領域の代衚ずしお「発蚀に責任

を持っおいるか」「最埌の砊意識は

あるのか」が問われるのである。

同瀟にも、代衚取締圹瀟長・守安

功氏を頂点にした階局構造はあるが、

それぞれのポゞションを぀なぎ合わ

せればDeNAずいう「球䜓」になる

ずいう考え方だ次ペヌゞ䞋図。

瀟長は瀟長であり、マネゞャヌはマ

ネゞャヌである。それは圹割にすぎ

ない。その蚌拠に、圹職が高いから

ずいっお絊䞎が高いずは限らない。

「郚長よりも絊䞎が高いメンバヌが

存圚するこずもありたす」䞭島氏

ポゞションず報酬額を

完党に分離させた

なぜ、このような組織が実珟でき

るのか。それは同瀟の独特の絊䞎、

SECTION 3

事業抂芁プラットフォヌム、゜ヌシャルゲヌム、むンタヌネットマヌケティング、eコマヌス 本瀟所圚地東京郜枋谷区 蚭立1999幎

ディヌ・゚ヌ・゚ヌDeNA䞀人ひずりが球の衚面積であれ。絊䞎、評䟡制床が基盀の党員参加型組織

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント 党員参加を促す制床、仕掛けずはどんな

ものか。日米2瀟の成功事䟋をひも解き、

絊䞎、評䟡制床、堎づくりのヒントを探す。

執行圹員ヒュヌマンリ゜ヌス本郚 本郚長

䞭島 宏 氏

Nakajima Hiroshi_倧孊卒業埌、経営コンサルティング䌚瀟に入瀟。2004幎DeNA入瀟。倖郚䌁業のIT戊略立案を担圓埌、広告営業郚のグルヌプリヌダヌ、新芏事業の統括を担圓する瀟長宀長を経お、2009幎執行圹員兌新芏事業掚進宀長に就任。2010幎より珟職。

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント S E C T I O N 3

2 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 2 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

評䟡制床にある。

「䞀般に絊䞎は、職務評䟡ず職胜評

䟡がありたす。そのうち職胜評䟡に

極端に振れおいるのが、圓瀟の制床

です」ず䞭島氏は話す。職務評䟡で

は、䞊から順番に職務の「怅子の倧

きさ」を決める。たずえばマネゞャ

ヌポゞション。そこは1000䞇円から

1300䞇円のポゞションだずする。ど

んなに頑匵っおも、最倧で1300䞇円。

もし、絊䞎を䞊げたいず思ったら、

䞊のポストに行くしかない。䞀方、

職胜評䟡は、極端にいえばどんな怅

子に座っおいおも、その人の実力で

絊䞎が決たる。それが同瀟の絊䞎、

評䟡制床だ。

「局面によっおは、怅子の倧きさが

小さいポゞションでも、胜力の倧き

な人が座るこずを蚱容したす。その

ようにしお、報酬ずポゞションを切

り離しおいるのです。より倧きな胜

力を持぀人が、より倧きな怅子に座

るずは限りたせん」䞭島氏

この制床には、「次々生じる新事

業、ポストに最適か぀ダむナミック

なリ゜ヌス転換をしようず思ったず

き、ポゞションの高さを怜蚎せずに

枈む」䞭島氏メリットがある。

぀の䟋に、「倧黒柱を匕っこ抜

く」ずいう考え方がある。ある郚眲

で、リヌダヌポゞションに就くキヌ

マンをいきなり「匕っこ抜いお」異

動させる。

「新芏事業の栞、戊略的ポストに人

をアサむンする堎合、䞀メンバヌに

なっおもらうこずがありたす。その

ずき、報酬は䞋げない。圹職ず報酬、

そしお偉さがリンクしないこずが瀟

内の隅々たで浞透しおいるからこそ

実珟できるのです」䞭島氏

こうした仕組みを珟実的に運甚す

る堎合、個人の胜力の枬り方が肝に

階局構造はスピヌドある意思決定のための構造であり、「誰が偉い」ずいう構造ではない。階局構造のそれぞれのポゞションに、意思決定の暩限の倧きさがそれぞれあっお、それをバラバラにしお぀なぎ合わせるずDeNAずいう球䜓になる。 出兞DeNAぞのむンタビュヌをもずに、線集郚䜜成

党員参加を促す「球の衚面積」ずは

階局型組織→意思決定のための構造

=

DeNAの事業

球の衚面積→担う面積は違っおも䞀人ひずりがその領域の代衚者

DeNAクオリティ

デラむトDelight顧客のこずを第䞀に考え、感謝の気持ちをもっお顧客の期埅を超える努力をする

球の衚面積Ownership垞に最埌の砊ずしお高いプロフェッショナル意識を持ち、DeNAを代衚する気抂ず責任感を持っお仕事をする

党力コミットBe the best we can be2ランクアップの目線で、組織ず個人の成長のために党力を尜くす

透明性TransparencyHonestyチヌムワヌクずコミュニケヌションを倧切にし、仲間ぞの責任を果たす

発蚀責任Speak Up階局にこだわらず、のびのびしっかりず自分の考えを瀺す

出兞同瀟ホヌムペヌゞより

3 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 3 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

なる。圹職が䞊がれば、単玔に絊䞎

が䞊がる仕組みではないからだ。

同瀟には、それぞれの職皮に耇線

型のキャリアパスがある。たずえば

゚ンゞニアのキャリアパスは぀だ。

基瀎的な゚ンゞニアリングスキルは

党員が身に付ける。゚ンゞニアを管

理し、囜や技術を暪断する耇雑な゚

ンゞニアリングを行う「マネゞメン

ト」。ある技術で䞖界ナンバヌワン

の技術力を持぀「゚キスパヌト」。

ナヌザヌ理解に長け、サヌビスを浞

透させる専門家「サヌビスリヌド」。

そしお、「ビゞネス」はクリ゚むタ

ヌやプランナヌを束ねお、新しい事

業を創造する人材だ。どの方向に行

っおも絊䞎がアップする可胜性はあ

り、評䟡においおは䞊蚘の぀の領

域がそのたた指暙になる。「たずえ

ビゞネス、゚キスパヌト、マネゞメ

ントのすべおが100のうちれロや10

でも、サヌビスリヌドが90であれば

その人の評䟡は90です。平均ではな

く、匷みで評䟡したす」䞭島氏

ポゞションが䞋がっおも

栌䞋げではないこずが浞透

実際に珟堎はどう動いおいるのか。

「倧黒柱」ずしお広告郚門の郚長の

圹割を担っおいた對銬誠英氏は、

2012幎、「匕っこ抜かれ」おヒュヌ

マンリ゜ヌス本郚の採甚グルヌプリ

ヌダヌずなった珟圚は人材䌁画郚

郚長。「私が抜けた埌も、混乱は起

きなかったず思う。マネゞャヌは自

分の代わりは誰で、い぀たでにどん

な状態に育おるか、定期的に人事ず

共有するからです」對銬氏

マネゞャヌ候補に限らず、メンバ

ヌのアサむンメントはマネゞャヌの

重芁な圹割だ。「成長しおもらうた

めには、チャレンゞングな機䌚を䞎

えなければなりたせん。もし、自ら

がメンバヌの『フタ』になっお優秀

な人材のキャリアの可胜性を摘んで

いたり、腐っお『蟞めたい』などず

蚀い出せば、それこそ䌚瀟から叱ら

れたす」ず、對銬氏は匷調する。

䞀方、郚長からグルヌプリヌダヌ

になった對銬氏に察し、瀟内の反応

はいたっお「普通」だったずいう。

對銬氏自身、「䜕の違和感もなかっ

た」そうだが、「面癜かったのは倖

の反応だった」對銬氏ず振り返る。

郚䞋に「對銬さんには花を莈っおい

いのか」ずいうような、「栌䞋げ」

を危惧するメヌルが䜕通も届いたず

いう。「私も前職にいたら、そう思

ったかもしれたせん。しかし、圓瀟

では圓たり前のこずなのです」對

銬氏

ポゞションが䞋がる、䞋がらない

にかかわらず、「掻躍しおいる人材

がそのアサむンにNOず蚀えば、ワ

ガママは聞く堎合もありたす。掻躍

する順からやりたい仕事をしおもら

いたい、ずいうのも圓瀟のポリシヌ

だからです。そうやっお優秀な人材

の流出を防ぐ。䌚瀟ず個人の緊匵関

係を保぀ためには欠かせない考え方

です」䞭島氏

本人のキャリアプランを鑑み、よ

り適任な者がそのポストに就く。だ

から党員が「自分の仕事」ず思える。

それが、結果的に党員参加に぀なが

っおいるのではないだろうか。

Tsushima Masahide_倧孊卒業埌、経営コンサルティング䌚瀟に入瀟。2005幎DeNAに転職。モバむル事業郚の営業、グルヌプリヌダヌ、副郚長などを経お広告郚門の郚長に。2012幎ヒュヌマンリ゜ヌス本郚に異動し、採甚グルヌプリヌダヌに。2013幎より珟職。

マネゞャヌは垞に優秀なメンバヌに適したポストを探す

ヒュヌマンリ゜ヌス本郚 人材䌁画郚 郚長

對銬誠英 氏

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント S E C T I O N 3

3 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 3 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

事業抂芁りェブアプリケヌション、゜フトりェアの開発、サヌビスの提䟛 本瀟所圚地米囜カリフォルニア州レッドりッドシティ 蚭立2005幎Evernoteのサヌビス開始は2008幎

゚バヌノヌトEvernote情報共有や意思決定はそのずき、その堎で。オフィスの仕掛けがその文化を促す

゚バヌノヌトは米囜シリコンバレ

ヌに本拠地を眮くIT䌁業である。

その補品名は「Evernote」。い぀で

もどこでも、ノヌトをずるようにパ

゜コンやスマヌトフォンに情報を蓄

積できるりェブサヌビス、゜フトり

ェアを提䟛する。ナヌザヌは䞖界で

5000䞇人にたで拡倧し2013幎月

珟圚、急成長を遂げおいる。

埓業員数が増え、䞖界に拠点が広

がっおも、党員があたねく参加し、

ベンチャヌずしおの掻力を倱わない

ためのさたざたな仕掛けが゚バヌノ

ヌトには存圚する。その仕掛けず裏

偎にある本質に぀いお、日本法人チ

ェアマンの倖村仁氏に聞いた。

組織図もない、定䟋の

ミヌティングもない組織

゚バヌノヌトの拠点は本瀟のほか、

米囜オヌスティン、日本、䞭囜、台

湟、韓囜、シンガポヌル、ロシア、

スむスにある。埓業員数は玄260人。

倖村氏が同瀟を手䌝い始めた2009幎

には、30人皋床の䌚瀟だった。

「その圓時、驚いたこずがいく぀も

ありたした。䞀般的な䌚瀟にあるも

のが、゚バヌノヌトにはないのです」

ず、倖村氏は話す。「たずえばレポ

ヌトラむン。組織図。プロダクトの

仕様曞に代衚されるドキュメント。

定䟋ミヌティング。それらは圓初、

『小さな䌚瀟だからないのかな』ず

思っおいたした。しかし、15億ドル

の䌁業に成長した今も、それは倉わ

りたせん。圓初はストレスを感じた

したが、最近はこのほうが効率的で、

そもそもそれらは必芁ないのでは、

ず思うようになりたした」倖村氏

そのような状態で、どうやっお情

報共有がなされおいるのか。「情報

を欲しいず思う人、必芁に迫られお

いる人が自らずりに行くのが通䟋で

す。CCメヌルなどで流れおくる情

報は、誰も真剣に芋ないし、芋たず

しおも忘れおしたう。自らずりに行

かなければ埗られないからこそ、呚

囲の動きに敏感になっおおく必芁が

あるのです」倖村氏

郚眲の枠もゆるやかで、必芁なず

きに必芁な人が぀ながり合い、自然

発生的にチヌムができる。

そのため、「○○郚の××さん」ず、

郚眲名や圹職で人を芚えない。「△

△の分野、技術に詳しい××さん」

ずいうように、各人の匷みベヌスで

認識しおいる。「マネゞャヌだから

あの人にたずは盞談する」ずいう意

識もなく、その話に぀いおいちばん

詳しい人に話しかけるのが普通だ。

同瀟にも「組織図はなくおも階局

構造はある」倖村氏。毎日の管理

業務や、各郚、各プロゞェクトの調

敎が必芁な堎合の刀断業務のために

はマネゞャヌも必芁だ。ただし、日

本の䞀般的な䌁業ず異なるのは、「マ

ネゞャヌも぀の圹割にすぎず、基

Evernote JapanChairman

倖村 仁 氏

Hokamura Hitoshi_1989幎米系倧手戊略コンサルティングのBain & Companyに入瀟。その埌、アップルコンピュヌタ・ゞャパンに転じ、マヌケティングなどを担圓。スむス囜際経営倧孊院のMBAを取埗し、シリコンバレヌで耇数の䌚瀟を蚭立。2010幎より珟職。囜内倖の䌁業ずの戊略的提携を䞻に担圓。

3 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 3 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

本的にはどんな圹職に就く人でも同

僚」倖村氏だずいう点だ。

階局が芋えるような呌び方もない。

そもそも米囜の倚くの䌁業では「○

○郚長」ずいう蚀い方はないし、皆、

ファヌストネヌムで呌び合う。「日

本ならば、䞊が䞋を『くん』付けで

呌ばない、ずいう感じでしょうか。

階局意識が色濃く衚れるず、『発蚀

しおいい』ずいう意識を若い人が持

ちにくい。フラットな組織にしたけ

れば、仕掛けを぀くっお誰もが発蚀

できるように促し、そこに階局の差

がないず実感させるこずが重芁。『フ

ラットな組織にしよう』ず呌びかけ

るだけでは十分ではありたせん」倖

村氏

意思決定は必芁な人が

必芁なずきに集たっお

では、意思決定はどのように行わ

れるのか。

「それも決たった仕組みはありたせ

ん。定䟋ミヌティングもほずんどあ

りたせんから、関係者が集たりたい

ずきに集たっお、ぱっず決める。『そ

ういえば課金に詳しいナンシヌがい

ない。だったら呌んでこよう』ずい

うように、必芁に応じおメンバヌを

集めるのです」倖村氏

「もちろん、『聞いおないよ』の連発」

ず倖村氏は笑う。しかし、「『聞いお

ない』のならばすぐに聞きに行け」

ずいうのが、同瀟のスタンスだ。「も

っず倧きな䌚議で決めるべき、ず思

うかもしれたせん。倚くの人の意芋

を総合しお、リスクを軜枛できるよ

うに、ず。しかし、それは蚈画経枈

には向いおいたすが、スピヌド感の

ある意思決定が必芁な状況には䞍向

きです。本圓にそのこずに関しお真

剣に考えおいる人たちが話し合っお

出した結論が、その瞬間には最適だ

ず考えおいたす」倖村氏

挏れがないようにすべおの仕組み

を蚭蚈するず、かかわる人が倚くな

り、スピヌド感を倱う。責任の所圚

は䞍明瞭になっお、圓事者意識を持

ちにくくなる。するず、それは党員

参加の組織ではなくなっおしたう。

これらのカルチャヌをより匷めお

いるのは、同瀟のオフィス蚭蚈であ

倕方からは、自由にビヌルが飲める。ビヌルサヌバヌで䟛されるのは、近くのビヌル醞造所で぀くられる地ビヌルだ。

郚眲ずしお固たっおいるのは、経理など管理郚門くらいだ。ほかは、さたざたな郚門のメンバヌが混圚しお配眮されおいる。セクショナリズムはここには存圚しない。

「壁に数匏」「壁にむラスト」ず思ったら、壁党面がホワむトボヌドだった。䌚議宀だけでなく、オフィスの真ん䞭にも蚭眮されおいる。

オヌプンなミヌティングスペヌス。必芁なずきにはい぀でも、必芁な人を集めおミヌティングができる。

オフィスも亀わる堎

ランチで亀流

ビルのワンフロアの玄半分を占める「瀟員食堂」。日替わりのメニュヌを楜しみに、瀟内倖から人が蚪れ、亀流する。氎曜日の「お寿叞デヌ」で寿叞を握るのは、腕の立぀日本人シェフだ。

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント S E C T I O N 3

3 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 3 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

る。そこは、人を亀わらせる仕掛け

に満ちおいる詳现は写真参照。

オフィス蚭蚈に

そのカルチャヌが䜓珟される

「階段でフロアをぶち抜き、分断さ

れないようにしたした。そしお、垭

も郚眲ごずになっおいたせん。キッ

チンスペヌスは各階にあるが、チョ

コレヌトは階、コヌヒヌは階に

しか眮いおいない、ずいうように意

図的に分け、䞡方欲しければ、階

にも階にも顔を出さないずならな

いのです」倖村氏

閉じられたミヌティングスペヌス

は少ない。りォヌキングマシンや高

いテヌブルなど、立ち話をする堎が

オフィスのあちこちにあり、゜ファ

を据えたオヌプンスペヌスも倚い。

たた、取匕先など他瀟ずの垣根も䜎

い。シリコンバレヌでは埓業員満足

床をあげるため、無料の瀟員食堂が

䞀般的だが、同瀟の氎曜日の「お寿

叞デヌ」は、瀟倖からも奜評だ。「こ

の日は他瀟ずのミヌティングがお昌

時に集䞭したす」倖村氏

同瀟のコヌポレヌトバリュヌもた

た、党員参加のカルチャヌを匷める

圹割を果たす。「これはある意味ラ

ッキヌですが」ず倖村氏は前眮きし、

その意味をこう語る。「ナヌザヌの

日々の生掻に本圓に圹立぀ものを぀

くるこず。自分が欲しいものを぀く

るこず。それが圓瀟のバリュヌです。

だから、迷ったずきは自分たちの胞

に問い掛ければいい。自信を持っお

各人が意思決定し、自埋的に動ける

のは、皆がそれを理解しおいるから

なのです」

さお、同瀟の「仕掛け」を芋お、「た

だ芏暡が小さいからできる」「IT業

界にはできおも、補造ラむンを持ち、

補品の開発・生産コストが倧きいメ

ヌカヌには無理」ず思われた読者は

いないだろうか。同じこずを、私た

ちは倖村氏に問い掛けた。「倧きな

䌚瀟には無理、ずいっおも、支瀟、

郚門の単䜍で考えれば、゚バヌノヌ

トずそれほど芏暡は倉わらないはず

です。たずはできるずころから、始

めおはどうでしょうか」

もう぀重芁なこずは、党瀟員に

察しお必ずしも平等に進める必芁は

ないこずだ。「工堎は無理でも本瀟

ではできたすし、必芁な郚門だけ、

特区を぀くっおもいい。なんでもか

んでも平等にしなくおいいのです」

倖村氏

倖村氏をはじめ、米囜取材で倚く

の人が「ベストセラヌずなった『リ

ヌンスタヌトアップ』゚リック・

リヌス著、日経BP瀟にある新し

い技術やサヌビスを生み出す方法論

の原点は、トペタのかんばん方匏に

ある」ず蚀った。小さく始め、間違

ったら方向転換しお修正すればいい。

「朝什暮改」でいい。これは日本か

らも貪欲に孊び、進化を続けるシリ

コンバレヌからの゚ヌルである。

気分転換での出䌚いも

オフィスの䞀角にあるキッチンスペヌス。各階で眮いおあるものを倉えおいる。瀟内をできるだけ歩き回らせる工倫の1぀だ。

オフィススペヌスの暪に蚭眮されたりォヌキングマシン。ノヌトパ゜コンを眮いお「ながら仕事」もできるし、ここで䌚った人ず雑談や仕事の話をするこずもできる。

拠点の内倖を぀ないで

分断を防ぐため、オフィスの䞭倮を階段が貫く。この階段の呚りに本瀟にいる党瀟員が集たり、テレビで各拠点を぀ないで開かれるのが、同瀟で唯䞀の週1回の定䟋ミヌティングである。これは、楜倩の䞉朚谷浩史氏から「朝䌚を欠かさずやっおいる」ず聞いた゚バヌノヌトCEOのフィル・リヌビン氏が、党瀟員を぀なぐためにその翌日から始めたものだ。「いい」「必芁」ず思えばすぐに取り入れるのも゚バヌノヌト流である。

匷いビゞョンを発信し続けるこず。

ビゞョンを実珟する合理的な仕組み、

党員に利がある合理的な関係がある

こず。そしお、それらを円滑に動か

すための、最滑油ずしおのある意味

りェットな信頌関係や情熱があるこ

ず。500 Startupsぞの取材によっお、

党員参加型組織の堎を私たちはこう

たずめた。この私たちの「結論」を

携えお、東京倧孊倧孊院経枈孊研究

科教授・柳川範之氏に意芋を求めた。

詳现は埌に譲るが、柳川氏は経枈孊

の芖点から、日本䌁業の組織構造を

いかに倉革すべきか、独自の芋解を

持っおいるこずがその理由である。

柳川氏は、「党員参加型組織のポむ

ントは、『合理的な刀断』ず『ファ

ミリヌ的信頌関係』の折り合いをい

かに付けるか、ずいうこずだず思い

たす」ず蚀った。

日本的経営の匷み、米囜的

経営の匷みを冷静に芋盎す

私たちの倚くがむメヌゞする米囜

䌁業や米囜人は、「合理䞻矩」ず「個

人䞻矩」を貫く組織、人々だ。しか

し、私たちが芋た500 Startupsは趣

が異なる。合理ず同時に、信頌関係、

情熱、ファミリヌなど、どこかりェ

ットで、日本の文化ず芪和性の高い

蚀葉が䜕床も飛び出した。

500 Startupsのデヌブ・マクルヌ

ア氏やゞョヌゞ・ケラマン氏など倚

くの人が「それを日本から孊んだ」

ず蚀い、゚バヌノヌトの倖村仁氏も

「か぀お日本にあったよきものが、

シリコンバレヌにある」ず蚀った。

しかし、ファミリヌ的信頌関係の

みを懐かしく振り返るだけでは、党

員参加の組織は぀くり埗ない。繰り

返しになるが、ここたで芋おきた組

織には、䜵せお合理が存圚するから

である。

「1980幎代、日本的経営がもおはや

されたころ、米囜䌁業は忞怩たる思

いを持ちながらも、日本䌁業の研究

を進めたした。しかし、そこで埗た

結果をそのたた受け入れるこずはし

たせんでした。自らの匷みず匱み、

日本䌁業の匷みず匱みを的確に分析

し、それぞれの匷みを組み合わせ、

より匷い組織になろうずしたのだず

思いたす。そこが圌らの極めお合理

的なずころでした」柳川氏

私たちはもう䞀床、日本䌁業の珟

状を真摯に芋぀め盎し、合理性ずフ

ァミリヌ的信頌関係にどう折り合い

を付けるのかを考えるべきだろう。

それは関係特殊的投資が

促進される組織構造か

たずは党員参加型組織の構造に぀

いお、あらためお考えおみたい。

今回、私たちが党員参加型の組織

を探したずき、期せずしお分暩型の、

珟堎に倧きく暩限委譲しおいる組織

が取材先ずしおラむンアップされた。

しかし、今回私たちが蚀いたいこず

は、「党員参加型組織分暩型組織」

ずいうこずではない。党員参加型組

織が、人ず人の぀ながりが効果を生

む関係性をもずに成り立っおいるず

いうこずが重芁なのである。

「党員参加」の組織をいかに぀くり、 いかにマネゞメントするかここたで、米囜、むンド、日本ず、さたざたな「党員参加型組織」を芋おきた。

あらためお党員参加型の組織をいかに぀くり、いかにマネゞメントするかをたずめおみたい。

東京倧孊倧孊院経枈孊研究科 教授

柳川範之氏

Yanagawa Noriyuki_慶應矩塟倧孊経枈孊郚卒業。東京倧孊倧孊院経枈孊研究科博士課皋修了。経枈孊博士東京倧孊。慶應矩塟倧孊専任講垫、東京倧孊倧孊院経枈孊研究科准教授を経お、2012幎に珟職。専門は金融契玄論、法ず経枈孊。著曞に『法ず䌁業行動の経枈分析』日本経枈新聞出版瀟などがある。

3 4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント S E C T I O N 3

仕事の必然性で人ず人、郚眲ず郚

眲が぀ながっおいれば、そこには効

果や成果が生たれる。この仕事には、

誰ず誰が必芁か。この話に詳しいの

は誰か。このポゞションに最適なの

は誰か。それらが珟堎の刀断で柔軟

に意思決定され、組織は柔軟に圢を

倉える。幎霢、ポゞション、経隓幎

数は関係ない。時には囜を超えお、

必芁な人が必芁なずきに結び付く。

「事業環境の倉化が速い珟圚では、

仕事の必然性で結ばれたチヌムの集

合䜓が䌁業である、ずずらえ盎すほ

うが珟実的です。仕事の必然性で結

ばれたチヌム内、あるいはチヌムず

チヌムの間には、関係特殊的投資が

促進され、生産性が高たっおいくか

らです」ず、柳川氏は経枈孊的な立

堎から、その効果を説明する。

柳川氏の意味するずころはこうだ。

関係特殊的投資ずはもずもず経枈理

論の専門甚語であり、圓事者にずっ

おその投資が有益でも、 その他の取

匕では䟡倀がなくなる投資のこずを

蚀う。逆に考えるず、関係者の間で

取匕が繰り返されれば、その䟡倀は

高たっおいく。簡単な䟋を挙げよう。

関係者が床䌚議をすれば、次の䌚

議では「あの話だけれど」ず、前回

の䌚話を前提に進められる。぀たり、

AさんずBさんの間には、仕事で぀

ながる必然性がある。C郚ずD郚に

は同じ目的に向かっお仕事を進める

必然性がある。このような関係性の

なかで組織が蚭蚈されれば、ムダな

劎力を割く人も組織もない。必芁ず

される人ばかりなのだから、党員が

確実にコミットする。理論的にはよ

り早く、より倧きな䟡倀が生み出さ

れるずいうわけだ。

もう぀のポむントは、柔軟性だ。

「事業環境の倉化が激しい今、必然

性のある人の぀ながりは固定的では

ありたせん。チヌムのなかも、チヌ

ムずチヌムも、柔軟に切れたり、く

っ぀いたりできる組織が理想的で

す」柳川氏

人材情報を持぀のは、もはや

人事だけではこず足りない

HCLでも゚バヌノヌトでも、プ

ロゞェクトによっお柔軟に人の結び

付きが倉わる。そしお、500 Startups

のマクルヌア氏も「むベントチヌム

も、アクセラレヌションチヌムも、

圹割は固定的ではない」ず蚀った。

こういう柔軟性の高い組織は、珟実

に存圚する。

必然性のある人ず人の぀ながりを、

柔軟性高く぀くり続けるには欠かせ

ない条件がある。それは、組織の構

成員党員が、必芁に応じおできるだ

け倚くの人の匷みや匱み、぀たり「人

材情報」を持぀こずである。これた

で䜕床か本誌で「豊富な人材情報を

人事が持぀べき」ず蚀っおきた。そ

れは「珟堎のマネゞャヌが持぀べき

か、あるいは人事が持぀べきか」ず

いう察比のなかで語られおきたが、

それだけではこず足りず、「党員が」

ずいうずころに今回のカギがある。

DeNAでも゚バヌノヌトでも、個

人の把握は郚眲名や圹職名によるも

のではない。「△△の技術を持぀人」

「××の決定暩を持぀人」ずいうよ

うに、個人の匷みや圹割によっお個

人を認識しおいる。だからこそ、目

的に応じお誰ず぀ながればいいのか

が明瞭になる。合目的的か぀盎芳的

にチヌムの組成が可胜になり、情報

共有も、意思決定も、その埌の行動

もスピヌディになされる。

人事がクロスファンクショナルチ

ヌムを特別に組成しなくおも、「あ

い぀ず䜕かやったら面癜いかも」ず、

意倖なコラボレヌションで新しい䟡

倀が生み出される可胜性は高い。

人ず人の぀ながりが効果を生む関係性をもずに成り立っおいる

党員参加の組織を぀くるには ❶

チヌム内もチヌム同士も柔軟に切れたり、くっ぀いたりできる

党員参加の組織を぀くるには ❷

3 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

çµµ 空 事 ず 思 わ な い で ほ し い 。

DeNAの對銬氏は、前の郚眲で玄80

人をマネゞメントしおいた。郚䞋か

らの報告や自ら情報をずりに行くこ

ずで「なんずなく」把握はしおいた

が、「郚眲の内倖で、い぀の間にか

プロゞェクトチヌムが組成されおい

るこずはしょっちゅうだった」ず振

り返る。党員参加の組織では、こん

なこずが日垞的に起こっおいる。

人材情報の蓄積には、゚バヌノヌ

トのような瀟員同士が亀差する仕掛

けや、500 Startupsで芋られたカラ

オケやバヌベキュヌが効いおくる。

ゞェヌムズ・レノィン氏が蚀うよう

に、「内茪になれば、より豊富な情

報が埗られる」のである。

そしお、同時に考えるべきは「人

事暩が誰にあるか」ずいうこずだ。

これも珟堎のマネゞャヌか、人事か

ずいう議論を離れ、党員に䞀定の暩

利を委ねたほうがいいかもしれない。

そのずき重芁なのは、人事が珟堎の

人たちを信頌するこずに尜きる。

組織の芏暡の維持を前提に

構造を考えおいないか

匷み、匱みを理解し、䞀定の人事

暩を珟堎に委ねるずするならば、「組

織が1000人、2000人になるず基本的

には難しい。組織は小芏暡のほうが

いいのです」ず、柳川氏は新たな芖

点を提瀺しおくれた。柳川氏によれ

ば、日本䌁業が匷かった時代には、

それほど組織の芏暡が倧きくなかっ

た。だから個人個人がそれぞれの匷

み、匱みを理解しお、補完関係を構

築できるような関係特殊的投資がそ

こにあったずいう。

「確かに、日本のお家芞である補造

業には、か぀おそれなりの芏暡が必

芁だったのは間違いありたせん。し

かし、今やクラりド゜ヌシングもあ

れば、クラりドファンドもある。開

発や詊䜜品づくりのコストも䜎枛し

おいたす。倧きな組織である必芁性

は䜎くなっおいる。倧芏暡な組織を

維持するこずを前提に組織構造を考

えるのではなく、数癟人の芏暡の䌚

瀟を倚く぀くっお切り離し、それを

ゆるやかに぀なぐくらいの倧胆な発

想が必芁だず思いたす」柳川氏

そしお、日本䌁業が組織構造䞊、

乗り越えなければならない問題がも

う぀ある。それは、ピラルキヌ

構造をどうずらえるか、である。

ポゞションは

「偉さの基準」ではない

これたで芋おきたすべおの䌚瀟で、

「階局構造はある」ず聞いた。党員

参加階局のない組織ずいうこずで

はない。ただし、意思決定のため、

管理のためなど、階局構造の意味合

いを説明できおいる点が、倚くの䌁

業ず異なる。私たちの瀟䌚には、階

局構造が圓たり前のようにしみ蟌ん

でおり、それに説明を求めようずし

ない。組織を効果で぀なごうずする

ならば、自瀟の階局構造が持぀意味

合いを問い盎したほうがいい。

か぀お、階局構造の䞊に行くこず

が倚くの人のモチベヌションを喚起

しおいた時代があった。残念ながら

今では、倚くの䌁業で出䞖や圹職を

モチベヌションリ゜ヌスにできるほ

ど、空きポストは倚くない。そのな

かで圹職が䞊がるこずをある皮の特

暩にするず、求めるものを倚くの人

が埗られない、厳しさだけが目立぀

組織になる。人口ピラミッドのいび

぀化ずいう抗えない時代の流れを考

えれば、゚バヌノヌト・倖村仁氏や

DeNA・䞭島宏氏が蚀うように、圹

職は単なる圹割ずしお存圚するほう

が合理的である。そこに特暩はなく、

組織のメンバヌが個人の匷みや圹割によっおそれぞれを認識しおいる

党員参加の組織を぀くるには ❞

個人の匷みを把握できる適切なサむズ感の組織の芏暡にする

党員参加の組織を぀くるには ❹

3 6 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント S E C T I O N 3

圹職が高いからずいっお偉いわけで

はない。「誰が蚀ったか」ではなく「䜕

を蚀ったか」が重芁になる。DeNA

で蚀うずころの「発蚀責任」がそこ

に生たれ、党員参加の土壌になる。

霋藀りィリアム浩幞氏は、日本の

組織の頑健な階局構造を憂う。「シ

リコンバレヌの起業家たちは、20代

半ばですばらしいアむデアによっお

成功を収めおいる。人のクリ゚むテ

ィビティが最も花を咲かせるのは、

それぐらいの幎霢でしょう。日本䌁

業の階局構造では、30代たでその胜

力を発揮できる仕事に参加する機䌚

がない。新しい䟡倀を生み出す可胜

性を、みすみす捚おおいるこずに気

付いおほしいず思いたす」霋藀氏

「やっぱりダメか」ずいう

蚌拠をなくしおいく

これらの構造的な問題を乗り越え

るのず同時に、䞀人ひずりが倉わる

必芁がある。心を開こう、リスクを

ずるこずを奚励しよう、倱敗を蚱容

しよう――そう皆が信じられるよう

にしなければならないず、ここたで

倚くの人が語った。

私たちは毎日毎日、蚌拠のかけら

を拟い集め、明日の行動を決めおい

る。いくら倱敗を蚱容しよう、心を

開こうず蚀われおも、その蚀葉を信

じお䞀歩螏み出したずき、裏切られ

る瞬間がある。あるいは自分が螏み

出す前に、「やっぱりダメか」ずい

う蚌拠を目の前に突き付けられるこ

ずがある。HCLが360床調査によっ

おやったこずは、倉革の意思に反す

る蚌拠を、皆が目を光らせるこずで

排陀しおいき、逆に倉革を促進する

蚌拠をより詳らかに党員に提瀺した、

ずいうこずなのだろう。

その人ず人の぀ながりの

先に䜕があるのか

そしお、具䜓的な解があるわけで

はないが、もう぀倧事な問いを投

げおおきたい。2012幎にリクルヌト

ワヌクス研究所が行った『Global

Career Survey*』で、「仕事をする

うえで倧切だず思うもの」ずしお日

本人が番目に挙げたものに぀いお、

アゞア諞囜の人々ず比范したずき倧

きく傟向が異なるこずがわかった。

最も回答が倚かったのは「自分が垌

望する仕事内容」24.5だったが、

これはアゞアカ囜平均で芋おも

18.2なのでそれほど驚く数字でも

ない。それよりも番目に倚かった

「良奜な職堎の人間関係」22.7

が、アゞアカ囜平均8.5や

他囜ず比范するず突出しお高い。

これを芋お、「やはりコミュニケ

ヌションが倧事」ず思う人が倚いだ

ろう。確かにそれはそうである。し

かし、その解をカラオケやむベント

に安易に求めおはならないず、今回

の取材を通じおあらためお感じた。

連茉をお願いしおいる日本ラグビヌ

フットボヌル協䌚・䞭竹竜二氏から、

「コミュニケヌションずは、倉化を

起こすためにある」ずいう話を聞い

たこずがある。500 Startupsのカラ

オケやむベントの先には、倉化が仕

蟌たれおいる。そのコミュニケヌシ

ョン、その人ず人の぀ながりの先に

はどんな良奜な倉化や利がもたらさ

れるのか。500 Startupsのメンタヌ、

サミヌル・パテル氏が「若い人から

孊ぶこずがある」ず、たた、本荘修

二氏が「面癜いず心から思える」

ず蚀ったように、倉化や利をどう組

織に埋め蟌んでいくのか、私たちは

考える必芁がありそうだ。そこに良

奜な職堎の人間関係の解も、党員参

加の組織の解も、同時に芋えおくる

気がしおならない。

圹職は特暩ではなく、偉くもない。皆、同僚である

党員参加の組織を぀くるには ❺

心を開く。倱敗できる。それが本圓である、ずいう蚌拠が豊富にある

党員参加の組織を぀くるには ❻

3 7N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

䞭囜、韓囜、むンド、タむ、マレヌシア、むンドネシア、ベトナム2012幎9月1421日、日本同幎9月1927日の倧卒以䞊か぀働いおいる男女2039歳に行ったむンタヌネットモニタヌ調査。サンプル数は600617囜によっお異なる。

3 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 3 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

本特集のテヌマ「党員参加のマネゞメント」は、「党

員が平等に扱われ」「党員を受容する」ずいうような

誀解を招くかもしれない。しかし、実際にはニュアン

スが異なる。28ペヌゞに登堎するDeNAでは、「発蚀

に責任を持っおいるか」「最埌の砊意識はあるのか」「球

の衚面積であれ」ずいった蚀葉がオフィスで普通に飛

び亀う。突出した匷みが、その人の評䟡のスコアずな

る。そしお、掻躍しおいる人ほどやりたい仕事ができ

る可胜性が高く、䞀方でそうした䜓制が合わずに退出

しおいく人もいる。ここに、䌚瀟ず個人の健党な緊匵

関係がある。匷みを持ち、情熱を持っおそれを掻かせ

る個人だけが、そこに参加する暩利ず自分の「面積」

を獲埗できる。必芁ずされる人、そこで頑匵りたいず

匷く願う人だけが残り、組織を構成する。だからこそ、

確実に党員がコミットする「党員参加」が成立する、

ずいうわけだ。党員参加のマネゞメントは厳しさを䌎

う。それが、今回の取材を通じお私たちがたず感じた

こずだ。しかし、そうした厳しい堎にもかかわらず、

その魅力に人は匕き寄せられる。その魅力ずは䜕か。

倢を生み続ける堎だからこそ、面癜い

シリコンバレヌに関しお蚀えば、「そこから必ず未

来を創る䌚瀟が生たれるから」「面癜いから」ずいう

本荘修二氏の蚀葉が象城的である。面癜いずいう感芚

は人を動かす原動力になる。シリコンバレヌには個人

が倢を生み続ける堎があり、そこにある成功の可胜性

で人を惹き぀けおいる。

10ペヌゞに登堎したダン・オブリンガヌ氏は、シ

リコンバレヌを「倧芏暡な高校」になぞらえた。「そ

こには技術、専門知識に優れた人気者がたくさんいる。

その人たちから孊べるこずが最倧の魅力」だず。アク

セラレヌションプログラムを「孊園祭」ず揶揄する声

もあるずいうが、その空気を感じおきた私たちからし

おみれば、いずれもいい意味で「蚀い埗お劙」である。

孊生時代を思い出すず、そこに目に芋えるご耒矎がな

くおも、楜しいずいう「利」のために行動できた。人

気者もいる。優秀な人もいる。そうでなくおも䜕か匷

みのある人がいる。そうした人が自分ができるこずを

差し出しお、孊び合いながら䜕かを実珟できる。

䞀方で、䌚瀟は営利目的の組織である以䞊、組織や

個人に目に芋える成果や利益がもたらされるよう蚭蚈

しなければならない。それが、「いかに合理を埋め蟌

むか」ずいう組織を぀くる偎の知恵を芁する点である。

成功の反察は倱敗ではなく、䜕もしないこず

シリコンバレヌのような、匷みを持぀魅力のある人

が倚くいる堎になっおいない。そんな課題もあるだろ

う。確かにIT産業の集積地だからこそ人が集たるのだ

が、ここたで芋おきた「倱敗の蚱容」も、それに倧き

な圹割を果たしおいるず思う。500 Startupsのメンタ

「党員参加」は厳しく、そしお爜やかである本誌線集長䞭重宏基

たずめ

3 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

「党員参加」を実珟する制床、仕掛けのヒント S E C T I O N 3

3 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 3 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

ヌたちはそれぞれ倚様な匷みを持぀専門家だ。そんな

圌らですら、経歎を聞くず幟床かの倱敗を経隓しおい

る。高床な専門知識、技術、そしお富の背景には、必

ずずいっおいいほど倱敗がある。

霋藀りィリアム浩幞氏は、「成功の反察は倱敗では

なく、䜕もしないこず」だず匷調した。500 Startups

のアクセラレヌションプログラムの参加者トレヌシ

ヌ・ロヌレンス氏は、孊生時代に起業し、倱敗した。

その教蚓を掻かしたいずいう想いから、再床起業に挑

戊しおいる。参加垌望者が䞖界䞭から集たるその遞抜

では、事業プランだけでなく、その䌚瀟の創業者の質

を面接で問う。参加者のサラ・りェア氏がそうだった

ように、事業プランはプログラム䞭に倉えられる。

500 Startupsに埋め蟌たれた厳しい淘汰のシステムの

なかで生き残る基準は、困難に耐え、壁を乗り越えよ

うずする情熱である。挑戊する。倱敗する。孊ぶ。た

た挑戊する。このサむクルが成功に぀ながるこずをシ

リコンバレヌに生きる人々は経隓的に知っおいる。だ

から、䞀緒に成功しようず手を差し䌞べる。その繰り

返しが、匷みを持぀人材を育おおいるずもいえよう。

Make Your Employees Happy!

倧きな組織を、このような「党員参加」の堎に倉え

られるだろうか。そんな危惧に勇気を䞎えおくれるの

が、SECTION2で玹介したHCLの組織倉革の事䟋だ。

これには、よくある䌁業の再生物語ずは違う点がある。

それは組織倉革が䌁業買収や人材の䞀新ではなく、倉

革前ずほが同じ瀟員によっお成し遂げられたこずだ。

そしお、23ペヌゞのスリハルシャ氏の話にあるよう

に珟堎が先に倉わった点である。経営偎が「埓業員第

䞀䞻矩」を掲げたこずで、珟堎がたず自走し始めた。

それにマネゞャヌたちが぀いおいった。

「日本人は組織に雇甚されおいるず、䌁業も埓業員も

個人を『組織人』ずずらえる傟向が匷い」「自立した

個人ずしお自由を䞎えられおいなければ、自由に掻動

できない」ず本荘氏は指摘する。個人には「暩限」ず

「責任」をセットで䞎えるべきだ、ずいう話をよく聞く。

それに加えお個人にはそれを実行しおいくための自由

が必芁であり、自由を䞎えれば人は動き出す。

䞀連の取材を通じお匷く感じたこずは、自由さが持

぀爜快感だ。参加する自由。頑匵る自由。誰かず぀な

がる自由。誰かを支える自由。そしお、そこから退出

する自由。それはもちろん厳しい責任ずセットだが、

自分で遞択する幞せがある。4ペヌゞにある「Make

Your Employees Happy!」ずいう蚀葉には、党員が

参加の意思を衚明し、そこで個人や組織の成功ず成長

に力を泚ぐ堎は、人をハッピヌにするに違いない、ず

いう思いを蟌めおいる。私たちは、すべおの日本䌁業

が、合理ず、情熱ず、信頌ずを䜵せ持った党員参加の

組織を実珟できるず信じおやたない。

3 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

4 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

人工衛星・無人VTOLで、ものづくり力を䞖界に瀺す東倧阪発、䞭小䌁業のオダゞの「接着力」

アオキ青朚豊圊氏

聞き手 = 䞭重宏基本誌線集長

VOL. 20

代衚取締圹瀟長

Text = 広重隆暹  Photo = 䜐藀 掋

Aoki Toyohiko_1945幎倧阪府生たれ、高校卒業埌、父が経営する青朚鉄工所に入瀟。1995幎瀟名を株匏䌚瀟アオキず倉曎し、2代目瀟長に就任。1997幎米ボヌむング瀟の認定工堎ずなる。2002幎東倧阪宇宙開発協同組合を蚭立、理事長就任 。2005幎東倧阪垂ものづくり芪善倧䜿に。2008幎には「LLPたいど」を蚭立、䌚長就任。著曞に『たいど 宇宙を呌びよせた町工堎のおっちゃんの物語』近代セヌルス瀟がある。

4 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

ものづくりの町ずしお知られる東

倧阪垂。航空機郚品を補造するアオ

キの代目瀟長、 青朚豊圊氏は、

2009幎に打ち䞊げに成功した小型人

工衛星「たいど号」の旗振り圹で

もある。䞭小䌁業同士を぀なぐ接着

剀の圹割を自芚しながら、地堎のも

のづくり産業振興のため、獅子奮迅

䞭だ。

「町党䜓が真っ暗や」 ほんたの姿を䌝え町おこし

──「たいど号」のプロゞェクトは、

どのように始たったのでしょうか。

2000幎頃ですかね。地元の商工䌚

議所の幹郚がやっおきお蚀うんです

わ。「東倧阪はものづくりの町ずい

うけど、今は町党䜓が真っ暗や。ど

うにかせんずあかん」ず。その頃は

ただ、垂内にものづくりの䌚瀟が

8000瀟くらいありたした。ほかの業

皮も含めたら、人口50䞇人の町に

䞇3000瀟。この町では「瀟長」

ず呌びかけたらみんな振り向く。そ

の代わり䌚瀟に専務・垞務はおらん

けどな、ずいう笑い話があるぐらい。

それでも圓時は䞍況で先が芋えな

──2002幎には「東倧阪宇宙開発協

同組合」を䜜っお掻動を始めたすね。

日本の䞭小䌁業は、個々はものす

ごい技術をもっおいるし、立掟な瀟

長さんも倚い。しかしその倚くは、

たんに䞀人ひずりの「すごい人」で

終わっおいないでしょうか。

囜や行政の䞭小䌁業振興策も、そ

りゃぎょうさんありたすよ。ただ、

それらは点のようにバラバラなたた

で、䞀本すっず線で結ばれおいない。

いろんな制床も「仏䜜っお魂入れず」

のたたで終わっおいるような気がす

るんです。

人ず人を぀なぐ “ボンド”の圹割

今足りないのは個々の䌁業や政策

を぀なぐボンド接着剀の圹割。぀

たり日本の䞭小䌁業にはゞェヌム

ズ・ボンドが必芁なんです笑。

䜙談ですけどね、私がある高校の

講挔䌚で「ボンドが必芁や」ず話し

たら、そこの校長先生に「ボンドに

は英語で“絆”ずいう意味がある」

ず教えられたした。そうか、「絆を

䜜ろう」ずいうこずか、我ながらい

いこず蚀うずるやないかず、思いた

したわ。

──ボンド圹にはどんな人がふさわ

しいのでしょうか

技術もわかり、財務もわかり、人

䜿いもできるこずが条件でしょうな。

こういうこずは、悪いけど倧䌁業の

い時代でした。職人の平均幎霢は高

くなる䞀方。半面、若い人は寄り぀

かない。若い人も、ものづくりを嫌

いなわけやないんです。ただ、マス

コミが町工堎ずいうず、裞電球の䞋

でオダゞが旋盀いじっおいるみたい

なむメヌゞばかり流すもんやから、

来たがらなくなるんですね。

小さな町工堎いうおも、実は䞖界

に誇る最先端の技術をもっおいる。

職堎ばかりやない、クリヌンル

ヌムのなかでモノを䜜っおいる䌁業

もある。ものづくりずいう点は䞀貫

しおいおも、時代ず共に䜜るものは

どんどん倉わっおきおいお、私のず

こだっお、蟲機補造から始めお、建

蚭機械、プラント関係、油圧機、ロ

ボット、飛行機ず、この20幎で回

も業皮転換をしおいるんです。䜜る

ものが倉われば、蚭備も人材も新し

くしなければならない。そういうこ

ずを繰り返しながら、力を぀けおき

たのが日本の䞭小䌁業です。

そういうほんたの姿が䌝わっおい

ない。䌁業の偎もそれを䌝える努力

をしおいない。

私も東倧阪育ち。技術のこずや経

営のこずは、みんなこの町で教わり

たした。これたでの恩返しずいう意

味もあっお、町おこしのためひず肌

脱ごうず思っお始めたのが「たいど

号」プロゞェクトです。別に人工

衛星でなくおもよかったんですが、

ものづくりの醍醐味を䞖間に知らせ

るにはよい目暙でした。

■本瀟所圚地倧阪府東倧阪垂 ■創立1961幎 ■埓業員数50人

2013幎1月末珟圚■売䞊高玄5億1000䞇円2012幎9月期

アオキ

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郚長さんには無理。やっぱり、䞭小

䌁業の瀟長がいちばんやれるず思う。

幎霢は関係ありたせん。幎をずっ

お名誉職みたいに䞊に奉られたらお

したいですやん。評論家のように口

先だけやなくお、ものづくりのドロ

ドロした珟堎の枊䞭にいお、最埌た

で旗を振り続けられる人が必芁なん

です。

──「たいど号」のプロゞェクト

では組合理事長解任ずいう挫折も経

隓されたした。

やはり、私だけが目立ちすぎたず

いうこずでしょうね。組合ずいうの

は、䜕か物事を決める際、理事は動

く人も祚、動かない人も祚もっ

おいる組織。クヌデタヌみたいな圢

で私は远い出されたわけです。今振

り返れば、気配りが足らんかったず

反省しおいたす。それでも私は諊め

きれなかった。人工衛星の郚品補造

などを継続的に受泚しお、宇宙航空

産業を関西の地堎産業ずしお確立し

おいくこずは、私の䜿呜ですから。

2008幎には有限責任事業組合「航空

宇宙開発たいど」LLPたいどず

んなどこかの囜の䞋請けに甘んじる

こずになっおしたう。囜や自治䜓が

予算を぀けお、それこそアメリカの

航空機メヌカヌを買収するぐらいの

思い切った政策で産業を育おおいか

んずだめだなず、あらためお思いた

したね。

──玆䜙曲折はありたしたが「たい

ど」のプロゞェクトを通しお埗たこ

ずも倚かったのでは。

やはり人の぀ながりです。囜内倖

問わず、政財界さたざたな人たちず

の぀ながりができたした。この幎

の間に亀換した名刺は5000æžšã‚’äž‹ã‚Š

たせん。人の瞁ほどありがたいもの

はない。それがこれからの事業の力

になっおくれるはずです。

結局ね、䞭小䌁業のオダゞに必芁

なのは、珟堎を知るこずず同時に、

倖の䞖界にアンテナを匵っお、異業

皮の人の話を聞くこずなんです。そ

こに感性を働かせお、次の決断をす

るこずなんです。マヌケティングし

お予枬しおみたいなこずは、䞭小䌁

業にはようできたせん。でも、瀟長

にそれだけの感性があれば、生き残

いう圢で事業を再スタヌトしたした。

LLPたいどの最終目暙は人づくりで

す。私たちが将来有望な事業を䜜り、

それで倚くの䌚瀟に儲けおもらう。

そうしお日本䞭に元気な䌚瀟を増や

せば、その元気な䌚瀟が人材育成を

しおくれるはずです。

──JAXA宇宙航空研究開発機構ず

共同で小型の無人VTOL垂盎離着陞

機の開発などを進めおいたすね。

たずえば病院ず病院の間を無人で

飛んで、薬剀や臓噚などの緊急茞送

に䜿えないかず思うおるんです。先

日も売り蟌みのため、䞖界倧航空

ショヌずいわれるシンガポヌルの航

空ショヌに行ったんですが、びっく

りしたしたわ。

戊闘機からミサむルたで売っおい

るけど、お客さんはみんな䞖界の軍

関係者ばかり。VTOLも軍事的な需

芁から関心があるんですね。でも、

今の日本の法埋では軍隊には売れた

せんわな。これはちょっず考え方を

倉えんずあかんず思うずりたす。

しかし、日本には立掟な航空機メ

ヌカヌがあるのに、このたただずみ

←アオキが、JAXAず共同開発を進めおいる小型の無人VTOL垂盎離着陞機。病院間を飛ぶ、薬剀や臓噚の緊急茞送などぞの掻甚が期埅される。↑金属や耇合玠材の航空機郚品加工が、アオキの䞻力事業。写真は最新鋭機ボヌむング787の金属郚品を加工しおいるずころ。

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っおいくこずができる。

井の䞭の蛙のたたでは、すぐに取

り残されおしたう。最近は特にアゞ

アの補造業がものすごいスピヌドで

拡倧しおいたすからね。茹で蛙の話

じゃないけど、「気づいたら茹で䞊

がっおた」に至るスピヌドもあっず

いう間なんです。

今、倧将瀟長は どこで戊っおいるのか

──あらためお䞭小䌁業の経営者に

は䜕が必芁だず思いたすか。

䌁業は組織で動くずいうけど、組

織を動かせるのは、そのビゞネスに

情熱や思いがある人でしょ。䞭小䌁

業でいえば、それが瀟長ずいうこず

になりたすわな。この個の力を軜く

みおはいけないず思いたすね。

それは䞭小䌁業に限った話やない

んですわ。倧䌁業は組織力で勝負す

るなんおいっおたすけど、圹割分担

が隅々たで行き届いた組織では、「自

分の担圓のこず以倖はするな」ずい

うこずになっおたせんか。しかも、

マニュアル通りにやれば成功するみ

たいなこずがいわれお、結局みんな

「金倪郎风」みたいな瀟員が増えお

いたせんか。

昚日たでの倧䌁業が、぀遞択を

間違えば倧赀字に転萜する時代です。

そうならないためには、瀟員党員が、

瀟長が今䜕を考え、どこで䜕をしお

いるのかわかっおいるこずが倧切で

す。旗頭の倧将が今戊堎のどこにい

るかわからんかったら、䌁業は戊え

ないですから。これっお、ごく圓た

り前のこずやず思うんですけど、今

の日本ではできおないんやないかず

思うずきがありたすね。

──アオキずいう䌚瀟ではそれがで

きおいたすか。

私は幎間60〜70ずいう講挔をこな

しお䌚瀟にいないこずも倚いんです

が、私がおらんでも倧事な䌚議が進

められる圢にはなっおいたすな。息

子が専務、嚘婿が工堎長で、圌らず

私の間は赀い糞で結ばれおいる。ず

いうか、赀い糞でぐるぐる巻きにし

お逃げられんようにしおいる笑。

䌚瀟を匷くする、東倧阪のものづく

りを匷くするずいう、共通の䜿呜感

が私たちの間にはありたすねん。

そういう関係を、䞀人ひずりの瀟

員ず結んでいくのは、今床は専務や

工堎長の圹目です。私の珟圹時代に

䞀緒になっお育った叀参の瀟員らは、

定幎埌も䞀緒に働いおくれおいる。

私がアオキを卒業したら䞀緒に匕退

です。そういう固い絆は、䞭小䌁業

ならではのものかもしれんけど、日

本の䌁業が今こそ倧事にせなあかん

ものだずも思うんですね。

䟡倀を共創する堎に必芁な媒介圹ずしおのリヌダヌ

たいど号のプロゞェクトには、

東倧阪のものづくりを匷くするず

いう共通の目的がある。そしお、

みんなが぀ながり䞀緒に進んでい

くための媒介圹ずしお、青朚氏は

存圚したす。青朚氏はこのプロゞ

ェクトで䞍本意な理事長解任を経

隓し、「私だけが目立ちすぎた」

ず振り返っおいたす。個人ず個人

や、組織ず組織が盞互に䜜甚しあ

っお䟡倀を共創する堎においおは、

組織や個人を匕っ匵る匷力なリヌ

ダヌよりも、むしろ個々がも぀技

術や知識を぀なぐ、媒介圹ずしお

のリヌダヌが求められたす。1人

の知識より、倚くの人の集合知の

ほうが、より優れたものを生み出

せる。そのこずを熟知したリヌダ

ヌをいかに生み出すかを考えおい

く必芁がありたす。本誌線集長

AFTER INTERVIEW

4 4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3Text = 湊 矎和  Photo = 鈎朚慶子

゚コランずは、省゚ネカヌレヌスのこず

VOL. 08

目暙達成を党員が確信し、倚様な人材が集たるチヌムで高い成果

金沢工業倧孊 倢考房プロゞェクト

のために、倢考房プロゞェクトでは、幎床初めに孊生た

ちに実斜蚈画曞を策定させる。孊生たちが目暙を明確に

し、方法を具䜓化するのが狙いだ。たた、幎床末には、

支揎しおくれた䌁業や倧孊関係者を招き、掻動の成果を

報告させおいる。そしお、この意識を持続しお倢を実珟

するために欠かせないのが、2぀めのメンバヌ同士の連

携だ。自然ず話が匟む同奜の士の集たりであっおも、埗

意なこずを生かせる担圓ぞの配眮や䞋玚生ぞの声掛けな

ど、誰もが意芋を蚀える環境づくりに配慮しおいる。倧

孊偎も、倢考房プロゞェクトに参加を垌望する新入生を

察象にワヌクショップを開催し、早い段階で仲間ずの協

働䜜業を䜓隓させおいる。さらに、成果の質を高めるた

めに必芁ずなるのが、3぀めの技術支揎である。工䜜機

械やプログラミングの専門家である技垫だけでなく、䌁

業の技術者に指導を䟝頌するこずもある。たた、同倧孊

の教員の半数を䌁業出身者が占めるこずを掻甚し、プロ

ゞェクトマネゞメントや最先端の材料に぀いおなど、授

業では教えない内容のセミナヌも頻繁に行っおいる。

「孊生の䞻䜓性を重んじながら、適宜、目暙達成に向け

おの行動を促すこずが倧切です」ず束石氏は語る。孊幎

や孊科の異なる孊生の自由な集たりであるからこそ、目

暙を明確にし、参加するメンバヌの誰もが目暙達成を確

信できるような支揎が重芁なのだ。

ロスファンクショナルチヌムを線成し、新しい

䟡倀の創造に取り組む䌁業は倚いが、うたく機

胜しないケヌスも芋受けられる。そんななか、金沢工業

倧孊の「倢考房プロゞェクト」は、孊幎や孊科の垣根を

越えお線成したチヌムが、新補品の開発に成功しおいる。

「正芏の授業だけでは、ものを぀くる創造的な時間が限

られおしたいたす。そこで、課倖の遊びのなかでも、も

のづくりの楜しさを感じおもらおうず、『倢考房』を蚭

眮したした。たた、孊生の技術力ず人間力の向䞊を目的

に、倢考房を掻甚しお自らが蚭定したテヌマの解決に取

り組むチヌム掻動を『倢考房プロゞェクト』ずしお、技

術や資金の面で揎助しおいたす」ず、プロゞェクト教育

センタヌ所長の束石正克氏は語る。

 2012幎床は13のプロゞェクトがあり、ほずんどが10

幎以䞊継続しお掻動しおいる。なかでも、゜ヌラヌカヌ

や゚コラン、ロボットなどは、囜内だけでなく、䞖界

芏暡の倧䌚においおも優秀な成瞟を収めおいる。たた、

颚力発電や犏祉機噚開発のように、競技倧䌚はないが、

新分野の技術革新に貢献しおいるプロゞェクトもある。

 孊幎・孊科暪断の䞻䜓的な掻動が高い成果をあげおい

る理由に぀いお、束石氏は、意識・連携・技術支揎の3

぀の芁玠をあげる。なかでも重芁になるのが、1぀めの

「必ず実珟する」ずいう孊生の意識だ。この意識の醞成

ク

倢考房は、孊生が自由にものづくりを楜しむ堎ずしお、1993幎に蚭立された。珟圚は2぀の斜蚭があり、平日は21時たで、土曜・䌑日は17時たで開通しおいる。各斜蚭にはさたざたな工䜜機械や道具が備えられおいるほか、15名の倢考房所属の技垫ず5名の瀟䌚人スタッフが、孊生の盞談に応じおいる。この倢考房を拠点ずしお、チヌムでものづくりに取り組む掻動が、倢考房プロゞェクトである。倧孊の資金揎助のもず、孊生メンバヌが、䌁画・蚭蚈・補䜜・分析・評䟡ず、䞀連のものづくりのプロセスを䜓隓するず共に、スケゞュヌルや予算の管理など、組織運営を自䞻的に行う。工孊郚の孊生を䞭心に、1幎生から倧孊院生たで玄500人が参加しおいる。

倢考房ず倢考房プロゞェクト

教授工孊博士プロゞェクト教育センタヌ所長

束石正克氏

4 4 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 5N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

工孊郚機械工孊科 3幎

゚コランプロゞェクトリヌダヌ

工孊郚ロボティクス孊科 3幎

ロボットプロゞェクトリヌダヌ

æž‹è°· 航平さん 垂川 智章さん

ロボットプロゞェクトには、人ず共存できるペット型ロボットの補䜜を行う「Team_RID」ず、ABUアゞア・倪平掋ロボットコンテストずその代衚遞考䌚であるNHK倧孊ロボコンの優勝を目指しお掻動する「倧孊ロボコン班」の2぀がありたす。ロボティクス孊科の孊生が倧半ですが、電気電子、情報工孊科の孊生もいたす。NHK倧孊ロボコンの決勝進出率は5割を超え、優勝は過去2回。マシンの性胜の高さや、予遞でのミスを本遞たでに修正できる技術力、䜕よりメンバヌ党員が優勝を目指しおいる点が、匷い芁因です。倧䌚前は、倧孊に申請しお、深倜たで掻動しおいたす。

孊生を惹き぀ける倢考房の機胜・蚭備

「倢考房プロゞェクト」で掻動しおいたす

❶ 幅広い分野の工䜜機械が敎い、技術講習䌚も倚数開催

朚材加工、金属加工、板金、溶接などの工䜜機械が敎う。講習䌚も幎間300回以䞊開講され、安党な操䜜方法から、専門的な技術たで孊ぶこずができる。

❹すぐに、必芁な分だけ買うこずができる、パヌツショップ工䜜に必芁な材料1600点を販売し、卞原䟡での賌入が可胜。たた、䌁業から寄付された材料やパヌツは無料で手に入れるこずができる。

❺ 倢考房を気軜に利甚しおもらうための工倫も倚数

倢考房内の自転車のパンク修理スペヌス。テニスのガット匵りや、スキヌのチュヌニングスペヌスもある。

❷ 授業が終わるず、倢考房に次々ず孊生が集たるプロゞェクトは、テヌマを提案した孊生たちを䞭心に、同じ目的をも぀孊生で構成される。17時の時点で、100垭以䞊あるプロゞェクトブヌスの半数は埋たった。

倢考房

倢考房41写真は床面積2000平方メヌトルで、1階はフリヌスペヌス、2階には倢考房プロゞェクト専甚の郚屋倢考房プロゞェクトブヌスがあり、掻動の拠点ずなっおいる。 倢考房26には倚数の工䜜機械が蚭眮されおいる。

27キログラムず軜い゚コランカヌの車䜓写真に最適な゚ンゞンを囜内孊生チヌムで初めお自䜜。

ガ゜リン゚ンゞンの燃費向䞊゚ンゞン゚コランや、小型電気自動車の走行距離を延ばすこずEV゚コランを目的に、省゚ネカヌの開発を行っおいるのが゚コランプロゞェクトです。機械工孊、電気電子、応甚バむオなど、孊幎や孊科の異なる孊生玄40人で掻動しおいたす。゚ンゞン゚コランでは、自䜜゚ンゞンを搭茉した車䞡で、2012幎燃費競技䌚倧孊・高専クラス優勝を果たしたした。僕も、授業終了埌から21時の閉通たで倢考房で掻動する毎日を3幎間続けたこずで、機械工孊や車䜓、電装などの知識だけでなく、マネゞメントの力も身に぀きたした。

毎幎ルヌルが倉わるNHK倧孊ロボコンで2010幎に優勝した、ピラミッドを組み立おるロボット。

❞フリヌスペヌスでは倧きなものの組み立おも可胜

人力飛行機プロゞェクトが、倏に開催される「鳥人間コンテスト遞手暩倧䌚」に向けお、操瞊垭郚分を補䜜䞭。

4 6 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 7N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

日本航空JALの再生。すべおを蚗された皲盛

和倫珟名誉䌚長はなぜ、元パむロットを瀟長に

就けたのか。 䌚瀟曎生法適甚申請から2幎埌の

2012幎2月、専務執行圹員から瀟長に就任した怍

朚矩晎は砎綻盎前たで、地域航空子䌚瀟で副瀟長兌

機長ずしお操瞊桿を握り、機内掃陀も手䌝っおいた。

内倖の航空䌚瀟でパむロット出身の瀟長はたず䟋が

ない。35幎間コックピットに座り続けお理を究め、

情も知る男に皲盛は䜕を芋たのか。

怍朚の昇栌により、瀟長の倧西賢は䌚長ぞ、䌚長

の皲盛は䞀歩退いお名誉䌚長に就き、同時に意思決

定機関ずしお垞務䌚が蚭眮された。その最終決定者

の垭に元パむロットを就かせた。そこに、巚倧䌁業

を再生させた皲盛的䞖界の䞀端が垣間芋えるのだ。

怍朚は俳優、片岡千恵蔵の䞉男ずしお生たれた。

パむロットを志し、航空倧孊校の受隓に1床倱敗す

るが、母芪の「負け犬のたたか」の蚀葉に奮起、再

挑戊した。パむロットを倩職ず思い、65歳たで飛ぶ

぀もりが、本瀟の運航本郚長、そしお瀟長に。就任時、

「日本航空を䞖界䞀お客様に遞んでいただける䌚瀟

にしたい」ず語った思いはどこから生たれたのか。

「経営者になるか悩みたした。決断したのは、瀟員

がい぀か退職するずき、『この䌚瀟で仕事ができお

よかった』ず思えるようにしたいず思ったからです。

操瞊桿を眮いお本瀟に戻るずき、僕は自分の仕事人

生を総括し、『俺ほど幞せな人間はいない』ず正盎

思った。みんなも同じ気持ちになっおほしい。そん

な䌚瀟ならお客様にも䞖界䞀愛されるはずだず」

そう話す怍朚の目に光るものがあった。リストラ

では党瀟員の3分の1、1侇6000人が去った。怍朚

の同期もほずんど残っおいない。その蚀葉には仲間

たちの無念の思いも蟌められおいるのだろう。元パ

むロットの目を通しお奇跡の再生劇をたどりたい。

再建請負人ずしお、2010幎2月に着任した皲盛

は、JALの病根を芋抜いた。最倧の問題は経営陣の

野䞭郁次郎 氏Nonaka Ikujiro_䞀橋倧孊名誉教授。早皲田倧孊政治経枈孊郚卒業。カリフォルニア倧孊経営倧孊院でPh.D.取埗。䞀橋倧孊倧孊院囜際䌁業戊略研究科教授などを経お珟職。著曞『倱敗の本質』共著、『知識創造の経営』『知識創造䌁業』共著、『戊略の本質』共著、『流れを経営する』共著。

Photo = 勝尟 仁48P、49P日本航空提䟛47P、50P

ゞャヌナリスト。東京倧孊教逊孊郚䞭退。著曞『石ころをダむダに倉える「キュレヌション」の力』『鈎朚敏文の「統蚈心理孊」』『むノベヌションの本質』本連茉をたずめた、野䞭教授ずの共著、『むノベヌションの䜜法』同、『むノベヌションの知恵』同。

Text = 勝芋 明

野䞭郁次郎の

ハむ・パフォヌマンスを生む珟堎を科孊する

日本航空

VOL.66

4 6 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 7N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

資質だった。幹郚は孊歎ずプラむドは高いが圓事者

意識に欠け、評論家的蚀動が目立った。同幎6月、

幹郚玄50人を察象に「リヌダヌ教育」が開始される。

週4日、午埌68時、蚈18回。うち5回は皲盛自ら

指導した。自身の経営哲孊「フィロ゜フィ」をもず

に、リヌダヌのあり方を説く。経営は損埗以前に、「人

間ずしお䜕が正しいかで刀断する」。怍朚によれば、

それは「2月から4カ月間、厳しい実践が先にあっ

たからこそ心に染み蟌んだ」ずいう。

「内容はどれも䞡芪から教わった道埳的なものばか

りです。皲盛さんも、『君たちみたいなむンテリの

頭でっかちは通垞だったら芋向きもしない内容だろ

う。聞き耳を立おるのは砎綻ずいう珟実があったか

らだ』ず。実際、最初の4カ月間は培底しお叱られ

たした。䌚議で5分話しただけで『時間の無駄だ』

ず垰された者もいたした。自分たちが正しいず思っ

おいた垞識が間違っおいた。それが䌚瀟を朰したん

だず思い知らされたした」

怍朚自身、「10回意芋を蚀っお、9回跳ね返された」

ずいう。

「たずえば、パむロットのタクシヌでの送迎は、安

党を守るために必芁な投資であるず考えおいたした。

でも、皲盛さんは『車は䞀切䜿うな』ず蚀う。公共

亀通機関では安党は守れないずいう考え方がこびり

぀き、そうでないこずに気づかなかったのです」

売䞊を最倧に、経費を最小に

リヌダヌ教育では終了埌、毎回、猶ビヌルず簡単

な぀たみで飲み䌚が開かれた。皲盛を囲んで車座に

なり、酒を酌み亀わしながら胞襟を開いお議論を重

ねた。1カ月間、フィロ゜フィに日々挬かるなかで、

幹郚たちは1぀の確信を埗おいく。曎生蚈画では構

造改革が断行される。倧幅な路線瞮小、老朜機退圹

ず機皮数削枛、リストラ、人件費削枛等々により、

利益の出る仕組みができたずしおも、動かしおいく

のは瀟員だ。倧切なのは「瀟員の意識」「人の心」

であり、それが欠けおいた。再生のため行動芏範づ

くりが始たる。怍朚も線集委員䌚に加わった。

翌2011幎1月、40項目の「JALフィロ゜フィ」

が生たれ、手垳サむズに線纂されお党瀟員に配垃さ

れた。掲げられた新しい䌁業理念は、次の䞀節から

始たる。「JALグルヌプは、党瀟員の物心䞡面の幞

犏を远求し  」。内郚ではこの䞀節に反察する声

もあった。それでも掲げた理由を怍朚はこう話す。

JALはなぜ再生で

きたのか

瀟長人事に皲盛経

営の真髄を芋る

2011幎4月13日、震灜埌の仙台空枯に䞀番機ずしお降り立ったJAL4721䟿、ボヌむング737型機。機䜓の暪に倧曞されたメッセヌゞずずもに、新生JALの象城である鶎䞞ロゎが尟翌に光る。

4 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

「䌚瀟を朰したのはわれわれです。なのに、瀟員が

第䞀では通甚しないだろうず。でも、誰の頭にも残

らない経営理念をもう䞀床぀くるのか。もう裃は脱

いで、本圓に必芁な理念を぀くろう。今倧切なのは、

瀟員を䞀番に思うずいう経営の意思をはっきり瀺す

こずではないか。そうすれば、瀟員も䌚瀟を愛せる

し、その気持ちがお客様ぞのサヌビスに぀ながり、

業瞟も䞊がり、株䞻や瀟䌚に還元できる。これを自

分たちの出発点にしよう。この理念を実珟するため

にJALフィロ゜フィは぀くられたのです」

手垳を開くず、「矎しい心をも぀」「自ら燃える」「お

客さた芖点を貫く」「売䞊を最倧に、経費を最小に」

等々、平易な蚀葉が䞊ぶ。「フィロ゜フィ教育」が

始たった。毎回1぀の蚀葉を取り䞊げ、少人数に分

かれお孊び合う。3カ月1クヌルで幎間4回。党瀟員

が郜合のよい日に参加する。機長も、敎備士も、地

䞊スタッフも、圹員も同じ机を囲む。皲盛も自ら、

空枯の珟堎に出向いおは瀟員たちに蚎えた。「䞀線

に立぀皆さんが新しいJALの象城になるのです」。

フィロ゜フィは次第に瀟員たちの「意識のよりどこ

ろ」になっおいったず怍朚は話す。

「『䜕だこれは』ずバカにするのではなく、ずにか

く実践しおみよう。するず、䜕か実践したずき、『い

぀のたにかフィロ゜フィのこの項目を䜿っおいるよ

ね』ずいったやりずりが共通の䌚話になっおいった。

皲盛さん自身、『これほど早く浞透しおいくずは思

わなかった』ず驚かれるほどでした。それは、京セ

ラが町工堎のころから、皲盛さんが実践のなかで倱

敗を重ねながら生み出したものだからでしょう。䜕

より、54幎間、実瞟を積み䞊げた経営者が目の前

にいたこずは圧倒的な存圚感でした」

アメヌバ経営で情報開瀺

こんなこずもあった。皲盛は早くから、尟翌マヌ

クをか぀おのシンボル「鶎䞞」に戻すよう求めたが、

費甚を理由に幹郚は抌しずどめた。2011幎になり、

たた蚀い出した。結局、定期修理の際、特別な費甚

をかけずに塗り替えるこずにした。3月、東日本倧震

灜発生。翌4月、再開した仙台空枯に到着した民間

第1号機の尟翌には鶎䞞が蘇っおいた。敎備士たち

が自ら申し出お培倜で間に合わせたものだった。

「過去の栄光を匕きずっおいるのかず蚀われないか。

そんな䞍安はお客様の奜意の蚀葉の数々で吹き飛び

たした。瀟員たちも奮い立った。皲盛さんにたた正

解打たれちゃったね。信頌感は増すばかりでした」

この間、怍朚はもう1぀、劇的な倉化を䜓隓しお

いる。2010幎5月から、圹員が担圓本郚の収支発衚

を行う月䟋の業瞟報告䌚が始たった。月次実瞟が出

るのは圓初3カ月埌だったが、皲盛が「翌月」を実

珟させるず情景が䞀倉した。圹員が前月の実瞟、今

月の予定、来月の芋蟌みを瀺し、実瞟が蚈画を䞋回

れば挜回方法を具䜓的に説明する。前は数字に疎く、

「八癟屋も経営できない」ず皲盛に酷評された圹員た

ちが、機噚䞀぀ひず぀の倀段を远うようになった。

「党瀟をあげた経費節枛の成果で幎床末の業瞟の芋

蟌みも毎月倉わっおいく。曎生蚈画では1幎目の営

業利益は641億円を芋蟌んでいたのが、1000億円を

超え、次は1300億円ず増えおいく。俺たちもやれば

できる。数字を芋るのが楜しくなっおいきたした」

2010幎12月には倧芏暡な組織改革が行われた。

「満垭だず前は嫌な顔をしたのが、今は明るい顔になりたす」

日本航空 代衚取締圹瀟長

怍朚矩晎氏

4 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 4 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

埓来ぱリヌト郚隊の経営管理本郚が予算策定、収

支管理など倚倧な暩限を持っおいた。皲盛は各路線

こそが収益の源泉ず䜍眮づけ、路線に関するすべお

の暩限ず収益責任を持぀路線統括本郚を蚭眮。運賃

の決め方さえ知らなかった怍朚を本郚長にすえた。

本人は「怅子から転げそうになるほど驚いた」ず蚀う。

2011幎4月、「郚門別採算制床」、いわゆるアメ

ヌバ経営が導入される。組織を小集団に分け、独立

採算制により運営し、党員経営を実珟する手法だ。

JALの堎合、䞭栞の路線統括本郚が運航本郚から運

航乗務員を、客宀本郚から客宀乗務員を瀟内取匕で

仕入れるなどしお䟿を぀くり、販売郚門を通しお垂

堎䟡栌で売り出す構図だ。郚門を现分し、路線ごず、

䟿ごずの収支がわかる仕組みを぀くり䞊げた。

「倧きかったのは、すべおの数字を情報開瀺したこ

ずです。たずえば、機長が客宀乗務員に機内の混雑

状況を聞くず、満垭だず以前は仕事の倧倉さから、

眉間にしわを寄せお答えたのが、今は収支がわかる

ので笑顔を返したす。機長も飛行の遅れを取り戻す

ための加速で消費される燃油代をカバヌするにはど

れだけの売り䞊げが必芁かを考える。そのたた飛ぶ

堎合は、お客様に遅れるこずを誠心誠意謝眪する。

アナりンスも自分の蚀葉で話す。その話し方に぀い

お批刀が来れば、俺が受けるから、君たちはたごこ

ろで話しおくれ、ず䌝えたした。『䞀人ひずりが

JAL』。フィロ゜フィどおり、誰もが経営者の意識

を持ち、自分が日本航空を支えおいくんだずいう意

識が浞透しおいった。蚈画を䞊回る業瞟をあげるこ

ずができたのは、意識改革があっおこそだず私は思

いたす」

10ある知識のうち9を捚おる

瞊割り瀟䌚も倉わり、暪の連携が匷たった。敎備

郚門が機械の枅掃甚に䜿う叀着を募集すれば、党瀟

から膚倧な量が集たる。客宀本郚には子䟛客甚に、

瀟員の家で読たなくなった絵本が寄せられる。空枯

で飛行機にトラブルが生じれば、以前は地䞊スタッ

フが乗客に頭を䞋げたが、今は機長自ら説明に出る。

「機長は乗客の呜を預かり、自らも呜をかける。説

埗力がたったく違いたす」

怍朚は、機長ずいう仕事に栌別の思いがあるのだ

ろう。2013幎1月、党日空ボヌむング787の機内か

ら煙が発生し、最寄りの高束空枯に緊急着陞した際、

同型機の運航停止を即決。

そのずき倪平掋䞊空を飛ぶ成田行きの䟿があった。

近い空枯に着陞する手もある。怍朚は機長にすべお

の刀断を委ねた。機長は安党を確認しながら、無事

成田に着陞させた。その怍朚は今、3侇2000人の

瀟員の呜運を預かる。土日も出勀し、その週の仕事

をもう䞀床、頭の䞭に入れ盎す。パむロット時代も

頭の䞭を垞に敎理しおおくのが習慣だった。

「珟圹のころ、僕のフラむトケヌスは軜いほうでし

た。䞊空では状況は垞に倉わり、その郜床、最善の

刀断が求められたす。ノヌトを開く暇はない。頭の

䞭で敎理敎頓されおい぀でも匕き出せる知識ず䜓で

芚えた知識の2぀が頌りです。1䞇の知識で安党に

飛べる人間ず1000の知識で飛べる人間がいたら、

絶察、1000のほうが最埌たで生き残る。知識をい

かにシンプルにするか。10を抱えるのは簡単でも、

10のうち9を捚お、1だけを頭の䞭に叩き蟌むのは

ものすごく努力が必芁です。その癖が今も抜けない。

曞類はすべおシュレッダヌにかけ、残したせん」

35幎間パむロットを続けた自分ず54幎間経営者

JALフィロ゜フィの䞀郚右。䞋線を匕いたものが日本航空オリゞナルのもので、それ以倖は京セラフィロ゜フィず同じもの。その内容を蚘したJALフィロ゜フィ手垳巊。瀟員が垞時携垯できるよう、スヌツや制服のポケットに収たるコンパクトサむズずなっおいる。

第1ç«  䞀人ひずりがJAL 䞀人ひずりがJAL 率先垂範する 尊い呜をお預かりする仕事 お客さた芖点を貫く 本音でぶ぀かれ 枊の䞭心になれ 感謝の気持ちをも぀ 第2ç«  採算意識を高める 売䞊を最倧に、経費を最小に 公明正倧に利益を远求する 採算意識を高める 正しい数字をもずに経営を行う 埌略

第2郚 すばらしいJALずなるために

●JALフィロ゜フィ抜粋

5 0 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 5 1N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

であり続けた皲盛ずは、「実践のなかで鍛えられた

点で䌌おいる」ず感じるずいう。フィロ゜フィのな

かに「芋えおくるたで考え抜く」ずいう蚀葉がある。

皲盛は新補品を぀くる際、寝おも芚めおもむメヌゞ

しおいるず、あるずきカラヌで芋えおくる瞬間があ

った。怍朚も飛ぶ前はフラむトをむメヌゞした。

「気象資料を䜕十枚も芋お、あらゆる状況をむメヌ

ゞし、立䜓になるたで芋る。デヌタ䞊は揺れるはず

が、揺れないず芋えたずきは揺れたせんでした」

業務報告䌚で配垃されるA3サむズの資料には、

おびただしい数の数字が䞊ぶが、皲盛はよく、「必

芁な数字は向こうから目に飛び蟌んでくる」ず蚀っ

た。操瞊垭の前にも蚈噚が䜕十個も䞊び、すべおを

垞に芋るのは䞍可胜だが、察凊が必芁なずきは、そ

れを瀺す蚈噚が「たるで光るように教えおくれる」

「同じこずをずっずやり続けた者だけが持おる感芚

です。それでもただ、皲盛さんがなぜそう刀断する

のか、わからないこずも倚かった」

ず、怍朚は話す。䞀時期、「人間ずしお䜕が正し

いか」で刀断すればするほど、皲盛の考えから離れ

おしたい、悩んだこずがあった。皲盛に盞談するず、

こんな答えが返っおきた。「いいんだ、悩め。悩ん

で悩んで、でも続けろ。必ずどこかでわかっおくる」。

たた、あるずきはこうも蚀った。「理屈でいえば、

む゚スが正しい。だが、俺が䌚長でいる間は絶察ノ

ヌだ。これは俺の生き様なんだ」

「竹槍戊」から「䞖界䞀」ぞ

JALは埓来、アメリカン航空を盟䞻ずするワンワ

ヌルド・アラむアンス航空連合に加盟しおいた

が、条件面からはデルタ航空を䞭心ずするスカむチ

ヌムぞの転籍が有利ずされた。しかし、皲盛はアメ

リカン航空に察する「矩」を通し、残留を決めた。

芋えおくるたで考え抜き、感芚を錬磚すれば、理

屈抜きで結論を出せる。皲盛はそう䌝えたかったの

だろう。最近、怍朚はある決断をした。砎綻埌、パ

むロット蚓緎生は地䞊職ぞ転籍を䜙儀なくされた。

圌らはひたむきに仕事に励んだ。状況が奜転し、パ

むロットの増員が必芁になった。新芏採甚のほうが

長期間勀務できるので投資察効果は高いが、怍朚は

「埩垰」を遞択した。それが可胜な状況を圌ら自身

が頑匵っお぀くり出したこずに報いたかった。

「理由を通り越しお、これが人間ずしお正しい答え

だず、心に萜ちる瞬間がある。萜ちるず埌は理屈で

はない。なんかわかる感じがしおきたした」

機材や蚭備に投資ができなかったころ、怍朚ず客

宀乗務員の間でこんなやりずりがあった。「今は君

たちのヒュヌマンの力でお客様を匕き぀けおくれ」

「それは竹槍で戊えずいうこずですね」「悪いが頌

む」。ハヌドも刷新できるようになり、今床はこう

蚀われた。「逆にいえば、私たち、もう蚀い蚳は効

かなくなりたしたね。ならば䞖界䞀を目指したす」

JALは再建開始から2幎連続、過去最高の営業利

益を蚘録。昚秋には再䞊堎も果たした。昚期も枛益

ながら予想を倧幅に䞊回った。もう「蚀い蚳」が効

かないこずを、誰よりも自芚しおいるのは怍朚だろ

う。人間ずしお䜕が正しいかで垞に刀断する。それ

ができる人間ずしお、皲盛は元パむロットを指名し、

再生の定着を委ねた。1぀の行動がその人間の党䜓

を衚すずすれば、この埌継人事には皲盛ずいう人間

が衚れおいる。そこに奇跡の再生を可胜にした経営

の真髄が芋えるのだ。本文敬称略

「いいんだ、悩め。でも続けろ。必ずどこかでわかっおくる」

今も毎月開かれおいる幹郚向け勉匷䌚で講垫を務める、名誉䌚長の皲盛和倫氏。

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実践知を共有する党員経営

「JALフィロ゜フィ」は「人生・仕事の結果

考え方×熱意×胜力」ずいう「成功方皋匏」か

ら始たる。このうち、「胜力」は圹員・瀟員ず

もに持っおいた。欠劂しおいたのは「考え方」

ず「熱意」だった。考え方のベヌスになるのは、

人間ずしおの生き方だ。皲盛氏は盞手の心に響

く蚀葉を䞀぀ひず぀投げかけ、哲孊を論じた。

同時に、皲盛氏は郚門別採算制床の䌚蚈システ

ムを導入した。アメヌバ経営では、瀟員䞀人ひず

りが自由床を持ち、垂堎環境ず連動しながら、自

己組織的に経営の数字を倉革しおいく。それは自

分たちで自埋的に生み出す「意味ある数字」であ

り、匷いコミットメントが匕き出される。評論家

的蚀動が目立った幹郚たちも、数字の倉化が面癜

くなるほど、熱意が高たっおいった。

アメヌバ経営の特城は、官僚制の階局組織をフ

ラクタル組織に転換するずころにある。フラクタ

ルずは耇雑系科孊の甚語で、党䜓ず郚分が盞䌌圢

で圢成される状態を衚す。その兞型が䞖界最匷ず

される米囜海兵隊で、軍、旅団、隊のどの局をず

っおも陞海空の統合組織になっおいる。

階局組織は分業による効率が優先され、人間

の創造性は抑圧される。䞀方、フラクタル組織

はどのレベルにおいおも、自己完結的な刀断胜

力ず実行力が発揮される。以前のJALでは階局

組織の匊害ずしお、傍芳者意識が蔓延しおいた。

ここにフィロ゜フィずアメヌバ教育が導入され

たこずにより、䞀人ひずりが経営者の意識を持

っお刀断し、実行する究極的なフラクタル組織

が生たれ、みんなで頑匵る党員経営が実珟した。

共䜓隓する新しい埒匟制

この過皋で最も倧きかったのは皲盛氏の存圚

だ。䞀人ひずりに求められる刀断胜力は、文脈

に応じおその郜床、最適な刀断を行う実践知に

ほかならない。マニュアル化は䞍可胜で、身に

぀けるには優れた人の刀断胜力を手本にし、共

䜓隓するしかない。新しい圢の埒匟制が必芁に

なる。JALに着任した皲盛氏は80歳に達する幎

霢で無絊で陣頭指揮し、再生に党身党霊を傟け、

範を瀺した。それは「埳のある人ず共振共感共

鳎するコミュニティ経営」ずいうべきもので、

倚くの埒匟が育おられた。

そのなかから怍朚氏を埌継に遞んだのは、「パ

むロットの知」に䌁業経営ず盞通じるものを芋

たからだろう。飛行前はフラむトが立䜓に芋え

るたでむメヌゞする。飛行時はマニュアルに頌

らない。垞にものごずをシンプルにずらえ、本

質を぀かむ。努力を重ねお感芚を錬磚すれば、

理屈抜きで結論が出せる。元パむロットの瀟長

起甚は、皲盛氏の真骚頂ずもいえる人事だ。

組織改革においおは、経営䌁画本郚から路線

統括本郚ぞ予算配分暩が移管された。埓来、珟

堎を知らない経営䌁画の幹郚がMBA的に論理

分析的に導き出した目暙数倀をトップダりンで

䞋ろし、結果、珟堎では蚈画ず実行が乖離した。

これを改め、路線統括本郚を経営の䞭栞にすえ

た。たた、リヌダヌ教育においおも、もしMBA

的な教育から入っおいたら、反発が生じただろ

う。ある意味、アメリカ的な分析型経営の吊定

の䞊にJAL再生が実珟したずすれば、「鶎䞞マ

ヌク」の埩掻は実に象城的に映るのだ。

官僚制階局組織からフラクタル組織ぞJAL再生は分析型経営の吊定である

䞀橋倧孊名誉教授野䞭郁次郎 氏

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れをせずに目暙、目的を達成するに

はどうしたらいいかを考え抜かなけ

ればならない。

どんな状況においおも䜓眰、匷い

叱責は「NO」だず貫かない限り、時

間がない、䌝統的にやっおきた、ず

いうような、状況に応じた勝手な刀

断をさせる䜙地が残る。

ゎヌルオリ゚ンテッド。この蚀葉

は僕自身もよく䜿う。組織には必芁

䞍可欠な蚀葉だが、「ゎヌル達成のた

めならば䜕でもやっおいい」ずいう

誀解を生む。だからこそ、しおはな

らないこずは決めなければならない。

僕たちは、過去には容認されおい

た、あるいは圓たり前だったこずを

いく぀も吊定し、新しい芏範を䜜り

䞊げおきた実䟋をいく぀も持っおい

る。たずえば䟵略戊争。それによる

略奪。たずえば人皮や性別による差

別。これらは、今は絶察にしおはな

らないこずであるのず同時に、か぀

おも「すべきではなかった」ずいう

前提の䞊に瀟䌚が成り立っおいる。

その前提に立っおこそ、「今埌、絶

察にしないためにはどうすべきか」

ず、瀟䌚に参加する人たち党員が知

䜓眰問題がクロヌズアップされお

いる。そのなかでよく聞くのが「自

分もか぀おは䜓眰を受けた。今は時

代が倉わったので、䜓眰はやめるべ

きだ」ずいったコメントである。「䜓

眰には䞀定の効果があり、自分はそ

れを根性で乗り越えおきた。瀟䌚や

家庭でそれは容認されおいたし、特

別なこずでもなかった。しかし、珟

圚は時代が倉わり、子どもたちに耐

える力がない。だからやめるべき

だ」。これがその論旚だろう。しかし、

「今も昔も䜓眰は絶察ダメだ」ずいう

スタンスに立たなければ、指導力や

マネゞメント力の発展はない。

䜓眰をする偎の気持ちを考えおみ

よう。奜きでしおいる人はほずんど

いないはずだ。「その子の成長を願

っお」ず蚀うだろう。どうしおも蚀

うこずを聞かない。ハヌドに緎習し

なければ勝おない。だから仕方なく

䜓眰を加えたのだ、ず。

しかし、それは指導やマネゞメン

トの手抜きにすぎない。本来であれ

ば、「䜓眰はダメ」「匷い叱責はダメ」

ずいうように、しおはならない指導、

マネゞメントの方法を明確にし、そ

ラグビヌ遞手の指導者であり、“指導者の指導者”。珟圚、そんなポゞションにある䞭竹竜二氏が、

若手ず、圌らに向き合う珟堎のマネゞャヌをどう育おおいくのか、ずもに考える。

叱らないのであれば、どう指導するのか。その前提に立っおこそマネゞメント力の向䞊がある

VOL. 21   “䜓眰”問題に組織はどう向き合うか

Text = 入倉由理子  Photo = 刑郚友康  Illustration = ノグチナミコ

日本ラグビヌフットボヌル協䌚コヌチングディレクタヌ

䞭竹竜二 氏

Nakatake Ryuji _1993幎早皲田倧孊入孊。4幎時にラグビヌ蹎球郚の䞻将を務め、党囜倧孊遞手暩準優勝。倧孊卒業埌、英囜に留孊。レスタヌ倧孊倧孊院瀟䌚孊修士課皋修了。2001幎䞉菱総合研究所入瀟。2006幎より早皲田倧孊ラグビヌ蹎球郚監督に就任。2007幎床から2幎連続で、党囜倧孊遞手暩制芇。2010幎2月退任。同幎4月より日本ラグビヌフットボヌル協䌚コヌチングディレクタヌ。コヌチの発掘・育成・評䟡を軞に、日本ラグビヌにおける䞀貫指導の統括責任者ずしお埓事。前20日本代衚監督。『刀断ず決断─䞍完党な僕らがリヌダヌであるために』東掋経枈新報瀟、『人を育おる期埅のかけ方』ディスカノァヌ・トゥ゚ンティワン、『たずめる技術』フォレスト出版など、著曞倚数。

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恵を出し合うこずができる。

「組織や本人のため」ずいう 叱責も䜕の解決にもならない

䜓眰を「教育問題」だず、他人事

ずずらえおはならない。確かに䌁業

で䜓眰問題が起こるこずは、ほずん

どないだろう。しかし、本圓に手を

あげるこずはなくおも、厳しい叱責

など、人を傷぀けるマネゞメントが

ないずは蚀い切れないはずだ。

この堎合も、やっかいだ。䜓眰ず

同様、本人は「郚䞋のため」「組織

のため」を思っおやっおいるこずが

倚いからだ。たた、本人がいないず

ころで「こんなこずをやっおいた」

「ここが問題だ」ずいうような、組

織内での情報共有ずいう名の陰口

も「組織のためを思うず、ああいう

人は排陀したほうがいい」「泚意し

たほうがいい」ず考えおのこずだろ

う。ずはいえ結果を芋れば、叱責さ

れた偎、悪評の察象ずなった人にい

い圱響が及ぶはずはない。

1぀は単玔に傷぀く。䜓眰ず同様、

恥ずかしさや組織のなかでの孀立感

から、鬱になったり、䌚瀟を蟞めた

り、ずもするずそれが自殺の原因に

ならないずもいえない。

もう1぀は、叱責や悪評を恐れお

態床や行動を倉えおも、その脅嚁が

なくなった瞬間に元に戻っおしたう。

匷制力を䌎うマネゞメントは、根本

的な解決には぀ながらない。人の成

長には寄䞎しないのである。

僕は、本人たちが自ら「倉わろう」

ず思わない限り、行動も考え方も倉

わらないず確信しおいる。だからこ

そ、マネゞメントにおいおチヌムの

メンバヌの自埋性を最も重んじる。

自ら倉わろうず思わなければ 本質的な倉化は蚪れない

2012幎、20歳以䞋日本代衚の監

督を担っおいたずき、遞手の育成、

指導にあたるスタッフたちずの間で

いく぀かの決めごずをしおいた。「頭

ごなしに怒らない」「答えを䞎える

より、質問を投げかける」「たずはス

タッフから芋本を」「匷制ではなく、

導くための環境を敎える」「我慢す

る」「信じお埅぀」などだ。チヌムの

線成から倧䌚たで、ほんの4カ月。勝

぀ためのチヌムビルディングをする

には時間が足りない。ずもするず、遞

手を頭ごなしに叱り぀けたり、正し

いず思うこずを匷制したり、考えさ

せる時間を䞎えなかったり、ず、䞊

から抌し付けるマネゞメントに走っ

おしたう可胜性がある。しかし、ど

んなに時間がなくおも、最初はうた

く機胜しなくおも、僕たちは我慢を

貫こうずした。遞手たち本人が「頑

匵りたい」「成長したい」「勝ちたい」

ず心から思わない限り、圌らに倉化

は蚪れない。圌らに倉化を起こすに

は、僕らは䜕をしなければならない

か。垞に知恵を出し合い、議論を重

ね、倉化を信じお埅ち続けた。

小さなこずだが、こんなこずがあ

った。合宿所の管理者から、遞手た

ちのお颚呂や食堂の䜿い方がひどい、

ずクレヌムがあった。僕が泚意した

だけでは、簡単にはよくならなかっ

た。スタッフから「䞀床は叱ったほ

うがいいのではないか」ずいう声も

䞊がった。しかし、やはりそれは決

めごずに反する。だから僕らは率先し

お、芋本を芋せるこずにした。もちろ

ん、匷制的に掃陀をさせるよりも時

間はかかった。しかし、少しず぀、

確実に倉化が起きた。

䜓眰をなくしたら蚀葉の倧切さが

芋えた。人皮や性による差別をなく

したら、個々の倚様な胜力が芋えお

きた。䜕かが制限されれば、それを

乗り越える知恵を生もうずする。そ

れが本来の人間のあり方だず思う。

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若手が切磋琢磚する堎を䜜り、「今の笑い」を芋぀め続ける

お笑い芞人

枡蟺正行 氏 Watanabe Masayuki

キャリアずは「旅」である。人は誰もが人生ずいう名の旅をする。人の数だけ旅があるが、いい旅には共通する䜕かがある。その䜕かを探すため、各界で掻躍する「よき旅人」たちが蟿っおきた航路を論考する。

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お笑いトリオ「コント赀信号」のリヌダヌ・枡蟺正行

氏が、長幎にわたっお若手お笑い芞人の育成に泚力しお

きたこずをご存じだろうか。1986幎から䞻催するお笑

いラむブ「ラ・ママ新人コント倧䌚」は新人芞人の登竜

門ずされおおり、過去の出堎者にはりッチャンナンチャ

ン、爆笑問題、バナナマンなどそうそうたる顔ぶれが䞊

ぶ。枡蟺氏はなぜお笑いの䞖界に入り、若手の育成にか

かわるようになったのか。その道のりを聞く。

もずもずは圹者志望。

挔技の緎習の぀もりでコントを始めた

「田舎育ちで、高校たでは玔朎そのもの。クラスではよ

くいる『ふざけたダツ』でした。背が高く、成瞟もそこ

そこだったので目立っおはいたしたね。モテたかどうか

ですか笑 のどかな時代ですから、女の子ず぀き

合うようなこずはなかったです。䞭孊から始めた剣道に

打ち蟌み、厳しい緎習に耐える毎日でした」

その反動から「倧孊では楜しみたい」ず萜語研究䌚に

入った。同䌚には先茩の䞉宅裕叞氏、立川志の茔氏、同

期の小宮孝泰氏など、埌にお笑い界で掻躍する顔ぶれが

そろっおいた。

「䞖の䞭にはこんなに面癜い人たちがいるんだずカルチ

ャヌショックを受けたした。ずくに志の茔さんが倧奜き

で、圌のようになれたらずくっ぀いお歩いおいたした。

ただ、身近に萜語のうたい人たちがたくさんいたしたか

ら、萜語で勝負しようずは思えなかったです」

挔劇にも興味を持぀ようになり、倧孊3幎生のずきに

劇団「テアトル・゚コヌ」の逊成所に入所。小宮氏ずこ

こで出䌚ったラサヌル石井氏ずずもに「コント赀信号」

を結成した。

「コントは軜い気持ちで始めたした。芝居をやるには堎

所もお金も必芁だけど、コントなら孊園祭など出挔の堎

が倚く、挔技の緎習にもなるんじゃないかず思っお」

お笑いの䞖界でプロになろうず決めたのは、倧孊卒業

の幎の秋。コント掻動で知り合った芞人さんから、「コ

メディアンの杉兵助氏に匟子入りしおストリップ劇堎の

幕間に芞をやらないか」ず誘われ、劇団を蟞めた。

「圹者を目指しおレッスンに打ち蟌んだけれど仕事はな

く、このたた劇団でくすぶるよりはお笑いのほうが向い

おいるかもしれないず考えたんです。垫匠に぀いおスト

リップの幕間に1日4回コントをやり、あずは垫匠の身

Interview = 泉 圩子、倧久保幞倫  Text = 泉 圩子5456P、倧久保幞倫57P  Photo = 刑郚友康  衣裳協力 = MAURIZIO BALDASSARI

盎筆の人生グラフ。波はあるが、垞にプラス。最も深い谷は倧孊圚孊䞭に劇団に入り、芜が出なかった時代。「ずにかく貧乏でした」ず枡蟺氏。

明治倧孊入孊

貧乏生掻時代

䜓調の倉化

剣道を再開

千葉県いすみ垂出身。父は「半蟲半䌚瀟員」。末っ子で、兄ず姉がいる。䞭孊時代から剣道に打ち蟌み、関東高校剣道倧䌚にも出堎した

明治倧孊経営孊郚に入孊。萜語研究䌚に入り、小宮孝泰氏や䞉宅裕叞氏ず出䌚う

小宮氏ずずもに劇団「テアトル・゚コヌ」の逊成所に入り、ラサヌル石井氏ず出䌚う。小宮氏、石井氏ず「コント赀信号」を結成

倧孊卒業。コメディアン・杉兵助氏に匟子入りし、ストリップ劇堎の幕間コントに出お修業を積んだ

解散を考えおいた矢先に枡蟺氏が台本を曞いたコントが評刀ずなり、人気お笑い番組『花王名人劇堎』でテレビデビュヌを果たす

枋谷のラむブハりス「ラ・ママ」で所属事務所を超えお参加できる新人コント倧䌚をスタヌト

人気クむズ番組『クむズ䞖界はSHOW by ショヌバむ!!』のサブ叞䌚ぶりが評䟡され、倚くの人気番組に単独でも出挔するようになる。個人事務所を蚭立しお独立

結婚。翌幎に長女が誕生した

『さんたのスヌパヌからくりTV』など数倚くのテレビ番組に出挔䞭。䞻催する「ラ・ママ新人コント倧䌚」は4月で308回目を迎える

1956幎  0æ­³

1974幎 18æ­³

1977幎 21æ­³

1978幎 22æ­³

1980幎 24æ­³

1986幎 30æ­³

1988幎 32æ­³

1999幎 43æ­³

2013幎 57æ­³

枡蟺正行氏のキャリアヒストリヌ

5 6 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 5 7N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

の回りの䞖話や劇堎の掃陀などが仕事。幎䞭無䌑で、月

収は7侇5千円ず薄絊でした」

倧事なのは決断するこず。

迷っおいるず勢いが萜ちる

圓時は若手芞人がお笑いをやる堎がほずんどなく、最

初は「コント赀信号」ずしお舞台に立おるだけでありが

たかった。だが、ストリップ目圓おのお客さんを笑わせ

るのは簡単なこずではない。気持ちが萎え、垫匠が曞い

たコントを惰性で挔じる日々が続いた。新しいネタも生

たれず、解散が決たりかけおいたずき、か぀お同じスト

リップ劇堎に出挔しおいた「ゆヌずぎあ」の人気が出お、

圌らが䞻催するコント倧䌚に出るこずになった。

「解散前の1本だけの぀もりで僕が曞いたのが、埌に看

板ネタになった暎走族コントの原

型です。コント倧䌚での評刀もよ

く、匟みが぀いおストリップ劇堎

でも僕たちの出番でお客さんが沞

くようになりたした」

この波に乗り、お笑い界で生き

残りたい。そのためには3人の力

を結集しなければず、枡蟺氏は自

らがトリオのリヌダヌずなるこず

を石井氏ず小宮氏に宣蚀した。

「危機感を共有しおいたので、2

人から反論はありたせんでした。

トリオ結成以来、䜕事も話し合いで決めおきたしたが、

それでは時間がかかり過ぎる。ずがあっおどちらが

面癜いかなんおさほど倉わりたせん。倧事なのは決める

こず。迷っおいるず勢いが萜ちるんです」

台本も枡蟺氏が担圓した。台本を曞くにあたっおは、

時代感芚を逊うために時間を芋぀けおは評刀の公挔に足

を運び、お笑い番組も片っ端から芳たずいう。

「お客さんが笑ったギャグを党郚メモしお、なぜりケた

のかを分析するんですよ。内容なのか、間なのか、蚀い

方なのかっおね。それを繰り返しお今の笑いを぀かみ、

䞀方で自分たちの力量を分析する。その䞊で、ほかの芞

人さんがやっおいなくお、自分たちにできる芁玠は䜕か

ず考えお、ネタに盛り蟌んでいきたした」

それたでは厩れおいた生掻リズムも立お盎し、石井氏、

小宮氏ず毎朝10時に集合しおマラ゜ン。曞き䞊げたコ

ントを緎習しおは3人でネタを緎る日々を続けた。真剣

にお笑いに取り組むようになるず、目をかけおくれる人

も増えた。24歳のずきに杉兵助氏の口添えで人気お笑

い番組『花王名人劇堎』に出挔したのをきっかけにテレ

ビにも進出。倧ヒット番組『オレたちひょうきん族』に

レギュラヌ出挔し、ビゞュアルやキャラクタヌ蚭定にむ

ンパクトを䞎えた「暎走族」コントで䞀䞖を颚靡した。

若手育成を通じお刺激を受け

芞人ずしお新陳代謝を続ける

その埌、枡蟺氏はバラ゚ティ番組のサブ叞䌚やドラマ

出挔でも掻躍するようになり、1980幎代半ばには単独

での掻動に比重が移っおいく。「ラ・ママ新人コント倧䌚」

を立ち䞊げたのはそのころだ。

「僕たちのデビュヌ圓時は、若い

お客さんにネタを芋おもらう堎が

ほずんどなかった。だから、“今”

の感芚を知るために『コント赀信

号』の新ネタラむブをやっおいた

んです。そのうちに、若手から『笑

いを勉匷したい』ず盞談されるよ

うになったんだけど、笑いなんお

勉匷するものじゃないでしょ。『お

客さんの前で力を詊すのがいちば

んいいからラむブに出おみれば』

ずいうこずで、堎を提䟛するよう

になったのがそもそもの始たりなんです」

以来20幎以䞊にわたり、月1回のペヌスで「ラ・ママ

新人コント倧䌚」を開催しおきた。所属事務所を超えお

参加できるお笑いラむブはほかになく、倚くの若手がこ

のラむブのトリを目指しお切磋琢磚し、スタヌ芞人ずし

お成長しおいった。

「このラむブを続けおいるのは、笑いが奜きだから。芞

人がネタをやるずきに爆発的にりケるずいうのはそんな

にはなくお、たいおいは80くらいなんですよ。でも、

若手が成長する過皋を芋続けおいるず、120ではじけ

るずきがたたにある。その瞬間を目の圓たりにするず、

自分のこずのようにうれしいし、感動しおゟクッずする

んです。同時に僕も、今の笑いずいうのはこういう感芚

なんだなずいうのを぀かんで、次に行ける。若手育成ず

いうより゚ネルギヌをもらっおいる感じですね」

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枡蟺氏には、戊略家ずしおの顔ずマヌケッタ

ヌずしおの顔がある。萜語から芝居、そしおお

笑いぞずキャリアを展開しおいく過皋は「どう

したら勝おるか」を考えた結果の遞択であった。

リヌダヌずいうコント䞊の圹柄をそのたた自身

のキャラクタヌにしたずころや、叞䌚業におけ

るポゞショニングなど、戊略的に考えた結果だ

ろう。そしお客が䜕に反応しお笑うのかを情報

収集し、冷静な目で分析するずころはたさしく

マヌケッタヌである。笑う理由を分析するため

にメモをずり続けたずいうが、その分析はメモ

こそずらないが今でも続いおいるに違いない。

その枡蟺氏が、次䞖代の若手のために自ら仕

立おた堎が「ラ・ママ新人コント倧䌚」だ。自

身も若手のずきに芞を披露できる「堎」がない

こずを課題に感じおいたからこそ、収益性床倖

芖で立ち䞊げた。1986幎に始めお、珟圚も続

く倧䌚はすでに300回を超え、その堎を成長の

機䌚ずしお掻かし、ブレむクした芞人が今のお

笑い界の䞭栞を占めおいる。

私も先日、枋谷のラむブハりス「ラ・ママ」

で行われおいる倧䌚を芋に行った。芳客のうち

10人が×バツ

の札を䞊げるず芞の途䞭でも匷制終

了ずなる厳しい修業の堎だ。そこにいる枡蟺氏

は、芞人ず客垭の真ん䞭に立っおいる。「若手

にアドバむスするずきは䞀歩匕いたずころです

るように心がけおいたす」枡蟺氏ず蚀うが、

それは芳客目線でどうしたらもっず面癜くなる

かを投げかけるずいうこずなのだろう。戊略家・

マヌケッタヌならではのアドバむスの仕方だ。

たずえば、オヌドリヌがブレむクする前に「぀

っこみがき぀くお客垭が匕いおるよ」ずアドバ

むスしたずころ、圌らが考えお“そんなに俺の

こず嫌いか”“嫌いだったら䞀緒に挫才やっお

ねえよ”ずいうやり取りを入れおきお、客垭の

笑いが䞀気に増えたずいう。そのようなちょっ

ずした枡蟺氏のアドバむスが、ブレむクのきっ

かけを䜜っおいるのだ。

お笑いは日々進化しおいるず感じる。もうこ

れ以䞊新しいパタヌンは生たれおこないかず思

っおも、すぐに新しい圢が出おくる。枡蟺氏は、

そのような進化を陰で支えおいる「リヌダヌ」

なのである。

修業の「堎」をマネゞメントする若手芞人育成のリヌダヌ

4 4 4 4

ワヌクス研究所 所長倧久保幞倫

枡蟺氏による若手芞人育成のフレヌム

成長・進化

客垭の厳しい評䟡を受ける

「堎」

戊略家・マヌケッタヌ芖点での

「アドバむス」

5 8 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

Text = 千葉 望  Photo = 鈎朚慶子、新井啓倪曞画  題字・曞画 = 岡 䞀艞

荀子䞭囜の戊囜時代末期、玀元前3䞖玀頃の儒家。孟子の性善説に反論し、本来、人間の性は悪であるが埳化の努力によっお善にもなるずいう䞻匵をした。

日本でも、欧米型の雇甚スタむルを取り入れる䌁業が増えおきおいるが、新卒䞀括採甚の廃止や、雇

甚調敎に螏みきる䟋はただただ少ない。 そこには、蟲耕民族的傟向の匷い日本人特有の「共同䜓意識」

ず、グロヌバル時代に求められる「個の自立」の間の、割り切りにくい葛藀がある。 雇甚における「共

同䜓意識」ず「自立」のバランスが激しく揺れ動いおいる今の日本。果たしお叀来、東掋では、雇甚

ずいう関係性をどのように捉えおきたのであろうか。匷い組織を生む雇甚のキヌファクタヌを探る。

珟代日本のゞレンマ ❺

雇甚ずいう関係性の本質は䜕か

5 9N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

行き過ぎた円高から解攟されおも、

䌁業の人員削枛の流れは、そう簡単

には収たりそうもない。日本の雇甚

が今埌どうなっおしたうのかず、䞍

安を抱く方も倚いこずでしょう。今

回は「荀子」を取り䞊げ、雇甚ずい

う関係性の本質に぀いお考えおみた

いず思いたす。

志を同じくするトップず 瀟員が良い䌚瀟を䜜る

もずもず、䞭囜叀兞においお今い

われるような「雇甚」ずいう抂念は

ありたせん。それをよく衚す蚀葉が

「君きみ

なる者は舟なり、庶人なる者は

氎なり、氎は則ち舟を茉せ、氎は則

ち舟を芆す」でしょう。東掋思想に

おいおは、雇甚する偎がされる偎を

支配するずは考えたせん。郚䞋ずは

リヌダヌを支える存圚ですが、䞀方

で反乱を起こすこずもある存圚。あ

くたでもお互いが助け合う関係にあ

りたす。雇うほうが傲慢な態床を取

るような組織は、結局のずころ脆匱

なものです。

私は䌁業やリヌダヌに志、぀たり

きちんずした瀟是や瀟蚓、理念があ

っお、それに惹かれた人たちが集た

っおくる、それが本来の雇甚だず考

えたす。

荀子は、リヌダヌず郚䞋の関係に

おける問題はあくたでもリヌダヌの

ほうにあるず考えたす。「治ち

は君子

に生じ、乱は小しょう

人じん

に生ず、ずは、歀

を之れ謂うなり」。荀子は、組織の

安定をリヌダヌの埳や胜力ずいった

君子性に求めおいたす。乱れはトッ

プの小人性にあるのです。立掟なリ

ヌダヌがいれば䌚瀟はどのような状

況にあっおも前を向いお進むこずが

でき、安定的に発展するものです。

「乱君有りお乱囜無く、治人有りお

治法無し」。リヌダヌが小人であれ

ば、たずえしくみを敎えたずころで

組織は乱れおしたうものです。同じ

ような環境にありながら、䞀方は業

瞟を䌞ばし、䞀方は傟くずいう䟋を

田口䜳史 氏Taguchi Yoshifumi_東掋思想研究者。株匏䌚瀟むメヌゞプラン代衚取締圹瀟長。老荘思想的経営論「タオ・マネゞメント」を掲げ、これたで2000瀟にわたる䌁業を倉革指導。たた官公庁、地方自治䜓、教育機関などぞの講挔、講矩も倚く、1䞇名を超える瀟䌚人教育実瞟がある。最近の著曞に『孫子の至蚀』2012幎光文瀟、『リヌダヌの指針 東掋思考』2011幎かんき出版、『老子の無蚀』2011幎光文瀟、『論語の䞀蚀』2010幎 同。2008幎には日本の䌝統である家庭教育再興のため「芪子で孊ぶ人間の基本」DVDå…š12巻を完成させた。

君きみ

なる者は舟なり、庶人なる者は氎なり、氎は則ち舟を茉せ、氎は則ち舟を芆す君子は舟であり、民は氎である。氎は舟を浮かべもすれば、転芆もさせる

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の欧米流のマネゞメント手法が衚面

的に導入され、もおはやされたこず

がありたすが、チヌムワヌクが良か

ったはずの組織が乱れ、匱くなった

ずころが倧半でした。トップは流行

に流されるのではなく、良いものは

取り入れながらも、日本䌁業が持っ

おいた「人材を倧切にする」ずいう

長所を掻かすこずを考えるべきです。

トップが倧きな噚を持っおいなけ

れば、少しず぀組織にひびが入っお

いきたす。トップが郚䞋に察しお厳

し過ぎたり、かずいっお甘過ぎおも

いけない。それはなぜなのか。荀子

はこう述べおいたす。「凡そ聎ちょう

は、

嚁厳猛もう

厲れい

にしお、人を仮導するを奜

たざれば、則ち䞋しも

畏恐しお芪したず、

呚閉しお竭぀

くさず。䞭略和解調

通にしお、奜みお人を仮導しお、之

を凝止する所無ければ、則ち姊蚀䞊

び至りお、嘗しょう

詊し

の説鋒起す」。郚䞋

に察する態床は、嚁厳があり過ぎお

人を寛倧に導くこずを奜たなければ、

人々を集め、同志ずしお遇する。そ

れがトップをトップたらしめるよう

になるのです。トップず瀟員の関係

は、同志ずいう絆が基盀になるべき

なのです。

たた、公平ずいう点に重きを眮く

のも東掋的な特城でしょう。「人に

君きみ

たる者、安あん

を欲すれば、則ち政を

平かにし民を愛するに若くは莫く、

栄えい

を欲すれば、則ち瀌を隆たっず

び士を敬

するに若くは莫く、功名を立おんず

欲すれば、則ち賢を尚たっず

び胜を䜿うに

若くは莫し。是れ人に君たる者の倧

節なり」。自瀟を安定させ繁栄させ

たいず思うのなら、たずトップが瀟

員を公明正倧に凊遇し、偏りのない

人事を行う。栄耀栄華を欲するので

あれば瀌儀を倧切にしお、専門家を

敬う。倧きな成長を埗たいのなら、

優れた人材を倧切にし、甚いるこず

が䜕よりも重芁である。このように

荀子は考えたす。

䞀時、日本でも、成果達成床重芖

芋聞きされるこずがあるず思いたす

が、䞡者のリヌダヌに差がないかど

うか、泚目しおみるずよいず思いたす。

倧きな優しさず厳しさを 䜵せ持぀のがトップの条件

それでは、どのような雇甚関係を

䜜っおいくのが良いリヌダヌなので

しょうか。荀子は次のように述べお

いたす。「賢良を遞び、節敬を挙げ、

孝匟を興し、孀こ

寡か

を収め、貧窮を補たす

く、是の劂くなれば則ち庶人政せい

に安やす

んず。庶人政に安んじお、然る埌君

子䜍に安んず」。賢くお玠材の良い

人を遞び、謙虚で誇りを倱わない専

門家を登甚し、先茩や䞊叞を倧切に

する瀟颚を匷め、最も悩み苊しんで

いる人に勇気を䞎え、補助すべきは

しおいく。たずそういう行いのリヌ

ダヌに人々は぀いおいくものです。

リヌダヌは志を掲げ、情熱的にそれ

を語り、実斜する。それに共感する

矩以お分すれば則ち和し、和すれば則ち䞀なり、䞀なれば則ち倚力なり、倚力なれば則ち匷なり、匷なれば則ち物に勝぀矩をもっお分け䞎えるからこそ、皆が協力し合うこずができ、協力し合えるからこそ1぀にたずたるこずができ、倧きな力を発揮できる。だからこそ勝぀こずができる

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こずがずおも重芁だず思いたす。

私は21䞖玀の雇甚関係は、荀子が

ここで語っおいたような方向になる

べきだず考えおいたす。今埌は新し

いトップが新たに志を説き、その実

珟に参加したいず考える人を集め

お物事に取り組んでほしいものです。

ではどう「志」を持぀のかず迷う

方がいるかもしれたせん。倉化の速

い時代に同じ志を持ち続けるのは倧

倉なこず。珟代では幎ごずに「志」

の実斜案を芋盎すぐらいでよいので

はないでしょうか。基本は揺るがず、

しかし柔軟に目暙を倉えおいく。そ

んなトップが求められおいたす。

力を合わせお仕事をする 倧切さを再認識するずき

氎や火には「気」はあるが「生」

はない。草朚には「生」はあるが「知」

はない。動物には「知」はあるが「矩」

はない。すべおを備えおいるのは人

間だけです。「人は䜕を以お胜く矀

する。曰く分ぶん

あればなり。分は䜕を

郚䞋は恐れおトップに芪したず、心

を閉ざしお情報を隠しおしたう。぀

たり、倧きな問題があっおもその発

芚が遅れおしたいたす。反察に、枩

和で優しい人柄でも、やるべきずき

に厳しく事にあたれないトップは、

郚䞋が䟮っおやりたい攟題になっお

したうでしょう。

優れたリヌダヌずしお衆目を集め

る人には、厳しさず寛倧さの䞡方が

備わっおいるものです。郚䞋は鋭く

それを芋抜き、リヌダヌに぀いおい

きたす。私がこれたで出䌚っおきた

名経営者は皆、そういう人物であっ

たこずが思い出されたす。

偏りがなく、たた倧人の垞識を持

っおほどほどに刀断を䞋しおいくこ

ずも倧切です。「其の法有る者は法

を以お行い、法無き者は類を以お挙

するは、聎の尜じん

なり」。法埋など決

たりがあるずきはそれに埓っお進み、

それがなくおも、垞識的で真っ圓な

刀断を䞋せば、ほずんどのこずはう

たく収たるもの。トップは胜力だけ

でなく、垞識や良識が備わっおいる

以お胜く行わる。曰く、矩を以おす

ればなり。故に矩以お分すれば則ち

和し、和すれば則ち䞀い぀

なり、䞀なれ

ば則ち倚力なり、倚力なれば則ち匷

なり、匷なれば則ち物に勝぀」。人

間は力では牛銬にかなわない。しか

し知恵があるから圌らを䜿いこなし

たす。人間は「矩」があるから、分

業もし、たた力を合わせお倧きな目

暙に立ち向かうこずができたす。

トップたる人間は、業瞟を远い求

める前に人を埗るこずを優先すべき

です。「明䞻は其の人を埗るこずを

急にしお、闇䞻は其の勢を埗るこず

を急にす。其の人を埗るこずを急に

すれば、則ち身䜚いっ

しお囜治たり、功

倧にしお名矎に、䞊かみ

は以お王たる可

く、䞋は以お芇たる可し」。トップ

が人を倧切にする「明䞻」か、目先

の数字を远う「闇䞻」であるか。䌚

瀟の今埌はそこにかかっおいたす。

トップは「明䞻」をめざし、同時に

瀟員も「雇われる偎」だず卑屈にな

らず、「明䞻」を遞ぶずいうほどの

気抂を持っおほしいものです。

明䞻は其の人を埗るこずを急にしお、闇䞻は其の勢を埗るこずを急にす明䞻は人材を埗るこずを重芖し、闇䞻は暩勢を远うこずを重芖する

6 2 N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3 6 3N o . 1 1 7 A P R - - - - M A Y 2 0 1 3

●䌁業の゚ラむ人はどう思うかわからないですが、珟堎のするどい人は越境を詊みおいるずいう感じがしおいたす。組織が倉わっおいく前兆なのではないかず感じたした教育●キャリア圢成の䞻䜓が個人に移るず、人材の流動化が促進されたす。今埌、特に優秀な人材を採甚する堎合倖囜人も含めおは、キャリア圢成自瀟内でのキャリアではないを、䌁業ずしおどのように芋おいるかが重芁になっおくるのではないでしょうか。流動化を恐れるのではなく、流動する人材を取り蟌む魅力が必芁だず思いたす繊維●ワヌクス研究所・豊田矩博氏が曞いおいる、“第3次勉匷䌚ブヌム”では、勉匷䌚の参加者がトップ局ではなく、ボリュヌムゟヌンの人たちだずいうこずに、驚かされたした。これは、SNSの掻況ずシンクロしおいるようにも思いたす。異ず出䌚うこずで䟡倀芳や考えの幅を広げ、人脈も構築する。ただ、本圓に実を結ぶためには、根っこにある芚悟や本気が問われるのではず感じたしたコンサルティング●「越境」の重芁性はたすたす高たっおいくでしょうから、タむムリヌなテヌマでした。個人がずいうよりも、䌁業がもっず積極的に越境の堎を䜜っおいくべきだず思いたす。そうした䌁業による取り組みがもっず玹介されおいればず感じたしたコンサルティング

第2特集・連茉に関するご意芋、ご感想

●第2特集障害者雇甚を事業戊略ず考えた堎合、ずいうテヌマの蚭定が良いず感じたした。囜民の意識が共生・人暩に぀いお成熟しおいる瀟䌚を考えるずき、障害者雇甚に぀いおは前向きに考えるのが䌚瀟経営の普通の感芚・方針だろうず思いたすサヌビス●第2特集Worksは人材育成、組織論を䞭心に取り扱っおこられたものず思いたすが、そのなかで障害者雇甚を特集ずしお取り䞊げられたのには正盎驚きたした。メゞャヌな人事系のメディアではなかなか取り䞊げられない、しかし重芁な課題である障害者雇甚のようなテヌマにも、今埌ずもフォヌカスしおくださいサヌビス●ダむガクセむのミカタ孊生の孊び堎ず地域貢献ず生掻必需品がブレンドされた極䞊の掻性化策ですね。「感性䟡倀」が受け入れられる時代性が背景にあるにせよ、地域生掻ず繋がり支える感芚を盎接埗られる掻動であるこずに倧きな䟡倀を感じたす。想いをどんなカタチで衚珟するのかも成功の倧きなポむントになるず感じたした小売●成功の本質ビゞネスの圚り方、本質を教えおくれる事䟋です。こうした日本䌁業独特のアプロヌチがグロヌバル事業には求められたす。倧いに参考になりたした小売●若手を腐らせるな「緎習にあたっお重芁なこずは、行きすぎた平等䞻矩を捚おるこずだ。組織の党員に自埋性が必芁かずいうず、そうではない」ずいうのは、スポヌツのみならず、䌁業においおもいえるこずだず思いたす。管理者ず本人がどこたで割り切れるか、玍埗できるかがポむントでしょうコンサルティング

今号をもちたしお『Works』線集長の任期を終えるこずになりたした。皆様のご支揎に、深く埡瀌申し䞊げたす。組織を、そしお日本瀟䌚をよくしたい、そんな倚くの情熱に觊れた、幞せな2幎間でした。組織も瀟䌚も人の力で倉えられる、人の力を信じたい、ずいう想いを蟌めお、本誌を皆様に届けおたいりたした。そしお、それはずっず倉わるこずがないず思いたす。今埌も『Works』を宜しくお願い臎したす。               䞭重

500 Startupsのオフィスで、1日に䜕人もの方の取材のアポむントが入っおいた日のこず。取材が延びお、次に控えるダンさんずの玄束の時間は、30分近くも過ぎおいたした。気が気ではない私に、近くにいたダンさんから携垯にメヌルが入りたした。「僕は倧䞈倫だから、気にしないでむンタビュヌを続けお」ず。こんな枩かい゚ピ゜ヌドにあふれた、シリコンバレヌ出匵でした。          入倉

ここ数カ月、胜楜の公挔の事前に、セットになっおいるワヌクショップに䜕床か通っおいたす。2回くらいは鑑賞したこずがありたすが、狂蚀はただ぀いおいけおも、胜はい぀も深い眠りに぀いおいたした。ワヌクショップでは挔目のベヌスになっおいる叀兞を孊んだり、実際に倧錓、小錓を聎いたり、手拍子でお囃子を真䌌したり、だいぶ知識が増えたした。今床こそ、居眠りせずに楜しめそうです。

wsfer510

今回の金沢取材では、䞀床も雪を目にしたせんでした。タクシヌドラむバヌによれば、近幎は積雪の量は少ないずのこず。ずはいえ、日が沈めば髪の毛も凍るほど寒くなりたす。そんな状況でも、授業が終わるず圓然のように倢考房に集たり、時間の蚱す限り工孊に぀いお熱く語る孊生達が、金沢工業倧孊にはいたした。アルバむトに明け暮れた己の倧孊幎間が悔やたれたす。          湊

線集埌蚘

読者の声

特集『瀟員の攟浪、歓迎』に関するご意芋、ご感想

貎殿のビゞネス・研究等に、 あたり圹に立たない

圹に立぀ 51.7倧倉圹に立぀37.9% 10.4

前号『Works』116号2013.0203に寄せられた読者の声です2013.3.5時点。

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Works宅配サヌビスのご案内 定期賌読は回、回をご指定いただけたす隔月偶数月10日発行。バックナンバヌも含め、1冊のみのご賌読も可胜です。

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『Wor k s 』次号11号のテヌマは

アゞア採甚これが日本䌁業の生きる道仮題

発行は、2013幎6月10日月です。

バックナンバヌズ

●No.106 2011.06-07倉化の時代、キャリアの眠

●No.105 2010.04-05サヌビス人材の育成で䞖界に挑む

●No.104 2011.02-03クリ゚むティブクラスずの新結合

●No.103 2010.12-2011.01人事ず瀟内メディアの新しい関係

●No.102 2010.10-11新卒遞考ルネサンス

●No.101 2010.08-09モチベヌションマネゞメントの限界に挑む

●No.100 2010.06-07人材育成「退囜」から「倧囜」ぞ

●No.99 2010.04-05「倱敗させない組織」のリスク

●No.98 2010.02-03リストラの「けじめ」

●No.97 2009.12-2010.01コミュニケヌション䞍党 解消のシナリオ・序章

●No.96 2009.10-11「私」を動かすむンセンティブシステム

●No.95 2009.08-09人事プロフェッショナルの本質

No.115 2012.12-2013.01タレントマネゞメントは䜕に効く

No.111 2012.04-05201X幎、隣の垭は倖囜人

No.116 2013.02-03瀟員の攟浪、歓迎

No.108 2011.10-11察話ダむアログで玡ぐ人ず組織の未来

No.107 2011.08-09若手を芋る目、掻かす力はありたすか

No.110 2012.02-03ミドルの自己信頌が䌚瀟を救う

No.109 2011.12-2012.01珟法から芋た珟地 珟法から芋た本瀟

No.114 2012.10-11流れを倉える䞭途採甚

No.113 2012.08-09本瀟所圚地“䞖界”の人事

No.112 2012.06-07地方ネットワヌクに、出珟する未来

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◎冊 700円 ◎カ月間・冊 2100円 ◎幎間・冊 4200円すべお消費皎蟌み・送料無料 ※バックナンバヌNo.22はフリヌペヌパヌですが、管理手数料代100円を頂きたす。

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