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DRF9:第9回DRFワークショップ(2012年11月21日開催)での発表原稿です。 第1セッション 話題提供「新BOAI:次の10年に向けた提言」 なお、資料(スライド)はDRF9のWebページ(http://drf.lib.hokudai.ac.jp/drf/index.php?DRF9)にて公開。

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ブダペスト・オープンアクセス・イニシアティブとは、査読済論文へのオープンアクセスを求める世界的運動で、OA運動を支援する財団の一つであるOpen Society Instituteが中心となり2002年に提言が発表されました。この中で、OAとは何か、を詳しく定義づけるとともに、OA実現のために、2つの相互補完的な方策を提唱しました。その後のOA運動を大きく方向づけたものとされています。

[Note]セルフアーカイブ:著者が自身や所属機関のサイト等で執筆論文をインターネットで無料で公開。

ex.) 著者のウェブサイト、プレプリントサーバ(ex. arXiv.org)、機関リポジトリ、政府主導のセントラルリポジトリ(ex. PubMed Central)OA誌刊行:無料で利用できる電子ジャーナルを創刊し、そこで論文発表を行う。

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このBOAIの理念を基に、機関リポジトリやオープンアクセスジャーナルが発展してきました。OAは着実に浸透してきており、2008年に出版された論文を対象にしたサンプル調査では、(Green/Goldいずれかの形で)OAの論文の比率は約2割だったとの結果が報告されています。

[Note]*1 本表における「Gold OA 8.5%」にはdelayed, hybridを含む。内訳:”pure gold journals” 62%、”delayed OA journals” 14%, “paid OA” 24%

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中でも、もはやビジネスモデルとして確立したと言えるオープンアクセスジャーナルの発展は目覚ましく、雑誌数や論文数の平均伸び率は、学術出版全体におけるそれをはるかに上回っており、このペースで行くと2020年には90%の論文がGold OAになるだろうという予測もあるほどです (*3) 。

[Note]*1 図引用論文は、DOAJのデータからサンプル調査(direct Gold OA Journal)。2009年には約19万1850点のOA論文が、4769のOA誌で発表されたとの推計。

※DOAJ(Directory of Open Access Journals) http://www.doaj.org/ 2012/11/18現在、8360誌。DOAJは、ハイブリッド型や一定期間後無料公開型のOA誌は含まず。また、今現在利用可能なOA誌のディレクトリ(廃刊・基準外等は削除)。*2 学術出版全体のデータは、The STM Report (Sep. 2009)による。*3 David W. Lewis (2012) The Inevitability of Open Access. College & Research Libraries, 73(5), p493-506

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このように、2002年から10年の間に、OAを取り巻く諸相がかなり変わって来たことを踏まえて、今年の2月にBOAI10周年を記念した会議が開催され、その参加者らが協働で作り上げた新しい提言が9月に発表されました。ここではBOAI10と呼びますが、このBOAI10は、プロローグと、ポリシーについて、ライセンスと再利用について、基盤と持続可能性について、アドボカシーと協調についての4章から構成されています。タイトル中で「デフォルトをオープンとする」と謳われているように、オープンであることはもはや当たり前とし、そうするための手段について、誰が何をすべきか、を具体的に挙げた内容となっています。この10年間でOAは一定の定着を得て、新たな展開のステージに入ったと言えます。

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BOAI10は大変長くまた内容が多岐にわたっていますので、いくつか要点をかいつまんでご紹介します。

プロローグでは、BOAIの理念とその意義を再確認しつつ、OA運動はまだ道半ばであり、この10年間の経験を活かして次の10年間に向けた提言を行う、と、BOAI10の趣旨が述べられています。そして、BOAIの目的と手段を再確認した上で、さらに前進していくとし、次の10年のうちに、全ての分野・全ての国で、OAが当たり前になる、という目標が設定されています。

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このプロローグで、10年間の経験を経た上であらためて確認されている、2002年の提言におけるオープンアクセスの定義は、このようなものでした。以降の章において、具体的なガイドラインが示されていきます。

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第1章はポリシーについて7項目挙げています。大学や研究助成機関に対して、教員の論文や助成対象の論文がリポジトリに登載されることを保証するように求めつつ、オープンアクセスジャーナルへの対応についてはそれぞれの担う役割や立場を考慮した文面となっています。例えば、大学に対しては、教員の投稿先の選択の自由は保障すべきとしたり、オープンアクセスジャーナルでの出版を要求するのではなく奨励すべきとする一方、研究助成機関に対しては、論文の出版者がOA対応でなければ助成対象者に対して出版者を変えるよう要求すべきとしたり、猶予期間は6か月以内とすべき、CC-BY相当の自由なOAを要求すべき、などとしています。研究助成機関に対しては、APCコストを研究コストとして扱うべきとし、助成対象者への支援を求めています。BOAI10には2002年の宣言には見られなかった要素も含まれていますが、その一例が雑誌・論文・著者の評価にインパクトファクターを用いることの批判で、IFに代わる指標の開発を奨励しています。これはIFの誤った用い方を諌めるだけではなく、論文記事レベルの指標に軸足を移すべき、という提言になっています。また、研究者に対して、自分の利益に反するような出版社のために、著者や編集者、査読者としての役割を果たす必要はない、と呼びかけています。

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第2章はライセンスと再利用について1項目挙げています。最近普及が進んできたクリエイティブコモンズライセンスが用いられ、著作物の公表・配布・使用・再利用にはCC-BY相当のライセンスが最適としています。このライセンス下では、複製、頒布、展示、実演、二次的著作物の作成、営利目的の利用が可能です。原作者のクレジットを表示することを守れば、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いものです。ただ、アクセス条件には、有料アクセス、無償アクセス、自由なアクセス、といったように様々なレベルがある中、決して最良のものを達成することに固執するのではなく、その時できることからまずは達成していくべきだとしています。

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第3章は基盤と持続可能性について14項目挙げています。すべての高等教育機関にリポジトリサービスの提供を求めるとともに、在野を含むすべての研究者がリポジトリに登載できるようにすべきとしています。複数のリポジトリの間で再登載やハーベスト、統計の比較が可能となるような、データ形式の標準化・相互運用性についても言及されています。また、リポジトリとオープンアクセスジャーナルの双方に対して、著者に、論文のダウンロード情報や引用情報、さらにそれに代わるインパクト指標も提供することを求めています。オープンアクセスジャーナルの論文出版料(APC)支払いの支援も述べられています。そして、2002年の提言には含まれておらず、昨今の状況を反映させた要素と言えるのが、出版前査読システムとOAは共存可能としつつも、出版後査読とその有効性についての研究を推奨していることです。

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第4章はアドボカシーと協調について6項目挙げています。オープンアクセス出版者やオープンアクセスジャーナルの評価等に、オープンアクセス学術出版者協会を活用することを推奨したり、OAコミュニティに対して、ほかの類似の活動と協働するなど協調した行動を取ることを求めています。そして、OA推進のために、すべてのステークホルダーに対して理解を促進する働きかけを行うべきであり、 (→次のスライドへ続く)

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このようなOAの真実を伝えるべきだとしています:・研究・研究者両者に利益をもたらす・学術的利益だけでなく経済的利益ももたらす・研究の社会的価値を高める・コストは現状への追加予算なしに回収可能・世界中のどこの著作権とも矛盾しない

・最高水準の研究の質と矛盾しない

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2002年の提言と、今回の提言とで、携わった人物やその属性を比較して、BOAI10の多様な提言の背景を考えてみてもよいかもしれません。

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BOAI10の理念に関連する動きをいくつか紹介します。CC-BYライセンスや論文単位の評価指標についてはBOAI10以前から採用・導入が進んできていましたが、その加速度が増しており、既存の大手出版社でも相次いでいます。論文単位の評価指標については購読誌も含んだ動きとなっています。ちなみに、2012年10月にはオープンアクセス学術出版社協会(OASPA)が、オープンアクセス出版になぜCC-BYライセンスが最適なのか、意義や特徴を説く記事を発表しています。 (*3)

[Note]*1 Cf. http://current.ndl.go.jp/node/22193, http://current.ndl.go.jp/node/22276*2 最近の他社導入例:Taylor & Francis(2012年10月末~6誌)、IOP Publishing(10月25日以降に投稿された論文)、Wiley(2012年8月14日付発表)、Springer(2012年1月18日~全誌)*3 Cf. http://johokanri.jp/stiupdates/policy/2012/10/007829.html

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大学のオープンアクセスポリシーの優良事例を集めたサイトも公開されています。なお、BOAI10では”best practice”という表現が使用されていますが、多種多様なすぐれた取り組みがあるということで、本サイトでは”good practice”という表現が使用されています。

[Note]Contents : Preface / Drafting a policy / Adopting a policy / Implementing a policy / Filling the repository / Talking about a policy / Revising this guide / Additional resources段階ごとにさまざまな優良事例を例示。

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直接的な呼応というわけではありませんが、論文がどれだけオープンかを6つの要素で示す指針も発表されています。OAの具体化について意識喚起するもので、現代のOAの動向を表している一例ではないかと思います。

[Note]6要素:Reader Rights, Reuse Rights, Copyrights, Author Posting Rights, Automatic Posting, Machine Readability

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BOAI10は、これからの10年に向けた提言と謳っています。10年後の2022年、OAの諸相は果たしてどうなっているのか。今日のWSの議論が、1人1人がどのような未来を作っていきたいかを考えるためのヒントとなればと思います。 (以上)

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