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Gibbs cloner を用いた組み合わせ最適化と cross-entropy を用いた期待値推計: 道路ネット ワーク強靭化のための耐震化戦略を例として 長江 剛志 a ・武井 伸生 b a 東北大学大学院工学研究科 技術社会システム専攻 ([email protected]) b 東北大学大学院工学研究科 技術社会システム専攻 2015 年度修了生 2016 7 16 () 道路の信頼性アドバンスセミナー @ 近江町交流プラザ (ver1.0.1) 1 / 71

Gibbs cloner を用いた組み合わせ最適化と cross-entropy を用いた期待値推計: 道路ネットワーク強靭化のための耐震化戦略を例として

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Gibbs clonerを用いた組み合わせ最適化とcross-entropyを用いた期待値推計: 道路ネットワーク強靭化のための耐震化戦略を例として

長江剛志 a ・武井伸生 b

a 東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻([email protected])

b 東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻 2015 年度修了生

2016年 7月 16日 (土)道路の信頼性アドバンスセミナー@近江町交流プラザ

(ver1.0.1)

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Page 2: Gibbs cloner を用いた組み合わせ最適化と cross-entropy を用いた期待値推計: 道路ネットワーク強靭化のための耐震化戦略を例として

Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献2 / 71

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大地震による広域道路網の機能障害

I 阪神淡路 (1995): 阪神高速神戸線倒壊をはじめ,道路 7245ヶ所,橋梁 330ヶ所が被災

I 十勝沖 (2003): 高速自動車国道,国道及び県道等累計 68か所で通行規制

I 中越 (2004): 関越自動車道や国道 17号,県管理道路等で多数の通行止め

I 中越沖 (2007): 北陸自動車道,国道 8号,県管理道路等 43区間で通行規制

I 能登半島 (2007): 能登道路,能越自動車道,県管理道路等 29区間通行規制

I 岩手・宮城内陸 (2008): 県管理道路等 22区間で通行規制I 静岡沖 (2009): 東名高速の一部崩壊,通行止めI 東日本大震災 (2011): 東北自動車道,国道 45号,国道 6号が寸断

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莫大な経済損失

迂回交通による混雑悪化(=交通量×追加所要時間×時間単価)I 静岡沖 (2008)では 8/11〜15の 5日間で 21億円の損失 (中日本高速道路, 2008)

ネットワーク容量低下や経路途絶 (孤立化)によるトリップ機会の損失(=旅行できなかった利用者数×旅行していれば得られた便益)I 中越 (2004)では 7市町村で 61の集落が孤立 (内閣府, 2005)I 全国で孤立可能性のある集落は 17,000にのぼる (内閣府, 2010)I 長江ら [1]の試算:渋滞損失+機会損失は復旧費用の約 10倍!!

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防災基本計画 (2012)における道路災害対策

第 2編「地震災害対策編」第 1章「災害予防」第 2節「地震に強い国づくり,まちづくり」I 国,公共機関及び地方公共団体は,主要な鉄道,道路,港湾,空港,通信局舎等の基幹的な交通・通信施設等については,各施設等の耐震化や国土ミッシングリンクの解消等のネットワークの充実,施設・機能の代替性の確保,各交通・通信施設の間の連携の強化等により,大規模災害発生時の輸送・通信手段の確保に努めるものとする.

第 10編「道路災害対策編」第 1章「災害予防」第 2節「道路施設等の整備」I 道路管理者は,道路施設等の点検を通じ,道路施設等の現況の把握に努めるものとする.I 道路管理者は道路における災害を予防するため,必要な施設の整備を図るものとする.I 道路管理者は,道路施設等の安全を確保するため,必要な体制等の整備に努めるものとする.I 道路管理者は,道路防災対策事業等を通じ,安全性・信頼性の高い道路ネットワーク整備を計画的かつ総合的に実施するものとする.

I 国及び地方公共団体は,主要な交通施設の被災による広域的な経済活動,国民生活への支障や地域の孤立化の防止等のため,主要な交通網が集中している地域の土砂災害対策や海岸保全対策を重点的に実施するものとする.

具体的な意思決定のための定量的分析手法必要不可欠.

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道路ネットワーク耐震化問題

道路施設を耐震化することで社会的不便益は減少させられるI 全ての道路施設を一様に耐震化することは非効率米田 [2]らの試算:RC橋脚の耐震化 6,000万円/橋

I 大きな地震外力を受けにくい施設や滅多に利用されない道路は耐震化しなくてもよい?

耐震化によって軽減される社会的不便益と耐震化にかかる費用とのバランスが大事I 耐震化戦略:どの施設を耐震化し,どの施設を現状のまま残すか?

I 費用対効果が最も高い耐震化戦略は?

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既存研究 (1)

道路ネットワークの信頼性I Bell and Cassir[3], Bell and Iida[4]

信頼性の指標I 連結信頼性: Iida and Wakabayashi[5]I 時間信頼性: Asakura et al.[6]I 容量信頼性: Lo and Tung[7; 8], Yang et al.[9], Chen et al.[10]I Unified Network Performance Measure: Nagurney and Qiang[11]

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既存研究 (2)

ネットワークの脆弱性I Critical Infrastructure: Taylor and D’Este[12]I Link importance and site exposure: Jenelius et al. [13]I Degradable network: Nicholson and Du [14]I Link-level vulnerability: Knoop et al. [15]I Road network vulnerability: Jenelius and Mattsson [16]

信頼性を考慮したネットワーク設計問題I 感度分析: Yang [17], [18]I 最適リンク投資問題: Asakura et al. [19]

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既存研究 (3)

道路ネットワークの耐震化の便益評価と最適化I 長江ら [1], Nagae et al.[20]

I 耐震化問題を数理計画問題として分析する枠組を提案I 理解し易さ・実装し易さと再現可能性を目的とした解法を開発I 得られた戦略の最適性 (better solutionかどうかすら)が保証されない

I 提案手法が任意のネットワークに対して有効か否かも未検証I Du and Peeta [21]

I Nagae et al. [20]と同様の問題を確率的最適化問題として定式化I 目的関数 (事後対応に要する時間の期待値 )をMCMCで推計しながら最適化→期待値を過少推計する可能性 (後述)

I 各リンクの耐震化の度合いが連続変数→実際の耐震化の意思決定は「いくつかの設計基準の中から 1つ選択」になる (はず)「2つの耐震化基準 A, Bを (例えば 3:7で)ミックスした橋梁」が自在に設計・施工でき,「投資金額に対する限界損壊確率」が連続的に評価できるなら連続変数でもよい.

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既存研究 (4)

災害時の交通ネットワーク信頼性先行研究 扱う話題  災害規模 複数リンク途絶 最適化

Nicholson and Du (1997) [14] 脆弱性 -Taylor and D’Este (2004) [12] 脆弱性 -

Jenelius et al. (2006) [13] 重要性と暴露 小Chen et al. (2012) [10] リンク重要性 -

Knoop et al. (2012) [15] 脆弱性の指標 -Jenelius and Mattsson (2012) [16] 重要性と暴露 小 X

Du and Peeta (2014) [21] 耐震化戦略 大 X XNagae et al. (2012) [20] 耐震化戦略 大 X X

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やりたいこと

Nagae et al.[20]のモデルに対して,以下の性質を満足する手法を開発するI (極限において)大域的最適解への収束が見込まれるI 任意の規模のネットワークに対して,現実的な計算時間内に

ad-hocに決めたものよりマシな耐震化戦略が具体的に求められる

具体的な目的は後述

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献12 / 71

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モデルの枠組

I 道路ネットワーク上の各リンクに脆弱な交通施設が存在する.

I A: リンク集合I B: 交通施設集合

I 地震災害によって,各リンクは二つの状態のうちどちらか一つの状態になる:

I 通行可能 (ya = 0)か不可能 (ya = 1).I y = ya : a ∈ A: 被災パターンI Y: 被災パターン集合

I 交通施設の耐震性能を次の二つで表現する:I 耐震化されない (xb = 0)か,耐震化される (xb = 1).I x = xb : b ∈ B: 耐震化戦略I X: 耐震化戦略集合

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期待交通不便益

I ua(x): 戦略 xの下でのリンク aの被災確率I φ(y|x): 戦略 xの下での被災パターン yの条件付生起確率

φ(y|x) =∏a∈A

ua(x)ya(1 − ua(x))1−ya

I τ(y): 被災パターン yの交通不便益I 戦略 xの下での期待交通不便益:

T(x) =∑y∈Y

φ(y|x)τ(y) (1)

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道路ネットワーク耐震化問題

I K(x)耐震化戦略 xの耐震化費用

K(x) =∑b∈B

Kbxb

Kb: 施設 b ∈ Bの耐震化にかかる費用I 耐震化戦略 xの社会的損失:

Z(x) :=∑y∈Y

φ(y|x)τ(y)

︸ ︷︷ ︸期待交通不便益 (T(x))

+∑b∈B

Kbxb︸ ︷︷ ︸耐震化費用 (K(x))

I 道路ネットワーク耐震化問題:

minx∈X

Z(x)

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はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献16 / 71

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ネットワーク耐震化問題の例I A: リンク集合I B: 交通施設集合

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

.16

.79

.29

.80 .05

.67

.11

.26

.26 .49

.69 .84

起点 終点 (交通需要)1 3(50) 4(40) 9(60)2 8(50)5 9(100)

minx∈X

Z(x) B∑y∈Y

φ(y|x)τ(y)

︸ ︷︷ ︸交通不便益の期待値

+ K(x)︸︷︷︸耐震化費用

I x = xb: 耐震化戦略 (xb = 1なら耐震化)I y = ya: 被災パターン y = 1なら利用不能)I τ(y): 被災パターン yの下での交通不便益 (=トリップできない利用者数)

I φ(y|x): 戦略 xの下でのパターン yの生起確率

I リンク横の数値は耐震化しない場合の被災確率.耐震化によって被災確率は半分になる.

I 耐震化費用はリンク 1本あたり 10とする.I いずれのリンクも容量 100とする.

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被災パターンごとの交通不便益簡単のため,交通配分モデルとして最大流問題を採用する.トリップできなかった利用者数を交通不便益とする.

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

いずれのリンクも容量 100

起点 終点 (交通需要)1 3(50) 4(40) 9(60)2 8(50)5 9(100)

被災パターンごとの交通不便益

pt. ID a b c d e f g h i j k l τ(y)0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 01 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 502 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 503 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1504 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 505 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 506 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1007 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1508 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 50: : : : : : : : : : : : : :

4093 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2604094 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3004095 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 300

0: 被害なし, 1: 通行不能18 / 71

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交通不便益の期待値 (その 0)

耐震化戦略 xの下での期待交通不便益: T(x) =∑y∈Y

φ(y|x)τ(y)

無対策 x0 = (0, 0, · · · , 0)の場合のリンク被災確率:

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

.16

.79

.29

.80 .05

.67

.11

.26

.26 .49

.69 .84

リンク耐震化費用:

K(x0) = 0

pt. ID τ(y) φ(y|x0) φ(y|x0)τ(y)0 0 9.68 (-05) 0.00 (+00)1 50 1.84 (-05) 9.22 (-04)2 50 3.64 (-04) 1.82 (-02)3 150 6.94 (-05) 1.04 (-02)4 50 3.95 (-05) 1.98 (-03)5 50 7.53 (-06) 3.77 (-04)6 100 1.49 (-04) 1.49 (-02)7 150 2.83 (-05) 4.25 (-03): : : :

4092 260 2.90 (-06) 7.53 (-04)4093 260 5.51 (-07) 1.43 (-04)4094 300 1.09 (-05) 3.27 (-03)4095 300 2.07 (-06) 6.22 (-04)

T(x) 204.55

社会的不便益: Z(x0) = T(x0) = 204.55.19 / 71

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交通不便益の期待値 (その 1)

リンク aのみを耐震化する戦略 x1 = (1, 0, · · · , 0)の場合のリンク被災確率:

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

.08

.79

.29

.80 .05

.67

.11

.26

.26 .49

.69 .84

リンク耐震化費用:

K(x1) = 10

pt. ID τ(y) φ(y|x1) φ(y|x1)τ(y)0 0 1.06 (-04) 0.00 (+00)1 50 9.22 (-06) 4.61 (-04)2 50 3.99 (-04) 1.99 (-02)3 150 3.47 (-05) 5.20 (-03)4 50 4.33 (-05) 2.17 (-03)5 50 3.77 (-06) 1.88 (-04)6 100 1.63 (-04) 1.63 (-02)7 150 1.42 (-05) 2.13 (-03): : : :

4092 260 3.17 (-06) 8.24 (-04)4093 260 2.76 (-07) 7.17 (-05)4094 300 1.19 (-05) 3.58 (-03)4095 300 1.04 (-06) 3.11 (-04)

T(x) 201.24

社会的不便益:Z(x1) = T(x1) + K(x1) = 201.24 + 10 = 211.24

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交通不便益の期待値 (その 345)

リンク a, d, e, g, iを耐震化する戦略 x345 =(1, 0, 0, 1, 1, 0, 1, 0, 1, 0, 0, 0)の場合のリンク被災確率:

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

.08

.79

.29

.40 .02

.67

.05

.26

.13 .49

.69 .84

リンク耐震化費用:

K(x345) = 50

pt. ID τ(y) φ(y|x345) φ(y|x345)τ(y)0 0 4.12 (-04) 0.00 (+00)1 50 3.58 (-05) 1.79 (-03)2 50 1.55 (-03) 7.75 (-02)3 150 1.35 (-04) 2.02 (-02)4 50 1.68 (-04) 8.41 (-03)5 50 1.46 (-05) 7.31 (-04)6 100 6.33 (-04) 6.33 (-02)7 150 5.50 (-05) 8.25 (-03): : : :

4092 260 1.44 (-07) 3.75 (-05)4093 260 1.25 (-08) 3.26 (-06)4094 300 5.42 (-07) 1.63 (-04)4095 300 4.72 (-08) 1.41 (-05)

T(x) 182.35

社会的不便益: Z(x345) = T(x345) + K(x345) =182.35 + 50 = 232.35

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交通不便益の期待値 (その 4095)

全てのリンクを耐震化する戦略 x4095 = (1, 1, · · · , 1)の場合のリンク被災確率:

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

.08

.40

.15

.40 .02

.34

.05

.13

.13 .24

.35 .42

リンク耐震化費用:

K(x4095) = 120

pt. ID τ(y) φ(y|x4095) φ(y|x4095)τ(y)0 0 3.75 (-02) 0.00 (+00)1 50 3.26 (-03) 1.63 (-01)2 50 2.50 (-02) 1.25 (+00)3 150 2.17 (-03) 3.26 (-01)4 50 6.62 (-03) 3.31 (-01)5 50 5.76 (-04) 2.88 (-02)6 100 4.41 (-03) 4.41 (-01)7 150 3.84 (-04) 5.76 (-02): : : :

4092 260 6.71 (-09) 1.75 (-06)4093 260 5.84 (-10) 1.52 (-07)4094 300 4.48 (-09) 1.34 (-06)4095 300 3.89 (-10) 1.17 (-07)

T(x) 108.80

社会的不便益: Z(x4095) =T(x4095) + K(x4095) = 108.80 + 120 = 228.80

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最適耐震化戦略

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k l

st. ID a b c d e f g h i j k l T(x) K(x) Z(x)0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 204.55 0.00 204.551 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 201.24 10.00 211.242 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 188.38 10.00 198.383 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 185.09 20.00 205.09: : : : : : : : : : : : : : : :

2569 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 150.39 40.00 190.392570 0 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 136.53 40.00 176.532571 1 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 132.61 50.00 182.612572 0 0 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 147.06 40.00 187.06

: : : : : : : : : : : : : : : :4093 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 128.17 110.00 238.174094 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 113.09 110.00 223.094095 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 108.80 120.00 228.80

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最適耐震化戦略

1 2 3

4 5 6

7 8 9

a

b

c

d ef

g

h

i j

k lリ

ンク b, d, j, lのみを重点的に耐震化することで社会的不便益を最小化できる

st. ID a b c d e f g h i j k l T(x) K(x) Z(x)0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 204.55 0.00 204.551 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 201.24 10.00 211.242 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 188.38 10.00 198.383 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 185.09 20.00 205.09: : : : : : : : : : : : : : : :

2569 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 150.39 40.00 190.392570 0 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 136.53 40.00 176.532571 1 1 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 132.61 50.00 182.612572 0 0 1 1 0 0 0 0 0 1 0 1 147.06 40.00 187.06

: : : : : : : : : : : : : : : :4093 1 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 128.17 110.00 238.174094 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 113.09 110.00 223.094095 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 108.80 120.00 228.80

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数え上げの恐怖

ネットワークの規模が少しでも大きくなると,被災パターンや戦略の数え上げは不可能.

ネットワーク リンク数 被災パターン数/戦略数3 × 3格子 12 4, 0964 × 4格子 24 16, 777, 2165 × 5格子 40 1, 099, 511, 627, 776Sioux-Falls 76 7.56 × 1022

12 × 12格子 264 2.96 × 1079

c.f.)I 観測可能な宇宙の星の数:3 × 1022 ∼ 7 × 1022

I 観測可能な宇宙内の原子の数:1080

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本研究の目的

ネットワーク耐震化問題 (厳密な定式化は Nagae et al.[20])に固有の 2種類の組み合わせ爆発に対応した効率的計算手法を開発する:

被災パターンが膨大なため,目的関数の厳密な評価が困難→目的関数を推定するために Cross-entropy法 (CE)法を用いた重点サンプリング

非凸組み合わせ最適化問題で戦略集合が膨大なため,大域的最適解を見つけることが困難→ Gibbs cloner (GC)法を用いた組合せ最適化

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献26 / 71

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稀少確率推計問題

CE法 / GC法では,期待値推計問題や組み合わせ最適化問題を稀少確率推計問題に帰着させて解く. 事象集合Z上の確率密度f : Z→ [0, 1]と何らかの評価関数 S : Z→ Rが与えられた時,評価関数が γ以上となる確率は以下の式で表される.

` = Pr. f[Iz:S(z)≥γ(Z)] =∑

Z∈Z

f (Z)Iz:S(z)≥γ(Z)ここで, IA(Z)は集合A ⊆ Zに対する標示関数 (indicatorfunction)で, ZがAに含まれるなら 1,そうでなければ 0を取る.以下では簡単のため,標的事象 z : S(z) ≥ γを S(Z) ≥ γと記載し, Iz:S(z)≥γ(Z)を IS(Z)≥γ と記載する.`が十分に小さい (例えば, ` < 10−5)とき, S(Z) ≥ γを稀少事象,`を稀少確率と呼ぶ.

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期待値推計/組み合わせ最適化と稀少確率推計問題 (1)

期待値推定耐震化戦略 xを与件とした条件つき期待交通不便益

T(x) =∑y∈Y

φ(y|x)τ(y)

を推計する代わりに,「元の密度から被災パターン Y を抽出した時に期待値への貢献度 E(Y) = φ(Y |x)τ(Y)が γ以上となる確率」

` =∑Y∈Y

φ(Y)IE(Y)≥γ

を推計する問題を考える.

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期待値推計/組み合わせ最適化と稀少確率推計問題 (2)

組み合わせ最適化耐震化戦略 xに対応する社会的損失 Z(x) = T(x) + K(x)が評価できるとして,組み合わせ最適化問題

minx∈X

Z(x)

を解く代わりに,「一様分布から耐震化戦略 X を抽出した時に社会的損失 Z(X)が γ以下となる確率」

` =∑X∈X

µ(X)IZ(X)≤γ

を推計する問題を考える. ただし, µ(X) = 1|X|は X上の一様分布.

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Crude Monte-Carlo法による稀少確率推計

稀少確率を推計する最もナイーブな方法は, crude Monte-Carlo(CMC)法: 元の密度 f (·)からN個の標本 Z1, · · · ,ZN を抽出し,

ˆ=1

N

N∑n=1

IS(Zn)≥γ, Zn ∼ f (·)

を不偏推定量とする.しかし, S(Z) ≥ γが稀少事象の場合, `を精度よく推定するためには膨大な標本が必要となる.

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重点サンプリング

この問題点を克服する手法の 1つが重点サンプリング: 元の密度f (·)とは異なる別のサンプリング密度 g : Z→ [0, 1]からN個の標本 Z1, · · · ,ZN を抽出し,

ˆ=1

N

N∑n=1

IS(Zn)≥γW(Zn), Zn ∼ g(·)

を尤度比推定量 (likelihood ratio (LR) estimator)とする. ただし,

W(Z) =f (Z)g(Z)

は尤度比 (LR:likelihood ratio)と呼ばれる.どのようにサンプリング密度 gを選べばよいのか?

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理想的なサンプリング密度

標的事象 S(Z) ≥ γが確率 1で生成されるような密度:

g∗(Z, γ) =IS(Z)≥γ f (Z)

`

=

1 if S(Z) ≥ γ0 otherwise

を用いれば,たった 1つの標本で誤差ゼロで `を推定できる.そんな密度が最初から判れば世話はない.

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多段階アルゴリズム (multi-level algorithm)

目標レベルに徐々に近づくようなレベルの順列γ(1) ≤ γ(2) ≤ · · · ≤ γ(T)

∼ γ

を考え,各 γ(t) に対応するサンプリング密度 g(t) = g∗(Z;γ(t))の列 g(1), g(2), · · · , g(T) が g∗(Z;γ)に漸近するような手続きを構成.その基本構造は以下の通り.

Step 0 初期密度 g(0) を与え (e.g. g(0) = f ), t = 1とする.Step 1 既知のサンプリング密度 g(t−1) からN個の標本

Z1, · · · ,ZN を抽出する. 各標本についてS(Z1),S(Z2), · · · ,S(ZN)を計算する. 上位M(< N)個をエリート標本 Z∗1, · · · ,Z

M とし,閾値となるレベルを γ(t) とする.

Step 2 エリート標本 Z∗1, · · · ,Z∗

M を用いて新たなサンプリング密度 g(t) = g∗(Z;γ(t))を求める.

Step 3 収束条件を満足すれば終了.そうでなければt = t + 1として Step 1へ.

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CE法と GC法の特徴 (1)

Cross entropy (CE)法I 元の分布とサンプリング密度を,それぞれ,同じ族のパラメトリックな密度関数 f (Y;u), f (Y;v)で表し,各繰返しにおいてサンプリング密度 g(t) を求める問題を,サンプリング・パラメータv(t) を求める問題に帰着

I 理想的な密度とサンプリング密度との「距離」を cross entropyで評価し,それを最小とするサンプリング・パラメータを非線形最適化問題の解として特徴づける

I 非線形最適化問題が解析解を持つことを利用してサンプリング・パラメータの簡潔な改訂ルールを導出

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CE法と GC法の特徴 (2)

Gibbs cloner (GC)法I 各繰返しにおいてサンプリング密度 g(t) (やそれに対応するパラメータ)を明示的に取り扱わない

I エリート標本の複製 (cloning)とMCMC (Markov chainMonte-Carlo)の手法である Gibbsサンプラーを活用することで,サンプリング密度 g(t) に従う標本を効率的に生成

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献36 / 71

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対応する稀少確率推計問題 (再掲)

耐震化戦略 xを与件とした条件つき期待交通不便益

T(x) =∑y∈Y

φ(y|x)τ(y)

を推計する代わりに,「元の密度 f (·;u) = φ(Y |x)から被災パターン Y を抽出した時に期待値への貢献度 E(Y) = φ(Y |x)τ(Y)がγ以上となる確率」

` =∑Y∈Y

f (Y;u)IE(Y)≥γ

を推計する問題を考える.

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Cross entropyによる「理想的密度」との距離 (1)

期待値への貢献度 E(y)が γ以上となる被災パターン yが確率 1で生成される理想的な密度:

g∗(Y) =IE(Y)≥γφ(Y)

`

と (パラメトリックに表現された)サンプリング密度fv(Y) = f (Y;v)との乖離を cross entropy (Kullbuck-Leiblerdivergence /相対エントロピー)で評価する:

D(g∗, fv) =∑Y∈Y

g∗(Y) lng∗(Y)fv(Y)

=∑Y∈Y

g∗(Y) ln g∗(Y) −∑Y∈Y

g∗(Y) ln fv(Y)

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最適サンプリング・パラメータ (1)

理想的な密度 g∗(Y) = IE(Y)≥γ f (Y;u)/`との cross entropy

D(g∗, fv)を最小とするパラメータは

v∗ = arg minvD(g∗, fv) =

∑Y∈Y

g∗(Y) ln g∗(Y) −∑Y∈Y

g∗(Y) ln fv(Y)

⇔ arg maxv

∑Y∈Y

g∗(Y) ln f (Y;v) (g∗ ln g∗ の項は vと独立なので)

⇔ arg maxv

∑Y∈Y

IE(Y)≥γ f (Y;u) ln f (Y;v) (g∗ を代入)

の解として与えられる.ただし,この問題は目的関数の厳密な評価にYの列挙が必要なため,実用上は解けない. そこで,以下の 2つの工夫を行なう.

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最適サンプリング・パラメータ (2)

1. 元の分布 f (·;u)から抽出された N個の標本 Y1, · · · ,YN を用いた stochastic counterpartの解:

v = arg maxv

1

N

N∑n=1

IE(Yn)≥γ ln f (Yn;v) Yn ∼ f (·;u)

を最適パラメータの推定量とする.2. 元の分布 f (·;u)から標的事象が抽出されることは極めて稀なため,既知のサンプリング密度 f (·;w)を用いた重点サンプリングによって目的関数を書き直す:

v = arg maxv

1

N

N∑n=1

IE(Yn)≥γW(Yn;u,w) ln f (Yn;v) Yn ∼ f (·;w)

ここで, W(Y;u,w) = f (Y;u)/ f (Y;w)は尤度比.

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多段階アルゴリズム

一般に,標的事象 E(Y) ≥ γを十分に抽出できるようなサンプリング・パラメータwを予め求めておくことは不可能なので,多段階アルゴリズム (multi-level algorithm)を用いてレベルとサンプリング・パラメータの列を順次生成する.具体的には, t回目の繰返しにおいて,サンプリング・パラメータwに直前の繰返しで求められた v(t−1) を用い,目標レベル γを(それより小さい)レベル γ(t) に置き換えた問題:

maxv

1

N

N∑n=1

IE(Yn)≥γ(t)

W(Yn;u,v(t−1)) ln f (Yn;v) Yn ∼ f (·;v(t−1))

を解いて,新たなサンプリング・パラメータ v(t) を求める. γ(t) やv(t) の決定には,エリート標本の考え方を利用する.

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レベルγ(t)の決定方法

直前のサンプリング密度 f (·;v(t−1))から N個の標本 Y1, · · · ,YNを抽出する. それぞれの標本について,期待値への貢献度E(Y1), · · · ,E(YN)を求め,大きい方から順に

E(1) ≥ E(2) ≥ · · · ≥ E(N)

と並べ替える. そして,レベルとして上位から dρNe番目の値を採用する:

γ(t) = E(dρNe)

ここで, ρは極度に小さすぎないパラメータ (e.g. ρ = 0.01). これにより,抽出された N個の標本 Y1, · · · ,YN ∼ f (·;v(t−1))のうち,少なくとも dρNe個は E(Yn) ≥ γ(t) を満たすことが保証される.これらの標本:

Y∗(t) = Yn : E(Yn) ≥ γ

(t)

をエリート標本と呼び,その要素数をM(t) で表す.

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サンプリング・パラメータ v(t)の決定方法 (1)

レベル γ(t) の決定に用いたのと同じ標本 Y1, · · · ,YN を用いることにすれば,サンプリング・パラメータ決定問題:

maxv

1

N

N∑n=1

IE(Yn)≥γ(t)

W(Yn;u,v(t−1)) ln f (Yn;v)

の目的関数は,エリート標本Y∗(t) を用いて,

maxv

1

N

∑Yn∈Y∗(t)

W(Yn;u,v(t−1)) ln f (Yn;v)

と書き直せる. エリート標本は少なくとも dρNe個存在することが保証されるから,「標本が少な過ぎて目的関数が評価できない」という問題は回避できる.

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サンプリング・パラメータ v(t)の決定方法 (2)

さらに, ln f (Y;v)が vについて凹かつ連続微分可能ならば,最適パラメータの推定量 vは非線形連立方程式:∑

Yn∈Y∗(t)

W(Yn;u,v(t−1))∇v ln f (Yn;v) = 0

を解いて求められる. 特に, f (Y;v)が自然指数族 (naturalexponential family)ならば,この非線形方程式が解析解(closed-form solution)を持つことが知られている [22].例えば,ネットワーク耐震化問題では被災パターン生起確率 (ひいてはサンプリング密度)として多変数 Bernoulli分布:

f (Y;v) =∏a∈A

vyaa (1 − va)

1−ya

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サンプリング・パラメータ v(t)の決定方法 (3)

を採用するため,パラメータの推定量が以下の簡潔な式で求められる:

v(t)a =

∑Yn∈Y∗(t) W(Yn;u,v(t−1))Yn,a∑

Yn∈Y∗(t) W(Yn;u,v(t−1)).

この式の分子および分母は,それぞれ,I 分子: エリート標本の中でリンク aが被災しているものの尤度比Wu,w(t−1)(·)の和∑

Yn∈Y∗(t)

W(Yn;u,v(t−1))Yn,a

I 分母: エリート標本の尤度比の和∑Yn∈Y∗(t)

W(Yn;u,v(t−1))

であるから,極めて容易に計算できる.45 / 71

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CE法による期待交通不便益推定 (1)

1. 耐震化戦略 xの下でのリンクの損傷確率 u = ua(x)を初期パラメータ v(0) = uとし,繰り返しカウンタを t = 1とする.

2. サンプリング密度 f (·;v(t−1))からN個の標本被災パターンY1, · · · ,YN を抽出し, (元の密度 f (·;u)で測った)期待値への貢献度 E(Yn) = f (Yn;u)τ(Yn)の大きい方からM番目の値を γ(t)とする. エリート標本をY∗(t) = Yn : E(Yn) ≥ γ(t)とする.

3. サンプリング・パラメータを以下の式で改訂する.

v(t)a =

∑Yn∈Y∗(t) W(Yn;u,v(t−1))Yn,a∑

Yn∈Y∗(t) W(Yn;u,v(t−1)).

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CE法による期待交通不便益推定 (2)

4. 適当な t ≥ d (eg. d = 5)について

γ(t) = γ(t−1) = · · · = γ(t−d)

ならば終了する (最後の反復を Tとする);そうでなければ,t = t + 1として 2に戻る.

こうして得られた参照パラメータ v(T) の下で,適当な数 (例えばK個)の被災標本パターン Y1, · · · ,YK を抽出し,以下を期待交通不便益の LR推定量とする:

T(x) =1

K

K∑k=1

τ(Yk)W(Yk;u,v(T)), Yn ∼ f (·,v(T))

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献48 / 71

Page 50: Gibbs cloner を用いた組み合わせ最適化と cross-entropy を用いた期待値推計: 道路ネットワーク強靭化のための耐震化戦略を例として

対応する稀少確率推計問題 (再掲)

耐震化戦略 xに対応する社会的損失 Z(x) = T(x) + K(x)が評価できるとして,組み合わせ最適化問題

minx∈X

Z(x)

を解く代わりに,「一様分布から耐震化戦略 X を抽出した時に社会的損失 Z(X)が γ以下となる確率」

` =∑X∈X

µ(X)IZ(X)≤γ

を推計する問題を考える. ただし, µ(X) = 1|X|は X上の一様分布.

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Page 51: Gibbs cloner を用いた組み合わせ最適化と cross-entropy を用いた期待値推計: 道路ネットワーク強靭化のための耐震化戦略を例として

Gibbs cloner法の基本構造

CE法と同様に,γ(1) ≥ γ(2) ≥ · · ·γ(T)

と次第に小さくなるようなレベルの列と,それに対応したサンプリング密度の列

g∗(·;γ(1)), g∗(·;γ(2)), · · · , g∗(·;γ(T))

を生成. ここで, g∗(·;γ)は「社会的損失 Z(X)が γ以下となるような耐震化戦略 xを確率 1で生成する密度」:

g∗(X;γ) =

1 if Z(X) ≤ γ

0 otherwise

g∗(·;γ)の関数形を特定化しないので,サンプリングに工夫が必要.

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Page 52: Gibbs cloner を用いた組み合わせ最適化と cross-entropy を用いた期待値推計: 道路ネットワーク強靭化のための耐震化戦略を例として

GibbsサンプラーによるMCMC (1)

サンプリング密度 g(X)から直接標本を取り出すことが困難な場合によく使われるのが,MCMC (Markov chain Monte-Carlo)法:定常分布が g(X)となるようなMarkov連鎖を構成するように標本 X1,X2, · · ·を順に生成する.その具体的な方法の 1つとして,最もよく知られるのが Gibbsサンプラー:

n番目の標本 Xn = (Xn,1, · · · ,Xn,B)が与えられた時,n + 1番目の標本の各要素 Xn+1,1, · · · ,Xn+1,B を以下のように順に生成:

1. Xn+1,1 を g(X1|Xn,2,Xn,3, · · · ,Xn,B)から生成2. Xn+1,2 を g(X2|Xn+1,1,Xn,3, · · · ,Xn,B)から生成3. Xn+1,3 を g(X3|Xn+1,1,Xn+1,2,Xn,4, · · · ,Xn,B)から生成

以下,同様にして, Xn+1,4, · · · ,Xn+1,B を生成

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GibbsサンプラーによるMCMC (2)

Gibbsサンプラーを用いて g∗(X;γ)に従う標本戦略 X1, · · · ,XNを抽出するための具体的な手続きは,以下のように整理できる.

1. Z(X0) ≤ γなる初期標本 X0 = X を探し, n = 1とする.2. n番目の標本戦略を以下の手続きで生成する:

2.1 二項分布に従う乱数 χ1 ∼ Ber(12

)を発生させ,

Z(χ1,Xn−1,2,Xn−1,3, · · · ,Xn−1,B) ≤ γなら Xn,1 = χ1,そうでなければ Xn,1 = Xn−1,1 とする.

2.2 χ2 ∈ Ber(12

)を発生させ, Z(Xn+1,1, χ2,Xn−1,3, · · · ,Xn−1,B) ≤ γ

なら Xn,2 = χ2,そうでなければ Xn,2 = Xn−1,2 とする.2.3 χ3 ∈ Ber

(12

)を発生させ,

Z(Xn+1,1,Xn+1,2, χ3,Xn−1,4, · · · ,Xn−1,B) ≤ γなら Xn,3 = χ3,そうでなければ Xn,3 = Xn−1,3 とする.

2.4 以下,同様に Xn,3, · · · ,Xn,B を決定する.

3. n = Nならば終了. そうでないなら n = n + 1として 2. へ戻る.

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GibbsサンプラーによるMCMC (3)

上述の手続きによって生成された標本 X1, · · · ,XN のうち,最初の方に生成されたもの (i.e. nが小さいもの)は,初期標本 X0 の周辺に偏在する. そのため,通常は,最初の K個を稼働検査 (burn-in)期間として棄てた後に,改めて N個の標本を生成する.このため, Gibbsサンプラーを組み合わせ最適化の多段階アルゴリズムにそのまま適用するには,以下の問題点が残る:I X1, · · · ,XN が g∗(X;γ)に従うことを保証するためには

burn-in期間 Kを十分に大きく取る必要があるI γ(t) を改訂するたびに,初期標本 X0 から新たにMCMCを行なう必要がある (t− 1回目までに求めた標本が活用できない).

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Bootstrapによる Gibbsサンプラーの改良 [24] (1)

t回目繰返しにおいて, g∗(·;γ(t−1))に従う標本X

(t−1) = X(t−1)1 , · · · ,X(t−1)

M が得られているなら,それを使わない手は無い→ bootstrapしたものを初期状態として複数の Gibbサンプラーを並走させる.

Bootstrap法 [23]

事象集合X上の確率分布 f (X)の性質を知るための方法の 1つ. f (X)に従うことが判っている標本 (データ) x1, · · · , xN ∼ f (x)が与えられているとする. この標本に対して B N回の復元抽出を行なって得られる標本

x1, · · · , xB

の統計量 (比率,平均,分散など)を用いて元の分布 f (X)の性質を調べる.

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Bootstrapによる Gibbsサンプラーの改良 [24] (2)

Botev and Kroese[24]のアルゴリズム1. 予め γ(0) ≥ γ(1) ≥ γ(2) ≥ · · · ≥ γ(T) と, g∗(X;γ(0))に従う N個のエリート標本X∗(0) = X(0)

1 , · · · ,X(0)

N を生成しておく. t = 1とする.

2. t− 1回目のエリート標本 X∗(t−1)から復元抽出によってN個の初期標本 X1, · · · , XN を生成する.

3. n = 1, · · · ,Nのそれぞれについて, Xn を初期標本とした Gibbsサンプラーを行ない, g∗(X;γ(t−1))に従う標本 Xn を生成する.

4. X1, · · · ,XNの中から Z(Xn) ≤ γ(t)を満たす標本をエリート標本とし,その集合を X∗(t) = Xn : Z(Xn) ≤ γ(t)とする.

5. t = Tなら終了. そうでなければ t = t + 1として 2. に戻る.

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Bootstrapによる Gibbsサンプラーの改良 [24] (3)

Botev and Kroese[24]の問題点I レベルの列 γ(0) ≥ γ(1) ≥ γ(2) ≥ · · · ≥ γ(T) を予め与えないといけない→最適値のアタリがついていないと厳しい (γ(t)を求めるための pilot-runの手法が提案されてはいる [24])

I MCMCステップ 3. において,例えば, N個の初期標本のそれぞれから r回 Gibbsサンプラーを行なった場合,最初の (r − 1)N個の標本を burn-inとして棄ててしまう→棄てた中に社会的損失が γ(t) 以下となるものがあるかもしれない.

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Gibbs cloner (Rubinstein [25]) (1)

Botev and Kroese [24]アルゴリズムをさらに改良I CE法と同様に γ(1), γ(2), · · ·を adaptiveに改訂I Cloningによって, Gibbsサンプラーにおける burn-inの回数と bootstrapにおける復元抽出の回数をうまくバランス

t − 1回目の繰返しで選抜されたエリート標本を

X∗(t−1) =

X∗(t−1)1 , · · · ,X∗(t−1)

M(t−1)

とする. Gibbs clonerでは, t回目のサンプリングおよび γ(t) の改訂を, (1つ前に得られた)エリート標本 X∗(t−1) およびレベルγ(t−1) を用いて行う. その手続きは, 3つのパラメータ η(t), b(t) および ρによって以下のように特徴づけられる:

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Gibbs cloner (Rubinstein [25]) (2)

1. X∗(t−1) の各要素を η倍に複製した (i.e. (η(t) − 1)個の複製(clone)にそれ自身を加えた)もの

X(t) =

X∗(t−1)1 , · · · ,X∗(t−1)1︸ ︷︷ ︸

η(t)

, · · · ,X∗(t−1)M(t−1) , · · · ,X

∗(t−1)M(t−1)︸ ︷︷ ︸

η(t)

,

= η(t)X∗(t−1)

を初期標本とする.2. M(t−1)η(t) 個の初期標本 X(t) のそれぞれから b(t) 世代分の

Gibbsサンプラーを行ない, g∗(X;γ(t−1))に従うN(t) = M(t−1)η(t)b(t) 個の標本 X(t) を生成する.

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Gibbs cloner (Rubinstein [25]) (3)

3. 標本 X(t)1 , · · · ,X

(t)N(t) を社会的損失 Z(X(t)

n )が小さい方から順に

Z(1) ≤ Z(2) ≤ · · · ≤ Z(N(t))

と並べ,上位から dρN(t)e番目の値を γ(t) として採用する:

γ(t) = Z(dρNe)

これにより,少なくとも dρN(t)e個の Z(X(t)

n ) ≤ γ(t) を満たすことが保証される. これらの標本をエリート標本 X∗(t) とする.

GC法では, N(t)∼ Nかつ,複製倍数 η(t) とMCMC世代数 b(t) が

適度にバランスするように,以下の式を満たす中で同程度の整数が選ばれる:

η(t)b(t) =N

M(t).

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GC法による耐震化戦略の導出 (1)

1. 二項分布 Ber(12

)に従う N個の耐震化戦略 X(0) を求める.

N(0) = N,繰り返しカウンタを t = 1とする.2. X(t−1) の各要素について社会的損失を計算し, dρN(t−1)

e番目に小さい社会的損失を γ(t) とする. エリート標本をX∗(t) = X(t)

n : Z(X(t)n ) ≤ γ(t)とし,その要素数をM(t)とする.

3. 適当な t ≥ d (eg. d = 5)について

γ(t) = γ(t−1) = · · · = γ(t−d)

ならば終了する (最後の反復を Tとする).4. 複製倍数 η(t) およびMCMC世代数 b(t) を決定する.5. X∗(t−1) を η(t) 倍に複製したものを X(t) とする.6. X(t) の各要素を初期標本とした Gibbsサンプラーにより,

g∗(X;γ(t))に従う標本を b(t) 世代分生成したものをX(t) とする.

7. t = t + 1として 2. に戻る.60 / 71

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献61 / 71

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献62 / 71

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まとめ (1)

I 道路ネットワークの耐震化問題に対してI 膨大な被災パターンを列挙することなく,ある耐震化戦略の下での条件付期待値交通不便益を効率的に推定する方法

I 膨大な耐震化戦略を列挙することなく,優れた耐震化戦略を効率的に求める方法

を,乱択アルゴリズムを活用して開発I いずれの手法も,対象とする期待値推定問題/組み合わせ最適化問題を稀少確率推計問題に帰着

1. 与えられたサンプリング密度に従う標本を数多く抽出し,その中からエリート標本を選び出す

2. エリート標本がより多く生成されるようにサンプリング密度を改訂する

という多段階 (multi-level)アルゴリズムを採用I CE(cross entropy)法による期待値推定

I 被災パターンが従う「元の密度」「理想の密度」「サンプリング密度」を同族の密度関数でパラメトリックに表現

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まとめ (2)

I 理想の密度とサンプリング密度との乖離を cross-entropyで測り,それを最小化するようにパラメタを改訂

I 遺伝的アルゴリズムに似たシンプルな改訂ルールI 期待交通不便益を精度よく効率的に推計

I GC(Gibbs cloner)法による組み合わせ最適化I ノンパラメトリックな密度から耐震化戦略をランダムに生成I Bootstrap法 (cloning)とMCMC法 (Gibbsサンプラー)を組み合わせることで,サンプリング密度を明示的に取り扱うことなく,標本抽出とサンプリング密度の改訂を効率的に行なう

I 大域的最適解 (やそれに準ずる解)を効率的に導出

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今後の課題

I 方法論的なところI 耐震性能の多レベル化 (e.g. 松,竹,梅)I 混雑やトリップ中止を評価できる交通配分 (e.g. 利用者均衡配分)

I 並列化・大規模化 (「 N個の標本から上位 ρN個を求める」部分は並列化と相性がよさそう)

I 実証! 実証!実証!I 「言うてもデカいネットワークになったら動かへんのちゃう?」「やってみないと判らないです」の無限ループ

I 交通不便益の計量に必要I 「ネットワーク構造」「OD交通量」「各リンク上の交通施設」「トリップできない時の交通不便益」

I 被災パターン生起確率の計量に必要I 各交通施設の「地理座標」「耐震性能ごとの脆弱性と耐震化費用」

I 想定される地震シナリオと,各シナリオにおける地震強度分布(震央と震央強度が判れば,各地点の地震強度は経験式から推定可能 [26])

I

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今後の課題

I 方法論的なところI 耐震性能の多レベル化 (e.g. 松,竹,梅)I 混雑やトリップ中止を評価できる交通配分 (e.g. 利用者均衡配分)

I 並列化・大規模化 (「 N個の標本から上位 ρN個を求める」部分は並列化と相性がよさそう)

I 実証! 実証!実証!I 「言うてもデカいネットワークになったら動かへんのちゃう?」「やってみないと判らないです」の無限ループ

I 交通不便益の計量に必要I 「ネットワーク構造」「OD交通量」「各リンク上の交通施設」「トリップできない時の交通不便益」

I 被災パターン生起確率の計量に必要I 各交通施設の「地理座標」「耐震性能ごとの脆弱性と耐震化費用」

I 想定される地震シナリオと,各シナリオにおける地震強度分布(震央と震央強度が判れば,各地点の地震強度は経験式から推定可能 [26])

I あとやる気と根気と時間←無限ループの主要因65 / 71

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Outline

はじめに

モデル

例題

稀少確率推計問題と重点サンプリング

Cross entropy法を用いた期待交通不便益推計

Gibbs cloner法を用いた組み合わせ最適化

ネットワーク耐震化問題への適用結果

まとめと今後の課題

参考文献66 / 71

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参考文献 (1)

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[2] 米田慶太,川島一彦,庄司学,藤田義人,耐震技術基準の改訂に伴うRC橋脚及びくい基礎の耐震性向上度に関する検討,第 2 回地震時保有水平耐力法に基づく橋梁の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集 2 (1998) 453–460.

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