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Masuda 1993

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【論文】 Netsu Bussei 7 •k4•l (1993) 227/233

超微粒子分散による液体の熱伝導率 と粘性率の変化 (Al2O3, SiO2, TiO2超 微 粒 子 の 分 散)

増田英俊, 江幡 晶,*1 寺前和成,*2 菱沼信夫

東北大学流体科学研究所

〒980仙 台市青葉区片平2-1-1

超微粒子 を少量, 液体 に分散 させ るこ とに よって, 母液 の熱伝 導率 を どれだけ変え られ

るかが実験的 に試み られた. 超微 粒子 としてAl2O3, SiO2お よびTiO2超 微粉末 を, 液体 と

して水 を用 い, 安定 な分散系 を生成 した. 非定常細線 加熱法 で分散 系の有効熱伝導率 を測

定 し, 超微粒 子の種類, 粒 子濃度, 温度 による熱伝導率 の変化傾向 を明 らかに した. また

それ ら分散媒体 の粘性 率 も測定 し, その増加傾 向を検 討 した.

元東北大学大学院, 現東 陶機器 (株).

東北大学大学院.

Al2O3とSiO2は 日本 アエ ロジル株 式会社 製で商品名 はそれ

ぞれAEROSIL 200CFとAluminum Oxide C, TiO2は チタ

ン工業株式会社製 のSTT-65Cで ある.

1. 緒 言

あ る物 質 (母材) に, 物 性値 ので き るだ け異 なる他

の物 質 を混合分 散 させて母 材 の性質, 特 に熱 伝導 率な

どを改変 しよ うとい う試 み は以 前か ら多 く行 われ てお

り [1], ま たその よ うな分散 系物質 の物性値 の推算 式 に

関 す る研 究 も多 い [2, 3]. その場合 に扱わ れて いる混合

物 質 は, 分散質 も分散 媒 も ともに固相 とい う固・固分散

系 が圧倒 的 に多 く [4, 5], 逆 に固・液分散 系は非 常に少 な

い [6]. 著者 らは先 に, 液体 の熱伝 導率 制御 とい う観 点

か ら, 少 量 のα-Fe2O3ま た はTiO2超 微粒 子を液 体 に安

定 分散 させ た ときの混合物 質, す なわ ち固・液分 散系 の

有 効熱 伝導 率を 測定 した [7].

金 属 または セラ ミックスの超微 粒子 は近 年 さ まざま

な種類 と粒 子径 (1~100nm) の ものが多数 製造 され

て お り, 粒子 径 を極 め て小 さ くす るこ とに よって特異

な性 質の 出現 が期待 で き るこ とか ら, 人 々の関心 を高

め, そ の応用 面が 開発 されて きてい る [8, 9]. 超微 粒子

と した ときの諸 熱物 性値 はま だほ とん ど測 定 され てい

ないよ うだが, 液体 への 混合分 散 を考 え る場合, その

熱 伝導率 の液 体 との違 いは通 常1~2桁 はあ る とみて

よいで あ ろ う. したが って 超微粒 子 のわず かな液 体へ

の混合分 散 に よって, 母液 の熱 伝導率 の大 き な変 化が

期 待 され る. しか も通常作 られ てい る粒 子径, 数10nm

の超微 粒子 の使用 は, 液 体の 単相流 と して の性 質を大

き く変 え る ことな く熱伝導率 の改変 が可 能 と考 え られ

る し, ま た超 微粒 子 の使用 に よって安定 に分散 した混

合媒 体の生 成 も比較 的容 易で あ り, 熱伝導 率 測定 には

極 めて好適 で あ る.

本 研究 では超 微粒 子 と してAl2O3な ど3種 の超 微粉

末 を, また分散 媒 (母 液) と して水を 用 いて, 前報 [7]

よ り高濃度 の分 散系 を生成 し, その有効 熱伝 導率 の変

化 を明 らか に してみ る. また分散 系媒 体の物 性値 と し

て 重要 な粘性率 も求 めてみ る.

2. 分 散 系 試 料 の 生 成

2.1 超 微粒子 試料

前 述 したよ うに現在製 造 されて いる超 微粒子 に はさ

ま ざまな ものが あ るが, ここで は

(1) 分散 媒 (母液) へ の安定 分散性 の よい こ と,

(2) 特異 な性質 を期 待す る とい う意 味でで き るだけ

粒子 径の小 さい こと,

を主 な選 択の条 件 と した. そ して種 々の超微粒 子 の母

液 への分 散を試 み たが, 最 終的 には酸 化物超 微粒 子で

あ る7-A12O3, SiO2お よびTiO2 (ア ナタ ーゼ 形) の3種

類 の超 微粒 子 を分散 質 と して 使用 した*3. それ らの諸

物 理量 [10-12] をTable 1に 掲 げ る. 同表 のPZC (point

of zero charge) は無 電荷 点で あ る. γ-A12O3は バ ル ク

材 と してみ る限 り, 金 属酸 化物 の中 では熱 伝導 率は大

き い方 で あ り, TiO2は 中程度 で ある. SiO2は 熱 伝導 率

の低 い もの と して 選 んだ. そ れ らの電子 顕微鏡 写真 を

Fig. 1に 示 したが, 粒 子形状 は 同図 (a) のγ-Al2O3は 縦 横

比1も しくはや や細長 の粒状, (b) のSiO2は 丸形, (c)

のTiO2は 縦 横 比 ほぼ1の 粒 状で あ る.

2.2 超微粒 子-水 の分散 系 の生 成

分散媒 には熱媒 体 と して最 も一 般的 で あ り, 熱 物性

値 もよ く知 られ, か つ酸化 物超 微粒 子を分 散 させやす

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い水 (蒸留水) を用 いた. 主 な分散法 と して は界面 活性

剤利 用 の方 法 と静 電斥 力利 用 の方 法 とが 考 え られ る.

著者 らは先 に, 前者 は長 期 間の安定 分散 に は極め て好

ま しいが, 界面活性 剤 自体が分 散系 の熱物 性値 に影響

を及 ぼ し, かつ分散 系 の生成 も比較 的難 しい こと, 一

方後者 は分散 技術 は易 しい が短 期 間 (1週 間程度) の

分散法で あ るこ とを報 告 した [7]. したが って 本研究 で

は熱物性 へ の他 の影 響 の入 らない後者 の静 電斥 力利 用

法 を用 い るこ とに した.

Table 1 Physical description of the ultra-fine particles

•õ Data offered from the manufacturers.

* Data for 0-2% porosity, at 300K.

•÷ PZC; Point of zero charge.

(a) γ-Al2O3 (c) TiO2 (anatase)

(b) SiO2

Fig. 1 Photographs of ultra-fine particles

分散 系試 料の 生成 過程 をFig. 2に 示す. 室温 で超微

粒 子 と水 を 混合 し, そ の混合液 のpH値 をTable 1に

示 した無 電荷 点か ら離 して分散 しやす くす るため に酸

または塩 基 を微 量 (数滴) 滴下す る. 超 高速 回転 分散

機 で混合液 をか くはん し (10000~15000rpm), 超微

粒子 を分散 してpHを 測 定す る. 適切 なpH値 に到達 す

るまで この操作 を繰 り返 し, pH調 整 を して 分散系 試料

が生成 され る. 適 切 なpH値 は個 々の分散系 に よって異

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なるの で, 試行 錯誤 で各 分散系 につ いて その値 を求 め

た. な お, 酸 と塩基 に, 本 実験 で は塩 酸 と水酸化 ナ ト

リウム水 溶液 をそれ ぞれ使 用 した. Table 2に 生 成 した

分 散系 とそのpH値, お よび分 散系 の粒子 濃度 として

重 量分率 φwと 体 積分 率 φvを示 した. なお生成 した分

散 系試料 が一 様 に安定分 散 して いるか ど うか は, 試料

生 成か ら一昼 夜放 置後, 試料 容器 の上 下2点 か ら分散

液 を分取 して その密 度を測 定 し, また視覚 に よる凝集

沈 澱の有 無 の観察 に よ り確認 した.

Fig. 2 Making process of the dispersed system

Table 2 Dispersed systems

Fig. 3 Transient hot-wire cell

3. 実 験 装 置 と 実 験 方 法

分 散系 の有効 熱伝 導率 測定 には液体 の測定 法 と して

精度 の よい非定 常細線法 [13, 14] を用 いた. さ らに細 線

の端部 効果 を 除去 す るた め相 殺法 [15] を応用 した.

Fig. 3に 本 実験 で用 いた熱線 セルを示す. ① は円筒容

器部 (内径32mm, 内側高 さ215mm) で, 試 料が 弱酸

性 また は弱塩 基性 なため上 下部 を含 めて全 体を ステ ン

レス鋼 と した. ② と③ が加 熱 白金細線, ④ ~⑥ は支持

棒 (電極) で あ り銅棒 を用 いた. ⑦ はス プ リングを兼

ねたか ぎ部 で細 い銅 線 と した. 白金細 線 は直径28μm

の素線 に電気絶 縁 のため厚 さ6.5μmの ポ リウ レタ ン被

覆 を した ものを 使用 した. 長 ・短2本 の細線 の長 さはそ

れぞれ約150mmと60mmと した.

分散 系試料 を入 れ た熱 線セル 全体 を恒温 水槽 内に取

り付 け [7], 長坂 長 島の方 法 [15] で熱伝 導率 測定 を行

った. す なわ ち長 ・短2本 の細線 を ホイー トス トンブ リ

ッジの2辺 に組 み込み, 両細 線の発熱 による温度 変化,

つま り抵抗変 化 の差 を ブ リッジの非平 衡電位 差 と して

表 し, その 時間変化 を デ ジタル 電圧 計で記 録 した. 細

線 の加熱 量 は, たとえば試 料が 水の場 合で約1W/m,

加 熱電 流は約70mAで あ った.

なお本実験 の よ うに導 電性 で, か つ後述 す るよ うに

比較的 高粘性 液体 の場合, 細線 の張 り方 と電気絶縁 に

細 心 の注意 が必要 で あるが, 本 実験 ではセ ルの 中の試

料 を取 り換 え るご とに線 も張 り換え, 細線 の抵抗 の温

度 係数 の校正 を行 った.

超 微粒 子-液体 の分 散系 で も う一 つ の重要 な熱物 性

は粘性 率 であ ろ う. この分 散系 は厳 密に は非 ニ ュー ト

ン流動 を示す と考 え られ るが, 同 じ種類 の分散系 で あ

る磁性 流体 の場合 に, 磁 場 をか けない状態 で, かな り

の高濃 度 で もニ ュー トン流 動 に極め て近 い性質 を もつ

ことが報告 されて い る [16]. したが って本 実験 で生成 し

た分散 系 もニ ュー トン流 動 に近 いとみ な して, 回転振

動 式デ ジタル 粘度 計を 用 いて その 粘性 率 を測 定 した.

蓋付 き銅製 の 円筒 形試 料容器 を作製 し, その 中 に試料

を入 れ, 恒 温水槽 内 にそ の容 器を固 定 して測定 を行 っ

た.

229

Fig. 4 Effective thermal conductivity of

water-A12O3 system

A Meredith and Tobias [18], sphereB Hamilton and Crosser [19], circular cylinder,

height/diameter=1C-1 Yamada and Ota [2], cubeC-2 Yamada and Ota [2], rectangular prism,

aspect ratio 1.8:1:1D Fricke [20], prolate spheroid, aspect ratio 6:1

Fig. 5 Variation of dimensionless thermal

conductivity of water-Al2O3 System

4. 実 験 結 果 と 考 察

4.1 分散 系 の有効 熱伝導 率

初 めに非定 常細線 法 を用い た本装 置の 測定精度 を確

認 す るため, 本分散 系 のベ ー ス液 体で ある水 (蒸留 水)

の熱伝導 率 を測定 した. その結 果, お よび水 の熱 伝導

率 の推奨 値 とされて い るNieto de Castroら の式 [17] を

Fig. 4に 記入 した. 本 測定値 の この推奨値 に対す る偏差

は±1.5%以 内で あ り, 本 装置 の精度 は この程度 とみな

され る.

Fig. 4に 水-Al2O3分 散系 の有効 熱 伝導 率 λeの 測定

結 果を 温度Tに 対 して 示 した. 同図 よ り, 同分散 系の

λeは分散媒 で ある水 と同様 の温度依 存性 を示 し, かつ

それ らは超微粒 子濃 度の増 加 と ともに大 幅に増加 して

い るのが わか る. Fig. 5に 同分散 系 の有効 熱伝 導率 比

λe/λcと超微粒 子濃度, す なわ ち体積分 率 φvと の関係

を示 した. λcは水 (母液) の熱 伝導率 で あ り、 λeと

同一 温度 にお け る値 を用 いて あ る. なお λeの測定 は,

Fig. 4に 示す よ うに同一 濃度, 同一温 度 で数 回行ったが,

Fig. 5以 降で示 す測定 値 はその平 均値 で ある. Fig. 5よ

り水-Al2O3分 散系 の λe/λcは φvの 増加 とと もにほぼ

直線 的 に増大 し, φv_??_4.3% (φw=15%) で水 に対 して

約30%と 大 きな増大 を示 した ことが わか る. 比較 のた

め 同図 に球形 粒子 の分 散系 の λeの 推算 式 と して使 わ

れ るMeredithら の 式 [18] (曲線A) と, 形状効 果を

取 り入 れ たHamiltonら の式 [19] (曲線B) お よびYa

madaら の式 [2] (曲線C-1) を代 表例 と して 記入 した.

曲線Bは 比 (高 さ/直 径)=1の 円柱 形, 曲線C-1は 立

方体 と しての値 で ある. 水Al2O3分 散 系 の本 測定 値は

いず れ もこれ ら球 また は立方体 などの分散 系 の式 を上

回 って い る. 超 微粒 子分散 系の 熱伝導 率 に関す る研 究

例 は極めて少 な く, この増加 の理 由の説 明 は難 しい が,

分散 系の熱伝 導率 に大 きな影響 を与 え る粒 子形 状 に着

目す るな ら, Fig. 1 (a) の写真 の検 討か ら, この分 散系 の

λe増加 の理 由の一 つはA12O3粒 子の幾分細 長 い形状 に

あ る と考 え るこ とが で きよ う. ちなみ に, この粒 子を

直方 体 とみ な して, 本 測定 値 と ほぼ 一致 す るYamada

らの式の 直方体 の アスペ ク ト比 (高 さ, 縦, 横) を逆

算 して求 める と約1.8:1:1と な る. この値 をFig. 5に 曲

線C-2で 示 した. 本 実験 に用 い たAl2O3超 微粒 子 の形

状 は, Fig. 1 (a) の写真 か らは明確 には決 め られ ないが,

2.1節 で述べ た よ うに大 略, 縦横 比2:1~1:1と み ら

れ, 上 記 の逆 算で 求め たア スペ ク ト比 に近 い と推定 さ

れ る. ま た形 状効 果を取 り入 れて, 回転 楕 円体 を粒 子

モ デル と して求め た 夏Frickeの式 [20] に対 して, 曲線C-

2と 同 じよ うに本 測定 値 と一致 す る扁 長 回転楕 円 体の

アスペ ク ト比 を求め る と6:1と な り, これ よ り求 めた

値 を曲線Dで 示 した. このアス ペ ク ト比は上 述の 曲線

C-2の それ とはあ ま りにも違 い過 ぎ, Fig. 1 (a) の写真 か

ら判断 して もこの比 が妥 当とは考 え られな い. このよ

うな結果 か らFrickeの 式 は φvの 大 き い所 のみな らず

230

[5], 小 さい所 で も λeの 実測値 よ り低め を与 え る よ う

であ る.

水-SiO2分 散系 の有効 熱伝 導率 の測定 結果 をFig. 6に

示 す. 比較 の ためMeredithら の式 も記入 した. 使用 し

たSiO2超 微 粒子 は現 在製 造 され てい る ものの 中で も熱

伝 導率 は低 い方で あ り, また粒子 形 はFig. 1 (b) か らわ

か る よ うに球 形に近 い. その分 散系 の φvに よ る λeの

増 加は予 想 どお り測定誤 差 に入 る程度 の極 めて 微小 な

もので あ った.

Fig. 7に 水-TiO2分 散 系 の 熱伝導 率 比 λe/λcの 測定

結 果 を前 報 [7] の測 定値 と併 せて 示 した. 比較 のため

Meredithら の式,お よびHamiltonら の式 の球 と して

求 めた値 (両者 ほぼ一致) を 同図に記入 した. 同図か ら

水-TiO2分 散 系 の λe/λcは φvの増加 とと もに ほぼ直線

的 に増加 して い くこ とが わか る. そ して本 測定値 は こ

れ らの式 と非常 に よ く一致 して いる. これ はFig. 1 (c)

の顕 微 鏡写 真か らわか るよ うに, 使 用 したTiO2超 微

粒 子は球形 に近 く, かつ粒 子径 もほぼ一様 であ るため,

球 に対す る これ らの式 との一致 が よい ので あろ う. さ

らにYamadaら の式の立 方体 として の値 も比較 のため

Fig. 7に 曲線Cで 記 入 したが, 立方 体 と して の 同式 は

本結 果 よ り幾分 高め とな る.

以上, 本 研究 で生成 した3つ の超微粒 子分 散系 の測

定結 果か ら, λeと φvの 関係 を粒 子形状 で おお まか で

は あるが, あ る程度説 明 できた と考 え られ る. しか し

超微粒 子分散 系 と しては, まだ まだ未 知 なこ とが多 い.

た とえば超 微粒 子 と して の諸熱物 性値, 液 中での超 微

粒 子 の挙動, 粒子径 によって変 る超微 粒子 の集 合状態,

分 散系 の生 成 に際 しpH値 調整 用 に添加 した酸 または

塩 基 の影響 な ど, そ の有効 熱伝導 率 に関わ る種 々の問

題 が残 され てい る と思 われ る.

Fig. 6 Variation of dimensionless thermal

conductivity of water-SiO2 system

A Meredith and Tobias [18], sphereHamilton and Crosser [19], sphere

C Yamada and Ota. [2], cube

Fig. 7 Variation of dimensionless thermal conductivity of water-TiO2 system

4.2 分散系 の粘 性率

3種 類の 超微 粒 子分 散系 の粘 性 率 を, 温 度300~

350Kの 範 囲で 測定 した. 一 例 と して水-Al2O3分 散系 の

粘性 率 η の 測定結 果 を粒 子濃 度 をパ ラ メー タ と して

Fig. 8に 示 した. 同図 中の実線 は水の 粘性 率 [21] で あ

る. 同図か らわか るよ うに水-Al2O3分 散系 の ηの温度

依存性 は水 と類似 であ る. そ して同分散 系 の ηは 他の

分 散 系の場 合 [22] と同様 に, 粒 子の体 積分 率 φvの 増

加 と ともに増大 して い く.

3種 類の超 微粒 子分 散系 の相 対粘性 率 ηrel[=η/ηc

(ηc; 分 散媒 の粘性 率)]と φvと の関係 をFig. 9に 示 し

た. 同図 中の実線 は球 形粒 子 の分散 系で φvが 小 さい

ときに成 り立 つ と され て いるGuth-Goldの 式 [22] で

あ る. 水-SiO2分 散 系 の φvの 増加 に伴 う ηrelの増加

が最 も著 しく, 次 に水-Al2O3系, 水-TiO2系 の順 とな っ

て いる. いず れの 測定結 果 もGuth-Goldの 式 を上 回 っ

て いるが, 特 に前二 者 の ηrelが大 幅に増大 してい るの

が 目だつ. 分 散系 の粘性 率 に影 響 を与え る因子 と して

は超微 粒子の 種類, その生成 方法, 粒子形 状 と粒子径,

分散媒 の性 質, 分 散系 のpH値 な ど多 くの もの が考 え

られ るが, その 中で も特 に粒 子径 の影響 は大 きい よ う

で ある. 本実験 のSiO2やAl2O3の 超 微粒 子は粒 子径約

10nmと 非常 に小 さ く, したが ってTable 1に 記載 し

た ように比表 面積が 大 き くな り, 分 散系 の固・液 の境 界

面積 を増 加 させて い るのが ηrel増大 の原 因 と考 え られ

る. これ に対 してTiO2超 微粒子 は粒子径 が前二 者の約

2倍 と大 きいせ いか, 水 に対す る粘性率 の増加 は φv

4.3%の 最高 で も約60%と 低 か った.

なおSiO2超 微粒 子は, 水 溶液 中で はそ の表面 のOH

231

基 (シ ラノ ール 基) に よって 粒子相 互 の結合 を起 こし

や す く, 液 体の増 粘 によ く用 い られ る もの であ る [8].

しか し同一種類 の超 微粒 子で も, その生成 過程 にお け

る表面処理 によって増 粘効 果は変 って くるよ うであ る.

Fig. 8 Viscosity of water-Al2O3 system

Fig. 9 Variation of relative viscosity of water

-Al2O3, water-SiO2 and water-TiO2

system with volume fraction of particles

5. 結 論

超 微粒 子の混 合分散 によ る液体 の熱 伝導率 と粘性 率

の変 化を 明 らか にす るた め, その分 散系試 料を生成 し,

実験 を行 い, 以 下の結 果を得 た.

(1) 分散質 と してAl2O3, SiO2お よびTiO2超 微粒子

を, また 分散媒 と して水 を用 い, 静電 斥力 を利用 して

一 様で安 定 な分 散系試 料 を生成 した.

(2) 水-Al2O3お よび水-TiO2分 散 系 の有効熱 伝導率 λe

は粒 子の体 積分率 φvの 増加 とと もに増大 し, 前 者 の

λeは球形 粒子 の分散 系の推奨 式 の値 を かな り上 回 った

の に対 し, 後者 の値 は推奨 式の値 とほぼ一致 した.

(3) 水-SiO2分 散 系では, φv≦2.3%で は ほ とん ど λc

の変化 はみ られ なか った.

(4) 粒 子径 の小 さいSiO2とAl2O3超 微粒 子 の分 散系

の粘性 率 ηは φvの 増加 とと もに大 き く増 大 した. し

か し粒子径 の大 きいTiO2超 微粒 子 の分散 系で はηの増

加 は小 さ く, 最大 で水 の値 の約60%増 で あ った.

終 りに臨み, 本 研究 の遂行 に際 し, 超 微粉末 とそれ

に関す る資 料, な らび に電子顕 微 鏡写真 を提 供 された

チ タ ン工業 株式会 社, お よび 日本 アエ ロジル 株式会 社

に厚 く感謝 の意 を表す る.

参 考 文 献

[1] 山 田 悦 郎; 熱 物 性, 3 (1989), 78.

[2] E. Yamada, T. Ota; Warme- und Stoffubertragung, 13 (1980), 27.

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[4] D. L. Cullen, M. S. Zawojski, A. L. Holbrook; Plastics Eng., 44 (1988), 37.

[5] 金 成 克 彦, 小 沢 丈 夫; 熱 物 性, 3 (1989), 106.

[6] Y. W. Song, E. Hahne; High Temperatures-High Pressures, 19 (1987), 57.

[7] H. Sasaki, H. Masuda, I. Mizuta, N. Hishinuma; Proc. 3rd Asian Thermophys. Proper. Coof., Beijing,

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[19] R. L. Hamilton, O. K. Crosser; Ind. Eng. Chem. Fund., 1 (1962), 187.

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[21] [10] と 同 じ, 64頁.

[22] [12] と 同 じ, 254-265頁.

Alteration of Thermal Conductivity and Viscosity of

Liquid by Dispersing Ultra-Fine Particles (Dispersion

of Al2O3, SiO2 and TiO2 Ultra-Fine Particles)

Hidetoshi Masuda*, Akira Ebata•õ,

Kazunari Teramae•÷, Nobuo Hishinuma*

* Institute of Fluid Science,

Tohoku University, Sendai 980

•õ Toto-Kiki Co., Ltd.

•÷ Graduate student, Tohoku Uniyersity

How much the thermal conductivity of a liquid can

be altered by dispersing a small amount of ultra-fine par

ticles into it has been studied. Fine powders of Al2O3,

SiO2 and TiO2 were used as the ultra-fine particles , and

water was selected as the base liquid. Three dispersed

systems were made by applying the technique of elec

trostatic repulsion. For the systems of water-Al2O3 and

water-TiO2, effective thermal conductivities were seen

to increase much more as the particle concentration was

increased, but that of water-SiO2 system almost never

increased. Viscosities of their dispersed systems were

also measured, and the characteristics were made clear.

(Received April 7, 1993.)

(Accepted for publication June 21, 1993.)

233