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49 プロサバンナ事業アドボカシー活動の今後に向けて 今、なぜアグロエ コロジーなのか? オルター・トレード・ジャパ ン(ATJ)政策室室長 印鑰 智哉

今、なぜアグロエ コロジーなのか?

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4・9 プロサバンナ事業アドボカシー活動の今後に向けて

今、なぜアグロエコロジーなのか?

オルター・トレード・ジャパン(ATJ)政策室室長印鑰 智哉

工業型農業の限界が露呈

ピーク・オイル、ピーク・リン鉱石

❖ 工業型農業のパッケージは農薬・化学肥料・F1種子

❖ 農薬(石油)、化学肥料(天然ガス、リン鉱石など)の原料がピークを過ぎた。

❖ 生育に不可欠なリン酸を工業型農業はリン鉱石に依存(ちなみにリン鉱石はウラン鉱石と共存。原発を支えるウラン鉱山が工業型農業を支えるのは象徴的か)

持続不可能な工業型農業

❖ 従来農業は太陽光を使って、無からエネルギーを生む行為。

❖ しかし、米国では機械・肥料・加工、包装、輸送で、

270calのトウモロコシの缶詰一個を生 産するのに、2,790calを消費(つまり10倍以上のエネルギーを消費)

❖ バイオ燃料は補助金がなければ続かない。

ピーク・フード

❖ トウモロコシ、米、魚、酪農製品、肉、野菜、小麦、牛乳、鶏肉、サトウキビ、大豆はすでに生産限界を超えた

http://www.independent.co.uk/environment/have-we-reached-peak-food-shortages-loom-as-global-production-rates-slow-10009185.html

ピーク・ソイル

❖ 土壌に農薬や化学肥料を投入することで、土壌内の微生物の死滅、土壌の保水力の減少、土壌流出などが起きる。→さらに病害虫の被害→農薬の悪循環

❖ 現在の状況が続けば、世界の土壌はあと60年で終わる。→2015年は国際土壌年

病害虫、雑草コントロールの崩壊❖ 農薬に耐性のついた害虫、雑草が急増し、農薬の使用は増加する一方

❖ ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤、2,4-Dやジカンバが大規模に使われようとしている。

❖ それらの農薬もやがて効力を失う。

気候変動を加速する工業型農業

食料生産と気候変動の忘れられたリンクhttp://www.grain.org/article/entries/4357-food-and-climate-change-the-forgotten-link

畜産業と航空機、自動車、鉄道の気候変動ガス排出量http://www.youtube.com/watch?v=7I0v3LhKhQg#t=29&hd=1

キューバのアグロエコロジー

❖ ソ連型大規模機械化農業を追求=化学肥料+農薬、大型機械

❖ ソ連の崩壊→石油、化学肥料、農薬が使えない

❖ 都市農業を中心にアグロエコロジーが開花

❖ ポスト・オイルの可能性を示すキューバのアグロエコロジー

ブラジルのアグロエコロジー❖ 「緑の革命」→小農民債務増加、農薬被害、遺伝子組み換え(90年代末~本格的には2005年~)による被害。オルタナティブとしての有機農業(80年代)、アグロエコロジー(80年代後半)に注目が集まる

❖ 2000年頃から本格的にアグロエコロジー運動が拡大

❖ 種子の権利の承認(2003年)、小規模家族農家の生産物購入義務(食料調達計画、PAA 2003年~)、全国学校給食プログラム(PNAE、2009年~)

❖ アグロエコロジーと有機生産政策(2012年制定、2013年開始)、栄養政策

アグロエコロジーとは?❖ 「アグロエコロジーとはエコロジーの原則を農業に適用するものである」Miguel Altieri

University of Berkery, California, USA 1983

❖ 「もっと根源的な農業の転換が必要である。農業におけるエコロジカルな変革とは、農業を規定する社会的、政治的、文化的そして経済的領域での変革なくして起こすことはできない」 Miguel Altieri, University of Berkery, California, USA

❖ 「アグロエコロジーとは科学的な原則であり、農業的実践であり、そして政治的、社会的運動である。アグロエコロジーはこの3つの次元をすべて含む概念となった」Wezel A, Bellon S, Doré T, Francis C, Vallod D, David C 2009

❖ 「アグロエコロジーは世界の飢餓を終わらせ、気候変動に対処する唯一の方法である」Olivier De Schutter, 2010

❖ 「アグロ エコロジーは環境面だけでなく、経済、社会、文化の多様性、生産者と消費者の主体性の向上を目指すも のであり、現行の農業食料システムで破壊されてきたものを取り戻すための試みである」久野秀二 日本農業新聞2012 年9月3日

アグロエコロジーの原則1. 有機物の分解と栄養分のサイクルを最適化するという点からのバイオマスのリサイクルの強化

2.天敵などの生物多様性の機能を強めることにより、農業システムの「免疫システム

(immune system)」を強化すること

3.特に有機的素材の維持や土壌の生物学的活動の強化により、植物の成長にもっとも好条件の土壌を提供すること

4.土壌、水資源と農業的生物多様性の保全と再生を強化することにより、エネルギー、水、栄養、遺伝的資源の損失を最小にすること

5.農業エコシステムの種類や遺伝的資源を長期に、また農場や風景のレベルで広げ、多様化させること

6.農業生物多様性の構成物の中での有益な生物学的な相互作用と相乗効果を強化し、そのことによってエコロジカルなプロセスと働きを促進すること

アグロエコロジーと有機農業アグロエコロジー 有機農業

参加型認証2者認証

外部投入依存

大規模企業型

第3者有機認証

小規模家族農業

地域循環肥料、市場など

アグロエコロジーの根幹❖ dialogo dos saberes(知恵の対話)伝統的な農民(百姓)の知恵と科学的な知見との対話

❖ 蓄積した伝統的住民の知見の中には科学的に重要な知見がある(多国籍製薬企業は薬草の発見をそれに頼っている。ただし、それを元にその資源を多国籍企業は盗むわけだが)

❖ 農民(百姓)の主体性のあり方に重きを置く。

ジェンダーの問題

女性たちによる農薬企業ADAMAの占拠(2015年3月10日、ブラジル・リオグランジドスル、ポルトアレグレ市)ADAMAは枯れ葉剤を含む農薬を作るイスラエル企業http://www.mst.org.br/2015/03/10/camponesas-ocupam-fabrica-de-agrotoxicos-no-rio-grande-do-sul.html

2015年3月9日ブラジリアの穀物メジャー Bungeの占拠http://www.mst.org.br/2015/03/09/camponesas-ocupam-a-multinacional-bunge-no-entorno-de-brasilia.html

イスラエル企業(現在はブラジル企業の子会社FuturaGene)が違法に栽培する遺伝子組み換えユーカリ苗を破壊する女性たちhttp://www.mst.org.br/2015/03/06/apos-acoes-sincronizadas-movimentos-barram-aprovacao-do-eucalipto-transgenico.html

そして若者たち…

何が必要か?❖ 工業型農業との切断(農薬、化学肥料を減らす、使わなくする=外部投入物の減少)

❖ 種子の権利、水の権利、土地・共有地の権利…の確保

❖ 生産者と消費者の直接的な関係

❖ アグロエコロジーを可能にする政策の実現(自由貿易協定などからの切断、種子企業の知的所有権などから農民の権利の保護など)

アグロエコロジー、多様性、民主主義

❖ 工場型農業が作り出す社会的不平等、不健康、生態系破壊

❖ 食の権利を確保するためのさまざまな動き、農、産直、環境保護、多様な権利を守るアグロエコロジー

❖ 民主主義の基礎としての食の権利。

❖ 食を巨大多国籍企業から取り戻す=農業関係者の問題ではなく、社会全体の課題

世界の最近の動向1❖ 2010年12月 国連総会で食料への権利特別報告者のOlivier De

Schutterがアグロエコロジーへの転換を求める報告を行う。

❖ 2012年8月 ブラジル大統領令でアグロエコロジーと有機農業生産政策確立

❖ 2013年1月 イギリスでアグロエコロジー同盟結成

❖ 2013年5月 フランス、農業省、アグロエコロジー推進プロジェクトを開始

❖ 2013年10月 国連食糧農業機関(FAO)、家族農業推進のためVia

Campesina と連携を発表

世界の最近の動向2 ❖ 2014年 国際家族農業年

❖ 2014年2月 インド、アグロフォレストリー政策策定

❖ 2014年9月 フランス、農業未来法制定、先進国でアグロエコロジー推進を最初に規定

❖ 2014年9月ローマで国連食糧農業機関(FAO)がアグロエコロジー国際シンポジウムを開催、世界の科学者が支援表明、日本政府も代表送り支援を約束

❖ 2014年11月 アフリカ、マダガスカルで国際アグロエコロジー・シンポジウム

❖ 2015年 国際土壌年

❖ 2015年2月24日~27日アフリカのマリで国際アグロエコロジー・フォーラム

❖ 2015年 EU共通農業政策にアグロエコロジーの採用を求めてNGOが活動中

日本政府もアグロエコロジーに賛同

アグロエコロジに賛同する日本政府は

❖ アグロエコロジーに反するProSAVANAを進めることはできない…はず

❖ アグロエコロジーに反する農業への企業参入とかの政策はおかしい…はず

❖ 国内農業政策や海外援助政策をアグロエコロジーに沿ったものに変えていくべき。