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音のある風景 機能としてのサイン音 (ver1.1.0) Sign-sound as a function 亀山 悦治 Etsuji Kameyama 2016-1-3

音のある風景 - 機能としてのサイン音

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音のある風景

機能としてのサイン音 (ver1.1.0)

 Sign-sound as a function

亀山 悦治

Etsuji Kameyama

2016-1-3

音の種類

❖ 音といえば、楽曲(楽しむために創作された音楽)を想い浮かべることがきっと多いでしょうう。しかし、音には幾つかの役割があり、次ページのように分類することができます。

音の種類

電気製品の通知音

音楽療法

機能

サイン音映画音楽

ゲーム音楽

精神安定

自閉症治療

痴呆症改善

騒音 生活音 自然音

空間デザイン

娯楽音楽

伝統音楽

音作品楽曲

民族音楽

サイン音とは?

❖ 例えば、目に見える標識を音にしたようなイメージ

- 通知することを目的としてデザインされた音

なぜ、今サイン音なのか-1❖ 私と音との出会いは、1980年代に遡ります。個人的なバンドで作詞・作曲を行っていた時期もありましたが、その後音に対する感じ方を変える出会いがありました。芦川聡氏、吉村弘氏、マリーシェファーのブライアン・イーノ等の取組みや実績に接することで、音に他する見方が変わり、音がデザインされることに対する必要性を感じました。

❖ 音には楽しむことだけではない機能としての役割があります。それを感じていた芦川氏は、1983年5月に株式会社サウンド・プロセス・デザインを設立し、同年に北海道の釧路博物館のサウンド・デザインへの取り組みを開始しました。

なぜ、今サイン音なのか-2❖ 音は目にするものと違い、デザイン面が軽視されがちです。目よりも無防備な人間の器官の1つである耳のために、しっかりとデザインされるべきなのです。しかしながら、多くの場所では音がデザインされることの必要性を感じている企業や施設はまだまだ多くないように感じます。

❖ 私が今特に音のデザインについて必要性を感じるのは、音が重要な役割を果たす鉄道関連や空港などです。1994年に株式会社サウンド・プロセス・デザインのメンバーであった吉村弘氏が中心で実現した東京の営団地下鉄南北線が有名ですが、横展開はそう多く実施されていないように思います。今だに不協和音を発生させている場所や、いたずらに音楽を流している場所が多く見受けられます。音響装置も毎日その音を聞かされる人々にとって優しくありません。ユニバーサルデザインを実現する必要がある今、「音」を見直す時期に来ていると思います。

音響装置のポイント-1

❖ 広い場所では、できるだけ多くのスピーカーを使用し、1つのスピーカーから大音量を出さない

音響装置のポイント-2

? ?音が大き過ぎるなあ…

音が聞こえない…

ちょうど良い音量で聞き取りやすい!

悪い状態

良い状態

サイン音デザインのポイント下記は私が考えたサイン音のデザインポイントです。音響システムとの融合で初めて実現することができます。---今後、それぞれの項目を掘り下げて説明する予定です

❖ 周りの音と調和する音質であり、自然に聞こええてくる加工がなされていること

❖ 突発的に音が鳴らないよう、立ち上がりを弱くしてなだらかになること。そして音の最後は急激に下がったり不自然に切れたりしないこと

❖ 現在の音の状態を検知しシステムが自動的に音量を調整すること

❖ 2種類以上のサイン音が同時に鳴る場合、音が調和するようシステムがそのズレを微調整せい、同期処理を行う(不協和音を出さないこと)

❖ 場所や目的に合う音がメロディが新しくデザインされ、喜怒哀楽を表現するような音楽とは切り離されていること

参考情報

STILL WAY「もしかしたらその環境には、たった一音だけあればいいのかもしれない」

故 芦川聡 氏 1982年4月 アルバム「スティル・ウェイ」ライナー・ノーツより…《波の記譜法》は、環境として成り立つ音楽のシリーズのつもりで始めた。何げなく聞くための、音の風景とか音のオブジェといったらいいだろうか。人を興奮させたり、別世界に導いたりするものではなく、漂うように流れ、人の生活の風景になる。言い方を変えれば、日常の中で、人間との密接な関係をつくる音楽だ。こういう音楽は、少ないながらもいくつか例がある。フランスのエリック・サティ(1866~1925)の《家具の音楽》やロック・ミュージシャンとして活躍しているブライアン・イーノの《アンビエント・シリーズ》。そして美術家がオブジェ的に提示した音などもときどきそういう音のあり方を感じさせる。それらは、自己表現し、完結した芸術としての音楽ではなく、その空間なり、物なり、人なりと重なったり、ずれたりして、その意味を変え、様子を変えるような音楽だ。そういう音楽を《波の記譜法》で作っていきたい。音楽はそもそもそれだけで独立して存在するものではなかったはずだから。

私がしようとしていること全体は、大きな意味での「音のデザイン」だ。それは、このシリーズのような音楽を制作・作曲すると同時に、ある環境に適した音の調整をすることも含まれる。もしかしたらその環境にはたった一音だけあればいいのかもしれない。音のデザインだから音で飾るという単純な問題ではない。音を出さないこと、つまり静寂をデザインすることができたらすばらしいと思っている。こんなに音が氾濫した時代は、いまだかつてなかったに違いない。音環境の調査・研究を続けているカナダのマリー・シェーファーがこう警告している。「耳は、他の感覚器官と違って、さらされていて傷つきやすい。目は自分の意志で閉じることができるが、耳はいつも開いている。目は自分の意志で焦点を合わせ、方向を定めることができるが、耳はあらゆる方向にある音響的な背景をもつすべての音を拾い上げてしまう。その唯一の防御は、望ましいものに集中するために、望ましくない音を除去してしまう精巧な心理的システムだけだ。目は外に向かうが、耳は内に向かう。知識を吸収する。音環境の多様性のなかでの音源 -その音源は今日本当に多様だ- のために、耳はその音源に対して鈍くなっていくだろうし、本当に重要な音に耳が集中できるように、無頓着で心を乱すような音を停止させるように要求する個人的な権利を行使できなくなってしまうだろう。」… 続く

釧路博物館 - 導入記事

STILL WAY あるいは静止した進行芦川聡 追悼コンサートパンフレットP14

http://www.surugadai.ac.jp/sogo/media/bulletin/Bunjo09-01_KATO.pdf関連資料:

南北線 -サイン音導入記事

1994年1月12日(水) 読売新聞 夕刊

吉村弘氏の実績

波の記譜法❖ 波の記譜法「音楽は騒音におびえて環境から逃げだした。屋内へのがれた音楽は、その美さでコンサートホールを飾った。音楽が姿を消した環境は、貧しく醜いものとなった。音楽は再び外へ出て、その美しさで世界を高めなければならない。音楽家は環境へ戻り、音の風景(サウンドスケープ)のデザインに力を貸さなければならない。それは貴い仕事だが、同時に想像力と勇気をも必要とする。私たちがそれをしなければ世界は音のスラムと化すだろう。さあ、環境へ戻り、人々により美しい世界をさし示そうではないか。

1985年9月 トロントにて マリー・シェーファー

1986年 SOUND & RECORDINGマガジンより

世界の調律❖ サウンドスケープ」概念の提唱者として知られるカナダの作曲家、理論家、R・M・シェーファーによる1977年の著作。彼の主著でありサウンドスケープ研究における最重要文献である。神話における音の記述からジェット機の騒音問題まで、古今東西の音をめぐる一大博物誌ともなっている。概略をたどると、本書前半はサウンドスケープの歴史記述であり、産業革命以前のハイファイなサウンドスケープと、産業革命以後のローファイなサウンドスケープの区別が論じられる。次に「間奏曲」と題された現代音楽論を挟み、後半はサウンドスケープの受容を研究する音響生態学(騒音問題はここで扱われる)と、サウンドスケープの調整を行なうサウンドスケープ・デザインの解説に分けられる。

http://artscape.jp/artword/index.php/『世界の調律』レーモンド・マリー・シェーファー出典:

SOUND PROCESS DESIGN Inc.株式会社 サウンドプロセスデザイン 業務内容

❖ 空間に関わるコンセプトワーク、プランニング、プロデュース

❖ 地域再開発、業態開発におけるコンサルティング、プランニング、プロデュース

❖ 音デザイン:企画、設計、制作、施工

❖ 音環境調査、音響調査

❖ ホール等の音響設計・騒音制御

❖ 空間照明の演出、設計          

❖ オブジェの企画、設計、制作

❖ イベント、ワークショップの企画、プロデュース

❖ ディスプレイの企画、設計、制作

❖ 映像の企画、設計、制作

http://www.sp-design.co.jp/index.html出典: