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04.07.2015 アマモ場の多面的機能 柳哲雄

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アマモ場の多面的機能

柳 哲雄(公財)国際エメックスセンター・特別研究員九州大学名誉教授

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約 5 億 4 千万 -4 億 9 千万年前約 4 億 4 千万 -4 億 1 千万年前約 1 億 4 千万 -6 千万年前 約 500-100 約万年前カンブリア紀   シルル紀           白亜紀  人類

海藻( seaweed) :ワカメコンブアラメホンダワラ

海草 (seagrass) :アマモスガモ

海藻(草)の進化主に砂の上主に岩の上

小松( 2014 )

ニッチの空いた砂浜

海草と海藻

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アマモ場:多くの生物・多くの機能

せとうちネット より

アマモ:リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(龍宮の乙姫の元結の切り外し)

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アマモ:藻塩草• 海水のついた海藻(草)を天日に干し、その上から海水を注いで得た   かん水を煮詰て得る。製塩土器。    (瀬戸内海・上蒲刈島で再現)• 淡路島松帆の浦に 朝なぎに玉藻刈りつつ 夕なぎに 藻塩焼きつつ     海をとめ                               万葉集巻 6

• 来ぬ人を まつ帆の浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ                                 藤原定家(本歌取り)“ 藻を焼き、その灰を海水で固め灰塩を作り、灰塩に海水を注ぎ、かん水を      採り、煮詰て塩を得る” ?

● 珠洲の揚浜式塩田 → 天日濃縮 → かん水を煮詰て塩を得る

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産卵場• 産卵基質としての機能• 卵を捕食可能な大きな口を持った魚の侵入が困難

アオリイカの卵 水産庁 より

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仔稚魚の育成場• 枯死したアマモを起点にしたデトリタス(海底に堆積した枯死アマモ)食性の繊毛虫などによる腐食食物連鎖• アマモの葉上植物(付着珪藻)を起点とした生食食物連鎖• これらの食物連鎖をもとにした豊富な餌:アマモの葉上付着珪藻、葉上動物(ワレカラ、ヨコエビ)、アマモ間隙の動物プランクトン(カイアシ、アミ)およびネクトン、底質中ベントス(ゴカイ、カニ、エビ)• 住処(捕食者の侵入が困難なこと、餌生物が豊富なこと)

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植生と魚

西廣( 2008 )

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アマモ場の変遷:日生漁協のアマモ場

台風襲来・陸からの濁り流入増加(河川、海岸工事)・農薬流入。。。。

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日生漁協の漁民によるアマモ場修復活動 (昭和60年から)

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    備前市日生町地先における   2011 年 (H23) のアマモ場分布図

200 ha以上(昭和 60 年からの活動で、平成 23 年に昭和 20 年頃の 3分の1まで回復)

漁獲量の回復(5年後から)

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カキ養殖

カキ養殖区画漁業権

幼稚仔保育場

誘導滞留礁

200 400 1000m8006000

<凡例>

  ;カキ養殖区画漁業権

  ;アマモ場再生区域

  ;幼稚仔保育場

  ;誘導滞留礁

  ;成魚生息場

  ;消波施設

ba

dd

鹿久居島

頭島

大多府島

鶴島

アマモ場再生区域

区画漁業権

f 消波施設

成魚生息場 e

東備地区広域漁場整備事業計画平面図1963(昭和 38 年 ) 底びき網漁業者 12 名によりカキ養殖着業→昭和 40 年代に急成長→1996(平成 8 年 ) に“岡山カキ”統一ブランド達成

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アマモ場とカキ養殖場:共利共生• カキ養殖 → 植物プランクトン・懸濁物質    摂食 → 透明度向上 → アマモ場拡大• アマモ場拡大 → 夏季の水温低下・    酸素供給 → カキ斃死率低下    → カキの餌(付着珪藻、付着小動物)増加    → カキの身入り増加

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アマモ場内外における水温の鉛直プロファイル

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アマモ場

魚介類の成育場・静穏水域 ・産卵場・仔稚魚の育成場(隠れ場)⇒ メバル、タイなど有用魚種の幼稚魚はアマモ場外の2.5~8倍

魚介類の餌場・葉上:甲殻類や多毛類が豊富・葉間:カイアシ類やアミ類が生息・海底:多毛類や二枚貝が生息⇒漁業生物量は一般海面の 5~17倍と試算

水底質の浄化・栄養塩類の吸着・地下茎からもN・Pを吸収し 底質にO2を供給  ⇒ 海中から 17 ~ 67tN/ 100ha /年の窒素を除去

栄養分の再配分・海藻類に比べて分解速度が 極端に遅く、徐々に分解⇒ 枯死流出による新たな汚濁 につながらない

アマモ場の機能

C02の排出抑制・光合成によるCO2の固定⇒ 500 ~ 2,000 tC/ 100ha / 年の有機炭素を生産

酸素02の供給・光合成によるO2の生産⇒アマモ場で最高値14mg/ℓ以上もの高酸素水を生産  

水温上昇の抑制・アマモが森林の樹冠の役割⇒ 木陰をつくってアマモの下部の水温上昇を抑制

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東備地区広域漁場整備事業イメージ図

海洋牧場

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日生協定2012.5.14

日生漁協岡山県岡山生協里海づくり研究会議

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流速・波浪減衰→海岸防御• 流れー藻場相互作用 → 渦生成 →            波・流れのエネルギー減衰

Komatsu and Murakami (1994)

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肥料としてのアマモ ー ツボ刈り• 中海・浜名湖・瀬戸内海でのモク採り       肥料採取 → 化学肥料                普及で消失• イチジク栽培に有効     (三津口湾)

千葉県立博物館 より霞ヶ浦でのモク採り

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Tanimoto (2012)

Mitsukuchi Bay

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魚介類の藻場全体の利用、漁獲量への貢献抜き取ったアマモの利用

適した魚道の幅

漁業との共存、利用形態

適正な藻場規模、形態、配置

広い藻場の中央部では生物による利用が少ない

種子の有効利用:年間 19億粒生産

適した藻場の大きさ

魚介類は藻場の切れ目を利用

谷本( 2009)

アマモ場を極相に行かせない坪刈昔は畑の肥料のためのモク刈

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新たな里海方策の提案:アマモ場の高密度域は利用せず、藻場外との分布境界を利用 アマモ場内外における刺し網実験( 2009/8/26~ 27) アマモ外(切れ目):地点 1、 2、 5 アマモ内:地点 3、 4

アマモ場内 アマモ場外

2009/8/4 M itukuch i Bay (217ha)

132.75 132.755 132.76 132.765 132.77 132.775 132.78 132.78534.255

34.26

34.265

34.27

34.275

34.28

34.285

132.75 132.755 132.76 132.765 132.77 132.775 132.78 132.78534.255

34.26

34.265

34.27

34.275

34.28

34.285

0 to 2 2 to 4 4 to 6 6 to 8 8 to 10 10 to 12 12 to 141

234

5

132.75 132.755 132.76 132.765 132.77 132.775 132.78 132.78534.255

34.26

34.265

34.27

34.275

34.28

34.285

2009/8/27 M itukuchi B ay

132.757 132.758 132.759 132.76 132.761 132.762 132.763 132.764 132.765 132.766 132.76734.26

34.261

34.262

34.263

34.264

34.265

34.266

34.267

132.757 132.758 132.759 132.76 132.761 132.762 132.763 132.764 132.765 132.766 132.76734.26

34.261

34.262

34.263

34.264

34.265

34.266

34.267

1

2

34

5

132.757 132.758 132.759 132.76 132.761 132.762 132.763 132.764 132.765 132.766 132.76734.26

34.261

34.262

34.263

34.264

34.265

34.266

34.267

0 100 200 300 400 500

刺し網設置場所緑色域がアマモ場

谷本( 2009)

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2009 8 27年 月 日

0

5

10

15

20

25

30

35

1 2 3 4 5測点

個体数

アマモ場内

0

2

4

6

8

10

12

1 2 3 4 5測点

種類数

アマモ場内

新たな里海方策の提案アマモ場内外における刺し網結果(魚介類の種類数と個体数) 藻場外(藻場の切れ目) 3地点における魚介類の平均種類数 10、個体数10 藻場内 2地点における平均種類数 5、個体数 4 魚介類は藻場内より藻場の切れ目(空間のある場所)を利用:エッジ効果

魚種 数量 魚種 数量 魚種 数量 魚種 数量 魚種 数量ギザミ 1 ギザミ 1 メバル 1 オコゼ 1 メバル 1メバル 3 メバル 4 フグ 2 フグ 2 コノシロ 8コノシロ 1 コノシロ 1 コノシロ 3 コチ 2アイナメ 1 コチ 1 ネコサメ 2 サバ 1タイ 1 タイ 1 ハゼ 1 キス 2ハゼ 1 ハゼ 3 イシガニ 3 コイワシ 1エソ 1 オコゼ 1 イシガニ 13イシガニ 5 タナゴ 1 シャコ 1ウニ 2 イシガニ 2 ニシ 1ニシ 1 ナマコ 1 ヒトデ 1

51 2 3 4

谷本( 2009)

エッジ効果

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石風呂(アマモの薬効)• 忠海の岩乃屋:アマモを敷き詰めたサウナ風呂           → 非漁民のための里海物語形成

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流れ藻• 仔稚魚の育成場(モジャコ漁獲) →   半閉鎖系生態系 →  小宇宙 →   生息域の拡大 アマモ:短期間・小領域

ホンダワラの流れ藻: Wikipedia より

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里海( Satoumi)

• 適切な人手をかけることで生物多様性と         生産性が高くなった沿岸海域• 能登の里山・里海プロジェクト、      里山・里海マイスター( 2007~    )

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柳 哲雄( 1998 、平 10 ):水環境学会誌、 21                 「沿岸海域の“里海”化」               土木学会誌、 83               「内湾における土木事業と環境保全                ー内湾の“里海”化ー」

1998年春水環境学会誌、土木学会誌、編集部「今後の沿岸海洋学のあり方を論じてほしい」

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「里海」論             柳 哲雄(2006)1.はじめに2.人と海  2.1 沿岸海域の豊かさ   2.1.1 瀬戸内海の漁業生産力   2.1.2 有明海の漁業生産力  2.2 沿岸海域の危機   2.2.1 海洋汚染と生息環境破壊   2.2.2 漁獲量の減少3.人と山  3.1 里山4.里海  4.1 里海の定義「人手が加わることで生物多様性と生産性が               高くなった沿岸海域」  4.2 藻場の刈り取り   4.3. 新しい技術   4.3.1 人工湧昇流発生構造物         5.環境倫理   4.3.2 藻場創出                      5.1 環境倫理とコモンズ   4.3.3 干潟再生の試み                 5.2 「保全」と「保存」    4.3.4 底曳網の改良              4.4 養殖・栽培漁業                 6.おわりに   4.4.1 養殖場の物質循環モデル  4.5 海洋牧場  4.6 漁業資源管理   4.6.1 姫島   4.6.2 三崎   4.6.3 東南アジア

恒星社厚生閣

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里海創生論恒星社厚生閣

2010.12発刊

• 里海創生論• 柳 哲雄• 1.はじめに• 2.「里海論」の展開•   2.1 人手と生物多様性• 2.2 里海を支える漁村の販売戦略-三崎・姫島漁協の経済的基盤•   2.3 里海に係わる慣習法•   2.4 景観生態学に対する“里海”という視点•   2.5 里海研究のあり方-科学と社会の相互作用-•   2.6 海の再生としての里海づくり•   2.7 里海概念の共有と深化•   2.8 里海論・里海創生運動の課題• 3.  里海創生例•   3.1 桑名のハマグリ漁場再生-桑名市赤須賀漁協•   3.2 アマモ場再生と海底ごみ持ち帰り活動-岡山県日生町漁協•   3.3 磯焼けとアイゴ駆除-静岡県相良漁協 •   3.4 カキ養殖とガザミ資源保護-福岡県豊前海北部漁協恒見支所•   3.5 環境教育-大分県中津市水辺に遊ぶ会•   3.6 市民の漁業活動参加-福井県雄島漁協米ケ脇支所•   3.7 漁業権の解放-京都府網野町漁協•   3.8 森・川・海の統合管理-山口県椹野川の試み•   3.9 沿岸海域における利害調整-高知県柏島黒潮実感センタ-•   3.10 “鎮守の海”としての生島周辺海域• 3.11 モズク養殖とサンゴ礁保全―沖縄県恩納村漁協•   3.12 地先海域水産資源保全活動-青森県尻屋漁協• 4.  海外への Sato-umi発信•   4.1 第 8回エメックス報告•   4.2  PEMSEA• 5.  おわりに• 参考文献 • 初出一覧

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人手と生物多様性

未利用

藻場創生漁礁設置

高生物多様性

過剰利用

過剰利用

l.b.

l.b.

l.b.

l.b.

l.b. = 低生物多様性

止・極相遷移

生息環境創生

未利用

賢い利用

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里海創生への課題• 科学・技術面 海洋生物の住処整備 : 魚礁、石干見、ササヒビ、                 干潟、藻場、サンゴ礁 地域の知恵 –非均一な環境+科学的知識 -                      復元力のある生態系 • 環境管理 コモンズ ;漁民、利害関係者、行政、科学者ー合意                           地域の知恵 – 非均一な文化     地域社会、地方政府、中央政府 – 相補的関係

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総括班激動する世界の中での沿岸海域管理哲学構築望ましい沿岸海域の定量的環境指標を実現するために必要な施策政策支援ツールとしての自然・社会・人文科学統合モデル

持続可能な沿岸海域実現を目指した沿岸海域管理手法の開発( 2014~ 2018 )1.瀬戸内海(閉鎖的内湾)班望ましい水質決定法高い生物多様性・生産性実現手法総量削減→貧酸素水塊解消機構

2.三陸沿岸海域(開放的内湾)班津波からの環境回復監視復興に必要な人手(里海創生)「森は海の恋人」の定量的理由解明

3.日本海(陸棚・島嶼)班生物多様性保全のための MPA貢献度日本海の流動・生態系変化予測国際的・広域的海域環境管理

4.社会・人文科学班生態系サービスの貨幣価値99.8% の市民と海を結ぶ里海物語MPA における漁業活動調整

統合型沿岸海域モデル

きれいで、豊かで、賑わいのある持続可能な沿岸海域実現

環境行政施策協議会(三段階管理体制)

見える化

テーマ1 テーマ2 テーマ3 テーマ4

沿岸海域管理のための統合数値モデル構築テーマ5

世界発信1.5億 / 年

環境研究総合推進費【戦略的研究開発領域】