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「社会」から考える ~社会学?のすすめ~ 201499CCT 古謝貴史

「社会」から考える~社会学?のすすめ~

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Page 1: 「社会」から考える~社会学?のすすめ~

「社会」から考える~社会学?のすすめ~

2014年9月9日

CCT 古謝貴史

Page 2: 「社会」から考える~社会学?のすすめ~

・社会学って……?

• 私もよくわかりません※

• 自分の研究を引き合いに話せる範囲で話します

• 今日のテーマ:社会学的なものの見方

※研究範囲は人の営み全般に及び、研究方法もいろいろなので一概に言えないところがあります。「社会について考える学問です!」

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大学で研究してたこと:

• 性同一性障害(Gender Identity Disorder :GID)症状:-自らの性別への不快感・違和感-反対の性別に対する強く持続的な同一感-反対の性役割を求める治療法:-精神科領域の治療(カウンセリング等)と身体的治療(ホルモン療法、乳房切除、性別適合手術)

※所属してたのは社会問題、中でも差別と排除について研究するゼミでした。

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そもそも「病気」なの?

• 従来はセクシュアルマイノリティとして語られていた存在

• 今までアングラな扱いだったのに公的医療の対象になったのはなんで?

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医療化の論理

性同一性障害

性の分化は脳の異常

患者のQOL向上 不可逆・非

選択で当人の責任なし

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ホルモンシャワー説

• 医学が性同一性障害の原因として取り上げた仮説。胎児期に過剰なホルモンの分泌を受けると性の自己認知に後々まで残る強い影響が出るというお話。

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待った①

ホルモンシャワー説の論拠にあるのはマウスの同性愛行動に関する研究

• 医学的には同性愛は疾患ではなく、診断上性同一性障害と同性愛は区別される のにこの仮説が採用される

• このマウス研究で言われている「同性愛行動」が人間の同性愛と比較しうるのかも検討の余地あり

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待った②

脳、というか神経系の細胞については後天的な変容も有りうるとする学説もある

・生後の影響を過小評価していないか

・脳の性差は必ずしも原因ではなく結果の可能性も有りうるのではないか

・原因と言いながらそもそも診断の時に脳なんて調べてないよね?

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今日のポイント

• 原因や定義の真偽を明らかにする

…のではなく、

なんでそんな風に語られるようになったのか?

を考える

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「何が問題か」を考えることの限界

• 社会問題研究では、「○○が問題である」と客観的・価値中立的に定義づけることは不可能という論説がある(例:文化の違いとか)

→問題の客観的な定義とやらは保留しつつ、

ちょっと迂回して「どのように○○が語られているか」という点から、その背景にある人々の感覚、価値観を探るというアプローチ(社会問題の構築、社会構築主義)

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調べました① 医学系資料

• 第一任者の医師と当事者との接触

→性別違和に苦しむ存在を「治療する」方法

が公式に模索される

→埼玉医科大で幾度かの審議の末、

性同一性障害医療が発足

埼玉医科大の倫理委員会では母体保護法の問題、生命倫理、常識、人はどう生きるべきか、etc…とさまざまな賛否の意見が飛び交ったそうです。

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調べました① 医学系資料

ホルモンシャワー説を論拠とすることで、

• 当人には責任のない

• 身体の先天的性質に基づく

• 不可逆な

• 苦悩

は治療対象として公的に認められる

→そこで認められなかったのは何か?

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調べました② 法的手続き

以下の条件で戸籍の性別変更もOK

• 二十歳以上であること

• 現に婚姻していないこと

• 現に子がいないこと※(2008年に「現に未成年の子がいないこと」に改訂)

• 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

• その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

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調べました② 法的手続き

• 現に子がいないこと、生殖腺がない~

→性同一性障害であることと、子がいることが

両立してしまうとどうやらまずいらしい

具体的に言うと、同性婚状態の回避が目的

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調べました② 法的手続き

• その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

→法的に性別を変えるためには外科手術が

必須

→でも他人の性器なんて確認せずとも私たちは

社会生活を送れる

• 身体の性別に対する精神的性別の優位性があってこその性同一性障害、

→その一方で性器に基づく性別観もこの辺から読める

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調べました③ 大衆雑誌

• 「女性的/男性的な性欲」の描写

性同一性障害当事者の性欲に「男性性」「女性性」を見出す

→「体は男性/女性でも心は女性/男性」といっ

た説明により、性別を変える正当性が確立される。

性欲に基づく性別観

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研究のまとめ

• 私たちの社会は男だか女だかよくわからないイレギュラーなものを「男性」「女性」というノーマルな二つにきっちりわけることで、それに対処している。「性同一性障害」はそのための概念。

• 「性同一性障害」医療は当事者を治療するけれども、当事者を治療することで守られているのは私たちの社会の方ではないか?

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社会学的なものの見方

• 人々の営みの中に立ち現れる、個々人に還元しえない何かを捉えようとする視座

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社会学的なものの見方 例

性同一性障害

脳の性分化障害

性別規範の維持機能

いじめ

加害者の心性究明、責任の追及

学校という空間での特殊な関係性がもたらす緊張

コミュニケーション

研鑽可能な能力

コミュ力

会話の担い手双方の相互行為により成立するもの

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社会学で言われてることってなんか当たり前じゃない?研究までしてそんなことしか言えないの?

ここを突っ込まれると弱いです①

→当たり前と感じるのはそんな社会にいるからこそ

→面白い論考はちゃんと面白いです

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ここを突っ込まれると弱いです②

→社会構造や人々の価値観に直接干渉するのはいろいろと無理です。

→社会学自身が問題を提起して解決策を出す

となると「勝手に問題を定義して社会学自身に都合の良い解決を提案」するマッチポンプな構造にもなりがち。学問的にもそれはまずいです。

問題をいろいろ分析するのはいいけど、解決策とか出さないの?出せないの?意味あるの?

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じゃあ、どんな意義が?

• 物事を判断する上でバランスを取る

例)出生前診断と障害者福祉

生命倫理、障害を受け入れるリスク、etc…

・障害は個人の身体的ハンディキャップに由来するものではなく、個人の能力を十全に発揮できない社会設計の方にあるという見方(障害の社会モデル)

・個々の障害を減らす一方で、障害のある人でも生きやすい社会設計がおろそかにならいか、それが妥当か否かも含めて考えられる。

Page 23: 「社会」から考える~社会学?のすすめ~

社会学と関わることの良い点悪い点

・人に(形式的に)やさしくなれます

・自分にもやさしくなれます

・思考がひねくれます

・常識的な考えや振る舞いに疑問が湧き「健全な」社会生活を送るのが困難になります

※個人の感想です

Page 24: 「社会」から考える~社会学?のすすめ~

こんな人におすすめ

• 常識やルールになじめない、抑圧を感じる→それらを(擬似的な)外側からみようとするのが社会学

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おしまい。