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GHGT-12参加レポートと 産総研におけるCO 2 地中貯留関連研究の紹介 独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 徂徠 正夫 グローバルCCSインスティテュート日本事務所主催第14回勉強会 平成26年12月12日 1

Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

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GHGT-12参加レポートと 産総研におけるCO2地中貯留関連研究の紹介

独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門

徂徠 正夫

グローバルCCSインスティテュート日本事務所主催第14回勉強会 平成26年12月12日

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発表内容 ■GHGT-12参加レポート - GHGTの概要 - セッションと発表内容 - パネルディスカッション - 所感

■産総研におけるCO2地中貯留関連研究の紹介 - METI委託費研究 - その他

■CCSの今後の推進に向けて

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GHGT-12参加レポート

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GHGTとは ■GHGT:

International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies - 1992年の第1回から隔年開催で、2014年現在で第12回 - 第1~3回までの名称はICCDR

(International Conference on Carbon Dioxide Removal) ■エネルギー機関温室効果ガス研究開発プログラム

(IEA GHG R&D Programme)の主催 ■回収から貯留までを含むCCS技術に関する最大の学術会議

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GHGT開催地の推移

GHGT-5 (2000) オーストラリア・ケアンズ

GHGT-4 (1998) スイス・インターラーケン ICCDR-2 (1994)

GHGT-6 (2002) GHGT-11 (2012) 日本・京都

GHGT-7 (2004) カナダ・バンクーバー

GHGT-8 (2006) ノルウェー・トロンハイム

ICCDR-1 (1992) GHGT-10 (2010) オランダ・アムステルダム

GHGT-12 (2014) 米国・オースティン

ICCDR-3 (1996) 米国・ボストン

GHGT-9 (2008) 米国・ワシントンDC

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GHGT参加者数の推移

0

500

1000

1500

2000

GHGT-4 (1998)

GHGT-5 (2000)

GHGT-6 (2002)

GHGT-7 (2004)

GHGT-8 (2006)

GHGT-9 (2008)

GHGT-10 (2010)

GHGT-11 (2012)

GHGT-12 (2014)

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GHGT-12の概要 日時: 2014年10月5日~9日 会場: オースティンコンベンションセンター

(米国テキサス州オースティン) 参加者: 約1,150名(35カ国) ■口頭発表: 340件 ■ポスター発表: 529件

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貯留(19セッション) 回収(16セッション)

貯留のケーススタディ 10 燃焼後回収:動的モデリング 5

サイトの特性解析と影響評価 5 燃焼後回収熱力学解析 5

環境影響 5 燃焼後回収:試験プラント成果 5

坑井健全性 5 燃焼後回収:プロセス解析 5

リスクの評価と管理 10 燃焼後回収:試験プラント成果とプロセス解析 5

現状復帰と災害対策 5 燃焼前回収 5

地球物理学モニタリング 5 酸素燃焼回収 13

圧力モニタリング 5 産業回収戦略 5

地化学モニタリング 5 吸着システム 15

モニタリングツール 5 新規システム 14

トラッピングメカニズム 10 エアロゾルとニトロソアミン 5

ジオメカニクス 4 溶媒 4

モデリング:輸送、固定及び地化学反応 5 溶媒分解と排出 5

モデリング:フィールドスケール貯留プロジェクト 5 溶媒及びプロセスモデリング 5

モデリング:堆積盆スケール及びキャパシティ評価 4 膜 5

貯留モデリング:計算手法 4 化学ループ 5

貯留キャパシティ 9

貯留工学 4

圧入性 5

合 計 110 合 計 106

テクニカルセッションと口頭発表件数(1)

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商業的課題(5セッション) 実証試験(5セッション) CO2利用(3セッション)

システムコスト解析 5 Mongstad CO2技術センターからの結果

5 石油増進回収法 4

エネルギーシステムへの統合 5 実証試験プロジェクト 5 炭化水素増進回収法 5

ライフサイクルアセスメントと衛生安全事務局

5 プログラム概要 4 CO2利用 10

CCSと水利用 5 回収実証試験 4

融資・商業的課題 4 貯留実証試験 5

合 計 24 合 計 23 合 計 19

輸送(3セッション) 工業排出(2セッション) 社会的認知(2セッション)

排出源・貯留サイトマッチング 5 セメント分野のCCS 5 CCS展開に対する社会科学研究 4

輸送・安全性と品質 5 産業におけるCCS 5 コミュニケーションとCCSへの態度 5

CO2の分散 5

合 計 15 合 計 10 合 計 9

テクニカルセッションと口頭発表件数(2)

9

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パネルディスカッション 貯留プロジェクトで失敗したらどうするか? 予期せぬ漏出に対する介入選択肢

技術的挑戦の実現と得られた成果:米国エネルギー省の地域炭素隔離パートナーシップ大規模プロジェクト

エネルギー集約型産業への従事:産業におけるCCS展開の挑戦

開発途上国におけるCCS展開の倫理的考慮とは?

我々はCCSに対する国際標準ISOに備えられているか? TC265について

米国における貯留サイト許可:得られた教訓と前進への道

テクニカルセッションと口頭発表件数(3)

口頭発表会場1 口頭発表会場2 開会挨拶

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地中貯留における進展 CO2回収技術における進展

ケーススタディ 15 燃焼後回収:モデリング 26

サイト特性評価及び選定 14 燃焼後回収:プロセスデザイン&運用 27

CO2貯留の環境影響 15 燃焼後回収:溶媒 16

坑井健全性 11 燃焼後回収:新手法 19

リスクの評価と管理 10 燃焼後回収:環境影響 9

現状復帰と災害対策 3 燃焼前回収:プロセスデザイン&運用 5

モニタリング:地球物理学的手法 19 燃焼前回収:技術 4

モニタリング:地化学的手法 8 酸素燃焼:CO2処理 1

モニタリング技術・技能 25 酸素燃焼:プロセスデザイン&運用 10

トラッピングメカニズム 17 酸素燃焼:技術 2

ジオメカニクス 7 吸着システム 26

モデリングツールと手法 28 膜 9

貯留キャパシティ 17 化学ループ 4

貯留層工学 6 新規システム 4

CO2圧入性 9 既設施設改造 1

新規貯留コンセプト 4 手法技術のベンチマーク 3

その他 1 その他 3

合 計 209 合 計 169

ポスターセッションと発表件数(1)

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CO2利用オプション 実証試験及び主要国際・国家CCS 研究開発及び実証プログラム

CO2の輸送とインフラ開発

増進地熱 4 経験と成果 5 パイプライン 7

炭化水素増進回収 23 新規開発 1 安全性とCO2品質 6

その他 3 試験プロジェクト 13 船舶輸送 1

プログラム概要 1 排出源・貯留地マッチング 3

その他 3 その他 6

合 計 30 合 計 23 合 計 23

CCS技術評価及びシステム統合 CCSの認知 産業排出に対するCCS(非発電)

商業的課題 4 CCS及び低炭素技術への姿勢 4 セメント 5

コスト 1 コミュニケーション活動のケーススタディ

3 高濃度CO2源 1

統合CCSシステム 4 CCS展開のための社会科学研究 3 鉄鋼 1

競争的電気市場におけるCCSの統合 2 その他 2 石油化学 1

ライフサイクルアセスメント研究 2 その他 3

その他 7

合 計 20 合 計 12 合 計 11

ポスターセッションと発表件数(2)

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その他の貯留オプションにおける進展 その他

炭層 3 ネガティブCO2排出に向けて:CCS併用バイオマスエネルギー 3

鉱物化 3 ネガティブCO2排出に向けて:大気中CO2回収 2

海洋貯留 2 CCS関連能力強化、教育及び訓練 4

その他 1 CCSの法規制面及びCO2貯留の長期負債 7

エネルギー、気候変動及びCCS政策 7

合 計 9 合 計 23

ポスターセッションと発表件数(3)

ポスター会場1 ポスター会場2 会場内部

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全体パネルディスカッション

司会: Kelly Thambimuthu(IEA GHG) パネリスト: Sally Benson(スタンフォード大学) Olav Bolland(ノルウェー工科大学) Sean McCoy(IEA) Jonas Helseth(Bellona財団) Bill Spence(シェル、TBC) http://bigthink.com/users/kellythambimuthu

主題: CCSの進歩に基づく政策立案者へのメッセージ 議事: ①パネリストが2004-2014年の10年間でのCCS技術の進歩をレビュー ②CCSの今後の展開に関わる質問に、パネリストが専門領域を代表して回答

※レビュー期間の開始点2004年は、IPCCの「CCSに関する特別報告書(SRCCS)」(2005)の最終とりまとめ期に相当。今年はSRCCSの出版からほぼ10年経過し、すでに2年前の2012年のGHGT-11に伴って開催されたIEA-GHG執行委員会の段階で、そのリバイズが話題になっていた。

地球温暖化の解決策として―エネルギーポートフォリオと国際的協力の促進のベストミックス

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Sally Benson ・この10年の進歩は著しい。実用規模のCO2貯留が2004年の2件から2014年は12件に増加。パフォーマンスも天然ガス地下貯留とあまり異ならない。 ・貯留の健全性を保証する基本プロセスが良くわかってきた。特に残留ガスおよび溶解トラッピングの定量化が進み、サイト特性を考慮した上で評価できるようになってきたことが大きい。 ・モニタリングは、2004年時点の反射法とUチューブ法以外に手法が多様化。モニタリングを実施している試験場も飛躍的に増加。 ・貯留量評価も、地質構造ベースの初歩的なものから、現在は残留ガスおよび溶解トラッピングの効果も勘案して高度化。手法について、国際的に認識が共有化されつつある。 ・貯留全般のリスクとして漏洩が非常に重視されるようになってきたことを背景に、貯留層内圧力とジオメカニクスの評価が技術開発の中心になってきている。 ・貯留エンジニアリングにおいてもモデリング技術の進歩は著しく、貯留に関る諸要素を能動的に管理できるレベルに到達。 ・これら全体の進歩が、地中貯留を必要な技術として受け入れる下地になってきている。

https://pangea.stanford.edu/research/bensonlab/sallybenson/

全体パネルディスカッション -10年間のCCS技術の進歩のレビュー(貯留)-

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http://www.ntnu.edu/employees/olav.bolland

・燃焼後回収:アミンを用いた回収法がごく普通の技術になった。 ・酸素燃焼法:現在のスケールでは技術的問題がなくなった。今後はスケールアップが課題。 ・燃焼前回収:技術的進展がなく、話題になる機会も減ったことを憂慮。 ・何と言ってもコストダウンが必要。雰囲気的に北米・中国は楽観的だが、EU圏では英国とノルウェー以外が悲観的。産業界の関心を維持するためにも大規模実証が必要。 ・特許数ではかると、技術開発自体は進んでいると言える。

全体パネルディスカッション -10年間のCCS技術の進歩のレビュー(分離・回収)-

Olav Bolland

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・現在、CCSの主として貯留にかかる法規制の整備が各国で進んでいる。 ・CDMが控えているために、国際的なルールの策定が急がれる。 ・海底下地中貯留については、北西大西洋海域を対象とした”OSPAR Amendment 2007”や、2006年発効のロンドン条約1996年議定書のように、実施を可能とする方向での国際法的枠組みが整備されつつある。 ・技術内容に関するルールについても、Inventory Accounting GuidelineやISO TC265等国際的枠組み作りが進んできている。また各地の実証試験を基に、Best Practiceシリーズが公表されつつある。 ・次の10年に向けては、以下のポイントが重要になるとの予測。

- 坑井閉止とその後の管理 - CO2-EORと深部塩水層貯留で貯留の確認の共有化 - 知識の共有化 - ロンドン条約 Article #6修正条項の批准

http://www.recsco2.org/people/about/sean_mccoy_phd

全体パネルディスカッション -10年間のCCS技術の進歩のレビュー(規制)-

Sean McCoy

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・バイオマス+CCSの組み合わせは、CO2のネガティブ・エミッションを実現する重要な要素。 ・現実的には、石炭等と共にバイオマスを燃料として用いる。それでもCO2の分離・回収法の段階では、現在の石炭火力への適応を前提とするものと異なった技術が必要となってくる。 ・バイオマス+CCSによるCO2排出削減のパフォーマンスを、Drax火力発電所を例に紹介。バイオ・エタノール生産プラントでは純度>99%のCO2を回収し排出割合-15~-30%に、バイオ・ディーゼルのプラントでは純度>95%のCO2回収で排出割合-50%を達成。

(※Drax火力発電所は、英国ヨークシャー州北部に立地する。もともと石炭火力発電所であったが、バイオマス併用発電で近年注目されている)

http://bellona.org/employee/jonas-helseth

全体パネルディスカッション -10年間のCCS技術の進歩のレビュー(ネガティブ・エミッション)-

Jonas Helseth

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・カナダサスカチュワン州のBoundary Dam CCSプロジェクトは、成功裏に進んでいる。これは、この10年間の著しい進歩の象徴と言える。 ・”The dogs will bark but the caravan will pass” (犬が吠えても隊商は進む)

http://www.usea.org/profile/bill-spence

全体パネルディスカッション -10年間のCCS技術の進歩のレビュー(実証試験プロジェクト)-

Bill Spence

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Q1. CCSは他の低炭素化技術と並び立っていけるか? 【Benson】、【Bolland】 同一基準で論じることはできない。 【Helseth】 best mixを選択すべき。

Q2. この10年でリスクに対する理解は進んだか? 【Benson】、【Spence】 生産やガス貯留で積んだ経験が役に立ち、誘発地震についても廃水圧入等で起こしてしまった経験を生かしてコントロールすれば回避できるという自信をつけつつある。漏洩に関して重要なキャップロックについては、ダメージを与えていないという確証は実のところない。

【McCoy】 人々は心配しているが、懸念を完全に打破するのは難しい。

全体パネルディスカッション -CCSの今後の展開-

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Q3. CCSは化石燃料業界へのgreenwash(※環境対策に取り組む姿勢を見せる広報活動、さらに進んで環境汚染にたいする見せ掛けだけの償い)ではないかという見方をどう考えるか?

【Bolland】 古臭い業界にとっては、チャレンジである 【Helseth】、【McCoy】 セメント、製鉄等、現在のCCS技術がカバーしていない

業種がまだある。網をかける必要はあるし、業界としても努力はしている。 Q4. シェールガス開発以降、ガス燃焼火力発電が普及してきたが、CCSのガス燃

焼への適用は? 【McCoy】 可能と思うが、関心は低い。

全体パネルディスカッション -CCSの今後の展開-

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Page 22: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

■今回の会議では、参加者数が前回の48ヶ国1,293名から35ヶ国1,150名(暫定発表)となり、伸び続けてきた参加者数も一段落した印象を受けた。特に、中国や韓国からの参加者が少ないように見受けられた。また、フィリピン、ネパール、インド等のアジア諸国やガーナ、ケニア、リビア等アフリカ諸国からの少数(1~5人程度)での参加が見られなかった。CCSに対する関心がやや弱くなりつつある点が懸念される。

■発表件数は前回(公式発表口頭296件、ポスター621件)に比べ、口頭発表が340件と増加したのに対して、ポスター発表は529件と大幅に減少し、全体としては集約された形となった。また、発表内容の区分は「回収」と「貯留」が二大柱であるが、例年「回収」の発表件数が多い傾向であったのが、今回は「貯留」が「回収」をわずかに上回った。

■基調講演等でも触れられたが、地元の反対やコスト関連の問題で大規模CCS実証プロジェクトは延期状態のものも多く、社会科学や政策的な介入への要望が高まっているように感じられた。一方で小規模プロジェクトは増加しており、その研究結果が注目されている。

■今後は、CCSに対する関心をより一層高め、有効性を多角的に検証していくことが課題となる。

所感:会議全体

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Page 23: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

■米国イリノイ州Decaturプロジェクトの結果が出てきている。現在米国のCCSプロジェクトは石油増進回収を伴うものに切り替わっているため、塩水帯水層を貯留層とするDecaturプロジェクトの結果は貴重なサンプルである。

■これまでの会議ではあまり前面に打ち出されていなかった、CO2の「漏洩」をキーワードとした研究が非常に増加している点が注目された。また、初めてのセッションとして「原状復帰及び緊急時対策」も組まれていた。これらの状況は、CCSの研究技術開発が大まかにはほぼ全域にわたって着手されたことを受け、社会的受容性の拡大に向けたCCSのリスクともきっちり向き合った研究開発に重点がシフトしつつあることを意味していると思われる。

■リスクに関連して、貯留層の間隙圧上昇の防止策として、間隙水生産に関する研究も比較的多く取り上げられている印象を受けた。

■一方で、CCSの研究開発要素に関して、基礎的なパラメータや知見に関する検討は依然として多く行われていた。これらのデータは数値シミュレーションの実施に際して不可欠な情報であり、継続して不確定性を軽減していくことが課題であると感じた。

所感:研究内容

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Page 24: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

■GHGT-13 - 日程: 2016年11月14日~18日 - 場所: スイス・ローザンヌ

■IEA GHGとEcole Polytechnique Fédérale de Lausanne(EPFL、スイス連邦工科大学ローザンヌ校)の共催。

■GHGTホームページのGHGT-13で案内開始

(http://www.ghgt.info/index.php/Content-GHGT13/invitation.html) ■GHGT-12のプロシーディングス

- Energy Procediaで2015年4月頃発刊予定 - ウェブページから検索・閲覧可能(12月初め現在)

(https://www.eventspro.net/iea/rs.esp?id=1090067&scriptid=SPPP1)

GHGT-13開催予定

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Page 25: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

産総研・地圏資源環境研究部門における CO2地中貯留関連研究の紹介

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Page 26: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

■弾性波探査補完モニタリング技術の開発 - 多面的モニタリング技術の開発 - モデリングと一体となったモニタリング手法の開発 → 弾性波とは異なる連続的、補助的監視手段としての受動

的モニタリング技術の開発

■遮蔽性能評価技術の開発 - ジオメカニクスを考慮した断層の取り扱い - 砂泥互層におけるCO2移行特性の評価 →日本で考慮すべき地質特性を取り入れモデリングの精緻化

弾性波探査を補完するCO2挙動評価技術の開発 - 経済産業省「二酸化炭素回収・貯蔵安全性評価技術開発事業」 -

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Page 27: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

多面的モニタリング技術開発 - 米国SWPのCO2大規模圧入テストサイトFarnsworth Unitにおいて、重力、自然電位、AE 等のモニタリングを実施。

現状

圧入開始1年目 5年目 10年目 ・・・ 停止後 ・・・ サイト閉鎖

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

反射法→

重力・自然電位等のモニタリング 本研究

本研究が目指すモニタリング将来イメージ

トータル コストの 削減

高コスト

低コスト

反射法

←反射法

反射法

反射法

反射法

反射法

反射法

より短期間に高精度な地下モデルを構築 → モニタリング併用による反射法実施回数の低減、 圧入停止~サイト閉鎖の期間短縮

CO2圧入シミュレーション

圧入井 観測井

モニタリング(観測データ)

坑井データ ・坑井内圧力(変化) ・坑井内温度(変化)等

物理探査データ ・地震波(変化) ・比抵抗(変化) ・重力(変化) ・自然電位(変化)等

CO2圧入に伴う 圧力変化、温度変化 CO2飽和度変化 流体成分変化

直接ヒストリー マッチングが可能

ヒストリーマッチングするためには

モデル【各グリッドの水理パラメータ(浸透率,孔隙率等)】の改良

物理量変換 (ポストプロセッサ)

が必要

最適モデリング技術の開発

- シミュレーションによる計算量(温度,圧力,CO2飽和度等)

から,観測可能な物理量(理論計算値)への変換プログラムを開発。

- モニタリングデータを最大限利

用したヒストリーマッチングの実施に必要。

弾性波探査補完モニタリング技術の開発

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Page 28: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

重力:周囲の質量による万有引力の鉛直成分を測定 →CO2地中貯留等により生じる地下の質量変化を 地表における重力変化として測定する。

重力モニタリングの原理

単位質量(1 kg)に対する重力変化

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Page 29: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

絶対重力計 FG5 A10

可般型(スプリング式)相対重力計 地上型 (ラコスト・CG3/CG5など) 孔内重力計 海底重力計

連続観測用相対重力計 超伝導重力計…高感度 gPhone CG3/CG5(連続計測モード)

重力計測法と感度

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Page 30: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

- 断層からのCO2上昇等の、地下モデルで想定外の事象の発生を検知するための指標として活用可能

- 重力連続観測点は、比較的広い範囲内に設置可能 → 2D反射の弱点の補完、反射法実施頻度の低減に寄与可能 - さらに、100 nGal精度での連続観測が達成できれば… 圧入開始後の早い時期に地下モデルからの乖離を検知可能 → 地下モデルの改良、早期の対策等に活用可能

高精度連続重力観測の活用イメージ

- 米国のSWP実施のCO2大規模圧入テストに参加。テキサス州ファンズワース(FWU)のCCS-EORサイトでテスト観測を実施中。

- 苫小牧実証試験サイトでの観測も開始予定

ほぼ同スケールの観測点配置

※SWP:Southwest Regional Partnership for Carbon Sequestration (炭素隔離のための南西部パートナーシップ)

苫小牧

FWU

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Page 31: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

ジオメカニクスを考慮した断層モデリング手法 砂泥互層におけるCO2移行特性評価技術

鉱物組成、粒径分布、き裂性状等の違い

我が国の貯留層にみられる地質特性 - 微小な断層、き裂系が存在 - 軟岩岩盤 - 薄い砂岩層と泥岩層が互層を形成

これらの構造がCO2の遮蔽性能に及ぼす影響をあらかじめ評価する必要あり

単一の岩層と比較してCO2の挙動がより複雑化

CO2圧入に起因した間隙圧の上昇

浸透率等の水理特性の連動的な変化が予想

弾性波探査では検出困難な微小構造

各岩層でシール性能やCO2の流動性、地化学プロセスが変化

地層の変形、き裂の進展

地盤・岩盤の変位

流体湧出 可能性

既存弱面の再動による破断

CO2

圧入井

砂泥互層の各岩層の性状(シール性能や地化学 プロセス等)を踏まえたモデリング手法の開発

間隙圧・温度の変化と、岩盤中の断層等の変形による透水性変化等を取り入れたモデリング手法の開発

遮蔽性能評価技術の開発

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Page 32: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

異なる岩石種について、き裂の進展およびすべりの挙動とそれに伴う透水性の違いを観測

岩石変形と流体透過性の関係の検証

- 地下環境を模した条件下での軟岩の力学-水理試験

- 想定されるCO2貯留サイトの軟岩物性の構成則化

- 断層破砕物質の変形条件と流体透過性の関係解明

振老層泥岩

別所層泥岩 軸圧

封圧

せん断変形-透水実験 岩石: 苫小牧、松代、

上総層群の泥岩、砂岩および凝灰岩

温度: 40˚C 封圧: 20MPa 間隙圧: 10MPa

せん断すべりに伴う浸透率変化の測定

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Page 33: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

キャップロックのシール性能評価 シール圧-浸透率のモデル化 超臨界CO2-水系でのPc

th測定

岩石シール圧のばらつきの範囲の特定

浸透率

スレッショル

ド圧

粒径分布・鉱物組成の効果

粒子形状・亀裂の効果

粒子形状・亀裂の効果 最密充填からのずれの効果

均一粒径の最密充填構造

内部構造制御試料の適用 - スレッショルド圧に及ぼす粒径および粒径分布

と充填状態、き裂の効果の解明 - スレッショルド圧に及ぼす粒子形状および鉱物

組成の効果の検証 地層水 毛管

静水圧

キャップロック

地層水

超臨界CO2

毛管圧(スレッショルド圧)

浮力

静水圧 キャップロック

シール性能を規定するスレッショルド圧

岩石へのモデルの適用性の検討 - 有効圧(間隙構造)変化の岩石種依存性の評価 - 塩水間隙水の適用

33

101

102

103

104

10-2 10-1 100 101 102 103

10-0.1μm5-0.1μm1-0.1μm1-0.1μm0.5-0.1μm0.2-0.1μm5-0.5μm1-0.2μm1-0.5μmUniform particles

Thre

shol

d pr

essu

re (k

Pa)

Permeability (mD)

Page 34: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

炭酸泉における鉱物反応実験 鉱物トラップ速度の計測

炭酸塩鉱物の核形成速度の測定 - 動的光散乱法による核形成速度および臨界過飽和度の計測

- 炭酸塩鉱物の生成条件のモデル化

炭酸塩鉱物の溶解・成長速度の測定 - 種々の温度、pH、CO2分圧、塩濃度、Mg/Ca比

条件下での反応速度の測定 - 飽和度およびMg/Ca比依存性の定式化 - 温泉水へのCO2注入実験

増富温泉

群馬県内各温泉

青堀温泉 和歌山市内各温泉 白浜温泉

長湯温泉

- CO2地中貯留の模擬サイトとして炭酸泉等における現場反応実験

- 各炭酸塩鉱物の種結晶を用いたナノスケールでの解析

鉱物の溶解 鉱物の成長

基準面

エッチピット

基準面

成長丘

炭酸塩鉱物の反応速度の測定

ウトロ温泉

0.001

0.01

0.1

1

10

0.1 1 10

0.1 1 10

CalciteCalcite+AragoniteAragoniteNo reactionN

orm

aliz

ed s

alin

ity

Mg/Ca (mol)

Mg/Ca (ppm)

カルサイトの安定領域 ドロマイトの安定領域

高Mgカルサイト+アラゴナイトの安定領域

10-9

10-8

10-7

10-6

10-5

10-4

0 1 2 3

CalciteAragonite

Gro

wth

rate

(mol

m-2

s-1

)

log Ω

34

Page 35: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

Bio-CCS - 産総研融合・連携推進予算「地下微生物を利用したメタンガス合成技術」 -

深度: 1,000-1,300 m 温度: 53-65℃ 圧力: 5 MPa

秋田県八橋油田 嫌気的条件下でのメタン生成実験 ガス: CO2なし(100% N2) CO2あり(CO2:N2 = 2:8) 温度: 55˚C 圧力: 5 MPa

CO2なし ○ メタン □ 酢酸

CO2あり ● メタン ■ 酢酸

Mayumi et al., 2013, Nature Communications

0.36 mM/day 0.17 mM/day

CO2注入によりメタン生成速度が2倍に加速 メタン生成菌により酢酸からメタンが生成

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Page 36: Dr Masao Sorai - Summary of the International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies (GHGT-12)

- 計算条件 ・年間1万トンのCO2を10年間、地下1000 mに圧入 ・CHEM-TOUGHを用いた地質モデル構築

- 原油からメタン生成までの推定反応経路

1630m

CO2注入セル

100m

74年後の鉛直断面プロファイル

4C16H34 + 30H2O + 34CO2 ↔ 49Ac- + 49H+

49Ac- + 49H+ ↔ 49CO2 + 49CH4 ---------------------------------------- 4C16H34 + 30H2O ↔ 15CO2 + 49CH4

CO2 gas

CO2 lq

HCO3-

Ac-

CH4

メタン生成ポテンシャルの予備検討 Bio-CCSプロセスの数値シミュレーション

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プレゼンター
プレゼンテーションのノート
日本の標準家庭、300戸程度の年間使用ガス量 を、70−80年 地質学的なタイムスケールより、ちょっと早い アルカン:メタン系炭化水素
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CCSの今後の推進に向けて

■社会的受容性獲得のための課題の解決 - 地震活動に対する/長期にわたる貯留層の健全性評価 - 誘発地震(国際的にもCCSのリスクとして広く認識)

■海外展開を見据えたCCUSの推進 - CO2-EORに伴う各種課題解決(海外のCO2-EORへの進出) - 他のCCUSオプションの実現可能性の検証

■商用化に向けた最適スキームの検討 - 対象貯留層、監視手法の再検討(コストの低減) - 多様な貯留オプション(大規模貯留、分散型貯留)の整備 - 緊急時対策制度・方法の確立

■夢のあるCCS - 微生物によるメタン生成 etc.

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ご清聴ありがとうございました

GHGT-12参加レポートを作成するにあたり、 中尾信典、奥山康子、杉原光彦、田中敦子、藤井孝志、加野友紀(産総研)の各氏に、ご協力いただいた。ここに深謝いたします。

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