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認知症在宅ケアの新たな取り組み -初期集中支援について- 医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 遠矢純一郎 在宅ケアを支える診療所市民全国ネットワーク 新潟全国の集い 認知症ケアのゆくえ 2013.09.23

認知症ケアのゆくえ 遠矢Web公開版 20130923

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NPO在宅ケアを支える診療所・市民ネットワーク 全国の集いin新潟 シンポジウム「認知症ケアのゆくえ」 にて講演するプレゼン資料です。 当院で実施している認知症初期集中支援の実際について発表させて頂きます。

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Page 1: 認知症ケアのゆくえ 遠矢Web公開版 20130923

認知症在宅ケアの新たな取り組み -初期集中支援について-

医療法人社団プラタナス

桜新町アーバンクリニック

遠矢純一郎

在宅ケアを支える診療所市民全国ネットワーク

新潟全国の集い

認知症ケアのゆくえ

2013.09.23

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海外の認知症への国家戦略 国名 高齢化率 認知症数 国家戦略名 開始時期

オランダ 15% 30万人 認知症統合ケア プログラム(第2期)

2004

フランス 17% 80万人 プラン・アルツハイマー2008-2012(第3期)

2001

イギリス 17% 82万人 国家認知症戦略 2009

日本 23% 304万人 認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)

2013

オランダ 認知症デイケア フランス 国立病院老年科病棟 イギリス メモリーサービス

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オランダの認知症の統合ケア Geriant

• 初期集中支援に始まり、最期まで切れ目無いサービスを提供

• 中心的役割を果たすのが「ケースマネージャー」。全員が看護師として認知症ケアの経験を持ち、専門的な研修を受けている

• ケースマネージャー1人で70人程度を担当 介護者たちへの統一した教育マニュアルがある

認知症のケースマネジメントを中心に「コーディネートされたケア」を提供

介護者向け

教育マニュアル

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アルツハイマーカフェ • オランダ全土の200カ所近くのアルツハイマー カフェが、月1回程度定期的に開催

• 認知症者と家族、友達、地域住民、専門職など 誰でも参加でき、和やかに集うカフェ

• 2時間程度、おしゃべり、レクチャー、音楽など

– 認知症者と家族のエンパワーメント、仲間作り

– 「治療」の強調ではなく、感情的社会的交流を促す

– 認知症に対する知識の普及(タブーを破る)

– 認知症に向き合う

• Alzheimer Nederlandによるガイドライン、 運営マニュアルの提供。教育プログラム、 コーディネーターの教育

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アルツハイマーカフェの数

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UCC : unité cognitivo-comportementale

老年科病棟における認知行動療法ユニット

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イギリスの認知症国家戦略 < 5つの重点課題 >

1. メモリーサービスによる初期集中支援

2. 介護施設でのケアの充実

3. 急性期病院での対応改善

4. 抗精神病薬を減らす

5. 家族・介護支援者へのケア

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オランダ・フランス・イギリスの 認知症施策に共通していたこと

• 認知症者と介護者のQOLを維持しながら、 できる限り住み慣れた家での暮らしをサポート

• そのためにも適切なタイミングで医療やケアにつなげられるような体制作りを行う

• 抗精神病薬の使用を減らし、ケアによる対応を

• 医療費介護費はすでにパンク状態につき、 低コストで良質なケアを考える

• それを実現するのが、多職種チームによる キュアとケアの包括的な提供

• 認知症への理解のある社会、地域作り 9

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厚労省から国の認知症施策の基本方針が発表

「今後の認知症施策の方向性について」 平成24年6月18日

「かつて私たちは認知症を何も分からなくなる病気と考え、徘徊や大声を出すなどの症状だけに目を向け、認知症の人の訴えを理解しようとするどころか、多くの場合、認知症の人を疎んじたり、拘束するなど不当な扱いをしてきた。」

このプロジェクトは「認知症の人は、精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め、認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会の実現を目指している

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認知症施策推進5か年計画 (2013年-2017年 オレンジプラン)

1.標準的な認知症ケアパスの作成・普及

2.早期診断・早期対応 「認知症初期集中支援チーム」の設置

早期診断等を担う医療機関を500カ所整備 など

3.地域での生活を支える医療サービスの構築 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援 など

4.地域での生活を支える介護サービスの構築

5.地域での日常生活・家族の支援の強化

6.若年性認知症施策の強化

7.医療・介護サービスを担う人材の育成

1.標準的な認知症ケアパスの作成・普及

2.早期診断・早期対応

認知症初期集中支援チームの設置 早期診断等を担う医療機関を500カ所整備 など

3.地域での生活を支える医療サービスの構築 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援 など

4.地域での生活を支える介護サービスの構築

5.地域での日常生活・家族の支援の強化

6.若年性認知症施策の強化

7.医療・介護サービスを担う人材の育成

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認知症ケアの流れを変える

認知症の進行 認知症の初期

危機的状況

精神科入院や 施設入所へ

早期診断・介入

自宅での生活を出来るだけ長く

これまで これから

さらに悪化 予後の改善 12

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初期集中支援の流れ

初期集中支援 多職種チーム

認知症早期

自宅での

生活が継続 • 医師による早期診断につなげる

• 在宅での具体的ケアの提供と指導

地域ケアマネ

に引き継ぐ

6か月後

13 チームメンバー会議

自宅での支援

チームメンバー会議 精神科医や認知症専門医を含む多職種チーム員が、訪問調査のアセスメントをチェックし、具体的な支援を検討する

看護師、作業療法士、

精神科ソーシャルワーカー等

訪問看護ステーションを

中心とした取り組み

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初期集中支援チーム サービスの流れ

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ケアマネージャー等へ引き継ぎ かかりつけ医やケアラーに引継ぐ

アクション・プラン立案と実施 本人や介護者への心理教育 介護サービスの導入

チーム員会議 医師を含めた専門チームによる会議

初回家庭訪問アセスメント 専門チームが訪問しヒアリングとアセスメントを実施

サービス導入依頼 地域包括支援センターや訪問看護ステーションなど

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認知症初期集中支援サービス

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薬物療法、非薬物療法、福祉サービス導入

-具体的な支援内容-

認知症のご本人への治療、支援

ご家族・介護者への教育的支援 認知症に対する理解、心理教育、介護サービスの活用

認知機能が比較的保たれているうちに準備をしておく

本人の権利擁護と意思決定支援

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アクション・プランの目標

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生活を支える

環境整備

人的整備 今後の予測と理解

意思決定支援

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現在までの実施状況 2012.10-2013.02

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紹介元

認知症診断

かかりつけ医

専門医受診歴

介護保険導入

認知症テスト

診断名 認知症 重症度 CDR

具体的支援内容

Case 1 86,M 独居

地域包括

あり ○ ○ ○ MMSE

28 レビー小体型 1 軽度

住宅改修、本人への教育、意思決定支援

Case 2 79,F 独居

診療所

あり ○ ○ ○ MMSE

20

アルツハイマー型

1 軽度

身体疾患の悪化に対して、在宅医療の導入

Case 3 61,M 独居

地域包括

なし × × × HDS-R

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アルツハイマー型

3 重度 介護保険導入、家族教育にて家族が同居することに

Case 4 82,M 地域

包括 なし ○ × ○

MMSE

27

アルツハイマー型

1 軽度 介護保険区分変更、介護サービスの導入、家族教育

Case 5 69,F 地域

包括 なし ○ ○ ○

MMSE

26 双極性障害

非認知症

精神科担当医への助言、 認知症ではなかった

Case 6 87,F 施設

在宅医

あり ○ ○ ○

MMSE

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アルツハイマー型

1 軽度 家族、老人ホームスタッフへの教育、在宅医への助言

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現在までの実施状況 2012.10-2013.02

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紹介元

認知症診断

かかりつけ医

専門医受診歴

介護保険導入

認知症テスト

診断名 認知症 重症度 CDR

具体的支援内容

Case 1 86,M 独居

地域包括

あり ○ ○ ○ MMSE

28 レビー小体型 1 軽度

住宅改修、本人への教育、意思決定支援

Case 2 79,F 独居

診療所

あり ○ ○ ○ MMSE

20

アルツハイマー型

1 軽度

身体疾患の悪化に対して、在宅医療の導入

Case 3 61,M 独居

地域包括

なし × × × HDS-R

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アルツハイマー型

3 重度 介護保険導入、家族教育にて家族が同居することに

Case 4 82,M 地域

包括 なし ○ × ○

MMSE

27

アルツハイマー型

1 軽度 介護保険区分変更、介護サービスの導入、家族教育

Case 5 69,F 地域

包括 なし ○ ○ ○

MMSE

26 双極性障害

非認知症

精神科担当医への助言、 認知症ではなかった

Case 6 87,F 施設

在宅医

あり ○ ○ ○

MMSE

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アルツハイマー型

1 軽度 家族、老人ホームスタッフへの教育、在宅医への助言

Case1) 86歳、男性、独居、レビー小体型認知症

2年前から発症、1年前に診断、水道や火元の止め忘れや運動障害

・ 認知症状 ⇒ 病気への理解、事前指示書などの意思決定支援

・ 生活支援 ⇒ 独居の不安に対して、電話やメールによる随時対応

住宅改修(自動止水蛇口、火元にタイマー)で自宅生活を維持

・ パーキンソン症状 ⇒ 専門医による治療、訪問リハビリの導入

具体的な支援内容 抽出された課題

Case2) 79歳、女性、独居、アルツハイマー型認知症、慢性腎不全

1年前に診断、夜間不眠や尿失禁、期限切れ食品で食中毒の症状出現

・ 認知症状 ⇒ 抗認知症薬の調整や腎不全の治療でせん妄状態が解消

・ 生活支援 ⇒ 期限切れ食品で食中毒、配食サービスやヘルパー導入

・ 腎不全 ⇒ 在宅医療の導入、専門医による治療

具体的な支援内容 抽出された課題

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初期集中支援の課題と問題点

対象者の抽出

• 初期認知症の定義が不明

• 地域でどうやって初期認知症を見つけるか

専門チームの人材確保、ツールや教材の統一化

• 認知症ケアに詳しい看護師、作業療法士やPSWの不在

• 診断会議に欠かせない認知症専門医、精神科医の確保

• アセスメントツールやケアプラン作成、家族指導のための

標準的マニュアルの不在

地域包括ケアに関わるスタッフへの研修・教育

• 在宅医、かかりつけ医、看護師、地域包括支援員の

認知症ケアに対する知識不足、教育研修体制の不備

• 地域のケアマネや介護士、家族への効率的な認知症教育

継続的支援、地域リソースの充実

• 初期集中支援以降の継続的な支援体制

• 認知症の方のペースに合わせたデイサービスや

グループホームの不足