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診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

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Page 1: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

2015/11/15

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湯浅秀道

診療ガイドライン実地編1

Page 2: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドライン病気に向き合う

医療者、患者・家族を力づけ、

励ます情報源(京都大学 中山健夫先生)

Evidence-Based Medicine

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診療ガイドラインパネリストの役割1

~医療消費者(患者)・一般医(プライマリケア・開業医)編~専門医も、基礎知識として、理解が必要な内容となっています

   年  月  日○○学会

診療ガイドラインパネル会議

Page 4: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

ガイドちゃんと学ぼう!診療ガイドラインとパネリストの

役割

Page 5: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

なぜ、患者や一般医の参加が必要なの?

私は、なぜ、ここにいるの?

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近年、社会へ影響のある決定には、一般市民や、実際治療を行う一般医の参加が不可

欠。専門の医師だけで決定すると、専門家や、医師の都合の良い決定となる可能性があり

ます。患者の代表として、ぜひ、患者の視点で議

論に参加して下さい。あなたの意見が、最終的に採用されないこともありますが、その過程が大切です。

Page 7: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

そのため、世界中の研究を集めてまとめる(エビデンスをレ

ビュー)作業の、前と後

で、診療ガイドラインパネル会議という会議で、議論し合議して、いろいろな決定をします。会議を円滑に進めるため一部は、会議前に投票してもらいます。

Page 8: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

なぜ、診療ガイドラインなの?

診療ガイドラインって、何?

作り方は決まっているの?

Page 9: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドラインは、定義や作成方法が決まっています。

Page 10: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

なぜ、診療ガイドラインなの? 研究論文は、何万本と報告されている。

医療のプロである医師ですら、情報が多くて困っている!

基本的な知識は、教科書があるが、最新の臨床の判断に役立つ資料が欲しい。

↓よって、忙しい臨床医のために、診療ガイドラインとして、「推奨」をまとめた。

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米国アカデミー医学研究所による診療ガイドラインの定義

「エビデンスのシステマティックレビューと複数の治療選択肢の利益と害の評価に基づいて患者ケアを最適化するための推奨を含む文書」 覚える必要は

ありません!という定義にしたがったもののみを診療ガイドラインとよびます。そして、その作成方法

も厳密に決められております。

そのための世界的に使われている作成方法が、GRADEアプローチと言われる方法

Page 13: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

私は、何をするの?

Page 14: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

5点あります。1.宣誓2.アウトカムの重要性とCQ3.その治療の好みは4.推奨度の決定5.患者の立場からのチェック

Page 15: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

1.宣誓とは?

Page 16: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

3点を宣誓していただきたいのです。 今回の診療ガイドラインを

GRADEアプローチで作成すること

患者・一般医の代表として、偏った考えで発言しないこと (利益相反がないこと)

社会に対して責任を持って診療ガイドラインを作成すること(責任が問われることはありませんが)

Page 17: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

責任重大ですね。

Page 18: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

ところで、自分の意見を言ってはいけないの?

Page 19: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

そんなことはありません。個人的な経験も大切です。しかし、診療ガイドラインの推奨を決定するのには、個人の経験でなく、患者や一般医が平均して、どのような価値観で考えるか、その多様性があるかで決定されます。

Page 20: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

今回の診療ガイドラインの作成は、世界で最も使われている、 GRADEアプローチで作成することを、すべての委員会メンバー・システマティックレビューの作成者・パネリストが同意してもらいます。

よって、 GRADEアプローチでない意見が生じても、採用されません。

今回の診療ガイドラインを GRADEアプローチで作成すること

Page 21: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

印象的な自分の経験や、ある治療法にこだわるのではなく、患者・一般医の代表として、平均的な多くの者なら、その治療に対して、どのような価値観をもつのか、また、それが多くの者が同じ意見になるのか、少数の者で意見が多様化するのか、などの意見をお願いします。

患者・一般医の代表として、偏った考えで発言しないこと (利益相反がない

こと)

Page 22: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

ある薬の企業から、補助金などをもらっている場合、その薬に関係する推奨文の作成からは外れてもらいます。その専門の先生は、企業と共同で研究を行っている場合が多のが常識ですので、企業と利益相反があればいけないと言うことではありません。また、利益相反を公開したので良いと言うことでもありません。詳しくは、別資料としてあります。

患者・一般医の代表として、偏った考えで発言しないこと (利益相反がない

こと)

Page 23: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

2.アウトカムの重要性とCQとは?

Page 24: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

アウトカムとは、その治療の結果、どのようなことになれば良いか?もしくは、どのようなことになったら良くないかを示すものです。ここで、その重要度も考えます。

たとえば、高血圧の患者が、薬を飲みました。(1)血圧が下がった、(2)寿命が延びた、がアウトカムです。この場合、血圧が下がっても寿命が短くなっては、嬉しくありません。よって、この血圧が下がるというアウトカムを、代理のアウトカムと言い、寿命に対して相対的な重要度が下がります。

Page 25: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

CQとアウトカムの選択と重要性の等級付け

患者にとって重要なアウトカムとは、次のような質問に「はい」という答えが出るようなアウトカムと定義される。

「患者が、この治療によって変化する唯一のアウトカムがこのアウトカムであると知った場合、それに副作用やコストを伴うのだとしても患者はその治療を受けることを考慮するだろうか」。

ガイドライン作成者は、当該アウトカムが測定されているかどうか、ならびにそれらについてエビデンスが入手可能かどうかに基づいてアウトカムを選択するのではなく、当該アウトカムが重要かどうかに基づいてアウトカムを選択しなければならない。重要なアウトカムについてエビデンスが存在しない場合は、その旨を明記すべきであり、そのようなアウトカムを無視してはならない。

Page 26: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

次に、 CQについて説明します。

CQは、患者の治療について決断をしなくてはならない臨床医が想起する疑問であり、関連する患者集団、治療方法や曝露、および、治療や曝露によって生じる「患者にとって重要なアウトカム」 を特定したものでなければならない。

この CQを明確にするのに、 PICOと AFという考えがあるので、説明します。

Page 27: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

CQを具体化するには、 PICOを使うCQは、基本的に PICOの 4 要素から成っています。 

患者・集団( P): 推奨が適用されることが意図されている患者や集団 介入( I): 調査対象の治療、診断、またはその他の介入 比較( C): 代替介入、対照群の介入 アウトカム( O): 懸案のアウトカム(複数可)その他にも、• 時間( T) :救急の場面か、そうでないかなど• 場所( S) :病院での CQか、在宅治療での CQか、離島での CQかなど

なども考える必要があることもある(研究デザインを入れる解説もある)。

CQを明確に定義しながら、 CQを作成するべきで、 CQを作ってから、PICOを考えるのではない。

Page 28: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

Analytic framework(分析的枠組み)

●Logic frameworkともいう。●Analytic frameworkは、介入とアウトカムを結び付けて、システマティック・レビューの構築を助けるものである。

●診療ガイドラインにおいては、懸案事項に関する推奨を作成するために設定された重要なヘルスケア・クエスチョンに関する理由と論理を適切かつ明確に特定する必要がある。このためには,視覚的な分析的枠組み (Analytic framework) を利用するのが効果的である。作成者のみでなく、読者も、診療ガイドラインの枠組みや重要なアウトカムが見過ごされてないかの判断が容易になる。

●PICOの成分を具体的なものにするアプローチであり、ガイドラインに含めるエビデンスやアウトカムの重要性の決定が重要である。

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AF作成においては、一般に包括的疑問( Overarching Question)を、 KQ( Key Question) -①としてトップに記載する。矢印の方向が、エビデンスを使って解決すべき臨床疑問である。点線は中間アウトカムと最終アウトカムとの関連が証明されていないことを示し、曲線を使って介入の“害”を示し、楕円内に害の種類を記すことが AF作成の基本である。最終アウトカム(患者にとって重要なアウトカムのうち、意思決定に重大なもの)は長方形で記載し、中間アウトカムは角丸長方形の中に記載する。

診療ガイドラインのためのGRADEシステム 第 2 版より

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骨粗鬆症の例よりIOM: Clinical Practice Guidelines We Can Trustにも記載されている有名な例

Page 30: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

●KQ1 :包括的疑問「リスク因子評価または骨測定検査により,骨折に関連する疾患や死亡が減少するか」

●KQ2 :その患者は骨折に関連する疾患や死亡に関して「低リスク」か,それとも「高リスク」か

●KQ3 :患者が骨折に関連する疾患と死亡の「高リスク」患者の場合,骨測定検査結果は正常か,それとも異常か

●KQ4 :患者が骨折に関連する疾患と死亡の「高リスク」の場合,骨測定検査に伴う害は利益を上回るか

●KQ5 :患者の骨測定検査結果が異常の場合,治療によって骨折が減少するか

●KQ6 :患者の骨測定結果が異常の場合,治療の害は利益を上回るか

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Page 31: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

1. CQ(臨床の疑問)が適切かどうかについて、9 段階の点数で、判定していただきます。

2. その他に、必要な CQがあれば、ご意見をください。

パネル会議当日は、 AFを使って、もう少し、その CQの背景などを説明します。

エビデンスのレビュー前

Page 32: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

3. 患者にとって重要なアウトカムを列挙してあるので、それ以外にも、重要なアウトカムがないかを考えて下さい。この場合、たとえば、血糖値などの検査値は、医師の判断や研究にとっては重要ですが、患者にとっては重要ではありません。

4. アウトカムを、それそれ、患者にとって、「重大」「重要だが重大でない」「重要でない」の3段階に9段階スケールを使って、仮決めして下さい(レビュー後に再度、決定します)。

以上を、会議前に、ネットで事前投票します。

会議で、質問・議論を経て、再投票します。

エビデンスのレビュー前

Page 33: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドラインパネリストの役割2

~診療ガイドラインパネル会議での説明編~<レビュー前の会議でも、一度説明しますが・・・>

   年  月  日○○学会

診療ガイドラインパネル会議

Page 34: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

エビデンスレビュー前の診療ガイドラインパネル会議に、重要な事は、ここまでです。ここからは、レビュー後の診療ガイドラインパネル会議についての説明ですが、事前に、これらのことも知っておくことが大切です。

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1. レビュー前の内容に加えて、レビューによって見つかった新たなアウトカムについて、アウトカムを、それそれ、患者にとって、9段階スケールを使って、重要性を決定します。同じ「重大」でも、9点と7点では、推奨文のための、アウトカムの価値観に影響があるので、あくまでも9点法で、決定してください。

エビデンスのレビュー後

Page 36: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

3.その治療の好みとは?

Page 37: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

その治療の、好み・負担などで、平均的な患者層を想定した場合に、多くの患者が一致した価値観を持つか、その価値観がばらつくかに対して、患者・一般医の立場から意見を聞かせてください。

Page 38: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

ステップ1:患者は、どのような価値観と好みを持つか?たとえば、その治療に対して、平均的な患者なら、どのようなアウトカムを重視するかを考える。また、レビューの結果を見てどう考えるか代表例を考え、その治療を好むかを考える。ステップ2:その価値観と好み対して、その状況下にあるほぼ全員が同じように感じるか、バラツキが多いか?

Page 39: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

「代表的な価値観について、強い確信を持てる」か、「価値観と好みが類似していると考えられるか」を、「不確実性は、ほとんどなく、価値観が類似しているか」「若干の不確実さ、または若干のばらつきがある」「かなりの不確実さ、または、大きなばらつきがある」かを判定します。

患者は、どのような価値観と好みを持ち、われわれは、これらに対しどれほどの確信が持てる

か?

Page 40: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

ここで注意することは、この治療そのものの負担が大きい場合は、そもそも「害」としてエビデンスが示されているはずです。

よって、好みや負担の要因は、あくまでも不確実性をみることを忘れないで下さい。正味の利益と、好み負担の感想を直接天秤にかけないでください。

Page 41: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

4.推奨度の決定

Page 42: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

本来は、連続している推奨度を、わかりやすくするため

「強い・弱い」に、診療ガイドラインパネル会議で合議します。

EBMのコンセプトで考案されている診療ガイドライン作成方法• GRADE : GRADEアプローチ<最も普及している>• USPSTF:米国予防医学専門委員会<予防系が一部採用か>• AHA :米国心臓協会<基本的に、 AHAのみ>• Minds 2014 <日本の一部のみ>

EBMのコンセプトで考案されていない診療ガイドライン作成方法• Minds 2007( level of confidence は、私案)

Do not offer theintervention

Quality of evidence

GRADEStrong Against

4 levels (high, moderate,low, very low)

USPSTFGrade D

USPSTFGrade B

USPSTFGrade A

3 levels (high, moderate,low)

AHAClass III

AHAClass IIa

AHAClass I

3 levels (A, B, C)

JAMA-UG3e( より改変)

Minds 2014 Minds 2014行わないことを推奨する

Minds 2007D C2 C1 B A

Level of Confidence

Individualized decisions Offer the intervention toall or almost all

GRADEWeak Against

GRADEWeak in Favor

GRADEStrong in Favor

USPSTFGrade I

USPSTFGrade C

AHAClass IIb

行うことを推奨する行わないことを弱く推奨する

行うことを推奨する

Minds 2007 CPG:使用は望ましくないが、現在も同じコンセプトの が多いので記載

Page 43: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

これが最も大変になります。

エビデンスから離れないで下さい

「推奨・提案」の意味を誤解しないで下さい

好み・負担・アウトカムの価値観などで、推奨が異なるので、どのような価値観で推奨を決めるのかを明確にしてください

Page 44: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

「強い推奨」と「弱い推奨」

「行う」と「行わない」

の組み合わせになるので、4通りあります。行うことを強く推奨する行うことを弱く推奨する行わないことを弱く推奨する行わないことを弱く推奨する

英語の表現を無理に日本語にしているので、違和感があるかもしれませんね。

推奨度は、以下の分類があります

推奨度

強い推奨1: ↑↑ ・ ↓↓

「~を推奨する( recommend)」 または 「臨床医は~すべきである( should)」

方向:~する推奨する recommend…~しないことを推奨する recommend against…

弱い推奨2: ↑ ? ・  ?↓

「~を提案する( suggest)」 または 「臨床医は~かもしれない(might)」「条件付きで推奨」

方向:~する提案する suggest…~しないことを提案する suggest against…

Page 45: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

推奨度の定義と意味を理解してください

推奨度 定義 患者にとって 臨床医にとって

強い推奨1: ↑↑ ・ ↓↓

「~を推奨する( recommend)」 または 「臨床医は~すべきである( should)」

方向:~する推奨する recommend…~しないことを推奨する recommend against…

介入による望ま し い 効 果(利益)が望ましくない効果 ( 害 ・ 負担・コスト)を上回る、または下回る確信が強い。

その状況下にあるほぼ全員が、推奨される行動を希望し、希望しない人がごくわずかである。

ほぼ全員 (most individuals) が推奨される介入を受けるべきである。ガイドラインに準じた推奨を遵守しているかどうかは、医療の質の基準やパフォーマンス指標としても利用できる。個人の価値観や好みに一致した意思決定を支援するためのフォーマルな意思決定支援は不要だろう。

弱い推奨2: ↑ ? ・  ?↓

「~を提案する( suggest)」 または 「臨床医は~かもしれない(might)」「条件付きで推奨」

方向:~する提案する suggest…~しないことを提案する suggest against…

介入による望ま し い 効 果(利益)が望ましくない効果 ( 害 ・ 負担・コスト)を上回る、または下回る確信が弱い

その状況下にある人の多くが提案される行動を希望するが、希望しない人も多い。

推奨される行動を提案し、患者が意思決定できるよう支援することは、医療の質の基準やパフォーマンス指標として利用できるだろう。意思決定支援は、患者が自身の価値観や好みに基づいて意思決定を行うのにおそらく有用だろう。エビデンスやエビデンスの要約を各自で吟味し、患者の意思決定に影響するような要因を話し合うために準備する。

Page 46: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

「たとえば、 A 薬を使わないことを提案する」となったら、「 A 薬を

使ってはいけないの?」

Page 47: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

そんなことはありません。「行うこと・行わないこと」を「強く推奨する・弱く推奨する」は、「行うこと・行わないこと」が決定されていて、その強さを示すものではありません。

「強く推奨する・弱く推奨する」は、その推奨に対する確実性・不確実性の強さの程度を示しています。よって、「行うことを強く推奨する」としても、「行わない」人もいるでしょう。「行うことを弱く推奨する」ならば、「行わない」ことを選択する人は、さらに多いでしょう。

そのため、「弱い推奨」は、より現場の判断や患者状態によって行うか行わないか任せるという、 EBMの適用・医師の裁量権となるのです。

Page 48: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

推奨度を決定する要因は?

Page 49: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

基本は、4要因ですが、その他の要因も考慮することがあります。1. エビデンスの確信性2. 望ましい効果と望ましくない効果のバランス

3. 価値観と好み4. 資源の利用(コスト)

ここから、少し難しい話が続きます・・・

Page 50: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

たとえば、ある A 薬を使ったら、アウトカムが3つあったとします。

1. アウトカムの重要性で、使用するアウトカムが異なる。

一般的には、 「死亡率」が重大とのことで、②を重要とします。アウトカム①と③のみからは、明らかに、「 A 薬を使わないことを強く推奨する」にしかなりません。

しかし、パネル会議で、「 ADLが良い状態」でないと生きている意味が無いとのこことで、②のアウトカムを重大にするかも知れませんし、(診療ガイドラインでは、「重大」のみのアウトカムを使う)。⇒ここでは、3つとも、「重大」として、考えます。

6か月後 ADLが良い状態①②③

ほとんどが死亡

診療ガイドラインパネル会議で合議された、価値観の判断で、推奨文が異なることがあります

Page 51: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドラインパネル会議で合議された、価値観の判断で、推奨文が異なることがあります

2. 価値観の判断で推奨文が異なることがあります。

(1)①・③と、②の価値観を、同じ程度に重要視した場合:わかりやすいように点推定値のみで解説すると、①と③で 2+51=53 人が死亡、②の 43 人が ADLがよいことより、やはり、この治療は、「行わないこと」

(2)①・③に比較して、②の価値観を最大限に重要視した場合:②の信頼区間の上限の 111 人とすると、 53 人より大きいですので、この治療を「行う」と判断できます。ただし、利益の②の信頼区間( 37-111人)に不利益の閾値とも考えて良い 53 人が含まれるので、精確性がないので、エビデンスの確信性は「極めて低」だろう。

6か月後 ADLが良い状態

①②③

ほとんどが死亡

Page 52: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドラインパネル会議で合議された、価値観の判断で、推奨文が異なることがあります

(1)①・③と、②の価値観を、同じ程度に重要視した場合:

想定される推奨文:○○患者に対して、 6か月後の ADL 改善にも価値観を置く患者であっても、 A 薬を使用しないことを提案する。

(2)①・③に比較して、②の価値観を最大限に重要視した場合:

想定される推奨文:○○患者に対して、 6か月後の ADL 改善に、かなり大きな価値観を置く患者には、 A 薬を使用することを提案する。

価値観の判断で、推奨文が異なったが、価値観で、エビデンスそのものが無視されたのではない。あくまでも、エビデンスから離れないで下さい。

ここの議論でのポイントは、エビデンスは、どんなえ素晴らしい研究を集めても、ある 1つの数字で示すことは不可能で、真の値に対して区間推定しか不可能であるという前提である。よって、その範囲内で、価値観をスライドさせてみます。

Page 53: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

よくわかりませんでした。

Page 54: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

医療消費者の方は、理解する必要はありません。

ただし、どのような価値観を、代表的な患者が持つのかの意見を述べて下さい。

医療関係者は、プロですから、頑張って理解して下さいね。

Page 55: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

具体的な資料は、 EtDという表で示されます

Page 56: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

EtD表を利用して、それぞれの項目の判定を行ってもらいます。最終的な議論後に、推奨度を決定してもらいます。

• 行うことを強く推奨する• 行うことを弱く推奨する• 行わないことを弱く推奨する• 行わないことを弱く推奨する

でしたね。

Page 57: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

推奨する 推奨しない

高コスト

好む・負担など多様だ

エビデンスの確信性低い

低コスト

好む・負担などが一致

効果

エビデンスの確信性高い

大切なので、復習です推奨の方向:「行う」 ・ 「行わない」 ←基本的にエビデンスによる推奨の強さ: 「強く推奨」 ・ 「弱く推奨」 ←価値観と確実性

Page 58: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

5.患者の立場からのチェック

Page 59: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

診療ガイドライン作成のプロセス全体を、患者・一般医の視点から、

全体的に、専門医の医師の利益にのみを重視しているのではなく、患者の立場に立った診療ガイドラインかのチェックをして欲しい。

Page 60: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

もう一息です。

診療ガイドラインパネル会議で、直面する最大の課題について、追加質問を示します。

Page 61: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

1. 科学的エビデンスがない、あるいは不足している場合はどうするか。

2. 複数のガイドライン間でエビデンスの解釈が異なる場合はどう折り合いをつけるか。

3. ガイドラインでは、標準的な患者とは治療アウトカムが異なるかもしれないサブグループ(例 : 高齢者や複数の疾患を抱える人)にどう対応しているか。

4. ほかに重要であると考えられる課題はあるか。

海外では、すべてのパネリストが、この質問に答えるようにしなければならないそうです。本邦では、専門医でも回答が困難と思うので、回答をつけました。医療関係者の方は、各自で調べ

ておいてください。

Page 62: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

1つの方針と2つの対応がある。 GRADE2 版(相原先生の教科書) p135診療ガイドラインは、利用者に対し、効果推定値の確信性が低く、望ましい帰結と望ましくない帰結が拮抗している場合でも、できるだけ推奨を提示し、忙しい臨床医に役立つように努めるべきである。このような推奨は必然的に「弱い」ものとなります。

残念ながら、以下の限定事項が附記される場合もあるだろう。

(1) 介入の用途を、“研究に限定する推奨”とする( recommendation only in research)(2)“推奨なし“とする( no recommendation、 ACPの推奨分類” insufficient”)

1.科学的エビデンスがない、あるいは不足している場合はどうするか。

Page 63: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

相反するガイドラインにおいて合意を得るためのシステムは現状では見当たらない。  IOM(IOMの教科書) p59しかし、相反するガイドラインは、作成方法の違い、構成メンバーの違い、エビデンスの統合や解釈の違い、介入の利益と害におく価値観の違い、によることが多く、 COIの影響もあり得るため、これらを見極める必要がある。( GRADE2 版、 p157、  4.5–4.3 価値観と好みに関する透明性の高い説明の提示を参照)

( GRADE2 版、 p148、 例 1. ACCP抗血栓ガイドラインの例も参考になるだろう)

2.複数のガイドライン間でエビデンスの解釈が異なる場合はどう折り合いをつけるか。

Page 64: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

推定サブグループ効果のほとんどで,最終的には誤りが判明することが多いため、重要なサブグループ間の非一貫性が事前仮設によって説明されるかどうかを検証するべきである。

サブグループ解析のためには、従来7つの基準があったが( GRADE2 版 p67)、 2010年に新たに、4基準が追加された。

「サブグループ解析を判断するための基準」 http://aihara.la.coocan.jp/?p=2317診療ガイドラインの推奨作成においては、ベースラインリスクを考慮する必要がある( http://aihara.la.coocan.jp/?p=2516)

3.ガイドラインでは、標準的な患者とは治療アウトカムが異なるかもしれないサブグループ(例 : 高齢者や複数の疾患を抱える人)にどう対応しているか

Page 65: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

GRADE2 版 p246 GIN-McMasterガイドライン作成チェックリストを参照。

特に、チェックリストの#9 「アウトカムと介入の重要性,ならびに価値観,好み,効用の検討」( p248)の内容を吟味することが参考になる。

注: IOM基準にも、 GINチェックリスト、 GIN-McMasterチェックリストにも、 Holger Schunemannがかかわっている。

4.ほかに重要であると考えられる課題はあるか。

Page 66: 診療ガイドラインパネル会議参加者への説明

少し考えながら、また質問しますね。

以上です、お疲れさまでした。