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norifumi-matsuda
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非専門家の漢方処方ゲシュタルト崩壊防止のESSENCE
漢方処方のESSENCE
近代医学とは根本的に別物である事を認識する。 →古典的西洋医学と近しい側面がある。
対証療法であり、原因治療ではない事を認識する。
→原因除去で話が済むなら、そちらが第一選択である。
常に「クスリとリスク」を認識する。 →副作用に注意し、無効な処方を漫然と続けない。
常識的な副作用
偽性アルドステロン症:「甘草」による代表的副作用
薬疹:全てを疑うが、特に「桂皮」を疑う。 →シナモン/ニッキが苦手な人には特に要注意。
*アレルギー性発疹・掻痒感、膨疹となる事が多い
肝機能障害:全てを疑うが、特に「黄芩」を疑う。
間質性肺炎:「柴胡」が主たる原因とされている。 →小柴胡湯とIFN製剤の併用(肝炎・肝癌)は禁忌
薬効過強に伴う副作用
麻黄:アドレナリン過多状態に類似した症状を呈し得る。 →気管支拡張剤、甲状腺製剤、 NSAIDsは併用注意
大黄:腸管運動亢進に伴う症状を呈し得る。 cf.)芒硝:塩類性下剤としての効力を持つ cf.)乳糖:エキス剤に含まれ、乳糖不耐症を呈し得る
附子:トリカブト中毒様の症状を呈し得る。
漢方処方のBARRIER回避
根本的に学問体系が違う(薬理が消化不良になる)。 →西洋医学的な知見の集積した処方を利用。
処方に必須の臨床判断(証)が必ずしも容易ではない。
→厳密な証の評価を要さない病態で使用を開始する。
ぶっちゃけ名前が難しくて吐きそう。 →自分が使う処方を限定し、幅を広げ過ぎない。
六君子湯の臨床医学研究
よる群間比較による検討が期待さ
れる.
RCTの成果を診療に生かす
的確な試験デザインによるRCT
や,アウトカム研究によるエビデン
ス集積の努力は必須であるが,薬
剤の効果・安全性をくり返し確認す
るとともに,さらに今まで得られたエ
ビデンスと診療との間に乖離はない
かを常に検証することが漢方薬の
使用においても不可欠と考える.
そのような検証を重ねることが,
より高い効果を得ることにもつなが
る可能性が考えられる.現在,“エ
ビデンスをつくる研究”とともに,“エ
ビデンス-診療ギャップを埋める研
究”が,臨床研究を担う両輪として
指摘されているが,そのような研究
において,漢方薬のより有効な使用
法の確立とともに,新たなefficacyや
effectivenessの発見が期待されると
考える.
表4 幽門輪保存胃切除術(PPG)施行後の排出促進に対する効果
●目的
幽門輪温存胃切除術(PPG)施行後のツムラ六君子湯エキス顆粒による排出促進に対する有効性の評価
●研究デザイン
ランダム化比較試験(crossover)(RCT-crossover)
●セッティング
大阪大学病院
●参加者
幽門輪保存胃切除術施行後の患者11名
●介入
Arm 1:ツムラ六君子湯エキス顆粒投与(2.5g×3/日)4 週間の後ツムラ六君子湯エキス顆粒非投与4 週間.4名
Arm 2:ツムラ六君子湯エキス顆粒非投与4 週間の後ツムラ六君子湯エキス顆粒投(2.5g×3/日)4 週間.7名
●主なアウトカム評価項目
Gastrointestinal QOL Index(GIQLI),Stasis related symptom score,Sigstad score,消化管排出シンチグラム
●主な結果
GIQLI では有意差は認められなかったが,Stasis related symptom score はOn treatment で有意に低下した.Sigstad score(ダンピング症状)に有意差はなかった.シンチグラムでは固体の胃内残存率について,ツムラ六君子湯エキス顆粒投与において低下を認めた.液体では消化管排出シンチグラムで有意差を認めなかった.
●結論
ツムラ六君子湯エキス顆粒はPPG 試行後の胃で,固体の排出遅延に対して有効である.Takahashi T, et al. World J Surg. 2009, 33(2), p.296-302
日本東洋医学会EBM特別委員会:漢方治療エビデンスレポート2010より
六君子湯投与群 六君子湯非投与群
80
100
00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120
20
40
60
(%)
p=0.0003
胃排出率(固体)
経過時間(分)
図2 シンチグラムによる胃排出率(固体)の比較
Takahashi T, et al. World J Surg. 2009, 33(2), p.296-302より
Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.35 No.2 2011(21)117
35-2_p17-21_ 特集2原沢kp 11.5.7 3:40 PM ページ 5
PPG施行後の六君子湯投与による排出促進に対する 有効性の評価
(World J Surg. 2009)
六君子湯の基礎医学研究
(Int J Pept. 2010)
西洋医学的疾患を二分!
器質性障害
腫瘍性疾患先天性奇形感染症変性疾患・・・
機能性障害
内因性精神疾患 GERD アレルギー過活動性膀胱
・・・
漢方処方の守備範囲
器質性障害 機能性障害
1. 複数の病態が混在し、多剤服用を余儀なくされている2. 副作用などで西洋医学の治療方法が適応困難3. 原因の分からない疾患や病態が明らかでない4. 原因の病態が分かっていても治療方法が確立していない
漢方処方導入STEP UP
STEP1:Evidenceに重視で処方できる三剤+αの処方 → 機能性ディスペプシア、腓返り、慢性咳嗽に有効
*所謂「病名治療」でも60~70%に有効
STEP2:専門分野の漢方処方の使い分け → 各領域のCommonな主訴に対する漢方薬を区別
STEP3:東洋医学的な病態把握に基づく処方の選択 → 気・血・水の過不足や五臓六腑を理解した処方の選択
六君子湯とFD
「胃もたれ」「食欲不振」などの上部消化管障害の内で、器質的原因を見出せないもの
西洋医学的にはGhrelin分泌促進剤と解釈されている。
運動障害(排泄障害・逆流症状)に特に有効である。
胃酸過多による症状の場合、半夏瀉心湯の適応となる。 →PPIが使い辛い場合のChoiceとして考える?
芍薬甘草湯と腓返り
肝硬変や血液透析中の患者に特に多く見られる症状
西洋医学的にはビタミン剤・筋弛緩剤・抗痙攣剤など。
実は、芍薬甘草湯が1st choiceとして取り上げられている。 →基礎医学的研究では「筋弛緩作用」が示唆された
肝硬変に伴う腓返りの場合、八味地黄丸の方が優れていると言う報告がある(但、症例集積研究レベル)。
麦門冬湯と乾性咳嗽
西洋医学的にはリン酸コデインなどが用いられる。
気道粘膜の異常に伴う乾性咳嗽の他、咽頭や口腔の粘膜における乾燥症状にも有用とされる。
C-fiberに直接作用する事で気道過敏性を低下させ、気管支拡張作用や抗炎症作用なども合わせ持つとされる。
湿性咳嗽が長く続く場合、清肺湯を用いる。
気・血・水の理論
水 血
気
体内を循環する赤い液体人体を満たす体液
全身を巡るエネルギー
陽:目に見えない
陰:目に見える
気・血・水の理論
水 血
気 不足:気虚/腎虚失調:気鬱/気逆
六君子湯
不足:血虚失調:瘀血
芍薬甘草湯
不足:津虚失調:水滞
麦門冬湯
妊婦に対する漢方処方
当帰芍薬散は安胎・頻脈・妊娠高血圧症候群・不育症に適応あり。
漢方の古典では妊婦に用いるべき処方の記載が多数ある。
*慎重投与 or 推奨されない生薬:麻黄・大黄・附子など *漢方エキス剤の多くは慎用薬である
妊娠中の症状と治療方針は以下の通り。
*陰血の補充:口渇、便秘、体熱感、眩暈 etc...
*気鬱の改善:抑うつ気分 etc...
*脾胃虚の補充:腰痛、浮腫、歯痛、耳鳴り etc...
その他の良くある処方
牛車腎気丸:プラチナ製剤・タキサン系による末梢神経障害
半夏潟心湯:塩酸イリノテカンによる下痢
大建中湯:術後の下部消化管運動障害などに用いる
桂枝茯苓湯:LH-RH agonistによるのぼせを呈する人
抑肝散:認知症に伴う問題行動の改善
半夏厚朴湯:喉詰まり感じを訴える気鬱の人
苓桂朮甘湯:立ち眩みが強い気逆の人
TAKE HOME MESSAGE
漢方薬にも副作用がある事を充分認識した上で用いる。
病名治療でも有効な物を導入し、自分の専門科で使用例の多い方剤を対証的に使用できるようにする。
Evidenceはあるものの、大規模RCTは施行されていない。
西洋薬が効き辛い不定愁訴、慢性疾患に対する症状緩和、癌治療の支持療法などでニーズが高まっている。