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介護従事者のキャリア意識を 向上させるためのゲーム教材の実践 東京大学 教養学部 株式会社Join for Kaigo 福山佑樹 秋本可愛

ジョブスタ介護版(16-3研究会発表)

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介護従事者のキャリア意識を 向上させるためのゲーム教材の実践

東京大学 教養学部 株式会社Join for Kaigo

福山佑樹 秋本可愛

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発表の概要

• 社会背景/先行研究

– 介護人材における早期離職の問題と、 キャリアプランニング研修の不足

• 開発した教材「ジョブスタ-介護版-」

-未来の仕事を考えるゲーム「ジョブスタ」を

カスタマイズして作成

• 評価ワークショップの概要

• 結果と考察

-職業キャリア計画性を向上させた

• まとめ

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社会背景

• 将来における介護人材の不足

2025年頃にサービス受給者である高齢者の増加に

対して,サービス供給者が不足する問題の存在

• 介護職における早期退職率の高さ 「キャリアプランニングの難しさ」などが要因の1つ になっている(平川・鈴木 2014)

介護職の社会的な重要性は増加するため 人材確保のための対策が必要

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介護職におけるキャリア形成

• キャリアパス構築の重要性

各人が専門性を高め,スキルアップできるキャリアパス

を構築することの重要性(厚生労働省 2014)

• 介護職における人材育成の現状 研修としては「介護技術・知識」,「安全対策」など がほとんどを占めており,キャリアに関する研修は ほとんど行われていない(介護労働安定センター 2015)

介護職が仕事に対しやりがいを見いだし,キャリア構築を行う研修を構築する必要

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キャリア構築研修のための理論

• キャリア構築理論への注目

キャリア構築理論では,ナラティブ・アプローチが採用

され,過去・現在・将来に意味を与える主観的な構成体 としてのキャリアに焦点を当てる(Savickas 2005)

• 成人教育とゲーム学習 「学習者の自信や自己効力感を向上させる」,「学習に 没頭させる」,「協調的な学習を支援する」などの 効果がある (De Freitas & Oliver 2006)

ゲーム研修ではキャリアについて協調的に 話し合い自己効力感を持てる可能性

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未来のキャリアを考えるゲーム

• 将来の職業をイメージさせながら,希望を持って将来を考えるためのカードゲーム(Fujimotoら 2015)

⇒大学生を対象に未来において活躍できる仕事を 考えるゲームを行い,将来に対する前向きな 意識を獲得する効果があった

既に特定の職業を選択している参加者に

とって「自身の職業における未来」との関連性が見いだしづらい可能性

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概要説明 (Slideshareでは

省略します)

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介護版 特別ルール

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通常版との違い

○インダストリーカードの不使用

産業は介護に限定

○イベントカードの追加

介護業界の現状(問題)や、将来起きそうな ことを話し合い、イベントカードを作成

⇒未来の業界で起きそうな「よい変化」 「悪い変化」のカードを一枚づつ作る

2017/1/20 9

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各ターンのお題(1,2,3)

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介護戦争が勃発

介護を要する人が多すぎて、介護サービスのとりあい、格差が広がる!?

外国人・高齢者・ロボット・学生など多様な人材が介護業界に参入してくるようになりました

多様な人材の参入

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各ターンのお題(4,5)

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少子化

介護が人手、財政的にも負担が増大。それを支える仕事が求められる(今でも人材不足)。

介護のグローバル化

外国人の人たちが当たり前に高齢者を介護するような時代に。また「日本の介護」が注目されるようになり、海外に輸出されるなど介護業界にもグローバル化の波がやってきた!

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振り返り

• どんなジョブが作られたかの確認

• 自分がいいね!と思った仕事

• ぜひ介護業界に本当に誕生してほしい ジョブは?

• 5年後、10年後にしていたい仕事

• その仕事をするために私が「明日から」 出来ることは何か

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想定される効果

• 領域を「看護」に限定し,介護業界に勤務しているプレイヤーの未来予想に基づいたイベントが発生

⇒介護業界における「リアリティのある 未来」の中で活躍する仕事を考えること が可能になる

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これまでの研究

• 福山(2015)では”ジョブスタ-介護版-”を用いた、学部生・介護従事者を対象とした予備実験を開催

⇒参加者は楽しみながら将来の介護業界の 仕事について考えることができたことが 示唆された

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専門職版においては 学部生がノイズになった可能性

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評価ワークショップの概要

• 2016年3月に介護業界で働く社会人8名が参加

• イベントカードは全グループ共通

• 全体の進行をファシリテーターが担当し, 各ターン終了時に各グループの結果を共有

• 振り返りのためのグループディスカッションも含めて実施時間は2時間

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評価の内容

• 成人キャリア成熟性尺度(坂柳 1999)

職業キャリア関心性・自立性・計画性関する質問

• 職業価値観尺度 (菰田 2007)

その職業において自己の能力を生かせるか

⇒それぞれ3項目を,因子負荷量の高い順に抜粋 事前・事後に質問し回答を比較

• ゲームの感想などを尋ねる質問

事後のみでゲームは面白かったかなど3項目

• 自由記述の質問 「ワークショップの感想」と,「ワークショップで未来の介護職についてどのようなことを考えたか」の2問

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結果

• 職業キャリア計画性と自己価値に5パーセント 水準で,職業キャリア自立性に1%水準で有意さが見られた.一方で職業キャリア関心性には有意差は見られなかった.

3.88 3.96

3.50

4.03 4.21

4.46

4.25

4.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

5.00

関心性 自立性 計画性 職業価値観

事前 事後

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結果:ゲームの面白さ

尺度名 得点(5件法)

ゲームに楽しく参加できた 4.88

他の人のアイデアを知ることができた 5.00

未来の介護業界について考えることができた 4.88

• どの項目も平均4.8点以上と高く,参加者は楽しみながら,将来の介護業界について考える事が出来たと考えられる

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考察(1)

• 職業キャリア計画性・自立性への効果 ジョブスタで他者とコミュニケーションを取りながら 「未来の介護の仕事」を考える事で将来に対する目標やその計画を持ち,それらに対して自律的であろうという意識が向上した可能性

未来の介護職について考えたこと

“介護業界の今後の需要と自分に何が出来るのかを考えた” “専門職としての腕を高めていく必要性を感じた”

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考察(2)

• 「関心性」には効果が確認されず

○職業キャリア関心性…

自キャリアに対して積極的な関心を持っている意識

Ex. ”職業生活の設計は自分にとって重要な問題なので、真剣に考えている”

”これからの職業計画を、より充実したものにしたいと強く思う”

”どうすれば職業生活をよりよく送れるのか、考えている”

⇒ ジョブスタでなぜ関心性の効果だけがないのか 現状の分析では「不明」

⇒ 追加調査を行うなどより一層の検証が必要

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まとめと今後の課題

• 介護領域の人材育成が抱える問題に対処するため、未来の介護業界の仕事を考えるゲーム「ジョブスタ-介護版-」を実践した

• 実践の結果、ゲームにおいて参加者は「楽しみながら将来の介護業界について考えられ」、「職業キャリア計画性を向上させる効果」があることが確認された

• 今後、介護版がどのようにキャリア意識の向上を促しているのかの検証や、実際の職場での実践をいたい

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謝辞

本研究は、

科学技術融合振興財団 研究助成事業

「看護・介護業界におけるキャリア意識を向上させ、 離職を防止するためのゲーム教材に関する研究」

に補助を受けて実施された。 この場を借りて御礼申し上げる。