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Sakura Shinmachi Urban Clinic Copyright © Platanus All Rights Reserved.
思いをつなげるー当院におけるアドバンス・ケア・プラン
ニング( ACP) の取り組みー
2016.07.17 第 18 回日本在宅医学会
桜新町アーバンクリニック ○五味一英 杉谷真季 風戸光一朗 篠田裕美 村上玲子 遠矢純一
郎
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世田谷区 904,694 人(推定人口 2015 年 5 月 1日)
往診範囲は世田谷区の 南半分 ほぼ半径 3 ㎞圏内
<在宅医療診療実績>
患者数 350 名 (個人宅 250 名,施設100 名)
看取り数 105 名/年
桜新町アーバンクリニック 在宅医療部
※厚生局届出実績( H25,6~ 26.5実績)
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背景在宅医療において,急性イベントが発症し
病院へ搬送するかどうか,経口摂取が難しくなり点滴や人工栄養を実施するかなど,ケアの方向性について判断をせまられる場面は少なくない.
ACP を行うことで,より患者の意向が尊重されたケアが実践され,患者と家族の満足度が向上する. ( Detering K , BMJ 2010 )
平成 27 年度人生の最終段階における医療体制整備事業の受託医療機関(東京医療センターの連携施設)として相談員研修会へ参加した.
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目的
今回,当院で行っている ACP の取り組みについて報告する.
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当院の取り組み
本人の思いを診療中の会話の中から探り,診療録に記載するよう努めた.
代理意思決定者を確認する中で家族とコミュニケーションをとる機会をもった.
意思決定に関係する内容はサマリーへ転載し,スタッフが常に確認できるようにした.
週 1 回在宅患者のカンファレンスでケアの方向性について確認し,スタッフ間で共有した.
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カルテへの記載(例)病状の受け入れ:入院中や数日前の外来受診の際にも認知症の進行、および老衰の経過をたどっていることは病院担当医から説明を受けている。妻としては出来るだけ自然な形で今後も看ていきたいとの希望がある。一方で 1年程前に本人が「出来るだけ長生きをしたい」と発言したのも気になっている。それ以前のしっかりしていた頃には、抑制されながら療養を続けている方の様子を見て「自分はこういう状態にはなりたくない」との思いを伝えていた。緊急時の対応:妻もご自身のみの判断で様々なことを決断することは負担に思っていらっしゃる様子がある。妻も高齢であり、在宅での治療を継続するためにはサポートが必要な状況。入院を要するような状況になった際にはその都度相談。
【 ACP】週 4回デイサービスを利用し、絵や書道、将棋などを楽しまれている。もともと絵を描くことが好きで自宅には自作の山の絵が飾られている。調子の良い日には屋上まで階段を上り富士山を眺めに行くのが楽しみ。認知症の発症前は、抑制されながら病院での療養を続けている方の様子を見て「自分はこういう状態にはなりたくない。」と言っていた。2015/09/18妻から「もしもの時の考えを自分たちも何か書面に残した方が良いだろうか。」と質問あり。→事前指示書についての冊子をお渡しした。 ・ 2016年 3月時点では事前指示書の記載には至っていない。・これまでは重大な決断は妻が娘(本人にとっては義理の娘)のサポートを受けながら行っていた。実子(長女・次女)は入院中の面会以外には関わりをもつことはなかった。
初診時 サマリー
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多職種向けのセミナー
ACPの普及を目指し,地域多職種向けのセミナーを開催した.
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医療機関との連携東京医療センター( 780 床の急性期病院)
と連携し,思いを“つなぐ”ための 『ケア移行申し送りシート』(ケア移行シート)を作成した.
病院
在宅『ケア移行申し送りシート』を記入
東京医療センター地域連携室へ送付
入院時・救急搬送時,意思決定の参考に思いや意向の変化があればシートへ追記
在宅
東京医療センターの患者カルテに取り込み
病院施設
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ケア移行申し送りシート
症例 年齢 主病名 訪問診療開始時期 介護者 備考
1 83 脳梗塞後遺症 2014年 4月
妻,長女 重症肺炎で病院搬送→ 死亡
2 102 心筋梗塞,認知症 2013年 8月
三女 ※特定のかかりつけ病院なし
3 103 心筋梗塞,認知症 2013年 3月
長男夫婦 ※特定のかかりつけ病院なし
4 86 心房細動,慢性心不全 2012年 12月
妻5 90 アルツハイマー病認知
症2014年 9月
妻 2016年 4月に特養入所
→6月に退所し,訪問診療再開
6 83 アルツハイマー型認知症
2015年 3月
妻,長男 2016年 6月で訪問中止
7 74 誤嚥性肺炎 2015年 7月
妻
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症例 83歳・男性2015 年 X 月 Y 日デイサービスから「低体温,息切れがあり体調が悪そうなので帰宅させます.」と連絡あり.
デイサービスからの帰宅に合わせて訪問看護師が緊急訪問.両肺で副雑音著明,酸素飽和度の低下あり,救急隊を要請し,病院搬送となった.
訪問看護師がステーションへ戻ったのちに当院へ電話で報告あり.(搬送先不明)
妻へ東京医療センター救命救急センターに入院したことを確認し,診療情報提供書を送付した.
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病院事前にカルテに取り込まれていたシートは救急初療医は未確認.FAXで送信したシートを別の救急医が初療医へ報告.記載内容も参考に娘へ連絡を取り,蘇生行為の希望がないことを確認.→搬送同日に永眠された.
経過在宅
主治医不在であったが,『ケア移行申し送りシート』を診療情報提供書に添付して送信.
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今後の課題
気持ちの揺らぎや変化の反映ケアに関わる他スタッフ(介護支援専門員,訪問看護師,訪問介護士ら)との共有.
病院内での『ケア移行シート』の周知.シートを参考にした上での意向の再確認の必要性.
病院
在宅
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まとめ
訪問診療中の患者は,複数の疾患を合併し,症状の悪化をきたしやすいため,導入時または早期から ACP が開始されることが望ましい.
在宅スタッフ内での思いの共有にとどまらず,在宅から病院・施設など療養の場が変化した際にも思いがつながる仕組みづくりが必要である.
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ケア移行申し送りシート