Upload
kenichiroyamada
View
328
Download
3
Embed Size (px)
Citation preview
Insight Factory Inc. 第3回 ME読書会
2014年8月12日 Kenichiro Yamada
1
Marketing Engineering Lilien, G.L. & Rangaswamy, A.
4章 ポジショニング
2
4章 ポジショニング
コンテンツ
・ ポジショニングとは? 差別化とポジショニング ポジショニング戦略 ・ ポジショニングの描写法 スネークチャート パーセプショナルマップ ・ マッピング手法 の分類 ・ アトリビュートベースモデル ・ 因子分析(主成分法)の例 ・ 類似性ベースモデル
3
・ プレファレンス(選好)とは ・ 修正パーセプショナルマップ法 ・ エクスターナル分析モデル ・ 価格要因の考慮 ・ マッピングの注意点 ・ まとめ
※若干本に書かれている順序との相違・加筆があります。
ポジショニングとは?
ポジショニングにおける次元の例 ① ライフスタイル:MTV - 若者向け音楽番組 ② 製品属性:Amazon.com – 世界最大の書店 ③ 製品ベネフィット:吉野家「うまい、やすい、はやい」 ④ 競争:ダイソン「他のどの掃除機よりも確実にゴミを吸い取ります。」 ⑤ 時間:ワンダ モーニングショット - 朝専用缶コーヒー
差別化: 製品のある重要な次元(観点)において、競争相手との間に具体的または漠然とした違いを作る事。 → What you do to a product.
ポジショニング: 競合製品の違いを認識してもらい、自社製品が顧客の心の中の重要な位置を占めるよう働きかける戦略の一連。 → What you try to do to the minds of customers.
4
ポジショニング戦略
今日の市場 ・ 大量の製品が存在:どのように顧客に製品をアピールする? ・ 断片化:セグメント数 × 製品数 × 競合数 + ノイズ
体系的なアプローチ ① 自社製品のポジションを顧客目線かつ対競合比でとらえる。 ② 自社製品のポジショニングを評価する。 ③ 差別化戦略においての重要な要素を洗い出す。
例)ポカリスエットは、適切な濃度と体液に近い組成の電解質溶液のため、すばやく吸収されます。 そのためスポーツ、仕事、お風呂上り、寝起きなど、発汗状態におかれている方に最も適した飲料です。
[http://pocarisweat.jp/] 5
ポジショニングステートメント:(製品名)は、(シンプルな最重要根拠)であるため、(セグメント)のために(ポジショニング主張)である。
例)ネット検索結果などでは無関係な情報も混じる
個別に多様なコミュニケーションが必要
ポジショニングの描写法 - スネークチャート
6
ビールのブランドイメージ聴取
まったく あてはまらない
よくあて てはまる
1 2 3 4 5
1. 風呂上り
2. フルボディー
3. 重い
4. 男性的
5. 特別な日
6. 外食
7. プレミアム
8. 女性的
9. 少量
10. 軽い
11. 淡い
12. 予算内
13. お値打ち
1 2 3 4 5
☹ アトリビュートの数が増えるに つれて理解が難しくなる。
☹ 全てのアトリビュートを見る必要がある だろうか? → 暗にそれぞれのアトリビュートへ 同じ重み付けをしている。
ビールA
ビールB
ポジショニングの描写法 - パーセプショナルマップ
特徴 ① 製品間の距離は顧客が考える類似性を表す。 ② 属性は空間上の規模と方向を矢印(ベクトル)で表現される。 ③ 軸は顧客が比較する最も特徴的な属性/潜在的なベクトル。 → 直交の必要は無く、解釈のため反転した軸に適当な名前をつける事も。
リミテーション ・ 顧客の好みは考慮しない。
良い使い方例(自動車メーカ) 魅力的な車体特徴の調査で「四角いボディ」は好まれない事が解っている。知覚マップで情報を整理すると「ボンネット形状」、「バンパー形状」、「フロントガラス傾斜」、「サイドミラーデザイン」等が「四角いボディ」と相関がある事がわかり、潜在的な属性「空力学的」に気がついた。
パーセプショナル(知覚)マップ:競争構造の理解のため、競い合う製品をユークリッド空間に写実的に表現したもの
7
ポジショニング分析 - パーセプショナルマップ
8
ビール市場の例(架空) ヘビー
ライト
プレミアム
安い
フルボディ 風呂上り
お値打ち
予算内
重い 男性的
特別な日
外食
プレミアム
女性的
少量
軽い 淡い
①ブランド間の距離: ・ エビスとプレモルは直接的な競争相手。 ・ オリオンビールの競合は少ない。 ・ 一番搾りにとって、黒ラベルとスーパードライ は同程度のライバルである。
②ブランドとアトリビュートの距離: ・ プレモルはプレミアムビールと知覚されている。 ・ トップバリュは高級イメージとかけ離れている。
③ベクトル間の角度(=相関性): ・ 外食に飲むビールはプレミアムビールである。 ・ 女性的なビールは男性的でないビールとは 限らない。 ・ 横軸を「安い~プレミアム」と解釈可能。 ・ 縦軸を「ライト~ヘビー」とする。
④ベクトル線の長さ(=区別の容易さ): ・ ビールは「お値打ち」であるかで仕分ける事 が困難。 ・ 「男性的」であるか仕分けるほうが容易。
●一番搾り ●スーパードライ
●ハートランド
●エビス ●プレモル
●コロナ
●ヒューガルデン ●オリオンビール
●トップバリュ
●黒ラベル
ポジショニングマップ手法 - 分類
マッピング方法の分類:インプットデータの種類により処理が異なる。
9
A. 類似性ベースモデル パーセプショナル(知覚)マップ (製品スペースマップ)
B. アトリビュートベースモデル
C. 理想点モデル(展開モデル) プレファレンス(選好)マップ (選好スペースマップ)
D. ベクトルモデル
E. PREFMAPモデル ジョイントスペースマップ (知覚と選好を一緒にマッピング)
F. 修正パーセプショナルマップ法 ○が無いモデルについてはテキスト詳しい説明が書かれていない。 ただし Positioning Analysis: Marketing Engineering Technical Note (http://decisionpro.biz/) が一部参考になる。
ポジショニングマップ手法 - 分類
10
A. B.
C.
D. E.
F.
アトリビュートベースモデル
11
B. アトリビュートベースモデル: 事前に選択された属性についての顧客の製品評価からマッピング
手順 ① 製品セットとアトリビュートセットを決定:
【目的による違い】 【よく使うアトリビュートセットの一覧】
製品セット アトリビュートセット
戦略的ポジショニング 広範囲 (製品クラス、製品形態など) 広範囲
戦術的ポジショニング(実務的) 競合品
(ブランド、色など) 業務的
(色、燃費など)
製品特徴 パフォーマンス 耐久性 信頼性
組立・修理のしやすさ スタイル 製品イメージ デリバリー
初期設定 トレーニング、コンサルタント メンテナンス 他サービス(保証、ローン等)
サービスイメージ 知覚価値
② データの取得: ・ ターゲットセグメントへのアンケート調査などを実施。 ・ 製品毎にアトリビュートを順位またはスコア付けしてもらう。
【仮定】 同一セグメントにおいて個人間の知覚に大きな差はない。 ・ データによっては事前にクラスター分析等でグループ分けを行う。 ・ 回答の平均を計算したデータ行列を作成。
③ 処理の実行: ・ 各アトリビュートが情報的にユニークなものである場合は珍しい。 ・ 潜在的なベクトルを探すための方法を選択。 因子分析(主成分法)の例 →
アトリビュートベースモデル
12
因子分析(主成分法)の例
13
・ 行:製品、列:アトリビュートの製品スコア行列を作成
製品スコア行列(𝑋)=
𝑥11 ⋯𝑥1𝑗 ⋯𝑥1𝑛𝑥𝑘1 ⋯𝑥𝑘𝑗 ⋯𝑥𝑘𝑛⋮ ⋮ ⋱ ⋮𝑥𝑚1 ⋯𝑥1𝑗 ⋯𝑥𝑚𝑛
※カラムは𝑥1,𝑥2 … 𝑥𝑛と表記
・ 𝑿𝑺 =列に対して標準化された製品スコア行列 標準化:𝑥𝑠 = (𝑥 − �̅�)/𝜎 情報量:Σ分散=n ・ 因子(𝑭𝒋) = 𝒂𝒋𝒋𝒙𝒋 + 𝒂𝒋𝒋𝒙𝒋 + ⋯+ 𝒂𝒋𝒋𝒙𝒋 ・ 係数𝒂𝒋𝒋,𝒂𝒋𝒋, …𝒂𝒋𝒋について以下の基準を満たすように求める 第1因子: 𝑋𝑆の情報を最大限とらえる(分散が最大) 第2因子:第1因子に対し直交(無相関)、残りの情報を最大限とらえる ⋮
← アトリビュート →
← 製
品 →
因子分析(主成分法)の例
14
・ 元データ(𝒙𝒌𝒋) ≈ 𝒛𝒌𝒋𝒇𝒋𝒋 + 𝒛𝒌𝒋𝒇𝒋𝒋 + ⋯+ 𝒛𝒌𝒌𝒇𝒌𝒋 因子数 𝑟 <アトリビュート数(n) もし𝑟 = 𝑛なら上の式は「=」となる。
標準化因子得点行列(𝑍𝑠)=
𝑧11 ⋯𝑧1𝑗 ⋯𝑧1𝑟𝑧𝑘1 ⋯𝑧𝑘𝑗 ⋯𝑧𝑘𝑟⋮ ⋮ ⋱ ⋮𝑧𝑚1 ⋯𝑧𝑚𝑗 ⋯𝑧𝑚𝑟
= マップ上の座標
因子負荷の転置行列(𝐹𝑇)=
𝑓11 ⋯𝑓1𝑗 ⋯𝑓1𝑛𝑓𝑘1 ⋯𝑓𝑘𝑗 ⋯𝑓𝑘𝑛⋮ ⋮ ⋱ ⋮𝑓𝑟1 ⋯𝑓𝑟𝑗 ⋯𝑓𝑟𝑛
= アトリビュートと因子の相関行列
← 製
品 →
← 因子 →
← アトリビュート → ←
因子
→
因子分析(主成分法)の例
15
・ 因子寄与= 𝒇𝒊𝒋𝒋 + 𝒇𝒊𝒋
𝒋 + ⋯+ 𝒇𝒊𝒋𝒋 → 𝐹𝑇の行
・ 共通性= 𝒇𝒋𝒋𝒋 + 𝒇𝒋𝒋
𝒋 + ⋯+ 𝒇𝒌𝒋𝒋 → 𝐹𝑇の列
もし𝑟 = 𝑛なら上の式は「共通性=1」となる ・ 因子数 𝒌 :パーセプショナルマップでは通常2~3個 もし共通性が低い(=独立性が高い)場合、因子数を2→3に増やす。 因子寄与が1以上であるべき。 ・ 解釈のため必要に応じて(単純構造をめざし)因子を回転する。
因子分析(主成分法)の例
16
因子分析(主成分法)の例
17
類似性ベースモデル
18
A. 類似性ベースモデル: 類似性評価からポジションをマッピングする方法 【仮定】 同一セグメントにおいて個人間の知覚に大きな差はない。 ※仮定により、データの取り方・処理方法が異なる。
一般的な方法 ① 製品セットを決定:なじみ深い製品を選ぶべきである ② 類似性行列を用意:平均値を使う
類似性(𝜹𝒊𝒋) ブランド(j)
A B C D
ブランド (i)
A 1 B 2 1 C 4 4 1 D 7 6 5 1
1=よく似ている、9=まったく似ていない
☻ 属性で上手く計れない場合に ☹ 回答者に負担がかかる
類似性ベースモデル
19
③ 心理的な距離(𝛿𝒊𝒋)からマップ上の距離(𝒅𝒊𝒋)に変換 → テキストには「コンピュータプログラムを使いなさい」と書かれている 【制約】 例)𝛿𝐴𝐴 < 𝛿𝐴𝐹ならば、𝑑𝐴𝐴 < 𝑑 𝐴𝐹である ・ すべての制約を満たすためには、n-1次元必要。 ・ 次元が多いと解釈しづらい。 ④ マップ上の次元数を決定
・ 0.05以下が良いとされ、0.2以上は悪いとされる。 ・ 次元増加により減少するストレス値が小さくなるまで次元を増やしていく。
ストレス値:マップ上の次元数を決めるときに参考にする指標
𝑆𝑆𝑟𝑆𝑆𝑆 =∑ (𝑑𝑖𝑗 − 𝑑𝑖𝑗� )2𝑖<𝑗
∑ (𝑑𝑖𝑗 − �̅�)2𝑖<𝑗
𝑑𝑖𝑗� = 次元 𝑘 における距離ij �̅� = 𝑑𝑖𝑗の平均値
類似性ベースモデル
20
プレファレンス(選好) とは
パーセプション(知覚) → 「ボルボは最も安全な車だ」
プレファレンス(選好) → 「ボルボが好きだ」
① 理想点プレフェレンスモデル
② ベクトルプレファレンスモデル
③ 部分効用モデル → コンジョイント分析(7章) 21
プレフェレンス
アトリビュート
プレフェレンス
アトリビュート
顧客ごとに理想の好みレベルがある。 例)カレーの辛さ
顧客はいつも多い量を好む 例)製品クオリティ 顧客はいつも少ない量を好む 例)電話が繋がるまでの待ち時間
修正パーセプショナルマップ法
【仮定】同一セグメントにおいて個人間の選好(&知覚)に大きな差はない。 ① 仮想最適ブランド(理想点)の作成 ・ 個人の仮想最適ブランド=顧客ごとの最適なアトリビュートの組合せ ・ 仮想最適ブランド=個人の最適ブランドの平均値
22
●仮想最適ブランド(I)
●ブランドA ●ブランドB
𝒅𝑰𝑰 𝒅𝑰𝑰
理想点マップ
選好の度合いは仮想最適ブランドからの距離 もし 𝒋𝒅𝑰𝑰 = 𝒅𝑰𝑰 であれば、 平均的にブランドAはブランドBより2倍好まれている。
F. 修正パーセプショナルマップ法: マップに「選好」を組込む方法で最もシンプルなやり方
修正パーセプショナルマップ法
② 「選好」属性の組み込み ・ 他の属性と一緒に選好度合いを聴取し処理する(平均選好の算出) ・ 他の属性と同じく「選好」のベクトルを描写する。 ・ 他の属性が「選好」ベクトルと隣接する場合、その属性は選好と相関がある。
23
●ブランドA
𝒅𝑰𝑨
𝒅𝑰𝑰 ブランドC ●
●ブランドB
選好ベクトルマップ
ベクトルに沿って遠いブランドが選好が高い(A > B > C) もし 𝒋𝒅𝑰𝑰 = 𝒅𝑰𝑰 であれば、 平均的にブランドBはブランドCより2倍好まれている。
選好
PREFMAPモデル
24
E. PREFMAPモデル:たとえ知覚が同じであったとしても個人間のプレファレンスは異なると仮定する。
→ 個人は異なる理想ポイント(または理想ベクトル)を持つ。 → 一つのマップ上に複数のセグメントを描写可能。
手順:製品スペースマップの上から選好を重ね描写する。 ① パーセプショナルマップを事前に作成しておく。 ② データ(選好スコアまたはランク行列)を用意。 プレファレンス
(𝒔𝒊𝒋) ブランド(j)
A B C D E
顧客 (i)
1 1 7 2 5 8 2 7 7 4 2 1 3 4 6 6 6 7 4 3 1 8 6 2 5 2 2 3 7 8
個人でなくてセグメント単位で 分析する方が現実的かもしれない。
PREFMAPモデル
25
③ 処理方法を選択:
理想ポイントモデルによる処理 ・ 𝒔�𝒊𝒋 = プレファレンス推定値、𝒅𝒊𝒋 = 理想点(𝑰𝒊)と製品𝒋の距離
・ 推定値の誤差 𝑆𝑖𝑗 の二乗和が最小になるような 𝑏, 𝑎 を求める。 ・ 𝑎は負の数である場合 → アンチ理想点
ベクトルモデルによる処理
・ 𝒚𝒋𝒌 = 次元𝒌における製品𝒋の座標位置、𝒙𝒊𝒌 = 次元𝒌における選好ベクトル 𝒌 = 次元数 ・ 推定値の誤差 𝑆𝑖𝑗 の二乗和が最小になるような 𝑎𝑖 , 𝑏𝑖 , 𝑥𝑖𝑘 を求める。
𝒔�𝒊𝒋 = 𝒃 + 𝒂𝒅𝒊𝒋𝒋
𝒔�𝒊𝒋 = 𝒂𝒊� 𝒙𝒊𝒌𝒚𝒋𝒌𝒌
𝒌=𝒋+ 𝒃𝒊
PREFMAPモデル – 理想ポイント法
26
・ ファーストチョイスルール:一番近いブランドを選択 例)車など ・ 選好シェアルール:回数は違うが全ての製品を買う 例)シャンプー等
PREFMAPモデル – ベクトルモデル法
27
価格要因の考慮
① 他の属性と一緒に属性「価格」を聴取する。 ② 「実売価」を属性として組み入れる。 ③ 座標を売価格で割り算す。
28
洗剤の洗浄力と香りについてのパーセプショナルマップの例(架空)
価格考慮なし
香り
洗浄力
●アリエール
●アタック ●ファーファ
●ビーズ
●ボールド
価格考慮あり
香り/円
洗浄力/円
●アタック ●アリエール
●ファーファ
●ボールド
●ビーズ
ポジショニングマッピングの注意点
29
① 静的であり、動的な知覚・選好は考慮しない。 ② 解釈が難しい場合がある。 ③ あるポジションを獲得するまでのコスト、実現性は考慮しない。 ④ マップの当てはまり具合(確率)が不明。 ⑤ モデルに必要な製品数が現実的ではない場合がある。
まとめ
30
① 何を描写するか ・ パーセプション ・ プレファレンス
+ 他データ(価格やシェアなど)
③ どうやって聴取するか ・ 順位/スコア ・ 理想点
② 何をベースにするか ・ アトリビュート ・ 類似性
④ どうやって表現するか ・ ベクトル ・ 点(または面積) ・ 次元
両方 (別ソース可)