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送電鉄塔鑑賞学入門 V1.1 2013.10.2 sarumaruhideki in EAST

送電鉄塔をたどる V1.1

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送電鉄塔鑑賞学入門 送電鉄塔の魅力と送電鉄塔鑑賞のための知識を解説 V1.0に何点か追加しました

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Page 1: 送電鉄塔をたどる V1.1

送電鉄塔鑑賞学入門

V1.1

2013.10.2 sarumaruhideki in EAST

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10年ほど「趣味の鉄塔巡視員」やってます

週に1日程度、現在まで4000本程度巡視しました

巡視担当区域は主に東京23区とその周辺部から延びる送電路です

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どこから来るのかなぁ どこへ行くんだろう

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小松川線130号

ある日ふとこの看板を見たことからすべてが始まった

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銀林 みのる 著

第6回日本ファンタジーノベル大賞 受賞

1994年 新潮社より単行本刊行

1997年 映画『鉄塔 武蔵野線』 主演:伊藤淳史

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• 安曇幹線

• 只見幹線

• 西に行こうプロジェクト

• 旧谷村線発掘プロジェクト

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数奇な運命を秘める50万ボルトのネコたち

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梓湖~新秩父開閉所~新所沢変電所 北アルプスの清流から東京へ

現在、新所沢変電所~十石峠まで終了

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高度成長経済を支えた山深き只見の水

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田子倉ダム~西東京変電所 「鉄塔ママ」たちの鉄塔旅

西東京変電所~赤城山 「送電鉄塔の旅日記」 http://members2.jcom.home.ne.jp/tettou-mama/

私の「勝手に担当」地域 大清水~奥只見湖

現在、大清水~七入まで終了

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長距離送電の故郷への旅 ◦ 駒橋線(1907〈明治40 〉年)・谷村線(1913〈大正2〉年)・八ツ沢線( 1912〈大正1〉年)

◦ 長距離送電黎明期のルートをたどって富士山へ

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駒橋線のルートは残っていない 八ツ沢線・谷村線のルートは一部残っている 現在、相模川左岸で休止中

駒橋・鹿留・八ツ沢発電所~早稲田変電所・淀橋変電所・目白変電所・六郷変電所 淀橋線・和田堀線・久我山線・府中線・由木線・八ツ沢線… 安方線・ 千鳥線・駒沢線・目白線・杉並線・高井戸線・三井線・車返線・国分寺線・多摩橋線・高幡線・小比企線・旧谷村線…

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送電・配電

三相交流

電圧階級・周波数

鉄塔各部の名称

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発電所→昇圧変電所→送電路→中間変電所→配電変電所→配電線→柱上変圧器→家庭

発電所 昇圧(変) 中間変電所

配電変電所 配電変電所 配電変電所

家庭 家庭

6600V

家庭

1万V程度 27.5~50万V 27.5~6.6万V

100~200V

変圧器 変圧器 変圧器

送電

配電

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送電線は3本セットで1回線

なぜ交流か? ◦ 昇圧が簡単

◦ 長距離送電しても熱損失が少ない

なぜ三相交流か? ◦ 帰りの線が不要

◦ 誘導電動機(発電機)

ブラシレス

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熱損失 ◦ 送電線にも抵抗があるので電流が流れると熱が発生する ◦ 通常5%程度の損失

電力一定とすると電圧を高くすれば電流が減る ◦ 電力(P)=電圧(V)×電流(I)

発熱は電流に比例する ◦ 送電部分の抵抗Rは一定なので電流が減ると発熱が減る ◦ I=V/R ◦ V=I/R

◦ P=R×I2

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三相交流は合計すると常にゼロボルトになる sin θ + sin ( θ + 120°) + sin ( θ + 240°)

= sin θ + sin ( θ + 2/3π ) + sin ( θ + 4/3π )

= sin θ + sin θ ×cos 2/3π + cos θ ×sin 2/3π + sin θ ×cos 4/3π + cos θ×sin 4/3π = sin θ× ( 1 + cos 2/3π + cos 4/3π ) + cos θ× ( sin 2/3π + sin 4/3π) = sin θ× ( 1 - 1/2 - 1/2 ) + cos θ× ( √3 / 2 - √3 / 2) = 0

◦ 帰りの線が不要

直流なら6本必要な線が3本で済む

単相交流の取り出しも簡単

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電圧階級 ◦ 東京電力:66-154-275-500-1000kv

◦ 関西電力:77-154-275-500kv

◦ 九州電力:66-110-220-500kv

周波数 ◦ 東京電力:50HZ

◦ 関西電力:60HZ

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1. 塔体 2. 腕金 3. 送電線 4. ジャンパー線 5. 碍子(がいし) 6. 帽子 7. 架空地線 8. 主柱 9. 腹材(水平材・斜材) 10. 根巻き 11. 結界

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全体の形で分類 帽子で分類 鋼材で分類 碍子装置で分類 色で分類 機能で分類

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全体の形で分類

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四角鉄塔 矩形(くけい)鉄塔 門型鉄塔 美化鉄柱(モノポール・単柱) ドラキュラ鉄塔 ドナウ型鉄塔 烏帽子型鉄塔(ネコ鉄塔) すずらん柱 鳥居型木柱 大叉鉄塔

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標準的な送電鉄塔

敷地の形は正方形

四角錐

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敷地の形は四角形、正方形の場合も長方形の場合もあり

4本の主柱が塔頂に収束せず線方向から見ると塔体が四角形になる

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鉄道の架線柱のような鉄塔

軌道敷や川の上空を通る時に使われる

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市街地でよく見られる太い鋼管を一本立てた送電線支持物

モノポール(単柱)

簡単に言えば巨大な電柱

「美化」という形容詞が嫌われる

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「吸血鬼(ドラキュラ)がマントを広げて飛び立つ様」

空高く通っている送電線を地上に下ろす

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腕金が2段

送電線は上段の腕金に1本、下段の腕金に2本取り付けられる

ドナウ河にちなむ

ドイツに多い

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ネコ鉄塔

「烏帽子」とは和装の帽子

山で多く使われる(部材が少ない)

1回線・水平配列

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電柱と同じコンクリート柱や木柱に優雅な形の腕金

まさにスズラン

絶滅危惧種

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木柱やコンクリート柱で門型にしたものを鳥居型と分類

絶滅危惧種

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門型と同じように川や鉄道を跨ぐ鉄塔

四角鉄塔や門型鉄塔の脚の部分を大きく変形

絶滅危惧種

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鋼材による分類

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鋼管鉄塔 ◦ 鉄のパイプ(中にコンクリートを詰め込むものもあり)

アングル鉄塔 ◦ 等辺山型鋼

コン柱 ◦ コンクリート

木柱 ◦ 木材

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碍子装置による分類

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陶器製

数個から数十個つなげて使用

碍子の数で電圧が分かる 絶縁電圧=(碍子数-2)×2万ボルト

碍子の数と電圧 ◦ 66KV 77KV 5~10個未満 ◦ 154KV 10個~15個 ◦ 275KV 15個~30個 ◦ 500KV 30個~

これは目安で一概には言えない

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1連 2連 3連 4連 …

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Ⅰ吊り Ⅱ吊り

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バランス耐張

ガラス碍子

踊る碍子

重し付き碍子

碍子流し

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懸垂型を耐張型に変更

手術した鉄塔

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日本では貴重種

欧州では多いと聞く

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送電路の角度によって懸垂型が引っ張られる

門型鉄塔の定番

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左右、もしくは上下が安定しない場合

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懸垂碍子が上向きに引っ張られる時などに使う

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帽子による分類

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とんがり帽子

コックさん(料理長型鉄塔)

ジャミラ

中国給仕娘型(服務小姐鉄塔 フー・ウー・シャオ・ジェ鉄塔)

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初代ウルトラマンの怪獣ジャミラに似ている

知らない人は「イカ鉄塔」で可

古い鉄塔に多い

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フー・ウー・シャオ・ジェ鉄塔

中国宮廷の女性給仕の髪飾りを連想

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色による分類

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航空法によって60メートル以上の鉄塔は赤白に塗られる ◦ 航空障害灯を灯すもの

◦ フラッシュ装備のもの

付近に60メートル超の建造物がある場合は免除されることもある

通常の鉄塔にも塗装の色が違うものがある ◦ 酸化皮膜鉄塔

◦ 環境美化鉄塔(茶色・クリーム・緑)

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写真

この鉄塔は36メートルしかないが飛行場が近いため赤白に塗られているようだ

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酸化皮膜処理

茶色塗装

黄緑塗装

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機能からの分類

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曲げる ◦ 角度鉄塔(重角度鉄塔・軽角度鉄塔)

分岐する ◦ 上下振り分け鉄塔

◦ 大口鉄塔(アッサー鉄塔・ゴジラ鉄塔・ノギス鉄塔)

下げる ◦ ドラキュラ鉄塔

◦ 燭台型鉄塔

◦ 関電分け

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ひねる ◦ 撚架鉄塔

開閉塔

くぐる ◦ 階段鉄塔

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送電路を曲げるのは鉄塔の仕事

ただし角度が大きいと問題が発生

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腕金追加

下の鉄塔は折り返しに近い角度

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90度曲げる重角度鉄塔

塔体を45度まげ外側の腕金を思い切ってのばす

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送電路を分岐させるのも鉄塔の仕事

2回線を分岐させるため

にはいろいろ工夫が必要

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工場に線を分岐

上段の左回線は線間に延ばした腕金経由で線を分岐している。

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4回線鉄塔

下段2回線は2方向に分岐

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アッサー鉄塔

ノギス鉄塔

ゴジラ鉄塔

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別名 ◦ アッサー鉄塔

◦ ノギス鉄塔

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空の送電線を地上へと下げる

場所の余裕があれば簡単だが…

なるべくコンパクトに送電線を引き下ろしたい

ドラキュラ

燭台型

関電分け

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贅沢!!

土地をたくさん使う

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真下に下ろす

テラス付きで下の土地をふさがない

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線間に腕金を延ばす

こうすれば余計な土地は使わない

東電では珍しいが関西電力では多く見かける

さすが関西!

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屈曲・根開き・上部垂直・結構・カテナリー曲線・3本カテナリー…

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主流はブライヒ結構

ブラット結構は古い鉄塔の証明

Kトラスやシングルワーレンという珍しい鉄塔も

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ブラット結構 ブライヒ結構

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シングルワーレン

Kトラス

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送電線の描く曲線 懸垂曲線

径間 長―短 弛度 大―小 張力 小―大 弛度 大―小

都会の鉄塔は短い径間で張力大 ◦ 弛度小 張り詰めた感じ

田舎の鉄塔は長い径間で張力小 ◦ 弛度大 ゆったりとした感じ

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山岳地帯で時々見られる大カテナリー

◦ 大きなカテナリー曲線の途中に鉄塔が挟まる

◦ 中間の鉄塔は左右の揺れを防ぐだけ

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都市部でも大きな川の横断部前後で3本カテナリを見ることがある

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1号鉄塔

長大な構造物

広大な回路

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個々の鉄塔も面白いがやはり鉄塔趣味の神髄は「たどる」こと

目指すは1号鉄塔

そこが変電所ならその上流がまた登場する

終わる心配のない旅

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送電路は何十キロ、何百キロにもおよぶ長い長い一つの構造物 ◦ それが頭の中に徐々に組みあがってくる快感

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日本中の鉄塔がつながっている

九州―本州 関門連系線

四国―本州 本四連系線 阿南紀北直流幹線

北海道―本州 北本連系

50Hz-60Hz 周波数変

換変電所(佐久間・東清水・新信濃)

沖縄は単独

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◦ 大きな鉄塔も小さな鉄塔も、

幹線も配電変電所へ向かう

ローカルな送電線も、

みんな一つの回路の中で繋

がっている

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さあ歩きはじめよう あなたの「永遠の出発点」から