51
部分最適化から全体最適化へ Webの情報品質管理手法 html5j パフォーマンス部 部長 株式会社Spelldata 竹洞 陽一郎 [email protected]

部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

Embed Size (px)

DESCRIPTION

「パフォーマンス」とは何か? その本質を突き詰めていくと、私たちが忘れていた、「速度」以外の要素が浮かび上がってきます。 現在のコンピュータを、「計算機」から「通信機器」へと変えたクロード・シャノンの情報理論を学ぶことで、その答えを得ることができます。 Webの表示速度を高速化することは、パフォーマンスの一部でしかなく、シャノンの理論は、情報の価値と、それを正しく伝えることもパフォーマンスの一部であると教えてくれるのです。 このスライドでは、情報品質管理という観点から、Webのパフォーマンスを考えています。

Citation preview

Page 1: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

部分最適化から全体最適化へWebの情報品質管理手法

html5j パフォーマンス部部長

株式会社Spelldata

竹洞陽一郎

[email protected]

Page 2: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

自己紹介• 株式会社Spelldata代表取締役社長

• Keynoteの日本の業務を引き継ぎました

• 元Keynote Systems日本代表

• 統計学を基礎から学ぶ!中西塾管理人

• 統計学を実践的に学ぶ!中西塾管理人

• やってきた事• Layer1~7の技術

• 定量化・定性化分析手法(Function Point法、COCOM II)

• システム最適化

• Lotus Notes → Windowsのシステム構築→ Unix/Linuxのシステム構築→ メール→ Webシステム→ ユーザビリティ→システム開発見積り・IT不良資産→ 仮想マシン→ CDN、Web高速化、ストリーミング、RMT問題→ Webコンサルティング(パフォーマンス、UX)

Page 3: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

株式会社Spelldata

Page 4: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

容量による比較 SoftBank VS docomo同じサイトでも容量が違う〜 SoftBankの非可逆圧縮処理のため

docomo

SoftBank

Page 5: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

圧縮配信のトレードオフ通常は速さを齎すが、混雑する時間は遅延原因となる。

全てSoftBank

Page 6: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

パフォーマンスと情報品質の関係「今日のテーマって、パフォーマンスですよね?」

Page 7: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報とは?

• Information

• 心や精神において、形を与える(inform)もの

• ギリシア語のeidosが語源• 「みめ、姿、形」という意味

• 「データ」と「情報」の違い

• 「データ」が、数字、文字といった、表現の形の面を言うのに対して、「情報」は内容面を指す。

Page 8: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報理論の父クロード・シャノン

Page 9: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

「通信の数学的理論」

原題「A Mathematical Theory of Communication」

「あらゆる情報は数値に置き換えて表すことができる」という事を提唱。

この考えによって、コンピュータは、「計算機」から「情報処理マシン」へと変革を遂げる

Page 10: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

シャノンの情報理論のエッセンス

「価値ある情報を高速に、正確に送りたい」

何故、私たちは、「パフォーマンス」に拘るのか、その答えがこれ。

Page 11: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

我々が持つべき疑問

•何故、「パフォーマンス」なのか?

• そもそも、「パフォーマンス」とは何か?• 語源は、per(完全に)+formare(形作る)=成し遂げる

Page 12: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

我々は、そもそも「価値のある」情報を、送っているのか?

Webページの情報品質の重要性

Page 13: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

Webの情報品質の管理手法

• 「速さ」は、情報を伝える上での「質」の一つ

•高速に伝えられた情報の「価値」が低いと?• コミュニケーションという総合的な観点で見ると、パフォーマンスが低いという事になる。

•単純に、「速度」だけに注力すると、広義の意味での「パフォーマンス」は部分最適化となってしまう。

•今こそ、「情報の品質」を向上して、コミュニケーションの広義の意味でのパフォーマンス(質)を向上させませんか?

Page 14: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

部分最適化から全体最適化

部分最適化(表示速度だけ)から、全体最適化(情報の質、受け手の理解の誤り)を含めた、情報の品質管理の一部として、表示速度を捉える。

Page 15: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

シャノンの情報理論

•情報源符号化定理• 情報源から通信路に出される記号を符号化することを「情報源符号化」と呼び、通信の量をできるだけ減らすために効率的に符号化して圧縮できる限界を数学的に示した理論

•情報路符号化定理• 情報源から出された情報源符号が、雑音によって通信路で誤って送られてしまう、このことに対処するために、別な符号語に変換する操作が「情報路符号化」

•誤りの検出と訂正

Page 16: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報を高速に送るには?

•通信路の通信容量を超えるスピードで情報が入ってくると処理ができなくなってしまい、誤差だらけの情報になってしまう。

• 情報源からどれくらいのスピードで情報が出てくるのか?

• 通信路はどれくらいの処理スピードを持つのか?(単位時間あたりにどれくらいの情報を通すことができるのか)

• 誤りを減らすためにはどう送れば良いのか?

Page 17: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報源からどれくらいのスピードで情報が出てくるのか?

• 「情報エントロピー」という言葉で説明される。

Page 18: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報品質情報の価値とは?

Page 19: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報の分類

「知らない」という事を知っている

「知らない」という事を知らない

「知っている」という事を知ってい

Page 20: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報の分類

• 「知っている」という事を知っている• 「存在」を知っていて、「内容」も知っている

• 「存在」を知っていて、「内容」も知っているつもり

• 「知らない」という事を知っている• 「存在」を知っていて、「内容」は知らない

• 「知らない」という事を知らない• 「存在」を知らない

Page 21: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

インターネットで検索できる事

•存在を知っている事しか検索できない

Page 22: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

キャズム理論

Page 23: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

神の与えたもうたモノは正規分布する

Page 24: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

キャズム理論による分布(正規分布)

「存在」の認知普及(累積度数分布)

Page 25: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

Awareness

•意識が高い人か、低い人か

Page 26: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報の表現の選び方

レイト・マジョリティ

アーリー・マジョリティ

アーリー・アダプター

•存在自体を知らない

•彼らの知っている言葉に関連付けなければいけない

•その「存在」を知っているが、「内容」は知らない

•その「言葉」に関連する言葉で届く

•その「存在」を知っている

•その「言葉」で届く

Page 27: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報の三要素

•整合性• 情報の「主題」がぶれていない

•完全性• 必要な情報が全て含まれている

• アバウトネス• 情報の「主題」が読み手の意図と合致している

Page 28: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報の価値

Page 29: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

Webページの情報の価値

• 「買う」か「買わないか」と悩むところに、決定を可能とする情報を提供する• 要求を出来る・出来ない

• 性能を満たす・満たさない

• 価格が予算内、予算を超える

• 期日が間に合う、間に合わない

• 感情が動く・動かない

Page 30: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

情報の価値― on time, in time

• on time ― 時間どおりに

• in time ― 時間に間に合って

Page 31: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

目的、商品やサービス別にサイトを分ける

コーポレートサイト

ランディングページ(マーケティング)

販売ページ

(営業)商品・サービス

Page 32: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

オフライン オンライン

マルチチャネルによるコミュニケーションデザイン

ランディングページ

TV

雑誌

新聞

チラシ

ダイレクトメール

口コミ検索

リスティング広告

ディスプレイ広告

動画広告

SNS

Page 33: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

サイトを分けるメリット

• セグメント化しやすい

•差別化しやすい

•パーソナライズしやすい

Page 34: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

コミュニケーションデザイン戦略とは?

•顧客に提供したい「体験」を実現するために、どのようにコミュニケーションをデザインするか、という考え方の戦略。

•昨今、流行りのUX(User Experience)の本質は、コミュニケーションをデザインする事

Page 35: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

UX(User Experience)とは何か?

• UXの定義~ISO9241-210:2010

• person‘s perceptions and responses resulting from the use and/or

anticipated use of a product, system or service

• 製品、システムもしくはサービスの利用もしくは利用によって予測さ

れる人の認知と反応

•情報とは?

• 人の心(認知)に変化(反応)を引き起こす

Page 36: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

UXに関する注釈• NOTE 1 User experience includes all the users‘ emotions, beliefs, preferences, perceptions,

physical and psychological responses, behaviours and accomplishments that occur before, during and after use.注釈1 … UXには、使用前・使用中・使用後における、全てのユーザの感情、意見、好み、認知、物理的且つ心理的反応、行動、成し得たことが含まれる

• NOTE 2 User experience is a consequence of brand image, presentation, functionality, system performance, interactive behaviour and assistive capabilities of the interactive system, the user‘s internal and physical state resulting from prior experiences, attitudes, skills and personality, and the context of use.注釈2 … UXはブランドイメージ、見た目、機能性、システムパフォーマンス、相互作用行動並びに対話型システムの支援能力、以前の体験の結果によるユーザの内面及び物理的な状態、考え、スキル、人格、そして利用のコンテキストから成り立つ結果である。

• NOTE 3 Usability, when interpreted from the perspective of the users‘ personal goals, can include the kind of perceptual and emotional aspects typically associated with user experience. Usability criteria can be used to assess aspects of user experience.注釈3…ユーザの個人的な目的の観点で見て解釈される際のユーザビリティは、一般的にユーザエクスペリエンスに関係のある認知的ならびに感情的側面が含まれる。ユーザビリティの基準はユーザーエクスペリエンスの側面の評価として使える。

Page 37: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

UXテストには以下のものが含まれている必要があります

• 注釈1より

• 使用前・使用中・使用後における

• 感情、意見、好み

• 認知

• 物理的且つ心理的反応

• 行動

• 成し得たこと

• 注釈2より

• ブランドイメージ

• 見た目

• 機能性

• システムパフォーマンス

• 相互作用行動並びに対話型システムの支援能力

• 以前の体験の結果によるユーザの内面及び物理的な状態

• ユーザ(パネリスト)の考え、スキル、人格

• 利用のコンテキスト(利用目的)

• 注釈3より

• ユーザビリティテストはUXテストの一部として使えるが全てではない

Page 38: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

“But the user experience is what we care about most, and we‘re expanding that experience beyond the box by making better use of the Internet.”

でも、ユーザ体験こそが我々が最も気にかけている事で、そして我々はインターネットの利用をより良くすることで(Macなどの)箱を利用して得られる体験を拡張しているんだ。

―スティーブ・ジョブズ

顧客に提供したい「体験」が、商品やサービスを規定する。

Page 39: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

選択する=切り捨てる重要性

• 「情報が何を消費してしまうかは、とても明白だ。受け手の関心を消費するのだ。それゆえ、豊富な情報は関心の欠落を生む。また、溢れる情報が、『関心』を消費しようとしているとき、その『関心』を効果的に配置する必要性が生まれる。」

-ハーバート・サイモン(ノーベル賞経済学賞受賞者。チューリング賞受賞者)

Page 40: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

選択肢の数が決断に及ぼす影響

• コロンビア大学ビジネススクールで経営学を教えるシーナ・アイエンガー教授が行った実験。

• あるグループに6種類のジャムの商品サンプルを提示し、別のグループには24種類提示する。

• 24種類のジャムを提示されたグループは試食に積極的だったが、購入する割合は6種類のサンプルを提示されたグループのほうが10倍高かった。

Page 41: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

人が持てる関心は10以下。大抵は6~7つ。• 人はあまり多くの事に関心を持ち続けることができない。

• あなたにとって、サイトの運営は常日頃からの「関心事」ではあっても、顧客にとっては一時の「関心事」でしかない。

• 客観的統計データによってバイアスを排除することが大事• 過去の努力をムダにしたくないバイアス

• 過去に努力してきたもの、過去にたくさん投資をしたものについては、「もったいない」と思い、それを辞めることが損をしてしまうと考えるバイアス。(これから将来に損をする話であっても、過去の投資がもったいないと考えてしまう)

• 現状維持バイアス

• 今のままではマズイとは分かっていても、現状を変えるということには抵抗を感じてしまうというバイアス。(余程のことがない限り、現状を変えようとはしない)

• 保有したものは、手放したくないバイアス

• 一度保有したモノは、他人が思っている価値(客観評価)より、自分だけ高い価値を感じてしまうようになる(愛着バイアス)

Page 42: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

ASCII.jp:「近江牛」でGoogle上位のEC、脱・縦長ページで復活

リニューアル直後は、「以前より寂しい印象になった」、「購入意欲が減った」という他のECサイトオーナーからの厳しい意見もあったが、結果として、平均売り上げは前年比132%と大幅に伸びた。

Page 43: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

画像の「コスト」

• 1の写真は、1,000の言葉に勝る• 報道写真家ジブ・コーレン

• しかし、画像は重い=通信の「コスト」が高い

•何でもかんでも、画像を使わない• 「情報路符号化」としての画像― 文字で伝える情報の補完

Page 44: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

二週間で売上20%アップ

Page 45: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

まとめ「パフォーマンス」とは?

Page 46: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

パフォーマンスとは、速さだけではない

• 「価値ある情報を高速に、正確に送りたい」• 速度は、情報品質の一部

• 情報の価値を高めなければ、パフォーマンスが向上したとは言えない。

•パフォーマンス向上=部分最適化ではなく、全体最適化で!

Page 47: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

Q&Aまとめと質疑応答

Page 48: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

参考図書1

Page 49: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

参考図書2

Page 50: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

参考図書3

Page 51: 部分最適化から全体最適化へ ― Webの情報品質管理手法

ご清聴どうもありがとうございました。