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lar B Spacecraft Illustration pyright 2002, 2004 B. E. Johnson l Rights Reserved 日日日日日日日日日日日日日日日 日日日日日日日日日日日日日日日日日 日日 日日 JIMTOF2016 日日日日日日日日 2016 日 11 日 21 日 ( 日 )14 日 30 日16 日 00 日

JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

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Page 1: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

Solar B Spacecraft IllustrationCopyright 2002 2004 B E JohnsonAll Rights Reserved

日本の宇宙科学を支える技術開発

宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所常田 佐久JIMTOF2016 最先端技術講演会

2016 年 11 月 21 日 ( 月 )14 時 30 分~ 16 時 00 分

本日のお話し1 宇宙の大きさ2 自己紹介宇宙への道3 重要な気球と観測ロケット4 「ひので」衛星のできるまで5 「ひので」の捉えた新しい太陽像6 Lessons-learned( 学んだ事)7 国立天文台先端技術センター8 天文学の応用技術9 まとめ

2

1 宇宙の大きさ(感)

国際宇宙ステーション( ISS )4

ISS の高度

bull 40 km日本橋 八王子minusbull 4 00km東京 大阪minusbull 3 000km東京 マニラminusbull 18600km東京ーリオデジャネイ

5

ldquo 地球ー月間の距離は約 38 万 4400 kmrdquo

光秒

太陽までの距離は 8 「光分」(光の速さで 8 分 19 秒)今見ている太陽は 8 分 19 秒前の太陽

6

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 2: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

本日のお話し1 宇宙の大きさ2 自己紹介宇宙への道3 重要な気球と観測ロケット4 「ひので」衛星のできるまで5 「ひので」の捉えた新しい太陽像6 Lessons-learned( 学んだ事)7 国立天文台先端技術センター8 天文学の応用技術9 まとめ

2

1 宇宙の大きさ(感)

国際宇宙ステーション( ISS )4

ISS の高度

bull 40 km日本橋 八王子minusbull 4 00km東京 大阪minusbull 3 000km東京 マニラminusbull 18600km東京ーリオデジャネイ

5

ldquo 地球ー月間の距離は約 38 万 4400 kmrdquo

光秒

太陽までの距離は 8 「光分」(光の速さで 8 分 19 秒)今見ている太陽は 8 分 19 秒前の太陽

6

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 3: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

1 宇宙の大きさ(感)

国際宇宙ステーション( ISS )4

ISS の高度

bull 40 km日本橋 八王子minusbull 4 00km東京 大阪minusbull 3 000km東京 マニラminusbull 18600km東京ーリオデジャネイ

5

ldquo 地球ー月間の距離は約 38 万 4400 kmrdquo

光秒

太陽までの距離は 8 「光分」(光の速さで 8 分 19 秒)今見ている太陽は 8 分 19 秒前の太陽

6

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 4: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

国際宇宙ステーション( ISS )4

ISS の高度

bull 40 km日本橋 八王子minusbull 4 00km東京 大阪minusbull 3 000km東京 マニラminusbull 18600km東京ーリオデジャネイ

5

ldquo 地球ー月間の距離は約 38 万 4400 kmrdquo

光秒

太陽までの距離は 8 「光分」(光の速さで 8 分 19 秒)今見ている太陽は 8 分 19 秒前の太陽

6

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 5: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ISS の高度

bull 40 km日本橋 八王子minusbull 4 00km東京 大阪minusbull 3 000km東京 マニラminusbull 18600km東京ーリオデジャネイ

5

ldquo 地球ー月間の距離は約 38 万 4400 kmrdquo

光秒

太陽までの距離は 8 「光分」(光の速さで 8 分 19 秒)今見ている太陽は 8 分 19 秒前の太陽

6

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 6: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ldquo 地球ー月間の距離は約 38 万 4400 kmrdquo

光秒

太陽までの距離は 8 「光分」(光の速さで 8 分 19 秒)今見ている太陽は 8 分 19 秒前の太陽

6

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
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  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • Slide 74
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 7: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

Hayabusa 2 mission

15

falcon

hayabusaはやぶさ 2 bull 打上 2014 年 小惑星到着 2018 年 小惑星出

発 2019 年 地球帰還 2020 年bull 目標小惑星 1999 JU3 C- タイプ近地球小惑星

bull 熱変性を受けておらず太陽系形成時の情報を保持bull このため有機物や水といった揮発物質を有してい

るbull 主要な実験 接近観測 サンプル取得 衝突実

験bull 科学目的

C型小惑星の特性と形成過程の理解生命の原材料の探索太陽系の起源と進化 JAXA Lunar amp Planetary

Exploration Program Group7

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 8: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

はやぶさ2の現在地( 20161119 現在)

探査機の地球からの片道伝播遅延時間

8

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 9: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

あなたがいるところ

ここ

9

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 10: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

あなたがいるところ

ここ

10

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 11: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

あなたがいるところ

ここ

11

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
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  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 12: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

アンドロメダ銀河(約 250 万光年)

12

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
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  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 13: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

円盤渦巻き銀河 (M81) 楕円銀河 (M87)

(NGC4449)

不規則銀河 不規則銀河

(NGC40383039)

S0 銀河

(NGC3115)

現在の宇宙(宇宙が誕生して 138 億年)

13

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 14: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

遠い宇宙の姿を見ること=遠い宇宙の「昔の姿」を見ること

宇宙の変化はどこでも似たり寄ったりrarr 遠い宇宙の「昔の姿」は 我々自身の「昔の姿」

138 億年の宇宙の歴史の中で銀河が誕生する姿を「この眼で」みることができる

14

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 15: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

138 億年前ビッグバン

イン

フレ

ーシ

ョン

40 万年前宇宙の晴れ上がりマイクロ波宇宙背景放射

現在の宇宙135~130 億年前宇宙最初期の銀河の誕生

宇宙の歴史模式図

時間の流れ時間の流れ

宇宙の歴史暗黒エネルギーによる加速銀河惑星の形

    宇宙の膨張

4 億年頃に初代の星

15

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 16: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

2 自己紹介宇宙への道

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 17: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

自己紹介bull 最初の衛星実験 (1981 年打上)は大学院生それ以来35年間飛翔体実験に関わる

bull 1981 年とはどういう時代だったか日本のロケットがようやく失敗しなくなった天文学の大学院生で初めて衛星打上げを体験し博士論文を書いた日本で第 1号(日本初の太陽観測衛星「ひのとり」)この時の体験は現在に至るまで私の研究の原点となっている

bull 2代目太陽観測衛星「ようこう」( 1991 年打上げ) 3代目の「ひので」( 2006 年打上げ)を連続して成功させてきた

bull 同時に観測ロケットおよび気球による新しい観測装置の実証大学院生の指導を行ってきた

bull 自らの開発した衛星と観測装置により国内外の大学院生や若手研究者と共に太陽の研究を行ってきた

17

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 18: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

SOLAR-C202X

30 年の研究開発成果日本は宇宙からの太

陽観測の最先進国となる 

Hinotori (ASTRO-A)1981ndash1982

Yohkoh (SOLAR-A)1991-2001

Hinode (SOLAR-B)2006ndash

188kg

390kg

900kg

XDT 観測ロケットによる「ひので」の機器開発 1998

気球実験による硬X線観測

2001 2002

NASA rocket CLASP 2015 amp CLASP2 2019

査読付論文 1197編査読付論文1028編

18

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 19: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

2006 「ひので」

2001気球実験

1991「ようこう」軟X線望遠鏡

2016 CLASP CLASP真空紫外線偏光分光装置(SOALR-C予備実験)

1997観測ロケットドップラー望遠鏡(「ひので」の予備実験)

1991「ようこう」

「ひので」可視光望遠鏡硬X線スペクトル計

1981「ひのとり ]1981「ひのとり」硬X線望遠鏡

1991「ようこう」可視光望遠鏡 1991「よう

こう」

科学衛星と搭載装置の開発

19

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 20: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

宇宙への多様な道

bull わざわざ宇宙に望遠鏡を持って行く2つの理由ndash 地上では見えない波長を観測するためndash 地球の大気で画像が乱れるので鮮明な画像を得る

ためbull 宇宙に行く手段

ndash ふわふわ浮かぶ気球ndash 5 分間だけ大気圏外に出ることのできる小型観測

ロケットndash 大型ロケットで打ち上げる人工衛星

20

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 21: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

500

200

100

50

20

0

10

1 pm 1 nm 1 m 1 mm 1 m 1 km

波長

高度 (km)

ガンマ線 X線 紫外線 可視光近赤外線

電波赤外線テラヘルツ波

地球大気不透明

地上望遠鏡     rarr 大集光力スペース望遠鏡     rarr 高安定度

地球大気の透過性

21

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 22: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

高解像度を邪魔するもの大気の揺らぎ

揺らぎなし(宇宙空間) マウナケア

理想的光波面 現実地球大気の影響

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 23: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

23

空気のないところで観測する(例ハッブル宇宙望遠鏡)

宇宙へ行くのはとても大変次世代宇宙望遠鏡は口径 65m 経費数兆円

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 24: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

宇宙空間の環境bull 空気がない

ndash 蒸発しやすいメカの潤滑が大きな課題ndash 汚れやすい空気のバリアがないので

bull 宇宙の温度は絶対温度で3K(摂氏マイナス270 )ndash 一方太陽に向いている側は適切な熱設計がない

と高温になるbull 放射線環境が厳しい

ndash 電子機器の誤動作対策が必須bull 故障したら修理できない

25

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 25: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

飛翔体天文学の特徴bull 重量1g(~7千円)でも軽くbull 大きさ打上ロケットの先端部に収まるようできる

だけ小型にbull 電力省エネ設計を徹底衛星全部で~数KWしか

ないbull テレメトリー地上に観測データを伝送するパイプ

は太くないbull コストできるだけ安くbull それで最高性能を実現するbull (注)テレメトリーデジタルデーターを地上に送

る無線回線26

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 26: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

3 重要な気球と観測ロケット

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 27: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

観測機器の設計は「トレードオフ」の連続

bull 高度は重量は(重くなると高く上がらない)

bull 大きさは電力はテレメトリーはbull 太陽を観測しつつ検出器の冷却(0度 C以下)は

bull どうやって目標(太陽)の方向に向けるかbull 高圧電源(400 V) で放電しないかbull 決められた予算内で装置が製作できるかbull スケジュールは太陽活動極大に間に合うか

29

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 28: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

気球やロケット実験の開発は若者が中心

観測ロケットの開発チーム

気球院生が中心

観測ロケットでも打ち上げオペはこれだけの人数 30

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 29: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

完成した気球搭載装置

32

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 30: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

気球にはロマンがある

33

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 31: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

飛行結果

bull これまで二回飛行bull 日本海で漁船により回収bull 二回目はパラシュート開か

ず海面に激突

34

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 32: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)

35

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 33: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

4 「ひので」衛星のできるまで

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 34: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

2006 年打上「ひので」衛星日本の独創技術と国際協力

極端紫外線撮像分光装置 ( EIS )

可視光磁場望遠鏡( SOT )

Ⅹ線望遠鏡 ( XRT )

02-03 秒角という超高空間分解能で太陽表面の磁場ベクトルを精密計測

約1秒角の高解像度でコロナの構造やそのダイナミックな変動を観測

コロナの物質が出す極端紫外線を撮像分光しコロナ物質の密度温度流れの状態を診断

3望遠鏡の同時観測により太陽コロナ活動や加熱機構のメカニズムを探る

38

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 35: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

科学衛星は宇宙で自立するロボット

地上からの指令を受けるアンテナ

地上へ観測データを送るアンテナ

太陽センサー

星センサー

太陽電池(1 KW)

姿勢を維持する高速回転するコマ

三台の望遠鏡

姿勢を知るジャイロスコープ

39

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 36: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

HDM

low expansion CFRP truss

center section interface to the satellite

primary mirror

2nd field stop

tip-tilt mirror

cold platefor thermal control

CLU

SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組

口径 50cm の主鏡

副鏡(見えない)

排熱鏡

18m

07mすばる望遠鏡の技術を活用すばるより難しかった 40

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 37: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

可視光望遠鏡の特徴bull 回折限界無偏光望遠鏡

ndash 徹底した軽量化全重量わずか 110 kgndash 可動部は焦点調整機構のみ副鏡は完全固定のため厳しい位置トレランス(5ミクロン数秒角)

ndash 超低膨張複合材料構体 (01ppm )全面接着構造bull 太陽光線に含まれる強力なエネルギーを排出する熱設計ndash 観測に必要ない光線を宇宙に排出残りの熱を太陽に向

かって排出bull 宇宙での性能を保証する試験bull 高度の宇宙望遠鏡システムインテグレーション技術

ndash 重量電力大きさといった衛星搭載特有の厳しい制約のなかで要求性能を満たす高い性能を持つ装置を開発すること 41

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 38: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

可視光望遠鏡と日本の技術開発

bull 回折限界望遠鏡( 02 秒角 )ndash ハッブル望遠鏡並みの解像度ndash 地上のものなら 20-50cm まで見分けられる

bull 日本の技術開発ndash 全く熱膨張収縮しない複合材料(炭素繊維と樹脂の組み合わせ)の開発 (1 度 C あたり 01ミクロンアルミの約250 分の1)

ndash 主鏡は( 50cm )の重さは~ 12Kg しかない軽量ミラーndash その主鏡の鏡面精度は 18ナノメートル(主鏡の大きさ

を地球の大きさとするとその凸凹は23cm)ndash ぐらぐらする衛星による手ぶれ対策像のずれをミラーを傾けて補正その精度は 001 秒角(~富士山の 1 円玉) 43

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 39: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

光学ガラスのガンマ線照射試験

44

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 40: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

大敵有機物の付着とほこり

45

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 41: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

部品洗浄とベーキングの重要性

bull 有機物やほこりは光学系の反射率や透過率を下げるので大敵一番の有機物汚染源は作業者

bull 有機物以外でも機械加工された金属からのアウトガス(機械油起源)も無視できない

bull 機械加工された Al合金を洗浄した結果衛星メーカの洗浄工程よりある町工場の真空部品洗浄工程のほうが圧倒的によいことが判明以後フライト部品試験治具のすべてを洗浄をこの工場で実施

bull 洗浄後高温のベーキングを行い有機物を完全にとりさる 46

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 42: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

バジェットを満たすまでの長期間の徹底したベーキングに多大の労力を要する人海戦術

最も長期間ベーキングされた可視光望遠鏡の構体

47

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 43: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ひので可視光望遠鏡フライト品

Flight secondary mirror

Flight primary mirror

Flight polarization modulator

Flight tip-tilt mirror

Flight collimator lens unit

CFRP truss structure48

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

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bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

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  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
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  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
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  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
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  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
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  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • Slide 91
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
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  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 44: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

国立天文台での望遠鏡の組立調整作業

望遠鏡の組立ては超清浄なクリーンルームで一辺約 30cm の立方体中の 03ミクロン以上のホコリの数が 10個以下

49

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 45: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

観測装置衛星開発における試験の決定的重要性(半分は試験期間)

衛星の組立 振動試験 音響試験

微小振動試験

熱真空試験最終確認ロケットへの組込打ち上げ

(これのみ別の衛星)50

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 46: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡太陽版ハッブル宇宙望遠鏡

bull これまでにない解像度(地上をみたら50cm )

bull 大気のゆらぎのない安定な画像

bull 全国産技術で開発

51

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 47: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

「ひので」太陽軌道天文台X線望遠鏡

極端紫外線スペクトロメーター

可視光望遠鏡

bull 高度630 Kmbull 太陽同期軌道( 24 時間観測が可能)bull 重量 900Kgbull 大きさbull 高さ4m全長 10m

52

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 48: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

53

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 49: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

5 「ひので」の捉えた

新しい太陽像

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 50: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

太陽に近づいていくと粒状斑(対流の粒)が見える

55

>

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 51: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

JapanSunspot

56

>

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 52: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

活動する彩層

57

>

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

58

>

磁場に支えられるプロミネンス

59

>

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

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bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
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  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 53: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

X線で見たコロナ(温度百~1千万度)

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磁場に支えられるプロミネンス

59

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6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 54: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

磁場に支えられるプロミネンス

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6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

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ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 55: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

6Lessons-learned( 学んだ事)

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 56: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

科学衛星の開発工程 ( 理想)

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

=フィードバック ( 見直し)

軌道上運用

材料選定

61

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
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  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • Slide 74
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 57: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

飛翔体天文学理想と現実

科学目的 概念設計 要素技術開発

詳細設計試作(プロトモデル)試験

フライト品製作 試験

技術コスト体制のうら

ずけのない野心的すぎる

科学目的

不十分な要素技術の開発基礎検討

問題を解決せず詳細設計へ移行

問題の発覚問題の見過ごし

問題の発覚最後の砦における問題の見過ごし

軌道上運用不具合の発生

Fidelityの

低い試作

品質管理検査の手抜きが重大な結果へ

見直しフィード

バックの不足

62

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 58: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

飛翔体プロジェクトは格闘技bull サイエンスの成果への確信がないと続かないbull ミッションを一旦提案したら諦めない良いミッ

ションは最後には認められるbull 決して失敗しない失敗しないためにあらゆるこ

とをするbull サイエンス技術(背伸びと実績のバランス)良

い担当者優秀な企業の支援の4点セットが必要bull 開発チームに経験者がおりマンxパワーが「臨界

質量」を超えることbull 要素技術ーシステム技術のバランスシステム技術

を軽視しない

63

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 59: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

プロジェクトマネージメントの問題bull リーダシップと経験の重要性

ndash 無限のリソースのあるプロジェクトのリーダーは誰でも務まるしかし常にリソースは極端に制約され問題も発生する

ndash リソース(コスト人技術)の制約あるいは必要な情報が不足する状態で適切な判断行動がとれるか

ndash 新たな問題発生時に適切な対応がとれるか必要の場合トップマネジャーは現場にすみやかに降りて「同調」できるか(自分の目で直接見ることの重要性)

ndash リスクを回避するため常にコンサーバチブなアプローチだけをとるとプロジェクトは成立しない

ndash 技術は複雑高度化専門家のアドバイスは尊重しつつもプロジェクト判断はありえるのか

ndash 大局のみならず Detail の重要性ndash 飛翔体プロジェクトを教科書で学ぶことはできない気球実験やロ

ケット実験といった小プロジェクトでの OJT が極めて有効bull プロジェクトチーム

ndash ブレークスルーをもたらし外からは知りえない困難の克服をするのは少数のすぐれた個人の場合が多い

ndash それとモチベーションに富んだプロジェクトチームの集団力の組み合わせの重要性(「臨界質量」問題)

ndash 技術的不具合の根源をたどるとしばしば人間関係や組織体制の問題に行き当たる

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 60: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

7 国立天文台先端技術センター

( 2005~ 2012 の 8 年間センター長であった)

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
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  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
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  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 61: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

一号館(すばる  1994 )二号館( ALMA   2005 )三号館( TMT   2016 )

国立天文台先端技術センター

機械工作工場 クリーンルーム 66

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 62: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

先端技術センター (ATC)設立趣旨

bull 国立天文台の戦略的開発研究の中核となり国立天文台が推進するプロジェクトに必要な技術の開発将来計画に資する基礎技術の開発研究を行う

bull 先端技術センターは高度の製品の設計から製作試験納入までを一貫して実施する開発(物づくり)のための組織

bull 組織図概念としてプロジェクトを縦糸ショップ+ユニットを横糸とする

bull 国立天文台の地上可視赤外線電波天文学を背景にスペース関連技術の蓄積強化を図る 67

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 63: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

先端技術センター組織図

68

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
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  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 64: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ATC での開発重力波干渉計 KAGRA の防振系鏡をどれだけ安定させるかの技術  10-19m の精度

Laser

ビームスプリッター

レーザー

光検出器

鏡(防振)

69

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 65: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ATCにおける CLASP (ロケット搭載望遠鏡でライマン α の偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発若手研究者大学院生が中心となり搭載用望遠鏡と分光器を ATCにおいて自前で開発

70

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 66: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

71

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 67: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

HyperSuprimeCam for Subaru telescope ~900M pixels

72

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 68: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

73

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 69: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

74

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 70: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

75

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 71: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ハッブル望遠鏡を凌駕25 時間の露出 ハッブル望遠鏡 500 時間

76

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
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  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
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  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 72: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ATCにおける ALMA 受信機開発バンド4バンド8バンド10それぞれ 73 台の受信機を量産した主として研究者が素子開発技術者が量産を担った天文台では全く新しいチャレンジであった ALMA で要求された高いクオリティはセンターを成長させた

77

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 73: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

bull 受信機組立て室

bull バンド4810実験室(ミリ波サブミリ波特性評価)

ATC (先端技術センター)の設備

78

>

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 74: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ATC (先端技術センター)の設備

bull クリーンルーム 超伝導デバイスの製造

bull評価室 超伝導デバイスの初期的評価79

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 75: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

超伝導デバイスの製造 ndash ALMA 受信機の心臓部 ndash

bull 先端技術センターのクリーンルームを使用ndash 台内で内製NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

NbAlOxNb

28 microm

45 microm

Al Ground Plane

NbTiN

55 microm

Transformer

Waveguide Probes

Al Ground Plane

SiO2

NbTiN Strip

Fused Quartz Substrate

NbAlOXNb

国際チームbull 研究者 准教授1名(日)bull エンジニア PhD (独)bull 技術者 技術員1名(日)

契約職員1名(日)bull 院生 東大1名

rarr 現在デルフト大学助教

80

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 76: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

8ALMA望遠鏡の開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
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  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
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  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 77: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

SPICA (2028)JWST (2018)

TMT 30m (2028)E-ELT 39m(2020rsquos) ALMA

日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 78: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

83

アルマの概要 アルマの概要

bull 南米チリのアタカマ高地に建設した大型ミリ波サブミリ波干渉計

bull 日米欧の国際共同事業で世界最高性能の電波望遠鏡を実現日本国立天文台(+東アジア) 米国国立科学財団 (+カナダ )欧州欧州南天天文台(欧州 16カ国) チリチリ共和国

アルマの計画期間bull 建設期間 H16- H25bull 運用期間建設完了後ldquo 30 年rdquo+ α

bull H23- H24 (初期科学運用)bull H25-H34 (本格運用)bull H35- H54 本格運用を継続する)

建設を終え運用(と保守)が本格化

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 79: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

20140613

Credit ALMA (ESONAOJNRAO)

84

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 80: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

結合型干渉計

基準信号

データの結合(相関器 ) 天体画像

85

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 81: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

86B4 B8 B10

12m アンテナシステム 12m アンテナシステム

各バンド 73 台(合計 219 台 ) を量産

日米欧の建設分担

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 82: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

219 台の世界最先端の受信機をATCで内製

国立天文台先端技術センターではアルマ望遠鏡に搭載する3種類のミリ波サブミリ波帯受信機(合計 219 台)の製造をインハウスで実施

アルマ受信機の製造運用に必要となる技術超伝導素子の設計製作性能評価高感度受信機の設計組立て性能評価国際協力のノウハウ量産技術(製品保証等)長期運用のための保守体制の確立維持

これらの実現のため民間を含む経験者の採用を積極的に行った

2013 年度までに全ての受信機の出荷を完了国際的責務を果たすとともにアルマの建設に大きく貢献したアルマは 2013 年から本格運用を開始した後 30 年以上に渡る運用継続を目指しているそのため先端技術センター内に受信機の保守体制を維持している

87

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 83: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

Band 4 8 10 カートリッジの製造ndash 日本が分担した受信機 ndash

Band 4    Band 8         Band 10

88

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 84: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

ALMA Band 8 Cartridge

89

4 K

15 K

110 K

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 85: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

90

開発体制の整備Band 4 Band 8 Band 10

部品保管庫

クリーンルーム

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 86: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

カートリッジ受信機開発製造フロー

機械構造電気設計 ミキサアセンブリ

受信機アセンブリ 性能評価試験

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 87: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

アセンブリング

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 88: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

アセンブル作業

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 89: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

2005

06

07

08

09

11

12

13

14

2010

04

15

ALMA-J プロジェクト開始

先端技術センター発足

全受信機出荷完了

初期科学運用開始(16台)

開所式(59台)

アンテナ建設完了(66台)

アンテナ受信機テスト Arizona(230 GHz帯 Rx )

B10 受信機1号機出荷B4受信機10号機出荷

B8 受信機10号機出荷

B4 B8CDR

デバイス製造装置を野辺山から三鷹へ移設

Chronological table

B4 1号機出荷B8 受信機1号機出荷

プレ量産フェーズ

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 90: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

量産スケジュールと実績後半の追い込みで契約職員が活躍

95

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

10

15

20

25

30

35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
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  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 91: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

96

bull 日本が開発を担当したバンド 4 8 10 受信機カートリッジの量産とチリへの出荷は 2013 年度中に完了

bull 建設期(量産) 運用期(保守将来開発)に対応する人員配置組織変更

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 20170

5

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35

40短時間契約職員年俸制職員特定契約職員技術職員研究職員

受信機チーム人員構成

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 92: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

特定技術職員

bull 2011 年の ATC 受信機分野 (SIS Band 4 8 10 を合わせて 28名 ) の内訳ndash研究教育職員 3名ndash 技術系職員 7名ndash 特定契約職員 18名

bull 志を高く持ち本プロジェクトに参加し大きく貢献していた

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 93: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

技術伝承および新人教育

bull チームリーダおよびシニア技術者により新人教育を行うbull 国際設計審査会には全員参加で英語でのドキュメントおよび英語での発表は全員が行う

bull チリ現地には提起的に赴き自身が開発した受信機がアンテナに搭載される現場での仕事経験する

bull 提起報告会を開催しドキュメントを作成し進捗の確認を双方で行う

98

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 94: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

30 m超大型望遠鏡計画

(TMT)

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
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  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 95: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

100

支援棟

ドーム

補償光学系

観測装置

観測装置

副鏡

主鏡

第三鏡

ナスミス台

TMT全体図

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
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  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 96: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

鏡を継ぎ合わせて直径30mにする

30m

144m

非球面

82種類の鏡 times6枚= 492枚

継ぎ目の段差髪毛の太さの 3000 分の1

鏡 鏡

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 97: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

8 天文学の応用技術

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 98: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

産業界との密接な協力は宇宙科学に不可欠

bull 日本における従来の官と民の関係を脱する必要があるndashX研究者は夢を語りメーカーが実施するndashX国が指導しメーカーがそれに従う

bull 民官の協力により共同開発最小エネルギー最小コスト最小リスクになるよう密接に協力する必要がある

103

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 99: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

104

可変形鏡

毎秒 1000回以上の補正で大気揺らぎの変化に追いつく

大気の乱れを取り除く補償光学(AO)

波が形を変えて進む

乱れた星像

元の星像

大気の乱れ 補正された星像

鏡が変形する

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 100: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

105

   補償光学の新しい応用      細胞の中を見る

生きたままの細胞活動を見ることが本質的に重要

細胞内の媒質で波面が乱れる深部を観察するには AO が必要 

天文分野の AO 技術の発展が生物用 AOに応用できる

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
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  • 部品洗浄とベーキングの重要性
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
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  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
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  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
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  • まとめ
Page 101: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

106

核液胞_

カバーガラス

スライドガラス

白色光源

40x油浸対物レンズ

補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察基礎生物科学研究所と共同

細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズを表皮に貼り付けそのビーズの蛍光を用いて補償を行う

蛍光ビーズ

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 102: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

107

補償光学を用いたタマネギ表皮細胞核の観察

bull 中心部(黄色点線)では回折限界に近い分解能が得られた

補償光学動作なし 補償光学動作あり

20 m

核 核

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 103: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

国が推進する産業振興bull 産業界からの提言( 2015 年 10 月 20 日日本経済団体連合会「第5期科学技術基本計画の策定に向けた緊急提言」より)ndash 基礎研究から社会実装までのビジョンや経営課題の共有を通じた本格的な産学連携や拠点形成さらには産学連携での人材育成を有力な方策についても検討が必要である

ndash 次の世代を担う「新たな基幹産業の育成」に向けた本格的なオープンイノベーションを推進する具体的には非競争領域を中心に複数の企業大学研究機関等のパートナーシップを拡大し将来の産業構造の変革を見通した革新的技術の創出に取り組む

bull 日本再興戦略 2016 (平成 28 年 6 月 2 日閣議決定)ndash 組織トップが関与する「組織」対「組織」の本格的な産学連携の推進( 2025 年度までに大学国立研究開発法人等に対する企業の投資額を OECD諸国平均の水準を超える現在の 3倍とすることを目指す) 115

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 104: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

宇宙研での今後の取組と課題bull 宇宙研はあくまで学術研究プロジェクトの確実な

実施が中心であることを認識しつつ民生連携を進める

bull 限られた人的リソースを認識し戦線を広げすぎないように留意し JAXA のなすべきこと実施できること JAXAに残すべき技術を識別し日本全体で成果を最大化する

bull 現状は国の求める「ビジョンや経営課題の共有」「本格的な産学連携や拠点形成」「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」等に至っていない「産学連携での人材育成」についても産業界の人材育成面で課題がある

bull 今後のJAXAのあるべき対応について模索段階にある

116

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 105: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

9 まとめ

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
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  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 106: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

118

宇宙科学者が挑む Big Questions

1 地球に生命はどうやって誕生したのか2 第 2 の地球はあるのか3 地球外に生命体は存在するか4 宇宙全体の物質とエネルギーのうち 74

がダークエネルギー 22 がダークマター(見えない物質) 一体これらは何

5 宇宙はどうやって始まったのか

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
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  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
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  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • Slide 74
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 107: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

119

世界中の宇宙科学研究者がこれらの謎に挑戦

ESA Cosmic Vision「4つのキーテーマ」bull惑星形成及び生命誕生のための条件は何か

bull太陽系はどのように機能しているのか

bull宇宙の基本的法則とはどのようなものか

bullいかに宇宙は創造され宇宙は何でできているか

NASA Cosmic Originsbull 宇宙の最初の恒星がいつ形成されたの

かまたその恒星が周囲の環境にどう影響したのかを解明したい

bull (宇宙の質量の大半を占める未知の)ダークマターがどのように宇宙初期に集まりその高密度でガスを取り込みやがて銀河となったか

bull 銀河が初期の系から我々が住む天の川のような現在観測している系にどうやって進化したのか

bull 超大質量ブラックホールは明らかに宇宙の質量の大半を占めており初期宇宙で超大質量ブラックホールが最初に形成されたのはいつかまたそれを含む銀河の一生にどのように影響したのかを解明したい

bull 恒星そのものさらに惑星系が形成されるメカニズムを理解したい

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
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  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
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  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 108: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

学術としての宇宙科学探査は今後とも世界的に優れた成果を創出し人類の知的資産の創出に寄与する観点からボトムアップを基本として JAXA の宇宙科学探査ロードマップを参考にしつつ今後も一定規模の資金を確保し推進する今後 10 年間では戦略的に実施する中型計画に基づき 3 機公募型小型計画に基づき 2 年に 1 回のペースで 5 機打ち上げるとともに多様な小規模プロジェクトを着実に実行する具体的には X線天文衛星 (ASTRO-H) ジオスペース探査衛星 (ERG) 水星探査計画 (BepiColombo) 等のプロジェクトを進めるまた国際共同ミッションである次世代赤外線天文衛星 (SPICA) の 2020 年代中期の打ち上げに関する検討も行うさらに現在 JAXA 宇宙科学研究所 (ISAS) において検討中のプロジェクトについては検討結果を踏まえ着実に進める 太陽系探査科学分野については効果的効率的に活動を行える無人探査をボ

トムアップの議論に基づくだけでなくプログラム化も行いつつ進めるプログラム化においては月や火星等を含む重力天体への無人機の着陸及び探査活動を目標として特に長期的な取組が必要であることから必要な人材の育成に考慮しつつ学術的大局的観点から計画的に取り組む ( 文部科学省 )

120

bull 戦略的中型 3機 10年公募型小型 5機 10年bull その中で重力天体への無人機の着陸と探査を目標とする太陽系探査科学を「プログラム」化して実施

宇宙科学への政府の長期的支援新「宇宙基本計画」本文 (平成 27 年 1 月 9 日宇宙開発戦略本部決定)

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
  • Slide 15
  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
  • Slide 19
  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
  • Slide 48
  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
  • Slide 53
  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
  • Slide 59
  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
  • Slide 69
  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
  • Slide 72
  • Slide 73
  • Slide 74
  • Slide 75
  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
  • Slide 78
  • Slide 79
  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
  • Slide 83
  • Slide 84
  • 結合型干渉計
  • Slide 86
  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
  • Slide 90
  • Slide 91
  • Slide 92
  • Slide 93
  • Slide 94
  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
  • Slide 96
  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
  • Slide 100
  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
  • Slide 104
  • Slide 105
  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
  • Slide 107
  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
  • Slide 120
  • まとめ
Page 109: JIMTOF 2016: 日本の宇宙科学を支える技術開発

121

まとめbull 宇宙研や天文台は欧米の数十分の一の予算

で世界最先端の基幹プロジェクトを担い国際的に評価される最先端の成果を生み出してきた

bull それを支えてきたのは日本の高い基盤産業のレベルと献身的な科学者と技術者による不断の技術開発であった

bull 研究者の活躍のみならずメーカー退職者 (専門技術プロマネ経験者生産技術物流翻訳など多種多様)の活躍がALMAの成功につながった

bull 日本が Big Questionsに挑み続けるにはものづくりが原点

  • Slide 1
  • 本日のお話し
  • 1宇宙の大きさ(感)
  • Slide 4
  • ISSの高度
  • Slide 6
  • Hayabusa 2 mission
  • はやぶさ2の現在地(20161119現在)
  • Slide 9
  • Slide 10
  • Slide 11
  • アンドロメダ銀河(約250万光年)
  • Slide 13
  • Slide 14
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  • 2自己紹介 宇宙への道
  • 自己紹介
  • 30年の研究開発成果 日本は宇宙からの太陽観測の最先進国となる  
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  • 宇宙への多様な道
  • 地球大気の透過性
  • 高解像度を邪魔するもの 大気の揺らぎ
  • 空気のないところで観測する (例ハッブル宇宙望遠鏡)
  • 宇宙空間の環境
  • 飛翔体天文学の特徴
  • 3重要な 気球と観測ロケット
  • 観測機器の設計は 「トレードオフ」の連続
  • 気球やロケット実験の開発は若者が中心
  • 完成した気球搭載装置
  • 気球にはロマンがある
  • 飛行結果
  • 観測ロケットによる観測 (国立天文台実験)
  • 4「ひので」衛星の できるまで
  • 2006年打上「ひので」衛星 日本の独創技術と国際協力
  • 科学衛星は宇宙で自立するロボット
  • SOLAR-B搭載の宇宙用太陽望遠鏡の仕組
  • 可視光望遠鏡の特徴
  • 可視光望遠鏡と日本の技術開発
  • 光学ガラスのガンマ線照射試験
  • Slide 45
  • 部品洗浄とベーキングの重要性
  • Slide 47
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  • 国立天文台での望遠鏡の 組立調整作業
  • Slide 50
  • 太陽を可視光で観測する世界初の宇宙望遠鏡 太陽版ハッブル宇宙望遠鏡
  • 「ひので」 太陽軌道天文台
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  • 5「ひので」の捉えた 新しい太陽像
  • Slide 55
  • Slide 56
  • Slide 57
  • Slide 58
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  • 6Lessons-learned (学んだ事)
  • 科学衛星の開発工程(理想)
  • 飛翔体天文学理想と現実
  • 飛翔体プロジェクトは格闘技
  • プロジェクトマネージメントの問題
  • 7国立天文台 先端技術センター (2005~2012の8年間センター長であった)
  • Slide 66
  • 先端技術センター(ATC)設立趣旨
  • Slide 68
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  • ATCにおけるCLASP(ロケット搭載望遠鏡でライマンαの偏光を観測し太陽の磁場を調べる)の開発
  • Slide 71
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  • ハッブル望遠鏡を凌駕
  • Slide 77
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  • 超伝導デバイスの製造 ndash ALMA受信機の心臓部 ndash
  • 8ALMA望遠鏡の開発
  • 日米欧連携による宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による天文学の大進展
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  • 結合型干渉計
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  • 219台の世界最先端の受信機 をATCで内製
  • Band 4 8 10 カートリッジの製造 ndash 日本が分担した受信機 ndash
  • ALMA Band 8 Cartridge
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  • 量産スケジュールと実績 後半の追い込みで契約職員が活躍
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  • 特定技術職員
  • 技術伝承および新人教育
  • 30m超大型望遠鏡計画 (TMT)
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  • 鏡を継ぎ合わせて直径30mにする
  • 8天文学の応用技術
  • 産業界との密接な協力は 宇宙科学に不可欠
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  • 補償光学を用いた細胞の顕微鏡観察 基礎生物科学研究所と共同 細胞内の密度揺らぎを補正するまず手始めにタマネギ細胞蛍光ビーズ
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  • 国が推進する産業振興
  • 宇宙研での今後の取組と課題
  • 9まとめ
  • 宇宙科学者が挑むBig Questions
  • 世界中の宇宙科学研究者が これらの謎に挑戦
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  • まとめ