Embed Size (px)
Citation preview
やわらかマッドサイエンティスツのプログラミング入門
３つのダイアログから見た プログラミング
USP友の会会員 鳥海秀一
第2回 ジャクソン構造図の巻（後編）
自己紹介
名前：鳥海秀一
出身地：北海道
年齢：４７歳
業務で初めて使った言語はRPG
職業：SIerのBPとして、金融機関で働いてます
趣味：プログラミング言語の習得
USP友の会との関わり： 「アジャイルジャパン2009」の當仲講演から
本日の予定
1. USP友の会の紹介（１０分）
2. アイスブレイク（一言自己紹介）（３０分）
3. 前回の振り返り（３０分）
4. 講義１（先読み技法紹介）（３０分）
5. 演習（ ６０分ぐらい）
6. ライブプログラミング（３０分）
7. 次回の予告（２０分）
8. まとめ（２５分）
自己紹介をお願いします
下記の内容を含めてください
①お名前とご出身と現在お住まいの場所
②ご職業と今やっていること
③この勉強会に参加しようと思ったわけ
１分間でお願いします。
※注意 本勉強会が対象とする設計の規模
• ８０個の“=”を出力するプログラムより少しだけ大きいプログラムの設計方法
前回までの振り返り
1. プログラム入門でダイアログを 取り上げる理由について
2. 状態遷移図について
3. ジャクソン構造図について
プログラム入門でダイアログを取り上げる理由
プログラムの作成には事前の設計が大切
• 設計は二つのプロセスから構成される – 発散
– 収束
• 発散には概要把握と視点の切り替えが必要
• ダイアログは上記二つを提供する
３つのダイアログが提供する３つの視点
• 状態遷移図 状態遷移（計算モデル）
• ジャクソン構造図 データの構造
• データフローダイアグラム データの流れ
状態遷移図について
1. 計算モデルの一つ、有限オートマトンの図式表現
• 構成要素は状態、事象、状態遷移、（アクティビティ）
2. マルコフ性を意識することが重要
• 未来の状態は現在の状態と外部刺激だけで決まる
例題：整数判定の状態遷移図
S0 S1 S2 OK
NG
０～９
０～９
０～９
＋｜－ ＥＯＳ
その他 その他
その他
開始
詳しくは下記資料を参照
• スライドシェア http://www.slideshare.net/ryuichiueda/usp-9642558
• ＵＳＰマガジン Ｖｏｌ．３
ジャクソン構造図について
1. プログラムの入出力データ構造に着目
• 連接、選択、反復の３つの構成要素を用いた木構造でデータを表現
2. 表現力は状態遷移図と等価
3. 可読性の高いプログラムを導きやすい
入出力のデータ構造に着目
• プログラムは入力データを出力データに変換するものであり、両者の構造から影響を受ける
処理 入力データ 出力データ
ジャクソン構造図の基本構造
次の３つの基本構造でデータを記述する
• 連接
• 選択
• 反復
ジャクソン構造図による連接の表現
Aは、BとCとDからなる
A
B C D
ジャクソン構造図の連接の例
年月日
年 月 日
名前
姓 名
ジャクソン構造図による選択の表現
Aは、BかCかDである
A
B C D
ジャクソン構造図による選択の表現（補足１）
Aは、BかCか存在しないかである
A
B C -
ジャクソン構造図による選択の表現（補足２）
Aは、Bか存在しないかである
A
B -
A
B
（省略形）
ジャクソン構造図の選択の例
年金
国民 年金
厚生 年金
共済 年金
人
男 女
ジャクソン構造図による反復の表現
Aは、複数のBからなる
A
＊
B
ジャクソン構造図の反復の例
テキスト ファイル
＊
行
プロジェクト
＊
プロジェクトメンバー
ジャクソン構造図による整数表現
整数
○
＋ or －
１文字目 数字
０～９
符号
２文字目 以降数字群
絶対値
＊
０～９
表現力は状態遷移図と等価
言語階層 機械 文法 備考
タイプ０ チューリングマシン 句構造文法
タイプ１ 線形有界オートマトン 文脈依存文法
タイプ２ プッシュダウンオートマトン
文脈自由文法 プログラミング言語の階層
タイプ３ 有限オートマトン 正規文法
ジャクソン構造図と等価
状態遷移図と等価
可読性の高いプログラムを導きやすい
1. 木構造でデータを表現
• 木構造は人の思考となじみやすい
2. ３つの基本構造という制約
• 基本構造の制約が構造化された（上から下に読んでいける）プログラムを導く
木構造による表現
木構造（階層構造）は概念構造に相即的
• 複合概念、基本概念
• 上位概念、下位概念
例：整数という概念
整数は符号とそれに続く絶対値から構成される。符号はなくてもよいが、ある場合には「＋」か「ー」かの一文字からなり…
整数
○
＋ or －
１文字目 数字
０～９
符号
２文字目 以降数字群
絶対値
＊
０～９
補足：階層構造を導入した状態遷移図（ハレル図）
絶対値
符号
整数
0 ～ 9
+|-
0 ～ 9
0 ～ 9
EOS
３つの基本構造という制約
• きちんと構造を表現しないとプログラムが導けない
（整数のジャクソン構造図の悪例）
整数
＊
文字
○
符号 ○
数字
＋ or －
０～９
（補足）状態遷移図の威力
状態遷移図からなら先の悪例からもプログラムを導けます。
例：整数判定の状態遷移図
S0 S1 S2 OK
NG
０～９
０～９
０～９
＋｜－ ＥＯＳ
その他 その他
その他
開始
先の例を状態遷移表に変換
符号 (+ or -)
数字 (0～9)
終端 (EOS)
その他
S0 S1 S2 NG NG
S1 NG S2 NG NG
S2 NG S2 OK NG
状態遷移表の縦と横を入れ替える
S0 S1 S2
符号 (+ or -)
S1 NG NG
数字 (0～9)
S2 S2 S2
終端 (EOS)
NG NG OK
その他 NG NG NG
プログラムに変換すると
} else {
exit 1;
}
}
if ($s == 2) {
exit 0;
} else {
exit 1;
}
#!/usr/bin/perl
@c = split //, shift;
$s = 0;
for $c (@c) {
if ($c eq '+' || $c eq '-') {
if ($s == 0) {
$s = 1;
} else {
exit 1;
}
} elsif ('0' le $c && $c le '9') {
if ($s == 0 || $s1 == 1 || $s == 2) {
$s = 2;
}
ジャクソン構造図による整数表現
整数
○
＋ or －
１文字目 数字
０～９
符号
２文字目 以降数字群
絶対値
＊
０～９
先のジャクソン構造図から導かれたプログラム
while ('0' le $c && $c le '9') {
$c = shift @c;
}
if ($c eq '') {
exit 0;
} else {
exit 1;
}
#!/usr/bin/perl
@c = split //, shift;
$c = shift @c;
if ($c eq '+' || $c eq '-') {
$c = shift @c;
}
if ('0' le $c && $c le '9') {
$c = shift @c;
} else {
exit 1;
}
前回の宿題
1. 身の回りのもので位置を利用して情報を表現しているものを探してみよう
2. 浮動小数点数のジャクソン構造図をプログラムに変換してみよう
3. 浮動小数点数の状態遷移図からgoto
プログラムを書いたのち、発見的手法でgotoを取り除いてみよう
宿題２のジャクソン構造図
浮動
小数点数
符号
○ ＋ or －
仮数部
○ 整数部付 絶対値
○ 小数部のみ 絶対値
整数部
○ 省略可能 小数部
１文字目 数字
２文字目 以降数字群
０～９
＊ ０～９
小数点
小数
＊ ０～９
・
小数部
小数点
小数
・
１文字目 数字
２文字目 以降数字群
０～９
＊ ０～９
絶対値
指数部
○ 省略可能 指数部
指数文字
小数部
Ｅ or ｅ
指数
符号
○ ＋ or －
整数部
１文字目 数字
２文字目 以降数字群
０～９
＊ ０～９
宿題２の解答例
} elsif ($c eq '.') {
$c = shift @c;
if ('0' le $c && $c le '9') {
$c = shift @c;
while ('0' le $c && $c le '9') {
$c = shift @c;
}
} else {
exit 1;
}
} else {
exit 1;
}
if ($c eq 'E' || $c eq 'e') { $c = shift @c; if ($c eq '+' || $c eq '-') { $c = shift @c; } if ('0' le $c && $c le '9') { $c = shift @c; while ('0' le $c && $c le '9') { $c = shift @c; } } else { exit 1; } } if ($c eq '') { exit 0; } else { exit 1; }
#!/usr/bin/perl
@c = split //, shift;
$c = shift @c;
if ($c eq '+' || $c eq '-') {
$c = shift @c;
}
if ('0' le $c && $c le '9') {
$c = shift @c;
while ('0' le $c && $c le '9') {
$c = shift @c;
}
if ($c eq '.') {
$c = shift @c;
}
ここで休憩です
ジャクソン構造図とは
データの構造の図示したもの
では、データの構造とは？
例題１
下記の課題が与えられたときのテキスファイルの構造をジャクソン構造図で示せ
問題１．テキストファイルの行数を求めよ。
問題２．テキストファイルのバイト数を求めよ。
問題３．テキストファイルの文字数を求めよ。
例題1：解答例
テキスト ファイル
＊ 行
テキスト ファイル
＊ バイト
テキスト ファイル
＊ 文字
解答例１ 解答例２ 解答例３
プログラムに変換すると
#!/usr/bin/perl
$count = 0;
while (defined(getc)) {
$count++;
}
print $count, "¥n";
#!/usr/bin/perl
binmode STDIN, ":utf8";
$count = 0;
while (defined(getc)) {
$count++;
}
print $count, "¥n";
#!/usr/bin/perl
$count = 0;
while (<STDIN>) {
$count++;
}
print $count, "¥n";
解答例２ 解答例３ 解答例１
結論１
データ構造はプログラムの目的により 変化する
例題２
テキストファイルの行数を求めたいとき、 テキストファイルの構造をジャクソン構造図で 示せ
例題２：解答例
テキスト ファイル
＊
行
テキスト ファイル
＊
文字
○
改行以外の文字
○
改行文字
テキスト ファイル
＊
行
行文字列
改行文字
＊
改行以外の文字
解答例１ 解答例２ 解答例３
プログラムに変換すると
#!/usr/bin/perl
binmode STDIN, ":utf8";
$count = 0;
while (defined($char = getc)) {
if ($char eq "¥n") {
$count++;
}
}
print $count, "¥n";
#!/usr/bin/perl
binmode STDIN, ":utf8";
$count = 0;
while () {
while (defined($char = getc) && $char ne "¥n") {
}
last if (! defined($char));
$count++;
}
print $count, "¥n";
#!/usr/bin/perl
$count = 0;
while (<STDIN>) {
$count++;
}
print $count, "¥n";
問題２ 問題３ 解答例１
結論２
データ構造は問題の解釈により変化する
結論３
データの構造とはデータの解釈の仕方である。
「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。 」（by ニーチェ）
「われわれは事象を利用するために真理を『発明』する」（by ベルクソン）
実用的に言い直すと
データの解釈の仕方により、プログラミングが簡単になったり、難しくなったりする。
プログラミングが簡単になる構造を見つけ出すのがジャクソン構造図を描く理由となる。
入力データ構造と出力データ構造の要素が良く対応する構造図がよいとされる。
例題３
「uniq –c」と同じような動きをするプログラ
ムを記述せよ。ただし、入力は標準入力のみとする。
例題３のプログラムの働き
4 a
3 b
a
a
a
a
b
b
b
出力データ 入力データ
例題３の拡張状態遷移図による表現
S0 S1 S2
行の取得成功 / カウンタ= 1
保存行に取得した行を保存 行の取得成功 ＆ 保存行と取得行が一致 / カウンタ++
行の取得成功 ＆ 保存行と取得行業が不一致 / print カウンタ, 保存行 カウンタ= 1 保存行に取得した行を保存
行の取得失敗 / print カウンタ, 保存行
行の取得失敗 / －
状態遷移図をプログラムに変換すると
#!/usr/bin/perl
$line = <STDIN>;
if (not $line) {
exit;
}
$count = 1;
$old_line = $line;
while ($line = <STDIN>) {
if ($line ne $old_line) {
print "$count¥t$old_line";
$count = 1;
$old_line = $line;
} else {
$count++;
}
}
print "$count¥t$old_line";
プログラムから導かれるデータ構造の ジャクソン構造図による表現
テキスト ファイル
○
内容なし
最初の行
間の行
＊
行
○
内容あり
最後の行
○ 非ブレイク行
○
ブレイク行
直前の行と 同じ行
直前の行と 異なる行
テキスト ファイル
＊
行
同一行の数
同一行
入力データ 出力データ
もっと良い構造はないか…
あります。
但し、プログラムで表現するには先読み技法が必要です。
テキスト ファイル
＊
同一行
＊
同一行 グループ
テキスト ファイル
＊
行
同一行の数
同一行
出力データ 入力データ
先読み技法とは
ファイル処理に用いる技法で、処理対象となるデータの１つ先のデータを読む技法
ファイルの 内容の一部
ファイル
1.読み出し
2.注目
ファイルの 内容の一部
ファイル
内容の一部のコピー
1.読み出し 3. 読み出し
2.コピー
4.注目
5.とぎどき注目
通常のファイル処理 先読み技法を使った
ファイル処理
例：標準入力の行数を求めるプログラム
#!/usr/bin/perl
$count = 0;
$next_line = <STDIN>;
$line = $next_line;
while ($line) {
$next_line = <STDIN>;
$count++;
$line = $next_line;
}
print $count, "¥n";
#!/usr/bin/perl
$count = 0;
while (<STDIN>) {
$count++;
}
print $count, "¥n";
先読み技法を使ったファイル処理 通常のファイル処理
例題3のプログラムを記述
#!/usr/bin/perl
$next_line = <STDIN>;
while ($line = $next_line) {
$count = 0;
while ($line eq $next_line) {
$count++;
$next_line = <STDIN>
}
print "$count¥t$line";
}
#!/usr/bin/perl $line = <STDIN>; if (not $line) { exit; } $count = 1; $old_line = $line; while ($line = <STDIN>) { if ($line ne $old_line) { print "$count¥t$old_line"; $count = 1; $old_line = $line; } else { $count++; } } print "$count¥t$old_line";
先読み技法を使ったファイル処理 通常のファイル処理
演習問題
print "小計：$count2¥t$old_col1 $old_col2¥n";
$count1 += $count2;
$count2 = 1;
$old_col2 = $col2;
if ($col1 ne $old_col1) {
print "大計：$count1¥t$old_col1¥n";
$count1 = 0;
$old_col1 = $col1;
}
} else {
$count2++;
}
}
print "小計：$count2¥t$old_col1 $old_col2¥n";
$count1 += $count2;
print "大計：$count1¥t$old_col1¥n";
#!/usr/bin/perl
$line = <STDIN>;
if (not $line) {
exit;
}
($col1, $col2) = split(/¥s/, $line);
$count1 = 0;
$count2 = 1;
$old_col1 = $col1;
$old_col2 = $col2;
while ($line = <STDIN>) {
($col1, $col2) = split(/¥s/, $line);
if ($col1 ne $old_col1 || $col2 ne $old_col2) {
下記のプログラムを先読み技法を使用して書き直せ。
演習問題のプログラムの働き
小計：2 a a
小計：2 a b
大計：4 a
小計：3 b b
大計：3 b
a a
a a
a b
a b
b b
b b
b b
出力データ 入力データ
ヒント
入力データのジャクソン構造は下記の通り。
テキスト ファイル
＊
カラム１，２ 同一行グループ
＊
カラム１ 同一行グループ
＊
カラム１，２ 同一行
ここで休憩です
演習問題解答例
print "小計：$count2¥t$col1 $col2¥n";
$count1 += $count2;
}
print "大計：$count1¥t$col1¥n";
}
#!/usr/bin/perl
if ($line = <STDIN>) {
($next_col1, $next_col2) = split(/¥s/, $line);
}
while ($line) {
$col1 = $next_col1;
$count1 = 0;
while ($line && $col1 eq $next_col1) {
$col2 = $next_col2;
$count2 = 0;
while ($line && $col1 eq $next_col1
&& $col2 eq $next_col2) {
$count2++;
if ($line = <STDIN>) {
($next_col1, $next_col2)
= split(/¥s/, $line)
}
}
先読み技法ライブプログラミング
a b c
1 2 3
" "" """
"a" "b c"
あ¥nい¥n う え
_ _ _
a,b,c
1,2,3
"""","""""",""""""""
"""a""","""b","c"""
"あ
い
",う,え
,,
~
Ｅｘｃｅｌ互換のＣＳＶパーサーを記述する
出力データ 入力データ
CSVパーサーの拡張状態遷移図
S0
S1
S2
S3
S4
NG
改行|カンマ ／出力
他／バッファ
他／バッファ
改行|カンマ ／出力
他／バッファ
ダブルクォート ／何もしない
他／バッファ
ダブルクォート ／何もしない
ダブルクォート／エラー
他／エラー
ダブルクォート／何もしない
ダブルクォート／バッファ
改行|カンマ／出力
OK
ＥＯＦ ／何もしない
CSVファイルのジャクソン構造図
ＣＳＶ ファイル
項目本体
＊
項目
区切り文字
○
カンマ ○
改行 ○
通常文字 のみ項目
○
空項目 ○
特殊文字含 項目
ダブルクォーテーション
特殊文字含 項目本体
ダブルクォーテーション
－
○
通常文字 ○
ダブルクォーテーション
○
カンマ
○
改行
＊
通常文字
＊
特殊文字 含文字
先読み技法を使ったＥｘｃｅｌ互換の ＣＳＶパーサープログラム
elif ch == '"' and nch == '"': buffer += ch nch = chs.next() elif ch == '"': sys.exit(1) elif ch == ",": buffer += "," elif ch == "¥n": buffer += "¥¥n" else: buffer += ch ch = nch else: while ch and ch != "," and ch != "¥n": if ch == '"': sys.exit(1) buffer += ch ch = chs.next() if ch == ",": print buffer.encode("utf_8"), ch = chs.next() elif ch == "¥n": print buffer.encode("utf_8") ch = chs.next()
#!/usr/bin/python import os, sys def genchs(): for line in sys.stdin: line = line.decode("utf_8") for ch in line: yield ch yield "" if __name__ == "__main__": chs = genchs() ch = chs.next() while ch: buffer = "" if ch == "," or ch == "¥n": buffer += "_" elif ch == '"': ch = chs.next() while ch: nch = chs.next() if ch == '"' and (nch == "," or nch == "¥n"): ch = nch break
ここで休憩です
まとめ１
1. データの解釈の仕方によりプログラミングは簡単になったり、難しくなったりする。
2. ジャクソン構造図はプログラミングを簡単にする構造を導き出すのに役立つ。
3. 先読み技法はジャクソン法で導き出した構造をプログラム上で表現するのに役立つ。
ジャクソン法の長所
1. 状態をプログラム上で表現する方法には2種類ある
• プログラムの実行位置（テキスト指標）
• 変数
2. ジャクソン法は、前者を方法を重視する。
このため、可読性の高いプログラムを導きやすい。
ジャクソン法の短所について
1. ジャクソン法は前者の方法を重視しているため、プログラムから柔軟性は失われる。
2. 実行時に動きを変更するなどの柔軟性をプログラムに持たせたい場合は、ほかの方法を採用する必要がある。
テーブル駆動方式の紹介
実行時にプログラムの動きを変更できる柔軟性の高いプログラムを作成できる技法。
但し、可読性は最低。
プログラムの自動生成に向いている。
例１：整数判定の状態遷移図
S0 S1 S2 OK
NG
０～９
０～９
０～９
＋｜－ ＥＯＳ
その他 その他
その他
開始
先の例を状態遷移表に変換
その他 符号 (+ or -)
数字 (0～9)
終端 (EOS)
S0 NG S1 S2 NG
S1 NG NG S2 NG
S2 NG NG S2 OK
状態遷移表からプログラムを作成
#!/usr/bin/perl
@c = split //, shift;
@state_table = (
[-2, 1, 2, -2],
[-2, -2, 2, -2],
[-2, -2, 2, -1]
);
@char_num{('+', '-', '0'..'9', '')} = ((1)x2, (2)x10, 3);
$s = 0;
while ($s >= 0) {
$s = $state_table[$s][$char_num{shift @c} || 0];
}
exit($s == -2);
例２：浮動小数点数判定の状態遷移図
S0 S1 S2 S4 S5 S6
S3
＋｜－ ０～９
S7
０～９
・
Ｅ｜ｅ
０～９
Ｅ｜ｅ
０～９
・
・ OK
ＥＯＳ
ＥＯＳ
０～９
０～９
＋｜－
０～９
０～９
NG
その他
ＥＯＳ
開始
先の例を状態遷移表に変換
その他 符号 (+ or -)
数字 (0～9)
小数点 (.)
指数記号 (E or e)
終端 (EOS)
S0 NG S1 S2 S3 NG NG
S1 NG NG S2 S3 NG NG
S2 NG NG S2 S4 S5 OK
S3 NG NG S4 NG NG NG
S4 NG NG S4 NG S5 OK
S5 NG S6 S7 NG NG NG
S6 NG NG S7 NG NG NG
S7 NG NG S7 NG NG OK
状態遷移表からプログラムを作成
#!/usr/bin/perl
@c = split //, shift;
@state_table = (
[-2, 1, 2, 3, -2, -2],
[-2, -2, 2, 3, -2, -2],
[-2, -2, 2, 4, 5, -1],
[-2, -2, 4, -2, -2, -2],
[-2, -2, 4, -2, 5, -1],
[-2, 6, 7, -2, -2, -2],
[-2, -2, 7, -2, -2, -2],
[-2, -2, 7, -2, -2, -1]
);
@char_num{('+', '-', '0'..'9', '.', 'E', 'e', '')} = ((1)x2, (2)x10, 3, (4)x2, 5);
$s = 0;
while ($s >= 0) {
$s = $state_table[$s][$char_num{shift @c} || 0];
}
exit($s == -2);
まとめ２
1. 状態遷移図はジャクソン構造図と違い、コーディングスタイルまで規定しない。
2. 状態遷移図はその分応用範囲が広いと 言える。
参考文献
• M.A.ジャクソン(1985/02) 『構造的プログラム設計の原理』 (日本コンピュータ協会)
• 若林糧(2000/03) 『C言語プログラミング演習』 (日経BP社) • 飯泉 純子、大槻 繁(2011/08) 『ずっと受けたかったソフトウェア設計の授業』 (翔泳社)
• E.W.ダイクストラ、C.A.R.ホーア、O.J.ダール(1975/05) 『構造化プログラミング』 (サイエンス社)
• 野口健一郎(1990/05) 『ソフトウェアの論理的設計法』 (共立出版) • 玉井哲雄(2004/03) 『ソフトウェア工学の基礎』 (岩波書店) • スティーブ マコネル(2005/03) 『Code Complete第2版〈上〉』 (日経BPソフトプレス)
• きだあきら(1995/05) 「特集 Cプログラム設計技法」 『C MAGAZIN 1993 MAY Vol.5 No.5』 (ソフトバンク )
ご清聴ありがとうございました
次回で最終回です。
言語はシェルを使用します。
