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一般小児科医における 発達障害児診療の勧め
第25回
日本外来小児科学会年次集会ランチョンセミナー7
東北大学川内北キャンパス講義棟
2015年8月22日(土)
前多小児科クリニック
前多 治雄
北東北発達障害治療待機期間
青森県 ○○クリニック 3ヶ月
岩手県 岩手県立○○センター 3ヶ月
いわて○○ケアセンター 6ヶ月
○○○○療育園 3ヶ月
前多小児科クリニック 2ヶ月
秋田県 秋田県立○○○○センター 3ヶ月
待機期間が長くなる理由 長期間治療を続ける必要がある
多動―衝動性
小学校高学年頃軽快することが多い
不注意
大人まで症状が続くことが多い
→大人のADHD関係の本がたくさん出版されている
治療が必要な注意欠陥多動症、自閉症スペクトラムの子どもたちが増加している
子どもを取り巻く環境要因の悪化
少子化、外遊びの減少、ゲーム・テレビ
予約について
発達障害、不登校等の患児の予約は1時間に4名。従って7(時間)×4(名)=28名
新患は午前、午後の最後に1名ずつ
一般小児(発熱、咳等)、予防接種、乳児健診はその合間に診る
平均すれば1日40名~50名位
それでも午前の外来終了は午後1時を過ぎ、午後の外来終了は6時30分頃
当院の予約状況
当院受診時に準備していただく資料
1.相談したいこと・発育歴
相談したいこと、発育歴(出生時のこと、乳児期の首のすわり時期などの発達経過、保育園・幼稚園時期のことなど)、保護者の方からみたお子様の様子など、来院時、問診票に記載していただきます。メモなどを準備しておくと、記載しやすいです。
2.幼稚園・保育園・学校の先生からのお手紙
様式はどのような物でもかまいません。日頃の児の様子がわかるようにお願いします。
3.幼稚園・保育園時代の連絡帳
4.お子様が小学生以上の年齢の場合、小学1年からの通信票
5.お子様が描いた絵
6.お子様が小学生以上の年齢の場合、お子様が書いた作文、日記
7.その他
紹介状、相談機関で受けた知能検査や心理検査の結果
臨床心理士さんについて
発達検査、知能検査は発達障害診療に必要不可欠である。
非常勤の臨床心理士
・地元の大学に心理学教室がある場合、お
願いできる可能性がある
・校医をしている小、中学校のスクールカ
ウンセラーさんに聞いてみる
発達検査・知能検査(Ⅰ)
幼児期
発達検査 津守式乳幼児精神発達検査 0~7歳(約20分)
日本版デンバー式発達スクリーニング検査 乳幼児(約20分)
新版K式発達検査 0~14歳(約30分)
知能検査 田中ビネー式知能検査Ⅴ 2歳~成人(約60分)
WPPSI知能診断検査 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月(約60分)
K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー
2歳6ヶ月~12歳11ヶ月(約60分)
知能検査(Ⅱ)
学童 WISC-Ⅲ(Wechsler Intelligence Scale for Children-Ⅲ)
5歳0ヶ月~16歳11ヶ月(約70分)
WISC-Ⅳ(Wechsler Intelligence Scale for Children-Ⅳ)
5歳0ヶ月~16歳11ヶ月(約70分)
検査時の気分で効果が左右される
短い間隔で繰り返すと学習効果で実際より良い結果となるので最低1年以上間隔を空ける。できれば2年。
D283 発達および知能検査 D285 認知機能検査その他心理検査
診療点数 1 操作が容易なもの 80点/回 2 操作が複雑なもの 280点/回 3 操作と処理が極めて複雑なもの 450点/回
算定要件 • 1には、津森式乳幼児精神発達検査、日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査、遠城寺式乳幼児分析的発達検査、デンバー式発達スクリーニング、DAMグットイナフ人物画知能検査、フロスティッグ視知覚発達検査、平仮名音読検査などを含む
• 2には、新版K式発達検査、WPPSI知能検査、田中ビネー知能検査Ⅴなどを含む
• 3にはWISC-Ⅲ、Ⅳ知能検査、ITPA、K-ABC、K-ABCⅡ、DN-CAS認知評価システム、CARS小児自閉症評定尺度などを含む
小児特定疾患カウンセリング料
診療点数 月の1回目 500点 月の2回目 400点 (2年間を限度として、月2回まで算定)
対象患者 気分障害、神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害、生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群、心理的発達の障害、小児期または青年期に通常発症する行動および情緒の障害の15歳未満の患者
算定要件 • 小児科を標榜する保険医療機関の小児科医が、療養上必要なカウンセリングを行った場合に算定できる
• 医療機関の屋内において禁煙が禁止されていること
心身医学療法
診療点数 初診時 110点 再診時 80点/回 (外来患者では、初診日から4週間以内に行われる場合は週2回を、4週間超えに行われる場合は週1回を限度として算定)
対象患者 心身症の患者、拒食症、過呼吸症候群、多汗症、チック、吃音等
算定要件 • 医師が心身医学療法(行動療法、カウンセリングなどを含む)を行った場合に算定できる
• 初診時には、診療時間が30分を超えた場合に限り算定できる
• 通院。在宅精神療法を算定している患者では、算定できない
通院・在宅精神療法 診療点数 診療時間30分以上の場合 400点/回
診療時間30分未満の場合 330点/回 20歳未満の患者に行った場合、所定点数に350点/回を加算。 (初診日から1年以内に限る)
対象患者 統合失調症、躁うつ病、神経症、中毒性精神障害、心因反応、児童・思春期精神疾患(発達障害を含む)、パーソナリティ障害、精神症状を伴う脳器質性障害などの患者
算定要件 • 精神科を標榜する保険医療機関の精神科医が、危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言などの働きかけを継続的に行った場合に算定できる
• 診療時間が5分を超えた場合に算定できる
特別児童扶養手当 特別児童扶養手当とは 知的障害、または身体障害、精神障害(法令で認める程度以上)の状態にある20歳未満の児童について、児童の福祉の増進を図ることを目的として手当を支給するものです。
対象者
基本的にはIQ50以下の知的障害の方(地域によりIQ70まで)。
発達障害(AD/HD、広汎性発達障害を含む)などの場合も、医師から特別に必要と認められれば、受け取れる可能性があります。そのためには診断書が必要になりますので、主治医の先生に相談してみましょう。
支給
総務省が作成する全国消費者物価指数によって、年度ごとに改正されます。
平成27年度の月額は、1級51,100円、2級34,030円
原則として毎年4月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。
申請について
申請先は各市町村の健康福祉課(保健福祉センター)になります。
支給されたお金は、子どもの為に使うのが基本です。お子さんがこの手当てを受けられる対象であるかどうかは、各市町村の窓口でご相談ください。
申請する診断書用紙は各市町村窓口でお受け取りください。
診断書の作成は医師が行います(診断書料は5400円です)。
自立支援医療(精神通院)制度(Ⅰ)
自立支援医療(精神通院)制度とは
一定の精神・神経疾患のために医療機関へ通院する場合に、医療費の自己負担分の一部を公費で負担する制度です。
対象者
統合失調症、躁うつ病・うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害もしくは薬物関連障害(依存症等)の方
情動及び行動の障害、不安及び不穏状態で、集中・継続的な医療を要する(重度かつ継続)として精神医療に一定の経験を有する医師が判断した方
ADHD、広汎性発達障害の人も利用できる場合があります
利用方法
申請の窓口は市町村の福祉担当課です。
必要書類をそろえて市町村窓口に提出し、受理された日からの適用になります。
あらかじめ指定した医療機関、薬局等で利用できます。
有効期限は1年間です。有効期限の3か月前から更新の申請ができます。
自立支援医療(精神通院)制度(Ⅱ)
生活保護世帯 低所得1 低所得2 中間所得層1 中間所得層2 一定所得
0円 2,500円 5,000円
医療保険の自己負担限度額 公費負担の対象外
重度かつ継続
5,000円 10,000円 20,000円
必要書類 精神通院医療用診断書(医師が作成します。診断書料は3240円です)
申請書(市町村窓口にあります)
健康保険証の写し
※世帯(申請者と同一の医療保険の加入者分)の所得を確認できる書類が必要になる場合があります。詳しくは市町村窓口にお問い合わせください。
利用者負担 原則として医療費の1割が自己負担となります。
世帯の所得状況に応じて、月度との自己負担上限額が定められます。
低所得1:市町村民税非課税世帯で本人(18歳未満の場合は保護者)の収入が1年間で80万円以下
低所得2:市町村民税非課税世帯で本人(18歳未満の場合は保護者)の収入が1年間で80万円を超える
中間所得層1:市町村民税課税で所得割額が33,000円未満
中間所得層2:市町村民税課税で所得割額が236,000円未満の世帯
DSM-5 注意欠陥多動症(ADHD)診断基準
A. (1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動性ー衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの:
不注意:(1)以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6か月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである:
注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない、青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。
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(a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)
(b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である(例:講義、会話、または長時間の読書に集中に集中し続ける事が難しい)
(c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないようにみえる(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)
(e)課題や活動を順序だてることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりがない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)
(f)精神的努力の持続を要する課題(学業や宿題、青年期後期および成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う
(g)課題や活動に必要なもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう
(h)しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう
(i)しばしば日々の活動(用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい
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多動性および衝動性:(2)以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6か月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達基準に相応せず、社会的、学業的または職業的な活動に対し直接にマイナスの影響を与えるもの。
注:それらの症状は、単なる反抗的態度、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。
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(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、または椅子の上でもじもじする
(b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
(d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない
(e)しばしば“じっとしていない”、または”エンジンで動かされているように”行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる;他の人達には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)
(f)しばしばしゃべり過ぎる
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう(例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない)
(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)
(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)
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B.不注意または多動性-衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。
C.不注意または多動性ー衝動性の症状のうちいくつかがが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する
D.これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある
E.その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。
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DSM-5 自閉症スペクトラム(ASD)診断基準
A:多くの状況において、社会的なコミュニケーションや社会的相互性において、持続的な欠陥があり、現在または過去において、下記のような事柄で明らかになる
1 社会的情緒的相互性、連続性の欠陥、例えば社会的接近や会話のやり取りが通常でない:興味、感情、感動を共感しにくい:社会的相互性を示したり反応できない
2 例えばあまり統合されていない言語あるいは非言語コミュニケーションによる、社会的相互関係、連続性における欠陥:アイコンタクト、ボディランゲージの異常あるいは理解力やジェスチャー使用の欠如:顔の表情や非言語的コミュニケーションの不足
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3 例えば、様々な社会的状況にふさわしい行動に調整することの困難さによる、関係性、連続性を発展させ、維持し、理解することの欠陥:創造的な行動を共有したり、友人を作ることの困難さ:同年齢児者への興味の欠如
現在の重篤性を特定せよ:
社会的コミュニケーション、限定され反復する行動様式に、重篤性は基づく
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B:限定され、反復する、行動、興味、活動性の様式であり、現在あるいは過去における、以下の少なくとも2つで明らかになる(例は実例的なもので、研究し尽くされたものではない)
1 常同的で反復的な話しぶり、運動動作、物の使用、会話 (例:単純な運動の常同性、オモチャを並べる、物を叩く、反響語、特定の語句)
2 同一性への固執、頑固な日常性への固執、言語的あるいは非言語的な行動における儀式的様式(例:一寸した変化への極度な苦痛、移行への困難、頑なな考え方、挨拶儀式、同じ道を通る、毎日同じものを食べる)
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3 強さや焦点性異常である、極めて限定され、固定された興味(例:普通でない物事への強い愛着あるいは没頭、過度に限定されあるいは根気強い興味)
4 感覚入力への敏感性または鈍感性、あるいは環境の感覚状況における通常でない興味(例:痛みや温度への明らかな無関心、特異的な音や感触への逆の反応、物への過剰な匂い嗅ぎや接触、光や運動への視覚的魅了される)
現在の重篤性を特定せよ:
社会的コミュニケーション、限定され反復する行動様式に、重篤性は基づく
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C:症状は必ず幼児期に出現する(社会的要求が能力の限界を上回るまでは全てが出現しないかもしれないし、学習段階で遮蔽されるかもしれない7)
D:症状は、社会的、職業的、あるいは他の重要な分野で、臨床的に明らかな障害として生じる
E:これらの障害は、知的障害、全般的な発達の遅れでは説明できない
知的障害とASDは同時に起こりやすい
ASD、知的障害、社会コミュニケーション障害の併存診断は期待される一般的発達水準より低い際になされるべきである
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独断と偏見によるメチルフェニデート(コンサータ)とアトモキセチン(ストラテラ)の使い分け(Ⅰ)
メチルフェニデート(コンサータ) よく効く 飲んだ日から効果が出る(別人のようだ)
12時間しか効かない 夕食後は自己コントロールが低下する
12時間の間食欲がなくなる 昼食は半分くらいしか食べられない →担任に連絡する モサプリド(ガスモチン)がある程度有効
てんかん発作を誘発 実際は一例も経験していない
チック・トゥレット症候群の憎悪 アリピプラゾール(エビリファイ) 3~6g/日 リスペリドン(リスパダール) 0.5~3g/日
独断と偏見によるメチルフェニデート(コンサータ)とアトモキセチン(ストラテラ)の使い分け(Ⅱ)
アトモキセチン(ストラテラ) 効果発現まで4週間以上かかる (はじめの1か月間は漸増期)
一日中効いている (朝の行動が違ってくる、夕食後の学習に効果)
副作用が少ない
独断と偏見によるメチルフェニデート(コンサータ)とアトモキセチン(ストラテラ)の使い分け(Ⅲ)
メチルフェニデート(コンサータ)の適応 学校での乱暴狼藉が甚だしい 母親も担任教師も疲労困憊しているとき 多動・衝動型(男の子)
アトモキセチン(ストラテラ)の適応 不注意型(女の子) 保護者が薬物治療に積極的でない てんかん、チック、トゥレット症候群を併存しているとき
家庭勉強が必要な例 カプセルが飲めないとき ストラテラは内用液剤がある
独断と偏見によるメチルフェニデート(コンサータ)とアトモキセチン(ストラテラ)の使い分け(Ⅳ)
メチルフェニデート、アトモキセチンの併用療法 アメリカでは広く行われている メチルフェニデートで治療していたが小学校高学年、中学生となり夕食後の家庭勉強が必要となってきたとき
アトモキセチンで治療していたが、学校での自己コントロールが十分でないとき
学校との連携について
☆学校への情報提供(文書料)について☆
学校への手紙、返事が必要なときは、診療情報作成費用
として、1000円かかりますので、ご了承下さい。
前多小児科クリニック 平成 25年 7月 11日
なぜ治療が必要なADHD児が増加したのか
前頭前野の働き 1.眼窩前頭前野
感情や欲望をコントロールし不適切な行動を抑制して、危険やトラブルを回避する
2.背外側前頭前野 目的を持った行動を試行錯誤しながらやり遂げる遂行機能にかかわる
3.腹内側前頭前野 ぬくもりのある他者への関心や配慮、共感性や社会性の能力に関与。短期的な利益だけでなく長期的な利益を考えて行動する。報酬系に関与。
1:眼窩前頭前野 2:背外側前頭前野 3:腹内側前頭前野
前頭前野の三つの領域
ADHDと前頭前野
ADHDは前頭前野の機能不全が関与していると考えられている
(Castellanos FX,et al.:Arch Gen Psychiatry53:607-616,1996)
「こどもの健康週間」市民公開講座のためのポスター
講演
「脳を知る・脳を育む~子どもの発達とメディア環境~」
川島隆太(東北大学未来科学技術共同センター教授)
講演概要:
私はメディアが前頭葉の活動にどのような影響を与えるか調べてみました。両手の指先を使う子ども達の代表的な遊びとしてテレビゲームをあげることができます。テレビゲームは、多彩な視覚的情報を基にして、両手の手指をたくさん動かす遊びであり、ゲームを行っている子どもたちの内観としても、楽しい感覚が非常に強いものであるから、従来の脳科学の常識からは最も脳を刺激し活性化する遊びであると考えられてきました。実際に機能的MRIを用いてロールプレイングゲーム中の脳活動を測定すると、左右脳の視聴覚情報処理にかかわる領域と運動領域に強い活性化が認められました。しかし前頭前野の血流は逆に低下してしまう傾向があることを見つけました。つまりゲームをしている時には、一番大切な前頭前野がほとんど使われていないのです。-------
注釈:前頭前野は額の後ろにある脳で、人間で発達した脳です。この前頭前野は、さまざまな大切な仕事をしています。重要な働きの一つは「行動の抑制」です。「やってはいけないことをしない」という気持ちは、前頭前野から出てきます。
実際に機能的MRIを用いてロールプレイングゲーム中の脳活動を測定すると、左右脳の視聴覚情報処理にかかわる領域と運動領域に強い活性化が認められました。しかし前頭前野の血流は逆に低下してしまう傾向があることを見つけました。つまりゲームをしている時には、一番大切な前頭前野がほとんど使われていないのです。
文章を書く脳・ゲームする脳
宿題をする ゲームをする
ゲーム依存症の脳
ゲーム依存の若者18名とそうでない若者18名を対象に脳の画像解析をした結果、眼窩前頭前野、前帯状回等の大脳皮質で神経ネットワークの低下が認められた(麻薬中毒患者の脳に起きていることと同じ)
(Lin et al., PLosOne,7(1),2012)
ゲーム依存症では脳の器質的な変化が起こっている
神経ネットワークが変質するという器質的な変化が起こっている。
(ゲームにより脳の機能的な異常が起こることは以前から報告されている)
ゲーム依存症になるとADHDのように、前頭前野の機能不全となる可能性が高い
寝屋川調査 (メディアの利用状況と認知などへの影響
に関する調査報告書 2005年)
魚住絹代先生(家庭教育サポーター 寝屋川市スーパーバイザー)
寝屋川市教育委員会、長崎県教育庁、東京都の中学校
(対象4762人 有効回答数3555人) この調査は寝屋川市や長崎で起きた無
残な事件の再発を防ぐために行われた
ゲーム時間と多動傾向(本人回答)
ゲーム、ネット利用と多動傾向(保護者回答)
ゲーム、ネット、マンガに費やす時間と自閉傾向
なぜ治療が必要なADHD、ASD児が増加したか
遺伝子の発現は環境との相互的作用に影響される。
この20年間に治療が必要なほどに問題を示すADHD、ASDの子どもが増えているのは、環境的な要因が大きく作用していることになる。
環境要因は少子化、外遊びの減少等があるが、ゲーム・テレビ(メディア)の影響が最も大きいと思われる。
ゲーム依存症は第5の発達障害である。 (虐待は第4の発達障害である
杉山 登志郎先生)
おわりに
発達障害の子どもたちを早期治療介入することで二次障害を防止し、その子どもの可能性をゆがめられることなく伸ばすことが可能となる。しかし現状は発達障害を診る医療機関が少ない。小児科医に発達障害児治療参入を期待したい。
子どもたちをゲーム、テレビ等のメディアから守ることで貴重な時間を浪費するだけでなく脳の前頭前野の発達を阻害しないようにしなければならない。
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