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花の縁 02-02-12

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12)クララ=苦参 クララはマメ科の多年草で、北海道を除く日本各地の山野にごく普通に見られる。

高さは 50~150cm ほどで、互生する葉は奇数羽状複葉で、枝葉全体に短毛が生える。

初夏、茎頂または枝先に、小さな淡い緑黄色の蝶形花を総状に多数つける。豆果は

長さ7~8cm で、4~5個の種子を含んでいる。和名の由来はクララグサ(眩草)の

略で、根汁をなめると目が眩むほど苦いことによる。別称としてキツネノササゲ、

コージコロシ、マイリグサ、クサエンジュ、マトリグサなどともいわれている。学名

は『Sophora flavescens』で、属名はアラビア語の植物名をリンネが転用したもので、

種小辞は黄色っぽいという意味。中国での呼称は『苦参』である。

クララは以前はどこにでもある雑草だったが、農業の変化や、不動産の乱開発、

観光開発による草原環境の変化、さらには河川の改修に伴う河川敷の変化などで、

クララの自生地も年々減少の一途をたどってきた。このためクララの花芽を食草と

している『オオルリシジミ』も絶滅危惧種に指定されるほど少なくなり、長野県や

同県東御市などでは保護と個体数の回復に全力を挙げて取り組んでいる。同じように

個体数の激減した『ギフチョウ』の保護に乗り出した相模原市(旧藤野町)では、最近

ではかなりの成果を得ており、オオルリシジミの乱舞する姿が見られる日も、そう

遠くないことと確信している。トキにしろ、コウノトリにしろ、果ては 150 歳の住民

に至るまで、行政はとかくなすべきことをギリギリになるまで放置しておく傾向に

ある。つまり一歩先を見て仕事をしない。もっと厳しく言えば、市民が大声で騒ぎ

出すまで、面倒なことにはフタをしておく主義なのである。福島県白河市の妙関寺には

『乙姫桜』という美しい枝垂桜があって、天然記念物に指定されている。天然記念物

ゆえに枝を切ったりすることは禁じられている。それは当然と言えば当然なのだが、

それがネックになってこの子孫をまったく育てていない。この桜が枯れてしまえば、

この種は地球上から消えるかもしれないと言う危機にありながら、誰もそのことに

心を痛める者はいない。地元では保存会はできたが種子を採取して播種し、これを

販売しているだけで、これでは乙姫桜の雑種を増やしているに過ぎない。第二の

トキにしないため、子孫を早く残しておくことを切望してやまない。

さてクララの根の外皮を取り除いて乾燥させたものを漢方では『苦参』(クジン)と

呼んでいる。マトリンを主とするアルカロイド(05-02-00)を含んでおり、極めて苦い。

これを煎じて消炎、利尿、解熱、止瀉、健胃、鎮痒として利用された。しかしクララ

の薬理作用は強烈で、量を間違えると大脳を麻痺させて呼吸困難を引き起こし、死に

至るほど危険である。また葉や茎の煎汁は駆虫剤、殺虫剤として、家畜の皮膚の寄生

虫駆除などに用いられた。茎は丈夫な繊維質で、延喜式には皮を『苦参紙』(クジンシ)

の原料としたことが記されている。さらには繊維をとって織物にしたが、虫に食われ

ないので重宝だった。このため経文や絵画を描くときなどにも用いられた。

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クララはオオルリシジミの食草になっているが、オオルリシジミは絶滅危惧品種である。

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クララの果実。インゲンマメのようなマメ科独特の形状をしている(さいたま市緑区)。

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クララの花にやってきたルリシジミ。オオルリシジミは次ページ(小平市薬用植物園)。

ルリシジミはマメ科植物を食草とし、このクララにも産卵にやってくる(長野県東御市)。

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クララのまだ若い芽、これをオオルリシジミが食草にしている(東京都小石川植物園)。

オオルリシジミのペアリング。左が♀で右が♂(長野県東御市八重原)。

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このオオルリシジミは絶滅危惧品種である。現在では九州の阿蘇周辺や、長野県でしか見る

ことは出来ない。ここに着目した東御市は町をあげて保護に乗り出し、地元の企業である

シチズンファインテックミヨタもこの意思に賛同し、工場敷地内にクララを植えている。

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クララの葉の上で羽を休めるオオルリシジミの♀(長野県東御市八重原)

紅花クローバーの蜜を吸いにやって来たオオルリシジミ♂。

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オオルリシジミはあまり翅を広げてくれない。午後になるとなおさらである。翅を広げる

のは主に午前中の早い時間で、夜間、冷えた体を温めるためといわれている。目次に戻る

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