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2.簡単な流出油防除・回収法 (1)防除資機材の種類と使用法 ◆ 低粘度油(A重油)用 ◇ 長尺型油吸着マット(帯状油吸着マット) 流出した低粘度油の回収に適しているのは油吸着マットです。軽くて容積も小さ

いので軽トラックでも大量に積載することができます。1~2名で現場まで急行し、

マット先端を6mmロープで固縛して小型船で後進して曳航するか、対岸から人が

引き寄せ展張します。 ロール型

(重量1巻17kg 長さ65m 幅65cm 厚さ4mm)

50cm

65cm

6mmロープ

油吸着マットは高粘度油には効果を発揮することができません。水温が23,4℃

以上であれば多少は吸着しますが、12,3℃以下ではほとんど吸着せず、たとえ

付着しても波浪で剥離してしまいます。

マットの端どうしを縛ったり、カッター

で切断すれば必要な長さのマットを簡

単に作ることができます(講習会)。

油吸着マットの展張(講習会)

油 油

6mmロープ 6mmロープ 棒等の一端を電柱に縛って人が保持する方法 ロール型のまま海面に投入する方法

Z型 (25m×2束 8mmロープ10m×4本 幅65cm 厚さ4mm) 長尺型油吸着マットをジグザグに折り畳んだものがZ型油吸着マットです。海面に投

入し、ロープまたは小型船で展張すると風速15m程度までなら飛ばされずスムーズに

展張できます。

Z型油吸着マットを展張しているところです。 Z型は多少の強風でも飛ばされません。

マット連結部 油吸着マットを船が曳航(講習会)

ロール型 Z型

Z型油吸着マットの展張方法

◇ シート型油吸着マット(50cm四方または65cm四方の正方形) 正方形の油吸着マットです。ポリプロピレン製と植物製の2種類があり、ポリプロ

ピレン製の方が多く使用されています。 油吸着率は、製品により多少異なりますが、岸壁上または船上から回収するため、

強度のあるものが望まれます(鈎棒で引き揚げる際、弱いと切れて岩場やテトラの間

に入り、回収できなくなることがあります)。 シート型油吸着マットは、風や潮流で飛ばされたり流されたり、油を吸着して海面

と見分けがつきにくくなる等して、回収が困難になります。また、テトラ等に入ると、

軽質油分で溶けて団子状になり、回収不能になり二次汚染源になることもあります。 シート型油吸着マットを使用する場合、回収もれを無くして二次汚染を防ぐために、

原則としてオイルフェンスや長尺型油吸着マット等で包囲した中へ散布します。この

場合、オイルフェンス等と護岸等との間が離れないよう留意します(P22参照)。ま

た、潮流や波浪によりオイルフェンス等の上下から流出することがあるので、油を吸

着したらできるだけ早く回収します。既に広い海域にシート型油吸着マットが散布さ

れている場合は小型船2隻で油回収ネットやシースイーパーをU字型に曳航して回収

します。

満潮時河川に逆流した漂着油をシート

型油吸着マットを使って回収している

例。オイルフェンス等で包囲していな

いためシート型油吸着マットの回収が

困難

Z型油吸着マットの作り方(講習会) Z型油吸着マットが入手できない場合はロール型油吸 着マットを事前にジグザグに折り畳んで作製しておくと 便利です。

散布したシート型油吸着マットを長尺

型油吸着マットで包囲縮小して回収 石油会社でオイルフェンス内にシート

型油吸着マットを散布(宮城沖地震)

曳航方向

フロート

細かい目の網地

シート型油吸着マット

油回収ネット

漁網 油回収ネット

シースイーパー

散布したシート型油吸着マットの曳航回収 ◇ 万国旗型油吸着マット シート型油吸着マットを10ミリロープに連結したもので、展張と回収が容易です。

1ケース 6.5m×4本=26m

13m×2本=26m 52m

シート型油吸着マットの両角をロープで固縛したり、上部を折り返してから大型ホ

チキスで固定して、万国旗型油吸着マットを作成する方法もあります。しかしなが

ら、油を吸収するとロープからちぎれることがあるので注意が必要です。また、風

や波の影響を受けやすいので静穏な水域での使用に適しています。

大型ホチキスで固定 ロープで固縛

シート型油吸着マットとロープを使った万国旗型油吸着マットの作り方

風により個々のシート型油吸

着マットが左右バラバラにな

り、ここから油が漏れること

があります。

◇ 杉の油取ゆ と

り(商品名) 杉の樹皮を細かく砕き、不織布製の袋に詰めたもので、環境に配慮して製品化され

たものです。(大分県産業科学技術センター・(独)海上災害防止センター共同開発) マットタイプ 450mm×450mm 厚さ:15mm

50枚/1箱 (9.5kg) 万国旗タイプ 6枚をロープで連結 8組/1箱

22枚をロープで連結 2組/1箱 (12kg) オイルフェンスタイプ 450mm×5m・10m・15m・20m

20m/1箱 B重油では自重の9.3~9.7倍の油吸着能力があります。天然素材なので焼却

時、有毒ガスを発生しません。また、使用後、回収した“杉の油取り”を微生物に

より油ごと堆肥化する研究が進められ、実験では1ヶ月で96%のC重油が分解さ

れています。

また、これと同様のものとして、トドマツの間

伐材から作られた「もりの木太郎(商品名)」

等があります。 中身

杉の油取り

◆ 高粘度油(C重油)、ムース化油用 ◇ 吹流し型油回収資材(幅広タイプ)

厚い油層の高粘度油やムース化した油の拡散防止と付着回収に適しています。 ナホトカ号流出油事故の際、漁港内の厚いムース化油回収に効果を上げました。取扱

いが容易であることもあり、急速に普及しましたが、初期のムース化程度以下の粘度

では付着効果が低いので、油の状態を確認して使用することが必要です。

シングル 材質 ポリプロピレン

ロープ径 7mm ロープ

引っ張り強度 508kg

長さ 15m のロープに 30 個のシングルを取り付けたものです。(7.7kg/1本)

◆ 広範囲の粘度の油に対応

吹流し型油回収資材で厚い油 層を包囲し、引き寄せた状態

平成 14年 7月 25日 志布志湾に

座礁したコープベンチャー号

波浪で油が外部へ流れ出ない

ように浮力の大きい油回収ネッ

トに吹流し型油回収資材を固縛

しました。

ムース化した油は吹流し型油

回収資材の外へ漏れません。

◇ 油回収ネット(低粘度~高粘度油に対応) (独)海上災害防止センター・坂本由之氏の共同開発 4mm角のネットに油吸着材を詰めたもの

10m

長尺型油吸着マット(中に浮力材が入っている)

チェーン 10mmロープで上部網袋内を貫通させ連結

20cm

30cm

長さ 10m/1本

ポリプロピレン製 油吸着マット 13kg 重量 植物繊維製 油吸着マット 11.5kg

容積 2本連結して1梱包 0.391m3

ネット 4mm角ポリエチレン 浮体 発砲ポリエチレンシート 錘 4mmチェーン

材質

ロープ 10mmロープ 油回収ネットは ・ 長尺型油吸着マットと同じ様に油の拡散防止と吸着回収ができます。浮力が大

きいので3ノット(1ノット≒1.9km/分)程度の流速でも沈みません。 ・ 軽量で浮力が大きく波浪に追随しやすいので、油を上下から逃がすことがほと

んどなく、大量の油の回収やテトラ等の前面に展張して油の漂着を防止するのに

適しています。 ・ 0.8ノット以下の流速であれば渦流を生じないので油を水面下から逃しませ

ん。上部の網に包まれた油吸着マットでA重油等を吸着、ネットでC重油等を付

着します。 ・ 容積がB型オイルフェンスの1/5、重量が1/3なので、取扱いが容易で産

業廃棄物として焼却するときに必要な経費が少なくなります。

油回収ネット

海水 渦流

オイルフェンス

油回収ネットの使用例(ビデオ) 写真は青色ですが現在はオレンジ色です。

◇ 吹流し型油吸着材(極細タイプ)(油膜~高粘度油の広範囲の油に対応) 油回収ネットより流速が大きい河川や海域でも使用できます。

10m 1m 1m8m

50cm

20cm間隔で 41束

重量 4kg/1本 (油吸着材 約 3.8kg、ロープ 約 0.2kg)

ロープ径 8mm 引っ張り強度 700kg 備考 1ケース2本入り

小型船 1隻と岸壁上 1名で吹流し型油吸着材をU字型に曳航して岸壁の隅に向かって浮流油を追い込んでいる様子(講習会)

軽量なので作業員 1人で船上に揚収できます (講習会)

吹流し型油吸着材は素材全体が極細の網状にな

っているため、薄い油膜も毛細管現象で吸着しま

す。引っ張ると網目が大きくなります(講習会)

◆ 油吸着後の油回収ネット等の回収 海上からの回収

◎ 油回収ネットや長尺型油吸着マットは軽いので手で引っ張って陸上に回収する

ことができます。このとき、岸壁を汚さないようビニールシート等を敷いておき

ます。 ◎ クレーン車やフォークリフトが使用できる場合は、まず油を吸着した油回収ネ

ットや長尺型油吸着マットを岸壁上から鉤棒で2~3mの長さに折り畳みます。

陸上から先端に軽い錘(例えば16mmシャックル)を付けたスリングロープ

(吊掛けロープ)を岸壁真下に下ろし、同時に小型船からは折り畳んだ油回収ネ

ット等の下に鉤棒を差し込んで、このスリングロープに引掛けて引き寄せ、大回

しに掛けます。これを陸上クレーンのフックに引掛け、徐々に引き揚げ、トラッ

クの荷台または岸壁に敷いたビニールシート上に回収します。(写真 参照) ◎ 油回収ネット等をビニールシート上にいったん回収し仮置きする場合は、クレ

ーンで簡単にトラックに積み込めるよう、スリングロープをそのまま掛けておき

ます。 ビニールシートの周囲をおが屑入り麻袋で固め、ビニールシートから油が漏れ

ないようにします。岸壁・護岸が油で汚れたらおが屑をまいて清掃します。

現場での仮置き

フォークリフトを使って引き揚げ

トラックへの回収 クレーンを使って引き揚げ

岸壁上からスリングロープ

の先端を引き揚げます。 鈎棒を使って回収ネット等の

下にスリングロープをまわし

ます。

◎ 組み立てタンク(数名で簡単に組み立て可能)の中へ油吸着後の長尺型油吸着マ

ットや油回収ネットを入れておくと、トラック等へ簡単に積み込むことができます。 ◎ 引き揚げに使用したスリングロープを焼却場へ運び込むまで付けたままにして

おけば、効率的に作業できます。組み立てタンク内に長尺型油吸着マットを何本

も入れる場合には、かさばらないよう交互に直交させて積みます。 ◎ 作業の都合等で、長尺型油吸着マット等を現場付近の陸上や台船上に仮置きし

ておく場合は、タンクに雨等が入らないようビニールシート等でふたをするのを

忘れないようにします。また、二次汚染のおそれもあるので、できるだけ早く焼

却処分します。

油回収ネット等

ビニールシート

スリングロープ 組み立てタンク

◆ その他の防除資機材 ◇ 油回収器具(すくい金網、柄杓等) 木の柄のものは重くて扱いにくいので、アルミパイプ直径30mmの柄のものが適

しています。水に落としても沈まないように柄の末端付近にフロートを付けておきま

す。また、末端に木栓を差し込めば浮力をもたせることもできます。

920mm×920mm (16~20メッシュ*)

岩場、水際などの低いところからすくい揚げるのには長さ2m

前後のものを使用します。 (高いところから引き揚げる場合でも柄の長さが4m以上のも

のは使いこなすことが困難です。)

フロート

差し込み式(持ち運びに便利)

引き揚げ補助用6mmロープ

水抜きの穴を開けておけば高粘度油の汲み揚げに適します。

補助作業用の鈎棒を携帯します。

4点ロープ(6mm)

で引き揚げる方式です。 耐荷重は25kgです

が、油を入れすぎると作

業効率が悪くなります。

すくい金網(8メッシュ*の金網 350mm×250mm)

岸壁、船上等、比較的高いところからのすくい

揚げには、柄に対し金網が傾斜しているものが適

しています。

差し込み式

差し込み式

高粘度油の場合は重くなりがちなので垂直に引き揚げま

す。引き揚げる際は補助ロープを使用します。

柄杓

鈎棒

小型油回収枠用金網

*メッシュ :25.4mm(1インチ)

中の網目の数

木栓

平成 14年 10月 1日 大島波浮港外に座礁したファル・ヨーロッパ号からの流出油回収

水抜き穴から 水が落ちている

◇ 小型油回収枠 FRP製 1.3m×1.3m 重量23kg

(独)海上災害防止センター、油濁基金及び坂本由之氏の共同開発

小型油回収枠

油回収枠は油混じりの水を枠内にすくい集め、油膜を厚くした後、油を回収する

道具です。枠内に油混じりの水を入れると比重の差で水は油回収枠の下から流れ出

て油が濃縮されます。

回収 ⑤ ④③② ①

小型油回収枠を使用した回収法 油回収ネット等により集めた油を、柄杓を使って直接護岸上のドラム缶へ油を汲

み入れるのは、長い柄の柄杓を扱うので柄杓から油が漏れ護岸を汚しやすく、また、

回収時に含まれる水の量が多くなり、保管に必要なタンクの量が増えます。 そのため薄い油混じりの水を小型油回収枠に柄杓やポンプで汲み入れて油層を厚

くしてから処理する方法が有効です。

岸壁は油で汚れすべりやすく非常に危険な状態

になります。

油回収枠を使用すれば狭い護岸上の作業でも足

場を汚さないため安全です。

小型油回収枠用金網 (16~20メッシュ金網) 油付着ゴミも同時に 引き揚げ回収ができます。

15cm 130cm

スカート

50cm油回収枠と金網

柄杓

1mに切った油吸着マットをロープ

で縛ったもので油を吸着 手鉤で回収

護岸

海面

海水

油回収枠を使用した油の回収例

油吸着マットを使用する場合(講習会)

回収終了、枠内の油がなくなりました。 油吸着マットを投入し、油を吸着

汲み入れ終了 水槽内へ油(赤く着色)を散布し、柄杓で油回収

枠内に汲み入れます。

④ ③

小型油回収枠の特徴は ・ 軽量なので1~2名で取り扱うことができます(ライトバンにも積載できます)。 ・ 柄杓やフローティングサクションで油混じりの水を汲み入れれば、枠内の油が

厚くなり、効率的に回収することができます。 ・ 小型油回収枠上部に金網(920mm×920mm)をのせれば、ごみと油を

仕分けることができ、枠内の油と金網上の油付着ごみとを分別して回収すること

ができます(金網には25kgまで積載可能)。 ・ 横へ柄杓を動かすだけで汲み取りができるので、作業が非常に簡単になり護岸

や身体を油で汚すことがありません。 ・ 厚くなった油はロープを付けた1m位の油吸着マットで簡単に回収することが

できます(前頁図参照)。 ・ 拡散防止を兼ねて一時的貯油ができます。(約300リットルの貯油が可能) ・ 小型油回収枠上部に小型ポンプを積載すれば、護岸上や船上のタンク等への油

回収が容易になります。 高粘度油の回収(次頁参照)

高粘度油は、小型油回収枠上の小型油回収枠用金網へすくい金網や柄杓で汲み入

れ、重さが10kg程度になったら、護岸のビニールシート上に引き揚げます。 引き揚げた金網は約45度に傾斜させ、油をスクレイパーで掻き落します。すく

い金網は8メッシュ程度の粗いものを使用し、目詰まりを避けます。

⑦ ⑥

② ①

柄に直角に取り付けたすくい網で水を切ります。 すくい網ですくったC重油を小型油回収枠用金網上に落とし

ます。

このように回収枠上にすくい入れれば効率良く回収でき、岸壁を汚しません。

狭い足場でも安全にすくい入れることができます。

小型油回収枠用金網をビニールシート上に引き揚げ45度に傾斜させスクレイパーで掻き出します。

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