4 イントロ 2013 最終 - 成蹊大学 理工学部 システムデザイン学科 · 2018. 6....

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システムデザイン実験Ⅱについて

1.目的

システムデザイン実験Ⅱでは、システムデザイン実験Ⅰで修得した実験・測定技術を深

めるともに、それらを基礎として、専門分野の研究課題に一歩近づいた実験テーマに取り

組む。ものづくりにおける設計・製作・評価といった全体の流れを意識した上で、各工程

における工学的アプローチに幅広く触れ、将来の研究実験を行うための基礎を学ぶことを

狙いとする。また、実験を通し自ら疑問を提起してそれを解決していく実験上の考え方と

能力を養成し、第三者に正しく伝わる報告書が作成できるようにする。

さらにシステムデザイン学科の各研究室を訪問し、進められている研究について見学し、

先端技術について学ぶ。

2.進め方

前期に、火曜日 3~4 時限に行う。1 班あたり 14 名程度からなる 10 班構成とし、日程表

にしたがい実験を進める。班ごとに 1 つのテーマを 6 日間(6 週間)で行い、履修期間中

に 2 つのテーマに取り組む。報告書はテーマ毎に作成する。

3.履修と単位の取得について

班ごとに割り当てられたすべての実験に出席し、それぞれで課された提出課題(実験報

告書等)をすべて提出しなければならない。提出物は担当教員がチェックし、受理の判定

を行う。提出物が受理されなかった場合は内容を修正し、指定期限内に受理されるように

しなければならない。実験全てに出席していること及び全ての提出物が指定期限内に受理

されていることが単位取得の 低条件である。実験に対する姿勢、実施技術、報告書内容

等が総合的に判定され、所定の水準に達すれば単位の取得が認められる。

4.実験に対する心構えと注意

(1) 実験室は学問技術を錬磨する大切な場であるから、実験室では静粛にし、規則に従

い、秩序を持って実験に専念しなければならない。

(2) 実験をよく理解するために、開始前までに充分予習を行って臨むこと。

(3) 実験開始時刻までに実験ごとに定められた実験室(本書巻末「実験室配置図」を参

照)に集合すること。

(4) 実験室に入るときは、各自の名札を胸につけること。着衣については特に指定はし

ないが、実験し易く機能的なものがよい。袖口の広いものなどは安全性の面から問

題があるので避けること。

(5) 実験機器に「手を触れるな」等の注意書きの表示がある場合には、手を触れないこ

と。

(6) 各自の荷物は通行の妨げにならないように、実験机の下または実験室内の荷物棚に

置くこと。

(7) 実験時間中の携帯電話の使用は認めない。ただし、報告書作成のために必要な実験

機器の撮影等については、テーマ担当者がその範囲内で使用を認める場合がある。

(8) 実験室内で飲食はしないこと。

(9) 実験開始時に担当教員が出欠の確認を行う。授業開始時間までに着席していない場

合は遅刻扱いになるため、時間は厳守すること。

(10) 担当教員より実験テーマ毎の注意事項について説明があるので、それに従うこと。

(11) 実験は自分で装置、測定器などを操作し、積極的に行うこと。

(12) 実験中には実験ノートにこまめにデータや状況を記録し、適宜グラフ等を作成しな

がら実験をすすめること。

(13) 途中で疑問が生じたときは、いつでも担当教員に質問すること。

(14) 実験中、みだりに席を離れないこと。

(15) 実験装置、測定器や実験器具類を破損した場合は直ちに届け出ること。破損したま

ま放置すると、次に使用する実験者が多大な迷惑を被ることとなる。

(16) 測定すべき事項につき全てデータがとれたときは、実験結果を実験ノートに整理し

て必ず担当教員にデータのチェックを受けてから終了すること。

(17) 終了時には実験台上の装置、器具などを整理整頓してから退席すること。

5.課題の提出・受理について

(1) テーマによっては実験実施日までに事前課題を行う必要があるものがある。その場

合はテキスト等で指定された課題を行い、事前報告書としてまとめて実験開始時に

担当教員に直接提出すること。

(2) 実験後の提出物はテーマ毎に指定された提出場所に提出期限(担当教員から別途指

示)までに提出すること。

(3) 提出期限を過ぎた提出物は「期限外提出物」となり、減点の対象となるので注意す

ること。また、提出期限までに提出されていても明らかに未完成である場合は、提

出を受け付けず「期限外提出物」となり減点の対象となる。尚、指定された期限ま

で提出できなかった場合は当該実験担当教員を訪問し、提出日及び提出方法を相談

すること。

(4) 提出物は各担当教員が内容をチェックし、「受理」または「再提出」の決定をする。

提出物の受理の状況は、ポータルサイト経由で掲示されるので各自確認すること。

(5) 再考・再調査・書き直しなどが必要のため受理されず「再提出」と判定された場合

は提出日の次の実験日に返却される。受理表を確認し、提出物が受理されていない

場合には各自受け取ること。

(6) 課題の再提出の方法(提出期限や提出場所等)については、各テーマの担当教員の

指示を仰ぐこと。

(7) 修正を指摘された箇所が小範囲で修正用品(修正液や修正テープ等)を用いて修正

できる場合は、修正用品で字句を消し、修正して提出すること。尚、担当教員から

指摘されたコメントは消さないようにすること。

(8) 再提出報告書で指摘箇所を差し替える場合、担当教員から指摘されたコメントのつ

いた修正前の古い部分を報告書の 後に添付し、ページを付け直して提出すること。

(9) 全実験終了前に提出物の 終締切日について指示がある。すべての提出物がそれ以

前に受理されない場合は単位が取得できないので注意すること。

(10) 終的にすべての提出物が受理されたとしても、実験に対する姿勢、実施技術、報

告書の内容などの総合評価が所定水準に満たない場合は単位を取得できないので真

剣に取り組むこと。

6.遅刻や補講に関する件

(1) 実験を欠席すると単位が取得できないため休まないこと。また遅刻をしないこと。

但し、止むを得ない理由で欠席する場合は事前に担当教員に連絡すること。また万

が一遅刻してしまった場合には担当教員に相談し指示を仰ぐこと。実験毎の担当教

員は巻頭「実験テーマ及び実験担当教員」参照のこと。

(2) 実験当日に病気またはやむを得ない理由(追試験の受験条件に準ずる。履修要項を

確認のこと)で欠席する場合は、事前にメールにてシステムデザイン実験Ⅱ幹事宛

(sd-jikken2@st.seikei.ac.jp)に連絡すること。その際には、欠席の理由だけでなく、

学籍番号、名前、実験テーマ名を必ず明記すること。その後、担当教員(もしくは

システムデザイン実験Ⅱ幹事)から返信があるので指示を仰ぐこと。

(3) 病気またはやむを得ない理由で欠席した場合であっても、補講実験を行い、提出物

を提出、受理されなければ単位を取得することができない。補講実験の実施につい

ては当該テーマの実験担当教員に相談すること。

7.実験に必要なもの

実験に必要な以下のものは必ず持参すること。

実験指導書

筆記用具

システムデザイン実験専用ノート(実験Ⅰで使ったものでよい)

電卓

グラフ用紙

USB メモリ

8.連絡事項

(1) 実験の全体に関する連絡事項は原則としてポータルサイトを通じて連絡をするので

各自こまめに確認すること。

(2) 実験に関する内容で質問がある場合には実験担当教員に質問するか、またはシステ

ムデザイン実験Ⅱ幹事(sd-jikken2@st.seikei.ac.jp)にメールで質問すること。その際

に学籍番号、名前を必ず明記すること。

9.実験報告書の書き方

報告書では、第三者に対して、何を実験し、どんな結果を得て、それをどう解釈した

かを正確に伝えなければならない。したがって、自分だけがわかるメモではいけない。

要点をまとめ、丁寧に書くこと。

また、指導書の記述内容をはじめ、実験あるいは報告書の作成に当たって参考にした

文献などの記述は、それを理解した上で、要点を整理して自分の文章表現に直してから

記述すること。他人の著述をそのままコピーして貼り付けている報告書やコピーしてい

ると疑われる報告書は受理しない。参考にした図書がある場合には必ず図書名や参考箇

所を明らかにし、参考図書の項目で報告すること(9.4 参照)。

9.1 形式

A4 判レポート用紙を長辺が縦になるように使用し、用紙ごとにページ番号をふる。記

載は手書きならば黒のボールペンを用いる。Word などのワープロソフトや LaTeX を用

いて作成してもよい。

事前報告課題のあるテーマにおいては、テーマの指示にしたがって事前報告書を作成

し提出すること。事前報告課題の有無および内容は各テーマの章に記述されているので

各自確認すること。

本報告書には別途配布する表紙をつけ、左側をホチキスで 2 ヶ所綴じる。

本報告書の内容は以下の基本構成にしたがって記述する。ただし、テーマ独自の指定

がある場合はそちらにしたがうこと。

(1) 目的 何を明らかにしたいか。

(2) 理論 関連する理論や公式、結果に及ぼす式。

(3) 方法 実験手順、実験条件。

(4) 実験装置 使用した試験機、測定機、器具等の名称、型式、定格、製造番号などを

記録する。これらの情報は実験の再現および結果の精度判定に必要で

ある。

(5) 実験結果 文章が主で、図表は従である。結果を記述する項において、図表のみが

羅列されているものは実験の報告書とは認められない。まず、文章で

結果の処理法、図表の作成法や意図を述べ、それから分かることを文

章で明確に記述することが必要である。

(6) 考察 結果を定性的および定量的に考察する。またテーマ毎に指示された課題

に答える。

(7) 結論 何を明らかにできたか。どのようなことが導かれたか。

(8) 参考図書 参考にした雑誌や書籍の情報。

9.2 図の描き方

(1) 全ての図には、図の下部に図番号と図題をつける(図 1 参照)。図番号は、表番号

とは独立に通し番号をふること。

(2) グラフの縦軸、横軸には図 1 のように、それぞれが表している量の名称、記号、単

位を明記する。縦軸の説明は反時計回りに 90 度回転させる。

(3) そのグラフで表そうとする内容をよく考えて、使用するグラフ用紙の種類、目盛の

とり方、測定点の結び方を決めること。例えば、重要なのは細かい変化なのか全体

の形状なのか、得られたデータに対して妥当な当てはめは直線なのか曲線なのかな

どを検討する。

(4) 曲線は測定値を平均的にかつ滑らかに結ぶ。測定値が急激に変化する部分や飛び離

れている部分は、理論的に特異点ではないか、よく検討して結ぶ必要がある。その

ような部分も測定上の誤差と考えられるならば平滑化してよい。

(5) 同一グラフ中に複数の曲線を描く場合、測定値を示すマークを×,○,△などで、

曲線の線種を実線、破線、一点鎖線などで区別する。また、各線は何を表すのか凡

例を明記する。

(6) グラフを手書きする場合、曲線は自在定規や雲形定規などを用いてきれいに描くこ

と。

(7) グラフ用紙は原則として欄外を使用しないこと。軸および目盛、説明なども含めグ

ラフ用紙の目盛内に収めること。

(8) グラフ用紙を横長方向に用いる場合、グラフの上部が左側になるように綴じること。

(9) 本文中では「○○の実験結果を図 1 に示す」のように図番号を記入して引用するこ

と。「左図」、「下図」、「次のページの図」などという表現は使用しないこと。

9.3 表の書き方

(1) 全ての表には、表の上部に表番号と表題をつけ、横方向に関して中央に位置するよ

うに配置する(表 1 参照)。表番号は、図番号と独立に通し番号をふること。

(2) 単位は見出し欄に書く。

(3) 表中の数値は有効数字(9.6 参照)に注意すること。

(4) 本文中では「表 1 に示す○○の実験データより」のように表番号を記入して引用する

こと。図の場合と同様に、「右の表」、「上の表」、「前のページの表」などという

表現は使用しないこと。

表 1 機械的性質(表例)

s ,2.0 B 熱処理

[MPa] [MPa] [%] [%]

SCM435 1010 )( 2.0 1100 18 56 885℃ ,1h,油焼き入れ 555

℃,1h,焼き戻し

S45C 320 )( S 580 32 56 885℃,1h,焼なまし

照度 L[lx]

出力電圧E

[mV

]

図 1 太陽電池の出力特性(図例)

光源:タングステンランプ(2575K)

試料:SPD530

RL=∞

RL=5kΩ

RL=500Ω

RL=100Ω

負荷抵抗 RL

1 0 100 1000 1000 0 1

1 0

1 0 0

1 0 0 0 1000

100

10

1

9.4 参考図書の書き方

(1) 報告書の 後に引用した、あるいは参考にした図書のリストを作成する。図書には

それぞれ図書番号をつけ、図番号や表番号とは独立に通し番号をふること。また、

図書情報は以下の書式を参考に整えること。

a) 論文誌など雑誌

著者名:題名,雑誌名,巻数,号数,掲載ページ,発行年

b) 書籍

著(編)者名:書名,シリーズ名・巻数,引用・参考ページ,発行所,発行年

c) Web 上の情報

作成者名:ページタイトル,URL

(例)

参考図書

[1] 齋藤正彦:線型代数入門,p.89,東京大学出版会,1966

[2] 高木貞治:解析概論,改訂第三版(軽装版),pp.386‐389,岩波書店,1983

(2) 本文中では「ストークスの定理 [2] より次式が成り立つ。」のように図書番号を記

入して引用すること。

9.5 グラフ用紙と関数

工学の分野でよく用いられるグラフ用紙として方眼紙、片対数用紙、両対数用紙の 3 種

類がある。それぞれの用紙をどのように使用したらよいのであろうか。直線のグラフは見

た目にも理解しやすいので、測定した結果等は直線で表せるに越したことはない。上記の

3 種類のグラフ用紙において、直線で表せられるのはどのような関係式の場合なのかをま

とめる。

図 2 のような正目の 軸上で、1 本の直線で表すことができるのは

を満たす場合である。ここで、 は図 2 上での直線の傾きであり、 は切片である。

図 3 のような片対数用紙を用いて描いた関係が直線で表される場合は、 軸が正目、 軸

が対数目盛であるので

の関係がある。式(2)を変形すると

の関係を得る。つまり、片対数用紙を用いて直線で表せられる式は、式(3)のような指

数関数の場合である。このとき、式(2),(3)の 及び は図 3 の直線の傾き及び切

片である。

図 4 のような両対数用紙を用いて描いた関係が直線で表される場合、式(1)の を

対数とした式(4)の関係がある。

式(4)を変形すると

の関係を得る。つまり、両対数グラフにおいて直線で表される式は、式(5)のようなべ

き関数になる。このとき、式(5)の 及び は図 4 の直線の傾き及び切片である。

図 2 方眼紙(正目グラフ) 図 3 片対数グラフ 図 4 両対数グラフ

9.6 測定値の取り扱い(有効数字について)

測定には必ず誤差を伴うため、測定値はある桁までの数字しか意味が無い。

有効数字とは、その数値が工学的に意味をもつものをいう。例えば、512 という数値が

すべて意味のある数であれば、有効数字は 3 桁であって、真の値が 512 に近いということ

であり、511.5 より大きく、512.4 より小さいことを意味している。

また、51200 という数値の 後の 2 桁が測定の結果から得られたものであれば、有効数

字は 5 桁である。しかし、100 単位でしか測定できなければ 512 の数字は意味をもつが、

それ以外の 00 は意味を持たず単に位取りを示すものであるから、有効数字は 3 桁となる。

このような場合には、512×102 または 5.12×104 と表わし、有効数字の桁数を明確にする。

さらに 0.00512 という数値の場合には、位取りのための 0 は有効数字には数えないから、

有効数字は 3 桁である。

2 つ以上の数値の積の有効数字は各数値の有効数字の桁数以上にはなり得ない。5.12×104

と 3.25×102 との積の有効数字は 3 桁であり、1.66×107 と表す。実際に乗算を行なって各

自確認されたい。

いくつかの数値を加減する場合、それらの数値の小数点を揃えた同じ位取りのところに

有効でないものが含まれているならば、それ以下の位取りにある数字は加減算の結果、無

意味となるから、有効な位取りまで丸めて計算すればよい。

例えば

の場合、位取りを揃え無意味な数字を*で表すと

となる。

このように、測定値を使って電卓やコンピュータによって計算して結果を整理する場合、

有効桁を超える桁数の数字を羅列しても全く無意味である。結果の数値の表現には、十分

な注意を払わなければならない。

これを有効な位取りまで丸めると

9.7 誤差

ある量を測定しようとするとき、我々は“理想的に正しい値(真の値)”があるという

ことを無意識に仮想している。しかし、通常の測定によって得られる値は、真の値の代わ

りにとってよいと思われる近似的な値である。測定値と真の値とのずれを誤差という。

(誤差)=(測定値)-(真の値)

誤差は、次の 3 種類に分けられる。

(1) まちがい

測定値の位取りの間違い、目盛りの数字を読み違えなど、測定者が気付かずにおかした

まちがいである。

(2) 系統誤差(かたより)

a) 機器の精度によるもの:測定器の標準尺の目盛りの誤差、マイクロメータのねじのピ

ッチの不整、ダイヤルゲージの歯車のピッチの不整、機器の狂いなどから生ずる誤差で、

校正あるいは検定によって除きうる。検定は一般に標準の計器と比較して行なわれる。

この場合

(誤差)=(計器の読み)-(標準計器の値)

であるから、測定値に対する補正は、この誤差分を差し引いてやればよい。実験機器の

校正を行なった場合、各測定値と補正値との関係を表にした校正表、またはグラフにし

た校正曲線を用意しておけば、任意の測定値に対して誤差を求めることができる。

b) 個人誤差:測定者の読み取りの癖から起こる誤差で、測定者の癖を認識して注意し、

熟練することによって軽減できる。また 2 人以上で同一測定を行なうか、計測を自動化

することによって誤差を少なくすることができる。

(3) 偶然誤差(ばらつき)

1 人の測定者が同じ計器を使って一見同一の条件のもとで繰り返し測定してみると、す

べての読みは等しくならない。これは予測できないいくつかの原因が重なったことから

生じたのであって、この誤差を偶然誤差いう。これは避けることができないものである。

この誤差を少なくするためには、同じ測定を繰り返して代表値を算出する必要がある。

9.8 最小二乗法による曲線の当てはめ

組のデータ が測定に

よって得られたとする。これらを 平面にプロッ

トすると図 5 のようになり、 は の 1 次多項式

あるいは 2 次多項式で表現できそうである。

このようなデータに関数を当てはめる方法の一つに、

小二乗法(Method of least squares)がある。 小

二乗法では、「誤差の二乗の和を 小にする値を求め、

それを 確値( も確からしい値)とする」。

いま与えられたデータに 2 次多項式を当てはめる1

ことを考え、関数 を

と定義する。

1一般論では 次多項式を当てはめる。

図 5 小二乗法

データから求めたい値は係数 であり、これらの数よりも多いデータ、すなわち

3 点以上のデータが必要である。 で測定値した と曲線上の値 との差を、図

5 に示すように、垂直方向の距離として で表し、残差と呼ぶことにする。残差は正に

なったり負になったりするので、各測定値の残差を単に加算して総和を取ると、この値は

小さくなってしまい、意味あるものを引き出せない。そこで、残差の二乗の和をとり

とおくと、 は

となる。 は、測定値と曲線とのずれの目安である。

このずれが 小になるような曲線を当てはめることを考える。

は既知であるから、 は を未知数とする関数である。 が 小になるには、

でなければならない。 から

となり、次式の関係を得る。

同様にして、 及び から

が得られる。式(6),(7),(8)は連立して正規方程式と呼ばれる。これを行列表現する

となる。 のデータをもとに、連立方程式(6),(7),(8)あるいは式(9)を解

くことによって を求めることができる。

ここで式(6),(7),(8)の構成をみると、式(8)は当てはめる関数

の に 個の個々のデータ を入れて式を加え合

わせたものである。また、式(7)は、式(8)を構成する各項に を掛けて加え合わせ

たもの、式(6)は、式(8)を構成する各項に を掛けて加え合わせたものであること

がわかる。

次に、与えられたデータに 1 次多項式を当てはめることを考える。したがって、 を

とする。この場合、 として式(7),(8)を、すなわち式(9)において破線で囲ん

だ部分を用いればよい。これより、 について解くと、

となる。ただし、 である。また、 とした式(8)

より

という関係が得られる。ここで、 とおくと

と表せる。これを式(10)に代入すると

となる。この結果、傾き をもち点 を通る直線であることがわかる。

(例) 表 2 に示すデータに 小二乗法を適用して当てはまる曲線を定めてみよう。

表 2 収集データ例

X 0.0 1.0 2.0 4.0 5.0 6.0 7.0

Y 2.0 2.3 2.9 4.2 5.0 5.8 7.0

当てはめる曲線を 2 次多項式 とすると、式(8)に対応する

を得る。この各式に の各値を掛け、加え合わせると式(7)に対応する次式を得る。

式(11)の各式に の各値を掛け、同様に加え合わせると式(6)に対応する次式を得

る。

したがって、解くべき連立方程式は、

となる。これより、次の 2 次多項式を得る。

次に の1次多項式(直線)

として当てはめてみる。2 次多項式の場合と

同様の計算をすると

となり、これを解くと次の 1 次多項式が得ら

れる。

図 6 小二乗法による曲線の当て

これらの解はコンピュータを利用すれば直ちに求めることができる。結果を図 6 に示す。

1 次多項式(破線)より 2 次多項式(実線)による近似がデータによく当てはまることが

わかる。このように、結果をプロットして求めた関数が妥当なものであるか否かを確認す

ることを忘れてはならない。データに当てはまる曲線の式を求める方法として、この他に

分割和法、階差を用いる方法などがある。

(実験報告書の書き方に関する参考図書)

・木下是雄:理科系の作文技術,中公新書,1981

・化学同人編集部:実験データを正しく扱うために,pp.43 - 46,化学同人,2007

10.実験に対する技術的諸注意

10.1 データ処理等

(1) 変化の急激なところは測定を細かくする。

(2) 周波数特性等の広範囲な測定では測定点を対数的にとる。

(3) 測定と並行してグラフを作成することにより、実験結果の傾向がつかみ易くなり誤り

の発見も早くなる。

(4) 予想に反した測定データが得られた場合には、誤配線の確認等も含めて必ずその場で

再確認し、都合の悪いデータでも抹殺せずに充分な検討を加える。

(5) グラフを作成する際は、そのグラフで何を示したいのかを考慮して、目盛の種類、範

囲、精度などを決定する。 10.2 実験方法、機器の取扱など(関連テーマ:E1, E2)

(1) 実験にあたっては使用する計器・測定器の定格、使用法など良く調べ、理解してから

正しく使用する。また、使用部品(抵抗器、コイル、コンデンサ、コード等)の定格

(電流容量、耐圧、電力容量等)にも注意し、用途に合ったものを選択する。

(2) 測定におけるパラメータや測定点の数、測定範囲および得られるべき結果等について

あらかじめ検討しておく。

(3) 指示計器の零位調整、測定器類の予熱を測定にかかる前に必ず実行する。

(4) 実験開始前に、単相単巻変圧器、直流電源、発振器等の出力電圧調整つまみやオシロ

スコープの輝度調整つまみ類は 小位置にする。また、電子電圧計、オシロスコープ

などの入力レンジは 大位置にしておく。

(5) 機器は全体がわかり易く、取扱が容易となるように配置する。特に高周波や微小電圧

(電流)の測定やコイルを含む回路では、誘導その他の浮遊的結合が雑音や誤差に直

接影響する。

(6) 電源コード類は回路中を引き回さず、機器の後ろにまとめる。測定に雑音が入るとき

に、AC プラグの極性を逆にすれば解消できる場合もある。

(7) 回路を接続する方法として、まず電流の流れる主回路を結線し、次に電圧や波形測定

のための回路を結線すれば誤配線を比較的少なくできる。

(8) 機器類の共通アースの概念は大切である。多くの測定器類は入力、出力の端子の一方

がケースと共通になっている(GND 端子)。そうでない場合にはケースに GND 端子

が付いているので、これらが同一電位(GND、アース)になるように接続する。この

例を図 7 に示す。

(9) 実験で使用する直流安定化電源の一例を図 8 に示す。VOLTAGE つまみは出力電圧を

調整するもので、図 8 の例では COARSE(粗調整)と FINE(微調整)がある。CUR

RENT つまみは電源から流し得る電流の 大値を定めるもので、過電流による負荷の

破損防止等の目的に用いる。出力端子を短絡して(電流設定用の SW の付いている電

源もある)、CURRENT つまみで 所望の電流値にする。

図 7 共通アース

端子は GND(ケースに接続されている)と GND から浮いている+、-の電源出力

端子とがある。正負どちらの電源として使用するかで、+、-端子のどちらか一方を

短絡板により GND 端子と接続する。

電圧計および電流計は電源の出力電圧と電流を指示するが、ここで使用している小

型の指示計器は一般的に精度があまり良くないので使用に

際し過信しないで、目安程度に考える。

(10) 二現象オシロスコープでは GND が両チャンネルの共通端

子になって接続されているので、任意の端子対を同時に測

定できないこともある。

(11) 大まかな測定により全体の様子を把握することが有効な場

合がある。

(12) 精度よく測定するために、指示計器は大きな振れが得られ

るレンジを選定する。但し、計器によってはレンジの変更

にともない内部抵抗が変化するので注意を要する。

(13) 実験終了後、各電源は出力を 小にするようにセットして

おく。 10.3 テキスト中で使われる略号

AC : alternating current A-D : analog to digital

ATT : attenuator CH : channel

CR : capacitor-resistor D-A : digital to analog

DC : direct current FET : field effect transistor

FFT : fast fourier transform GND : ground

IC : integrated circuit IN : input

LC : coil-capacitor LPF(HPF) : low(high) pass filter

OUT : output P-P,PP : peak to peak

PWM : pulse width modulation SW : switch

この電源は+電圧で使用 電源

CH1 CH2

電源発振器電源

-+ -+

GND GND GND

OUT

GND

GND

-電圧で使用

オシロスコープ

他の回路、機器へ

共通アース

A B

CUR R ENT V OL T A GE

POW E R

G N DOFF

+ -

A V

COARSE

FINE

図 8 直流安定化電源

11.危険防止と事故・災害時の処置

(1) 機械・工具の使用によるけがには充分注意すること。

(2) コンデンサは使用後に電荷が残っている場合もあるので放電させておくこと、また短

絡してから取り扱う。

(3) 誘導性回路では電流を 小にしてからスイッチを切る。

(4) 配線の変更や席を離れる場合は、特別な場合を除いては測定器類以外の電源スイッチ

は必ず切る。

(5) 高電圧回路への接触や高電圧の誘導による感電には充分注意すること。雨などで手足

の濡れているときはもっとも感電のショックが大きい。

(6) けがの対応:直ちに教員に知らせると同時に、必要な応急処置を行う。

(7) 感電事故の対応:感電事故の場合には、いち早く主開閉器を切断すると同時に、直ち

に教員に知らせる。心肺停止状態に至った場合には、一刻も早い応急処置が必要とな

る(「12 緊急時の対応」参照)。

(8) 災害の対応:火災、地震などの非常災害時は各実験台の電源の開閉器およびヒータ、

抵抗器類の熱源の開閉器を切り、荷物を持たずに退避する。非常口、消火器の位置を

平素心がけておくこと。

12.緊急時の対応

救命手当:倒れている人がいたら

東京防災救急協会 http://www.teate.jp/teate_p01non.htm より転載

★ 11 号館ピロティに AED が設置してある

★ 必ず教員に報告すること

★ 大学保健室への連絡方法 内線からは 3518 外線からは 0422-37-3518

① 意識の確認。

軽く肩をたたきながら名前を呼んだり、「大丈夫ですか」、「もしもし」などと呼びかけ

る。

② 気道確保。

人差し指、中指の 2 指をあご先に、もう一方の手を額に当てる。あご先を引き上げ頭をう

しろにそらせる。

③ 呼吸の有無を調べる。

傷病者の胸腹部を見ながら、頬を口・鼻に近づけ、呼吸音、吐く息を感じとる。下腹部の

動きにも注目する。

④ 心臓マッサージ

手を重ね垂直に圧迫する。肘は曲げない。 リズム:100 回/分 深さ:3.5~5cm

手掌基部この部分

で圧迫する

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