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放射線治療の最前線

NTT東日本札幌病院 放射線科部長

西岡 井子

NTT東日本札幌病院 第202回 健康セミナー

2017年1月21日

がん治療の3本柱

外科的切除 化学療法

欧米 50~70%

放射線治療を受ける患者の割合

日本:25~30%

放射線治療

放射線治療の歴史

1896年 初の放射線治療の試み

1950年代 治療装置(X線直線加速器)開発 X線シュミレーター(2次元治療計画)

1970年代 基本的根治照射方法の確立

(1983年 日本で初の陽子線治療

1990年代 CT治療計画(3次元治療計画)

2000年代 定位放射線治療・ガンマナイフ

IMRT、IGRT、RTRTなど高精度治療の開発・適用

*IMRT:強度変調放射線治療 IGRT:画像誘導放射線治療 RTRT:動体追跡照射

放射線治療装置(汎用機)の進歩と変遷

当院のリニアックも昨年10月最新の機種に

Varian社製

「trueBEAM」

RTRT(動体追跡装置)

IGRT(画像誘導放射線治療)

呼吸同期照射装置

3次元治療計画

脳定位照射

体幹部定位照射

回転照射

* IMRTは準備中(前立腺は金マーカー留置し固定多門照射)

放射線治療の基礎知識

そもそも、放射線って何?

どうして がんの治療に使うの?

危険じゃないの?

細胞の中の原子に放射線が照射されると、

どんなことが起きる?→電離(イオンができる)

電子が1個だけ、どこかに はぐれていってしまいます。 そうすると、 マイナスとプラスが つりあわなくなって プラスイオンと電子が できます。

原子核 +4

電子

電子

電子

放射線 電子

エネルギー

細胞の中の原子に放射線が照射されると、

どんなことが起きる?。。。。

プラスイオン

電子 原子核 +4

電子

電子 ー

ー 1+

DNA

マイナスイオン

攻撃! 攻撃!

放射線

分裂中の細胞は 放射線に弱い!

がん細胞のほうが 正常細胞より放射線に弱い

照射法の違い 体外照射 内照射

体の外から放射線を当てる。 懐中電灯の光をあてるイメージ

体の中に放射線を出す薬を入れる。 注射・カプセル内服・埋め込みなど。

体の中に放射線は残らない。 周りの人には影響がない。

尿や汗から微量の放射線が出る。 投与後一定期間は周りの人にも 多少影響があるので注意が必要。

リニアック・陽子線など ヨード内服・ストロンチウム点滴など

放射線治療の準備(体外照射)

放射線治療医の診察 治療時と同じ姿勢でCTを撮像します

皮膚に照射する位置の基準となるマークをつけます

治療台の上に横になってもらい、実際に放射線があたる位置を 確認します。

放射線治療を受ける(体外照射)

患者さんは治療台の上に横になります

照射中は患者さん以外の人は治療室 の中に入れません

実際に放射線が照射されるのは 数十秒~数分です。

放射線治療は1日1回。 決められた回数の治療が 必要です。

1部位の治療にかかる時間は 10~30分です。

線量分布画像

(a) 照射時途中 (b)治療終了後1ヶ月

放射線治療の特徴 治療開始前の状態

腫瘍がなくなり

もとの組織が再生される!

放射線治療の特徴

1. 腫瘍への効果

腫瘤→縮小・消失

増大抑制

2. 周辺組織への効果

腫瘍で破壊された組織→再生

照射された正常組織→炎症(副作用)

左大腿骨転移へ25Gy/5f照射

左の大腿骨は再生してきた! 現在は杖なしで歩行可能

左大腿骨転移 照射前と 照射後1ヶ月目のCTの比較

ところが、

ここまで破壊されると修復できない

放射線治療はタイミングが大事!

この時点では

再生の可能性高い

組織が再生するには

形態の記憶が残っていなければならない。

放射線治療の適応

1. 根治照射 (原発巣+リンパ節領域)

2. 術前照射(治癒切除の補助)

3. 術後照射(再発予防)

4. 緩和的照射(再発・転移巣への照射) ●腫瘍コントロール

●症状緩和(疼痛・神経症状)

●症状発現予防

照射後 1ヶ月

多発脳転移に対する全脳照射の効果

腫瘍縮小

脳浮腫改善

嘔気改善

頭痛消失

単発脳転移に対する脳定位照射の効果

治療開始前 脳定位照射後 5ヶ月目

左半身不全麻痺あり 麻痺は改善

(車椅子で来院) 神経症状なし

右前頭葉に単発脳転移 前頭葉転移は消失

(頭頂葉に新たな転移出現)

実は適応が広い!転移・再発への照射

骨転移

脳転移

リンパ節転移

肺転移・肝転移

皮膚転移

1. 症状緩和(緩和ケア)

2. 腫瘍コントロール(延命)

3. 精神的意義(治療意欲・美容上)

副腎転移

放射線治療の副作用の例

<急性期反応>(照射中~照射後1ヶ月)

放射線性皮膚炎

放射線酔い(倦怠感や乗り物酔いのような症状)

<晩期反応>(照射後3ヶ月~数年)

放射線肺炎

皮膚・脂肪の硬化・瘢痕形成

放射線性脊髄炎

放射線の副作用

1. 照射された範囲に起きる

正常組織には出来るだけ照射しない

2. 急性期反応は一過性

回復するまでの期間が予想できる

3. 晩期障害は半年以上後から

予後、症状から治療法を決める

著しい

技術の進歩

副作用を減らすためには

できるだけ正常組織に

放射線をかけない

病巣だけに

放射線を正確に

照射する工夫

照射部位への

照射以外の刺激を

できるだけ減らす

日常生活上の

注意・ケア

放射線技師・治療医 患者・看護師

放射線治療に使う

放射線の種類と装置の特徴

進歩した放射線治療装置のいろいろ

現在最もよく使われている放射線治療装置

いろいろな呼び方(通称)があります。 ●Linea-accelelator (リニア アクセレレーター) ●リニアック ●ライナック ●直線加速器

三菱製 動体追跡照射装置付リニアック (NTT東日本札幌病院)

正式名称:高エネルギーX線照射装置

いろんな メーカーが ありますが、 皆同じ仲間

バリアン社製 リニアック (東札幌病院)

TOP > 治療2 放射線療法

「放射線」というと、原爆の放射能のイメージが浮かんできて、「こわいもの」と思う人もいるかもしれませんが、がんの治療の放射線は、他の治療と比べても、大きくからだを傷つけることなく、機能も損なわれないものです。乳がんは、比較的放射線が効きやすいがんといわれています。乳房温存手術が増加し、放射線治療が併用される機会が急増しました。

放射線治療とは 乳房温存手術後に 放射線治療の流れ 温存手術後の照射について 放射線治療の副作用

局所療法のひとつ

放射線治療は、手術と同じく、がんとその周辺のみを治療する局所治療です。がん細胞に外から高エネルギーのX線をあてて、増殖を抑えたり、死滅させたりします。局所治療なので、全身への影響は少ないのですが、一度照射した部位には再度(一定量以上)照射することはできません。

放射線治療をするのは

乳がんの場合の放射線治療は、がんの種類にもよりますが、効果が現れやすく、治療に痛みを感じず、副作用が少ないので、さまざまな場面で行われます。

●乳房温存手術後の照射 ●局所進行乳がんに対する照射(術前照射含む) ●局所再発乳がんに対する照射 ●進行乳がんに対する領域リンパ節への予防照射 ●遠隔転移巣(骨、脳など)への照射

ただし、以下のような場合、放射線照射はできません。

●すでに一定量の照射をした部位への照射 ●妊娠中の人への照射 ●膠原病の人への照射 ●患者が希望しない場合

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乳房温存手術後に

乳房温存手術では、残した乳房の中に目では見えないほどの微小ながん細胞が散在している可能性があります。それを殺傷するために、手術後に放射線治療を行い乳房内再発(局所再発)を予防します。この照射で、乳房内の再発を1/3~1/10に減少できるというデータがあります。 このように乳房温存手術と放射線治療をセットにしたものが、「乳房温存療法」です。

日本の「乳房温存療法ガイドライン」は、日本乳癌学会から1999年に発表されています。乳房温存手術後の放射線照射を早期に開始することを奨励しています。 参照:日本乳癌学会ホームページ 最近では、非浸潤癌でも、温存療法が行われる場合があり、これに伴い術後の照射が必要になってきました。

乳房切除術後に

乳房の全摘手術でも、リンパ節転移が多い場合には、放射線治療が行われることがあります。胸壁への再発を減らし、領域のリンパ節転移、遠隔転移を抑える目的で、胸壁、鎖骨上窩などに照射されることがあります。

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治療の開始時期

通常、手術が終わって、2~3週間後、遅くても6週間以内には治療を開始します。この頃は、手術の傷跡が落ち着いて、手術した側の腕も挙がるようになっています。なお、手術後に化学療法を行う場合、放射線治療は、その後に始めます。

診察

放射線治療は、以下のような流れで行われます。

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温存乳房全体への照射

乳がん手術後の治療では、手術した乳房全体に、1回2Gy(グレイ=放射線単位)を、土曜、日曜、祝日を除く平日に連続して23回~25回(1週間に5回・約5週間)照射します。総線量46~50Gyになります。続けて照射を受けることで、再発予防の効果が高まります。

重粒子線(炭素線)

↓ブラッグピーク

リニアックでの照射

・固定多門照射 ・定位照射 ・回転照射 ・IMRT (強度変調放射線治療)

多方向から少しづつ放射線を 目的の場所に照射する。

重なった部分に線量を集中

場所によっては陽子線より良い線量分布が得られる

X線・陽子線・重粒子線・電子線の比較

生物学的効果

高エネルギーⅩ線=電子線=陽子線<重粒子線

線量分布

◎円形の腫瘤:Ⅹ線=<陽子線・重粒子線

◎皮膚表面に近い病変:

◎リンパ節領域への照射のような広範囲:

Ⅹ線<電子線

陽子線、重粒子線は不適

Ⅹ線は広範囲の照射に適する

電子線、陽子線、重粒子線は不適

なぜ、陽子線(重粒子線)治療は高額な治療なのか?

⇒ 設備(サイクロトロン)のために広い場所とお金が必要だから

一般的な放射線治療

1回の治療で

3000~6000円

(3割負担)

25回照射しても

15万程度

陽子線治療

一連の治療で

約300万円

重粒子(炭素線)治療装置

生物学的効果が高いビームが出るので、 X線や陽子線が効きにくい腫瘍にも効果が期待できる。

例: 骨肉腫

腺様嚢胞癌

脊索腫 など

ただしビームが2方向からしか

照射できない。

ベッドを傾けて照射する。

(比較的まれな腫瘍)

(画像誘導放射線治療)

当院の最新の治療装置で出来ること

皮膚マーカーで 治療台の上で撮った画像で

照射位置をあわせる方法の進歩

(利点) 皮膚マークを保持するストレス軽減・より正確な位置合わせができる・ 毎回の治療前・治療中にもミリ単位で位置を微調整できる

BEAM ON BEAM OFF

腫瘍が照射野内にある時

だけ放射線が照射される! 腫瘍

照射野

(動体追跡照射・呼吸同期照射)

腫瘤の呼吸移動による照射誤差を軽減する工夫

当院の最新の治療装置で出来ること

埋め込んだ金マーカーを追跡する

A B と は

同じ方向から

照射しているが、

Aは

腫瘍全体を含む

直腸前壁も含む

Bは

腫瘍後面は含まない

前立腺も含まない

前立腺癌の

IMRT 多門照射の例

小さな照射野の

ビームを多数

重ね合わせて

正常組織を避けて

病変だけに正確に

照射する技法。

IMRT:Intensity Modulated radiation therapy(強度変調放射線治療)

放射線治療装置を上手に利用して、副作用の少ない治療を皆様にお届けするため 放射線治療医は日々努力しています。

放射線治療のことで疑問があれば、いつでも遠慮なく地下1階のリニアック室にいらしてください。スタッフが優しく説明します。

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