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第34回山陰認知症ケア研究会2019.4.7
慶應義塾大学医学部精神神経科三村 將
認知症高齢者の自動車運転
認知,予測,判断又は操作
認知症高齢者の自動車運転
⚫自動車運転に関する法整備⚫すべての患者の運転適性は状態像によって判断⚫高齢者の認知機能検査はあり方が変わっている
⚫向精神薬と自動車運転⚫添付文書上の「運転させないこと」の文言は消える⚫薬剤の運転への影響は個別に判断される
⚫運転能力の評価⚫運転適性評価の体系的な仕組みができている⚫グレーゾーンの患者には実車評価がマストに
⚫移動手段の多様化⚫限定付き運転免許証の整備・普及⚫ アシスト運転,自動運転で運転自体は限定的に
評価と支援
⚫安全運転に必要な認知,予測,判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くおそれがある症状
⚫絶対的欠格事由=回復困難な認知症⚫相対的欠格事由⚫幻覚の症状を伴う精神病(統合失調症)⚫発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気
(てんかん,再発性の失神,無自覚性の低血糖症)⚫躁うつ病⚫重度の眠気を呈する睡眠障害⚫アルコール,麻薬,大麻,あへん又は覚醒剤の中毒⚫その他
規定されている疾患
改正道路交通法(2002.6.1施行)
➢アルツハイマー病、血管性認知症等6ヶ月以内に回復の見込みがない認知症では免許の取り消し
➢6ヶ月以内に回復する見込みがある認知症の場合は、6ヶ月以内の免許の停止
認知障害に関する欠格条項
絶対的欠格事由
高次脳機能障害軽度認知障害重症度=1が
境目
Petersen, 2001
認知症の進展
記憶障害 軽度認知症ではない 正常な認知機能
正常な日常生活動作運転・家事などに支障がない
前臨床アルツハイマー病
軽度認知障害
(MCI)
アルツハイマー型認知症軽度 中等度 重度
精神神経学会の声明(2013年1月19日)⚫特定の病名に基づく免許の制限は正当性がない⚫病気等に起因する交通事故701件の解析であり,信頼性がない⚫医学的根拠のないまま病気を有することのみをもって免許を奪う方向に傾斜している
①虚偽申告者への罰則整備
障害者差別の矛盾を強め,精神科受診拒否を深刻化させ,有効性にも疑問がある
②医師による届け出制度
上記に加え,医師の負担を不当に増加させ,医師患者関係に重大な問題をもたらし,結果として交通事故のリスクを増加させる
③再取得の負担軽減
④病状が判明するまでの間の免許停止
特定の病名に基づく免許の制限という本質的な問題を強化し,不適切
交通事故のデータベース化
病気と交通事故の関連があるかのごとき前提で議論されている現状では,実情を明らかにできない
病名・診断ではなく状態像で判断
第三者による運転評価システムの確立
⚫ 認知症と危険な運転との因果関係は明らかではない。⚫ 認知症であっても運転能力が残存しているのであれば、それを奪うことは不当である。
⚫ 認知症であるか否かの診断に一括して解決するのは誤りである。⚫ 認知症の有無を診断する医師の確保がなされていない。⚫ 診断書作成に必要な検査等の保険適応の可否について、警察庁と厚生労働省との間で合意がない。
⚫ 運転中断に際しての代替措置が十分ではない。⚫ 厚労省などの関係省庁、老年医学専門家、有識者などによる検討会を立ちあげ、真の意味での交通安全と高齢者の生活に資する施策をあらためて採っていく必要性
改正道路交通法の施行(高齢運転者対策関連)に関する要望(抜粋)
2016年11月19日
提言https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/20150203.pdf
病名・診断ではなく状態像で判断
第三者による運転評価システムの確立
ヨーロッパにおける認知症と運転免許トルコ
主治医の診察で認知症の疑いがみられた場合、専門医へ紹介し診断書を作成する。
ポルトガル運転に影響を及ぼしうる症状をもつ患者を診察した場合、監督機関へ詳細な報告書を提出する必要がある。 2011年にてんかんと糖尿病について、運転に関する診断が言及された。
オランダ認知症とされると運転不可。初期の状態にあると考えられる者は、運転評価を含む特別評価を勧められる。
フランス医師は運転を禁止することはできない。しかし、症状によって運転に危険が生じる可能性について説明をしなければならない。
ドイツ1952年制定の法律に基づき、監督局が運転中断の判断を行う。
イタリア主治医が運転に影響を及ぼすような症状があるとした場合、Local Medical Committee for Driving Licenseを訪ねるよう勧めることができる。
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0点以上~15点
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69点以上~71点
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78点以上~80点
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80点以上~82点
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88点以上~90点
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92点以上~94点
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94点以上~95点
未満
95点以上~100点未満
CDR0 CDR0.5 CDR1
n=489
認知機能検査得点別人数
(
人)
CDR別認知機能検査得点分布
第1分類 第2分類 第3分類
認知機能検査と認知症の関係
CDR 0 CDR 0.5 CDR 1
N=489
警察庁交通局運転免許課資料
高齢者の認知機能検査をファイナンシャルジェロントロジー領域(証券・銀行・不動産等)に応用
スマートカーを用いた実際の運転パラメータと連動
認知症高齢者の自動車運転
⚫自動車運転に関する法整備⚫すべての患者の運転適性は状態像によって判断⚫高齢者の認知機能検査はあり方が変わっている
⚫向精神薬と自動車運転⚫添付文書上の「運転させないこと」の文言は消える⚫薬剤の運転への影響は個別に判断される
⚫運転能力の評価⚫運転適性評価の体系的な仕組みができている⚫グレーゾーンの患者には実車評価がマストに
⚫移動手段の多様化⚫限定付き運転免許証の整備・普及⚫ アシスト運転,自動運転で運転自体は限定的に
評価と支援
病気による交通事故を刑罰の対象とする初めての法律
自動車の運転に支障を
及ぼすおそれがある病気
統合失調症
てんかん
再発性の失神
無自覚性の低血糖症
そううつ病
重度の眠気を呈する睡眠障害
対象としないもの(例)
介護保健法第5条2に規定する
認知症
アルコール、麻薬、大麻、あへ
ん又は覚せい剤の中毒者
刑事法新法制定案(2013.2.13)(交通死傷事故を別にまとめて新しい刑罰を設けた)
罰則 内容 刑罰(上限)
危険運転
致死傷罪
・飲酒や薬物で正常な運転が
難しかった場合
・著しいスピード超過など
・危険な速度で割り込みや幅
寄せ、信号無視
・逆走運転(新設)
懲役20年
中間の罪
(新設)
・飲酒や薬物、病気の影響で
正常な運転ができなくなるお
それ
懲役15年
自動車運転
過失致死傷罪
・その他の交通死傷事故 懲役7年
いずれも無免許運転なら量刑を重くできる
厚労省課長通達2013年5月29日に
医薬品添付文書に記載のある運転禁止の患者説明を
徹底するようにとの課長通達が出された。
向精神薬が自動車の運転技能に及ぼす影響
多くの向精神薬は症状を改善する効果と再発予防効果を持つことが立証
改善して社会復帰を果たしてからも再発予防のため継続した服薬が必要
向精神薬の添付文書:「本剤投与中は眠気、注意力・集中力・反射
運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等危険を
伴う機械の操作には従事させないよう注意すること」
向精神薬の添付文書と患者説明文書
向精神薬の添付文書と患者説明文書
向精神薬の添付文書と患者説明文書
ドネペジル(アリセプト®)の添付文書と患者向け情報
向精神薬の添付文書と患者説明文書運転に従事させない→注意する
薬剤の運転への影響は個別に評価
現在この問題を厚労省・PMDAに答申中
認知症高齢者の自動車運転
⚫自動車運転に関する法整備⚫すべての患者の運転適性は状態像によって判断⚫高齢者の認知機能検査はあり方が変わっている
⚫向精神薬と自動車運転⚫添付文書上の「運転させないこと」の文言は消える⚫薬剤の運転への影響は個別に判断される
⚫運転能力の評価⚫運転適性評価の体系的な仕組みができている⚫グレーゾーンの患者には実車評価がマストに
⚫移動手段の多様化⚫限定付き運転免許証の整備・普及⚫ アシスト運転,自動運転で運転自体は限定的に
評価と支援
米国の運転再開への手続き各州により必要な手続きが異なる
更新期間 申請 視機能検査 筆記試験 路上評価 診断書
カンザス州 6年 直接申請 あり あり あり 不要
テネシー州 5年 直接・郵送・オンライン あり なし なし 推奨
ワシントン州 5年 直接 あり 医師の判断 医師の判断 推奨
ペンシルバニア州 4年 直接・郵送・オンライン なし なし なし 必要
加藤貴志ら: 総合リハ, 44: 1087-1095, 2016
⚫認知機能検査
⚫一般的知能
⚫注意力
⚫視覚認知・視空間処理
⚫情報処理能力
⚫判断力
⚫運転シミュレータ(オフロード)
⚫家族(同乗者)による評価
⚫実車による評価(オンロード)
運転に関連する認知機能の評価
運転への影響が大きい認知機能
Regerら:Neuropsychology,
2004
知能
注意
視空間認知
記憶 遂行機能
注意障害
全般性注意 持続性 sustained
選択性 selective
制御性 転換 alternating
配分 divided
方向性注意
TMT-BTMT-A
Trail Making Test日本版 (TMT-J)
反応時間計測
高次脳機能障害学会BFT委員会, 2019
高次脳機能障害学会で年齢ごとの標準化版を作成
標準注意検査法(CAT)Clinical Assessment for Attention
日本高次脳機能障害学会BFT委員会, 2006
① Span1)Digit Span(数唱)2)Tapping Span(視覚性スパン)② Cancellation and Detection Test (抹消・検出検査)
1)Visual Cancellation Task(視覚性抹消課題)2)Auditory Detection Task(聴覚性検出課題)③ Symbol Digit Modalities Test(SDMT)④ Memory Updating Test(記憶更新検査)⑤ Paced Auditory Serial Addition Test (PASAT)⑥ Position Stroop Test(上中下検査)⑦ Continuous Performance Test(CPT)
Symbol Digit Modalities Test (SDMT)
⚫UFOVサイズは課題や負荷で変動する⚫個人差が大きく,加齢により縮小する⚫訓練により拡大する場合がある⚫課題中に情報を検索,弁別,処理ないしは貯蔵しうる注視点の周辺領域である(Mackworth, 1965, 1976)
⚫UFOVと路上運転評価成績に相関があり(Cushman, 1996),その縮小と事故も関連する(Sims, 2000)
周辺視野
有効視野(UFOV)中心視
有効視野 Useful Field of View (UFOV)
+Go/No go
VFIT
Visual Field with Inhibitory Tasks (VFIT)
高齢者版 VFIT-EV
⚫ 運転可否予測に特化した検査で信頼性,妥当性が検証されている⚫ 検査時間は30分,4つの下位検査で構成される⚫ 英国で開発され,複数の言語に翻訳され活用されている⚫ 日本での妥当性を検証済(山田恭平ら: 高次脳機能研究, 2018)
加藤貴志先生WFOT資
料より:井野辺病院総合リハビリテーションセンター
J-SDSA日本版Stroke Drivers Screening Assessment
SDSAによる運転技能予測
72 39 111
30 116 146
102 155 257
不可 可
可
不可
合計
合計
SDSAの先行研究対象者を合算して予測精度を計算予測精度73.1%、感度70.5%、特異度74.8%
実車評価
SDSA
加藤貴志ら: 総合リハ, 44: 1087-1095, 2016
⚫ Salford Objective Recognition Test (SORT) 即時・遅延再生⚫ 成人版記憶と情報処理バッテリー (AMIPB) 情報処理A⚫ ストループ検査ビクトリアバージョン⚫ 日本版を作成中
NADD: Nottingham Assessment for Drivers with Dementia
7つのサブテスト
Hird MAら:JAD, 2016
⚫ 32論文⚫ AD 1293人⚫ MCI 92人⚫ 健常者 2040人
認知症の運転評価に関するメタ解析個別の
神経心理学的検査の
Effect Size
Hird MAら:JAD, 2016
⚫ 32論文⚫ AD 1293人⚫ MCI 92人⚫ 健常者 2040人
認知症の運転評価に関するメタ解析認知領域ごとのEffect Size
医師,OT, ST, PTと臨床心理士の協調
Hird MAら: JAD, 2016
⚫ 32論文⚫ AD 1293人⚫ MCI 92人⚫ 健常者 2040人
認知症の運転評価に関するメタ解析
グレーゾーン例には実車評価を
現在,高次脳機能障害に関して全指連と統一マニュアル作成中
実車による評価のESOn Road Test
標準化された神経心理検査を用いた運転適性の評価
⚫TMT ⚫SDMT ⚫S-PA ⚫DADD など
安全群 中間群 危険群
⚫運転シミュレータ
⚫実車による評価
early MCI late MCI early AD AD
高次脳機能障害学会で運転評価に資する
神経心理学的検査を作成中
⚫認知機能の低下した人への安全運転教育
⚫運転不適と判断した人への適切な措置
リスクドライバーへの安全運転対策
公安委員会行政処分の
最終的な判断
医療機関認知機能の維持
高次脳機能障害の診断
教習所運転者の自覚
安全教育の推進
1280校余り
配置年度 警察(配置人員)
平成26年度 熊本(3)、鳥取(3)、茨城(1)
平成27年度 鹿児島(1)
平成28年度 大分(3)、和歌山(1)、佐賀(2)、長崎(2)、宮崎(4)、香川(1)
平成29年度 秋田(1)、警視庁(2)、山梨(1)、富山(1)、兵庫(1)、奈良(1)、愛媛(3)、京都(2)、沖縄(2)、群馬(1)
神奈川県警免許センターに作業療法士
全国初,高齢者の運転支援2018.6.
認知症高齢者の自動車運転
⚫自動車運転に関する法整備⚫すべての患者の運転適性は状態像によって判断⚫高齢者の認知機能検査はあり方が変わっている
⚫向精神薬と自動車運転⚫添付文書上の「運転させないこと」の文言は消える⚫薬剤の運転への影響は個別に判断される
⚫運転能力の評価⚫運転適性評価の体系的な仕組みができている⚫グレーゾーンの患者には実車評価がマストに
⚫移動手段の多様化⚫限定付き運転免許証の整備・普及⚫ アシスト運転,自動運転で運転自体は限定的に
評価と支援
Collaboration with Panasonic
Cruise Convention Centers Theme Parks
39
Mall
Airport
アシスト運転,自動運転で運転自体は限定的に
個々の運転能力に応じた対応
⚫医師による任意通報制度の活用
⚫限定付き自動車免許
(夜間禁止,範囲の制限,運転時間の制限等)
⚫運転アシスト機能の利用
⚫運転リハビリテーション
体系的な運転評価の仕組み作り
グレーゾーンの場合、実車をマストに
限定付き運転免許証の整備・普及
認知症高齢者の自動車運転
⚫自動車運転に関する法整備⚫すべての患者の運転適性は状態像によって判断⚫高齢者の認知機能検査はあり方が変わっている
⚫向精神薬と自動車運転⚫添付文書上の「運転させないこと」の文言は消える⚫薬剤の運転への影響は個別に判断される
⚫運転能力の評価⚫運転適性評価の体系的な仕組みができている⚫グレーゾーンの患者には実車評価がマストに
⚫移動手段の多様化⚫限定付き運転免許証の整備・普及⚫ アシスト運転,自動運転で運転自体は限定的に
評価と支援
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