互いを認め合い,良さを...

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1 はじめに

学校って楽しい。友だちと遊ぶのだいすき。学ぶことがおもしろい。こんな子どもたちの声が聞こえると,教師

として嬉しいものである。4月に学級担任として子どもたちと出会う始業式の日に,私がまず教室で話すことは,「みんなが元気に登校し,笑顔で過ごせるクラスにしていきたい」という願いである。学級担任として,笑顔で過ごせる学級を目指して心がけていることや毎年行っている日々の取組を紹介する。

(1)担任としての願い学級経営計画を立てるにあたり,学校教育

目標や目指す児童像と担任としての願いをつなぎ合わせて行かなくてはならない。本校の教育目標は『だいすき城北・だいすきみんな・だいすき自分』である。私の学級担任としての願いは『自分を大切にし,人を大切にする』『笑顔いっぱい・せいいっぱい・高まり合う』児童であり仲間である。子どもたちには,まずは笑顔で登校し,自分のことが好きであり,友だちと一緒にいることが楽しく,学校が大好きであってほしいと願っている。このことは,当然保護者としての願いでもある。そして,精いっぱい学び,遊ぶ中で,互いに切磋琢磨して高まり合い,自分を伸ばしてほしいと願っている。(2)学級経営計画を立てる年度初めは会議や打合せ,学級事務と,す

べきことが山のようにある。その中,新しい学級のスタートを前に,前担任からの引き継ぎ事項や児童の発達段階を考慮し,学校目標や目指す児童像とつなげながら学級づくりの

基本方針と実践計画を立て学級経営に努めてきた。学習指導要領にも,これまでになかった学

級活動の目標や発達に応じた活動内容などが示されている。それだけ,計画的な学級経営や学級活動を推進するようにというねらいがあるのだろう。私が毎年学級経営案を立てるようになった

のは,現任校で勤めるようになってからである。それまでは,学級経営計画のイメージや具体的な活動をメモしていた。学級経営計画を作成するようになっても,

するべきことは大きく変わらないかもしれない。また,計画通りに進むわけではない。しかし,PDCAサイクルに則って評価や修正を行い,学級担任として学級づくりや具体的な取組を計画的に意識して行うことに大きく役立っている。学級経営計画の項目は次の通りである。

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篠山市立城北小学校

教諭 足あ

立だち

真しん

一郎いちろう

No.1 ~認められるシステムと活躍の場づくり~

互いを認め合い,良さを生かした学級づくり

1 学級の概要(児童の実態)2 学級経営の方針3 学級目標4 具体的な実践計画(1)教科・総合的な学習の時間・道徳・特別活動の指導(2)家庭(保護者)との連携について(3)地域社会との連携について

2 想いを持ち計画的な学級づくりに努める

(1)自尊感情が根っこの力学級においては,互いを認め合い,尊重し

あえる人間関係を中心に考えている。友だちを大切にしていくためには,自分のことが大切にできる子でなくてはならない。自分のことが好きで自尊感情が高いほど,友だちの良さも認め,温かく関わることができると考えている。学級の中で,できるだけ一人一人の良さを出し合えるように,また,良いところを認め合おうとする雰囲気づくりと,教師自らが認めること,褒めることを大切にした関わりを行うよう心がけている。①友だちや学級の良いところを紹介学級が始まる4月,子どもたちは新鮮な気

持ちでやる気に満ちている。また,新しい担任との出会いの中,自分のことをよりよく知ってもらいたい,受け入れてもらいたいという思いが強い。そこで,初めての出会いの日に「みんなのことを教えてね。友だちやクラスの良いところを教えて」と紹介をさせた。昨年度は子どもたちの発案で,終わりの会

に「よいところ連絡」として良いことをしていた友だち,がんばっていた友だちを紹介し合う時間を設けた。本年度は高学年であり,個人的ながんばりでなく高学年としての行動や学級としての成長を紹介し合う「きらり昴

すばる

星ぼし

」という時間を設けている。②一人一人の良さを共有する家庭訪問では,子どもの情報交換の一つと

して「我が子自慢をしてください」というお願いをしている。学校とはまた違った子どもの一面を教えていただき,クラスの子どもたちにも紹介している。また,保護者には我が子の良さに目を向けてもらうとともに,子どもが親の思いに触れる機会としたい。家庭訪問や,友だちの良いところの紹介で

出てきたものを,「私は誰でしょう」とクイズ形式にして紹介し,交流している。友だち

の良いところを知るとともに,紹介された本人はみんなに認められ,その場の中心になり,とても嬉しそうな表情を見せている。校外学習の車中等でレクレーションとして行うと盛り上がる。(2)「スーパー○年生」を紹介しよう4月当初や毎日の終わりの会だけでなく,

月末や学期末など定期的に友だちの良いところを紹介する機会を設けている。最近は,「ほめほめカード」「スーパー○年生」「昴リーダー」など,ネーミングは様々であるが,生活目標に合わせてお手本となる友だち,友だちの頑張っている姿や成長したところを相互評価する取組としている。今年度は,毎月の目標(あいさつ・掃除・

時間)に合わせて「昴リーダーを紹介しよう」という取組を行った。また,1学期末に,「スーパー5年生」として紹介する子を自由に書かせた。多くの子が,あいさつ・掃除・時間を守るという学校の生活目標に照らして友だちの良さを見つけていた。「あいさつリーダー」「掃除リーダー」「時間リーダー」である。この中で,「掃除リーダ-」や 「時間リーダー」は,クラスの中で目立たないが,真面目に生活している子が認められることが多いという良さがある。2学期には,学級目標である「笑顔いっぱ

い・精いっぱい・高まり合う」行動ができている子にも目を向けさせた。そうすると,これまで出てこなかった次のような評価をする児童が現れた。

「遊びリーダー」「学習リーダー」の誕生である。リーダーが誕生したときには,認定証を渡し,学級通信で紹介している。そうすることで,保護者にも認められることになる。

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3 互いを大切にする学びの場を目指して

▲ 城北小学校での学級経営計画

・○○さんは,遊び係で色々な遊びを計画してみんなを楽しませてくれている。・○○さんは,学習のときよく発表して私たちの勉強になっている。

▲ リーダー紹介カード ▲ スーパー○○賞

(1)目指す学級や自分を意識させる仲間づくりでは,人と人との関わりにおい

てどういう状態や行動が望ましいのかを意識させ,定期的に自分の行動を評価し,生活を改善していくことが大切だと考えている。年度当初に,「わたしたちのクラス」とい

う題名でクラスの良いところや伸ばしたいところを書かせている。自分たち(個人・学級)の姿を見つめ,目指すものとして具体的な態度や行動を言葉にすることで意識させるようにしている。

2学期末の児童の振り返り作文である。

3学期の初日に子どもたちに紹介し,担任としても嬉しい気持ちを伝えた。期待する姿や褒め言葉を継続的に注いでいくことで,より良い学級になることを期待している。(2)行動目標と振り返りを大切にする多くの学級担任と同じように,学級目標の

他に学期毎に個人目標を立てさせている。内容は学習面と生活面である。この個人目標を

立てるときに指導していることが2点ある。1つは,できるだけ具体的な努力目標で表現するということである。子どもたちは,「算数をがんばりたい」とか「忘れ物をなくしたい」といった願いを書くことが多い。それにとどまらず,私はできるだけ具体的に書くように指導している。例えば,算数をがんばることを目標にする子には,「週に4日自主学習をする」とか「忘れ物をしないために,連絡帳にチェックを入れる」など具体的な行動や数値目標を入れることで,努力できているかいないかが自己評価できるようにしている。もう1つは,目標を意識して生活するように,定期的に振り返りを行うことである。色々な方法が考えられるが,今のクラスでは毎月チェックするための振り返りシールを貼っている。目標がほぼできている=青色,もう少しだが努力目標は意識して取り組んでいる=黄色,達成できておらずもう少し努力が必要=赤色のシールを貼って評価活動を行っている。評価を行

うのは,結果を評価するためだけでなく,常に目標を意識させるためでもある。そのために,担任としても個別の励ましや学級全体への声かけなど,折りに触れて行っている。

学級での生活を豊かに,一人一人の児童が過ごしやすくするために,様々な当番活動や係活動がある。一人一人の良さを生かしたり活躍できる場を設けたりすることで学級での生活が楽しくなり,活躍できる場づくりができる。

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4 目標・実践・評価を繰り返す

【わたしたちのクラス】(仲間づくりの主なもの)☆こんないいところがあるよ・外でよく遊ぶ。・困っている子を助ける。助け合える。・元気がいい。明るい子が多い。 など☆こんなところを伸ばしていきたい・ちょっかいをかけたり,きつい言い方をなくす。

・ケンカをしたとき自分たちで解決する。・発表するときなどは大きな声で言う。・人の意見をよく聞く。 など

○ ケンカが少なくなったところが良いところです。ケンカをなくそうと決意をしたのが理由だと思うし,とめる人も増えてきているからだと思います。…成長したと思うのは,だれかが声をかけたら静かになるところです。前までは声をかけてもしゃべったりしていたけど,今はたいていの人は静かにしてくれるので助かります。○ クラスの一番良くなったところは,目標に向かって一生懸命になったことです。1学期は言うだけ言って行動しないと

いう人が多くいたけれど,2学期は自分で目標を立てて一生懸命努力している姿が多く見えたので良かったです。

5 体験や活動の中での学級づくり

▲ 個人めあてと自己評価

個人目標

行動(日常生活) 行動意識の高揚

自己評価(現状認識)

係活動には当番活動と創意工夫していく活動とがあり,私は係活動のことを子ども向けには「会社」と呼んでいる。2学期の学級の係活動(会社)には次のものがあった。

活動の様子を紹介する。○「みな遊び」(今年度の取組)児童にとって遊びは学習と同様に大切な時

間である。集団の中で友だちと関わり合うことで相手のことをより理解し,互いを大切にし合う仲間づくりにつながる。週1回の「みな遊び」「誕生日のスペシャル遊び」など学級活動での集団活動を定期的に行いたい。今年度の担任している学級では「遊び会社

をつくりたくない」という声が出た。「みな遊び」をすると必ずもめて楽しくないというのが理由である。教師になって,初めての声に驚いた。私は,週に一度はみんなで遊んでほしいという願いがあったが,自主的な活動についての話合い活動の結果である。担任としての思いは別として尊重することにした。ただし,「みんなで遊ぶことが楽しくないというのは,とても残念です。2学期には『みな遊び』ができる学級になるといいですね」という一言をつけておいた。それでも,そのままでは変わらないと考え,週に1回は下校準備を早く済ませ10分程度みんなで遊ぶ時間を担任主導で設けた。担任がいて遊ぶとみんなとても楽しそうに遊び,笑顔があふれていた。楽しい経験を増やし,遊びを通してルールを守ったり折り合いをつけたりすることを少しずつ学んできたと思う。そして,2学期から「みな遊び」を再開することができた。○「進級お祝い会&得意技大会」

(昨年度の取組)4月から温めていた企画である。家庭訪問

の時に,「家では物まねが得意でよくしてくれるんです」「百人一首を頑張っているんです」「少林寺拳法を習っています」など,興味を持っていることや頑張っていることをたくさん聞かせていただいた。是非,みんなに披露する活動ができないか考えていた。しかし,子どもたちは恥ずかしがり,なかなか計画や提案の議題にすら乗せてくれようとしなかった。あきらめず「イベント会社」に対して,少しでもこれまで知らなかった友だちの姿に触れさせたいと投げかけてみると,3学

期の「進級お祝い会」に組み入れて計画してくれた。パーティー当日は,友だちの意外な一面に子どもたちは大盛り上がりだった。本人も照れくさそうにしながらも,みんなの様子に満足そうな笑顔を見せていた。翌年にも同様の企画をし,友だち関係を深めていたと聞いたときは嬉しかった。

○広報・啓発活動「花生き物新聞」(今年度の取組)

子どもの中には人前に出ることは苦手だが,色々なアイデアや工夫した表現ができる子がいる。今年の「花生き物愛護会社」の新聞は見事であった。毎週発行し,情報や呼びかけ・クイズ・プレゼントなど内容も充実していた。子どもたちも心待ちにして読んでいたし,発行した子も満足感を存分に味わっていた。

本年度の県学力向上シンポジウムで「居場所のある学級で出番のある授業」という言葉と出会った。本当に大切であると思う。子どもたちにとって,学校が安心で楽しく,いきいきと学ぶ場にしていきたい。まずは,学校生活の大半を占める授業が楽しいことが一番である。学習内容がわかったとき,色々なことができるようになったとき,友だちと学び合ったときなどである。また,「生きる力」の源である自尊感情の育成や,認め合い高まり合う仲間づくりを心がけ取り組んでいきたい。そのためにも,授業力を高めて,楽しい授業を行うこと,肯定的評価を大切にした関わりや学級の雰囲気づくり,認められる・褒められる仕組みを常に意識した学級経営を行うことを目指し,努力していきたい。

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花生き物愛護会社 配達会社 学習会社保健会社 教室環境会社 落とし物会社最高の遊び会社 イベント会社

6 おわりに

▲ 少林寺拳法の演武と「五色百人一首」総あたり戦

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