カシノナガキクイムシ発生消長や分布の把握資料4-2-1 資料4-2...

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資料 4-2-1

資料4-2

カシノナガキクイムシ用トラップ

貴重種の混獲を防ぐよう金網を施した。

沖縄型森林環境保全事業 被害発生状況の把握

カシノナガキクイムシ発生消長や分布の把握

近年国内で拡大しているシイ・カシ類萎凋病(ナラ枯れ)は、病原菌、媒介昆虫ともに沖縄に

生息していることが確認されてはいるものの、被害は顕在化していない。このような中、先行事

業の「沖縄らしいみどりを守ろう事業(平成 24年度~平成 28年度実施)」において、シイ・カシ

林の林齢とその分布よりハザードマップを作成し防除対策を検討したが、やんばる地域や西表島

では大径木化の進むシイ・カシ林が広く分布していることから、監視体制のあり方が課題として

挙げられた。

そこで本事業では、県内のカシノナガキクイムシの調査方法を検討するとともに、生息分布、

発生消長を把握し、地域の状況に応じた戦略的防除方針の策定に資することを目的とする。

【実施フロー 平成 29~令和元年度】

1.平成 30年度 結果

(1) 調査方法

平成 29~30年度は大まかな分布と発生消長の把握を目的として、名護市以北のイタジイ林 9

箇所に専用捕獲器を設置し、カシノナガキクイムシの捕獲に努めた。

調査を行うにあたって、平成 29 年 11 月に森林総合研究所九州支所の後藤秀章氏に聞き取り

調査を行い、後藤氏の指導に基づいた以下の方法で調査を行った。

・シイ・カシ類の分布している林内に、カシノナガキ

クイムシ専用のトラップを設置し、カシノナガキク

イムシの捕獲に努めた(写真)。

・概査として、全体的な分布把握とフェロモンの効用

を確認することを目的とし、沖縄島北部を 9分割し、

分けた範囲それぞれに、ハザードマップを基に調査

地を 1箇所設定した(図Ⅱ.2.1-24参照)。

・沖縄本島のカシノナガキクイムシに既存のフェロモ

ンが有効なのかを確認するため、1地点 4基のトラッ

プをそれぞれ20m以上離して設置し、(カシナガコー

ル)×2 基、(エチルアルコールのみ)×2 基を1週

間ごとに入れ替えて確認を行った。

・トラップを、1 週間に 1 度回収して捕獲されたカシ

ノナガキクイムシの個体数を数えた。

・フェロモンの効果を確認し、エチルアルコールのみ

にするかどうかを判断する。

H29 年度 R1 年度H30 年度

分布調査( 広域)

・ 調査地域: 沖縄島名護市以北 (9 地点 )・ 調査実施 H30 年 3 月~ H31 年 2 月・ 専用ト ラ ッ プをイ タ ジイ 林内に設置、 1 回 / 週 回収

調査方法の検討

・ 森林総研九州支所の  後藤氏の指導に基づ  き 調査方法の検討を  行った。

分布調査( 国頭村)

・ 広域調査の結果から 、 調査地域・ 時期 の絞込みを行った。・ 調査地域: 国頭村・ 調査時期: 5 月~ 10 月末・ 形式の異なる ト ラ ッ プも 追加する

資料 4-2-2

カシノナガキクイムシ用トラップ(1)

誘引剤:カシナガコール+エタノール

カシノナガキクイムシ用トラップ(2)

誘引剤:エタノールのみ

【使用した誘引剤とトラップ】

・誘引剤(カシナガコール、エチルアルコール)

農林水産省登録 登録番号:第 23065号

有効成分:ケルキボルア 78.0%(カシナガコール)

取扱会社名:サンケイ化学株式会社

・トラップ

器材名:昆虫誘引器(透明)

取扱会社名:サンケイ化学株式会社

調査地点は以下のとおりである。位置は次図に示す。

№1 県有林 47林班

№2 県有林 75林班

№3 村有林 77林班

№4 名護市有林 2林班

№5 県有林 66林班

№6 村有林 4 林班

№7 名護市有林 10林班

№8 名護市有林 21林班

№9 名護市有林 1林班

なお、各調査地点に関しては、それぞれ沖縄県北部農林水産振興センター(調査地点№

1,2,5)、国頭村(調査地点№3,6)、名護市(調査地点№4,7,8,9)に許可を得てトラップを設

置した。

資料 4-2-3

調査地点

資料 4-2-4

(2)調査結果

調査は、以下の日程で行った。

調査実施日時

第 1回目 平成 30年 2月 26日(設置) 第28回目 9月 4日(回収 26回目)

第 2回目 3月 5日(回収 1回目) 第29回目 9月 11日(回収 27回目)

第 3回目 3月 12日(回収 2回目) 第30回目 9月 18日(回収 28回目)

第 4回目 3月 19日(回収 3回目) 第31回目 9月 25日(回収 29回目)

第 5回目 3月 26日(回収 4回目) 第32回目 10月 2日(回収 30回目)

第 6回目 4月 2日(回収 5回目) 第33回目 10月 8日(回収 31回目)

第 7回目 4月 10日(回収 6回目) 第34回目 10月 15日(回収 32回目)

第 8回目 4月 17日(回収 7回目) 第35回目 10月 23日(回収 33回目)

第 9回目 4月 24日(回収 8回目) 第36回目 10月 30日(回収 34回目)

第 10回目 5月 1日(回収 9回目) 第37回目 11月 6日(回収 35回目)

第 11回目 5月 8日(回収 10回目) 第38回目 11月 14日(回収 36回目)

第 12回目 5月 15日(回収 11回目) 第39回目 11月 20日(回収 37回目)

第 13回目 5月 21日(回収 12回目) 第40回目 11月 27日(回収 38回目)

第 14回目 5月 29日(回収 13回目) 第41回目 12月 4日(回収 39回目)

第 15回目 6月 5日(回収 14回目) 第42回目 12月 10日(回収 40回目)

第 16回目 6月 12日(回収 15回目) 第43回目 12月 17日(回収 41回目)

第 17回目 6月 19日(回収 16回目) 第44回目 12月 27日(回収 42回目)

第 18回目 6月 26日(回収 17回目) 第45回目 平成 31年 1月 4日(回収 43回目)

第 19回目 7月 3日(回収 18回目) 第46回目 1月 9日(回収 44回目)

第 20回目 7月 9日(回収 19回目) 第47回目 1月 15日(回収 45回目)

第 21回目 7月 17日(トラップ再設置) 第48回目 1月 21日(回収 46回目)

第 22回目 7月 24日(回収 20回目) 第49回目 1月 29日(回収 47回目)

第 23回目 7月 30日(回収 21回目) 第50回目 2月 5日(回収 48回目)

第 24回目 8月 7日(回収 22回目) 第51回目 2月 12日(回収 49回目)

第 25回目 8月 14日(回収 23回目) 第52回目 2月 19日(回収 50回目)

第 26回目 8月 21日(回収 24回目) 第53回目 2月 27日(回収 51回目)

第 27回目 8月 28日(回収 25回目) ※7月 9日は台風 8号接近のためトラップごと回収し、7月 17日に再設置した。

カシノナガキクイムシの捕獲された時期・地点・個体数等を以下に示す。

調査地点 調査結果

回収日 調査地点 個体数 備考

5月 21日 №3-1 1 エタノールのみ

6月 12日 №1-3 1 カシナガコール+エタノール

№2-1 1 カシナガコール+エタノール

6月 19日 №1-3 1 カシナガコール+エタノール

8月 14日 №1-3 1 カシナガコール+エタノール

9月 4日 №6-4 2 カシナガコール+エタノール

9月 25日 №1-1 1(メス) カシナガコール+エタノール

№1-3 3 カシナガコール+エタノール

なお、捕獲されたナガキクイムシ科については、国立研究開発法人森林総合研究所の後藤

氏に標本及び検索のための資料を事前にご提供いただき同定を行った。また、9月 25日まで

の同定結果を上記研究所へ持参し、誤同定が無いことを確認していただいた。

以上の結果から、カシノナガキクイムシが確認されたのは調査地点№1~3、および№6 で

捕獲されており、いずれも本調査地点の北側に位置する 4地点であった。

本調査では、カシナガコールの効果を確認することも目的としているが、上記の結果から

捕獲個体は少ないものの、その効果が確認されている。

資料 4-2-5

捕獲個体は 9月 25日に捕獲されたメス 1個体以外は全てオスで、最も多く捕獲されたのは

9月 25日の 4個体であった。

調査地点ごとにみると、以下の表に示すように調査地点№1で最も多い 8個体が確認され、

メスに関しても調査地点№1でのみの確認となった。次に多く確認されたのは調査地点№6で

2個体、№2、3では各 1個体が確認された。

地点№ オス メス 合計

№1 7 1 8

№2 1 1

№3 1 1

№6 2 2

上記のことから、カシノナガキクイムシの発生に関して以下の結果が得られた。

生息分布:北緯 26°42′02.97″(調査地点№6-4)以北の 4地点

発生時期:5月 21日~9月 25日

本調査で捕獲されたカシノナガキクイムシの全個体数は 12個体であり、最も多く捕獲され

たのは 9月 25日回収分の 4個体であった。よって明瞭な発生消長といえる結果は得られなか

った。

沖縄県では、イタジイ倒木からのカシノナガキクイムシの脱出が 4月 18日から始まり 6月

15日まで脱出が確認された事例が知られている(後藤・喜友名,2013)。本事例によると、ピ

ークは 4月下旬で、90個体以上のカシノナガキクイムシがみられ、全脱出個体は 468個体が

確認されているが、本調査のように健全な樹林地での本種の発生は 5 月中旬ごろから始まる

と示唆された。これは、県外の被害地における本種の脱出が 5月下旬から 6月下旬に始まり、

6 月下旬から 8 月にかけてピークを持つ明瞭な一山型になる(熊本営林局,1941;井上・三

浦,1992;佐藤・荒井,1994;井上ほか,1998;Sonê et al.,1998;曽根ほか,2000;上田・小

林,2001;佐藤ほか,2004;西村ほか,2007)と同様の結果と考えられる。

また、その他のナガキクイムシ科に関してはソトハナガキクイムシ、ヨシブエノナガキク

イムシも確認された。そのうち、ソトハナガキクイムシに関しては、平成 30 年 4 月 17 日に

回収されたあと、翌年の 2月 19日回収分まで、合計 20回確認されている。

表Ⅱ.2.3-4 調査地点ごと結果(個体数)

捕獲されたカシノナガキクイムシ

雄 雌

捕獲されたソトハナガキクイムシ 捕獲されたヨシブエノナガキクイムシ

雄 雌 雄

資料 4-2-6

昆虫誘引器(透明) 左

カシナガトラップ KMC 右

2.令和元年度 予定と速報

(1) 方法の検討

平成 29~30年度は分布把握を行った。令和元年度以降は、概査の結果より調査地点を絞込み、

より詳しい分布調査を行う。

調査を行うにあたって、森林総合研究所九州支所の後藤秀章氏に聞き取り調査を行い、後藤

氏の指導に基づいた以下の方法で調査を行う。

1) 分布調査

・シイ・カシ類の分布している林内に、カシノナガキクイム

シ専用のトラップを設置し、カシノナガキクイムシの捕獲

に努めた。

・平成 30 年度に使用した昆虫誘引器は、カシノナガキクイ

ムシの捕獲個体数が少なかったことから、県内のカシノナ

ガキクイムシの個体数密度が少ないのか、あるいはトラッ

プの形状による影響なのかを検証することを目的として、

今年度は昆虫誘引器(透明)とカシナガトラップ KMC を同時

に使用する(写真)。

・設置個所は、前年度の分布域の南限より北に 6 か所設定し

た(前年度と同地点は 4 か所、新たな追加地点は 2 か所)。

設定にあたっては、ハザードマップ(H28 年度沖縄らしい

みどりを守ろう事業 報告書)を基に林齢の高いイタジイ

林を選別した。(次図 調査地点参照)。

・前年度と同様に沖縄本島のカシノナガキクイムシに既存の

フェロモンが有効なのかを確認するため、1地点 4基×2種

類のトラップをそれぞれ 20m以上離して設置し、(カシナ

ガコール)×2 基×2 種類、(エチルアルコールのみ)×2

基×2種類を1週間ごとに入れ替えて確認を行う。

・2 種類のトラップで捕獲された昆虫類を 1 週間に 1 度回収して、捕獲されたカシノナガ

キクイムシの個体数を数える。

・フェロモンの効果を確認し、エチルアルコールのみにするかどうかを判断する。

・昆虫誘引器とカシナガトラップ KMC は 2 種類のトラップを 1 セットとして、並べて設置

した。フェロモンを設置したセットと設置しないセットをそれぞれ 20m以上離して各地

点 4セットとした。

【使用した誘引剤とトラップ】

誘引剤(カシナガコール、エタノール)

農林水産省登録 登録番号:第 23065号

有効成分:ケルキボルア 78.0%(カシナガコール)

取扱会社名:サンケイ化学株式会社

トラップ

・器材名:昆虫誘引器(透明)

取扱会社名:サンケイ化学株式会社

・器材名:カシナガトラップ KMC

取扱会社名:株式会社ワイズトレーディング

資料 4-2-7

調査地点は以下のとおりである。位置図は図Ⅱ.2.3-1に示す。

表Ⅱ.2.3-1 調査地点位置

図Ⅱ.2.3-1 調査地点位置

№1 県有林 47林班 №2 県有林 75林班

№3 村有林 77林班 №4(新規) 村有林 33林班

№5(新規) 村有林 23林班 №6 村有林 4 林班

資料 4-2-8

№1:県有林 47林班(国頭村) 周辺樹高 約 10~15m 胸高直径 約 30㎝のイタジイが

多くみられる 調査地点周辺は自然度が高い。

№2:県有林 75林班(国頭村) 周辺樹高 約 10~15m 胸高直径 約 20㎝のイタジイが

多くみられる 調査地点周辺は自然度が高い。

1-1 1-2

1-3 1-4

2-1 2-2

2-3 2-4

資料 4-2-9

№3:県有林 77 林班(国頭村) 周辺樹高 約 8~10m 胸高直径 約 20 ㎝のイタジイが

多くみられる 調査地点周辺は自然度が高い。

№4:村有林 33林班(国頭村) 周辺樹高 約 10~15m 胸高直径 約 30㎝のイタジイが

多くみられる 調査地点周辺には河川があり、自然度が高い。

3-1 3-2

3-3 3-4

4-1 4-2

4-3 4-4

資料 4-2-10

№5:村有林 23林班(国頭村) 周辺樹高 約 15~20m 胸高直径 約 20㎝のイタジイが

多くみられる 調査地点周辺は自然度が高い。

№6:国頭村有林 4 林班(国頭村) 周辺樹高 約 15~20m 胸高直径 約 20~30 ㎝のイ

タジイがみられる 調査地点周辺は自然度が高い。

5-1 5-2

5-3 5-4

6-1 6-2

6-3 6-4

資料 4-2-11

(2)結果(速報 6月末時点)

調査は、以下の日程で行った。

表 調査実施日時

第 1回目 令和元年 5月 21日(設置) 第 4回目 6月 11日(回収 3回目)

第 2回目 5月 27日(回収 1回目) 第 5回目 6月 17日(回収 4回目)

第 3回目 6月 4日(回収 2回目) 第 6回目 6月 24日(回収 5回目)

カシノナガキクイムシの捕獲された時期・地点・個体数等を以下に示す。

表 令和元年度調査結果

回収日 設置期間 調査地点

個体数

カシナガコー

ル 昆虫誘引器

カシナガトラ

ップ KMC

雄 雌 雄 雌

5 月 27日 5 月 21日~5月 26 日 №5-4 1 ×

№6-1 1 〇

№6-2 1 1 ×

6 月 4 日 5 月 27日~6月 3日 №3-2 1 1 〇

№4-2 1 〇

№6-4 4 〇

6 月 11日 6 月 4 日~6 月 10日 №1-4 1 ×

№3-1 1 〇

№3-3 1 〇

6 月 17日 6 月 11日~6月 16 日 №3-2 1 〇

№2-2 1 〇

№4-3 1 ×

№5-2 1 〇

№6-4 304 120 〇

6 月 24日 6 月 17日~6月 23 日 №3-1 1 〇

№3-2 1 ×

№4-3 3 〇

№6-4 88 98 × 注 〇:カシナガコール有り、×:カシナガコール無し

以上の結果から 6 月 24 日現在、カシノナガキクイムシは調査地点№1~6 のすべての地点

で捕獲されている。

また、前年度の調査結果との比較を行う為、下表に前年度の調査結果を示す。

表 平成 30年度調査結果

回収日 調査地点 個体数 備考

5月 21日 №3-1 1 エタノールのみ

6月 12日 №1-3 1 カシナガコール+エタノール

№2-1 1 カシナガコール+エタノール

6月 19日 №1-3 1 カシナガコール+エタノール

8月 14日 №1-3 1 カシナガコール+エタノール

9月 4日 №6-4 2 カシナガコール+エタノール

9月 25日 №1-1 1(メス) カシナガコール+エタノール

№1-3 3 カシナガコール+エタノール

資料 4-2-12

前年度の調査では、平成 30年 2月から平成 31年 2月まで昆

虫誘引器(透明)を設置し、1 年を通して 12 個体のみの捕獲

で、そのうち 5月から 6月にかけての捕獲は 4個体であったが、

今年度は、令和元年 5 月 21 日に設置し、6 月 24 日までに 600

個体以上を捕獲した。その要因として、カシナガトラップ KMC

の形状が大きいと考えられる。

また、特に多く捕獲されているのは、調査地点№6-4で、カ

シナガコールを設置した 6 月 11 日~6 月 16 日に雄 304 個体、

雌 120個体(合計 424個体)が捕獲され、エタノールのみを設

置した 6月 17日~6月 23日においても雄 88個体、雌 98個体

(合計 186個体)が捕獲された。

特に多く確認された調査地点№6-4付近では、倒木やフラスな

どは確認されていないものの、今後も注意深く観察する必要があると考える。

(「資料 4-1 ナラ枯れ被害の効率的・効果的な監視・通報体制の構築」において、調査地点

№6-4付近のドローン調査を実施予定である。)

【参考 調査地点 No.6-1~6-4の位置図】

捕獲されたカシノナガキクイムシ

6 月 17日回収分

雄 雌

調査地点 No.6

6-3 6-2

6-1

6-4

30m

22m

28m

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