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TCシンポジウム 2020 On the Web【8月オンラインライブ配信】
パネルディスカッション KP-10テーマ:製品コンセプトって書かないかんの?
2020年 10月8日(木)登壇者: 土井 俊央 岡山大学
~認知工学・メンタルモデルの観点から見た概念説明とは?~
メンタルモデルとは
メンタルモデル‐問題解決をしようとするとき(あるものを理解しようとするとき)に,そ
の特定の状況について心の中に作られる「とりあえず」の仮説的なモデル
‐メンタルモデルの性質• 恣意的である:個人個人が勝手につくったもの• 不安定である:しばらく使わないと忘れてしまう• 普遍性がある:多くの人に共通する部分もある• 非科学的である:現実世界と対応しない不可思議なモデル,不合理な
モデルになることもある• 不完全である:必ずしも正しいわけではない
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ユーザはメンタルモデルに基づいて機器を理解する
ユーザの既存のメンタルモデルに配慮する正しいメンタルモデルを作りやすくする
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デザイナ,エンジニア
ユーザ
デザイナのメンタルモデル
ユーザのメンタルモデル
設計
操作
システムイメージ
使い方,機能,構造• この機器はこういうこ
とに使えるはずだ• このボタンを押すとこ
うなるはずだ
設計方針,設計意図• こんなコンセプトで
作ろう• こんな構造にしよう• こう動くのが自然だ
ろう
取扱説明書
この2つが一致していないとエラーや使いにくさにつながる
情報入手
水道の蛇口
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デザイナ ユーザ
メンタルモデルの種類
Functional model‐ 対象の機器をどのように使うかという操作の手続きについての知識‐ どういう文脈(タスク)で,何をしたら,どうなるか,の対応付け‐ 機器がどのように動いたかという過去の経験・知識に基づいて形成される‐ How to use it
Structural model‐ 文脈(タスク)に依存しない,システムの構造や動作原理を表すモデル‐ 対象の機器がどのように動くかを,ユーザが頭の中で想定できるので,ユーザは実
行可能な操作を予測できたり,予期しない状況にも対応できる‐ 日常生活の機器利用においては必ずしもStructural modelがなくても一定の操作
は可能である‐ How it works
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Preece et al., 1994
Functional modelとStructural modelの観点から見た機器操作
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Functional model:マウスを動かすと画面上のポインタが動く
操作とその結果の対応付け
Structural model:マウス背面のボールの動きを読み取り,x,y方向の動きを画面に反映させる
※必ずしも正しいものではないし,正しくある必要もない.あくまでユーザがどういう理解をしているか.
ポインタの動きがおかしい時⇒ ボール可動部分にホコリが詰まってる??(Structural modelに基づいて予測することができる)
Functional modelとStructural modelの観点から見た機器操作
Functional model‐ 「操作部の手がかり」と「その結果」の対応付けがわかりやすければ,
構築しやすい‐ 手順に一貫性があり,自然であるとわかりやすい
Structural model‐ 動きや動作原理が直接観察できたり,直感的に想像しやすいと理解しやすい
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手がかりがなく,どれも似ているので,機器を操作するだけでは,どのボタンで何をしていいかを中々理解できない(=Functional modelが作りにくい) 機械式マウス vs 光学式マウス
動作原理が直感的にわからない(直接観察できない)
メンタルモデルを構築するための知識
SSOAモデル(Shneiderman, 1980)
‐構文知識(Syntactic knowledge)• 操作に必要な知識• 具体的にどのスイッチを押せばいいのか?というような知識
‐意味知識(Semantic knowledge)• 課題の意味に関する知識:利用者が行いたい課題• 機器の意味に関する知識:機器でどのようなことをすることができる
かという,機器のしくみの概念や機能などに関する知識
• それぞれ対象(Object)と操作(Action)に分けられる.
操作を通して,直感的に理解できる機器であれば,必ずしも事前に構文知識や意味知識を持っている必要はない
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メンタルモデルの観点から見たマニュアルの役割
意味知識や構文知識を与え,ユーザが適切なメンタルモデルを構築するサポートをする‐機器とのやり取りだけではメンタルモデルを構築するには不十分な場合が
あるので,外部から知識を得る必要がある‐ Functional model, Structural modelの構築を考える
マニュアルで与えるべき知識‐ SSOAモデルからターゲットユーザに必要な知識を考える• 機器の構文知識:具体的な操作方法• 機器の意味知識:どんな機器か?なにができる?(例:デジタルカメ
ラとは?どんなしくみ?)• 課題の意味知識:どんな操作課題があるか?それはどういうものか?
(例:写真を撮る)
9実際のマニュアルを見て考えてみる
情報処理プロセスとメンタルモデル
感覚情報貯蔵庫(感覚記憶) 特徴抽出 パターン認識
選択的注意
短期記憶 長期記憶
入力
得られた情報を元にメンタルモデルを形成する(ボトムアップ処理)
既存の類似するメンタルモデルから類推し,転移する(トップダウン処理)
反応 忘却
1. 情報の入手:適切な手がかりを与える必要がある
2. 理解・判断:入手された情報だけでなく,その文脈,状況や他の知識との関係性についても理解する必要がある
3. 操作:メンタルモデルによる予測に基づいて行動し,その結果のフィードバックからモデルの修正を行う
メンタルモデルを形成させるには?
Functional modelとStructural modelを作る
(1) Functional model:適切な「操作-動作結果」の積み重ね‐適切な手がかり(情報の分類,強調,関係づけなど)を与え,情報を入手
しやすくする‐明確なフィードバックを提示し,操作とその結果の対応付けをしやすくす
る
(2) Structural model:システム全体の構造を早い段階で理解させる‐操作の中で徐々に構築していくことも可能だが,全体の概要を早い段階で
で見せることで,誤ったメンタルモデルが構築されることを防ぐ‐全体-部分の関係を理解しやすくする• 概略図などを示す
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メンタルモデルの観点が重要になる機器
多くのユーザが知らない,新機軸の機器(かつ構造が複雑な機器)‐ ユーザが既存のメンタルモデルを持っていない
構造がブラックボックス化され直接見えない(想像しにくい)機器はメンタルモデルが構築しにくい‐ 例:操作画面(GUI):タッチパネルの構造を理解すればよいわけではない.デザ
イナが想定したGUIデザインの構造を理解する必要がある.‐ 一見して,何ができるか?がわかりにくい.
構造・しくみが直感的にわかるとメンタルモデルが構築しやすい‐ CUI(コマンド操作): ディレクトリ構造やコマンドについての理解が必要‐ GUI(マウスによる直接操作): ディレクトリ構造や操作が直感的にわかる
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• いかに適切なメンタルモデルを作れるか,が重要• ユーザに正しい構文知識・意味知識を与えないと,
メンタルモデルが構築できない
ターゲットユーザに合わせて考える
ユーザの特性に合わせてメンタルモデル構築をサポートする‐「わかる」= ユーザの主観的な感覚‐メンタルモデルは人によって違う(ある程度の類型化は可能)
製品を使うユーザ ≠ マニュアルを読むユーザ‐マニュアルを読むユーザが持つ知識,期待することは?
同じ製品でもユーザによって適切な説明の仕方は違うはず‐昔からアナログの一眼レフカメラを使っていたユーザ‐スマートフォンのカメラしか使ったことのないユーザ‐生まれた時からタッチパネル操作が普通のユーザ
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どんな概念説明が必要か?
IEC/IEE82079-1における概念情報で述べるべき内容‐ SSOAモデルにおける意味知識を提供するための説明• 課題の意味に関する知識:利用者が行いたい課題• 機器の意味に関する知識:機器でどのようなことをすることができる
かという,機器のしくみの概念や機能などに関する知識
‐ Structural modelの構築をサポートする
ユーザや機器の特性を考慮する必要がある‐どんな文脈で使う?どんな知識・メンタルモデルを持っている?‐何を理解している必要がある?何についてもモデルが必要?
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