View
6
Download
0
Category
Preview:
Citation preview
- 28 -
【原材料(非鉄金属)価格の動向とその製造業への影響】
このところ、原油価格をはじめとする原材料価格が上昇してきており、製品価格の見直し
を行っているものがあるなど、その影響は徐々に広がってきている。
このうち、原油価格の上昇については既に他の機関や産業活動分析(17年1~3月期)
においても原油及び鉄鉱石の価格上昇に伴う影響について分析を行ったところである。本
稿では、原材料価格が上昇している非鉄金属について、投入・産出物価等の動向や非鉄
金属鉱石などの輸入動向、さらには非鉄金属の価格上昇が製造業に与える影響につい
て概観する。
(1) 鉱工業指数(非鉄金属工業)の動向
~輸出向けの増加などにより非鉄金属工業の生産指数は12年基準最高~
鉱工業指数により非鉄金属工業の需要動向をみると、出荷全体(18年4~6月期は
前期比 1.9%、3期連続の上昇)のうち、国内向けはこのところほぼ横ばいで推移する中
で、18年4~6月期は同 3.0%と2期ぶりに上昇し、また、輸出向けは同▲3.5%と5期ぶ
りの低下となったものの、欧州や東アジア向け輸出が引き続き高水準で推移している。
さらに、輸出の動向を細分類業種別にみると、17年4~6月期以降、3期連続で非鉄金
属鋳物が最も寄与していたが、18年1~3月期には非鉄金属地金が上昇に大きく寄与
しており、4~6月期も他の業種が低下する中で、非鉄金属地金は上昇している。
このような状況を反映して18年4~6月期の非鉄金属工業の生産は前期比 2.3%と3
期連続で上昇し、指数水準は 105.8 と12年基準最高となっている(第Ⅰ-1-15、16
図)。
第Ⅰ-1-15図 非鉄金属工業の生産、出荷、在庫、在庫率及び内外需別指数の推移
①生産、出荷、在庫及び在庫率指数、指数水準(12年=100、季節調整済)
80
90
100
110
120
Ⅰ└
Ⅱ10
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ11
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ12
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
生産
出荷
在庫
在庫率
- 29 -
②輸出向け、国内向けの推移、指数水準(12年=100、季節調整済)
70
80
90
100
110
120
Ⅰ└
Ⅱ10
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ11
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ12
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
出荷
輸出
国内
資料:「鉱工業指数」「鉱工業出荷内訳表」
第Ⅰ-1-16図 非鉄金属工業の輸出向けの細分類業種別前期比寄与の推移
▲ 15
▲ 10
▲ 5
0
5
10
15(%)
Ⅰ└
Ⅱ11
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ12
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
非鉄金属地金 伸銅・アルミニウム圧延製品
電線・ケーブル 非鉄金属鋳物
非鉄金属工業
資料:「鉱工業出荷内訳表」(試算値)
(2) 企業物価の動向
~交易条件が最も悪化している非鉄金属~
国内企業物価指数は15年10~12月期を底に上昇傾向で推移している。これを類
別(日本標準分類を参考に日本銀行が定めた区分で業種に近いもの)に指数水準の高
い順にみると、18年4~6月期では、非鉄金属が 189.0 と最も高く、次いで石油・石炭製
品(181.1)、鉄鋼(131.8)、化学製品(109.7)の順となっている。
同様に前年同期比の推移をみると、16年1~3月期までは、主として電気機械が低
下したことにより、全体(工業製品)でも低下していたが、16年4~6月期以降上昇に転
じ、18年4~6月期は、非鉄金属(前年同期比 54.3%の上昇)の寄与が最も大きく、次
いで石油・石炭製品、化学製品などの順となっている。
また、投入物価指数と産出物価指数ともに国内企業物価指数同様、15年10~12月
期を底に上昇傾向で推移している。特に産出物価指数に比べ、投入物価指数の上昇
幅が大きく、また、その水準は、18年4~6月期は 115.2 とバブル期(2年10~12月期
- 30 -
の 114.7)を超える高水準を示している(第Ⅰ-1-17図)。
第Ⅰ-1-17図 国内企業物価指数及び投入・産出物価指数の推移
①国内企業物価指数等(12年=100)
90
95
100
105
110
115
120
└2年┘└3年┘└4年┘└5年┘└6年┘└7年┘└8年┘└9年┘└10年┘└11年┘└12年┘└13年┘└14年┘└15年┘└16年┘└17年┘18年
国内企業物価指数(工業製品)
投入物価指数(製造業総合)
産出物価指数(製造業総合)
②主な類別の国内企業物価指数(12年=100)
60
80
100
120
140
160
180
200
└2年┘└3年┘└4年┘└5年┘└6年┘└7年┘└8年┘└9年┘└10年┘└11年┘└12年┘└13年┘└14年┘└15年┘└16年┘└17年┘18年
工業製品
化学製品
石油・石炭製品
鉄鋼
非鉄金属
③主な類別の国内企業物価指数の前年同期比寄与度
▲ 4
▲ 3
▲ 2
▲ 1
0
1
2
3
4
(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
化学製品 石油・石炭製品
鉄鋼 非鉄金属
その他 工業製品
資料:「企業物価指数」「製造業部門別投入・産出物価指数」(日本銀行)
次に、このところ大きく上昇している投入物価指数の動向を類別に前年同期比でみる
と、14年7~9月期まで低下していたが、その後一進一退を続け、16年1~3月期から
- 31 -
上昇に転じ、18年4~6月期は、原油価格上昇の影響などにより、石油・石炭製品が最
も寄与しており、次いで、非鉄金属、化学製品の順となっている。また、国内品・輸入品
に分けてみると、17年4~6月期以降、国内品、輸入品ともに上昇してきており、特に輸
入品の上昇幅が拡大傾向にある。さらに指数水準をみると、18年4~6月期は非鉄金
属の指数水準が最も高く、238.7、石油・石炭製品 224.0、鉄鋼 154.9 の順となっている
(第Ⅰ-1-18、19図)。
第Ⅰ-1-18図 投入物価指数の類別の推移
①指数水準(12年=100)
50
100
150
200
250
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
製造業総合
石油・石炭製品
鉄鋼
非鉄金属
②前年同期比
▲ 10
▲ 8
▲ 6
▲ 4
▲ 2
0
2
4
6
8
10
(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
化学製品 石油・石炭製品
鉄鋼 非鉄金属
電気機械 その他の製造工業製品
その他 製造業総合
資料:「製造業部門別投入・産出物価指数」(日本銀行)
- 32 -
第Ⅰ-1-19図 投入物価指数の国内品・輸入品別の推移(前年同期比)
▲ 10
▲ 8
▲ 6
▲ 4
▲ 2
0
2
4
6
8
10(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
輸入品
国内品
投入
資料:「製造業部門別投入・産出物価指数」(日本銀行)
同様に産出物価指数の動向を類別に前年同期比でみると、16年1~3月期まで低下、
その後16年4~6月期に上昇に転じ、18年4~6月期は、投入物価指数と同様に石油・
石炭製品が最も寄与しており、次いで、非鉄金属の順となっている。また、指数水準で
みると、18年4~6月期は石油・石炭製品の指数水準が最も高く、185.6、非鉄金属
181.3、鉄鋼 138.9 の順となっている(第Ⅰ-1-20図)。
第Ⅰ-1-20図 産出物価指数の類別の推移
①指数水準(12年=100)
80
100
120
140
160
180
200
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
製造業総合
石油・石炭製品
鉄鋼
非鉄金属
②前年同期比
▲ 6
▲ 4
▲ 2
0
2
4
6
(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
化学製品 石油・石炭製品
非鉄金属 電気機械
その他 製造業総合
資料:「製造業部門別投入・産出物価指数」(日本銀行)
- 33 -
さらに、交易条件指数(産出物価/投入物価)の動向をみると、18年4~6月期で、
交易条件指数が 100 を超えている(交易条件が改善)のは精密機械の 100.2 のみであ
る。なお、輸送機械は 100.0 を示している。一方、交易条件指数が低い(悪化)のは、非
鉄金属が 76.0 と最も低く、次いで化学製品が 82.5、金属製品、電気機械がいずれも
82.7、石油・石炭製品が 82.9 の順となっている。また、製造業総合と非鉄金属の交易条
件指数を比べると、15年10~12月期以降非鉄金属の方が大きく低下し、18年4~6月
期には製造業総合は 89.6 に対し、非鉄金属は 76.0 と▲13.6 ポイントも低い状況にあ
る。このように、非鉄金属については、原材料価格上昇分が製品価格に充分転嫁され
ていない可能性も考えられる(第Ⅰ-1-21、22図)。
第Ⅰ-1-21図 交易条件指数の類別の推移
70
80
90
100
110
120
130
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
製造業総合 化学製品 石油・石炭製品 非鉄金属
金属製品 電気機械 輸送機械 精密機械
資料:「製造業部門別投入・産出物価指数」(日本銀行)
第Ⅰ-1-22図 非鉄金属の投入物価指数、産出物価指数及び交易条件指数の推移
50
100
150
200
250
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
投入産出交易条件
資料:「製造業部門別投入・産出物価指数」(日本銀行)
(3) 非鉄金属の企業物価等の動向
~鉱石価格の上昇などにより銅地金が大幅に上昇~
このところ企業物価指数が上昇してきている非鉄金属について内訳をみると、中でも
- 34 -
地金の指数水準が最も高く、18年4~6月期は前年同期比 79.1%と上昇幅が拡大して
きている。
地金の内訳をみると、重金属地金が大部分を占めており、その中でも銅地金の寄与
が大きくなっている(第Ⅰ-1-23図)。
第Ⅰ-1-23図 非鉄金属の国内企業物価指数の内訳の推移
①指数水準(12年=100)
50
100
150
200
250
300
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
非鉄金属
地金
非鉄金属圧延品・押出品類
電線・ケーブル
非鉄金属鋳物・ダイカスト・鍛造品
②前年同期比
▲ 20
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
非鉄金属鋳物・ダイカスト・鍛造品
電線・ケーブル
非鉄金属圧延品・押出品類
地金
非鉄金属
③地金の内訳(前年同期比)
▲ 10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
軽金属地金
重金属地金
貴金属地金
地金
- 35 -
④重金属地金の内訳(前年同期比)
▲ 10
0
10
20
30
40
50
60
70(%)
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
銅地金 亜鉛地金 銅合金地金
亜鉛合金地金 はんだ 重金属地金
資料:「企業物価指数」(日本銀行)
(4) 銅地金価格及び消費量等の動向
~中国の需要増などから銅地金の取引価格が一時 8,000 ドル台まで上昇~
非鉄金属の個々の取引価格は、ロンドンにある非鉄金属専門の商品取引所(Londo
n Metal Exchange)のLME価格を基本として、設定されるのが一般的である。そこ
で、銅地金のLME価格(月平均)の推移をみると、15年前半までは1トン当たりおおむ
ね 2,000~3,000 ドル台で取引されていたが、以降、中国などの需要拡大や鉱山のスト
ライキの発生により需給がタイトになったことなどから、高値傾向で推移する中、18年5
月には 8,046 ドルと急激な上昇がみられた。その後、18年6月には 7,198 ドルと若干低
下したものの、引き続き高い水準にある(第Ⅰ-1-24図)。
第Ⅰ-1-24図 主な非鉄金属地金のLME価格の推移
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
└ 2年┘└ 3年┘└ 4年┘└ 5年┘└ 6年┘└ 7年┘└ 8年┘└ 9年┘└10年┘└11年┘└12年┘└13年┘└14年┘└15年┘└16年┘└17年┘└18年
(US$/t)
0
5000
10000
15000
20000
25000
30000
(US$/t)アルミニウム
銅
鉛
亜鉛
ニッケル(右目盛)
資料:「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)
次に銅地金消費量の推移をみると、世界の年間消費量は8年が 1,240 万トンであっ
たが、17年には 1,682 万トンと8年に比べ 35.6%増加している。国別にみると、中国が8
年は 119 万トン(世界シェア 9.6%)と第3位であったが、17年には 364 万トン(同
- 36 -
21.6%)と第1位となった。米国は8年が 261 万トン(同 21.0%)と第1位であったが、17
年には 227 万トン(同 13.5%)まで減少し第2位となった。一方、日本は8年が 148 万ト
ン(同 11.9%)と第2位であったが、17年には 123 万トン(同 7.3%)と中国に抜かれ第3
位となった(第Ⅰ-1-25図)。
第Ⅰ-1-25図 世界の銅地金消費量の推移
①全世界及び主な消費国の推移
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
8 9 10 11 12 13 14 15 16 17年
(千t)
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
18000
(千t)中国 米国
日本 ドイツ
韓国 世界計(右目盛)
②消費シェアの推移
0
20
40
60
80
100
8 9 10 11 12 13 14 15 16 17年
(%) 中国 米国 日本 ドイツ 韓国 その他
資料:「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)
企業物価指数の上昇に寄与している銅地金の原材料に当たる銅鉱の輸入の推移を
みると、輸入数量は若干の増加傾向で推移しているが、16年頃から輸入金額が急激に
上昇し、18年4~6月期には 1 トン当たりの単価が 197,000 円と従来の 2~4 倍となって
いる。その背景には、中国をはじめとした需要拡大などがあると考えられる。
また、輸入地域別シェアをみると、従来は北米のシェアが最も大きかった(約 40%)が、
その後北米(カナダ、米国)からの輸入が減少し南米(チリ)からの輸入が増加したことに
より17年には南米のシェアが 50%を超えている(第Ⅰ-1-26図)。
- 37 -
第Ⅰ-1-26図 銅鉱の輸入の推移
①輸入数量・金額
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
└2年┘└3年┘└4年┘└5年┘└6年┘└7年┘└8年┘└9年┘└10年┘└11年┘└12年┘└13年┘└14年┘└15年┘└16年┘└17年┘18年
(千t)
0
500
1000
1500
2000
2500
3000(億円)輸入数量
輸入金額(右目盛)
②輸入単価及び前年同期比
▲ 60
▲ 40
▲ 20
0
20
40
60
80
100
120
└3年┘└4年┘└5年┘└6年┘└7年┘└8年┘└9年┘└10年┘└11年┘└12年┘└13年┘└14年┘└15年┘└16年┘└17年┘18年
(%)
40
60
80
100
120
140
160
180
200
220
(千円)輸入金額要因
輸入数量要因
輸入単価(千円/t)(右目盛)
輸入単価(前年同期比)
③輸入数量の地域別推移
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
4500
5000
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17年
(千t) アジア 欧州
北米 南米
その他
資料:「貿易統計」(財務省)
(5) 非鉄金属製錬・精製の販売価格上昇に伴う製造業の生産者価格への影響
次に、平成16年簡易延長産業連関表を用いて非鉄金属製錬・精製の販売価格が
10%上昇した場合における「生産者価格」への影響度合いを試算してみる。
価格分析試算は、価格波及が途中で中断することなく完全に波及(転嫁)したものと
- 38 -
しているため、投入物のコスト上昇を即座に転嫁できない性格のものもすべて上昇する
ことになる。加えて、企業による生産性向上努力による価格上昇圧力の吸収、需給関係
で決定される価格要因等は考慮されていないため、結果の解釈においては、分析の対
象となった時点の価格環境を加味するなどの留意が必要である。
試算の結果をみると、「非鉄金属製錬・精製」の販売価格が 10%上昇した場合にお
いて生産者価格が最も波及(上昇)する業種(自部門以外)は非鉄金属(除.非鉄金属
製錬・精製)となり、その価格上昇率は 4.659%、次いで、その他の電気機器(1.150%)、
再生資源回収・加工処理(0.554%)の順となっている(第Ⅰ-1-27図)。
第Ⅰ-1-27図 非鉄金属製錬・精製の販売価格が 10%上昇した場合において
生産者価格が上昇する上位5業種(部門)(自部門以外)
4.659
1.150
0.554 0.448 0.419
0
1
2
3
4
5
非鉄金属
(除.非鉄金属
製錬・精製)
その他の
電気機器
再生資源回収
・加工処理
金属製品
重電機器
(%)
価格上昇率(%)
(注)1.平成16年簡易延長産業連関表(取引額表(時価評価表))を使用し、別途「非鉄金属製錬・精
製」を特掲した上で 51 部門に統合した。
2.試算は、以下の計算式で求めた。
生産者価格でみた価格上昇率=非鉄金属製錬・精製価格上昇率 10%(0.1)×51 部門表から
作成した逆行列(I-A)-1×100
資料:「平成16年簡易延長産業連関表」
- 39 -
〔参考〕 平成16年簡易延長産業連関表 非鉄金属製錬・精製取引額
単位:百万円非鉄金属
(除.非鉄金属製錬・精製) その他の電気機器 非鉄金属製錬・精製 その他 内生部門計 輸入金額
非鉄金属製錬・精製 1,807,997 363,779 144,028 718,060 3,033,864 1,685,972(構成比:%) 59.6 12.0 4.7 23.7 100.0国内生産額 4,723,605 6,428,590 1,414,159 901,005,490 913,571,844
非鉄金属製錬・精製の輸入比率=輸入額/国内需要合計=0.54246 (注)上記の各部門におけるものは以下のとおりである。
非鉄金属(除.非鉄金属製錬・精製):電線・ケーブル、伸銅品、アルミ圧延製品など
その他の電気機器:電気照明器具、電池など
非鉄金属製錬・精製:銅、鉛・亜鉛、アルミニウムなど
その他:上記3部門以外のもの
資料:「平成16年簡易延長産業連関表」
(6) 非鉄金属工業の企業収益の動向
~売上原価は上昇しているものの、過去最高の営業利益を記録~
次に、非鉄金属関連の企業収益の状況をみると、営業利益は13年10~12月期に
マイナス(赤字)となったものの、14年1~3月期以降、売上高の上昇に伴ってプラス(黒
字)を続けており、18年4~6月期には営業利益が 2,233 億円と昭和55年1~3月期の
1,844 億円を抜いて過去最高を記録している。また、売上高の前年同期比の推移をみ
ると、17年10~12月期以降2期連続して 20%台と大きく上昇していたが、18年4~6
月期には、38.4%と更に上昇している。
売上高が上昇している中で、交易条件は悪化しているものの、それに伴って企業収
益が悪化するとは限らず、原材料価格の上昇分を一定程度、製品価格へ転嫁すること
ができれば交易条件が悪化するような状況においても企業収益が上昇することも充分
考えられる。
そこで、損益分岐点についてみると、13年10~12月期には一時的に売上高が損益
分岐点を下回り、赤字となったものの、その後、売上高は上昇傾向で推移しているが、
損益分岐点は緩やかな上昇にとどまっている。また、損益分岐点売上高比率(損益分
岐点/売上高)をみても、13年10~12月期の 105.4%をピークに低下傾向で推移して
きており、18年4~6月期には 60.4%と低水準にあることからも非鉄金属において高収
益を上げている状況がうかがえる。
これは、輸出を中心とする需要の拡大を背景とした原材料価格の上昇と連動して、製
品への価格転嫁もある程度進展していることに加え、販売費・一般管理費といった固定
費を低く抑えるなどの企業努力によるものと考えられる。しかし、更なる需要の増加に伴
う需給の逼迫などを背景とした鉱石の取引条件(製錬会社と鉱山との利益配分)の見直
しが検討されており、今後、企業収益が悪化することも考えられる(第Ⅰ-1-28、29
- 40 -
図)。
第Ⅰ-1-28図 非鉄金属の営業利益等の推移
①営業利益の推移
▲ 10000
0
10000
20000
30000
40000
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
(億円)
▲ 1000
0
1000
2000
3000
4000(億円)営業利益(右目盛)
売上高
売上原価
販売費及び一般管理費
②売上高の前年同期比
▲ 40
▲ 30
▲ 20
▲ 10
0
10
20
30
40
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
(%) 営業利益
販売費及び一般管理費
売上原価
売上高
資料:「法人企業統計」(財務省)
第Ⅰ-1-29図 非鉄金属の損益分岐点等の推移
①損益分岐点等
▲ 10000
0
10000
20000
30000
40000
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
(億円)
74
76
78
80
82
84
(%)売上高 固定費
変動費 経常利益
損益分岐点 変動費比率(右目盛)
- 41 -
②損益分岐点売上高比率等
10000
15000
20000
25000
30000
35000
40000
Ⅰ└
Ⅱ13
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ14
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ15
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ16
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ└
Ⅱ17
Ⅲ年
Ⅳ┘
Ⅰ18
Ⅱ年
(億円)
50
60
70
80
90
100
110
(%)売上高
損益分岐点
損益分岐点売上高比率(右目盛)
(注)固定費=人件費+減価償却費計+支払利息等
変動費=売上高-経常利益-固定費
変動費比率=(変動費/売上高)×100
損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))
損益分岐点売上高比率=(損益分岐点/売上高)×100
資料:「法人企業統計」(財務省)
以上でみたとおり、非鉄金属関連では、輸出を中心とする需要の拡大を背景とした原材料
価格の上昇と連動して、製品への価格転嫁もある程度進展していることに加え、販売費・一
般管理費といった固定費を低く抑えるなどの企業努力などもあり、このところ企業収益は上昇
傾向にある。
ただし、非鉄金属地金では原材料となる鉱石の取引条件の変更について検討がなされて
いることから、今後、企業収益を圧迫する可能性が出てきている。
非鉄金属全般においては更なる世界需要の増加や原材料の供給不足などにより、需給が
タイトになることも考えられることから、今後の非鉄金属関連の動向に留意する必要がある。
Recommended