NCVプロジェクト・2017年度成果報告 CNF複合材...

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12 コンバーテック 2018. 7 1312 コンバーテック 2018. 7

セルロースナノファイバー

セルロースナノファイバー

化学的な変性ができる プロジェクトリーダー(PL)を務める、京都大学生存圏研究所の臼杵有光特任教授は、CNFへの期待として、「まずは、日本に豊富にある天然資源、つまり世界に勝てるということ。それから天然資源であるため、将来低コスト化が期待でき

ること。2つ目は非常に小さな繊維で、なおかつ軽いということ。従来車では、補強のためにガラス繊維(GF)を使っていた。GFは、直径が 10 μm、長さが 300 μm、対してCNFは直径が 100nm以下、長さが 5μm、ガラス繊維の表面積を 1とすると、10のマイナス 8乗と非常に小さい。比重は、ガラス繊維の 2.5 に対し、CNFは 1.5 と軽量化の効果が期待できる。3つ目、これが大事だが、セルロースはグルコースという骨格がつながったもので、分子構造が非常に明確であるため、化学的な変性ができる。ナイロン 6(PA6)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などいろんな樹脂に混ぜられること」の 3点を挙げた。

京都大学を始め 22機関参画 コンソーシアムが設立されたのは 2016 年 10 月 28 日、参画機関は当初 20 機関であったが、今は京都大学、産業環境管理協会、京都市産業技術研究所、金沢工業大学、名古屋工業大学、秋田県立大学、昭和丸筒/昭和プロダクツ、利昌工業、イノアックコーポレーション、キョーラク、三和化工、ダイキョーニシカワ、マクセル、デンソー、トヨタ紡績、トヨタカスタマイジンズ&ディベロップメント、

アイシン精機(2017 年度から参画)、東京大学、産業技術総合研究所、宇部興産(2018 年度から参画)、トヨタ自動車東日本(2018 年度から参画)の 22機関で動いている。

軽量化と素材製造時のCO2削減 副 PLの、金沢工業大学大学院工学研究科の影山裕史教授は、ガソリン車のCO2指数を 100 とすると、走行時や燃料関連のCO2は減らすことができるので、2030 年には燃料電池自動車で 70、そして50年には電気自動車で50まで下がるが、アルミや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は電気の塊。素材製造時のCO2削減対策は具体化していないので、車の軽量化とともに、素材製造時のCO2削減が喫緊のテーマとなる。CNFで先導し、世界に貢献できる。効果の差が出やすいスポーツカーでまずは品質を見極め、その後、CNFならではのコンセプトカーに移行したいと語っていた。 同じく、副 PLの京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授は、TOYOTA 86 の後部のトランクリッド(トランクの蓋)について、アッパーはCNF100%の板状成形体で、ロアー

はPA6にCNFを 5%添加した射出発泡成形体で作られていると説明、CNF製のトランクカバーは鋼板に比べ約 50%の軽量化が可能なことを示した。なお、アッパーについては、直前になって、矢野教授がより軽量なものの試作を利昌工

 「鋼鉄の5倍の強度、1/5の軽さ」と聞けば、CNF(セルロースナノファイバー)だとピンとくる読者も多いはず。ガラス繊維や炭素繊維のようにプラスチック複合材として世に出るのはまだ先の先と思いがちだが、実用化に向けての実証検証は既に国家プロジェクトとして始まっている。それが、2016年度からスタートした、環境省委託事業の『NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト』だ。これは、19年度までに、地球温暖化の原因物質とされるCO2排出量削減を目的に、CNFと樹脂の複合材料で部品を作り、自動車に搭載することで、複合材から最終製品までの一連の流れを俯瞰した性能評価・検証を実施するというもの。今年6月6日には、トヨタ自動車のスポーツカー『TOYOTA 86』のボンネットフードおよびトランクリッドの外板部品を、CNFまたはCNF複合材で置き換えた試作車とともに、17年度の成果の一端が報道陣に披露された。先々、樹脂、接着剤、着色・加飾、乾燥、複合材成形、発泡成形、立体造形などのニーズが出てきそうな予感がする。 ( 川上幸一)

CNF複合材で『TOYOTA 86』の外板部品を置き換え来年の東京モーターショーでコンセプトカー披露

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業に依頼、同社は、秋田県立大学の山内秀文教授の協力を得、CNFペーパーから作られたハニカム構造体の表裏にCNF100%の板状成形体を貼り付けたものを試作し、発表会場に持ち込んでいた。利昌工業によると、これにより重量は 1.3kg から 0.7kg に更に軽量化できたとのことだ。接着剤の選定等では、名古屋工業大学の栗山 晃特任教授が協力している。

低炭素持続型社会の構築 来年の東京モーターショーではコンセプトカーをお披露

目する予定だ。残念ながらテスト走行に十分な時間が割けないので、ナンバープレートの交付までには至らないが、既にデザインも固まっているようで、外観はかなりスポーティな感じのする車となりそうだ。フロント窓ガラスはPC(ポリカーボネート)、天井板はCNF板材かPC-CNF(CNF+ PC複合材)、リア窓ガラスはPC-CNF、エンジンフード(ボンネット)は、雄雌の型内にCNF基材をセットし、エポキシ樹脂を注入して含浸させる樹脂含浸成形(RTM)法によるCNT板材、モノコックはRTM法か手塗りのハンドレイアップとCNFのハニカム構造体を組み合わせたもの、バンパー下部のフロントアンダーカバーはPP-CNF、フェンダーはフェノール樹脂を 5~ 10%含浸させたCNF板材、ドアはPA6-CNFの発泡体もしくはPP-CNF発泡体、ドアトリムはPP-CNF、トランクリッドはPA6の部分発泡とCNF100%材を組み合わせたものを予定している。 自動車の部材にCNF複合材が使えること、そしてCO2の削減効果をきちっと評価し、最終的には、日本の林業、製紙産業、高分子化学産業、自動車部材産業、自動車産業をうまくつなぎ、低炭素持続型社会の構築に結び付けたい意向だ。

Bosch、PA事業売却。将来の転換に集中 独Boschは、6月29日、戦略的な選択肢のすべてを徹底的に考慮した結果、包装機械事業(PA)、より正確には、包装技術部門の調剤および食品ユニットのPAを売却すべく買い手を探すことを決定したと発表した。 Boschグループは将来の転換に集中する必要があるが、その事業は、ディビジョンの将来の可能性をもたらす事業や技術において、十分な、関連したシナジー効果は認められて

はいない。それ故、包装技術はもはやBoschグループにとってコア技術の一部ではないと判断。PAには、包装産業の特定分野に関連したプロジェクト事業が含まれるが、中小企業のプレーヤーとの競争環境下にあり、彼らの方が組織構造的な利点がある。Bosch社は、包装技術事業を違った基盤の上に置くことで、包装機械市場からの特殊な要求に柔軟に対応できると考え、今回の決定に

至った。ただし、特殊な目的の機械の製造者である、Robert Bosch Manufacturing Solutions社は独立した存在であり、これはBoschグループに残る。 Boschグループの事業セクターはモビリティ、産業技術、消費財、エネルギー&ビルディング技術の4つ。戦略目標はコネクティッド・ライフのためのイノベーションの実現にある。 ( 川上幸一)

エンジンフードはCNFペーパーにエポキシを注入し、RTM法で作製

トランクリッドのアッパー(白い部分)はCNF100%の板状成形体、ロアー(濃い茶色に見える部分)はPA6にCNFを 5%添加した射出発泡成形体で作られている

ハニカムシート(上)と利昌工業が試作したハニカムボード

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