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すばる望遠鏡 次世代広視野補償光学システム
研究代表者: 有本 信雄 (国立天文台 ハワイ観測所)
鼎の三脚
HSC PFS
GLAO
計画概要
1.可変副鏡を用いた接地層補償光学系(Ground Layer AO)を導入
2.近赤外線装置 (広視野撮像・多天体分光器)の開発・製作
• → 視野直径15分角以上にわたるシーイング改善
• (FWHM 0.4”→0.2”)
• HSTに匹敵する解像度と口径2倍相当の感度の向上*1,
6倍の広視野化*2
• 2020年までに完成をめざす
*1点源について *2 MOIRCS比 すばる望遠鏡
アップグレード
科学目標
•大規模撮像・分光サーベイによる銀河進化史の全貌解明
• 数千個規模の1<z<3銀河 - 形態、力学構造、物理パラメータ、環境効果、
• 内部運動、AGNの寄与、重元素量分布
• 「最盛期の銀河形成を解剖する」
•高感度狭帯域撮像による最遠方銀河探査
• z>7.5の銀河の発見、宇宙再電離過程の探究
• 「最遠方の銀河形成を捉える」
•→ TMTに向けた日本独自サンプル構築
•望遠鏡性能の大幅向上 - 多様なサイエンスに貢献
次世代AO検討報告書 (2012年8月公開) http://www.naoj.org/Projects/newdev/ngao/
「最盛期の銀河形成を解剖する」
• 星形成活動の現場を捉える
• 銀河間ガスと銀河の相互作用 (アウトフロー、コールドストリーム)
• 数千個-数万個の遠方銀河を網羅的に観測し、銀河進化の全貌を明らかにする
• GLAOによる感度向上と広視野による観測天体数の向上
• “SDSS at 1<z<3”
• 現在の銀河への進化の経路を明らかにする
• 楕円銀河はいつどのようにして生まれたのか?
「最盛期の銀河形成を解剖する」 銀河形成最盛期(z~2)の クランピーな星形成銀河
大質量(>2x1010M◉)な星形成 銀河の半分以上がクランプ構造 を持つ。重力的に不安定なガス が豊富な円盤が分裂した?また
は合体?
すばる-GLAO (1) KsとNB(Hα)の撮像によって
初めて、銀河内部の詳細な星質 量分布と星形成分布が、HSTに 匹敵する解像度(0.2”)で
明らかになる! (2) IFU分光によって、内部運動、
AGNの寄与、重元素量分布が 明らかになる!
Foerster-Schreiber et al. (2009)
z~2 UV selected galaxies; VLT/SINFONI
SINS Survey
IFU分光によって、形成途上銀河 の内部運動や物理過程が詳細に分かる。
銀河胎児の成長過程の探求
z>7
z=2-3
z=1
N E
NB2315
Ks 8”
radio galaxy NB2315
clump
Ks
形成途上銀河団 USS1558-003 (z=2.53)
Hα輝線銀河でみた 原始銀河団
(すばる-MOIRCS)
x 24 denser than field 銀河団全体で合算した星形成率は、104M☉/yr にもなる!
新たに見つかった、 非常に高密度な星形成 バースト銀河の集団!
すばるGLAOで無バイ アスな広視野サーベイ と原始銀河団を狙った バイアスサーベイの両 方を行い、環境効果の
初期状態を明らかにする
blue wing = outflow
クランプ銀河からのガスのアウトフロー (フィードバックの現場)
Genzel et al. (2011)
Hα輝線 プロファイル
クランプBで起こっている星形成バースト によるガスのアウトフロー(~500km/s)
Dekel et al. (2009, Nature)
Goerdt et al. (2010)
320 kpc
10 kpc
シミュレーションによって、大質量銀河形成の初期に、 フィラメント構造に沿って冷たい(1万度)のガスが 効率的に流入し、ガスが豊富な円盤ができ、星形成
バーストを引き起こすと考えられている。
コールド・ストリームの観測的検証
(ガスのインフロー)
上図はアウトフローの例であるが、 手前にあるガス(吸収体)によって、 赤方偏移した吸収線が見られれば、 それはインフローの発見になる!
広視野化による観測効率の向上
• MOIRCによる多天体分光 – 次世代AO+新装置では約5倍の天体を同時分光
1hr, S/N=10 Line Sensitivity for Hα at z=2.3 (2.16μm)
0.25” size, 400 km/s read noise=5e- * Between OH lines*
1hr, S/N=10 Line Sensitivity for Lyα at z=12 (1.58μm)
0.2” size read noise=5e- * Between OH lines*
「最遠方の銀河形成を捉える」
すばる2012
次世代AO
澁谷(総研大)ほか 2012
現時点で最遠方の銀河 z=7.215 (129.1億光年)
「最遠方の銀河形成を捉える」
• Suprime-Camの活躍により、すばる望遠鏡は最遠方の銀河探査で大きな成果を挙げてきた
• Hyper Suprime-Camでz=7.3までの銀河探査をさらに拡大できる
• 赤方偏移のため、z>7.5を探査するためには近赤外線装置が必要
• GLAOによる高感度化と広視野化、明るい地球大気のOH夜光を避けた狭帯域撮像で宇宙最初期に迫る
• 約1平方度のサーベイで8<z<10の銀河候補を50-100個検出
• TMTに向けての独自サンプルの供給
感度と視野の比較 (連続光)
狭帯域撮像ではJWSTに匹敵する感度 JWST/NIRCamにはない波長
広視野AOで拓かれる多様なサイエンス
• 銀河系中心のアストロメトリで探る巨大ブラックホールと銀河形成のリンク
西山(NAOJ) ほか
広視野AOで拓かれる多様なサイエンス
• マイクロレンズによる浮遊惑星の探査と初期質量関数の超低質量側の確立
NA
SA
/JP
L
深川(阪大) ほか
広視野AOで拓かれる多様なサイエンス
• 銀河考古学: 銀河中心方向の球状星団で探るバルジの形成史
千葉(東北大)ほか
接地層補償光学系(GLAO)
•可変副鏡
•複数レーザーガイド星、複数波面センサ
•大気の三次元モデル化
•地表層のゆらぎを抽出し可変副鏡で補正
ESO VLT用に開発中の可変副鏡
GLAOによるシーイングの改善: FWHM
by S. Oya
10’
Distance from Center
15’ 20’ Seeing GLAO
可変副鏡のポテンシャル
•地表層補償光学系(GLAO)だけでなく、
•単一天体の高ストレル比のAO
•短波長での補償性能の向上
•熱赤外線波長域での熱雑音の低減 など
•望遠鏡の全般的な性能向上になる
•新可視光装置、熱赤外線装置など、さらなる装置開発への基盤となる
超広視野近赤外線撮像・多天体分光器
• オプトクラフト社による基礎的光学設計
装置仕様案
波長域 0.9-2.5μm
プレートスケール 0.1”/pix
視野 13.6‘x13.6’ 視野分割によるさらなる
広視野化を検討
フィルタ 広帯域+狭帯域
多天体分光 Multi Slit Mask
分散 2000(TBD) 実現性今年度検討
何故GLAOがすばる望遠鏡に必要か
• TMT時代のすばるの役割の一つはサーベイ望遠鏡 = 広視野化
• HSC, PFSに続く2020年代のすばる望遠鏡基幹装置
• TMTで観測する独自ターゲットの構築
• HSC, PFSは主に暗夜の装置。明夜を使う赤外線装置の開発が必要。近赤外線装置の更新は必須
• GLAOはVLT, LBT等が先行しているが、>10分角のGLAO付き広視野近赤外線装置はユニーク。マウナケアはGLAO好適地
• GLAO技術はTMTのAOに直結 = 技術蓄積、人材育成
•主に国内競争的資金+国際協力での予算獲得を目指す
・ 運営費交付金はマッチングファンドとして期待する
主要な課題
•予算獲得が不透明
•マンパワー
•装置開発、望遠鏡改造、運用 - ハワイ観測所は持ちこたえられるのか
• cf. 可変副鏡やレーザーなどは成熟した技術になりつつある。feasibilityは高い。
コミュニティとの関係
• すばる小委員会による提言書(2009年3月)に挙げられた「広視野近赤外線カメラ」「近赤外線面分光装置」という将来装置候補
• ハワイ観測所、東北大、東大ほかによるワーキンググループ (2011年1月から)
• 2011年9月 「すばる次世代AOワークショップ」@阪大
• 2012年1月 すばるユーザーズミーティング 次世代AOセッション
• 2012年8月 「次世代広視野補償光学システム 検討報告書」
• 2013年5月 「すばる次世代広視野AOサイエンスワークショップ」(予定)
• コミュニティからの要望を母胎とし、コミュニティと一体となって検討を進めてきた。
May 29-31, 2012 @ Subaru Hilo-base
Science Workshop
Oct 17-18 @ Hilo office
開発予算
主要項目 経費概算
可変副鏡 5-10億円
レーザーシステム 4-8億円
波面センサーシステム 約3.5億円
制御計算機 約0.2億円
望遠鏡改造・改修 15-25億円
観測装置 5-15億円
人件費 約2億円
合計 35-60億円
12.10.17 36
2012-2013アクションプラン
•すばる所内経費で概念設計を推進
• AO188アップグレード科研費(2013-)の申請
• GLAOに向けた要素技術の導入 (高出力レーザー, 波面センサーCCD等)
• AOによる銀河形成進化研究の発展
•概念設計レビュー: 2013年夏
• 科学的価値、技術的成熟度、予算獲得の見通し、TMTにむけたすばる/NAOJ体制のロードマップとの整合性などを総合的に判断して推進の可否を判断
•コミュニティワークショップはそれまでに1-2回実施、UMでも議論
• GLAO Science WS @ Hilo (10/17-18) キーサイエンスの議論
• 2013年春にワークショップ (すばる小委員会とハワイ観測所の共催)
国際協力の可能性
国際協力の可能性
国際協力の可能性
• 中国
• 韓国
• 台湾
• オーストラリア
• MPA(ドイツ)
• University of California Santa Cruz (Sandra M. Faber)
pfs
8-10m級望遠鏡の新世代近赤外線装置
• Keck MOSFIRE
• VLT KMOS
• Gemini GeMS, FLAMINGOS2
ESO VLT / KMOS
• 近赤外線 多天体 面分光装置
• 7分角の視野内の24天体の同時面分光
• 2012年稼働予定
Keck / MOSFIRE
• 6.1分角視野に46個のスリットを配置
• 2012年稼働開始
すばる次世代広視野補償光学システム: まとめ
• 超・超大型望遠鏡の時代に備えて、8-10m級の望遠鏡はよりシャープなイメージの獲得を目指して、様々なAOの開発にしのぎを削っている。
• すばる望遠鏡も今後TMTのためのターゲットの発掘、独自のサンプルを作るためにも、ほかの天文台と連携しつつも、すばるのみのAOシステムの開発が必須となる。
• TMTの開発の時代にすばるのための概算要求なぞとんでもないという意見もあろうが、敢えて、TMTとの相乗効果を生み出すためにも、すばるの広視野を活かすGLAOの開発はすばるの生き残りにとって不可欠である。
すばる次世代広視野補償光学システム: まとめ
• すばる望遠鏡に可変副鏡を用いた接地層補償光学系(Ground Layer AO)を導入し、これに対応した広視野赤外線撮像分光装置を開発する。
• HSTに匹敵する解像度、望遠鏡口径2倍相当の感度向上、6倍の広視野化を達成。
• 2020年代におけるすばる望遠鏡の赤外線基幹観測装置。広視野装置によるサイエンスというすばる望遠鏡最大の特長を発展させる、世界的にもユニークな装置。
• 遠方銀河の大規模なサーベイによる銀河進化史の全貌解明、超遠方銀河の探査と宇宙再電離の探求を始め、多様なサイエンスの展開が可能。
• 観測天体サンプルの形成、技術基盤形成など、TMTとの高い親和性。
• コミュニテイでの検討を母体とし、ワークショップ等を通じて幅広い研究者に開かれた検討を行っている。
• 2020年の完成を目指す。主に複数の競争的資金と国際協力によって予算獲得を目指す。
Backup Slides
Subaru MOIRCS Subaru GLAO TMT IRIS HST WFC3/IR JWST NIRCam
Telescope Aperture
8.2m 8.2m 30m 2.4m 6.5m
Wavelength Coverage
0.9-2.5μm 0.9-2.5μm 0.84-2.4μm 0.9-1.7μm 0.9-2.3μm / 2.4-5.0μm
Spatial Resolution
0.117”/pix 0.4”@2μm
~0.1”/pix 0.2”@2μm
4 mas 10mas@1μm
0.13”/pix FWHM~ 0.25”
32 mas / 64 mas
Field of View 28 □’ ~180 □’ 0.075 □’ 4.65 □’ 9.7 □’
Comparison: Imaging
Subaru MOIRCS Subaru GLAO TMT IRIS HST WFC3/IR JWST NIRSpec
Wavelength Coverage
0.9-2.5μm 0.9-2.5μm 0.84-2.4μm 0.9-1.7μm 0.6-5μm
Spatial Resolution
0.117”/pix 0.4”@2μm
~0.1”/pix 0.2”@2μm
4 - 50 mas 0.13”/pix FWHM~ 0.25”
0.2”x0.45”
Field of View ~25 □’ ~120 □’ 0.2-10 □” 4.65 □’ 12.24
□’(MSA) 3”x3”(IFS)
Functions Single-Slit
MOS IFS
MOS Multi-IFS?
IFS Slitless Slits
Microshutters IFS
Spectral Resolution
600-3000 -2000? 4000-10000 TBW 100, 1000,
2700
Comparison: Spectroscopy
GLAOによるシーイングの改善: FWHM
FOV: blue:φ=10arcmin、green:φ=15arcmin、red:φ=20arcmin
GLAO: ○、 Seeing:× by S. Oya
GLAOによるシーイングの改善: エネルギー集中
0.24”
Size
0.36” 0.48”
Seeing GLAO
by S. Oya
GLAOによるシーイングの改善: エネルギー集中
0.24”
Size
0.36” 0.48”
Seeing GLAO
by S. Oya
可変副鏡によるオンソース補償性能
by S. Oya
可変副鏡 オンソース
AO188 (NGS)
AO188 (LGS)
可変副鏡 GLAO
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