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東大土木メールニュース 20 号

Sep 30th, 2016

東大土木メールニュースは、同窓会のウェブ名簿にご登録いただきました会員さまに、東大土木の今をお

知らせする情報をお届けするものです。月に 1 回程度で配信したいと思っています。また、会員さまからの

ご投稿や「こんな情報を知りたい」というリクエストも歓迎します。

ご意見、ご要望は、dosokai-news@civil.t.u-tokyo.ac.jp までお寄せください。

(東大土木メールニュース 編集部一同)

●20 号(9月号)目次 今月の協力研究室:生産研 長井研究室

1.「先輩の声」田代民治さん(鹿島建設、S46 卒)

2.「先輩の声」ハメド ハドホウドさん(カイロ大学、H10 博)

3.長井研より報告

4.「私の同期会」サンパチ会(白川興一さん S38 より)

5.留学生による国土交通省訪問(8 月 30 日)

写真1:9月 10 日、千駄木の動坂町会の神輿に内村先生ご夫妻の招待で留学生が参加しました。半纏

姿がなかなか決まっています。神輿担ぎにも参加させてもらいました。

1.「先輩の声」田代民治さん(鹿島建設、S46 卒)

田代 民治(昭和 46 年学部卒業)

鹿島建設副社長、現土木学会会長

インタビューア:梅澤 祥太(交通研 M1)、長谷川 悠(大口研、M1)

2016 年 7 月 4 日:鹿島建設本社にて

Q 今年 3 月の大学院課程修了式で論博代表としてご挨拶された際にご自身を「ダム屋」と称されました

が、これまで最も印象に残ったのはどのダムでしょうか?

A 初めて現場でいった川治ダム(鬼怒川流域、アーチ式コンクリートダム、昭和 58 年完成)と工事事

務所長をやった宮ケ瀬ダム(相模川支流中津川、重力式コンクリートダム、平成 12 年完成)の二つで

すね。川治ダムは 25 歳くらいの時に行きました。両方とも 10 年くらい携わりました。

Q 始めからダムの仕事を希望していたのですか?

A そうでもないですが「目の前にでかいものを作りたい」という思いはありました。都会の中でごちゃ

ごちゃ仕事をするより山の方がいいなっていうのもあって、ダムに行くのに抵抗はなかったですね。

Q 現場を経験してどう感じましたか?

A やっぱり現場やると面白いんです。大変だけど目の前にできたときはやっぱり「おおぉ!」と思いま

すよ。この感動はものを作るのに非常に大事だと思うんです。土木ってのは自然を相手にするから本当

はものすごく難しいですよね。電気製品や自動車みたいに設計図だけあっても作れない。自然と対話し

ながらその都度考えなきゃならない。専門分野だけじゃなく、幅広い分野の知識も必要です。だけど、

それが面白いところで、最近やっと土木工学科が工学部の 1 号館として存在する意味がわかってきまし

た。

Q 実際のダム工事で印象に残ったのは?

A 地質調査で出入りしている専門家が、川治ダムで掘削した現河床から 20 メートル掘り下げた新鮮な

岩盤に頬ずりしたのにはびっくりしました。その人が「この工事がなければ日の目をみないものを見せ

てもらい幸せだ」と言っているのを聞いて「わー、この人すげえな」って思ったのを覚えています。俺

たちこういう貴重なものを相手に仕事するんだってわくわくしましたよ。

それから川を相手に仕事をするから、台風の時なんか水の力のすごさも感じましたね。水で石がごろご

ろと流されてくるんだけれど、石と石がぶつかって火花が出るんです、水の中でね。(一同、驚き)

Q 土木工学科に進んだきっかけは?

A 大学に入った時は土木に行くとは思っていませんでした。ただ、私たちの時は東大闘争があって、早

く社会に出たいという思いがありました。土木っていう言葉が社会に出るイメージにぴったり合ったせ

いかもしれないけれど、当時は学生から人気があって点数も高かったんです。「これはやばいか」ってひ

やひやしましたよ。(一同、笑)

Q 大学時代はどんな学生でしたか?同期とは今でも仲が良いのですか?

A 当時でいう普通の学生でした。麻雀パチンコ少々に体育会系、少林寺拳法に入っていました。土木工

学科の同期とは今でも東京で 2 か月に 1 回は会います。5 年毎には先生もお呼びして一泊で旅行をして

います。20 年目は宮ケ瀬ダムでみんなが集まってやりました。35 年目は八田與一の作ったダムを見に

台湾まで行ったこともあるんですよ。

Q そのダム(台湾・烏山頭ダム、ロックフィルダム、1930 年完成)は今でも使われていますよね。

A 八田與一(明治 43 年卒)は将来の利用まで考えて作ったんですね。ダムなんて急に作れるわけじゃ

なくて、自然を相手に長い時間かけて作っていく。川の堤防だって、昔からのものを補強、改良しなが

ら作るんだから積み重ねが大事なことに気づきますね。自分だけが勝手にドーンとやるってわけにいか

ないところから、歴史の大切さとか興味につながっていく気もします。

それに、簡単には克服できない自然と対峙していくのが結構面白いんですよ。相手がものすごく強いと

面白くなる。勝ってばかりでは面白くない。相手が強いからこそ面白い。そんなイメージを土木に持っ

ていますね。自然は私たちが思うよりもずっと複雑ですよ。

また「コンクリートから人へ」と言いますが、コンクリートだって原料は石灰石と石と水、自然から得

たものを人間が自然と対峙するために、知恵を使って作り出した。だから、それも自然の一部なんです。

そして、今の建物はほとんどコンクリートでできている。

Q 今年 6 月から第 104 代の土木学会会長になられました。どのようなことに取り組みたいですか?

A 私のような現場育ちが会長になったからには、現場でものを作るということが土木の原点であり、そ

こに面白さがあることを伝えたいと思います。また、次の世代のために生産現場を良くする提案をして

いきたいですね。

Q 土木を取り巻く空気が変わってきています。自然相手の仕事であることは変わりない中、少子高齢

化を迎えてこの世界をどう守って引き継いでいくのかは大きなテーマですよね。

A そうです。みんな今ある水道や電気が止まったらどうするんだろう、心配しないのかって思うことが

あります。利用者も含めて皆で長期的に考えなくてはならない。例えば、山手線の工事は電車の止まる

真夜中 1 時から明け方 5 時までにやっている。一時的に利用者に我慢してもらって昼間に工事できれば

もっと安く速くていい工事ができる。利用する側はインフラに対して、サービスのレベルを下げること

を許さない雰囲気がありますが、今後はそれも考えるべきだと思っています。これまで現場は縁の下の

力持ちのように思われて、厳しい条件での作業を強いられてきたけれど、これからは補修の必要な古い

構造物がどんどん増えて、なおかつ夜中に働ける労働者が少なくなります。今後は生産現場のあり方、

やり方をを考えないと行き詰ってしまい、インフラの危険性も増します。もっとスマートにやる方法を

利用者の意識も含めて考えていかなくてはならない。

土木学会内に立ち上げたワーキンググループでは、次世代に引き継げる生産現場にするために、休日出

勤や夜間労働の見直し、そして安全性の向上について一回きちんと踏み込んで、警鐘を鳴らそうと考え

ています。

Q 若い世代へのメッセージ

A この仕事が一番人気である必要はないですよ。今日話したことが大事だと思ってくれる人がいくらか

でも入ってくれれば日本という国も安心できる。海外では日本のインフラや、シビルエンジニアなんて

言ったらすごいって思われていますよ。今、特に関心があるのはリニア新幹線のプロジェクト。南アル

プスにトンネルを掘る挑戦は、日本の土木技術にとっては画期的だと思っています。

次の時代の土木がどうなるのか。若い世代に大いに期待して、今はそのための準備をしています。

災害の多い日本の国土が安定するように「自分がやるぞ」という人が土木にいてほしい。

やっぱり土木は楽しいからってことをいちばん伝えたいですね。

2.「先輩の声」ハメド ハドホウドさん(カイロ大学、H10 博)

Prof. Hamed Hadhoud

1998 年 9 月博士課程卒業、コンクリート研(前川先生)

現カイロ大学教授

2016 年 8 月 3 日

インタビューア:山崎 崇央(M2 コンクリ研)、前川会長、赤池

1. なぜ、土木を選んだのか

建築か土木かで、学科決定日の前日まで悩みました。当時からエジプトでは建築学は芸術の学問という

色彩が強く、実習もドローイングが中心。設計からすべて卓上に向かう作業だったため、多くの学生は

腰痛持ちになりました。一方、土木は工学の要素が強く、コンピューターを使った構造計算や CAD な

ども導入されており、どちらか迷いましたが、学ぶ価値があると思い土木工学を選びました。

2. なぜ、日本を選んだ?

カイロ大学の先輩 Shawky 先生(1994 博卒)に日本を勧められたからです。最初カナダの大学とどち

らかで悩みましたが、やはりコンクリート研究に関して第一線を行く前川先生にぜひ教えを請いたいと

思いましたので。(smile)

3. 日本での学生生活

日本語教室では挫折しました。クラスは韓国や中国からの留学生ばかりでペースが合わず、さらに東大

土木の中では学生とも英語でコミュニケーションできたので困らなかったことも大きな理由です。生活

面では、ハラールの食品が少なく野菜と魚ばかり食べていました。今、東京に来てハラール料理の出る

レストランが多くてびっくりしています。気晴らしには御殿下トレーニングセンターでトレーニング、

バスケットボール、水泳などをして過ごしました。週末も実験があったりして、大学外に出かけること

は少なかったです。

4. 大学、実業界そして家庭生活

ワークライフバランスは、大学教授 40%、実業家 20%、家庭 30%くらいの割合かな。

メリットは、仕事で使っている最新の技術と操作方法を大学で学ぶ学生に教えることができること。ま

た、大学で生徒を教えることは、企業で従業員を教える際にも役に立ちます。

実際の社会で求められている課題を大学で研究課題として取り組むことができるのも大きな利点です。

もちろん、家庭生活も大切にしています。今回も妻と息子二人を連れて来日し、いろいろな経験をして

楽しんでいます。

5. 若い世代、とくに博士号をとる学生へ

修士課程は、担当の先生の指導に素直に従うことが一番重要です。一方、博士号を取ろうとするならば、

自主性を何よりも大切にしてほしいです。テーマ決めだけで一年かけてもよい。何度も先生と向き合い

ながら、自分で試行錯誤を繰り返すことが研究する基礎の力をつけます。大学を出てから研究を続けら

れるかは、今、学生のうちにいかに自分で考えて課題を見つけ、取り組んでいるのかにかかっています。

エジプトではおよそ 70%の建物が耐震性の低いレンガで作られていますが、国の耐震化に対する関心

はまだ低く、研究補助も少ない。だからこそ自分はこの問題を自分にしかできない課題として取り組ん

でいるのです。

3.長井研より報告(長井宏平准教授から報告)

長井研究室は生産技術研究所に所属し「成熟社会インフラ学」をテーマに掲げ,社

会インフラとして最も利用されている鉄筋コンクリートに関する研究を軸に,地盤

や鋼構造といった構造工学全般と,更にはインフラの老朽化が社会問題となってい

る現代に適した維持管理の方策について,社会学的な分析も含め,多角的に取り組

んでいます。更に,日本が迎えているインフラ老朽化の問題は,遠くない将来にア

ジア各国にも生じます。そこで,日本の維持管理技術や制度のアジアへの展開も図

っています。現在は,JICA や他のプロジェクトからのサポートを得て,主にタイ,

ベトナム,ミャンマーで活動をしています。そこでは,多くの東大や,日本の大学の卒業生に会うこと

があり,その人達が活動を直接的も間接的にもサポートしてくれて,プロジェクトが進んでいます。日

本で学んだ留学生と世界各地で協働できることを,とても嬉しく思うとともに,これまで留学生プログ

ラムや留学生受け入れに尽力して下さった多くの方々に心から感謝しております。長井研究室には多く

の留学生がおり,現在,インドネシア,タイ,インド,中国,エジプト,ミャンマーのメンバーが研究

に取り組んでいます。東京大学での研究活動を通して成長するとともに,卒業後も活躍し,日本にも貢

献してもらいたいと願っています。

ミャンマーの損傷橋梁にモニタリンシステムの導入 研究室ミーティング

4.「私の同期会」サンパチ会(白川興一さん S38 より)

「私の同期会」ではご同期の方とどのような集まりをしているのかをご紹介していこうと思います。

今回は昭和 38 年卒業生の幹事白川さんに電話でお話を伺いました。

通称は? サンパチ会

場所は? 新日鐵代々木倶楽部(参宮橋にある。3 年前までは大成建設の役員食堂)

頻度は? 毎年 9 月(酷暑を避け、秋の行事も少ない時期に。以前は年 2 回、スタートは 40 歳代)

幹事は? 白川さん、メールと郵送で出欠をとりまとめ

人数は? だいたい 17 から 19 人程度

平成 28 年 9 月 21 日開催のサンパチ会

皆さんの同期会はどのような集まりなのでしょうか。次回は昭和 61 年卒の同期会をご紹介します。

同期会のお写真などありましたら、お気軽にご投稿ください。

6. 留学生による国土交通省訪問(8月 30 日)

写真:10 か国から 16 人の学生(東大、埼玉大、東工大)が参加しました。

3 年目になります留学生による国土交通省訪問は、留学生を霞が関の省庁に連れていき、国土交通省

の各局の若手職員に業務内容を英語でプレゼンテーションおよび質疑応答してもらう企画です。

そもそも一人の留学生の「省庁の仕事を知りたい!」という希望から始まり、国土交通省OBの渡口

潔さん(昭和 50 卒)が動いてくださって始まった企画で、昨年度には東大土木 OB が教員を務める他

大学の留学生も参加するようになりました。

今年度は、学生からの要望も多かった鉄道局にも加わってもらい、内容がより広がりました。また、

森昌文技監(昭和 56 卒)の部屋にも表敬訪問することができ、学生たちは大変よい経験になりました。

終了後の懇親会には、森さんもお見えになり、海外プロジェクト課の平井節生課長はじめ担当の田中康

寛さん、駒井正樹さん、そして港湾局から内藤孝さん(平成 8 卒)石橋洋信さん(平成元卒)、道路局か

ら渡邊良一さん(平成 7 卒)、水管理国土保全局から岡田智幸さん(平成 6 卒)にも加わっていただき、

参加した 16 人の留学生たちとフレンドリーに歓談していただきました。最後は主催者である渡口さん

の一本締めで盛会のうちに終了しました。

次年度にはより参加していただく部局を増やし、多くの大学からの留学生に参加してもらいたいと考

えています。各大学教員の方で、自分の研究室の学生を参加させてみたいという方は、ぜひ同窓会事務

局までご一報ください。

各局からのプレゼンテーター

総合政策局 海プロ課

企画専門官 田中 康寛

道路局 企画課

国際室企画専門官 田中 衛

都市局 都市計画課都市計画

調査室課長補佐 井上 直

水管理国土

保全局 国際河川技術調整官 岡田 智幸

下水道部 下水道企画課長補佐 田本 典秀

鉄道局 鉄道局国際課

企画調整官 槙島 爲朗

東大土木メールニュース編集部

編 集 長:赤池あゆこ(H7)

副編集長:鳩山紀一郎(H13 修)

編 集 員:鈴木明子(H21)高橋佑弥(H20)

長谷川悠(H27)梅澤祥太(H27)

顧 問:伊藤學(S28)

英文校正:アレクサンダー・ギルモア先生

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