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RDS/RFCC全体最適処理技術開発

出光興産株式会社 ○田中隆三、平松義文、坂倉圭、森田全人、岩井豊彦、三浦裕紀、

田邊亮

1.研究開発の目的

1.1 目的

石油の更なるノーブルユースを目的に、重油直接脱硫(RDS)装置と重油流動

接触分解(RFCC)装置との組合せ、RDS+RFCC組合せシステム、の最大活用・

最大効率運転を目指す技術開発に着手した。克服すべき技術課題として、①RDS

装置にて、更なる重質処理運転促進を狙い、RDS装置前段部(ガード)での偏流

を大きく低減する技術開発、②RDS装置とRFCC装置の組合せにおいて、常圧残油

(AR)を原料にした際のRFCCによるガソリンや軽油留分等、高付加価値燃料油

への転換効率向上を最大限に発揮可能な技術開発、を設定した。その初年度の取組

として、実機RDS装置を模したRDSパイロットにより性状の異なるRDS生成油で

ある脱硫重油(DSAR)を得、その性状とRFCC分解反応性との関係を調べた。さ

らに新しい技術取組として、最新の流動解析技術やペトロリオミクス技術の活用・

展開を試みた。

1.2 目標

(1)重油直接脱硫(RDS)装置の流動反応シミュレーション技術活用に基づく

反応温度偏差改善のための触媒充填(グレーディング)技術の開発により、実機R

DS装置運転において、最前段(ガード)触媒層水平温度差(ΔT)20℃以下維持

を可能とし、1年間連続運転を達成する。

(2)重油直接脱硫(RDS)装置と重油流動接触分解(RFCC)装置の反応メカニ

ズムに立脚したRDSとRFCCの全体最適運転を実現するそれぞれの触媒組み合わ

せならびに運転条件改善を検討し、実機RDS+RFCC装置運転にて常圧残油(AR)

を原料にした際のRFCCによるガソリンや軽油留分等、高付加価値燃料油への転換

効率向上を可能にする技術開発を行う。目安として、RFCCにて液収率0.3vol%以

上(RDSからの脱硫重油(DSAR)を100%通油換算)とする。

1.3 技術開発の期待効果

(1) RDS/RFCC全体最適処理を達成するために必要な開発実用技術

以下の開発技術を、RDS/RFCCシステムを有する製油現場に適用できるレベル

に仕上げる(図1)。

① 温度偏差改善のための触媒グレーディング技術

② RFCC分解向上のためのRDS触媒システム技術

③ 最適DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術

図1. RDS/RFCC全体最適処理の開発技術

(2) RFCC得率 0.3vol%UPによる効果(原油種、処理量一定)

当該技術開発は、特殊な設備に頼らず、日本の既存製油所の多くが保有するRD

S/RFCCを最大限に活用することを目的としているため、汎用性が高く横展開が期

待できる。全日本のRDS/(R)FCCユニットに展開できた場合は、500 kL/D 増とな

り、DSARからの値差を9,000 円 /kLとすると、 約15億円 /年のメリットが見込ま

れる。

1.4 課題および検討方法

(1)温度偏差改善のための触媒グレーディング技術の開発

実機RDS装置運転において障害となるリアクター内の圧力差(ΔP)は、特にR

DS最前段(ガード)リアクターで起こることが知られている。その際、ΔP上昇の

予兆として触媒層水平温度差(水平ΔT)が生じ、リアクター内で固化偏流が発生

することが引き金と考えている。実例を図2に示す。この例から、運転に伴う水平

ΔTとΔPの変化から、水平ΔT上昇が固化偏流発生の目安であり、これを一定値以

下に抑えれば問題を回避できると期待される。そこで目標としてRDSガード触媒

層水平ΔT 20 ℃以下維持とした。

水平ΔTが発生し増大する現象は、① 触媒の形状あるいは充填不良等によって

偏流発生、② 触媒層へスケールが流入し、このスケールを核にしてコークが生成・

成長しより偏差を助長する、といった機構を想定している。この仮説を確かめて、

さらには対応策を策定するため、偏流原因の実験的検証を進めると同時にリアクタ

ー内の触媒層における気液の流れを現実ベースで再現できる高度流動解析技術の

開発を行う。

重質油(残油)

①温度偏差改善のための触媒グレーディング技術の開発→ 高性能ガードシステム

による1年安定運転

脱硫重油

ガード触媒システム

②RFCC分解向上のためのRDS触媒システム技術の開発→ RFCC得率向上

重油脱硫装置(RDS)

重油流動接触分解装置(RFCC)

メイン触媒システム

(HDM+HDS)

製品得率増大

(ガソリン等)

分解残渣油

高硫黄重油低減

③最適DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術の開発→ ・RFCC得率推定

・製品硫黄分制御

図2 RDSカードリアクター固化発生例(左)、およびRDS運転に伴う水平ΔTと

ΔPの推移例(右)

(2)RFCC分解向上のためのRDS触媒システム技術の開発

ベンチリアクターを用いRDS装置を模擬した反応評価を行い、触媒システムな

らびに運転条件等がRDS生成油であるDSAR性状に対する影響把握を行う。各種D

SARはRFCC分解性評価装置であるACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation

- Micro Activity Test)により、分解率(conversion)や分解ガソリン(FG)等

のRFCC生成油各種選択性を求め液収率に関する情報を得る。これによりRFCC分

解向上のためのRDS触媒システム技術の開発および反応操作変数改善検討に資す

る。

(3)最適DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術の開発

JPEC主導によるペトロリオミクス技術を活用し、分子レベルの分析・反応解析

に基づいた最適DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術の開発を行う。

2.研究開発の内容

2.1 温度偏差改善のための触媒グレーディング技術の開発

ガードリアクター内の物理現象は物質、熱、反応、相変化、詰まり等の複雑な現

象が混在しており、その定量的な解明は最新のCFD(Computational Fluid Dyn

amics、数値流体力学)解析を用いても困難とされてきた。本開発では、1つのモ

デルでリアクター内の現象をすべてモデリングすることは困難なため、現象毎にミ

クロシミュレータ、マクロシミュレータに分けて高度流動解析技術開発を進めた。

ガードリアクター内固化発生部位 RDS運転日数(一年) RDS運転日数(一年)

Base

Base

(1)ミクロシミュレータの開発

ガードリアクターは様々な形状、粒径の触媒を層状に積層(グレーディング)し

ており気液の流れの分散性、液中に含まれる微細粒子の捕捉等を試行錯誤的あるい

は経験的知見に基づき行われている。このグレーディングが効果的であれば、充填

層での微細粒子が引き金となる詰まりが抑制され、偏流の回避、温度分布の均一化

が行われ、あるいはより重質な油を処理できる。本開発では、グレーディングを触

媒形状や粒径あるいか充填方法を考慮し、最適な条件を探索するためのシミュレー

タを開発するものである。

具体的には、実際に使用されている触媒形状を厳密にモデル化し、それを実充填

法に近い条件(ソックローディング)で充填解析を行い、それによって、形成され

た充填構造において、気液二相流がどのように形成され、更に、そこに微細粒子が

存在する場合、微細粒子がどのように捕捉されるかを解析する。これにより、触媒

形状、触媒径、触媒濡れ性、触媒充填率等が気液の分散や微細粒子のトラップにど

のように影響するかを明らかにし、効果的なグレーディングを可能にする。

上記の解析モデルを構築するに当たり、計算手法の選定が必要となるが、複雑形

状触媒の充填解析は離散要素法 (DEM:Discrete Element Method)を改良した拡

張DEM法(昨年度、ソフトベンダーCPFD Lab.社と共同開発)を採用。複雑な形

状場での気液二相流解析法として、MPS法(Moving Particle Semi-implicit Me

thod)、VOF法 (Volume Of Fluid)、LBM法(Lattice Boltzmann Method)を

評価し、数値拡散誤差の少ないMPS法を採用した。

また、液相における微細粒子の解析には粒子の付着性を考慮したDEM法を採用

した。本解析は、いくつかの機能を汎用ソフトに導入・拡張し、複数のソフトを連

携させて行っており、汎用のソフトを単に使用するだけでは、このような解析は不

可能である。

さらに解析の信頼性を確認するため、実触媒を用いた水空気系でのコールドモデ

ル実験を行い、液の分散性や充填層における滞留時間を評価した。解析ソフトとし

て、触媒充填解析にはCPFD Lab.社PDを採用、MPS法と微細粒子の捕捉解析はR

-FLOW社のR-FLOWを用いた。

尚、ミクロシミュレータでは、触媒間の流れを高精度に解析するため、計算領域

は数十cmオーダーであり、実装置リアクター全体をモデル化することは現実的で

なく、リアクター全体は次項のマクロシミュレータが担当する。

(2)マクロシミュレータの開発

マクロシミュレータは実リアクターにおいて、偏流が発生し、充填層内で温度分

布や圧力上昇を生じた場合、そのリアクターの詰まり状況やその進展または運転時

の対応策を検討する目的で開発を進めている。

具体的には、水空気系のコールドモデル実験において、液の分散性、二相系の圧

力損失および液ホールドアップを測定し、これらの条件が再現できるようにCFD

で反応器モデリングを行う。この条件において、液、ガスの物性、リアクターサイ

ズをCFD上で変更し実リアクターの状態を予測するものである。よって、コール

ドモデルで目視した状態とCFDで解析された液の体積率が対応しており、実リア

クターの状態がコールドモデル実験から推察できる。本解析モデルとして、液ガス

を連続体として、粒子層を連続体のポーラスモデルとする方法と液ガスを連続体と

して、粒子層を離散体(DEM法)とする方法が考えられるが、液分散性、圧力損

失、液ホールドアップを再現できる方法は後者の連続体とDEMのカップリング法

でより有効であった。

そこで、コールドモデル実験結果を気液流はVOF法で、粒子はDEM法でモデル

化する。ここでコールドモデル実験では2~5mm径の触媒を用いているが、DE

Mで表現する場合、この粒径で内径約4mの実リアクターを解析すると粒子数が数

十億オーダーとなるため、実験では2cm径の触媒とした。実験結果をCFD結果と

一致させるため液面毛管力係数、気固抗力モデル、粒子内液浸透係数を調整し、粒

径を2cmとして、実リアクターをモデル化した。この際、粒子数は約600万となり、

DEMによる大規模な触媒充填解析を実施した。

2.2 RFCC分解向上のためのRDS触媒システム技術の開発

(1)RDS触媒システムの活性評価

触媒メーカーから提供された市販の脱メタル(HDM)触媒と脱硫(HDS)触媒

を複数種組合せて用いた。組合せは実機RDS装置と同じとなる重量比率で各触媒

ペレットを高圧固定床反応器に充填し、硫化処理した後、中東系原油からの常圧蒸

留残油(AR)を原料油として、水素化反応処理を行った。使用した触媒は、一般

物性や金属担持量から主に脱メタルを行うHDM触媒、脱メタルと脱硫をバランス

良く行うHDM/HDS触媒、および脱硫を主とするHDS触媒の3種類に大別でき、

3種類の触媒は3本の反応管に各々充填して評価を行った。

(2)原料油ならびに生成油の詳細評価(ペトロリオミクス活用)

原料油および生成油の一部は、JPECと連携して詳細組成構造解析を行った。

2.3 RFCC反応制御技術の開発

(1)RDSのシビアリティ変更に対するRFCCへの影響評価

①DSARの分解性評価

(a) 触媒

DSARの分解性評価を行うために、実装置内の状態におけるRFCC触媒活性に近

づけた状態に疑似平衡化した触媒を用いた。ただし、実装置から抜き出した平衡触

媒を使用すると、触媒上に付着した被毒メタル(ニッケル、バナジウム、鉄)の影

響を受け、コーク収率に関して、原料油に起因したコークかがわかりにくくなるた

め、ここではRFCC新触媒(Fresh)を実験室内にてスチーミングして所望の触媒

活性に調整した触媒を用いた。

(b) 原料油

RDSシステム側の検討により得られたDSARを用いた。ベンチで得られた生成油

を蒸留して343℃より重質留分にカットした後、反応に用いた。

(c) 反応評価

反応評価は、RFCC分解性評価装置にて評価した。この時、分解して生成した油

は、RFCC生成油分析装置にて分析し、分解ガソリン(FG)、分解軽油(LCO)、

分解残さ(CLO)の得率を算出した。生成した分解ガス(H2、C1 – C4)は、マ

イクロガスクロ(GC)を用いて、組成分析を行った。生成コークに関しては、反

応評価後の触媒を焼成し、その排ガスをCOコンバーターを通し、CO(一酸化炭素)

をCO2(二酸化炭素)に転換し、その総流入量からコーク収率を求めた。

3.研究開発の結果

3.1 温度偏差改善のための触媒グレーディング技術の開発

(1)ミクロシミュレータ開発

はじめに実触媒を用いたコールドモデル実験結果を示した。ここで得られた液の

分散状態や液の滞留時間がCFDでも解析できることが必要となる。その後、計算

形状を得るための触媒充填解析、それを用いた気液二相流解析およびその流れ条件

における微細粒子の挙動結果を順に示した。

①コールドモデル実験

CFDの健全性評価ため、コールドモデル実験を実施した。図3に実験結果を示

す。3種類の実触媒をコールドモデルに充填(横20cm×高さ8cm×厚さ1.6cm)し、

中心部のノズルより水を供給し、周辺部より空気を供給した。触媒は上部よりロー

トで落下させて充填することで、いわゆるソック・ローディング(sock loading)

法を模擬した。流量条件は図中に示したが、これは実装置の空塔速度条件に対応す

る。流量はそれぞれデジタル流量計で計測した。流れが定常に達した後、ノズル配

管上流部からトレーサーインクをスパイクして、インクの分散状況と充填層を通過

する時間を計測した。

この結果、インクの分散状況は粒子サイズが細かいCase3で最も広がり、次いで

Case2、Case1の順となった。また、インクの通過時間はCase1とCase2が0.5sec

で通過し、Case3は2.1secで通過することが動画の画像解析から分かった。Case2,

3は棒状の触媒であり、横方向での分散が促進されているが、球形粒子ではそれ

が顕著でないことが分かる。

図3は正面からの図であるが、反対から見た図もほぼ同一であった。

図3 トレーサーによる充填触媒間の液分散状態確認実験(コールドモデル)

②複雑形状触媒の充填解析

CAD(computer-aided design)ソフトにて触媒形状を厳密に再現して、1個の

触媒粒子のstlファイルを作成する。このファイルを図4のように配置して、振動

を与えながら崩落させ、粒子の充填解析を行った。解析ソフトはPDを用いた。通

常のDEM法は点と面の接触を解析して物体の運動を計算するのに対して、この充

填解析では点と面および構造体が持つ線が点、面、線と接触することを考慮してお

り、複雑な物体での衝突反発の解析が可能となっている。この解析によって得られ

たCase2, 3の計算形状も図中に示す。汎用ソフトでは複雑形状物体を模擬する場

合、結合粒子により表現するが、この場合、粒子の曲面が残るなどの問題がある。

しかしながら、本法では滑らかな面が再現される。異なる形状の触媒を複数積層、

混合させる等様々な応用が可能となる。更に下部よりガスを供給して、流動化させ

るなどの計算も可能である。しかしながら、個々の触媒は線、面、点等多くの情報

を含むため、計算可能な粒子数には限りがあり、それに応じて計算速度も低下する。

Gas

20cm

8cm

Sim. zone

Case1 Case2 Case3

図4.触媒充填層解析の初期条件と充填結果

③触媒充填層内での気液二相流解析

触媒の充填解析で得られた幾何形状を用いて、気液二相流の計算を行った。計算

手法として、MPS法(汎用ソフトR-FLOWを使用)とVOF法(汎用ソフトPDを使

用)を評価した。計算条件はコールドモデル実験で用いた水流量と空塔速度を合わ

せて計算を行った。いずれの解析でも水の表面張力を考慮して解析を行った。

解析結果として、図5に水投入後2sec時のそれぞれ水の分散状況およびガスの

速度ベクトルを示す。Case1の球状触媒では水はあまり分散せずに落下するのに対

して、断面四つ葉の棒状触媒は水平方向への分散がより顕著となる。更にCase3の

より細かな四つ葉触媒では空隙率が小さくなっており、液の分散もより顕著である。

また、液の充填層内での通過時間を調べると、Case1で0.4sec、Case2で0.5sec、C

ase3で1.5secとなっており、実験での測定結果と概ね一致する。

図5.各触媒充填層内の液の流速分布(Time: 2sec)

3.2 RFCC分解向上のためのRDS触媒システム技術の開発

(1)温度勾配運転条件が生成油性状に与える影響に関する考察

反応器内の温度プロファイルを変えてベンチ実験を行い、降温パターンである

「前段高負荷ケース」と昇温パターンである「後段高負荷ケース」の生成油を得た。

これらの生成油中について、硫黄分の変化と一般物性から導かれるRFCC反応性指

標との関係を図6に示す。

図6.RDS内の温度負荷を極端に変化させた場合の生成油DSARへの影響

その結果、大きな差ではないが前段高負荷と後段高負荷ケースで、最終生成油D

SAR中の硫黄分が同一の場合でも、RFCC反応性指標にやや差があり、前段高負荷

ケースつまり降温パターンで後段高負荷ケース(昇温パターン)に対してやや優位

性があることを見出した。

3.3 最適DSAR性状に対応したRFCC反応制御技術の開発

(1)DSAR目標硫黄濃度が生成油性状に与える影響の評価

RDS装置の各触媒層への負荷を変更する運転条件変更で、極端に変化させるこ

とで、RFCC反応性指標にやや差があることを見出したが、期待したほど大きなも

のでは無かった。さらに大きなRFCC反応性の向上を狙うため、RDS運転温度を標

準より増加させ(脱硫過酷度アップ)生成油DSAR硫黄分を変化させ、その生成油

性状およびRFCC反応性への影響を調べた。

RDS運転温度を標準(Base)と標準より増加させ(脱硫過酷度アップ)RFCC

反応性指標アップ(指標アップ)を狙った2種のDSARのRFCC反応性を比較評価

した。RFCC反応性指標とDSAR転化率との関係を図7に、RFCC分解選択性とし

て転化率に対する分解ガソリン(FG)得率の関係を図8に示す。

RDS入口 RDS出口

青色: 前段高負荷ケース、 赤色: 後段高負荷ケース

Base

図7.DSAR転化率とRFCC反応性指標との関係

図8.RFCC分解選択性(FG得率とDSAR転化率との関係)

この結果から、目論見通り指標アップを狙った反応シビアリティアップで目標硫

黄分を標準から低減させたDSARは、標準(Base)に比べ高いRFCC反応性指標を

示すことが確認された。さらに、指標アップのDSARは標準に比べ、FG得率の差

は約3 wt%もあり、RFCC収率アップが十分に期待できるレベルとなった。

以上の結果から、RFCC反応性向上を狙うためには、RFCC反応性指標を向上さ

せるようなRDS運転を行うといった方向性および方法論を定めることができた。

しかしながら、今回実施した目標硫黄分を強制的に低減させるRDS運転を実機RD

Sで実現することは容易ではない。今後、方向性は良いとして、実用的なRDS運転

ができ、かつRFCC液収率アップに繋がるRDS触媒システムの探索を行う。

4.まとめ

石油の更なるノーブルユースを目的に、重油直接脱硫(RDS)装置と重油流動接触分解

(RFCC)装置との組合せ、RDS+RFCC 組合せシステム、の最大活用・最大効率運転を

目指す技術開発に着手した。その初年度の取組として、実機 RDS 装置を模した RDS パイ

ロットにより性状の異なる RDS 生成油である脱硫重油(DSAR)を得、その性状と RFCC

分解反応性との関係を調べた。さらに新しい技術取組として、最新のペトロリオミクス技

術や高度流動解析技術の活用・展開を試みた。結果として当初設定した課題は計画通り完

遂した。計画・実績対比を一覧として表1に示す。今年度の結果をベースにして、引き続

き次年度以降の技術開発に邁進する。

表1.今年度技術開発 計画と実績一覧

年 月 

 項 目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

① 反応温度偏差改善のための 触媒グレーディング技術の開発

高度流動解析、ハード/ソフトの導入と流動現象の解析

② RFCC分解向上のための  RDS触媒システム技術の開発

ベンチを用いたRDSシステム基礎実験(運転条件によるDSAR性状変化把握)

③ 最適DSAR性状に対応した  RFCC反応評価技術の開発

RDSシステム・反応条件のRFCC分解性への影響把握

平成28年度

ハード/ソフトの導入等準備 流動解析トライアル

コールドモデル実験

事前準備 SOR期ベンチ実験 EOR期ベンチ実験

運転条件等が与えるDSAR性状等の影響把握

MAT仕様決定・設計発注 設計内容精査 設計検収済

異なるDSARによるMAT分解活性の影響把握

ペトロ解析(DSAR)5 3 3

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