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山口 揚平 2003330手段としての「再建」、目的としての「再生」 Turnaround

目的としての「再生」、手段としての「再建」デューデリジェンスの実務

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山口 揚平

2003年3月30日

手段としての「再建」、目的としての「再生」

Turnaround

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企業再生

1©2003 Yohei Yamaguchi. All rights reserved.

� 最近、「企業再生」って良く聞くが、結局なんのことだ?

� 企業再生ビジネスって誰がやってるんだ?儲かるのか?

� 企業が有望かどうかなんて、本当にわかるのか?

基本的なモンダイイシキ

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企業再生

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� 最近、企業再生・事業再生という言葉が雑誌や書籍に多く登場するようになった。しかしこの漠然としたテーマを明快で簡潔に説明したものはなく、また企業再生の「具体的な手法」について語っているものも少ない。今日は、企業再生の全体構造を簡単に噛み砕いて、すっきりクリアーな形で提示し、消化不良を解消したい。

� 企業再生の第一歩は、企業の有望性を見極めることにある。今日は、その方法について事例を踏まえて紹介する。

今日の目的

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企業再生

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1. 企業再生とは何か?

- Question:企業再生という言葉から何を連想するか?

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企業再生

4©2003 Yohei Yamaguchi. All rights reserved.

企業再生と呼ばれるものには、4つの領域がある。

� 巷で企業再生と言われているものは、必ず以下の4つの領域のいずれかに入る。そして企業再生は、いつもⅠ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳの順に実行される。でなければ失敗する。

貸借対照表の領域の領域

損益計算書の領域

� 不良人材の処理(リストラ)

� BPR、プロセス革新

� 購買コスト削減

� アウトソーシング

� 有価証券/工場売却

� 子会社/事業の売却

� 遊休資産の整理

� 証券化

� 債務免除/サービサー法

� 民事再生法/会社更生法の利用

� デット・エクイティ・スワップ

� DIPファイナンス 等

費用

資産

収入

負債

資本利益

� 事業革新

� オペレーション革新

Ⅳ成長戦略

Ⅰ財務リストラ

Ⅱ資産整理

Ⅲオペレバ

負債を圧縮する

コストカットする

不要資産を売却して金に変える

売上を増加させる

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企業再生

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貸借対照表の領域の領域

損益計算書の領域

4つの領域には、それぞれのプロと詐欺師がいる

費用

資産

収入

負債

資本

利益

どこにも属さない傍観者達(コンサル)

勇敢なるコストカッター達

暴利貪る投資銀行

暗躍するハゲタカファンド

自称戦略

コンサル達

Ⅳ成長戦略

Ⅰ財務リストラ

Ⅱ資産整理

Ⅲオペレバ

財務テクを駆使する金融コンサルタント達(PwC FAS:田作氏、

KPMG木村剛氏)負債圧縮型ファンド(サーベラス等)

企業再生のプロ永守氏[日本電産社長]三枝氏[元BCGコンサルタント]

企業再生ファンド達(ユニゾンキャピタル、カーライル等)

M&Aコンサル(レコフ)熱きココロを持つ破産管財人・弁護士

(中坊公平氏 等) �財務の魔術で一発逆転を狙う

(法律と財務をどれだけ駆使できるか?)

�明確な価値観と圧倒的な判断力が物を言う世界

�勇気と行動力、コンセンサスを武器に人のハートを変えてしまう

�パラダイムをひっくり返す戦略家(切れ者)の舞台

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「V字回復の経営」 三枝匡

「会社再建―史上最大の巨大倒産管財人の記録」

「ハゲタカ投資家―不良債権は蜜の味」

「図解 企業再生とM&A」

「買収ファンド」 和田 勉

企業再生屋が書いた「借りたカネは返すな!」

「事業再生」 田作朋雄

� 新しい法制度の内容

(民事再生法)

(デットエクイティスワップ)

� M&Aの手法

-どう評価して、何を売るのか?

� M&Aの実務

� 業務改善の手法

� 人切りの手法

� 人の心を動かす方法

� 経営戦略の立案方法読者の関心

見極め

� 企業再生ファンドなどの旨みのあるビジネスモデル

「企業再生の基礎知識」

「ルネッサンス」 カルロス・ゴーン

「企業再生」 (ダイヤモンド社)

代表的な書籍とカバー範囲

「良い倒産、悪い倒産」

企業再生についての本は、専門領域を単発的に述べているだけ

Ⅳ成長戦略Ⅰ財務リストラ Ⅱ資産整理 Ⅲオペレバ

� 「企業再生」を網羅的に知り、かつ遂行できる人材は、今の日本にいない。企業再生についての多くの書物は、事例を面白おかしくまとめた「物語」か、実用的だが面白みに欠ける法律・会計・税務「解説書」のどちらかである。

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財務リストラで右側の鎖(借金)をはずす。これは財務のプロのお仕事

費用

資産

収入

負債

資本

利益

Ⅰ財務リストラ

自己資本

特別損失

自己資本

増資

金利減免

債務免除

自助努力 バッファ

膿み出しに伴うコスト

債務超過のバー

(財務リストラ前) (財務リストラ後)

� B/Sの右側で戦うプロ達が、有利子負債という重い借金をいかにして降ろすかに知恵を絞る。この領域の主要な論点は債務超過を免れることにある。そのための銀行との交渉や再建計画の策定、法的、会計的手法、生き残りをかけたスキーム(裏技)が論点となる。

自社のみで行う 周りを巻き込む

減らす

減ったように

見せかける

会計テクニック

・税効果会計

・資産の水増し

・利益操作

・連結外し

債務免除(DESを含む)

破産

借り換え

飛ばし

私財の投げ出し

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自己資本増加策(例)

実行可能性

自社内で実施 社外を巻き込んで実施

� SPCの利用による不良資産・負債のオフバランス化

� 取引先を活用した会社設立による不良資産の売却

� 不採算連結子会社の連結対象からの除外

� 退職給付債務の前提条件の変更(割引率の変更 等)

� DES

� 債務免除

� 増資(公募・株主割当・第三者割当)

� 固定資産の含み益の捻出(高)

(低)

� 欠損金の活用による節税

� 減価償却方法の定率法から定額法への変更

� 費用の資産計上

� 簿価割れの固定資産を評価対象から外す

� 各種引当金の未計上

� 配当性向を下げる

� 棚卸資産の評価方法変更

� 繰延税金資産の資産性を高く見せる(強気の経営計画)

� 会社分割による損失の切り離し

クリエーティブアカウンティング

実際的方策

自己資本増加策の例

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資産整理では、我が社はいったい何のために存在するのかを問う

費用

資産

収入

負債

資本

利益

� トップマネジメントや企業再生家が、不要資産、ノンコア事業の売却によってキャッシュを捻出し、有利子負債の返済、リストラ資金を捻出する領域。

� この領域で最も求められるのは、「判断力」である。

� すべての資産を洗い出して並べた上で、自社にとって何が最も必要で、何が不要なのかを、聖域と例外を撤廃し、ゼロベースで突き詰めて考え見極める目が必要となる。トップは不要資産、事業の売却の際、普段の業務では見落としがちな視点、つまり「わが社は何のために存在しているのか?」という根本的な命題、原点に目を向けざるをえなくなる。このプロセスを経て、企業はその向かうべき真の方向性を見出すことができる。

無形固定資産

有価証券

土地・建物

流動資産

まず、すべての資産を、まな板の上にのせる

売却すべきか?(インパクト)

売却できるか?(フィージビリティ)

売却の評価軸

高く売れるか?

自社にとっての意味合いは?(戦略適合性)

買い手はいるか?

売却を妨げる構造はあるか?

� わが社にとって重要なことは結局なにか?

� わが社は何のために存在するのか?

� わが社はどこを目指すのか?

� 会計上の問題(債務超過等)

� 法的な問題

� しがらみ上の問題(先代の資産、従業員のモチベーションダウンにつながる等)

すべきか、できるか、という観点で評価する

地上権 特許権 営業権

新潟工場

駐車場

ゴルフ場

NTT株 国債 山形物産

商品 A 商品 B

Ⅱ資産整理

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オペレバのKFSは、常に「ゲンバ」を巻き込みこと

費用

資産

収入

負債

資本

利益

� 資産整理での重要な視点が「判断力」であったのに対し、オペレバで必要なことは「実行力」である。全社丸ごとの決意、危機感、モチベーションが勝敗を分ける。つまり人の心をどう動かすか、が鍵となる領域である。このプロセスを経て、社員の変革への意識の準備が整う。

� プロの企業再生家は、現場に敬意を払い、真摯に耳を傾け、その結果、彼らの口から直接出てきた建設的なアイデア(不満ではない)を、彼ら自身の手によって実行してもらう。 Ⅲ

オペレバ

現状コスト 削減後コスト

削減コスト

� 業務の見直し・改善 等

トップによる打ち手のアイデア

ミドルによる打ち手のアイデア

現場による打ち手のアイデア

� 非重要業務の廃止

� 取引の見直し

� 新組織デザイン

� 新人事制度設計

数は少ないが、一つ一つの効果は大きい!ただし、実行リスクも大きい

ミドルは、常に答えを持っている!彼らから

抜本的なアイデアが出れば、成果は大きい。

個別の施策の効果は小さい。

アイデアを出す過程で、改革へ「巻き込み」む事の方が、重要である。現状コスト 削減後コスト

削減コスト

� 業務の見直し・改善 等

トップによる打ち手のアイデア

ミドルによる打ち手のアイデア

現場による打ち手のアイデア

� 非重要業務の廃止

� 取引の見直し

� 新組織デザイン

� 新人事制度設計

数は少ないが、一つ一つの効果は大きい!ただし、実行リスクも大きい

ミドルは、常に答えを持っている!彼らから

抜本的なアイデアが出れば、成果は大きい。

個別の施策の効果は小さい。

アイデアを出す過程で、改革へ「巻き込み」む事の方が、重要である。

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企業再生

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オペレバプランの期限は2週間!ザックリ分析してキッチリ整理する

� オペレバプランを作るとき、このようなテンプレートを持っていると便利。

コスト削減のテーマ

大項目(費目)

中項目(部署)

小項目(テーマ)

問題意識削減のアプローチ

削減効果削減実行における課題とリスク

実行のスピード感

計画 実行

検討担当者

テーマの分類は、大項目に費目、中項目に部門、小項目に個別テーマを書

くとアイデアの「モレ」が防げる。

問題意識をもっている「当事者の言葉」で簡潔に書くこと

問題意識に、明確に答える形でシンプルに書くこと

定量的に書くこと。ただし、最初はザックリと入力し、後で漸次修正する 最も重要!ここに具

体名が入るか、否かで成功可能性が飛躍的に高まる

リスク回避には、専門家のアドバイスが必要である

原価

購買課業者の見直し

外部委託費

• 前会長の関連業者が多数あり

削減効果の合計

• 新規地元業者への発注

• 2億~5億@年 1.5ヶ月 1.5ヶ月 黛(購買課)

• 前会長との関係悪化の懸念

飲料課アイテム数見直し

• 現在、各部門で個別に発注

• 一括発注によるアイテム絞込み

• 5億@年(200アイテム)

4ヶ月 6ヶ月 稲葉(購買課)

• 顧客満足に対するフォロー

委託清掃費見直し

本部• 現在、ババ清掃と年間契約

• 契約形態の変更

• 3,500万@年 2ヶ月3ヶ月~(交渉)

鍛冶倉(総務)

• ババ清掃との交渉力

人件費 本部業務統廃合

• セクショナリズムがあり、業務が重複している

• 総務/人事の統合

• 3,500万@年

• 企画/販売の統合

• 4,000万@年

2ヶ月 6ヶ月山村(執行役員)

• 一時的なモチベーションの低下と業務負荷

合計額は、大きな目安になり、改革の意欲を喚起する

コスト削減のテーマ

大項目(費目)

中項目(部署)

小項目(テーマ)

問題意識削減のアプローチ

削減効果削減実行における課題とリスク

実行のスピード感

計画 実行

検討担当者

テーマの分類は、大項目に費目、中項目に部門、小項目に個別テーマを書

くとアイデアの「モレ」が防げる。

問題意識をもっている「当事者の言葉」で簡潔に書くこと

問題意識に、明確に答える形でシンプルに書くこと

定量的に書くこと。ただし、最初はザックリと入力し、後で漸次修正する 最も重要!ここに具

体名が入るか、否かで成功可能性が飛躍的に高まる

リスク回避には、専門家のアドバイスが必要である

原価

購買課業者の見直し

外部委託費

• 前会長の関連業者が多数あり

削減効果の合計

• 新規地元業者への発注

• 2億~5億@年 1.5ヶ月 1.5ヶ月 黛(購買課)

• 前会長との関係悪化の懸念

飲料課アイテム数見直し

• 現在、各部門で個別に発注

• 一括発注によるアイテム絞込み

• 5億@年(200アイテム)

4ヶ月 6ヶ月 稲葉(購買課)

• 顧客満足に対するフォロー

委託清掃費見直し

本部• 現在、ババ清掃と年間契約

• 契約形態の変更

• 3,500万@年 2ヶ月3ヶ月~(交渉)

鍛冶倉(総務)

• ババ清掃との交渉力

人件費 本部業務統廃合

• セクショナリズムがあり、業務が重複している

• 総務/人事の統合

• 3,500万@年

• 企画/販売の統合

• 4,000万@年

2ヶ月 6ヶ月山村(執行役員)

• 一時的なモチベーションの低下と業務負荷

合計額は、大きな目安になり、改革の意欲を喚起する

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企業再生

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成長戦略に定石は、ない。ただ何らかの変質(パラダイムシフト)が伴う

費用

資産

収入

負債

資本

利益

� Ⅰ~Ⅲの領域はすべてこの成長戦略のための準備段階に過ぎない。

� 財務リストラで、企業に圧し掛かった鎖(負債)をはずし、資産整理で、自社にとって決定的に大事なものを見出す、オペレバで社員の心を整える。この時点において成長にむけたすべての準備が整う。

� 成長戦略での主要な論点は、「変質」である。企業が成長軌道に乗るためには何らかの変化が伴う。それはビジネスモデルなのか、オペレーションなのか、企業イメージなのかは問わないが、明確に何かの変化がそこには介在する。

Ⅳ成長戦略

ビジネスモデルの変質

オペレーションの変質(意識変化)

リーダー

従業員� 机の中の整理整頓� 新しい経営者に対する期待

� MBO/MBIなどによるモチベーションの増加

× 相乗効果変質

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2. 企業を見抜くとはどういうことか?

- Question:会社の値段をどう決めるか?

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企業再生

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会社を“値付け”するためには、企業が将来生むであろう価値を見抜くしかない

(A) (B)今の資産価値(すぐわかる)

今後生み出す価値の総和

来年の成果

再来年の成果

3年後の成果

4年後の成果今の資産を使って生み出す

・・・

・・・

これらはどうやって生み出されるのか?

� 企業の価値を算出する方法は二つしかない。つまり(A)たった今、事業を止めてしまったら手元にいくら残るか、それとも今の資産を使って(B)事業を続けていったら将来生み出すだろう価値を全部積み上げたものか、である。

� (A)今の資産価値は計算によってすぐに判明する。だから、みんなが知りたいのは、の部分。これを一体どうやって見極めるのかが結局のところ問題になる。

会社の値付け方法は二つしかない

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企業再生

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企業を見極める方法は存在するか?:デューディリジェンス概論

価値を生むしくみ

Performance

Capability

これまでに生んだ価値

Performance

今後の価値を生むしくみ

Future

Performance

Capability

将来生む価値Future

Performance

過去

未来

因 果

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� B/S� P/L� CFS

業績=これまでの結果

� 確立されたビジネスモデル� 市場の後押し� KFSの達成� 企業のDNA� 戦略の適合性 等

� 企業は、「価値」と「価値を生むしくみ」から成りたっている。

� 企業の価値を見極めるためには、「価値を生むしくみ=PC=にわとり」の構造(第二象限、第三象限)を明らかにする必要がある。

変化

洞察

洞察および分析

分析

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企業再生

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�事業や会社の領域は広い。だからといってすべて分析するのは賢くない選択だ。本当に重要な部分を徹底的に精査する。

ビジネス全般について分析しても、企業の「価値を生むしくみ」は決してわからない

自社 ①顧客

②競合

③親会社・子会社

� 主要顧客は、増加・減少しているか、また、その原因はなにか?

� 既存の取引関係がはらむリスクは何か?

� 親会社/子会社との財務上、業務上の関係はどうか?

� 競合他社の動向とその脅威はなにか?また、それは克服しうるか?

店舗

⑨購買物流

⑩製造

⑪出荷物流

⑫販売・マーケティング

⑬サービス

⑧調達活動⑦R&D、技術開発⑥人事・労務管理(組織)

⑤全般管理、情報システム

� 企業文化は、業績にどのような影響を与えているか?

� オペレーション上の各プロセスにおけるリスク・課題は何か?

④パートナー(取引相手)

⑮経営者

⑭企業文化

⑯事業計画

� 事業戦略・計画と実際の乖離はあるか?

� マネジメント上のリスク・課題はなにか?

内部環境分析 外部環境分析

今後の価値を生むしくみ

Future

Performance

Capability

将来生む価値Future

Performance

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企業再生

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まず、落ち着いて対象の全体像を構造化すること

� 「価値を生むしくみ(にわとり)」の構造をマップ化するためには、企業を鳥瞰し、全体像を必ず把握する姿勢が必要だ。

� 「価値を生むしくみ」を構造化するフレームワークは、モレとダブリさえ生じなければ何でも良い。しかし、枠組みをつくるには一定の経験とセンスが必要となる。

3C 5Forces 7S 4P

顧客Customer

自社Company

競合Competitor

新規参入者の脅威

買い手の交渉力

売り手の交渉力

代替品の脅威

業者間の敵対関係

Strategy

Structure

Systems

Style

Staff Skill

SharedValue

Pricing Promotion

ProductPlace

(出所:各種文献)

価値を生むしくみを分析するいくつかの既存のフレームワーク

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企業再生

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構造マップのパターンを知っている人は、強い

� 構造マップを作成する際には、いくつかの構造化パターン(下図)を知っていると便利である。

� 構造マップを作成したら、最も重要な領域に焦点を当てる。ここで80対20の法則が成り立つ。20%の決定的に重要な領域に80%のエネルギーを使うべきである。

ビジネスプロセス 事業構造マップ コスト構造 マトリックス

価値を生むしくみ

Performance

Capability

これまでに生んだ価値

Performance

過去

� B/S� P/L� CFS

価値を生むしくみ

Performance

Capability

これまでに生んだ価値

Performance

過去

� B/S� P/L� CFS

:最も重要 :2番目に重要

構造マップを作る際の図の例

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企業再生

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構造を知れば優先順位づけができる

0

300,000

600,000

900,000

1,200,000

自動車部品

冷熱機器

航空機部品

豊産4,844 (62.5%)

PMC1,127

(14.5%)

東海ゴム100

(1.3%)

MHI エア製1,279 (16.5%)

有償支給 124 (1.6%)

MHI 名航 278 (3.6%)

山口製作所(仮名)の売上構成

新宿ビル

渋谷ビル

青山ビル

千住ビル

南池袋ビル

後楽園ビル

赤坂ビル

本社

総合計

ある会社のビル別の税引前利益構成比

�豊産の分析に80%の時間を費やす � 渋谷ビルと新宿ビル、本社の分析に90%の時間を費やす

� 問題を構造的に捉えて、初めてモノゴトの優先順位をつけることができる。構造化が図れなければ重要な論点を見過ごす危険性がある。

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企業再生

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どんな業界でも、企業をみるときはまずビジネスシステムを構造化する

直接業務

間接業務

保険会社インフラ

商品開発マーケティング・販売

募集

申し込み

アフターフォロー

商品・サービス開発

商品市場投入

アンダーライティング

資産運用

保険サービス

保険料収納

異動・解約

貸し付け

投資

保険金支払い

保険業のシステム構造マップ

経理 総務

人材開発/人事労務 主務官庁対応

情報システム管理 チャネル・募集支援

今回フェーズの焦点

今回フェーズの焦点

� ビジネスシステムによって構造化を図る際には、必ず各社「独自」のプロセスを書かなくてはならない。

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企業再生

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構造を知れば優先順位づけができる

資本に充当される

資本

負債

営業利益

税金

設備投資額(投資キャッシュフロー)

減価償却費

運転資金の増減

フリーキャッシュフロー

財務キャッシュフロー

キャッシュの増分

売上原価

販売管理費

EBITDA

支払利息

その他営業外収支

特別損失/特別利益

経常利益当期利益

支払利息

営業キャッシュフロー

NOPAT

資産に充当される

有利子負債の額が支払い利息に影響

運転資金の増減

� 財務的な分析をするときは、ウォータフォール(モレ分析)を多用する。

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企業再生

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時間と手順を考える問題の対象

分解する

�ロジックツリー �ウオーターフォール

関係・因果を考える

評価対象評価をする

�構造マップ

�プロセスマップ

B C

A

評価軸

�マトリックス

世の中は、いつも7つの図のどれかで説明できる。だから安心だ

�表

�因果/関係図

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企業再生

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構造的にモノゴトを捉え、優先順位をつけられれば本質に早くたどり着けるようになる

10

10

1

仮に思考の量が100だとすると、10×10の思考範囲では、1しか深く考察できない

10

10

25

思考範囲を、4×4まで追いつめれば、25まで深く考察できる

4

4

本質 本質

思考の範囲を追いつめる

物事の本質に到達できない・・・ 物事の本質を捉えることができる!

� なぜ構造化が必要なのか?と聞かれればそれは本質に早くたどり着くためだということだ。

� 問題を構造化し、最も重要な部分を掘り下げてゆくことで初めて本質にたどり着くことができる。

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企業再生

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企業を動かしている真のエンジンは一つだけ

成果

短絡的行動(力業)

本質的思考

本質 表出的問題(良く見える。わかりやすい)(見えない。洞察が必要)

� 企業を動かしているエンジンは多くない。だから、力業ですべての問題に「対処」する暇があったら本質的問題を突き止め、梃入れをする方がよい。

1. 問題に対して応急処置をしない

2. 原因がわかったとしても、すぐには、手を出さない

3. 本質的な問題について、徹底的に挑戦する

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企業再生

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スイッチを切らない限り、モグラは、永久に顔を出す・・・

スイッチ(ホットボタン)

“モグラ叩き”はいつも失敗する

� 失敗はいつも“モグラ叩き”、すなわち短絡的行動から生まれる。そうではなくて、真のスイッチ(ホットボタン)がどこにあるかをとことん突き止める。

� 我々におこる出来事や我々が見る物事、そして我々が聴く言葉には、その奥に、実は見えている事象と全く異なる側面を“常”に持っている。ところが我々は、物事の本質的な側面までは考えずに、さっさと行動を起こして後で後悔することになる。人が怒っていれば、まず謝ってみる。ある商品が安いと聞けば飛びつく、社員の志気が低いと分かれば給料を上げる、といった具合だ。このような短絡的な行動は往々にして成果を上げない。

� なぜか?我々の短絡的行動は“モグラ叩き”にすぎないということだろう。問題の本質に目を向けず、見えている事象(結果)を一生懸命に処理しようとしている。結局のところ、対症療法にすぎないのである。

� 我々が過ちを避け、高い成果を上げるためには、失敗の繰り返しによる反復学習の積み重ねではなく、少しだけ立ち止まって考え、物事の本質を見極める努力をした方が圧倒的に手っ取り早いのではないか。

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企業再生

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企業分析の5つの掟を守る

1. Fact(事実)を確実に抑えること、そしてFact(事実)から意味合いを導出すること

2. 多くを知る必要はない。企業を動かしている根本的なメカニズムに徹底的に挑戦すること

3. やること・作業内容よりも、その目的をいつも考えていること。分析のための分析を排除すること

4. 時間は何よりも尊いものである。スピード感を持つこと。作業の80%は無駄なことをやっている、という意識を常に持つこと

5. 打ち手については、「明日のアクション」につながるものと、中長期施策を明確に分けること。いつもStrong Key Messageを持つこと

Page 28: 目的としての「再生」、手段としての「再建」デューデリジェンスの実務

企業再生

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企業分析(デューディリジェンス)は、顧客の問題意識に合わせて変える

� 汎用型

• DD関係者が多く、調査範囲や内容に網羅性を持たせたい

• 2~3週間程度で行う

� 汎用型

• DD関係者が多く、調査範囲や内容に網羅性を持たせたい

• 2~3週間程度で行う

深さ(分析内容の詳しさ)

�包括的調査型

• 大型案件時に実施する詳細DD

• 会計・法律・税理士等の複数の専門家によるDD

• 1~2ヶ月程度で行う

�包括的調査型

• 大型案件時に実施する詳細DD

• 会計・法律・税理士等の複数の専門家によるDD

• 1~2ヶ月程度で行う

�Check型

• まだ買収するか不明

• 時間が限られている

• 事務的なDDを行う

• 2週間程度で行う

�Check型

• まだ買収するか不明

• 時間が限られている

• 事務的なDDを行う

• 2週間程度で行う

広さ(調査・分析範囲)

�オーダーメイド型

• クライアントの関心のありかが明確である

• セカンドDD

• 2~3週間程度で行う

�オーダーメイド型

• クライアントの関心のありかが明確である

• セカンドDD

• 2~3週間程度で行う

(広い)

(深い)