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マネジメントの新常識、「ステークホルダーマネジメント」とは! ステークホルダーとは? プロジェクトの決定、活動、成果物に対して何らかの影響を与える(受ける)個人/団体/組織 (PMBOK®より) 顧客、スポンサー、チームメンバー、仕入れ業者、プロジェクトに関わる公的機関 …など なぜ今「ステークホルダー・マネジメント」なのか? プロジェクトを成功に導くために、プロジェクトの利害関係者(ステークホルダー)の協力を獲得す ることは必要不可欠です。 特にITプロジェクトにおいては、グループ企業や海外拠点をはじめとした利用者の拡大や、企業の抜 本的な業務改革に踏み込むケースが増えるなど、ステークホルダーの影響度が以前よりも格段に増し ていると言われます。 重要なステークホルダーを特定し、その期待に適切に対処しつつ合意を形成していくことが、これか らのプロジェクト・マネージャーに欠かせないコンピテンシーであるといえます。 PMBOK(Project Management Body of Knowledge)Ⓡ 第5版において10個目の知識 エリアとして追加されるなど、その重要性が注目されている! PMI日本支部 中部地域サービス 統合マネジメント スコープ タイム コスト 品質 リスク 人的資源 コミュニケーション 調達 ステークホルダー 第5版より『コミュニケーション』から独立

JaSST東海2013 ポスターセッション資料

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JaSST Tokai 2013 のポスターセッションに使った資料

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Page 1: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

マネジメントの新常識、「ステークホルダーマネジメント」とは!

• ステークホルダーとは? – プロジェクトの決定、活動、成果物に対して何らかの影響を与える(受ける)個人/団体/組織

(PMBOK®より) • 顧客、スポンサー、チームメンバー、仕入れ業者、プロジェクトに関わる公的機関 …など

• なぜ今「ステークホルダー・マネジメント」なのか? – プロジェクトを成功に導くために、プロジェクトの利害関係者(ステークホルダー)の協力を獲得す

ることは必要不可欠です。

– 特にITプロジェクトにおいては、グループ企業や海外拠点をはじめとした利用者の拡大や、企業の抜本的な業務改革に踏み込むケースが増えるなど、ステークホルダーの影響度が以前よりも格段に増していると言われます。

– 重要なステークホルダーを特定し、その期待に適切に対処しつつ合意を形成していくことが、これからのプロジェクト・マネージャーに欠かせないコンピテンシーであるといえます。

• PMBOK(Project Management Body of Knowledge)Ⓡ 第5版において10個目の知識エリアとして追加されるなど、その重要性が注目されている!

PMI日本支部 中部地域サービス

統合マネジメント

スコープ タイム コスト 品質

リスク 人的資源 コミュニケーション 調達 ステークホルダー

第5版より『コミュニケーション』から独立

Page 2: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

ステークホルダーマネジメントの概要

① ステークホルダー識別

PMI日本支部 中部地域サービス

◆ステークホルダー登録簿

・名前 ・組織/地位 ・プロジェクトにおける役割 ・連絡方法 ・プロジェクトに対する主な要求 ・プロジェクトへの影響 ・プロジェクトに対する姿勢(支持、提供) ・etc

◆分析マトリクス(例:権力/興味)

綿密な対応が必要

満足度を あげる

情報を提供 モニタリング

のみ

権力

興味

② ステークホルダー・マネジメント計画

◆ステークホルダー関与評価マトリクス

無関心 抵抗 中立 支持 牽引

プロジェクトに対する姿勢

C:現在の関与レベル D:望まれる関与レベル

③ ステークホルダー関与に関する施策 コミュニケーションの工夫

信頼関係の構築、対立の解消

etc

④ ステークホルダー関与のコントロール 計画との乖離状況をモニタリングし、

何らかの手を打つ!

洗い出し

分析

ふりかえり

①②はプロジェクト期間中も随時実施する!

どうあって欲しいか

実際に働きかける

①ステークホルダー 識別

立ち上げプロセス

②ステークホルダー・ マネジメント計画

計画プロセス

③ステークホルダー 関与に関する施策

実行プロセス

④ステークホルダー 関与のコントロール

ステークホルダー登録簿

ステークホルダー・マネジメント計画書など

課題ログ、変更要求など

・プロジェクト憲章 ・調達ドキュメント ・・・など

パフォーマンス情報、変更要求など

• 要求の収集 • 品質マネジメント計画 • コミュニケーション・マネジメント計画

• リスク識別 • リスク・マネジメント計画 • 調達マネジメント計画

※PMBOKⓇによるプロセス定義

Page 3: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

ステークホルダーマネジメント研究活動の紹介

本日のJaSST東海におけるポスターセッションの発表に先立ち、PMIJ中部では「ステークホルダーマネジメント」に関する分科会を実施しました。

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回数 日付 テーマ 内容

1回目 7月5日 PMBOK® ガイド第5版 13章「ステークホルダー・マネジメント」輪読

PMBOK第5版(英語版)のステークホルダーマネジメントに関する章を輪読して基礎を学習。

2回目 9月20日 上から目線でステークホルダー・マネジメントを語ろう(ネタ集め編)

題材として、参加者の好きなテーマ(歴史、小説、スポーツなど)を選定する。

3回目 10月18日 上から目線でステークホルダー・マネジメントを語ろう(ワークショップ編)

選定したテーマを題材として、ステークホルダー識別・分析およびマネジメント計画のワークショップを実施する。

まとめ・ 集大成

11月15日 JaSST東海ポスターセッション発表 ←イマココ

第1回目

PMBOK(Project Management Body Of Knowledge) 5th

輪読したセクション

• 13.1 Identify Stakeholders(ステークホルダー識別)

• 13.2 Plan Stakeholder Management(ステークホルダー・マネジメント計画)

• 13.3 Manage Stakeholder Engagement(ステークホルダー関与の実施)

• 13.4 Control Stakeholder Engagement(ステークホルダー関与のコントロール)

第2回目

選定したテーマ(赤点線内はポスター発表テーマ)

1. 福島第一原発メルトダウン防止プロジェクト

2. 立浪を監督にするプロジェクト

3. 赤壁の戦い・降伏するぞプロジェクト

4. ジオン公国・生き残りプロジェクト

第3回目

出てきた意見 • 「誰目線」で「何をゴールとするか」によって、ステークホルダーの選定や分析結果が大き

く異る。 • ステークホルダーをリストアップすることで、プロジェクトの目的を達成するために誰に働

きかけるのが戦略として最も有効か、といった判断材料として見える化が可能となる。 • 分析マトリクスの軸があいまいだと論点がぼやけるし、逆に具体的すぎると分析が煩雑にな

りすぎてバランスが難しい。 • あらためて、プロジェクトの目的や上位目標を意識することが重要と感じた。 • 対立軸・協調関係・好き嫌いなどが明確な事例は分析もシンプルで分かりやすい。逆に政治

関連は各々のステークホルダーの思惑や腹の中が見えにくく、分析が困難。 • ステークホルダー登録簿(一覧)だけでなく、体制図など視覚的にステークホルダー間の関

連性が見えるツールを併用した方が良い。

Page 4: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

ケースA 立浪を中日ドラゴンズの監督に就任させるプロジェクト

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プロジェクトの目的 人気のある立浪氏を中日ドラゴンズに就任させる

背景 観客動員の低迷および人件費高騰によりここ数年収益が悪化している

誰の視点? 坂井(前)中日ドラゴンズ球団社長

◆人物相関図 ※当方の独断と偏見が混じっています

◆ステークホルダー登録簿(簡易版)

落合GM

坂井 (前)球団社長

白井 オーナー

高木 前監督

立浪氏 谷繁選手

今回の主役

嫌い 親密な仲

本命?

本命!

暫定的にお願い

「黒い噂」を好ましく思っていない

理論家 イカツイ

絶対君主

現役選手 若い クリーン?

人気者 黒い噂あり

感情肌 おじいちゃん

◆分析マトリクス

   点検し満足な状態を維持する!!  注意深く、重点的にマネジメントする!!

(高い)

   状況監視するレベル。    状況監視するレベル。     継続的に情報を伝える!!

(低い)

(低い) (高い)

No. 氏名 組織 職位 PJへの期待 PJへの姿勢

1 白井オーナー 中日ドラゴンズ オーナー お気に入り(谷繁)を監督にしたい

抵抗

2 高木 - 前監督 特になし 中立

3 落合 中日ドラゴンズ GM 不明 中立

4 谷繁 中日ドラゴンズ 選手 特になし 中立

5 立浪 - 元選手 監督になりたい 支持

興味

権力

白井 オーナー

高木 前監督

落合GM

立浪氏 谷繁選手

ステークホルダー識別

Page 5: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

ケースA 立浪を中日ドラゴンズの監督に就任させるプロジェクト

PMI日本支部 中部地域サービス

◆ステークホルダー関与 評価マトリクス

No. ステークホルダー名 無関心 抵抗 中立 支持 牽引

1 白井オーナー

2 落合GM

3 高木前監督

4 谷繁選手

5 立浪氏

C D

C D

C D

C D

C D

大人しくしてもらう!

• プロジェクト成功に向けての戦略 – 絶対君主である白井オーナーを説得するのは至難の業。ここはせめて口出しさせない方針とする。

– かわりに、現時点で中立的立場でかつオーナーと懇意な落合GMを説得することに注力する。

– (白井オーナーの本命である)谷繁選手には、選手として「立浪新監督」実現に向けて味方につける。

– 当事者である立浪氏をその気にさせる。また落合GMとのコネクションを確立するのも忘れてはならない。

ステークホルダーマネジメント計画 C:現在の関与レベル D:望まれる関与レベル

最重要!

以上のように、識別したステークホルダーを分析しプロジェクトを成功させるためのマネジメント計画を立てます。

プロジェクト実行段階においては、マネジメント計画に基づいてキーとなるステークホルダーとコミュニケーションをとりながら「好ましい方向」に動くよう働きかけます。

実行してみた結果のフィードバックを受けて、やり方を変えたり戦略を見直すことも重要。

コネクション確立

Page 6: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

清水社長 勝俣会長

班目委員長

ケースB 福島第一原発メルトダウン阻止プロジェクト

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プロジェクトの目的 福島第一原発のメルトダウンを防止する

背景 東日本大震災に伴う津波の影響で福島第一原発の冷却機能が停止した

誰の視点? 菅直人首相(当時)

◆参考文献 ◆ステークホルダー登録簿(簡易版)

◆所感

No. 氏名 組織 職位 PJへの期待 PJへの姿勢

1 海江田大臣 内閣 産経大臣 丸く収まって欲しい 中立

2 清水社長 東京電力 社長 撤退したい 抵抗

3 吉田所長 福島第一原発 所長 自分が何とかしたい 牽引

4 寺坂院長 保安院 院長 知らん 無関心

5 班目委員長 安全委員会 委員長 あくまで技術的な助言 支持

・・・

ステークホルダー識別

◆人物相関図(いずれも当時)

政府・官邸

原子力安全委員会

原子力安全保安院

東京電力(本店)

福島 第一原発

自衛隊

菅首相

枝野官房長官 海江田産経大臣 寺田首相補佐官 など

今回の主役

・本来はアドバザー的立場 ・直接事業者へ指導できない

・事業者を規制すべき立場 ・専門性が必要(だが欠けていた)

・最後の砦 ・自己完結型に遂行する能力を専門性を有する

吉田所長

・当事者意識に 欠けていた

・事故現場

技術的アドバイス(本来は)

政治的判断を求めるなど過度な期待

不信感 規制(形骸化)

命令して欲しい (自分で判断したくない)

意思疎通を欠く

過剰介入

なれ合い

「まだやれる!」

「撤退したい…」

寺坂院長 中村審議官

プロジェクトの目的は「メルトダウン防止」という至って分かりやすいものであるが、ステークホルダーが多岐にわたり非常にマネジメントが困難な例。

例えば「政府・官邸」という組織ひとつ取っても、そこに所属する人々は多様でありそれぞれ異なった思惑を持っている。

そもそも、「メルトダウンまで数時間」という尋常ならざる切羽詰まった状況の中で、ステークホルダー識別→分析→マネジメント計画→・・・のようなプロセスを経ること自体が非現実的。平時からあらゆる災害・事故を想定した体制やそれを遂行するだけの能力をもった組織を育成しておくかが重要である。(どちらかというと「リスク・マネジメント」?)

「組織内」と「組織間」でそれぞれ違ったマネジメント手法があるのではないか? この事例をステークホルダーマネジメントの観点で研究してみて、本来果たすべき

役割や責任範囲があいまいだとプロジェクトは上手く回らないことが再確認できたことは収穫であった。

ステークホルダーがあまりに複雑すぎてマネジメント断念!

Page 7: JaSST東海2013 ポスターセッション資料

「PMI日本支部中部地域サービス(PMIJ中部)」の活動紹介

我々「PMIJ中部」では、プロジェクトマネジメントに関する情報交換、勉強会、セミナー開催などを中心に、名古屋地区で活動を続けています。

PMI日本支部 中部地域サービス

PMI日本支部中部地域サービスの位置づけ ※PMI:プロジェクトマネジメント協会

PMI本部(米国) http://www.pmi.org/

世界各国のPMI支部

一般財団法人 PMI日本支部(東京)

http://www.pmi-japan.org/

PMIJ関西地区 (ブランチ)

各地方の地域サービス

PMIJ中部地域サービス

PMIJ中部

【主な活動内容】 • 月次の定例会(@名古屋市内)

– PMに関する勉強会、読書会など(参加自由) – 懇親会

• セミナー開催@名古屋(年2~3回、PDU付) • 分科会 • PMI日本フォーラム参加@東京(年1回) • 他コミュニティとのコラボ企画

– PM学会 – TEF東海 – 名古屋アジャイル勉強会 etc

http://www.facebook.com/pmij.chubu

毎月最終週水曜日の 19:00~21:00