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β-1,2-グルカン関連酵素群の機能と構造 誌名 誌名 応用糖質科学 ISSN ISSN 21856427 著者 著者 中島, 将博 田口, 速男 巻/号 巻/号 8巻2号 掲載ページ 掲載ページ p. 102-109 発行年月 発行年月 2018年5月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

β-1,2-グルカン関連酵素群の機能と構造中島・田口: p-1 ,2- グルカン関連酵素 状Bー1,2 -グルカン合成酵素(CGS) である.CGSはA. tu- mefaciens においてUDP-Glcを基質とする膜酵素であるこ

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β-1,2-グルカン関連酵素群の機能と構造

誌名誌名 応用糖質科学

ISSNISSN 21856427

著者著者中島, 将博田口, 速男

巻/号巻/号 8巻2号

掲載ページ掲載ページ p. 102-109

発行年月発行年月 2018年5月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: β-1,2-グルカン関連酵素群の機能と構造中島・田口: p-1 ,2- グルカン関連酵素 状Bー1,2 -グルカン合成酵素(CGS) である.CGSはA. tu- mefaciens においてUDP-Glcを基質とする膜酵素であるこ

. 応用糖質科学第 8巻第2号 102-109(2018) 室J~&Q

1. はじめに

Functions and Structures of 13-1,2-Glucan-related Enzymes and Proteins*

臼,2-グルカン関連酵素群の機能と構造*

(2018年 3月 1日受付; 2018年 3月20日受理)

中島将博1,* *'田口速男1

(なかじままさひろ,たぐちはやお)

Masahiro Nakajima1・** and Hayao Taguchi1

1東京理科大学理工学部応用生物科学科

278-8510千葉県野田市山崎 2641

1 Department of Applied Biological Science, Tokyo University of Science 2641 Yamazaki, Noda, Chiba 278-8510, Japan

要旨: p-1,2-グルカンは主にグラム陰性菌の生産する環状糖として存在する.本研究では,仕1,2-グルカンの分解代謝に関わる酵素群の探索と機能構造解析を行った.糖質加水分解酵素ファミ

リー (GH)94より的,2-グルカン合成可能な新規ホスホリラーゼ (SOGP)を発見したまた,

この酵素を用いた p-1,2—グルカンの大贔合成法を確立した. Listeria innocua由来sogp遺伝子を

含む遺伝子クラスター内の P—グルコシダーゼホモログと ABC トランスポーターの基質結合タンパク質ホモログの基質特異性の解析を行った. p-1,2-グルコオリゴ糖に対する鎖長特異性から,

これらが SOGP と協同的に p-1,2—グルコオリゴ糖代謝に関与することが示唆されたまた,これら3つの酵素,タンパク質の基質との複合体構造から,結合位置特異性や鎖長特異性を生じる構

造的要因を明らかにした.細菌由来 p-1,2—グルカナーゼの同定を行ったところ,この酵素は新規アミノ酸配列を有していたことから GH144が創設されたさらに,この酵素が反転型の反応機

構を有すること,基質との複合体構造を明らかにした.

キーワード: p-1,2-グルカン,ソホロオリゴ糖, p-1,2-グルカナーゼ, 1,2-p-オリゴグルカンホス

ホリラーゼ,糖質加水分解酵素ファミリー 144***

1.1. ~-1,2ーグルカンとは

環状糖としてその存在が主に報告されているが,重合度

40程度のものや直鎖状のもの,コハク酸などにより修飾

されたものも見出されている 9,10). また,大腸菌や Pseudo-

monas syringae では P-1,6—グルコシドの側鎖を有する短鎖

の p-1,2—グルカンの生産が報告されるなどその構造には多

様性が見られる 11.12)_ しかし,同じく Glcから構成される

セルロースやラミナリンなどと比較すると, p-1,2-グルカ

ンは明らかに希少な糖鎖である.そのためか, p-1,2-グル

カンの有用機能の探索例は極めて少ないのが現状である.

~-1,2-グルカンはグルコース (Glc) が ~-1,2-結合したポ

リマーである. 1940年には crowngall (植物の根元に生じ

る瘤)を引き起こすAgrobacterium tumefaciensが分泌生産

する構造未知の多糖として報告され門また, 1950年には

その構造がメチル化分析により同定されるなど2i, その研

究の歴史は意外と古い. 1980年代以降になると,様々な

根粒菌,植物病原菌から環状 ~-1,2—グルカンが見出され3,4i,

共生因子,浸透圧調節,宿主免疫系の回避などの役割を有

することが報告されている5-8). 天然では重合度 20程度の

1.2. ぃ,2-グルカン関連酵素群の研究状況

~-1,2—グルカンの合成酵素として報告されているのは環

*本原稿は, 日本応用糖質科学会平成 29年度大会応用糖質科学シンポジウムで一部発表された.

**連絡先 {Tel.0471-24-1501, Fax. 0471-23-9767, E-mail: [email protected])

***Key words: 13-1,2-glucan, sophorooligosaccharide, 13-1,2-glucanase, 1,2-j3-oligoglucan phosphorylase, glycoside hy-

drolase family 144

略記: Glc, グルコース; CGS, 環状 13-1,2—グルカン合成酵素; GH, 糖質加水分解酵素; CBP, セロビオースホスホリ

ラーゼ; G1P, a—グルコース-1- リン酸; Sopn, 重合度 nのソホロオリゴ糖; SOGP, 1,2-13—オリゴグルカンホスホリラーゼ; CDP, セロデキストリンホスホリラーゼ; LiSOGP, Listeria innocua由来 SOGP;SP, スクロースホ

スホリラーゼ; BGL, j3-glucosidase ; LiBGL, L innocua由来 GH3 BGLホモログ (Lin1840) ; ABC, ATP-bind-

ing cassette ; SBP, 基質結合タンパク質; LiSOBP, L innocua由来基質結合タンパク質ホモログ (Lin1841);

Lam2, ラミナリビオース; Ceb セロビオース; Gen2, ゲンチオビオース; Exol, 大麦由来 GH3BGL ; thioCeb,

チオセロビオース; LpSOGP, Lachnoclostridium phytofermentans由来 SOGP; CgCBP, Gel/vibrio gilvus由来

CBP ; SGL, 13-1,2—グルカナーゼ; CpSGL, Chitinophaga pinensis由来 SGL(Cpin6279):

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中島 ・田口: p-1,2-グルカン関連酵素

状 Bー1,2-グルカン合成酵素 (CGS)である. CGSはA.tu-

mefaciensにおいて UDP-Glcを基質とする膜酵素であるこ

とが見出され13), その後, Brucellaabortusにおいて cgs遺

伝子全長のクロ ーニングが行われだりこの酵素において

は詳細な機能解析や変異体解析により,膜貰通の N末端

ドメインが糖転移反応によって Pー1,2-グルカン鎖を伸長

し, C末端ドメインで鎖長の調節が行われた後に,環化反

応によ って環状 Pー1,2-グルカンが生成する, という反応機

構が示されている 15)_ 一方で, p-1,2-グルカンの分解に関

わる酵素については, 1961年, 1987年に糸状菌, 1983年

にグラム陰性菌において Pー1,2-グルカン分解活性が報告さ

れているものの16-18), 筆者の知る限り報告は この 3報のみ

であり,その後 30年ほどこの酵素群に関する研究の進展

はなかった これの一つの大き な要因は,おそらく基質調

製が困難なことであろう.

◆ 103◆

2. 臼,2-グルカン関連酵素群研究のきっかけ

2.1. ~-1,2ーグルカンに作用するホスホリラーゼの発見19)

ホスホリラーゼは糖鎖と無機リン酸から糖 lリン酸を生

成する酵素であり,反応の可逆性を特徴とするため糖鎖調

製における有用性が期待できる.近年,新規ホスホ リラー

ゼの発見が相次いだものの20), まだその種類は糖加水分解

酵素よりもかなり少なく, さらなるホスホリラーゼの発見

が望まれる糖質加水分解酵素 (GH)ファミリー 94叫ま

ホスホリラーゼのみが含まれるファミリーである. GH94

にはセロビオースホスホリラーゼ (CBP)などグルコシド

に作用して a—グルコース-]-リ ン酸 (G IP) を生成する複数

の酵素が見出されており,これらの酵素は系統樹上で機能

ごとにグループを形成している. しかし, L1sterw mnocua

ゲノム上の遺伝子座 lin/839の遺伝子産物 Linl839を含む

グループは機能未知であった.

そこで GIPを糖供与体,単糖を糖受容体とした合成

(逆)反応を用いて Linl839の基質の探索を行ったその

結果 Glcを糖受容体としたときに反応初期にポリマーが

生成し,その後そのポ リマーの消失に伴ってオリゴ糖の

蓄積が見られた(固 l(A)). このポリマーを単離して構造

を決定したと こ ろ,生成物は直鎖状 ~-1 ,2—グルカン(以降

特に記載のない限り ~-1 ,2—グルカンは直鎖状のことを表

す)であった最終的には,この酵素が ~-1 ,2—グルコオ リ

ゴ糖(以下,ソホロオリゴ糖と記載するまた,重合度 n

のソホロオリゴ糖は Sopnと記載する)に特異的であるこ

と,加リン酸分解反応において 3糖以上の基質に作用する

こと,合成反応においては 2糖以上の基質に作用し, Glc

に対しては極めて低い活性しか示さないことを明らかにし

たこの結果から,この酵素を 1 ,2-~ーオリゴグルカンホス

ホリラーゼ (SOGP)と命名した(図 l(B)). SOGPには新

規 EC番号 EC2.4.1.333が付与されている.

SOGPの鎖長特異性から図 IAの反応のメカニズムが図

l(C)のように推定される. Glcはマイナーな基質であるた

め, Glcから Sop,の生成速度は遅い.そのため, Sop,に

対する GIPの濃度比率が極めて高い状態となり, Sop,の

鎖長の伸長が一気に生じる.そのため,オリゴ糖ではなく

ポリマーが蓄積する. しかし,その後も Sop,は徐々に生

成され続けるため, GIPによ って伸長される分子数が増

加する. これにより ,一旦伸長した糖鎖の重合度が徐々に

減少しオリゴ糖が蓄積する(図 l(C)). 実は,セロデキス

トリンホスホリラーゼ (CDP)の場合も SOGPと同様の糖

鎖伸長が起こることが知られている叫ただし,セロオ リ

ゴ糖は 5,6糖程度以上で極めて溶解度が低くなるため,

CDPの生成する生成物のほとんどがそこで沈澱し,反応

は終了するこの違いは, ~-1,2-グルカンの極めて高い水

溶性を表しており, ~-1 ,4 の場合と全く糖鎖の物性が異

なっている点で興味深い.

(A)

Glc

(8)

G1P 戸 言十 •-1―~o ➔ [言

ー,・ ~J...00(1)"-'' 閉ふ 。脅 無機:ン酸 ゜乏~n-3Ml

'-'、 0 1/6 1. 2 3 5 7 24 1/12 1/2

Time(h)

6

fPり0

芦OH

。+

的 ,2グルコオリゴ粗(堕合度n)

(C) G1P Glc 0,、Pi Sop2 くく G1P 0-----"-→ 00

遅い 速い

p-1,2グルコオリゴ粧(宜合度n-1) (ns;3)

0000----000

炉,2-グルカンの生成 1

I反応中後期 IGlc G1、、p 00 __Lャ

Sop2~

〇 ーぷ喝こ戸一—-- 0000--000

図1. Linl839による酵素反応

(A) Linl839による OleとGIPを基質としたときの反応. 501nM Glcと50mM GIP を基質として 2mg/ml Linl839を用いて 30度で酵素反応を行った (B)決定した Lin1839の反応スキーム. (C) (A)において推定される反応メカニズム.

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◆ 104◆ 応用糖質科学第 8巻 第2号 (2018)

酵素

.. : (B)

1000

800600

400

(WE)述軽

200

2 4 6 8 10 12

反応時間(days)

図2.い ,2-グルカンの大量合成

(A) P-1 ,2-グルカン合成の反応スキー ム.反応に使用した各出発材料•,酵素には濃度を付記している (B)P-1,2-グルカン大量合成反応における各成分の濃度の経時変化.●,p-1,2-グルカン ;〇,スクロース; ^ フルクトース;△, Glc; ■,GIP; 口,無機リン酸 (Pi).

表 1. LiBGLのB結合のグルコオ リゴ糖に対するカイネティックパラメータ

基質

{P-1,2) Sop, Sop, Sop, Sop,

俄 1,3) Lam, (P-1,4) Ce!, (P-1,6) Gen,

kcat Km

(s―') (mM)

41士4 2.0土 0.356士 11 15士43.5士0.9 IO土 41.0土 0.4 11士623士 l 2.7土 0.2

0.24土 0.01 27士 l0.076士 0.007 14土 2

Kis

(1nM)

kca1/Km

(s-'mM-')

14士4 21士 l3.8士 0.3

0.34土 0.040.098士 0.020

8.8士 0.40.0090士0.0003

150士 50 0.0054土 0.0005

2.2. 0-1,2ーグルカン合成法の確立23)

先述のように, L.innocua由来 SOOP(LiSOGP)を用い

れば,Glcを糖受容体として Pー1,2-グルカン,ソホ ロオリ

ゴ糖の両方の調製が可能である. しかし, LiSOGP単独の

反応で これらを調製する場合, GIPが大量合成の基質と

して高価である点ソホロオリゴ糖調製においては高濃度

の酵素と長時間の反応が必要という点で問題がある.そこ

でまず,LiSOGPの反応系とスクロ ースホスホ リラーゼ

(SP)によりスク ロースから GIPを供給する系を組み合わ

せ, GIPを出発材料として用いない Pー1,2-グルカン大量合

成を試みた (図 2(A)).最適化 した Glc濃度と LiSOGP/SP

濃度比で大スケール (2L)での反応を行ったところ, 80%

以上の高い反応収率で Pー1,2-グルカンが生成した (図 2

(B)). 反応液から Pー1,2-グルカン以外の糖をパン酵母に資

化させて除去し, エタノール沈澱によって 100g以上の精

製 Pー1,2-グルカンを得た.

3. LiSOGPの遺伝子クラスターの解析

先述の LiSOGP は p- 1 ,2— グルカン分解酵素としては初め

ての同定例であるそこで,さらなる p-1 ,2— グ ル カン関連

酵素群の探索手段として, LiSOGPをコードする遺伝子の

周辺に形成される遺伝子クラスタ ーに着目した この遺伝

子クラスタ ー内にはGH3に属する P-glucosidase(BGL)ホ

モロ グ (LiBGL)をコードする遺伝子 (遺伝子座 :Linl840)

とATP-binding cassette (ABC) トランスポーターのホモロ

グ遺伝子 (遺伝子座 :Linl841-1843)が存在している.そ

のため, LiBGLとLinl841-1843が LiSOGPとともに p-1,2-

グルカン代謝に関わることが予想された 以下に LiBGL,

Linl841-1843のうち基質結合タンパク質 (SBP)ホモログ

である Linl841(LiSOBP)の機能と構造について述べる.

また, SOGPの構造についても合わせて述べる.

3.1. LiBGLの機能と構造2')

3.1.1. LiBGLの機能

GH3 BGLは微生物に広く分布しており ,そのアミノ酸

配列基質特異性は多様である. LiBGLと42%程度の相

同性を有するメタゲノムより見出された酵素 (JMB19063)

はセロオ リゴ糖に作用するセルロ ース分解系酵素として報

告されているが,セ ロオリゴ糖に対する活性 は極めて低

ぃ251. しかし,セ ロオリゴ糖以外の天然基質に対する活性

のデータがないため, LiBGL機能の推定は困難であった.

そこで, LiBGLにおいて Pー結合のグルコ 2糖に対する分

解活性を調べたとこ ろ, Sop,に対して最 も高い活性を示

し,ラミ ナリ ビオー ス (Lam,)にも十分な活性を示した

(表 I).一方で,セロビオース (Ce!,)とゲンチオビオ ース

(Gen,)には極めて低い活性しか示さなかった次にソホ

ロオリゴ糖に対する活性を調べたところ, Sop,に対して

最も高い活性を示 し,重合度が高くなるにつれで活性が顕

著に低下した (表 I).この結果から, LiSOGPのソホロオ

リゴ糖分解によって生成する Sop,をLiBGLが分解すると

示唆された. しかし, ソホ ロオリゴ糖特異的な LiSOGPに

対して LiBGLは Pー1,3-結合の基質にも高い活性を示す.

LiBGLの役割を真に理解するには,立体構造の知見が必

要であった

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中島・田口: ~-1 , 2- グルカ ン関連酵素

3.1.2. LiBGLの構造

LiBGLの構造を決定した結果,この酵素はホモ 2量体

構造を形成していださらに,求核触媒残基の変異体

(D270A)の結晶に基質をソーキングし, Sop,とLam,との

複合体構造を決定したところ,これらの基質はサブサイト

-1と +Iに明確に観察された.この酵素のサブサイト +I

は Arg572と基質をスタ ッキングする Trp271とTyr583で

構成されているが, Arg572とTyr583が隣のサプユニット

から伸びるループ上の残基である点がユニークであり, 2

贔体であることがこの酵素の機能に重要であると考えられ

る (図 3(A)). Sop, との複合体構造では Arg572がサブサイ

ト+lの Glc部分の 3,4位 OH基と水素結合を形成してい

だ一方反対側(アノマー位側)は Glcが入ることので

きる広い空間となっており, Sop,の基質ポケッ トヘの生

産的結合が可能と考えられる (図 3(A),(B)). Sop,, Lam,

との複合体構造を重ね合わせると ,Arg572側の基質の構

造はほとんど同じであり ,基質認識のない側では Sop,と

Lam, の構造が異な っていた (図 3(8)). これらのことか

ら, LiBGLは本質的にソホロオリゴ糖を分解する酵素で

あり, Lam,に対する活性は LiBGLが‘ノホロオリゴ糖分解

酵素であるがゆえに付随的に生じたものと推測される

先述の LiBGLの基質ポケットの重要な構造的特徴は

JMB19063でも保存されているしかし,JMB19063はセ

ルロース分解系酵素として報告されているため, LiBGL

が Ce卜に対してほとんど活性を示さない構造的要因の考

察は重要であろうそこで広い結合位置特異性 を有し

Ceしに対して高い活性を示す大麦由来 GH3BGL (Exol)の

チオセロビオース (thioCel,)複合体,.,とLiBGLを重ね合わ

せたその結果, Exolのサブサイト +Iにおける Glc部分

の 6位 OH基が LiBGLの Arg572と立体障害になる位置に

存在していた (図 3(C)). そのため, LiBGLでは Ceしが好

ましい基質 とはなり得ないと考えられる.

このように Arg572は LiBGLにおいて機能に璽要な役割

を果たしている .この Arg572は LiBGLと近いホモログの

ほとんどで保存されているこのことから, LiBGLの結

合位置特異性はホモログ間で保存されているものと推測さ

れる

3.2. LiSOBPの機能と構造

3.2.1. LiSOBPの機能

◆ 105◆

一般的に ABCトランスポータ ーは 2個のヌクレオチド

結合ドメインと 2個の膜貰通ドメインから構成される .細

菌の場合は SBPが存在し,基質はまずこのタンパク質に

結合したのちに ATPのエネルギーを駆動力として膜を通

過する 07i_ SBPのアミノ酸配列は非常に多様性に富んでい

るが,生化学的な解析例は糖質加水分解酵素に比べ非常に

少なく,機能既知の SBPから LiSOBPの機能を推定する

ことは困難であるそこで,LiSOBPのソホロオリゴ糖と

~-1 ,2グルカンに対する結合能を等温滴定型カロリメト

リーにより調べた.Sop均 , ~-1 ,2- グルカンに対する結合定

数 Ka(M-')はそれぞれ 8.83x 10', 1.34 x 106, 7.62 x IO',

6.2] X ]Q3と3糖以上の基質に対しては結合を示し,特に

Sop,, Sop, に対しては強く結合していた.一方で LiSOBP

は Sop,に対して全く結合しなかった結合の異なるグル

コ3糖(セロトリオース,ラミナリトリオ ース,ゲンチオ

オリゴ糖マルトトリオース)に対しては全く結合を示さ

なかったことから, LiSOBPはソホロオリゴ糖に特異的と

言える. LiSOBPの鎖長特異性は LiSOGPと類似している

ことから LiSOBPは LiSOGPの基質を取り込むと考えら

れる

3.2.2. LiSOBPの機能

LiSOBPの立体構造解析を行い,アポ構造と基質 (Sop,.,)

との複合体構造を明らかにした.LiSOBPの構造は Nードメ

イン (34-145aa,301-370aa) とC-ドメイン (l48-298aa,

352-416aa)から構成され,この 2つのドメインは 3カ所

のヒンジ (146-147aa, 299-300aa, 350-35laa)によ って繋

がれていた.アポ型では 2つのドメインが開いていたが

Sop, との複合体ではドメインが閉じた構造と なっていた

(図 4(A)). Sop,, との複合体でも Sop,の場合 と同様の全体

構造であった.この結果から基質の結合によって 2つのド

メインが閉じることが示唆されたまた, Sop,.,は全て

unit A, Bに結合していた.LiSOBPは 3糖以上のソホロ

オリゴ糖に結合するので unitCに対する基質認識が鎖長

特異性に重要と考えられる.C-ドメインの Asp!93とGin

197はアポ構造では基質と離れた位置に存在するが,複合

体では基質の unitCと結合している (図 4(8)). D 193A,

(A) {B) (C)

図3. LiBGLの基質ポケッ ト

(A) D270A-Sop, 複合体構造の表面モデル.隣のサブユニ ット由来の残基は白字で表しているこれらの残基の構成する表面は濃い灰色で表 している(B) D270A-Sop, 複合体と D270A-Larn,複合体との重ね合わせ. Sop, とLam,はそれぞれ薄い灰色濃い灰色で表 している (C)D270A-Sop, 複合体と Exol-thioCel, 複合体との重ね合わせ.Exol-thioCeし複合体を濃い灰色で表している.

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◆ 106◆

図4.LiSOBPの立体構造

(A) LiSOBPのアポ構造(上)と Sop,との複合体構造(下).(B) (A)の両構造の重ね合わせ両構造の N—ドメインを重ね合わせている.C-ドメインの残基にはアスタリスクを付しているサプサイト位置を非還元末端側から unitA, B, Cと順に定義して表記している.

Ql97Aでは Sop3に対する Ka(M.')がそれぞれ 2.01 X 104,

4.34 X 103と結合定数が野生型の 4倍, 20倍程度低下し

ていたこれらのことから,D193AとQl97Aが鎖長特異

性に重要である ことが明 らかとなった.

3.3. Lac/111oclostridi11111 phytofermentans由来 SOGPの構

造解析28)

SOOPは非還元末端側から作用するエキソ型酵素である

にも関わらず, 3糖に作用し 2糖には作用しないこのよ

うな鎖長特異性を生じる構造的要因は何であろうか

GH94では CBPなどの構造が明らかになっているが,Li-

SOOPはこれらの酵素とのアミノ酸配列の相同性が 20%

以下でありサブサイト+]の基質認識に関わる残基も既

知構造酵素とはほとんど保存されていない09-3)). さらに,

LiSOGPには CBPにはない N末端付加領域が存在してい

るまた,LiSOGPと同様の鎖長特異性を有する CDPは

構造未知であったため, LiSOGP構造の予測は困難であっ

たそ こで LiSOGPの構造解明を目指したが再現よく結

晶が得られなかったため, LiSOGPとほぼ同じ基質特異性

触媒ドメイン C末媒ドメイン(593-102如 a) (581-592aa, 1021-1113aa)

図5.LpSOGPの立体構造

応用糖質科学第 8巻第2号 (2018)

を示す植物由来糖鎖の資化菌である Lachnoclostridiumphy-

tofermentans由来 SOGP(LpSOGP)について構造解析を

行ったただし, LiSOGPのアポ構造(未発表データ)も

取得しており,機能に関わる重要な構造の特徴が LpSOGP

とLiSOGPの間でよく保存されていることを 言い添えて

おく.

3.3.1. LpSOGPの活性中心周辺のドメイン構成

Cellvibrio gilvus由来 CBP(CgCBP)は2量体であり ,触

媒ドメインと 他方のサブユニ ットのN末端ドメインとの

界面に活性中心が存在している四他の GH94既知構造で

もこの特徴は保存されている.一方, LpSOGPは単量体で

あること, N末端付加領域を有することから特有の活性中

心の構成を示すものと筆者らは予想していた. LpSOGPの

N末端付加領域以外のドメイン構成は CgCBPと同じで

あったが,この N末端付加領域の形成するドメイン (N

末端付加ドメイン)と触媒ドメインの界面に活性中心が存

在する点で LpSOGPはCgCBPと異なっていた(図 S(A),

(B)). しかし両酵素の N末端ドメインと LpSOGPのN

末端付加ドメインの構造が類似している点, CgCBPの 2

量体と LpSOGPを重ね合わせると LpSOGPのN末端付加

ドメインの位置と向きが CgCBPのN末端ドメインと 似て

いる点から,活性中心周りのドメイン構成は予想に反して

保存されていると 言える(図 5(8)).

3.3.2. LpSOGPの基質認識機構

LpSOGP結晶に Sop,, イソファゴ ミン (Glc類似体),硫

酸イオンをソーキングしたと ころ, Sop,がサ ブサイ ト+I

と+2に明確に結合していた(図 S(C)). この複合体の大き

な特徴は,サブサイト +Iにおける Sop,の Glc部分の向き

が CgCBP-Glc複合体の Glc分子から明らかに反転してい

たことである (図 S(C)). これは,LpSOGPの Tyrl41と

Arg907が CgCBPの Glc分子の立体障害になる位置に存在

すること, CgCBPの Glnl65が LpSOGPの Sop,と重なる

位置に存在することによると考えられるこの反転は,

Sop, がサブサイトー1と+Iに結合する際には, Sop,の安

定なコンフォメーションから還元末端側の Glc部分が反転

(A) LpSOGPの全体構造 (8)LpSOGPとCgCBPのドメイン構成の模式図灰色の濃い方か らそれぞれN末端ドメイン,触媒ドメイン,N末端付加ドメインを表している.基質ポケッ トの位置を点線で囲っている.C末端ドメインは省略している (C)LpSOGPとCgCBPとの基質ポケットの重ね合わせ LpSOGP.CgCBPはそれぞれ薄い灰色,濃い灰色で表している.

Page 7: β-1,2-グルカン関連酵素群の機能と構造中島・田口: p-1 ,2- グルカン関連酵素 状Bー1,2 -グルカン合成酵素(CGS) である.CGSはA. tu- mefaciens においてUDP-Glcを基質とする膜酵素であるこ

中島・田口: ~-1,2-グルカン関連酵素

する必要があることを表しているこのような反転による

基質の歪みがサブサイト -1と+Iにおける結合の不利と

なり Sop,を加 リン酸分解の基質とできないと考えられる.

また, 1M GlcをLpSOGP結晶にソーキングしても Glc分

子が全く観察されないことから,サブサイ ト+Iにおける

基質結合自体ではサブサイト+]における反転による基質

結合の不利を補えないと考えられる .一方,サブサイト

+Iと+2に観察された Sop,はフ リー の Sop,の安定構造と

近いコンフォメーションであった叫 したがって,サブサ

イト +2における基質認識によってサブサイト +Iにおけ

る反転による基質結合の不利が補われ,これにより,

LpSOGPは3糖以上のソホロオリゴ糖を加リン酸分解の基

質とできるものと推測される

LpSOGPのサブサイト +2の位置が,サブサイト+]の

反転により LiBGLの場合とは大きく異なることは一見奇

妙であるこの空間 は CgCBPにおいては Arg362の側鎖

によって占められているが (図 S(C)),Cellulomonas uda由

来 CBPでは, CgCBPの Arg362に対応する Arg残基が反

転して この空間が空いた立体構造も得られている判この

事実と先述の両酵素のドメイン構成の相違を考え合わせる

と, SOGPとCBPの分子進化における関連が窺われる

4. 原核生物由来 ~-1,2ーグルカナーゼの同定と機能構造解析34)

原核生物において Chitinophagaarvensicolaは唯一活性

が知られている菌であり,環状 Pー1,2-グルカンにより誘導

生産された SGLが細胞抽出液画分から検出される 18)_ 大

量調製した ~-1 ,2 —グルカンを唯一の炭素源として培養した

場合も同様に SGL生産誘導が見出された.そこで, C.ar-

vensicolaの細胞抽出液から SGLの単離を行うこととした

細胞抽出液に存在する BGL活性はグルコン酸によって阻

害する ことができ,これを活性測定液に添加することで

SGL活性のみを明確に検出することが可能であった(図 6

(A)). 最終的な精製画分の SGLを トリプシンまたはキモ

トリプシン分解して取得したペプチドを LC/MS/MSに

よって解析し, SGLの内部配列を決定した この内部配

列よりゲノム既知の近縁種 Chitinophagapinensisゲノム上

の候補遺伝子 Cpin_6279を得た.そこで, Cpin_6279の組

換えタンパク質を調製したところ, ~-1 ,2 - グルカンに対す

る明らかな分解活性が検出された (図 6(B)).また,この

酵素は い ,2-グルカン以外の多糖に対して全く活性を示さ

なかったこれらのことから Cpin_6279をSGLと同定し

た (以下,この酵素を CpSGLと記載)• SGLにおける反応

機構の解析例はなかったため, CpSGL による ~-1 ,2ーグルカ

ン分解産物の'H-NMR解析を行った.反応初期に明らかに

a—アノマーに由来する分解産物の生成が見られたため,

CpSGLがアノマー反転型の反応機構を有することが示さ

れた (図 6(C)). CpSGLは既知の GHファミ リーとは全く

異なるアミノ酸配列を有しており,そのホモログは主にグ

>~i[!日ク[ピM1 M2 0 h 20 30 40 50 M O Oぷぷも,>註。

グルコン酸 (mM) CpSGL (μg/ml)

(C) —• __j¥,J ¥,_ 0 min J!.、J し、1,〗 「 し,』j,_

JLJlit二三J~,\n \l1~I ¥'uし

」/Lー」バ」三門1~W¥)!1¥(¥1/11'{I: 贔9」,., .. ,., ,., ,., " .. , ....• , .• , ● ,. 毒●'".,ヽ,,.,,.,,.,,.,,., "" マ ー日・H;r3 ~~ 園

OH .

(還元末端) (非還元末端) '’’’’

(D)

\‘

図6. CpSGLの同定,反応機構,立体構造

◆ 107◆

(A)グルコ ン酸存在下での C.arvensicola細胞抽出液による~-1 ,2ーグルカン分解 (B) CpSGL による ~-1,2ーグルカン分解(C) ~-1 ,2 - グルカン分解産物の NMR による解析 太線は円で示した炭素原子に結合している水素原子のケミカルシフトを示している.~-アノマーの生成物の還元末端アノマー位プロトンのピークは ~-1 ,2— グルカン内部のアノマー位プロトンのものと 重なるため,この解析ではアノマーや重合度によってケミカルシフトのほとんど変わらない非還元末端の 2位のプロトン由来のピークを全分解産物由来のピークとしている平均重合度 25

の ~-1 ,2—グルカンを基質として用いた (D) CpSGL-Sop,, Glc 複合体構造基質ポケット内の酸性アミノ酸残基と基質をスティックモデルで表している

ラム陰性菌に存在していたこのことから CpSGLとその

ホモログのグループを新規なファミリーとして提案し,

GH144が創設された X線結晶構造解析により CpSGLに

Sop, をソーキングした複合体構造を決定したところ,基

質は (a/a),-barrelの中 心付 近 に 結 合 し て い た基質ポ

ケッ ト内には酸性アミノ酸残基が 6個存在していたが(図

6(D)), Asp400以外で変異による大幅な活性の低下が見ら

れたため,変異体解析のみで触媒残基を推定することは困

難であったまた,これらの残基の位置は緩やかな構造の

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● 108◆

類似性を示す GH15のグルコアミラーゼや GH8のエンド

グルカナーゼの触媒残基の位置とは全く異なっており,

CpSGLが一般的な反転型酵素とは異なる反応機構を有す

るものと期待される.

5. おわりに

本稿ではこれまでに得られた ~-1,2—グルカンの分解に関

わる酵素タンパク質の機能と構造について紹介した.

LiSOGPの遺伝子クラスターの解析では, LiSOGP,LiBGL,

LiSOBPの鎖長特異性からこれらが協同的にソホロオリゴ

糖の代謝を行うこと示したまた,立体構造解析からこれ

らの機能に必要な構造的特徴を明らかにしたさらに,

SGLも構造によるアノテーションではグルコアミラーゼ

とされていたが,遺伝子同定と機能構造解析により真の機

能を明らかにすることができた.ソホロオリゴ糖を用いた

酵素機能構造解析例は極めて少なく,これらの情報はホ

モログの機能を予測する上で,そして,新規酵素を探索す

る上でも重要な基盤情報となったと言える.今後,さらに

~-1,2—グルカン関連の新規酵素が見出されていくであろう.

また,筆者らは真核生物由来 ~-1,2—グルカナーゼの同定,

機能構造解析も行っており,原核生物由来 SGLとの分子

進化的な関連も明らかになるだろう.

謝辞

本研究を行うにあたり,基質調製を含む様々な面でのご

支援ご助言をいただきました中井博之准教授をはじめと

する新潟大学大学院自然科学研究科 食品糖質科学研究室

の皆様実険を担当お手伝いいただいた多くの先生方,

院生,学生の皆様に感謝申し上げます.

文献

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質疑応答

[質問] 農研機構食品研究部門徳安健

① ~-1,2—グルカンは高次構造をとらないのでしょうか

②真核生物でグルカナーゼを生産したものには,低分子

の分解物を代謝するユニークなタンパク質は見つからない

のでしょうか

[回答]

①溶液中では環状 ~-1,2—グルカンはドーナツ様のリング

の形,直鎖状 ~-1,2—グルカンは円筒状の形状をしていると

の報告があります

②今のところ真核生物で分解産物であるソホロオリゴ糖

に特異的とされる酵素の報告はありませんが,これに作用

する仕グルコシダーゼは存在するものと考えております.

◆ 109◆

[質問] 鹿児島大農藤田清貴

~-1,2—グルカンは環境中に大量にあるのか

[回答]

根粒菌などが ~-1,2—グルカンを分泌生産するので土壌中

に主に存在していますが,おそらく環境中での存在量は多

くないと思われます.

[質問] 石川県立大本多裕司

SGLの触媒残基が同定できていないが,各変異型酵素

の構造は変化していないのでしょうかまた Epoxypropyl

glycosideを使って共有結合するアミノ酸残基を決定して

みてはどうか

Ol~O

心八ヘダ炉;)¥"¥

[回答]

CpSGLでは変異体の構造は取得しておりませんが,変

異による構造の変化はないものと考えております. Ep-

oxypropyl glycosideを用いた解析は今後の検討課題とさせ

ていただきます.

[質問] 近畿大農大沼貴之

ABCトランスポーターがリガンドを結合後どのように

リリースしているのか

[回答]

トランスポーターが基質と結合後,ヌクレオチド結合ド

メインによる ATP分解の際に基質結合ドメインの基質と

の親和性が変化するからと考えられております.

[質問] 大阪市立大理伊藤和央

SOBP と SOGP はいずれも 13-1,2—グルカンといったん結

合するが,両者の糖結合部位の構造に類似性はあるので

しょうか

また, SOBPはABCトランスポーターの機能とともに

細胞外の 13-1,2—グルカン糖鎖を結合してとらえる部位を

もっているが,糖鎖結合特異性はレクチンのように特異的

なものなのでしょうかまた立体構造上レクチンのような

糖鎖結合タンパク質と類似性はあるのでしょうか.

[回答]

SOBPとSOGPのアミノ酸配列と構造は全く異なってお

り,基質の結合様式も全く違います. レクチンと SOBPの

構造も全く異なっております. SOBPはソホロオリゴ糖に

特異的ですが,ソホロオリゴ糖に結合するタンパク質の解

析例はほとんどなく, SOBPホモログでも同様かはわかり

ません.