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は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

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Page 1: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末
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は じ め に

2012年の原油(ドバイ)価格は、前年末に米国においてイラン制裁強化に向けた国防授権法が成立したことなどから、年初は1バレル105ドル台であったものが、1月上旬には110ドル台に上昇し、同月下旬にはイランによるホルムズ海峡の封鎖を示唆する動きなどから、さらに値を上げて2月の下旬には120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末のEU首脳会議で債務問題に一定の目処が立つと、その後9月中旬までに115ドルを超えるレベルまで上昇を続け、以降は概ね105ドル~110ドルの間で推移しました。その結果、わが国の輸入価格(CIF)の年平均価格は、114.79ドル/バレルとなり、前年より約6ドル上昇し、円ベースでは57,493円と前年より平均で2,843円/S高い価格となりました。

このような、原油価格の推移の中で、国内のガソリン価格(レギュラー全国平均)は、年初143.2円/ℓで始まり、春先には

158.3円/ℓと160円を伺う価格になりましたが、6月下旬までの原油価格の下落等を受けて7月上旬には一時140円を下回る価格になり、その後は、概ね140円から150円の間で推移しました。

また、2012年の国内の石油需要については、原発の停止を受けて石油火力発電向けのC重油が2011年に続き高い伸びを示した他、復興需要の本格化などから、軽油も前年を上回り、主要油種であるガソリンも微増となったため、燃料油計では2年ぶりに前年を上回りました。

国内石油産業を取り巻く環境は、政府のエネルギー政策が迷走し、国のエネルギーのあり方の全体像が定まらない中で、石油各社はエネルギー供給構造高度化法に基づく装備率の達成に向けて、2013年度末までに原油処理能力の削減または閉鎖する製油所を発表しました。 

また、東日本大震災の教訓を踏まえた「石油備蓄法」の改正が行われ、国家備蓄の放出に関する発動要件の見直し、

1 はじめに

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はじめに

国際石油情勢

国内石油需給動向

わが国のエネルギー政策

石油備蓄と新たな緊急時対策

わが国の石油開発

規制改革と石油産業

石油製品の流通・販売

石油諸税の根本的見直しに向けて

企業体質の改善・強化

二重、三重の安全対策

大規模な流出油事故に備えて

石油精製部門の環境対策

自動車燃料等の品質向上に向けて

地球温暖化問題と石油

バイオマス燃料への取り組み

石油の有効利用

技術開発に関する取り組み

製油所の所在地と原油処理能力/石油産業の規模

災害時を含めた最終消費者までの石油安定供給

21〜 26

1〜 2

3〜 8

9〜 14

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CONTENTS

災害時の石油会社の連携計画の策定、国家製品備蓄の拡充等が加わりました。これによりこれまで産油国からの原油供給途絶を想定していた国家石油備蓄を国内の災害時においても放出できるようになり、より機動的な対応が可能となりました。また、業界内においても、製油所、油槽所といった石油のサプライチェーンの中核となる事業所の災害対応力をハード面から高めると共に、情報収集・発信体制の整備の他、道府県との間で重要施設への燃料供給に関する情報共有も進めるなど、ソフト面の対応も図っています。

このパンフレットはこうした石油産業の現状や取り組みについて、消費者をはじめ関係の皆様に正しい理解をいただくために作成したものです。石油および石油産業に対する正しい理解の一助となれば幸いです。

2013年4月

石油関連日誌73〜 74

2はじめに

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国 際 石 油 情 勢

国際石油需給

IEA(国際エネルギー機関)が2012年12月に発表したレポートに

よれば、12年の世界の石油需要は11年に比べ約0.9%増加し、

89.7百万バレル/日と前年の実績を上回る見込みです。これは、

OECD諸国の石油需要が欧州経済の低迷などにより減少する一方、

非OECD諸国の石油需要が大幅な増加となったことによります。具

体的には、OECD諸国では、北アメリカが30万バレル/日の減少、欧

州が50万バレル/日の減少、太平洋地域が40万バレル/日の増加で、

OECD諸国全体としては50万バレルの減少となりました。一方、非

OECD諸国では、中国が30万バレル/日の増加、他のアジア地域が

40万バレル/日の増加、旧ソ連・ラテンアメリカ・中東地域は共に20

万バレル/日程度の増加で、非OECD諸国全体としては120万バレル

/日の大幅な増加となっています。

これに対して12年の石油供給は、北アメリカが11年よりも110万

バレル/日の大幅増加となることなどから非OPEC諸国の供給が11

年よりも50万バレル/日増加すると見込まれています。

中期的には世界の石油需要は、中国やアジアを中心とする非

OECD諸国の経済成長に伴って増加すると想定され、IEAの見通し

(12年12月)によれば、17年の需要は12年に対して約7%、6百万

バレル/日増加して、95.7百万バレル/日に達するものと見込まれて

います。

これに対して供給面では、非OPEC諸国の供給は17年には12年

の53.2百万バレル/日から約8%、4百万バレル/日の増加が見込ま

れていますが、その増加幅は世界の石油需要の増加幅を下回りま

す。このため、今後、OPEC諸国への依存度が次第に増加することと

なります。

石油需要は特に新興国における増加が見込まれる一方、資源ナ

ショナリズムの高まり、新規油田投資への意欲の低下傾向など、供

給サイドの構造的問題は解決されていません。11年にはチュニジ

アを発端とした民主化の動きである「アラブの春」が中東・アフリカ

諸国へ拡大する中、リビアにおいては一時原油輸出が停止しまし

た。こうした中東・アフリカ諸国における政情不安は新規油田投資

へも影響を与えると考えられるため、石油需給が逼迫する懸念が

徐々に顕在化する恐れもあり、課題として認識しておく必要がある

と考えます。

原油価格の動向

世界の原油価格は、大きく分けて3つの市場で形成されています。

最大の市場であるアメリカのNYMEX(ニューヨーク・マーカンタイ

ル取引所)で取引されるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディ

エート)原油の市場、欧州のICE(インターコンチネンタル取引所)で

取引されるブレント原油の市場、そして東京工業品取引所などで取

引されるアジアのドバイ原油の市場です。

12年の原油価格について、WTI原油で見ると、11年12月31日

に米国においてイラン制裁強化に向けた国防授権法が成立したこと

などから年明けは100ドル/バレル前後で推移しましたが、12年1月

下旬にはイランがホルムズ海峡の封鎖を示唆するなど緊張が高ま

り、2月中旬以降は105ドル/バレル超の水準まで上昇しました。5

月以降、欧州債務問題の再燃やこれに伴うドル高などから下落し始

め、6月28日には77ドル/バレルとなりました。欧州債務問題は、6

月末に開催されたEU首脳会議や、欧州中央銀行(ECB)による債務国

の国債購入計画など一定の進展がありましたが、イラン情勢に加え

てシリア情勢が悪化し地政学リスクが高まる中、米国連邦準備制度

理事会が追加の金融緩和を決定した翌日の9月14日には99ドル/バ

レルまで上昇しました。10月以降は、欧州の更なる景気後退だけで

なく、米国の財政の崖問題もあり世界経済の景気が減速するとの懸

念から、90ドル/バレル前後で推移しました。

原油価格に影響を及ぼす要因として、2000年以降は、地政学リス

ク、中国をはじめとする新興国での需要の急増、資源ナショナリズム

の台頭、探鉱・開発投資の消極化などが挙げられてきましたが、加え

て08年以降は、ドル相場との関係や他の商品市場との関係など、原

油は金融資産としての性格が強くなっています。

今後、中長期的には、アジア、南米、中東など新興地域での需要増

加が確実視されており、供給面での開発投資が低迷した場合、石油需

給がタイト化し、OPEC依存度が高まることも考えられます。円滑な

投資が継続できる安定的な原油価格の推移が期待されます。

また、10年4月頃からWTIとブレントの価格が逆転し始めました

が、11年10月には28ドル/バレルまで拡大しました。ブレントは長期

的に生産量が減少傾向で高値で推移する一方、WTIは引渡し場所

であるオクラホマ州クッシングにおける在庫積み増しなどに加えてオ

イルサンドなどの非在来型石油の供給量の増加などにより価格が低

下し価格差が拡大したと言われています。このような状況のなかで投

資家の関心や投機マネーもWTIからブレントに移行したと指摘され

ています。

3 国際石油情勢

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出所:各種資料より石油連盟が作成

12 131110090807060504030201009998979695949392919089888786858483828180797877767574731972年

単位:ドル/バレル■原油価格の推移(月平均)

ドバイスポット価格

イラン・イラク戦争勃発(9月)

イラン革命(2月)

OPEC・非OPECの減産

イラクのクウェート侵攻(8月)

同時多発テロの発生

イラン停戦受諾

標準原油廃止

第二次オイルショック

第一次オイルショック

イラク戦争勃発

アラブの春

ハリケーン「カトリーナ」

サブプライムローン問題顕在化

リーマンショック

第四次中東戦争(10月)

サウジアラビア、ネットバック販売開始

アラビアンライトネットバック価格

アジアの経済危機

OPEC増産

アラビアンライトスポット価格

アラビアンライト公式販売価格

12月11109876543211211109876543210

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単位:ドル/バレル■WTI原油先物価格、OPECバスケット価格の推移(月平均)

出所:NYMEX、OPEC

2011年 2012年

・ OPECが基準に用いている原油価格で加盟国代表油種である 次の12油種の平均値 サハラブレンド、ジラソル、オリエンテ、イラニアンヘビー、バスラライト、 クウェートエクスポート、エスシダ、ボニーライト、カタールマリン、 アラビアンライト、マーバン、メレー

OPECバスケット

米国産原油で米国市場の基準銘柄であるWest Texas Intermediate(WTI)

WTI

94.0

106.6

88.3

82.4

98.6

107.3

89.6

92.896.3

109.0

4国際石油情勢

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■OPEC加盟国の概要

国 名

     

項 目

政治体制人口

(2011年) 面積国民1人当たり

総生産(2011年)

原油生産量(2012年平均)

原油生産能力(2012年12月)

石油輸出量(2011年)

万人 千km2 米ドル 万バレル/日 % 万バレル/日 千バレル/日

イ ラ ン イスラム共和制 7,586 1,648 6,360 300 9.6 303 2,537

イ ラ ク 共 和 制 3,333 438 5,675 295 9.4 330 2,166

クウェート 首 長 制 370 18 47,787 274 8.7 286 1,816

サウジアラビア 君 主 制 2,817 2,150 20,505 986 31.4 1,180 7,218

ベネズエラ 大 統 領 制 2,907 916 10,864 250 8.0 260 1,553

カタール 首 長 制 177 11 98,144 74 2.4 74 588

リ ビ ア 共 和 制 648 1,760 5,691 139 4.4 158 300

アラブ首長国連邦 7首長国の連邦制 485 84 74,235 265 8.5 280 2,330

アルジェリア 共 和 制 3,670 2,382 5,196 117 3.7 119 698

ナイジェリア 共 和 制 16,332 924 1,443 210 6.7 249 2,377

アンゴラ 共 和 制 1,799 1,247 5,611 175 5.6 189 1,543

エクアドル 共 和 制 1,448 281 4,553 50 1.6 52 334

OPEC計 (12ヵ国) 41,573 11,859 6,989 3,136 100.0 3,480 23,460出所:OPEC統計(2011年)、原油生産量および原油生産能力はIEA(2013年1月号)

アブカイク

Petro Line

TAP Line

IPSA

ルマイラ

ガワール

ベリー

ムバラス

カフジ

ウムシャイフザクム

キルクーク

ブルガン

ドウハン

サファニア

サウジアラビア

UAE オマーン

カタール

クウェート

イラク イラン

サウジアラビア

UAE オマーン

カタールバーレーンバーレーン

クウェート

イラク イランイスファハン

シーラーズ

ホルムズ海峡

ペルシャ湾

カスピ海

オマーン湾

アラビア海紅海

ドバイ

フジャイラ

ハブシャン

アブダビ原油パイプライン

アブダビドーハルワイス マスカット

アバダン

バグダッド

ヤンブー

ジェッダ

ラスタヌラ

バスラ

ミナ・アル・ファハルリヤド

カーグ島

テヘラン

油    田

パイプライン

油 田 名

凡 例

ガワール

ここ数年の米国のシェールオイル(タイトオイル)の急激な増産は、

米国の石油輸入の依存度を引き下げ、世界の需給バランスも緩和さ

せると考えられています。IEAが12年12月に発表したレポートでは、

2020年代まで米国における軽質タイトオイルの生産量は増加する

見込みとなっており、需給、価格面への影響は注視する必要がありま

す。ただし生産コストの高いオイルサンド等の非在来型石油は、原油

価格の水準により生産量が影響を受ける可能性もあり、原油価格の

動向に留意する必要があります。

変化するOPECの影響力

OPEC(石油輸出国機構)は、1960年にイラクの呼びかけにより、

サウジアラビア、クウェート、イラン、ベネズエラの5ヵ国で結成されま

した。73年の第四次中東戦争の際、OPECはイスラエル支持の先

進諸国に対し、原油供給を削減して原油価格を約4倍にする、いわゆる

「オイルショック」を引き起こし、その存在感を全世界に示しました。

OPECは、70年代の最盛期には、世界全体の原油生産の約53%

を占めていました。しかしその後、油田開発生産技術の革新により原

油生産コストは著しく低下し、北海などの非OPEC諸国の原油が増産

され、OPECのシェアは約29%まで低下しました。また、先物市場の

登場など石油市場の構造変化も加わり、OPECの価格支配力は、

86年以降大幅に低下しました。

00年以降は、非OPEC産油国の協力を得て、プライスバンド制

(OPECバスケット価格で22〜 28ドル/バレルの価格帯上下限を超

えると自動的に生産調整するメカニズム)を導入することにより、一時

的な価格コントロールに成功していましたが、その後原油価格が

OPECプライスバンドの上限を大きく超える水準まで上昇する中、

05年1月にプライスバンドの一時停止を決定しています。

以降、OPECの原油価格に対する影響力は限定的なものとなり、

08年の原油価格の暴騰と暴落、また、09年から10年にかけての価

格上昇に対しても有効な対応策を講じることはできず、市場に翻弄さ

れる結果となっています。1998年以降イラクはOPEC生産枠の対

象から外れていましたが、今後のOPEC諸国からの原油増産は主に

イラクによるものと見込まれており、12年6月に開催された総会で

は、イラクを含む12ヵ国の生産量を3,000万バレル/日としました。今

後、非OPEC諸国の原油生産量は、特に非在来型原油の生産増加な

5 国際石油情勢

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■国際石油需要の見通し 百万バレル/日

国・地域               年 1990 2011 2015 2020 2025 2030 2035 2011-2035(注1)

OECD諸国 39.5 42.1 41.2 39.4 37.4 35.2 33.3 -1.0%

北米 19.8 22.2 22.0 21.2 20.0 18.6 17.5 -1.0%

 アメリカ 16.4 17.6 17.5 16.6 15.4 13.9 12.6 -1.4%

欧州 12.8 12.6 12.0 11.4 10.9 10.4 10.0 -1.0%太平洋 6.9 7.3 7.2 6.7 6.4 6.1 5.9 -0.9% 日本 5.1 4.3 4.1 3.7 3.5 3.2 3.1 -1.4%非OECD諸国 22.9 38.4 43.2 47.1 50.5 53.9 57.1 1.7%

東欧州/ユーラシア 8.8 4.8 5.0 5.2 5.3 5.5 5.6 0.6% ロシア 4.9 3.1 3.2 3.2 3.3 3.4 3.5 0.5%アジア 6.2 18.3 21.3 23.8 26.2 28.6 30.9 2.2% 中国 2.3 9.0 11.0 12.7 13.9 14.7 15.1 2.2% インド 1.2 3.4 3.8 4.3 5.0 6.2 7.5 3.3%中東 2.9 6.8 7.5 8.1 8.6 8.9 9.4 1.4%アフリカ 1.8 3.1 3.4 3.8 4.0 4.2 4.5 1.6%中南米 3.2 5.5 6.0 6.3 6.5 6.6 6.8 0.9% ブラジル 1.4 2.4 2.6 2.7 2.8 2.9 3.1 1.1%国際船舶向け需要(注2) 3.9 6.9 7.2 7.7 8.2 8.7 9.3 1.2%

世界合計 66.3 87.4 91.6 94.2 96.1 97.7 99.7 0.6%

 EU ー 11.6 11.0 10.3 9.8 9.2 8.7 -1.2%

バイオ燃料需要(注3) 0.1 1.3 1.8 2.4 3.0 3.7 4.5 5.1%(注) : 1. 期間平均 出所:IEA「World Energy Outlook2012」(世界エネルギー見通し) 2. 国際船舶・航空用燃料を含む 3. ガソリン・軽油換算

どにより増加すると見込まれていますが、アジア諸国をはじめとする

需要の増加を賄うほどの供給量は確保できないと見込まれていま

す。このため、今後もOPEC諸国の動向を注視する必要があります。

OPECは、必ずしも一枚岩としての行動が容易ではない内部の構

造的問題はありますが、サウジアラビアを中心とする穏健派の加盟

諸国は極端な価格の乱高下には消費国と同様の危機感を持ってお

り、持続的に新たな原油の開発が可能なレベルでの原油価格の安定

が重要であるとの認識を持ち、消費国も産油国も受け入れ可能な価

格レベルでの継続的な取引の実現を望んでいるとされています。

中長期的な国際石油市場の見通し

今後の国際石油市場を中長期的に展望する上で、アジアを中心と

する発展途上国の需給動向の見極めが非常に重要な要素となってい

ます。特に中国とインド、加えて中東地域は、人口増加や生活水準の

向上が考えられるため需給面および価格面での影響が非常に大きく

なると考えられています。

IEAは、12年版の世界エネルギー見通しにおいても、主に中国・イ

ンド・中東のエネルギー需要が大幅に増加するとの予測を発表してい

ます。新政策シナリオでは、2035年の世界の石油需要が、11年/35

年の年率ベースで0.6%増の99.7百万バレル/日となる中で、中国は

同2.2%増の15.1百万バレル/日、インドが3.3%増の7.5百万バレル/

日、中東が1.4%増の9.4百万バレル/日となるとの見通しが発表され

ています。世界需要が11年から35年で1.1倍の増加であるのに対し、

中国・インド・中東の増加は約1.7倍となり、世界需要に占める中国・

インド・中東のシェアも、概ね22%から32%に上昇することになりま

す。非OPEC諸国の非在来型石油の供給が大幅に増加すると見込ま

れるものの、これら需要増分をすべてカバーすることはできずOPEC

諸国からの供給増に依存せざるを得ないことも見込まれ、今後の

OPEC諸国の原油価格への影響力を注視しなければなりません。

一方、主要中東産油国などは従来から石油産業への外資参入を排

除してきましたが、今世紀に入ってからの原油価格高騰時において

は、ロシア、カザフスタンおよびベネズエラなど一部産油国では、サハ

リンプロジェクト、カシャガン油田およびオリノコ流域石油開発などに

おいて、自国の国営企業の権益拡大・メジャーズ等の権益縮小を図

る、いわゆる資源ナショナリズム的な現象が見られました。

資源保有国が自国資源に対する支配力を強化している状況は当面

続くものと思われます。しかし有力油田における国営企業の支配力強

化は、資金および技術力を保有するメジャーズ等の経営資源が、新規

油田開発に投入されることを阻害する要因となり、中長期的には原油

供給能力の安定的な増加を妨げることになることも懸念されます。

6国際石油情勢

Page 8: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■石油資源の埋蔵量・資源賦存量と石油可採年数

<試算>石油可採年数

2011年から2035年までの採掘量(見通し)

確認埋蔵量 在来型の石油資源賦存量(原油、NGLなど)

非在来型の石油資源賦存量(オリノコタール、オイルサンドなど)

(注) 1. IEA World Energy Outlook 2011をもとに作成 2. 可採年数は、IEA石油市場報告(2011.2)より、2010年生産量87.3百万バレル/日から試算

100年 150年

1兆バレル

2兆バレル

3兆バレル

4兆バレル

5兆バレル

6兆バレル

全世界

シェールガス在来型

頁岩に水圧でヒビを入れ、中のガスを取り出す

けつがん

頁岩(シェール)層石油・ガスが作られる根源岩の一種

けつがん

井戸を掘り、自噴するガスを集める

硬い岩盤

ガスは長い年月をかけて移動し、硬い岩盤の下にたまる

ガス

■シェールガス掘削の仕組み

ガス 2000

3000

メートル

くっ さく

石油の埋蔵量と可採年数について

資源賦存量の目安として、可採年数(R/P)という指標があります。

現在の技術と価格の下で確実に採掘可能であると考えられる石油埋

蔵量(R)をその年の石油生産量(P)で割ったものをいいます。かつて

可採年数は約30年と算出された時期もありましたが、最近の可採年

数はOGJ誌で58年、BP統計で51年(カナダのオイルサンドを含む)と

むしろ伸びる状況にあります。これは、技術革新による新規油田の発

見や採掘技術の進歩、原油価格上昇に伴う経済性の向上などによっ

て、生産量を上回るペースで石油埋蔵量が増加を続けてきた結果で

す。したがって、「可採年数」は石油が掘り尽くされる期間という意味で

はありません。

また、世界的には、石油の類似資源であるオイルサンド、オイル

シェール、オリノコタール等の「非在来型石油」が豊富に存在していま

す。オイルサンドは大部分がカナダに、次いでナイジェリア、マダガス

カル、アメリカなどに賦存しており、オイルシェールはアメリカ、ブラジ

ル、中国、カナダ、ロシア、コンゴなど世界各地に分布しています。ま

た、オリノコタールはベネズエラのオリノコ川流域を中心に存在する

超重質油ですが、すでに発電用燃料として利用されています。このよ

うに、非在来型石油資源の開発が進んだことを受けて、石油の埋蔵量

は飛躍的に増加しており、IEAの長期見通しにおいても、石油可採年

数は150年以上と見込まれています。石油の探鉱・開発技術の進歩

と非在来型石油の開発は、中長期的な石油資源の枯渇リスクを低減

させており、今後とも、石油供給に問題が発生することはありません。

石油の探鉱・開発技術の発達

開発技術の発達により近年の可採埋蔵量は増加しています。

(1)水平掘削技術……水平方向に10km以上も掘削できるため、1つ

の油田から出る石油生産量は増加します。

(2)三次元(3-D)地震探査システム……高密度な地質データを処理

することにより、複雑な地下構造を立体的に把握することが可能

になります。

(3)人工衛星と地上波を複合活用した測位システム……人工衛星と

地上局からの電波を組み合わせて、海上と海底の正確な位置を

測定できます。

(4)大水深海洋石油開発システム……水深300メートル以上の大水

深にある海底油田を掘ることができます。

「シェール革命」

最近、国際エネルギー市場において、米国を中心とするシェールガ

スの開発・増産が注目されています。

シェールガスとは、頁岩(シェール)層に封じ込まれているガスで、従

来、その生産はコスト的に見合わないものとされてきましたが、近年

の開発技術の発達・普及と価格の上昇によって、急速に実用化されま

した。水平掘削技術を活用し、頁岩層に水圧でヒビを入れて、ガスを

回収するというもので、開発リスクも低く、中東のみならず、中国や欧

州等にも豊富に存在していると見られています。

さらに、近年では、「シェールガス」の増産に伴い、同じ技術を利用

して頁岩(シェール)層に封じ込まれている軽質油「シェールオイル」

の生産も実用化されつつあります。

シェールガス、シェールオイルは、中長期的に、エネルギーセキュリ

ティの向上、原油価格の抑制に繋がるものとして期待されおり、国際

エネルギー市場を変える可能性があると言われています。

7 国際石油情勢

Page 9: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■世界の原油生産量(2012年)

OPEC計32,086(42.4%)

世界合計75,717(100%)

非OPEC計43,631(57.6%)

ロシア10,450(13.8%)

サウジアラビア10,268(13.6%)

イラン3,053(4.0%)

イラク2,880(3.8%)

クウェート3,061(4.0%)

UAE2,650(3.5%)

ベネズエラ 2,493(3.3%)

ナイジェリア 2,117(2.8%)

アンゴラ 1,755(2.3%)

リビア 1,375(1.8%)

その他OPEC諸国 2,435(3.2%)

(注): 1. 分割地帯はそれぞれサウジアラビア、クウェートに含まれる 2. UAEはアラブ首長国連邦の略称 3. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある

その他非OPEC諸国14,557(19.2%)

この他に、NGL(天然ガス液)が原油同様に生産されている。

出所:OGJ誌(2012年末号)

単位:千バレル/日

アメリカ6,330(8.4%)

中国4,080(5.4%)

イギリス/ノルウェー2,584

    (3.5%)

カナダ3,095(4.1%)

メキシコ  2,535   (3.3%)

単位:百万バレル

■世界の原油確認埋蔵量と可採年数(2012年末現在)

出所:OGJ誌(2012年末号)

2012年末の世界の原油確認埋蔵量は約1兆6,379億バレル、可採年数は59年となっており、確認埋蔵量の73.6%をOPEC諸国が、また49.0%を中東諸国が占めている。

可採年数

確認埋蔵量OPEC合計

確認埋蔵量:1,204,710(73.6%)可 採 年 数:103年

非OPEC合計確認埋蔵量:433,145(26.4%)

可 採 年 数:27年

世界合計確認埋蔵量

1,637,855(100%)可採年数:59年

確認埋蔵量:油層内に存在する油の総量(原始埋蔵量)のうち、技術的・経済的に生産可能なものを「可採埋蔵量」といい、通常「原始埋蔵量」の20~30%程度といわれている。可採埋蔵量のうち、最も信頼性の高いものを「確認埋蔵量」としている。

可採年数:ある年の年末の確認埋蔵量をその年の生産量で除した数値。例えば、「可採年数50年」とあっても、今後、石油探査や掘削をはじめ、回収技術の進歩により既存油田の埋蔵量が増えたり、新油田の発見などがあるため、その年数で石油が掘り尽くされるということではない。

その他

OPEC諸国51年

ナイジェリア48年

45,820(2.8%)

アンゴラ16年

10,470(0.6%) 37,200

(2.3%)

リビア

ベネズエラ

95年

326年

48,010(2.9%)

297,570(18.2%)

イラン138年

154,580(9.4%)

クウェート

イラク

103年

104,000(6.3%)

サウジアラビア73年

アラブ首長国連邦

(UAE)101年

97,800(6.0%)

134年

141,350(8.6%)

ロシア21年

80,000(4.9%)

カナダ153年

173,105(10.6%)

アメリカ9年

20,682(1.3%)

中国17年

25,585(1.6%)

その他

非OPEC諸国22年

115,021(7.0%)

イギリス

ノルウェー

11年

10,264(0.6%)

メキシコ

9年

8,488(0.5%)

267,910(16.4%)

8国際石油情勢

Page 10: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

国 内 石 油 需 給 動 向

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000

単位:千S■わが国の石油製品別(燃料油)需要の推移

出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」(注):四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある

燃料油計234,138

212,639

209,219

218,012

243,218

ナフサ灯油軽油B・C重油 A重油ジェット燃料油 1,673

2,059

2,967

3,739

4,611

ガソリン36,24021,93016,759111,007 19,306 27,223

32,03121,66315,99792,903 18,992 28,995

26,29723,56621,56479,199 21,083 34,543

31,42326,70137,68046,623 27,066 44,783

47,68629,92441,74531,364 29,516 58,372

245,4054,849

43,98830,01745,45240,675 28,796 51,628

236,1095,129

49,38828,26537,11627,009 27,780 61,421

196,0195,153

46,69920,34932,89117,343 15,425 58,159

180,9313,05624,61325,30725,80845,133 20,315 36,698

196,0554,204

43,72819,61932,86623,743 14,680 57,214

2000年度

2005年度

2010年度

2011年度

1990年度

1995年度

1980年度

1985年度

1975年度

1973年度

構造的な石油需要の減少

2011年度の石油需要は燃料油合計で約1億9,606万Sと前年

度実績と横ばいになりました。1988年度に石油需要が燃料油合計

で2億Sを超えましたが、09年度以降は2億Sの大台を割っていま

す。原子力発電所の停止に伴う火力発電の増加によりB・C重油の

需要は大幅に増加しましたが、それ以外の油種は前年度実績を下回

る結果となりました。

ガソリンからC重油までの、いわゆる燃料油の需要は、戦後、第二

次石油ショック後の1980年代こそ産業用燃料・原料であるC重油

とナフサ需要の大幅な減少によって2億Sを下回る水準で低迷しま

したが、その他の油種は一貫して増加を続けました。その増加トレン

ドに転機が生じたのが2000年でした。燃料油合計の需要量は99年

度に2億4,597万Sをピークに2000年度以降は減少傾向が続いて

います。ガソリンについては04年度の6,148万S、灯油は02年度の

3,062万Sが需要のピークとなっています。ちなみにBC重油の需

要のピークは73年度の1億1,101万Sです。

こうした石油需要減少の構造的要因として、わが国における①脱

石油政策の展開、②社会構造の変化、③地球温暖化対策が挙げられ

ます。

①脱石油政策の展開2度の石油ショックを受けて、わが国では石油依存度の低減を図

るため、エネルギー政策の柱として「脱石油」が掲げられてきました。

とりわけ発電用や産業用のBC重油については原子力の推進・重油

火力発電の新設禁止や天然ガスの政策優遇など、強力な施策展開

が図られ、産業分野、民生・業務分野で石油から石炭や天然ガスへ

の燃料転換が進展しました。

②社会構造の変化現在も進む少子高齢化、人口の減少という社会構造の変化によ

り、ガソリンや灯油などの油種は直接的な需要家の減少に直面する

一方、軽油やA重油については物資の輸送量そのものの低迷に加

え、輸送体制の合理化・効率化等により燃料消費の削減が図られて

きました。また、自動車燃料であるガソリン需要の減少に関しては、

都市部を中心とした若年層の車離れが影響しているといわれていま

す。

③地球温暖化対策二酸化炭素の削減が世界的な課題となって以来、化石燃料であ

る石油は、その消費削減が求められており、よりCO2排出量の少な

いエネルギーへの転換や自動車燃費の改善など、エネルギー消費

効率の向上による石油の消費量の削減が図られています。

12年度の上期(4月〜9月)の需要実績については、燃料油合計で

9,217万Sと11年度同期の実績(8,897万S)を4%上回っていま

す。油種別に見ると、軽油、BC重油は増加となりました。特にBC重油

については、東日本大震災により電力向けの需要が高まっているこ

とから前年同期比43%増加(1,396万S)しました。電力用需要につ

いては、今後の原子力発電の設備利用によって大きく需要が変化す

ると考えられます。

今後のわが国の石油製品需要(BC重油以外)は、原油価格の急激

な変動などによる一時的な変動を除いて、構造的な減少要因に本質

的な変化はないことが想定されていますが、東日本大震災において

石油の果たした役割を踏まえ、今後も石油のサプライチェーンを維

9 国内石油需給動向

Page 11: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■石油製品の用途別国内需要(2011年度) 単位:千S

用途      製品 ガソリン ナフサ ジェット燃料油 灯 油 軽 油 重 油 原 油 LPガス 潤滑油 合 計

自   動   車 57,136 31,798 2,318 638 91,891

航   空   機 3 4,204 4,208

運 輸 ・ 船 舶 3,885 109 3,994

農 林 ・ 水 産 1,602 532 2,807 4,941

鉱   工   業 74 4,134 46 11,086 6,067 947 22,354

都 市 ガ ス 1,833 1,833

電       力 255 14,983 11,573 1,742 28,553

家 庭 ・ 業 務 13,883 5,662 12,971 32,516

化 学 用 原 料 43,728 235 569 4,695 49,227

合       計 57,214 43,728 4,204 19,619 32,866 38,423 12,142 29,625 1,695 239,517(注) : 1. 記入用途例は、産業活動および国民生活のうち「身近なもの」の一例 出所:石油連盟 2. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2007 2008 2009 2010 2011年度200620052000199519901985198019751973

60

50

90

100

70

80

単位:千バレル/日 単位:%

■原油処理能力と設計能力稼働率の推移

出所:石油連盟

設計能力稼働率(%)

年度平均処理能力

5,274

79.2

4,856

82.7

4,895

78.9

4,846

74.5

4,627

77.7

4,559

74.2

4,796

82.9

4,767

87.2

5,221

79.4

4,552

77.3

4,973

62.3

5,940

66.0

5,940

70.7

5,410

85.2

■石油需給バランス(2011年度) 単位:千S

項目         

年度2010 2011 対前年度比(%)

原 油輸  入 214,357 209,173 97.6

処  理 208,572 196,720 94.3

製 品(燃料油)

期初在庫 10,533 10,483 99.5

生  産 195,157 185,440 95.0

輸  入 33,100 37,378 112.9

供 給 計 228,257 222,818 97.6

内  需 196,019 196,055 100.0

輸  出 30,285 25,352 83.7

需 要 計 226,303 221,407 97.8

期末在庫 10,483 10,103 96.4(注): バランスは品種振替、ロス、その他で一致しない 出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」

10国内石油需給動向

Page 12: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

持するためには、安定需要の確保とサプライチェーンの効率化が必

要となっています。

わが国の石油供給体制

11年度に国内で産出した原油は82万Sと、原油処理量の1億

9,672万Sの0.4%、およそ1.5日分に相当する量に過ぎず、国内で消

費される石油製品需要を賄うため、わが国は原油および石油製品の

ほぼすべてを海外から輸入しています。

国内の石油製品需要を賄う方法としては、石油製品を輸入する方

法と原油を輸入して国内で石油製品に精製する方法がありますが、

わが国は原油の輸入と国内での精製という後者の方式を採用してい

ます。

国内で石油製品を精製する方式は「消費地精製方式」と呼ばれてい

ます。消費地精製方式は、大型の原油タンカーで大量に原油を輸送

することによるコスト低減、国内の需要構造に合わせて石油製品の生

産割合を調整できること、国内の環境基準等に適合した品質の調整

が容易であること、緊急時への対応に優位性があることなど多くのメ

リットを有しており、わが国の石油供給体制の根幹として採用されて

きました。

一方、国内の石油需要は、ここ30年の間、ほぼ一貫して重油需要の

減少とガソリンやナフサ、灯油などのいわゆる「白油」と呼ばれる製品

が増加したため、石油会社では、重油を分解して「白油」を増産するた

めの設備を建設し、需要と供給のバランス維持に努めてきました。

近年はマーケットの国際化が進展したこともあり、製品の輸出入に

ついて、より戦略的な観点から国内外のマーケットを睨みながら機動

的な活用が図られています。

原油の輸入

11年度の原油輸入について地域別に見ると、中東地域が85.1%

を占めています。中東地域への石油依存度は、石油危機後の87年度

には一旦68%まで低下しましたが、90年代に入り、中国やメキシコな

ど非中東の産油国の原油輸出が自国の経済成長に伴い次第に減少

したため再び上昇しています。

原油の輸入国を国別に見ると、サウジアラビア(全輸入量の

31.1%)、アラブ首長国連邦(同22.5%)、カタール(同10.2%)、イラン

(同7.8%)の順となっており、この4ヵ国で全輸入量のおよそ7割を占

めていることがわかります。

こうした中東の国々との良好な関係の維持・発展が極めて重要と

なりますが、必ずしも国内の政情や国際社会との関係に問題のない

国ばかりではなく、わが国の石油供給体制は依然として脆弱な面を有

していると言わざるを得ません。

製品輸入と製品輸出

消費地精製方式を採用するわが国において、製品輸入は補完的な

石油の供給手段ですが、ナフサについては例外で、国内需要の約6割

を輸入製品で賄っています。これは、石油化学会社が独自に石油化学

原料であるナフサを輸入しているためです。また、外国航路を行き来

する船舶に日本で生産した燃料を供給した場合は輸出とみなされる

ため、このような輸出がBC重油の供給量のうち大きな割合を占めて

います。同様にジェット燃料油についても海外を往復する航空機燃料

としての供給は輸出とみなされるため、国内需要の2倍近くが輸出量

として計上されています。

近年は、内外価格差を反映して、軽油の輸出が年々増加してきまし

たが、今後の動向は不透明となっています。

11 国内石油需給動向

Page 13: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■わが国の国別原油輸入比率の推移 単位:%

出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」

OPEC 86.2 非OPEC 13.8

249,199千S

238,480千S

254,604千S

アラブ首長国連邦14.7

サウジアラビア33.0

カタール 3.5インドネシア15.0

オマーン3.5

その他5.7

クウェート 3.5中国3.8

イラン2.3

イラク5.5

イラク3.2

分割地帯6.1

その他3.3

メキシコ 0.8

アラブ首長国連邦21.4

サウジアラビア19.5

イラン10.7

カタール6.0

インドネシア12.6

オマーン6.4

オマーン8.9

メキシコ3.7

中国6.5

その他5.4

OPEC 78.0

OPEC 87.5

非OPEC 22.0

OPEC 71.6 非OPEC 28.4

非OPEC 12.5

OPEC 90.0 非OPEC 10.0

その他0.5

イラク 2.0

ベトナム 1.1

クウェート 1.9

その他 0.2オーストラリア 1.4

マレーシア 3.8

マレーシア 2.1ベトナム 1.9

アラブ首長国連邦25.6

サウジアラビア21.6

イラン11.5

クウェート7.4

中国2.2

オマーン4.5

その他3.3

イラク1.4

インドネシア 4.8カタール9.6

分割地帯 5.4

197,261千Sアラブ首長国連邦22.2

サウジアラビア13.5

クウェート 1.7カタール6.3

メキシコ4.9

その他 0.3中国6.5

イラン6.9

インドネシア11.4

その他4.4

OPEC 89.2 非OPEC 10.8

262,785千Sアラブ首長国連邦10.3

サウジアラビア27.2

イラン22.3

インドネシア11.2

イラク2.3

オマーン2.9

その他 1.1分割地帯 4.9中国3.6

クウェート8.3

その他2.7

ブルネイ 3.3

OPEC 92.9 非OPEC 7.1

288,609千Sアラブ首長国連邦10.8

サウジアラビア19.9

イラン31.0

インドネシア14.7

オマーン1.9

その他0.8

ブルネイ3.5

ナイジェリア 1.9

クウェート8.2

分割地帯5.3

その他 1.1中国 0.6

イラク 0.3

分割地帯 3.5

265,526千Sアラブ首長国連邦26.7

サウジアラビア19.2

イラン8.7

クウェート5.0

カタール6.3

インドネシア7.9

分割地帯5.4

オマーン6.1

中国5.0

その他4.9

OPEC 79.9 非OPEC 20.1その他0.6

(注): 四捨五入の関係により100%にならない場合がある

分割地帯 5.4

249,010千Sベトナム 0.8イラク 0.7オーストラリア 0.9

スーダン 2.6

分割地帯 2.0アラブ首長国連邦

24.5サウジアラビア29.2

イラン13.0

クウェート7.2

インドネシア3.1

オマーン2.6

その他3.1

カタール9.4

OPEC 83.6 非OPEC 16.4209,173千S

ロシア4.1

アラブ首長国連邦22.5

サウジアラビア31.1

イラン7.8

クウェート7.0

インドネシア 3.5オマーン 2.3

その他6.5

イラク 2.2

その他 0.8

分割地帯 2.0カタール10.22011

OPEC 84.0 非OPEC 16.0214,357千S

ロシア7.1

アラブ首長国連邦20.9

サウジアラビア29.2

イラン9.8

クウェート7.0

インドネシア 2.4オマーン 2.7

その他3.8

イラク 3.3

その他 0.4

分割地帯1.9

カタール11.62010

2000

1990

1980

2005

1995

1985

1975

1973年度

その他0.8

出所:経済産業省「石油輸入調査」

■わが国の供給者別原油輸入比率の推移 単位:%

262,785千S

249,199千S

238,480千S

254,604千S

70.0 7.7 14.3 8.0

44.5 44.4 7.8

61.3 9.027.8

22.2 67.3 8.3

(注):四捨五入の関係により100%にならない場合がある

3.3

1.9

2.2

288,609千Sメジャーズ 74.1 8.5 9.2 8.3

邦系石油開発会社独立会社産油国政府

214,357千S17.8 74.4 4.73.1

209,173千S18.4 73.7 4.33.6

2010

2011

2000

1990

1980

1975

1973年度

12国内石油需給動向

Page 14: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

0

50

100

150

200

250

300

60

70

80

90

100

08 09 10 11070605040302012000999897969594939291908988878685848382818079787776751973年度

■わが国の原油輸入量とOPEC依存度・中東依存度の推移 単位:折線グラフは%、棒グラフは百万S

出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」

第一次

石油危機

第二次

石油危機

湾岸危機

イラク戦争

(百万S)

(%)

77.578.2

71.4

68.8

71.5

78.6

87.1

84.0

中東依存度

OPEC依存度

289

263

249

197

238

266255

21492.9

89.2

86.2

71.6

78.0

79.9

87.6 86.6

83.6

209

85.189.1

249

90.0

原油輸入量

単位:%

■わが国の主要石油製品の国別輸入・輸出構成比

出所:経済産業省「資源・エネルギー統計」

ナフサ 66.5

ジェット燃料油 34.3 軽油 30.1 重油 28.1ガソリン4.9

灯油 4.0

重油 19.4ガソリン7.8

軽油 2.3ナフサ 0.2 灯油 2.4

韓国90.3

シンガポール8.0

アメリカ 0.0スウェーデン 0.0

グアム 2.4タイ 0.3韓国 0.3

台湾 1.7

■わが国の石油製品別輸入・輸出構成比(2011年度)

(注):四捨五入の関係により100%にならない場合がある *外航船舶向け供給分

輸 入

輸 出

輸 入37,378千S

輸 出25,352千S

ガソリン 灯 油 軽 油 重 油

輸 入2,910千S

輸 入1,490千S

輸 入875千S

輸 入7,235千S

輸 出1,254千S

輸 出600千S

輸 出7,619千S

輸 出7,135千S

香港7.1

米軍 4.5

ニュージーランド8.8

マレーシア7.2

オーストラリア7.1

シンガポール62.3

韓国97.4

中国2.6

マレーシア0.0

シンガポール20.7

アメリカ8.1

米軍 0.0

韓国71.2

韓国100.0

シンガポール30.3

オーストラリア34.2

香港13.0

韓国 4.5

インドネシア 1.7フィリピン 1.7メキシコ 2.0チリ 2.4中国 2.9

米軍 1.6インド 1.2

その他4.5

マレーシア50.6

韓国19.7

オーストラリア 1.2シンガポール 1.6ロシア 2.2

アメリカ 1.2中国 0.8

パプアニューギニア 0.6香港 0.4

インドネシア21.7

ボンド*55.9

中国18.4

シンガポール14.4

マレーシア1.6

香港3.0

韓国6.7

13 国内石油需給動向

Page 15: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■わが国の石油輸入金額の推移

出所:財務省「貿易統計」ほか

年度項目 1973

4.758,329278.571.3533.67

1975

12.0522,654298.911.3633.89

1980

34.6247,508218.231.4334.41

1985

27.3038,282222.901.2535.06

1990

23.3420,296138.231.2035.51

1995

18.2711,05796.231.3335.10

2000

28.3719,617109.951.4935.09

2005

55.8139,735113.191.4435.66

2008

90.5258,542102.821.4935.54

2010

84.1645,37385.721.4635.94

2011

114.1856,68078.921.4335.86

ドル/バレル円/S

原油CIF価格

為替レート平均硫黄分A P I 度

(円/ドル)(wt%)

0

5000

10000

15000

20000

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1973年

2,784

22.51

1975年

6,631

38.12

1980年

13,642

43.34

1985年

9,491

32.63

1990年

6,624

19.39

1995年

3,846

11.67

2000年

6,495

15.30

2005年

12,456

20.58

2008年

16,632

23.13

2010年

12,290

19.68

2011年度

15,165

21.76

総輸入金額に占める石油輸入金額の割合(%:右軸)

石油輸入金額(10億円:左軸)

29.5

23.7

133.8

59.8

27.157.6

28.4

26.0

42.2

29.5

41.1

111.2

126.0

49.5

298.2

35.5

175.148.6

137.8

61.128.4

61.5

34.3

22.1

15.6

226.6

27.1

110.7

95.5

18.4

68.3

出所:BP「世界エネルギー統計」(2012年版)

■世界の石油貿易量(2011年) 単位:百万t

アメリカカナダメキシコ中・南米ヨーロッパ&ユーラシア中東アフリカアジア・太平洋

14国内石油需給動向

Page 16: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

わ が 国 の エ ネ ル ギ ー 政 策

エネルギー政策基本法の制定

わが国のエネルギー政策はその時代のさまざまな要請に従って変

化してきました。1973年の第一次石油危機から40年あまりが経過

し、エネルギーの安定供給に加えて地球規模での環境問題への配

慮、さらには規制改革等を通じた公正な競争の促進、自由化、効率の

向上も求められています。

このようなエネルギーを取り巻く情勢を踏まえ、2002年6月、エネ

ルギー政策の大きな方向性を示し、さまざまな施策を総合的・整合

的に進めていくことを目的としてエネルギー政策基本法が制定され

ました。同法では「安定供給の確保(Energy security)」、「環境への適

合(Environment)」、およびこれらを十分考慮した上での「市場原理

の活用(Economic, Efficiency)」のエネルギー政策の3つの基本方針

(3E)が示されるとともに、国および地方公共団体等の役割分担が明

記されています。また、同法の下で、3Eの基本方針にのっとり、10年

程度を見通して、エネルギーの需給全体に関する施策の基本的な方

向性を安定的に示すものとして、「エネルギー基本計画」の策定が定

められています。

21世紀も石油は重要なエネルギー

石油業界は、エネルギー政策の3つの基本方針(3E)の同時達成の

ためには、①各エネルギーの特性を客観的・公平に評価し、わが国に

相応しい「エネルギーのベストミックス」を達成すること、②一次エネ

ルギー供給の最大シェアを占める石油の有効活用・効率的利用を進

めること、③原子力やバイオ等の新エネルギーの導入については、実

現可能性を重視すること、④「エネルギーのベストミックス」を達成す

るためには、各エネルギーの税制や備蓄等の競争条件をイコール

フッティングさせることが必要であることなどを主張してきました。

この結果、03年10月に策定されたエネルギー基本計画では、これま

でわが国のエネルギー政策の基本であった「脱石油」「脱中東」といっ

た目標が削除され、「石油は、経済性・利便性の観点から今後も重要な

エネルギー」と位置付けられ、石油の重要性が再認識されました。

また、この基本計画を受けて04年10月に策定された2030年のエ

ネルギー需給展望では、2030年において石油は一次エネルギーの

主役であること、さらに石油の効率的利用を進めるため、石油残渣

IGCCの導入を進めるべきことが示されるとともに、石油代替政策の

あり方、新エネルギーの定義を再検討することが明示されました。

エネルギー供給構造の高度化に向けて

08年に開催された北海道洞爺湖サミットなどを経て、低炭素社会

の構築へ向けて日本国内の議論も進められています。地球環境問

題への対応を巡り各国の動きは活発化し、これらによって、エネル

ギー業界にも大きな変革が迫られています。今後のエネルギー政策

は、近年の原油価格の乱高下に伴って求められてきたエネルギー安

全保障の確保の観点に加えて、地球温暖化問題の解決を同時に図

ることが求められています。

こうした中で、08年10月より、経済産業省は代エネ施策の見直しと

非化石エネルギーの導入拡大に向けた検討を開始しました。そこで

は、08年は石油のみならず化石燃料全般の価格が高騰したものの、

秋以降は世界的な金融不安の影響を受けて価格が下落するといった

不安定な状態が続く中で、エネルギーの太宗を海外に依存し、化石燃

料への依存度は80%を超える日本のエネルギー供給構造の脆弱性

が指摘されました。さらに、地球温暖化問題への対応、低炭素社会の

構築といった中長期的な対応の重要性、エネルギー政策基本法の基

本理念(3Eの一体的解決)を踏まえたエネルギー政策見直しの必要

性が提言されました。

審議会の議論を通じて、石油業界としては、①2030年も石油は一

次エネルギーの約4割を占める主要なエネルギーであり、政策のバッ

ファーではなく基幹エネルギーとして位置付けること、②石油資源の

安定供給確保、クリーンかつ効率的な利用に取り組むため、代エネ法

を廃止して全エネルギーを対象とした革新的技術による高度利用を

実現するための法体系を新設すること、③エネルギーのベストミック

スを達成するため、税や支援制度など競争条件の公平化を図ること、

を要望してきました。その結果、09年1月に取りまとめられた報告書

には、わが国として「低炭素社会」を実現させるための基本方針とし

て、①石油を単に抑制することを目的とした代エネ政策の見直し、②

エネルギー政策基本法の基本理念に基づき各エネルギーの特性を

客観的に評価し、これに応じた供給構造の高度化を進めること、③エ

ネルギー間の競争条件の公平性に配慮することなどが指摘されてお

り、石油業界としても極めて有意義なものとして評価しています。

取りまとめを受けて、09年7月、石油依存度の低減のみを目的とし

た代エネ施策を見直して代エネ法の「石油代替」概念を撤廃し(代エ

ネ法の改正)、エネルギー供給事業者に対する誘導的規制により①革

新的エネルギー技術、非在来型資源開発等の推進、②非化石エネル

ギー(原子力、水力、地熱、新エネルギー等)の導入拡大、③化石資源

(原油、天然ガス、石炭等)の高度利用・有効利用の推進、といった取り

15 わが国のエネルギー政策

Page 17: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律

(エネルギー供給構造高度化法)

エネルギー供給事業者による取組みの促進の必要性

エネルギー供給事業者(電気、石油、ガス事業者)による、①非化石エネルギー源の利用、②化石エネルギー原料の有効な利用を促進する。

・ 太陽光、原子力等の非化石電源を2020年までに50%以上とする等、 非化石電源の利用を拡大することを義務づけ (電気事業者)・ 太陽光発電による電気の利用に係る適正な対価での買取りの義務付け (電気事業者)・ バイオ燃料・バイオガスの利用を義務づけ (石油事業者、ガス事業者)・ 原油や天然ガスの有効な利用を義務づけ (石油事業者、ガス事業者)

技術開発の促進の必要性

(例) ・ 水素社会構築に向けた、水素の製造や貯蔵、燃料電池に関する技術開発 ・ 非在来型資源(メタンハイドレートやオイルサンド)に関する技術開発 ・ 石油残渣を高効率に分解するための技術開発 ・ ガス化複合発電(IGCC)に関する技術開発 ・ 木質等、セルロース系バイオマスの活用に関する技術開発

基本方針(経済産業大臣が策定)

判断基準(特定のエネルギー供給事業者へ

①、②を義務づけ)

計画作成・提出(一定規模以上のエネルギー供給事業者が対象)

勧告・命令※※判断基準に照らして取組みの状況が

著しく不十分な場合に措置

石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(代エネ法)等の一部を改正する法律

石油代替政策を見直し、開発・導入を促進する対象を「石油代替エネルギー」から「非化石エネルギー」(新エネ、原子力等)に変更する。

具体的な措置の例

工場または事業場において導入すべき非化石エネルギーについて、事業者に対する導入の指針を定め、公表する。(例) ・ 事業者と地方公共団体が連携して、大規模太陽光発電(メガ・ソーラー)の建設を促進すること。 ・ 港湾、鉄道、空港などの公的施設において、太陽光発電等新エネルギーの導入をより一層促進すること。

組みを規定する新法(エネルギー供給構造高度化法)が成立しまし

た。これは、エネルギー供給事業者(電気、ガス、石油事業者)に対し

て、非化石エネルギー源の利用を拡大するとともに、化石エネルギー

原料の有効利用を促進することを目的としています。具体的には、エ

ネルギー供給事業者が取り組むべき事項について、10年7月、化石

エネルギー原料の有効利用の促進に関する判断基準が告示されまし

た。石油に関しては、わが国の重質油分解装置の装備率(10年時点

10%程度)を13年度までに13%程度まで引き上げることを目標とし

て、石油精製各社は、現状の装備率に応じた、3段階の改善率を達成

することが義務付けられました。これにより、石油精製各社は重質油

分解装置の装備率向上のため、同装置の新設・増設、または常圧蒸留

装置の削減が求められることとなり、これに加えて設備の運転面の改

善等、技術開発等について取り組むこととなりました。

エネルギー政策の再構築〜東日本大震災以降のエネルギー政策について〜

近年は、原油価格の高騰など世界のエネルギー情勢は厳しさを

増し、アジア諸国を中心としたエネルギー需要の増大、資源国におけ

る資源ナショナリズムの高まりなど大きな構造変化が起きています。

加えて、地震やハリケーンなど自然災害、原子力発電所事故によるエ

ネルギーの安全性への見直し、投機的な資金の流入、テロの懸念、イ

ランの核問題といった中東諸国を取り巻く不安定要因による影響も

深刻化し、エネルギー価格は大きく変動しました。その中で、エネル

ギー安全保障への関心が世界的に高まり、各国ではエネルギー安全

保障を主軸としたエネルギー国家戦略の再構築を進めています。

こうした状況を背景として、わが国は、10年6月に第二次改定が行

われたエネルギー基本計画の下でエネルギー政策を推進する一方、

11年3月11日に発生した東日本大震災や、福島原子力発電所の事故

といったかつてない事態に直面しました。

このような状況下、東日本の復興を支え、震災前からわが国が直面

16わが国のエネルギー政策

Page 18: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

していた諸課題に対応し、日本の再生に向けた取り組みを再スタート

するために、11年5月17日に、政府は、日本再生の方針を提示した「政

策推進指針〜日本の再生に向けて〜」を閣議決定し、その中で、「新成

長戦略実現会議」において、電力制約の克服、安全対策の強化に加

え、エネルギーシステムのゆがみ・脆弱性を是正し、安全・安定供給・

効率・環境の要請に応える短期・中期・長期からなる革新的エネル

ギー・環境戦略を検討することを決定しました。

これを受け、同年6月7日に開催された新成長戦略会議において、

原子力発電への依存度を2030年には5割とするとした現行のエネル

ギー基本計画を白紙で見直すべき状況にあること、経済成長と国民

生活の安定を図るためのエネルギーの選択は、常に、また、どの国で

も重要課題であること、白紙からエネルギー・環境戦略を見直し、新

たな合意形成を急がねばならないこと、の三点が改めて確認され、国

家戦略担当大臣を議長とする「エネルギー・環境会議」を設け、省庁

横断的に、かつ、聖域なくエネルギー・環境戦略を練り直すこととなり

ました。

同会議において、7月に「革新的エネルギー・戦略策定に向けた中

間的な整理」をまとめ、原発への依存度低減のシナリオと、分散型エ

ネルギーシステムへの転換という大きな方向性を決定しました。ま

た、示された方向性、基本方針に基づき、グリーン成長戦略、原子力を

はじめとした各電源のコストの検証、新しい「エネルギー基本計画」

(望ましいエネルギーミックス)、温暖化対策、原子力政策に関する議

論を行いました。12月には、それぞれの論点整理等や検討結果を踏

まえ、エネルギー・環境会議として、「基本方針〜エネルギー・環境戦

略に関する選択肢の提示に向けて〜」を決定し、この方針を踏襲した

形で12月24日に閣議決定された「日本再生の基本戦略について」の

中でエネルギー・環境政策の再設計が明記されました。

その後、特に核燃料サイクル政策、エネルギーミックス、温暖化対

策について精力的に検討がなされ、12年6月には、①2030年までの

なるべく早期に原発比率をゼロとするゼロシナリオ、②原発依存度を

着実に下げ2030年に15%程度としつつ、化石燃料依存度の低減、

CO2削減の要請を円滑に実現する15シナリオ、③緩やかに原発依存

度を低減しながら、一定程度維持し、2030年の原発比率を20 〜

25%程度とする20 〜25シナリオが、国民が新たなエネルギーの選

択を議論するために必要な選択肢として提示されました。同選択肢に

ついて、パブリックコメント、意見聴取会、討論型世論調査等により、

短い期間ではあるものの、国民的議論が行われ、これを踏まえた形で

同年9月に、エネルギー・環境会議において、「革新的エネルギー・環

境戦略」が取りまとめられました。同戦略には、①原発に依存しない社

会の一日も早い実現、②グリーンエネルギー革命の実現、③エネル

ギー安定供給、④電力システム改革の断行、⑤地球温暖化対策の着

実な実施といったことが明記されました。また、同戦略を受けて、12

年末をめどにグリーン政策大綱、電力システム改革戦略、地球温暖化

対策の計画等について、取りまとめが行われることとされました。

その後、政権交代を受けて、新たなエネルギー政策の検討が待たれ

ているところですが、国家のエネルギー政策は、国民生活や企業活動

に直接影響する問題であり、わが国の一次エネルギーの太宗を占め

る石油業界としては、政府に対し、エネルギー政策の方向性について

地に足の着いた戦略を早急に策定・実行することを期待しています。

石油政策の見直し

東日本大震災を受けて、石油政策について一部見直しが行われ

ました。

具体的には、災害対応能力に優れたエネルギーである石油等の資

源・燃料の安定供給確保に向け、現状において先行して取り組む事

項を「資源・燃料政策に関する有識者との意見交換会」において検討

しました。

同意見交換会では、東日本大震災において、系統エネルギー(電

気・ガス)が一時的に供給不能となる中、分散型エネルギーである石

油に対し、各方面から多くの供給要請がなされ、石油は、そういった供

給要請に応え、国民生活の安全を守る「エネルギーのラストリゾート

(最後の砦)」の役割を果たした一方、災害時の石油の供給をより万全

にするための、サプライチェーンの強化策として、オイルターミナル、

SS等の災害対応能力の強化等、災害に備えた石油会社・石油ガス会

社間の共同体制の構築、災害対応としての石油・石油ガス備蓄等、情

報収集・情報提供体制の整備を行うことが決定されました。本意見交

換会の取りまとめについては、石油連盟として、緊急時の石油供給に

おける官民の役割分担や連携の強化、情報収集体制整備や出荷基地

災害対応化、国家製品備蓄の拡充や、健全なサプライチェーンを維

持するためには安定的な石油需要が必要であること等を主張してお

り、概ねその意見が取り入れられた内容となっています。

11年10月、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会において、

わが国の望ましいエネルギーミックスおよびエネルギー政策の改革

の方向性について検討が開始されたことなどを受けて、石油業界とし

ては、5次にわたり基幹エネルギーとしての石油の重要性を主張し、

提言を行ってまいりました。そういった中、12年9月に取りまとめられた

「革新的・エネルギー環境戦略」においては原子力や再生エネルギー

中心の記述となり、石油については十分に検討がなされていないば

かりか、その前提となった、国民に提示された選択肢のシナリオに、重

油ボイラーの原則禁止、中央市街地へのガソリン車等の乗り入れ規

制など、石油のサプライチェーンを毀損させ、緊急時対応を脅かしか

ねない非現実的な対策が例示されたこと等は非常に残念です。一

方、総合資源エネルギー調査会第30回基本問題委員会において、エ

ネルギー基本計画の骨子として議論された「エネルギーに関する今

17 わが国のエネルギー政策

Page 19: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■部門別最終エネルギー消費の見通し 単位:原油換算百万S

1990年度 2005年度 2011年度2020年度 2030年度

現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース 現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース

実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比

最終消費計 359 100% 413 100% 375 100% 421 100% 401 100% 375 100% 424 100% 391 100% 346 100%

産   業 181 50% 182 44% 161 43% 180 43% 180 45% 177 47% 179 42% 179 46% 174 50%

民   生 95 27% 134 32% 127 34% 149 35% 134 34% 121 32% 154 36% 130 33% 103 30%

家  庭 43 12% 56 14% 53 14% 61 14% 56 14% 52 14% 66 16% 56 14% 47 14%

業 務 他 52 15% 77 19% 73 20% 88 21% 78 20% 68 18% 87 21% 74 19% 56 16%

運   輸 83 23% 97 24% 87 23% 92 22% 86 22% 78 21% 91 22% 82 21% 69 20%

■一次エネルギー供給の見通し 単位:原油換算百万S

1990年度 2005年度 2011年度2020年度 2030年度

現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース 現状固定ケース 努力継続ケース 最大導入ケース

一次エネルギー国内供給 508 587 545 627 596 553 637 590 515

エネルギー別区分 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比 実数 構成比

石     油 265 52% 255 43% 234* 43% 227 36% 215 36% 190 34% 220 35% 204 35% 168 33%

L   P   G 19 4% 18 3% — — 18 3% 18 3% 18 3% 18 3% 18 3% 17 3%

石     炭 85 17% 123 21% 120 22% 128 20% 120 20% 107 19% 131 21% 119 20% 92 18%

天 然 ガ ス 54 11% 88 15% 127 23% 114 18% 103 17% 89 16% 112 18% 94 16% 71 14%

原   子   力 49 10% 69 12% 23 4% 99 16% 99 17% 99 18% 107 17% 107 18% 107 21%

水     力 22 4% 17 3% 19 3% 19 3% 19 3% 19 3% 19 3% 19 3% 20 4%

地     熱 0 0% 1 0% 1 0% 1 0% 1 0% 1 0% 1 0% 1 0% 2 0%

新エネルギー等 13 3% 17 3% 21 4% 22 3% 22 4% 30 5% 29 5% 29 5% 38 7%

*2011年度の石油にはLPGを含む 出所:経済産業省/総合資源エネルギー調査会需給部会「長期エネルギー需給見通し(再計算)」(2009年8月)等

後の重点施策」において、石油の災害時の有効性等の重要性が指摘

されている点や石油火力発電を含め、わが国の電源ミックスを実現

するとした点、石油精製業の国際競争力・経営基盤強化の方針が示

された点について明記されたことは、高く評価される点です。また、石

油の安定需要確保の具体的対策や、石油火力発電へのリプレース、

エネルギーのボーダーレス化に向けてのガス事業の規制改革につい

て、早期に検討に着手することが望まれます。

石油の災害対応能力等のエネルギーとしての優位性、必要性は変

わることはありません。石油業界として、わが国のエネルギー政策を

考える上で、真に国民の利益となるよう、引き続き石油の有効活用を

踏まえた、わが国にとってのエネルギーベストミックスを主張してい

きます。

エネルギー需給実績(2011年度:速報)

2011年度の最終エネルギー消費は、生産量の減少や節電効果等

により、前年度比2.9%減となりました。前年度比で見ると産業部門が

4.9%減、民生部門が1.4%減、運輸部門が1.3%減となっています。

この結果、最終エネルギー消費合計では、10年度は04年度以来6

年ぶりに前年度を上回る結果となりましたが、11年度は再び減少に

転じました。

これに対して、一次エネルギーの国内供給合計は21,108PJ(ペタ

ジュール)、原油換算で5億4,459万Sと前年度比4.3%減となりまし

た。その内、石油は9,089PJ(原油換算2億3,450万S)で、前年度比

2.9%増となっています。

供給に占めるシェアでは、原子力が前年度の11.3%から4.2%、石

炭が前年度の22.5%から22.1%へ減少した一方、石油が前年度の

40.1%から43.1%、天然ガスが前年度の19.2%から23.2%へ増加し

ています。原子力の供給量が大幅に減少したため、火力発電が増加

し、天然ガスと石油の供給量が増加しました。しかしながら石油に次ぐ

一次エネルギーである天然ガスにおいてもそのシェアは石油の半分

程度に過ぎず、今後とも石油の安定需要による安定供給の維持がわ

が国のエネルギーセキュリティの確保において極めて重要です。東日

本大震災では、電気・ガスが使用できない中、石油は被災地の復興と

電力の安定供給を支えるエネルギーとして活躍しました。特に、他電

源の停止や猛暑・厳冬などの緊急時にバックアップ電源の役割を果

たしてきた石油火力は、系統電源の安定供給における最後の砦とし

て位置付け、バランスの良い電源構成を実現することで平時から安

定的な需要を確保することが重要となります。加えて、電気以外で代

替できる暖房・給湯部門においては、分散型エネルギーであり緊急

時対応力の強い石油の利用を維持・推進すべきです。

18わが国のエネルギー政策

Page 20: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

0 100 200 300 400 500 600

2010

2011

2000

1990

1980

1975

1973年度

単位:原油換算百万S、%■一次エネルギー供給(総供給)の推移

出所:経済産業省「総合エネルギー統計」(注): 1. 経済産業省は、製造部門の重油補正に係わる見直しを1990年に遡及して修正を行ったため、1990年以降のデータは前年までの資料から変更されている 2. 四捨五入の関係により100%にならない場合がある

0.6

4.1

1.0

41615.5 77.4

1.5

1.5

5.3

0.9

39616.473.4

2.5

1.1

42966.1 16.9 6.1 4.7 5.2

2.6

52157.1 16.7 10.2 9.3 4.1

60950.8 18.1 13.0 12.2 3.3 2.6

59743.7 21.6 17.3 10.8 3.1 3.5

56646.0 21.4 21.4 4.0 3.3 3.8

新エネルギー等

水力・地熱

原子力

天然ガス・LNG

石炭

石油(LPGを含む)

0 100 200 300 400

2010

2011

2000

1990

1980

1975

1973年度

単位:原油換算百万S■最終エネルギー消費の推移

出所:経済産業省「総合エネルギー統計」など(注):四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある

286産 業 188 民 生 52 運 輸 47

286165 61 59

271168 53 50

358180 95 83

412186 125 101

386169 128 89

375161 127 87

年間発電電力量0 2000 4000 6000 8000 10000 12000

2011

2010

2005

2000

1995

1990

1985

1980年度

単位:億kWh、%■電源別発電電力量の推移

出所:電気事業連合会

17 46 5

0

15 17 4,850

27 27 10

0

22 14 5,840

27 29 10

0

22 12 7,376

34 19 14

0

22 10 8,557

34 11 18 26 10 1 9,396

31 11 26 24 8 1 9,889

29 8 25 29 9 1 10,064

11 14 25 40 9 1 9,550

地熱および新エネルギー(太陽光、風力など)水力

天然ガス

石炭

石油等

原子力

19 わが国のエネルギー政策

Page 21: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

単位:原油換算百万t、%■主要消費国の一次エネルギー消費構成比(2011年)

出所:BP「世界エネルギー統計」(2012年版)

世界計12,274.6百万t

石炭30.3

天然ガス23.7

石 油33.1

水力 6.4 再生可能エネルギー 1.6

原子力4.9

477.6百万t

石油42.2

36.1 34.1 36.4 19.8

17.7

70.4

4.5

13.3

55.7

5.7

25.3

21.38.0

14.9

41.2

石炭24.6

15.6

天然ガス19.9

36.4

原子力7.7

198.2百万t242.9百万t

306.4百万t

685.6百万t

2,613.2百万t

2,269.3百万t

水力4.0

再生可能エネルギー1.5

石油36.7

石炭22.1

天然ガス27.6

原子力8.3

水力3.3

再生可能エネルギー 2.0

3.3

7.90.7

1.8

4.2

3.7

7.6

0.0

1.4

5.40.7

0.7

6.0

アメリカ中国ロシアドイツフランスイギリス日本

■世界の国別石油消費量の推移 単位:千バレル/日(%)

国・地域    年 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2011

日     本 4,435 (7.6) 5,305 (8.1) 5,784 (8.3) 5,530 (7.2) 5,327 (6.3) 4,413 (5.0) 4,418 (5.0)

中     国 1,810 (3.1) 2,255 (3.4) 3,395 (4.9) 4,766 (6.2) 6,944 (8.3) 9,251 (10.6) 9,758 (11.1)

アジア(日本・中国を除く) 3,535 (6.1) 5,360 (8.2) 7,996 (11.5) 9,877 (12.9) 11,122 (13.3) 12,793 (14.6) 12,974 (14.7)

ア メ リ カ 15,170 (26.0) 16,305 (24.9) 17,725 (25.5) 19,701 (25.7) 20,802 (24.8) 19,180 (21.9) 18,835 (21.4)

ド   イ   ツ 2,670 (4.6) 2,710 (4.1) 2,882 (4.1) 2,746 (3.6) 2,592 (3.1) 2,445 (2.8) 2,362 (2.7)

フ ラ ン ス 1,790 (3.1) 1,910 (2.9) 1,893 (2.7) 1,994 (2.6) 1,946 (2.3) 1,761 (2.0) 1,724 (2.0)

イ タ リ ア 1,730 (3.0) 1,930 (2.9) 1,987 (2.9) 1,930 (2.5) 1,798 (2.1) 1,532 (1.8) 1,486 (1.7)

イ ギ リ ス 1,630 (2.8) 1,760 (2.7) 1,757 (2.5) 1,704 (2.2) 1,806 (2.2) 1,588 (1.8) 1,542 (1.8)

ロ   シ   ア 4,910 (8.4) 5,015 (7.7) 3,025 (4.4) 2,698 (3.5) 2,621 (3.1) 2,804 (3.2) 2,961 (3.4)

中     東 2,980 (5.1) 3,395 (5.2) 4,240 (6.1) 5,021 (6.6) 6,365 (7.6) 7,890 (9.0) 8,076 (9.2)

そ   の   他 17,765 (30.4) 19,535 (29.8) 18,822 (27.1) 20,638 (26.9) 22,602 (26.9) 23,782 (27.2) 23,898 (27.1)

世   界   計 58,425(100.0) 65,480(100.0) 69,506(100.0) 76,605(100.0) 83,925(100.0) 87,439(100.0) 88,034(100.0)

出所:BP「世界エネルギー統計」(2012年版)

20わが国のエネルギー政策

Page 22: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石 油 備 蓄 と 新 た な 緊 急 時 対 策

わが国の石油備蓄制度の生立ち

1963年12月、産業構造審議会総合エネルギー部会は、前年の

OECD勧告(石油需要60日分の備蓄を保有すべきこと)を受けて、

「一定の量の石油備蓄を行っておくことは、一時的な供給不足に対し

て需給の不均衡を是正し、供給先の転換を行うまでのつなぎ対策と

してエネルギー供給の安全保障の要請に合致する」として、石油備蓄

の必要性を提言しました。

67年には、第三次中東動乱が勃発、すでに一次エネルギーの65%

を石油に依存していたわが国では危機意識が急速に高まり、71年の

総合エネルギー調査会石油部会の中間報告では、74年度末までに

60日備蓄を達成するため、財政・金融面での助成措置として石油対

策特別会計の設置が必要とされ、72年度から実質的にわが国の石油

備蓄制度がスタートすることになりました。当時、政府は、国の助成措

置を前提として民間企業に石油備蓄を行わせることが適切であると

判断し、①備蓄原油の購入資金に対する長期低利融資、②石油貯蔵

施設に対する開銀融資、③タンクの割増償却措置が講じられました。

73年には、第一次石油危機が発生しましたが、当時の一次エネル

ギーの実に77%が石油であり、国民生活は極めて大きな影響を受け

ました。このため、74年の総合エネルギー調査会石油部会中間取りま

とめでは、「60日分の備蓄水準は勿論のこと、さらに90日分まで計画

的に増強するよう官民あげての備蓄増強体制の確立に努めるべき」と

され、次いで75年には、石油備蓄法が公布され、国が石油備蓄目標を

定め、石油精製、販売、輸入業者等に基準備蓄量以上の備蓄義務を課

し、わが国の石油の供給が不足する場合において石油の安定的な供

給を確保するために特に必要と認めるときには、期間を定めて基準備

蓄量を減少すること等が法制化されました。また、備蓄増強の促進に

伴う莫大な資金コストを助成するため、さらなる低利融資(利子補給幅

の拡大)、石油貯蔵施設への開銀融資比率の引上げ、共同備蓄会社へ

の石油開発公団(現JOGMEC)からの出資制度の創設などが行われ

ました。その後、79年の第二次石油危機への対応を経て、81年度初に

90日備蓄体制(民間備蓄義務量90日分)が確立されました。

また、78年には、国自らが石油備蓄についてイニシアティブを取る

べきとの認識から、石油公団(現JOGMEC)による国家備蓄が開始さ

れ、89年2月に3,000万S、98年2月には5,000万Sの備蓄目標が達

成されました。また、この間に国家備蓄基地が全国に10ヵ所建設され

ました。こうした国家備蓄の充実によって、89年度以降、民間備蓄は

毎年度4日分ずつ軽減されることとなり、93年度からは70日備蓄体

制(民間備蓄義務量70日分)となり、現在に至ります。

過去の石油緊急時への対応

1973年12月、第一次石油危機に際しては、石油の需給および価

格に関する緊急時体制の整備が図られ、石油需給適正化法と国民生

活安定緊急措置法(いわゆる緊急時2法)が成立、施行されました。石

油需給適正化法は、緊急時における①石油の生産計画等の提出、②

石油の使用制限、③石油の保有の指示、④石油のあっせん、⑤石油の

割当て・配給等が規定されており、一方、国民生活安定緊急措置法に

は、石油だけでなく国民生活に関わる物資全体を対象として、価格の

規制(標準価格の設定等)の実施等について定められています。こうし

て、74年1月には民生用灯油価格と民生用LPガス価格が国民生活安

定緊急措置法に基づき法規制され、同年2月には石油需給適正化法

を発動して石油の使用節減などが行われました。

79年の第二次石油危機に際しては、同年4月から翌80年8月にか

けて、備蓄義務者からの基準備蓄量の減少申請を順次受け入れるか

たちで民間備蓄の引き下げが実施されました。

第一次石油危機は日本のみならず世界的な混乱を引き起こし、当

時の西側18ヵ国は、74年11月、IEP(国際エネルギー計画)協定を締

結、緊急時に石油消費国間で石油を融通するため、協定加盟国は前

歴年の石油の純輸入量の90日分をそれぞれ保有する必要があるこ

ととし、さらにOECDの下部機構としてIEA(国際エネルギー機関)を

設置しました。

その後、IEAは加盟国の協調石油備蓄放出を3回実施し、わが国も

民間備蓄義務日数を引き下げて対応しました。91年の湾岸戦争時に

は、民間備蓄義務日数が74日間4日分引き下げられ、供給不安による

無用な混乱の回避に一定の成果を上げました。また、05年、米国南部

はハリケーン「カトリーナ」に襲われ、原油生産設備、製油所に甚大な

被害を被ったため、民間備蓄義務日数が約4か月間3日分引き下げら

れ、さらに元売各社は緊急的な措置として米国向けにガソリン7万S

を輸出しました。11年にはOPEC加盟国であるリビアにおいて内戦

が勃発、同国からの原油供給に支障が出たため、民間備蓄日数が約

6ヵ月間3日分引き下げられました。

21 石油備蓄と新たな緊急時対策

Page 23: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■過去の緊急時への対応

第一次石油危機 第二次石油危機 湾岸戦争第一次石油危機

1973年10月~1974年8月

77.4%(73年度)

21.5円(74年8月)

アラビアンライト公示価格3.9倍

73年10月3.0

74年1月11.6

第二次石油危機 湾岸戦争

第四次中東戦争を契機にアラブ石油輸出諸国の原油供給削減

・トイレットペーパーなどの買いだめ

・行政指導に基づく元売仕切・小売価格設定(74年3月~8月)

・石油業法に基づく標準額の設定(75年12月~76年5月)

・大口電力の使用規制、マイカー使用の自粛

・緊急時二法の施行(73年12月)

・石油備蓄法の施行(76年4月)

 67日分(73年10月末)民間備蓄:67日分国家備蓄:ゼロ

2億8,861万S(73年度)

77.5%(73年度)

1978年10月~1982年4月

71.5%(79年度)

アラビアンライト・スポット(当用買い)3.3倍78年9月12.8

80年11月42.8

イラン革命の進展によりイラン原油供給中断と湾岸におけるタンカー輸送の途絶

・民間備蓄の一部取り崩し(79年4月~80年8月)

・行政指導に基づく元売仕切価格の設定(79年3月~82年4月)

・官庁の暖房温度19度、冷房温度28度設定など省エネ対策を実施

・省エネルックが話題に

・省エネ法施行(79年6月)

・代エネ法施行(80年5月)

 92日分(78年12月末)民間備蓄:85日分国家備蓄:7日分

2億7,714万S(79年度)

75.9%(79年度)

1990年8月~1991年2月

58.3%(90年度)

ドバイ・スポット2.2倍

90年7月17.1

イラクによるクウェート侵攻。イラクに経済制裁。湾岸戦争へ発展

・原油の高値買いの自粛要請

・製品輸入を抑え、国内生産主体の供給体制へ移行

・行政指導に基づく元売仕切価格の設定/「月決め方式」(90年9月~91年4月)

・民間備蓄の一部取り崩し(4日分)

・官庁、民間の冷房温度28度設定、マイカーの経済運転など省エネ対策を施行

 142日分(90年12月末)民間備蓄:88日分国家備蓄:54日分

2億3,848万S(90年度)

71.5%(90年度)

当時の状況と政府の対応

備蓄水準

原油輸入量

原油の中東依存度

時   期

危機の経緯

一次エネルギー供給に占める石油の割合

原油価格上昇幅〔危機直前とピーク時の比較(ドル/バレル)〕

原油輸入価格期中最高値

(CIF、円/R)

ガソリン小売価格期中最高値(円/R)

90年9月37.0

ハリケーン「カトリーナ」被害ハリケーン

「カトリーナ」被害

2005年8月~2005年12月

50.0%(03年度)※

55.2円(81年8月) 27.6円(90年11月) 42.7円(05年10月)

114円(75年5月)(注1)

177円(82年12月)(注1)

142円(90年11月)(注2)

131円(05年10月)(注2)

ドバイ・スポット1.1倍

05年7月52.83

大型ハリケーン「カトリーナ」による米国メキシコ湾岸エリアの石油関連施設への被害

・ガソリン輸入の自粛要請

・民間備蓄の一部取り崩し(3日分)

・米国向け緊急輸出

 170日分(05年9月末)民間備蓄:80日分国家備蓄:90日分

2億4,181万S(04年度)

23%(73年度) 43%(80年度) 19%(90年度)わが国総輸入額に占める原油輸入金額のシェア(%)

20%(05年)

89.5%(04年度)

298円(74年8月) 246円(82年4月) 128円(90年11月)為替レート(円/ドル)

113円(05年10月)

05年9月56.54

※熱量換算による比較

(注):1. 総理府統計局/小売物価統計調査(東京都区部) (注):2. 石油情報センター(全国/税込み)

22石油備蓄と新たな緊急時対策

Page 24: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石油備蓄と新たな緊急時対策

規制緩和後の石油備蓄体制

96年の特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)の廃止により、石油

製品の輸入が実質的に自由化されたことから、石油備蓄法についても

新たな輸入者の事業参入に対応した制度改正が行われました。

02年1月には、石油業法が廃止され、石油備蓄法は、石油備蓄義務

の履行の確保と同時に、緊急時対応の基盤強化を図るため、①石油

精製業・石油販売業等の届出制、石油輸入業の登録制の整備、②経

済産業大臣による国家備蓄放出命令の整備、③生産予定数量の増加

の勧告などについて改正され、名称も、石油の備蓄の確保等に関す

る法律に改められました。

05年、総合資源エネルギー調査会石油備蓄小委員会は、国家備蓄

と民間備蓄の役割の整理、備蓄水準について審議し、現在70日の民

間備蓄義務を60 〜65日程度まで引き下げると共に、エネルギーセ

キュリティの水準を下げないように、タイミングを見計らい国家備蓄

を増強すべき、とした報告を取りまとめました。さらに06年には、同調

査会の石油政策小委員会において、より機動的な石油備蓄制度の構

築が必要との観点から、①石油備蓄量の増強(国家備蓄の積み増しに

よる)、②原油による石油備蓄を補完する、機動性の高い国家製品備

蓄の導入が提言されました。これらの報告・提言のうち、国家製品備

蓄については、09年から、灯油が需要期の1日分備蓄されています。

07年、同調査会の次世代燃料・石油に関する小委員会は、石油の

消費量が増大しているアジア周辺諸国との備蓄国際協力の積極的な

推進や、わが国の備蓄石油を海外に直接放出することも視野に入れ

た緊急時における国際石油市場の安定化について検討しました。こう

した背景から、同年、日本・ニュージーランド両政府間で備蓄融通協

定が締結され、ニュージーランド政府が実施する「備蓄石油を緊急時

に買い取る権利」の入札にわが国の民間企業も応札可能となり、落札

する事例も出てきました。また、産油国が所有する原油を国内に貯蔵

し、平常時には産油国が商業的に活用し、緊急時にはわが国が優先的

な供給を受けられる、政府と産油国の共同プロジェクトも取り組まれ

ており、09年にはアブダビ国営石油会社、10年にはサウジアラビア

国営石油会社の原油の貯蔵が開始され、エネルギーセキュリティの

強化と、産油国との戦略的な関係の構築が期待されています。

災害を想定した備蓄制度の構築

2011年3月の東日本大震災において、石油業界は生産から流通

のすべての段階において業界を挙げて、災害に強い分散型エネル

ギーの特性を活かして安定供給に努めました。この経験から、石油

業界は、災害時の安定供給について、石油製品不足による混乱を抑

制し機動的で柔軟な備蓄制度とすべく、国家製品備蓄を通常の物

流・商流が失われた際の石油供給の最後の砦として積み増し、機動

性確保・品質維持のため、製油所等の操業在庫として保管(混合蔵

置方式)すべきこと、さらに、放出時の物流確保のために、備蓄管理

者と輸送会社の事前協力体制を構築し、 迅速性・確実性を高めるた

め、避難所・病院等の重要施設等へ直接供給できる体制を導入すべ

きこと等を提言しました。

12年、国は、石油の備蓄の確保等に関する法律を、海外からの石

油の供給不足時に加え、災害により国内の特定地域への石油供給

が不足する時にも国家備蓄石油を放出できるように改正し、国家製

品備蓄については、前述の灯油に加え、ガソリン、軽油、A重油の備蓄

を始めました。また、上記の法改正では、被災者への石油の供給を石

油元売会社が一致協力して行えるよう、石油元売会社に、全国10地

域毎に災害時の供給連携計画を予め協力して作成するよう義務付

け、災害時には、経済産業大臣が石油元売会社に対し同計画に係る

措置の実施を勧告することや、給油設備の規模が一定以上であるこ

となどの要件を満たすサービスステーション(SS)を災害時における

給油の拠点とするため、当該SSの設備状況などを石油販売業者が

国へ届け出るよう義務付けすることも盛り込まれ、国内の大規模災

害に対応した備蓄制度に改められました。

23

Page 25: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石油備蓄と新たな緊急時対策

■わが国の民間備蓄・国家備蓄の現状(2012年12月現在)

81日

民間備蓄

3,773万S

内需量の70日分

生産・流通過程で保有

原油約50%  製品約50%

精製業者、輸入業者等ただし、共同備蓄会社による代行が可能

①原油および製品の形で、大部分が製油所や油槽所 といった生産・流通過程で保有されていることから、 速やかに流通経路に供給できる利点がある。②原油の調達動向や石油製品の需要動向に応じて、 弾力的な取り崩しが可能。③取り崩しによるアナウンスメント効果は国備に比べて弱い。

103日

国家備蓄

4,783万S

5,000万S(原油ベース、98年2月達成)

封印方式

①国家石油備蓄基地 ②民間タンク(借上げ)製油所、基地、油槽所などの民間タンク

原油99.5%  製品0.5%

①国家備蓄会社(国備の約2/3) (全国で8社・10基地)②民間石油企業(国備の約1/3) (民間タンクを借上げ、管理を民間企業に委託)

①備蓄原油の放出を国の判断で行うことから、市場へ の供給が確実に増加し、国家意思を貫徹させるとい う面で、大きなアナウンスメント効果が期待できる。②機動性については、民備に比べて劣るが、基地など の民間タンクや一部の国家備蓄基地の備蓄原油は 速やかな放出が可能。

備蓄日数

備蓄量(製品換算)

備蓄目標

保有形態

保有場所

①第二次石油危機(79年3月~80年8月)②湾岸危機(CERM対応)(91年1月~3月)③ハリケーン「カトリーナ」被害(05年9月~12月)④東日本大震災対応(11年3月~5月)⑤リビア情勢対応(11年6月~12月)

なし(放出訓練に伴う入替えのみ)放出(取り崩し)事例

石油購入資金、タンク建設などを支援 国が負担(石油石炭税)財政支援措置

製品コストの一部を構成(最終需要家への転嫁が期待)

財源となる石油石炭税は、製品コストの一部を構成(最終需要家への転嫁が期待)

コスト負担

保有構成

管理主体

備蓄石油放出(取り崩し)の特徴

2011 201212月末

2009 20102008200720062005200420032002200120001999199819971996199519901985198019791978年0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

■わが国の石油備蓄量・備蓄日数の推移(各年3月末現在)

出所:資源エネルギー庁

単位:万S

90日

90日5,954

7日 7日 31日 55日 76日 76日 78日 82日 85日 85日

88日6,048

81日

95日6,593

88日

128日6,949

97日

144日8,277

89日

157日8,816

81日

150日8,953

74日

156日9,332

79日

163日9,393

80日

164日9,141

79日

163日9,080

193日8,075

163日8,930

78日

89日

166日9,023

77日

91日

169日8,960

78日 74日 79日

84日

156日8,806

72日

(注): 1. 備蓄量は製品換算、備蓄日数は石油備蓄法方式 2. 合計の備蓄日数については、四捨五入のため積上げ日数と合わない場合がある

114日

185日8,556

81日

103日

184日8,670

81日

102日

199日8,301

84日

115日

177日8,614

77日

99日

174日8,902

79日

95日

168日9,043

78日

90日88日

166日8,743

74日

92日

東日本大震災

2011.3.14 ~ 3.21 ~ 5.20

リビア情勢 2011.6.24~2011.12.3170日→67日(3日分)

ハリケーン・カトリーナ2005.9.7~2006.1.470日→67日(3日分)

第2次石油危機1979.3~1980.3申請ベース

備蓄取崩事例

湾岸戦争1991.1.17~1991.3.682日→78日(4日分)

70日 → 67日 → 45日(3日分) (25日分)

24

Page 26: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石油備蓄と新たな緊急時対策

■わが国の石油緊急時対策の概要(2013年4月)

(注):上記以外に「買占め、売惜しみ防止法」に基づく緊急措置がある

石油備蓄対策 石油供給対策

平常時

準緊急時

緊急時

緊急事態宣言

石 油 需 給 適 正 化 法

主 要 物 資 の 割 当 ・ 配 給 制

石 油 製 品 の 割 当 ・ 配 給 制

国民生活安定緊 急 措 置 法

新石油備蓄法

「石油の備蓄の確保等に関する法律」民間備蓄

国家備蓄

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

石油備蓄の維持

石油事業者の把握(届出・登録)

備蓄石油の取り崩しによる安定供給の確保

石油備蓄の停止

備蓄石油の取り崩し

政府の指導・監督による業界の協力措置

(政府の指示・監督による業界の協力措置)

石油供給目標設定

石油生産・輸入計画などの指示

保有・売渡命令 輸入指示・命令

物資の保管指示

標準価格の決定

物資の生産指示

売渡・輸送命令

供給の斡旋・指導

石油使用制限措置

給油所の営業制限

重要物資需給対策石油消費抑制対策

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Page 27: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石油備蓄と新たな緊急時対策

■IEA(国際エネルギー機関)の機構と民間諮問機関(2013年1月現在)

緊急時問題常設作業部会(SEQ)

●緊急備蓄水準の策定・管理●緊急融通システムの管理発動

石油市場問題常設作業部会(SOM)

●平常時の情報収集●国際石油会社(メジャー)等との協議・協調

長期協力問題常設作業部会(SLT)

●加盟国・非加盟国に対するエネルギー政策(エネルギー源多様化、価格政策等)の勧告

エネルギー研究技術委員会(CERT)

●石油依存度低減のための省エネ技術●代替エネルギーの研究開発の促進等

地球規模エネルギー対話常設作業部会(SGD)

●主要生産国および消費国との協力・調整

●これら諸国への政策・技術の提言

石油産業諮問委員会(IAB)[緊急時問題]

石炭産業諮問委員会(CIAB)[石炭の利用拡大]

IEA加盟国(計28ヵ国)

エネルギー効率作業部会

事務局

理事会(GB) 民間諮問機関

諮問・協議

提言・助言

●オーストラリア ●オーストリア ●ベルギー ●カナダ ●チェコ ●デンマーク ●フィンランド ●フランス ●ドイツ ●ギリシャ ●ハンガリー ●アイルランド ●イタリア ●日本 ●韓国 ●ルクセンブルグ ●オランダ ●ニュージーランド ●ノルウェー ●ポーランド ●ポルトガル ●スロバキア ●スペイン ●スウェーデン ●スイス ●トルコ●イギリス ●アメリカ

■欧米諸国の石油備蓄制度の概要

出所:経済産業省/石油審議会資料など

民間備蓄

国家備蓄

協会備蓄

アメリカ フランス ドイツ

・公認石油業者(精製・輸入業者)・非公認石油業者(スポット輸入業者) (公認・非公認は保税倉庫資格の有無による)公認石油業者は前12ヵ月の消費量の26%(95日分)の義務(一部をCPSSPに委託)。非公認石油業者はすべてCPSSPに委託

EBV(石油備蓄協会)、民間企業に備蓄義務なし。すべての石油事業者はEBVのメンバーになる義務あり。生産・輸入量のシェアに応じ運営コストを負担(協会備蓄の欄参照)

民間企業に備蓄義務なし

エネルギー省(DOE)が行う戦略的石油備蓄(SPR)

・ガソリン・軽油、家庭用燃料油・ジェット燃料油・重油

・ガソリン・軽油、家庭用燃料油・重油

10億バレル

地下備蓄(岩塩ドーム)

目標備蓄量

備蓄の方法

備蓄実施主体

備蓄量

備蓄の方法

EBV(石油備蓄協会)戦略石油備蓄専門委員会(CPSSP・92年設立)が費用を徴収し、安全備蓄管理会社(SAGESS・88年設立)が備蓄石油を管理

備蓄義務者および義務量

備蓄義務対象油種

備蓄実施主体

民間備蓄義務(民間備蓄分)のうちSAGESS備蓄が500万t、CPSSP備蓄は民間石油会社へ400万t委託

前年純輸入量または過去3年平均の生産・純輸入量の90日分のいずれか高い方

・ガソリン 20%・中間留分 58%・ジェット燃料油 7%・重油 7%・原油 8% (原油は岩塩ドームに備蓄)

・原油 40%・製品 60%EBV所有タンク 90%(うち約60%は岩塩ドーム)民間タンクの賃借10%(内容物も貸借)

26

Page 28: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

わ が 国 の 石 油 開 発

◎Mitsui E&P uk◎Idemitsu Petroleum UK

Idemitsu E&P Shetland◎Norske AEDC

◎出光スノーレ石油開発◎Nippon Exploration

& Production UK◎CIECO Exploration and

Production UK◎Marubeni Oil & Gas(U.K)

◎CIECO Energy (UK)INPEX UK

◎Summit Petroleum

Mitsui E&P Poland

アラビア石油◎アブダビ石油

◎合同石油開発◎ジャパン石油開発

◎インペックスエービーケー石油◎Mitsui Gas Development Qatar

◎カタール石油開発◎JJI S&N

◎Mitsui E&P Middle Eastジャペックスガラフ

国際石油開発帝石

◎エムピーディーシー・ガボン◎帝石コンゴ石油

◎アンゴラ石油シエコナミビアオイルアンドガス

Mitsui E&P Ghana Ketaインペックス西コンゴ石油

Mitsui E&P Ghana Tano◎Equatorial Guinea LNG

帝国カビンダ石油

わが国の石油開発

わが国では、明治初期から新潟県を中心に石油開発が行われており、現在でも北海道、秋田県、新

潟県で石油の商業生産が行われています。また、現在も探鉱活動が継続的に実施されており、勇払油

ガス田、南長岡ガス田、岩船沖油ガス田(海底油ガス田)等が生産中です。石油と同時に産出される天

然ガスも、多くの地域で都市ガスや発電用燃料等として利用されており、地域経済に貢献していま

す。しかしながら、わが国は世界第3位(2011年)の大石油消費国であり、国産原油は国内消費量の

0.4%、国産ガスは同じく2.8%(どちらも2011年度)に過ぎず、ほとんどを輸入に頼っています。

日本企業による海外での石油・天然ガスの「自主開発」は、一定量のエネルギー資源を長期安定的

に確保するのみならず、わが国と産油・産ガス国との間の相互依存関係の構築・強化につながること

や、産油国国営石油会社や国際石油資本(メジャー)等との事業連携の基盤が醸成されることもエネ

ルギー安全保障上大きな意義を持っています。現在、わが国企業は、中東、東南アジアをはじめ、アフ

リカ、南北アメリカ、オーストラリア、旧ソ連諸国と世界各地で140を超えるプロジェクトを手がけてお

り、その内約70で開発に成功し、石油・天然ガスを商業生産しています(2012年6月末現在)。わが国

企業が権益を有する石油・天然ガスの「自主開発比率」は、国内需要量の約23%程度に達してい

ます。

わが国石油・天然ガス自主開発のあり方

石油・天然ガスの探鉱・開発は巨額の資金と高度な技術を用いて高いリスクに挑戦する難しい事

業です。

海外で事業を遂行するためには、最初に鉱区権益を取得しなければなりませんが、有望鉱区取得

のためには産油・産ガス国の資源開発権へのアクセスおよび協力関係の構築等、国でしかできない

支援が必要です。また、わが国の石油・天然ガス開発企業の多くは歴史的に海外へ進出したのが遅

く、メジャーをはじめとする欧米諸国の企業に比べて資金力や技術力の点で相対的に劣っているた

め、国による各種の支援を受けつつ事業を行ってきました。主要な支援母体であった石油公団は

2005年4月に廃止され、以後、リスクマネー供給と研究開発等の機能は独立行政法人「石油天然ガ

ス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」に受け継がれています。さ

らに、様々な事業上のリスクを緩和するため、国際協力銀行

(JBIC)等による金融、独立行政法人「日本貿易保険(NEXI)」等

による貿易保険等の制度的支援も行われています。

このように、政府は石油・天然ガスを重要なエネルギーと位

置付けており、民間企業が活発な事業活動を展開できる環境

を整備する一方、企業は経営資源の効率的な投入・配分を

行って成果を上げていくという官民一体となった取り組みが

有効に機能し、わが国へのエネルギーの安定的な供給が確保

されることが期待されます。

27 わが国の石油開発

Page 29: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

アラビア石油帝石エル・オアール石油帝石スエズSOBインペックスリビアモエコリビア石油

◎ITOCHU Oil Exploration(Azerbaijan)インペックス北カスピ海石油◎インペックス南西カスピ海石油Inpex BTC PipelineITOCHU Oil Exploration (BTC)

◎MCX Gulf of MexicoJD Rockies ResourcesOsaka Gas Resources America◎Summit Discovery Resources◎Mid Continent Oil & Gas◎JX NOEX USA◎Teikoku Oil de Burgos◎JAPEX (U.S.)◎Teikoku Oil (North America)◎Mitsui E&P USA◎Mitsui E&P TexasMOEX Gulf of MexicoMOEX Oil & Gas TexasINPEX Gulf of Mexico◎JGC Exploration Eagle Ford◎JGC Energy Development (USA)

INPEX Ichthysインペックスババルスラル石油◎JX Nippon Oil & Gas Exploration (Australia)◎Japan Australia LNG(MIMI)Japan Australia LNG(MIMI Browse)◎アルファ石油インペックス西豪州ブラウズ石油コスモアシュモア石油インペックスマセラアラフラ海石油◎サウル石油◎インペックスチモールシーINPEX Oil & Gas Australia◎Mitsui E&P AustraliaJAPAN ENERGY E&P AUSTRALIAJAPAN ENERGY E&P JPDAOsaka Gas AustraliaOsaka Gas CruxOsaka Gas GorgonOsaka Gas Ichthys DevelopmentOsaka Gas Sunrise(PSC 19-20)

インペックス北西サバ沖石油インペックス南西サバ沖石油Mitsui E&P Australiaインペックス南東マハカム沖石油インペックス南マカッサル石油日本コールベッドメタン◎JX日鉱日石マレーシア石油開発◎JX日鉱日石サラワク石油開発◎ユニバースガスアンドオイル◎国際石油開発帝石◎インペックステンガ◎Indonesia Natural Gas Resources Muturi◎ケージーウィリアガール石油開発◎日石ベラウ石油開発◎ケージーベラウ石油開発◎MI Berau◎日本パプアニューギニア石油◎サザンハイランド石油開発マーレイ石油インペックス北マハカム沖石油ジャペックスブトンインペックスセラム海石油Nippon Oil Exploration(Niugini)モエコウエストパプア1石油モエコウエストパプア3石油JX日鉱日石サラワク陸上石油開発◎Energy Mega PratamaJX日鉱日石サバ深海石油開発ケージーバボ石油開発

出所:石油鉱業連盟(注):◎印は生産中の会社

日本カラボボ石油インペックス北ペルー石油◎ベネズエラ石油帝石スリナム石油

◎インペックス北カンポス沖石油インペックス北東ブラジル沖石油

◎Mitsui E&P Australia

◎Ravva Oil(Singapore)

Mitsui E&P Mozambique Area 1

出光オイルアンドガス開発モエコメランギン石油

◎日石ミャンマー石油開発◎三井石油開発

◎タイ沖石油開発◎日本ベトナム石油

◎ナトゥナ石油モエコベトナム石油◎モエコタイランド

モエコ南西ベトナム石油出光クーロン石油開発モエコカンボジア石油

◎Siam Moeco帝石コンソン石油

ジャペックス Block Aモエコツナ石油

JX日鉱日石半島マレーシア石油開発新日石クーロン石油開発◎Moeco International

JX日鉱日石開発

CIECO Exploration & Production (Australia)◎Mitsui E&P Australia

◎INPEX Gas British columbiaJGC Exploration canada◎カナダオイルサンド◎日本カナダ石油インペックスカナダ石油

◎サハリン石油ガス開発◎Sakhalin Energy Investment

■主なわが国石油開発会社の海外石油開発プロジェクト(2012年11月末現在)

28わが国の石油開発

Page 30: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

規 制 改 革 と 石 油 産 業

「石連週報」(「原油・石油製品供給統計週報」)のホームページhttps://stats.paj.gr.jp/

規制改革の進展

わが国の経済社会の国際化に合わせて石油関連の規制改革が進

展し、2001年末をもって石油業法が廃止されたことにより、石油産

業は名実ともに自由化されました。

わが国の石油産業に対する規制は、石油の重要性に鑑み、1962

年10月に制定された「石油業法」を基本法として、「安定供給」を最優

先に進められてきました。その後、石油業法を補完する法律として、

「石油備蓄法」、「揮発油販売業法(揮販法)」、「特定石油製品輸入暫

定措置法(特石法)」が制定され、行政指導を含め、石油の輸入・生

産・販売にわたる広範な規制が行われてきました。

しかし、わが国における規制改革が進み、内外価格差の解消が課題

となる中で、石油産業に対する規制のあり方についても見直しが求め

られるようになりました。その結果、87年から92年にかけて、石油業

法・揮販法に基づく行政指導・運用について一連の規制改革が実施さ

れ、96年4月の特石法の廃止以降、石油政策は「安定供給の確保」と

ともに、市場原理に基づく「効率的供給」の実現が目標となりました。

その後、石油審議会は、98年6月、今後の石油政策の方向性に関

して、01年の実施を目途に事業許可・設備許可などの需給調整規

制および標準額による価格規制の廃止などを骨子とする報告を取り

まとめました。

さらに、同報告を受けて、石油審議会は備蓄・緊急時対応のあり方

を検討し、99年8月、緊急時における具体的対応措置、国家備蓄原

油の増強などを提言しました。また、同報告では、「厳しい経営環境下

においても安定的に事業を営む強靭な石油産業の存在は、セキュリ

ティ対策上も極めて重要である」としています。

上記報告などを踏まえ、01年12月末に石油業法が廃止、さらに

石油備蓄義務の履行確保の強化などにより、緊急時対応のための基

盤強化を図るため、石油備蓄法の一部改正が行われ、02年1月から

新石油備蓄法(「石油の備蓄の確保等に関する法律」)が施行されまし

た。その結果、石油産業に対する主要な規制は、備蓄面から新石油備

蓄法、品質面から品確法(「揮発油等の品質の確保等に関する法律」)

に限られることとなりました。

このように規制改革が進展する中、脱石油政策の推進、人口の減

少、少子高齢化、さらには原油価格の高騰やリーマンショック以降の

景気の後退による省エネ意識の高まりもあって国内の石油製品需要

が減少し、精製能力の過剰が問題となりました。石油業界が自主的に

精製能力の削減に取り組む一方、「エネルギー供給構造高度化法」に

基づき重質油分解装置の装備率を一定程度以上に高めることが決め

られました。これにより石油各社は14年3月末の期限までに規制的手

法による精製能力削減を求められることになり、すでに一部精製能力

の削減や製油所の廃止が決まっています。

自由化後の環境変化

規制改革、特に特石法廃止を契機として、わが国の石油産業は、流

通市場において価格競争が激化したことなどにより、市況が低迷し、

企業収益が悪化するなど、厳しい経営を余儀なくされてきました。こ

のため、石油各社は、精製・物流部門の合理化・効率化や販売・管

理部門を中心とする大幅な人員削減、組織の見直しなど、経営全般に

わたるコスト削減に取り組んでいます。

また、特石法や石油業法の廃止といった規制改革を経て、生産・輸

入・販売の各段階における自由化が進展する中で、わが国の石油市

場は市場メカニズムに基づく事業活動がますます重要になっていま

す。市場メカニズムの導入は、本来、市場を通じた資源の適正配分が

なされることで生産・供給システムの効率化を促すことが期待され

ているわけですが、そのためには何よりも市場が有効に機能するた

めのインフラとして適切な情報が広く開示されていることが必要で

す。しかしながら、規制時代における石油に係わる需給情報は国が実

施している統計情報に限られており、かつ、これはマクロの経済動向

を把握するためのデータの収集・発表を目的としているため、市場メ

カニズムが有効に機能するための要件を兼ね備えた情報とは言いが

たく、特に迅速性の観点からテンポの早い石油需給状況を的確に反

映した情報という点で不十分な状況でした。

こうした状況のもと、03年1月、石油連盟では、正確性・迅速性・緻

密性を満たす適正な統計情報として、週単位で石油の供給状況を示す

データを収集・発表する「石連週報」(「原油・石油製品供給統計週報」)

をスタートさせました。その後、東日本・西日本別の生産などの供給

データおよび輸出データ、製油所の実質稼働率を順次追加するなどして

「石連週報」の更なる拡充を図っています。これによって、リアルタイム

の供給情報を市場に提供することで市場メカニズム機能を十分に活か

す環境整備を図り、透明な市場が構築されることを期待しています。

29 規制改革と石油産業

Page 31: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■石油関連規制と規制改革の推移

87年7月 二次精製設備許可の弾力化

89年3月 ガソリンの生産枠(PQ)指導の廃止

89年10月 灯油の在庫指導の廃止

90年3月 SS建設指導と転籍ルールの廃止

91年9月 一次精製設備許可の運用弾力化

92年3月 原油処理指導の廃止

93年3月 重油関税割当制度(TQ)の廃止

86年1月 特定石油製品輸入暫定措置法(特石法) ガソリン・灯油・軽油を一定秩序のもとで輸入を促進する観点から制定

77年5月 揮発油販売業法 ガソリンなどの安定供給と品質管理の徹底などを目的として制定

76年4月 石油備蓄法 石油の安定供給確保の観点から制定

62年7月 石油業法 原油輸入の自由化に対応、石油産業の基本法として制定

2002年1月 新石油備蓄法

2001年12月 石油業法の廃止(需給調整規制の廃止)

98年4月 有人給油方式のセルフSS解禁

97年12月 SSの供給元証明制度の廃止

97年7月 石油製品輸出承認制度見直し (包括承認制の導入・輸出の自由化)

2009年2月 品質確保法の一部改正 特定加工業者の「登録制」「品質確認義務」

2009年8月 エネルギー供給構造高度化法施行

96年4月 石油備蓄法改正

96年4月 品質確保法(揮発油販売業法の改正) ①強制規格、SQマークの導入 ②指定地区制度の廃止など

96年3月 特石法の廃止(石油製品の輸入自由化)

73年12月 緊急時二法国民生活安定緊急措置法/石油需給適正化法石油危機の経験を踏まえて制定

平常時年1960

2010年7月 同法に基づく化石エネルギー原料の有効利用の促進に関する判断基準告示 (重油分解装置の装備率を2013年度までに13%程度まで引き上げ)

2010年11月 同法に基づく非化石エネルギー源利用の判断基準告示 (2017年度までの揮発油に混和するバイオエタノールの利用目標量設定)

2012年11月 石油備蓄法改正

2010

1975

1985

1990

1995

2000

2005

1965

緊急時

第一段階の規制緩和

第二段階の規制緩和

エネルギー間の公平、平等な競争条件の整備確保

規制改革の進展に伴って今後ますますエネルギー間競争の激化が

見込まれる中、税制や備蓄義務等において石油は他のエネルギーに

比べて競争上著しく不利な扱いとなっています。

石油石炭税は03年4月より、エネルギー起源CO2排出抑制策の抜

本的拡充などエネルギー政策の見直しとエネルギー間における負担

の公平性を図るため、石炭を新たに課税対象に追加し、LNGと輸入

LPGへの増税がそれぞれ実施されました。エネルギー間の課税の公

平性に向けて一歩前進したと考えられますが、最終税率が適用され

る07年4月以降においても、石油が2,040円/Sであるのに対し、石

炭は700円/t(石油カロリー等価ベース:LNGは757円/S、LPGは

822円/S)となっており、依然として石油に対しては他のエネルギー

に比べて2倍以上の重い税負担が課せられています。

さらに、12年10月から地球温暖化対策のための税として、CO2

排出量に応じ、段階的に石油石炭税の課税が強化されることが決定

され、石油の税率は16年度には2,800円/S(LNG、LPGは1,860

円/S、石炭は1,370円/S)となる見込みです。石油業界として、既存

の1兆円を超す地球温暖化対策予算の精査が先決と主張していたも

のの、増税ありきで課税強化が決定されてしまいました。石油石炭税

は原油段階の課税であり、税の回収・負担はすべて石油会社の責任

となります。また、石油業界は市場原理に基づいた自由競争となって

おり、税を含めたコスト回収の仕組みがありません。石油消費に関わ

る税は、本来、最終消費者が負担することを前提としていますが、国内

需要が減少する中で、石油の担税力は限界に達していると考えられる

ことから、石油業界としては増税分を確実に回収できるような政策的

配慮が必要であると要望しています。

また、自動車燃料であるにも係わらず、ガソリン代替燃料であるア

ルコール燃料(アルコール100%)などの新燃料やCNG自動車に使

用される燃料(圧縮天然ガス)には、軽油引取税やガソリン税が課税さ

れておらず、課税の公平性を著しく欠くこととなっています。

30規制改革と石油産業

Page 32: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

規制改革と石油産業

石油備蓄については、石油危機以降、エネルギーセキュリティ対策

のひとつの柱としてその充実を図り、また、東日本大震災を契機に、国

内災害にも機動的に対応可能な備蓄制度となるよう備蓄法の改正が

なされるなど、大変有益な政策となっています。しかしながら、石油以

外の輸入エネルギー資源については、LPGは50日の備蓄義務があ

りますが、今後需要が伸びると考えられている天然ガスの備蓄は義務

化されていません。これはエネルギーの安定供給の確保に係わる問

題でもあり、今後早急に対応がなされる必要があります。

一方で、09年6月には、低炭素社会構築に向けた取り組みを進め

るため、エネルギー供給構造高度化法が成立、石油代替エネルギー

法も改正され、石油のみに過重な税負担を負わせることで代エネを

進めるこれまでの考え方は改められています。こうしたエネルギー政

策も踏まえつつ、エネルギー間の競争条件について、国民経済的に

見て有効な競争原理が働く公正なマーケット形成のため、イコール

フッティングを実現することが重要です。

石油産業再編への動き

メジャーの世界的な再編の流れや、国内金融業界の再編、さらには

特石法廃止後の国内石油業界の競争激化などを背景に、わが国石油

産業においても、石油精製・元売会社の再編に向けた動きが活発化

し、1999年4月の日本石油と三菱石油の合併を契機にして、過去に

ない規模とスピードで再編が進みました。その結果、2000年時点に

おいて、石油元売会社は「新日本石油・コスモ石油グループ」「エクソ

ンモービルグループ」「ジャパンエナジー・昭和シェルグループ」「出

光興産」の4グループを軸とした時代に入りました。

しかしわが国石油産業全体では依然として精製能力などの過剰問

題を抱えたままとなっており、再編後も2002年6月にエクソンモービ

ルグループ4社のエクソンモービル有限会社への合併・統合や、出

光興産が設備過剰問題を解消するため、03年4月に兵庫製油所を、

同年11月にはグループ会社の沖縄石油精製・沖縄製油所も廃止し、

一方で新日本石油との提携を精製部門まで拡大しました。

さらに07年頃になると、原油価格の高騰やアジアでの旺盛な石

油・石化需要を背景に、中東産油国企業との資本提携により中東産

油国との強固なパートナーシップの確立や、ブラジルや中国など外

国資本の参入の動きも見られました。

08年に入ると、原油価格高騰とエネルギー全体の競争激化を背景

に、新日本石油が08年10月に九州石油と合併し、さらに10年7月に

はそれまで上流から精製、物流、燃料電池、技術開発までの広範囲な

部門で業務提携していたジャパンエナジーと経営統合しJX日鉱日石

エネルギーが発足するなど、当初の4グループの枠組みから、更なる

合理化・効率化に向けた集約化・経営努力が行われました。

また、12年6月には、エクソンモービルジャパングループは、日本

国内における資本関係を変更し、新たに日本資本による東燃ゼネラル

石油株式会社を中心とする、東燃ゼネラルグループが始動しました。

再編後の合理化・効率化の進展

このような再編の進展に伴い、各社が保有する製油所、油槽所、給

油所などあらゆる分野におよぶ再整備が行われ、精製能力で見ると

2000年3月末の約535万バレル/日から13年3月末現在で約447万

バレル/日と約88万バレル/日の削減が行われ、過去13年間で約

16%削減されました。さらにエネルギー供給構造高度化法により石

油精製会社は生産設備の見直しを求められており、14年3月末の期

限までに製油所の閉鎖等により約55万バレル/日の削減が予定され

ています。

合併・集約化などによる経営効率化・合理化などによって、石油

精製・元売の従業員数は95年3月末には約36,000人でしたが、12

年3月末には20,000人を下回っており、過去17年で大幅に減少しま

した。

また総合エネルギー企業を目指して、電力やLNG、さらには燃料電

池や太陽光発電などの新エネルギーとして期待される分散型エネル

ギー分野に進出する石油会社が出てきています。また経営形態の合

理化・効率化が進展し、グループ企業群の持ち株会社化を進める企

業も出てきています。

このように、石油産業の将来展開としては、今後も需要減退が進む

と見られる石油事業の合理化・効率化を一層進めていく一方で、電

力などのエネルギー分野、新エネルギー分野への取り組みに加え、製

油所内の既存設備の有効活用を視野に入れた石化会社等異業種と

の高度な一体運営体制(コンビナートルネッサンス)の実現などを通

して、総合的なエネルギー産業への脱皮に向けた動きが加速してい

ます。

適正な流通市場形成が喫緊の課題

2008年7月、WTI原油価格は米国株式市場の低迷やドル安の進

展を背景に投機資金が原油市場等の商品市場に流入した結果、

ニューヨーク市場における原油価格の史上最高値となる145ドルを

超える値をつけました。しかし08年9月にリーマンショックが発生し、

世界経済の減速が明らかになると急速に値下がりし、08年末には

40ドル台と1/3以下の水準になりました。その後中国、インドなどア

ジアをはじめとする新興国による世界経済の緩やかな回復に加え、

中東地域の政情不安などもあって13年1月現在の原油価格は95ド

ル程度で推移しています。

31

Page 33: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

規制改革と石油産業

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

2012年3月末

1995年3月末

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,00065,000

2012年3月末

1995年3月末

0

350

400

450

500

550

2013年3月

2003年12月末

2000年3月末

■石油産業の生産設備・流通・販売施設などの合理化(一例)

生産設備(製油所の精製能力)

販売施設(SS) 人員(従業員)単位:万バレル/日 単位:ヵ所 単位:人

約535

約499

約447

60,421

37,743

36,363

19,425

■日本の石油元売会社の再編と提携関係(2013年3月現在)

石油元売会社:製油所を所有するか、石油精製会社と密接な資本関係がある等で製品売買契約を結び石油製品を仕入、自ら需要家に売るか特約店に卸売する会社(公式な定義はない)

※1 日本石油(当時)と出光興産は1995年に物流部門での提携をしている

※2 2012年6月1日に東燃ゼネラル石油(株)を中心とした新体制に移行(エクソンモービル(有)はEMGマーケティング(同)に社名変更)

出光興産 出光興産

日本石油日石三菱 新日本石油 JX日鉱日石

エネルギー2010年7月設立

三菱石油

大協石油

丸善石油 コスモ石油 コスモ石油

旧コスモ石油

九州石油

日本鉱業ジャパンエナジー

共同石油

昭和石油昭和シェル石油 昭和シェル石油

シェル石油

東燃ゼネラルグループ

エッソ石油

モービル石油

東  燃

ゼネラル石油

三井石油

太陽石油 太陽石油

三井石油

1999年4月合併 2002年7月社名変更

1986年4月合併

1992年12月合併

1985年1月合併

エクソンモービルグループ

エクソンモービル2002年6月合併

1999年10月精製・物流提携

1999年10月精製・物流提携

2002年12月精製提携※1

2008年10月合併

2010年4月統合

※2

東燃ゼネラル石油2000年7月合併

その結果、わが国の原油輸入価格(CIF)は、07年12月のリットル

当たり63円程度から08年8月には同92円程度まで上昇しました

が、12月には同32円程度まで下落、その後は上昇して12年12月

には58円程度となっています。

これに伴い、レギュラーガソリン価格(全国平均小売価格/消費

税・ガソリン税込み : 石油製品価格調査)は、08年1

月のリットル当たり154円から8月には同185円まで

上昇し、その後下落して12月には106円、その後再び

上昇に転じ、13年1月には151円となっています。

このように原油価格の変動に応じて、国内の製品

価格も変動しましたが、そのタイムラグなどにより石

油精製・元売会社や給油所を運営する販売会社の

収益が急速に悪化しました。これを受け、新日本石油

(現:JX日鉱日石エネルギー)や出光興産は08年

10月に従来の「卸価格月決め方式」に代えて週ごと

に東京工業品取引所(TOCOM)等市場価格にリンク

させたフォーミュラ(公式)によって卸価格をタイムリーに決定する

「新価格体系」を導入しました。

わが国の石油需要が減少していく中、元売・精製・販売業界は更

なる販売の質の向上、すなわち付加価値販売の強化と経営の効率

化に向けた「新たな質の創出」を徹底し、再投資可能な利益を確保し

32

Page 34: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

規制改革と石油産業

得る企業体質の確立や、適正な流通市場構築に取り組むことが喫緊

の課題となっています。

透明・公正なオープンマーケットの整備

わが 国 の 石 油 先 物 取 引は、1999年に東 京 工 業 品 取 引 所

(TOCOM※)にガソリンと灯油が上場されたことに始まります。そ

の後、中部商品取引所でもガソリンと灯油が上場され、続いて、

TOCOMで原油が、両取引所で軽油が上場されました。

近年の動向として、2005年5月に改正商品取引法が施行され、委

託者保護の強化、商品取引員に対する規制の見直し、アウトハウス型ク

リアリングハウスの設立等、市場の信頼性・利便性の向上が図られま

した。

TOCOMでは、石油価格の高騰に対して市場流動性を確保する

ため、原油については05年11月限から、ガソリン、灯油については

06年4月限から値幅制限を緩和し取引単位を100Sから50Sに引

き下げ、合わせて当業者の建玉制限を柔軟にできることとしまし

た。さらに、06年6月からは、制限値段を標準価格に応じた設定で

はなく、直近の一定期間の価格変動に対応した額としました。07

年10月からは、過去の一定期間の価格変動の最大値を基準とし、

到達する可能性が極めて低い制限値段を設定するとともに、当業

者の建玉制限が大幅に緩和されました。

一方、経済産業省の「工業品先物市場の競争力強化に関する研

究会」は、世界最高水準の電子システムの早期導入、取引時間の延

長・24時間化、値幅制限・建玉制限など取引ルールの緩和など、

利便性・信頼性の確保と競争力強化のための方策を検討し、07

年6月に報告書を取りまとめました。

石油業界としては、このように当業者にとって使い勝手の優れた

魅力的な市場設計を構築したTOCOMで会員資格を取得するな

ど、その本格的な利用を開始しようとしているところです。今後も、

透明性の高い価格指標の提供機能をもつ先物取引の流動性が高

まることで、より公正・透明かつ客観的な市況が形成され、当業者

がリスクヘッジツールとして活用できる使い勝手の良い制度が整

備されていくことを期待しています。

なお、TOCOMは石油業界の要望を反映した制度改正(取引数

量の拡大等)を行った上で、10年5月に、06年2月に立会い休止

となっていた軽油先物取引を、約4年ぶりに再開しました。これによ

りTOCOMにおける石油先物はガソリン、灯油、軽油と主要製品が

揃うことになりました。※TOCOMは、2013年2月に農産物市場を開設し、東京商品取引所(略称はTOCOMのまま)

となった。

関連エネルギー政策の動向

電気・ガス事業においても、規制緩和を通じた市場メカニズムの

導入による供給効率化が進められてきました。

電気事業については、1995年から卸供給事業としてのIPP

(Independent Power Producer)が認められ、2000年からは大

口需要家(特別高圧需要家:電圧2万ボルト・契約電力2,000kW以

上)に対する小売の自由化(参入規制・価格規制・供給義務なし)が

実施されるとともに、その前提となる送電線利用に係わる接続供給

(託送)が制度化されました。さらに、小売全面自由化を視野に入れつ

つ、04年から500kW以上の需要家、05年からすべての高圧需要家

(50kW)に小売自由化範囲を拡大、全国規模の卸電力取引市場を創

設するとともに、新規参入を促進し、有効な市場競争を実現する観点

から、送配電部門の公平性・透明性の確保措置(部門間の情報遮断・

内部補助の禁止など)、系統利用に関わる託送料金の一本化・同時

同量ルールの緩和などの具体的な検討が行われました。

3次にわたる電気事業制度改革ののち、06年には、これまでの制

度改革の結果が評価・検証されました。それらを踏まえ、07年の電

気事業分科会では、現時点において小売まで含めた自由化範囲の拡

大を行うことは適切ではなく、既存の自由化範囲において、卸電力市

場の活性化や託送制度のあり方などの競争環境整備に資する制度

改革を具体的に検討・実施するべきとされ、その後、定期的に効果を

検証、5年を目途に需要家選択肢の確保状況等について再検証を行

い、その結果を踏まえて小売自由化範囲の拡大の是非について改め

て検討を行うとされています。

また、ガス事業についても、95年から年間のガス使用量200万

m3、99年からは100万m3を超える大口需要家に対する供給が自

由化され、大手ガス事業者(4社)には接続供給(託送)が義務付けら

れました。電気事業と同様にガス事業も更なる規制緩和が検討さ

れ、04年から年間50万m3、07年から年間10万m3以上の需要家

に小売の自由化範囲を拡大することとなり、すべての導管保有者・

運営者(一般ガス事業者およびガス導管事業者)に対する託送の義

務付け、託送料金の適正性を確保するための会計整理など託送制

度の透明性・公平性を確保するための制度設計が行われました。

その後、11月からは今後のガス事業制度改革のあり方を検討す

るため、自由化範囲拡大議論に向けた課題整理、事業者間競争やエ

ネルギー間競争が一層促進され、消費者利益の増進という目的が達

せられているかどうかなど、ガス事業を取り巻く環境変化を踏まえた

制度全体の見直しや検証をテーマとして議論が進められました。

その後、東日本大震災等を踏まえて、総合資源エネルギー調査会

基本問題委員会において、今後のわが国のエネルギー構成のあり方

の基本的方向性を示す中で、天然ガスシフトの推進、分散型の次世代

33

Page 35: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

規制改革と石油産業

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120

140

■わが国の原油CIF価格とガソリン小売価格(消費税・ガソリン税抜き)の推移

出所:石油情報センター等

単位:円/R

96.3末 特石法廃止 01.12末 石油業法廃止

ガソリン小売価格(消費税・ガソリン税抜き)

全国平均

原油CIF価格

13年1月

12年7月

12年1月

11年7月

11年1月

10年7月

10年1月

09年7月

09年1月

08年7月

08年1月

07年7月

07年1月

06年7月

06年1月

05年7月

05年1月

04年7月

04年1月

03年7月

03年1月

02年7月

02年1月

01年7月

01年1月

00年7月

00年1月

99年7月

99年1月

98年7月

98年1月

97年7月

97年1月

96年7月

96年1月

95年7月

95年1月

94年7月

94年1月

93年7月

93年1月

92年7月

92年1月

91年7月

91年1月

90年7月

90年1月

■電力とガスの小売自由化スケジュール自由化時期 電力(kW) ガス(m3) 主な対象

(卸電気事業の参入許可撤廃)

(注):自由化対象の数字は契約電力と年間契約ガス使用料、   〈 〉内は全国の使用料(ガスは大手10社のガス販売量)に占める自由化対象の割合

2000以上〈26%〉

大工場・ビル

500以上〈40%〉

50万以上〈44%〉 中工場・ビル

50以上〈63%〉

小工場・ビル10万以上〈59%〉

全面自由化を検討家庭・個人商店

200万以上〈36%〉

100万以上〈40%〉

3月

12月

11月

3月

4月

4月

4月

1995年

1999年

2000年

2004年

2005年

2007年

2016年頃全面自由化

電力システムの実現について、12年1月に天然ガスシフト基盤整備

専門委員会、また、同年2月には電力システム改革専門委員会におい

て検討が開始されました。

天然ガスシフトについては、12年6月に取りまとめられた報告書に

は、天然ガスシフトを進めていく上での大前提としての供給基盤整備

のあり方として、広域天然ガスパイプライン等の整備の意義、課題、整

備コストの低減や負担主体のあり方等について整理されています。広

域天然ガスパイプライン等の整備は民間事業者の負担で整備すべき

であり、政府の関与は、規制緩和による整備コスト低減を目指すことが

妥当との方針が示され、ガス事業制度改革の必要性について言及して

います。石油業界としては、消費者利益の最大化に向けたガス事業の

規制改革の速やかな実行と、東日本大震災において都市ガスの復旧が

1ヵ月以上要したことなど、都市ガスが系統エネルギーであるが故の緊

急時対応能力の脆弱性等を踏まえた、広域天然ガスパイプライン等の

整備についての慎重な検討が必要と考えています。

電力システム改革については、7月に小売全面自由化、発電分野

の全面自由化、送配電分野の改革等を内容とするわが国の今後の

あるべき電力システム改革(基本方針)が示されました。13年2月

には、「電力システム改革専門委員会」報告書において、改革を三段

階で進めること、すなわち15年目途に広域系統運用機関の設立、

16年目途に家庭向け小売の自由化、18 〜 20年目途に送配電分離

(法的分離)を実施する方針が示され、電力事業は大きな変革に向

けて進み始めました。

なお、同報告では残るガス事業改革の必要性についても言及して

おり、今後、早期の検討が望まれます。また、制度改革のみならず、大

型電源の緊急停止、出力不安定な再生可能エネルギーのバックアッ

プの必要性などを踏まえ、石油火力発電を「供給安定型電源」として

位置付けるなど、緊急時対応を視野に入れた電源ミックスのあり方を

検討することが望まれます。

34

Page 36: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石 油 製 品 の 流 通・販 売

規制改革による物流の合理化・効率化

石油製品は、内航タンカー、タンクローリー、タンク車(鉄道)および

パイプラインといった輸送手段を利用して、油槽所や給油所(SS)を

経由し消費者に届けられています。このうち、タンクローリーと内航タ

ンカーで輸送量全体の大半を占めています。

石油産業は、1996年3月末の特石法廃止以降における経営環境

の変化に対処するため、各種の物流手段・施設を効率的に配置・統

合するとともに、会社間における製品の相互融通の拡大、輸送手段や

油槽所の共同化を進めています。特に、99年以降は、企業の枠組みを

超えた精製から物流部門におよぶ業務提携等の動きが活発化し、精

製・流通基地の統廃合や物流情報のシステム化など、物流の効率

化、コスト削減が図られてきました。

一方、物流効率化推進の観点から、内航・陸運に係わる規制改革

も行われてきました。

例えば、陸上輸送では、車両の全長・車軸間隔・輪荷重により積載

量を制限する車両制限令などが93年11月に改正され、26〜 28S

級の大型タンクローリーの導入が推進され、さらに03年10月の同令

および保安基準の一部緩和を受け、コンパクトな超短尺24Sロー

リーが開発されたことや、30S級のローリーの開発等、ローリーの大

型化が推進されました。99年4月以降は、石油製品輸送の効率化と

安全管理対策の向上を図る目的から、SSにおけるタンクローリー運

転者単独での荷卸し作業が許可され、05年10月には、これが灯油配

送センターや需要家等の地下タンクまで適用の拡大が図られました。

単独荷卸しの適切な活用は安全性向上、物流コストの削減、SSや

需要家の利便性向上などに繋がると期待されています。

自動車用燃料課税に係わる諸問題への対応

石油製品の輸入自由化を契機として、軽油引取税の脱税を目的と

した悪質な不正軽油の輸入、流通段階における不正混和(灯油やA重

油等を混和)、A重油などの不正使用が急増する一方、不正な脱税軽

油の製造過程で生成される硫酸ピッチの不法投棄が社会問題化しま

した。このような問題は、安価な軽油が出回ることによって市場におけ

る公正・公平な競争条件が歪められるばかりでなく、自動車用燃料と

して不適切な品質の燃料が使用されることによる環境面での悪影響

が懸念されます。硫酸ピッチの不法投棄は土壌汚染などの環境問題

に加え、近隣住民の健康被害まで引き起こす事態になっています。

石油連盟では、販売業界等と連携して軽油引取税脱税防止に関す

る抜本的対策を実施すること等を要望してきましたが、2004年6

月、不正軽油の製造・流通防止を目的として地方税法が改正され、

軽油引取税の脱税に関する罰金の引き上げ、混和等の承認を受け

る義務に違反した場合の罪の創設など脱税行為への罰則が強化さ

れました。

一方で、不正軽油の撲滅に向けて取り組む東京都および軽油引取

税全国協議会から、03年秋と04年春の2度にわたり、不正軽油の原

材料に使用されている灯油・A重油等の出荷の取り扱いに関する要

請が石油元売会社に対して行われました。これを受けて、石油連盟と

しては、04年12月に「軽油引取税脱税防止ガイドライン」を策定し、

石油精製・元売業界の指針として本社・支店・製油所等の各事業所

に周知徹底を図っています。

また、06年6月より、都道府県知事の承認を受けないで軽油を製

造する者に事情を知りながら原材料や薬品、設備等を提供した者等

に対する罰則の創設等、軽油引取税の脱税防止対策がさらに強化さ

れました。今後も、軽油引取税の脱税防止に向けた取り組みの強化

とともに、自動車燃料に対する課税の公平性の確保が必要です。

SSを巡る経営環境の変化

2001年12月に石油業法が廃止され、石油産業は本格的な国際

化・自由化時代に入り、国内石油市場は国際市場とリンクしたものと

なりました。また今後は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車

(PHV)などの次世代自動車の増加が見込まれています。

こうした環境変化に対処するため、精製・元売会社、販売業界が一

体となって、付加価値販売の強化と経営の効率化に向け、適正な流通

市場構築に取り組むことや、SSでの新たな付加サービスを創出する

ことが喫緊の課題となっています。

■セルフSSの急増98年4月以降、ドライバーの給油作業を一定の有資格者が監視する

有人セルフ方式のSSが導入されて以来、その数は11年度中に8,500

ヵ所を上回り、SS全体に占める普及率が約23%になっています。

わが国でのセルフSSは、当初欧米で経験豊富な外資系企業や中小

元売会社が先行し、02年以降は大手の民族系元売会社も積極的に

出店を開始しました。最近では特約店・販売店も独自にセルフ化に

意欲的に取り組んでいます。一方、セルフSS間での競争の激化によ

り、閉鎖されるセルフSSも出始めています。

■セルフSSの安全対策についてドライバーが自ら給油を行うセルフSSの増加に伴い、給油中のガソ

35 石油製品の流通・販売

Page 37: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

40,000

35,000

50,000

45,000

60,000ヵ所

55,000

0

10,000

8,000

6,000

4,000

2,000

30,000

■給油所およびセルフ給油所の推移

出所:経済産業省、石油情報センター

給油所数

セルフ給油所

56,44458,26359,61559,99060,421

55,172 53,704 52,592 51,294 50,06748,672 47,584

44,05742,090

37,743

45,792

2008 2011 年度末

38,777

2010

40,357

85 191 4221,353

2,5233,423

4,1044,956

7,0237,774

8,596

6,162

8,4498,296

200920072006200520042003200220012000199919981997199619951994

リンの吹きこぼれや誤給油が増加しているため、石油連盟などでは正

しい給油方法についてホームページ、ポスター等で周知し、注意喚起

を行っています。

また、石油各社はセルフSSにおける安全対策として、給油時の監視

強化や、静電気対策として給油ノズルの導電性の確保、漏洩事故対

策の観点からスプラッシュガードの設置等、安全性向上に向けて、積

極的に取り組んでいます。

■次世代自動車の増加EVやPHVなどの次世代自動車の増加に伴い、SSで提供される

サービスも、従来求められていたものから大きく変化する可能性があ

り、SSを取り巻く環境の変化に合わせ、太陽光発電、急速充電器の設

置などのインフラの整備や、カーシェアリング等SSにおける新たな付

加サービスを創出することが課題となっています。

■SSを巡る環境問題への対応従来、石油産業の環境問題への取り組みは製油所を中心に進め

られてきましたが、ここ数年は、SSに係わる真剣な取り組みが多く

なりました。

具体的には、02年4月からスタ−トしたPRTR法に基づくベンゼン

など有害化学物質の排出量の届出、05年1月から世界に先駆けて

開始されたサルファーフリー(硫黄分10ppm以下)ガソリン・軽油

の全国規模での供給などがあります。

また、SSの土壌・地下水汚染問題の重要性を踏まえ、石油連盟で

はSSにおける油漏れの未然防止・早期発

見を目的に「SS土壌環境セーフティーブッ

ク」を作成しています。

さらに、本問題への取り組みの一環とし

て、09年8月に合成樹脂配管等の施工方

法に関する通知の一部を改正する通知

(消防危第144号)が消防庁から発出され

たことを受け、土壌と接する地下埋設配管

において、腐食等のリスクが低い合成樹

脂配管等の使用を促進する観点から、地

下埋設配管に合成樹脂配管および樹脂配

管用耐火板接続ボックスを用いる際の標

準的な施工方法について、2010年3月

に石連標準仕様を作成しました。

10年6月には、地下タンクからの油漏れ

事故への対策として、危険物の規制に関す

る規則の一部が改正され、SS等の地下に

埋設されている鋼製一重殻タンクについて11年2月より埋設年数や

設計性能等に応じた漏えい対策を実施することが義務付けられまし

た。この規制は13年1月末をもって経過措置の期限を迎えました(東日

本大震災被災地においては16年1月末まで)。石油業界では今後も土

壌汚染防止対策を進めていきます。

■SS過疎地問題石油製品の需要減少に伴う競争の激化により、SS数の減少が続

いていることから、「SS過疎地問題」が懸念されています。SSが閉鎖

されることにより、生活圏内にSSがなくなり、寒冷地では生活必需品

となっている灯油や、農業林業用車両の燃料の供給が難しくなって

いる地域が増加しており、社会問題として取り上げられるようになり

ました。その背景としては、前段で述べた13年1月末に経過措置の

期限を迎えた経年地下タンクの漏洩防止対策の義務付けを契機に、

設備投資が困難な為、廃止となるSSが増加したことも一因としてあ

げられます。

この様な状況は、消費者の利便性を損なうだけでなく、災害時に営

業を停止せざるを得ないSSが発生した場合、地域住民への燃料供給

が極めて不安定化するなど、深刻な事態となることが懸念されます。

石油業界としては、石油製品の安定供給という社会的責任を果た

していくためにも、行政、自治体、地域住民の方々とともにこの問題に

取り組んでいくことが重要と考えています。

36石油製品の流通・販売

Page 38: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

地域社会との共生を目指して(大規模災害への対応)

石油連盟では、企業の社会的責任(CSR)等の観点から、大規模災

害時などにおける石油製品の安定供給努力など地域社会との共生を

目指しています。

石油は、地震等の災害時においても、船舶やタンクローリーといっ

た多様な輸送手段で運べること、特にタンクローリーは、輸送路を選

んで目的地まで運べることなどから、供給における柔軟性が高いとい

う特性を有しています。

2008年11月に、東京都との間で「大規模災害時における石油燃

料の安定供給に関する協定」を締結し、震度6弱以上の地震があった

場合等に、災害対策上重要な公共施設に対して直接石油製品を供給

する体制を整備しました。10年以降年に1度、この協定に基づく実地

の訓練を行ってきました。

実際11年3月の東日本大震災では、製油所や油槽所が地震、津

波の被害を受け、石油業界も多くの油槽所・製油所が被災しました

が、発災当日より石油連盟では政府を通じた被災地からの石油製

品の緊急供給要請に対応し、比較的被害が軽微な油槽所を元売会

社間で共同利用する等、訓練の成果を生かし、石油業界が一丸と

なって被災地への安定供給継続が可能となるよう努めました。

石油業界では、今般の大震災を教訓に、大規模災害時における石

油のサプライチェーンの維持に向けて、災害時の情報収集体制の

整備、施設の防災力の強化、被災地向けドラム缶充填設備の整備、

緊急時の業界横断的な協力体制の構築等、さまざまな対策を進め

ています。

また東日本大震災における緊急要請への対応という経験を踏ま

え、石油連盟では、災害時等緊急時の被災地からの石油製品の緊

急要請に迅速かつ柔軟に対応できるよう、全国の道府県との間で

重要施設への燃料供給に関する情報共有を行なう等、緊急時対応

体制の整備を進めています。

また12年11月、国内で大規模災害が発生した際の対応を強化し

た改正石油備蓄法が施行され、石油精製・元売業界は、災害時に業

界各社が協力して緊急供給に対処するため、国内の10地域ごとに

災害時石油供給連携計画を作成し届け出ることとなりました。さら

に、災害による国内の特定地域への石油の供給不足時にも国家備

蓄を放出できるよう発動要件が見直されるとともに、被災地の需要

に迅速に応えられるよう、石油会社の出荷基地のタンクを活用し

て、従来灯油のみであった石油製品での国家備蓄が油種・量とも

に拡充されました。

サプライチェーンの維持・強化のために

石油産業は、石油を消費者の皆様の手元に届けるために、資源の

確保・開発から輸入・精製・物流・販売という「サプライチェーン」

(供給網)を、いわば血管網のように全国に張りめぐらせています。

しかしながら、傾向的な石油製品の内需減少と市場原理に基づく

経営合理化の中で、余裕あるサプライチェーンを維持して行くことが

難しくなってきています。「SS過疎地問題」とまでいわれるSSの廃業問

題は、販売の最先端におけるサプライチェーンのほころびの例である

といえます。

また、2007年の中越沖地震の際には、柏崎刈羽原子力発電所の

停止に伴う石油火力発電所向け燃料輸送が、製品タンカーの不足か

ら、円滑に進まなかった例もあります。

経済産業省の2014年度までの需要見通し(2010年3月)に基づく

トレンドが20年まで続いた場合、石油製品の内需は、10年度比30%

減少、ピーク時の99年度からほぼ半減するものと見られており、サプ

ライチェーンの維持はますます困難になって行くものと思われます。

図らずも東日本大震災においては、「系統エネルギー」である電

気・都市ガスが供給不能となった瞬間から、石油は、持ち運びや貯蔵

が容易な「分散型エネルギー」として、緊急時対応力を発揮しました。

そして、避難所の暖房用燃料、病院や原子力発電所の非常用発電燃

料、緊急車両や避難用車両の燃料として被災者の生命を守る役割を

果たしたと考えています。

内需減少に伴うサプライチェーンの縮減が続く場合には、大規模

災害の発生時に、今回の大震災のような対応は取れないことが懸念

されます。災害時における最終消費者までのエネルギーの安定供給

の重要性を考えるならば、現状レベルのサプライチェーンを維持・強

化して行くことが必要不可欠であり、そのための「石油の安定需要の

確保」が喫緊の課題であるといえます。

石油連盟としては、サプライチェーン維持のためには、暖房・給湯

部門、輸送部門などを中心に石油利用を維持することで、20年にお

いても1.8億S(10度比8%減少)程度の需要規模を確保することが

重要と考えています。

37 石油製品の流通・販売

Page 39: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

● 原油を貯蔵するためのタンク (2012年3月末現在) 貯油能力 : 35,813千S ● 石油製品を生産するための設備

(2013年3月現在) 精製能力 : 71万S/日 (447万バレル/日) 製油所数 : 26ヵ所

● 石油製品を配送するためのタンクと輸送手段  (2012年3月末現在) 油槽所/貯油能力 : 11,794千S(燃料油) タンク基数 : 3,472基(燃料油) 内航タンカー : 575隻(2012年3月末) タンク車 : 1,547両(2012年3月末) タンクローリー : 7,072台(2012年3月末)

輸 送

● 石油製品(半製品を含む)を 貯蔵するためのタンク (2012年3月末現在) 貯油能力 : 45,633千S

精 製

原油貯蔵・備蓄

製品貯蔵・備蓄

■石油のサプライチェーン(流通・物流経路) ● 原油輸入のためのタンカー 延運航隻数:839隻(2011年度)輸 入

販 売 ● SS(サービスステーション) (2012年3月末現在) 37,743ヵ所(含・可搬式)

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

20年度

19181716151413121110090807060504030201009998979695949392911990

千KL

ガソリン

ナフサ

灯油

ジェット燃料

軽油

重油

■石油製品内需の推移と見通し

出所: ・ 資源・エネルギー統計、2014年度 までの見通しは、需要想定検討会 「石油製品需要見通し」(2010年 3月経済産業省)・ 2015年度以降は、2009年度から 2014年度までの年率(減少率)を もとに試算・ 2011年、2012年は東日本大震災 の影響で需要見通しが策定されな かった。

▲47%▲21%

見通し

246百万S(1999年度)

195百万S

131百万S

ガソリン

ナフサ

灯油

軽油

ジェット燃料油

重油

▲33%

38石油製品の流通・販売

Page 40: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石 油 諸 税 の 抜 本 的 見 直 し に向 け て

輸入の段階 製品の段階 消費の段階

■石油の多重・多段階課税(平成25年度予算)LPガス

ガソリン

ナフサ

灯油

重油

その他

軽油

ジェット燃料油

消費税 5%

輸入原油

輸入石油製品

消費者

石油石炭税(注2)

2,290円/S(注3)

石油ガス税9,800円/S 220億円

ガソリン税53,800円/S 2兆8,416億円

軽油引取税32,100円/S 9,233億円

航空機燃料税18,000円/S

(注5)640億円

6,500億円関 税(注4)

45億円

石油諸税計 約4兆5,000億円合計 約5兆5,850億円(95円の為替レートで約45ドル/バレルに相当)

消費税 約1兆850億円

(注): 1. 軽油引取税と航空機燃料税にはTAX on TAX(併課)はない 2. 石油石炭税は原油、石油製品、石炭、LNG、LPGが課税対象となっている 3. 「地球温暖化対策のための課税の特例」による上乗せの経過措置として、2012年10月1日に2,040円/Sから2,290円/Sに引き上げられた   (2014年4月1日に2,540円/S、2016年4月1日に2,800円/Sに引き上げ予定) 4. 2006年4月より原油関税(170円/S)は撤廃され、石油製品関税のみとなった(関税収入は22年度実績に基づく石油連盟試算値) 5. 航空機燃料税は、2011年4月1日から2014年3月31日までの3年間、26,000円/Sから18,000円/Sに引き下げられている 6. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある 出所:財務省主税局資料、総務省自治税務局資料

(注1)

(注1)

「巨額・高率」な石油諸税

石油はわが国の一次エネルギー供給の約46%を占め、国民生活

や産業活動を支える重要なエネルギーです。そのため、そのコスト低

減は国民経済的課題となっています。しかし、石油には、年間約4兆

5,000億円(平成25年度予算)にも達する巨額・高率な税金が多重・

多段階にわたって課されています。

石油への課税は、まず、石油製品の原料である原油、および石油製

品が輸入された段階で、関税(石油輸入製品のみ)と石油石炭税が課

せられ、さらに製品となり消費者にわたるまでに、それぞれの製品ご

とにガソリン税(揮発油税および地方揮発油税)、軽油引取税、石油

ガス税、航空機燃料税という個別間接税が課されています。こうした

石油諸税に、さらに消費税約1兆850億円(石油製品売上高の5%相

当分)を加えると、石油にかかる税金は、約5兆5,850億円にもなりま

す。この石油に課された税金は石油輸入量1バレル当たり約45ドル分

(95円/ドルの為替レート)に相当します。こうした巨額・高率な石油

諸税は、エネルギーコストの高騰を招き、国民生活や産業活動を大き

く圧迫しています。

「不合理・不公平」な石油諸税

1989年4月の消費税導入に際して、既存の個別間接税は、廃止を

含めた見直しが行われ、消費者の税負担が増えないよう既存の税と

の調整が講じられました。ところが、石油諸税は、使途が決まっている

「特定財源」であることを理由に、廃止も軽減もされず、石油諸税を含

む販売価格に単純に消費税が上乗せされる(単純併課)という不合

理、不公平な措置が取られました。また、97年の消費税引き上げ

(3%⇒5%)の際にも、何ら是正されませんでした。

2009年4月、道路特定財源制度は廃止(一般財源化)され、これに

より消費税と石油諸税の調整が実施できない理由は解消されました

が、消費税と石油諸税に関する具体的な調整措置は何ら講じられて

いません。

現在、政府は消費税率の段階的引き上げ(14年4月〜:8%、15年

10月〜:10%)を予定しています。仮に消費税率が10%になれば、ガ

ソリン税等の石油諸税にかかっている併課分の消費税、いわゆるタッ

クス・オン・タックス(約1,750億円)は倍の水準になってしまいます。

石油連盟としては、消費税導入時の考え方に立ち戻り、適切な調整措

置、とりわけタックス・オン・タックスの廃止の実現に取り組んで行き

ます。

39 石油諸税の抜本的見直しに向けて

Page 41: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■国税収入に占める石油諸税の割合 (平成25年度予算)

法人税24.3%

所得税30.3%

酒税2.9%

たばこ税2.4%自動車重量税1.4%

ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)

6.1%

石油製品関税石油石炭税石油ガス税航空機燃料税1.6%

印紙収入2.4%

間接税42.1%

直接税57.9%

国税収入計46兆8,190億円消費税22.7%

その他2.7%

相続税3.2%

石油諸税計 7.6%(注): 1. 石油諸税には上記の他に地方税として 軽油引取税(9,233億円)がある 2. 四捨五入の関係により合計が一致しない 場合がある

■1R当たりのガソリンに課せられている 石油諸税および消費税 (2013年2月現在)

石油石炭税 2.29円

ガソリン税 53.8円

中味価格 92.9円

中味価格への消費税 4.6円(消費税 7.4円)

Tax on Tax 2.8円

(消費税込み小売価格1R当たり156円の場合)

出所:財務省主税局資料、総務省自治税務局資料

156円/R

148.6円/R

■石油諸税と消費税の現状(平成25年度試算)■消費税導入時の 既存間接税の調整状況

(注): 1. その他の税は石油ガス税、石油製品関税など 2. 税抜き売上高は石油連盟試算値 3. 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある

通 行 税電 気 税ガ ス 税木材引取税

物 品 税トランプ類税砂糖消費税入 場 税

吸収・廃止

単純併課・据置

石油関係諸税

消費税分を調整併課

酒 税たばこ消費税

料理飲食等消費税 娯楽施設利用税

石油の売上にかかる消費税額 約1兆,850億円

うち石油本体にかかる消費税額

約9,100億円うちTAX on TAX分

約1,750億円

税抜き売上高約18兆2,000億円

ガソリン税約2兆8,416億円

石油石炭税約6,500億円

その他の税約265億円

約3兆5,200億円

石油の売上高 約21兆7,200億円(消費税除く)

現行消費税率 5%

軽油引取税(地方税)約9,233億円

航空機燃料税約640億円

石油諸税 約4兆5,000億円

40石油諸税の抜本的見直しに向けて

Page 42: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■家計に占めるガソリン支出の割合

全国町村平均

92,412円

格差 75,532円

順位

1

1世帯あたりの金額

16,880円

都道府県

大阪府

下位5都市(県庁所在地・政令市)

大阪市

2 16,969円

3 21,448円

東京都 23区

4 25,596円京都府 京都市

5 25,744円兵庫県 神戸市

出所:総務省統計局 家計調査(平成24年)

神奈川県 川崎市

石油諸税の負担軽減、課税の公平性確保

ガソリン税・軽油引取税の本則税率上乗せ分は、これまで受益者

負担の原則に基づき道路整備に必要な財源を確保するために暫定

税率として引き上げられてきましたが、2009年4月に一般財源化され

たことによりその課税根拠は失われています。10年4月に暫定税率は

廃止されましたが、財源不足を理由に暫定税率水準は引き続いて維

持されています。自動車ユーザーのみに過度な負担を強いているこ

とや、ガソリン・軽油の使用量の多い地方と、相対的に少ない都市部

との税負担の格差を踏まえると、本則税率上乗せ分は直ちに廃止す

べきです。

また、国内で原油を処理して石油製品を生産する場合、製油所で発

生する、製品として販売できない非製品ガスに対しても石油石炭税

が課税されます。これにより、国産石油製品は、輸入品に対して、非製

品ガスへの課税分だけ不利な競争を強いられています。民主党から

の政権交代を果たした自民党は、13年1月、平成25年度税制改正大

綱を取りまとめましたが、非製品ガスに係る石油石炭税の取り扱いに

ついて、同大綱上では検討事項として位置付けました。国内サプライ

チェーンの維持と石油精製業の国際競争力強化のために、非製品ガ

スに係る石油石炭税の還付制度創設が必要です。

なお、最近の自動車用の燃料・エネルギーに関し、10年以上前か

ら実用化されている天然ガス自動車(CNG自動車)に加え、電気自動

車(EV)も本格的な販売が始まり、将来的には水素を燃料とした燃料

電池自動車の実用化も見込まれます。しかしながら、CNG車、EV等に

使用される天然ガス、電気等については、ガソリン、軽油のような自動

車燃料税の課税対象となっておらず、公平性を著しく欠いています。

道路整備・交通事故対策・環境対策など自動車の社会的費用は自

動車ユーザーが等しく公平に負担するとの観点から、CNG車、EV等

とガソリン車・軽油車との間の燃料・エネルギー課税の公平性を確

保すべきです。

これ以上の税負担には反対

石油には既に年間5兆円を超える巨額な税が課せられています。

今後も地球温暖化対策税や消費税の段階的な引き上げが見込まれ

る中、これ以上の税負担の増加は、消費者の理解を得られないだけで

なく、経済再生が喫緊の課題となっている日本経済にとっても甚大な

悪影響を及ぼすことになり、到底容認できるものではありません。

平成25年度税制改正大綱において、車体課税の軽減には「安定的

な財源の確保」が前提になることが示されていますが、一部に、この

安定財源をエネルギー課税の強化に求めるとの考え方があります。

車体課税とエネルギー課税の見直しは、単に特定の市場拡大を目的

とした税制の組み換えではなく、自動車の社会的費用の負担のあり

方、国と地方の財源問題、今後のエネルギー政策のあり方、エネル

ギー間の公平性確保および景気への影響などを踏まえ、総合的に判

断すべき問題です。安易にエネルギーや燃料に過大な負担を求める

ことは合理性に欠くばかりでなく、公共交通機関が乏しく車に依存せ

ざるを得ない地方へ過度に負担を強いることになり、都市と地方の

税負担格差が拡大するなど、税負担の不公平性を招きかねません。

また、地球温暖化対策の一つとしての森林吸収源対策等の財源確

保に係る検討を行う旨が同大綱で示され、地球温暖化対策税を森林

吸収対策に充当すべきとの議論があります。そもそも、地球温暖化対

策税は、非化石エネルギーの開発/利用やエネルギー利用の高度化

等によるエネルギー起源CO2の排出抑制策に充当するものであり、

温暖化対策の名目のもとに税収を森林対策等に充当するべきではあ

りません。

41 石油諸税の抜本的見直しに向けて

Page 43: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■石油危機以降の石油製品に対する個別間接税率の推移 単位:円/S

50,000

40,000

30,000

(1976.7.1)43,100

(2008.4.1)28,700

(2008.4.1)15,000

(1974.4.1)34,500

(1979.6.1)53,800

(2008.5.1)53,800

   (2010.4.1)(注6)53,800

(1979.4.1)26,000

(1993.12.1)32,100

(2008.5.1)32,100

28,700

20,000

10,000

0

15,000

(1976.4.1)19,500

(1970.1.1)9,800

(1979.6.1)24,300

10,400(1974.4.1)13,000

(1978.6.1) (3.5%) (1984.9.1)

(1988.8.1) 2,040

(2003.10.1)1,020

(4.7%)

第1次石油危機

第2次石油危機

湾岸危機

197374 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99200001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13(1991.4.1)(1992.3.31)

(注): 1. 石油税は1988年8月1日以降従価税から従量税へ変更 2. 石油臨時特別税は1991年4月1日から1992年3月31日までの湾岸戦争に係わる1年間の臨時的措置  3. 2003年度より石油税は石油石炭税に改められ、石炭が新たに課税対象となった 4. 地方揮発油税は地方道路税の一般財源化に伴い2009年4月より改称 5. ガソリン税(1974年4月1日~2010年3月31日)、軽油引取税(1976年4月1日~2010年3月31日)の税率は暫定税率であり、暫定税率の一時的な期限切れにより、2008年4月の1ヵ月間、 本則税率が適用された 6. 2010年度よりガソリン税、軽油引取税の暫定税率は廃止となったが、税率水準については従来の水準が維持された 7. 航空機燃料税は2011年4月1日から2014年3月31日までの間、18,000円/Sとなる 8. 石油石炭税は「地球温暖化対策のための課税の特例」により、段階的(下図表「■石油石炭税の税率の経過措置(温暖化対策税)」参照)に税率が引き上げられる予定

ガソリン税(揮発油税・地方揮発油税の総称)

航空機燃料税

軽油引取税

石油ガス税

石油税 石油石炭税石油臨時特別税

   (2010.4.1)(注6)32,100

   (2012.10.1)(注8)2,290

(2011.4.1)(注7)18,000

0

10

20

30

40

50

60

70

80

軽油ガソリンピアノ乗用車(2,000cc)

清酒(佳撰)

ビール(350ml)

たばこ

石油連盟作成

■生活用品の小売価格に占める税負担率の比較単位:%

64.5

45.3

28.8

10.94.8

41.7

29.7

(注): 1. 小売価格は「小売物価統計調査(東京)」2013年1月価格にて算出 2. ガソリン・軽油は「石油製品価格調査」2013年1月価格にて算出

■石油石炭税の税率の経過措置(温暖化対策税)

原油・石油製品(1S当たり)

ガス状炭化水素<LNG・LPG>(1t当たり)

石炭(1t当たり)

2012年9月30日まで 2,040円 1,080円 700円

2012年10月1日から 2,290円 1,340円 920円

2014年4月1日から 2,540円 1,600円 1,140円

2016年4月1日から 2,800円 1,860円 1,370円

(注): 1. 平成24年度税制改正大綱より 2. 「地球温暖化対策のための課税の特例」に伴う経過措置 3. 税率の上乗せは各化石燃料のCO2排出量に応じて実施

42石油諸税の抜本的見直しに向けて

Page 44: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

企 業 体 質 の 改 善・強 化

企業体質の強化が必要

石油産業には、国民生活に必須である石油製品の供給を、安定的

に行っていくことが求められています。

石油産業の経営は厳しい状況に直面していますが、安定供給確保

のためには設備投資などが不可欠であり、このためには、石油産業が

適正な収益水準を確保し、企業体質の改善と強化を図ることが必要

です。

決算状況について

しかしながら、石油精製業の収益構造は他産業と比較しても極め

て不安定で厳しい状況となっています。人口減少などの影響で中長

期的に石油製品の国内需要が減少傾向となり、国内市場規模の将来

的な縮小が確実視されている上、原油価格の変動リスクなどにより、

決算内容が大きく左右される傾向にあります。このような厳しい外部

環境の中で、適正な収益確保のための努力がますます重要な課題と

なっています。

近年の決算状況をみると、石油製品部門は、需給環境改善に向け

た石油各社の取り組みなどにより、一定程度の収益が確保される環

境が整いつつあります。石油開発部門は為替による影響があるもの

の、原油価格の上昇などを踏まえると、中長期的には堅調に推移する

ことが見込まれています。一方、石油化学部門は、国際的な景気減速

に伴う製品市況の低迷や、海外の石油化学産業との競争激化などか

ら、採算性の悪化が懸念されます。

なお、石油製品部門の収益については、原油価格の変動に伴う「在

庫評価影響」により、結果として見かけ上の利益や損失を計上するこ

とになります。

この「在庫評価影響」とは、原油価格が変動した際、棚卸資産の評価

方法によって、決算上の売上原価が影響を受けることを指します。原

油価格上昇局面では、期中の仕入れ価格より期首の在庫単価の方が

安くなるため、決算上の売上原価が押し下げられることで在庫評価益

が発生し、また原油価格下落局面では、期中の仕入れ価格より期首の

在庫単価の方が高くなるため、逆に在庫評価損が発生することとなり

ます。これらは石油製品部門の損益に対して大きな変動を及ぼして

います。

11年度の石油業界の決算は、10年度と比較して石油製品マージ

ンが悪化したものの、原油価格上昇や一部企業における在庫評価方

法変更に伴う在庫評価益の発生等により、通期では黒字となりまし

た。12年度については、上期においてはマージン悪化や原油価格下

落等に伴い赤字となる企業が多く見られたものの、その後のマージ

ン回復や原油価格上昇等の影響により、通期では黒字を確保できる

見通しとなっています。

石油各社では業界を取り巻く構造変化に対して、すでに石油製品

の輸出促進や石油化学事業、石油開発事業、新規事業などへの展開

を進め、経営基盤の強化を図ってきました。さらに、原油価格の変動

をより適切に反映するための値決め方式の改定や、過剰設備の削減

等を通じた需給環境の改善への取り組みなど、さまざまな企業努力

を行っています。

今後も経営環境の変化を的確に見極め、厳格な対応を行うことが

必要となります。徹底した合理化および効率的な事業体制構築の努

力を最大限行う中、再投資可能な収益を確保することで、より強い企

業体質を築いていくことが求められます。

43 企業体質の改善・強化

Page 45: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

300,000

280,000

260,000

240,000

220,000

200,000

180,000

160,000

140,000

120,000

100,000

0-1,000-2,000-3,000

1,0002,0003,0004,0005,0006,0007,000

2008 2011年度20102009200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990

単位:億円■石油産業の売上高・経常利益の推移(石油精製・元売全社)

出所:石油連盟

売上高経常利益

2,883 3,4253,429 3,701 3,170

1,8761,143 1,363

▲180

2,4612,210

4,0173,745

5,3554,613

1,658

2,140

621

164,495156,524 154,195

141,183 140,440 138,856

156,868147,796

177,821

289,995

▲2,992

288,178

6,803

255,536

5,214

227,539

404

203,234

261,636261,345

213,520

194,159187,863

174,737

155,067

132,586

出所:石油は石油連盟、他産業は日経財務データ

株主資本比率売上高経常利益率 単位:% 単位:%

■石油産業と他産業との経営指標比較(2011年度)

0

20

40

60

80

100

都市ガス

43.6

製造業

48.4

石油

21.6

3.7

4.7

2.7

都市ガス 製造業 石油0

1

2

3

4

5

6

44企業体質の改善・強化

Page 46: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

二 重 、三 重 の 安 全 対 策

適切な安全対策と防災体制

石油産業は、精製、貯蔵、流通、販売の各分野にわたって、最新の技

術による安全管理体制と不測の災害に備えた厳重な防災体制を構築

してきました。

安全対策にはハードとソフトの両面があります。

ハード面の安全対策として、設備については、設計段階から使用材

料などの安全性チェックと万全の施工管理を行っています。

設備のレイアウトは、製油所や油槽所の設備から一般居住地まで

の保安距離や、これらの設備から事業所境界線までの敷地境界距離、

そして各設備ごとの周囲に保有空地の確保など、安全確保に留意し

ています。また、個々のプラントやタンクは関東大震災級の地震にも

耐えられるような耐震設計が施されています。

一方、ソフト面の安全対策として、設備の保守管理を中心に、プラン

トやタンクの定期開放検査、運転停止検査、運転中検査、日常点検、特

別点検を実施しています。また、緊急時の処置、異常現象の早期発見

や初期消火などの処置がとれるよう、緊急停止システムの導入や油・

ガス漏洩検知器のきめ細かい設置とともに、パトロール隊による巡回

を繰り返しています。さらに、不測の火災や油流出などの事故に備え

て、的確かつ迅速な対応処置がとれるように、常時訓練された防災要

員で構成された「自衛防災組織」や「共同防災組織」が整備され、これ

らの組織には、大型化学消防車、大型高所放水車、泡原液搬送車、オ

イルフェンス、油回収器、油回収船、消防船などが装備されています。

一方、労働者の作業中の安全対策については、各事業所で危険予

知活動などを行い災害防止に努めているほか、製油所で発生した労

働災害事例の情報共有化を行い、再発防止のための安全教育等に活

用しています。設備事故についても業界内で情報を公開し、同種の事

故再発防止を図るとともに、公開した事例に対して各社がどのような

対策をとったかのフォローアップを行い、石油産業全体で事故防止に

努めています。また2012年8月には「製油所の安全確保策に関する

検討会」を立ち上げ、事故防止の強化を進めています。

長周期地震による災害対応

2003年9月に発生した十勝沖地震による大型タンク火災は、これ

までに経験のない長周期地震動によるものとされています。

長周期地震による災害対応のため、石油コンビナート等災害防止

法等関係法令が改正され、浮き屋根式タンクの長周期地震に対する

安全性強化や、浮き屋根式タンクの全面火災発生時の防災体制等の

強化が定められました。

このため、石油業界は国家備蓄、石油化学業界および電力業界と

協力して、大容量泡放射システムを配備する「広域共同防災組織」の

整備を進め、08年11月までに全国12ブロックの「広域共同防災組

織」を設立し、09年5月には大容量泡放射システムの配備を完了しま

した。さらに、10年3月には12ブロックが相互に応援できる体制を確

立しました。

機動的な相互応援体制の整備

石油連盟では、製油所などにおいて大規模な災害が発生し、石油

コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域を越える広域的

な応援を必要とする場合を想定して、「石油連盟製油所等災害相互

応援規程」を定めています。これにより、的確・迅速かつ機動的な応

援体制を確保し、被害を最小限に止めることが可能となっています。

新しい技術への取り組み

設備の信頼性の向上、保安防災力の向上のためには最新技術の導

入が不可欠です。旧態依然とした技術基準は安全性の向上を阻害す

るだけでなく、多大なコストを要するため国際競争力の観点からも憂

慮すべき問題です。このため、石油連盟では消防法をはじめとする保

安関連法への性能規定化を働きかけるとともに、自主保安の下に、設

備保全、防災分野の新しい技術を導入すべく、次のような取り組みを

行っています。

45 二重、三重の安全対策

Page 47: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■製油所などにおける保安防災対策

●保安距離・保有空地  防油堤(防液堤)●防火へい/水幕設備●漏洩検知装置/冷却散水装置●緊急移送設備/緊急遮断装置●油回収船/化学消防車など●防消火資機材/流出油対策 資機材など

●自衛防災組織●共同防災組織●広域共同防災組織●石油連盟製油所等災害相互 応援規程●海水油濁処理協力機構など

保安防災施設

保安防災対策

保安管理組織

緊急時の動員組織

●保安管理マニュアルの設備●保安防災教育・訓練●ガス漏洩などの異常時における 覚知手段と初期行動マニュアル の手引きなど

1.新しい防災資機材(大容量泡放水砲)の導入「広域共同防災組織」には、大型浮き屋根式タンクの全面火災を想

定し、大容量泡放射システムを導入しました。このシステムに使用す

る泡放水砲は、1台で従来の消防自動車(大型化学消防車)約10台

分に相当する大きな能力を持つものです。これらのシステム資機材

を有効かつ効果的に操作するため、定期的な教育・訓練を行ってい

ます。

2.設備維持規格の策定設備の点検・補修については、法律で詳細に規定されているため

に、十分に供用できる設備まで補修、取替を行っているのが現状で

すが、石油連盟は自主保安の推進を基本とした法令の性能規定化を

目指し、民間自主基準の策定に取り組んできました。その一例とし

て、設備の運転期間中に検出された損傷が今後の連続運転に適合

するかどうかを評価する「供用適性評価ハンドブック」を石油化学工

業協会と共同で策定するとともに、その計算ソフトも作成しました。

また、(公社)石油学会と共同で検査・補修技術を集大成した「維持

規格(配管、設備、回転機、電気設備、計装設備、屋外貯蔵タンク)」を

策定し、設備維持の信頼性の向上を図っています。

3.新しい検査技術の導入設備を安全に維持し、「供用」すなわち運転期間中に検査を行うため

には検査技術の向上が極めて大切なことです。しかし、現在消防法、

高圧ガス保安法などでは、検査手法が特定されているために進歩し

た技術を事業者の判断では採用できない状況にあります。石油連盟

はこうした弊害をなくすよう消防庁に法令の性能規定化を要望する

とともに、すでに海外で使用されている新しい検査技術の調査・研究

を行い、国内で使用できる環境整備を図っています。

大容量泡放水砲

46二重、三重の安全対策

Page 48: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

大 規 模 な 流 出 油 事 故 に備 え て

〈海外〉

■油濁防除資機材の内外備蓄基地

海外3号基地(マレーシア・ポートクラン)

〈国内〉

5号北海道基地(北海道室蘭市)

4号日本海基地(新潟県新潟市)

3号伊勢湾基地(三重県四日市市)

2号瀬戸内基地(岡山県倉敷市)

6号沖縄基地(沖縄県うるま市)

1号東京湾基地(千葉県市原市)

海外5号基地(インドネシア・ジャカルタ)

アラビア湾

ホルムズ海峡

マカッサル海峡

ロンボック海峡

海外1号基地(シンガポール)

マラッカ海峡

海外2号基地(サウジアラビア・カフジ)

海外4号基地(UAE・アブダビ)

中東からのオイルロード

5号北海道基地 稚内分所(北海道稚内市)

■内外の主要資機材(2012年4月現在)主要資機材 国内計 海外計 合計

オイルフェンス固形式 大型

緊急用20,000m1,200m

20,000m1,200m

充気式 9,311m 5,500m 14,811m

油回収機 基数能力(S/h)

734,553

201,615

936,168

ビーチクリーナー 基数能力(S/h)

38456

10108

48564

回収油貯蔵設備 オイルバッグ・バージ等

基数能力(ton)

271,950

271,950

仮設タンク 基数能力(ton)

2221,584

40360

2621,944

油濁防除資機材の備蓄

石油連盟は、油濁防除用の資機材を備蓄し、災害関係者に貸し出

すための基地を1996年3月末までに国内6ヵ所、海外5ヵ所に設置し

ました。

また、サハリンⅡプロジェクトの原油供給開始に伴い、2010年(平

成22年)7月に稚内分所(石油連盟油濁防除資機材第5号北海道基

地稚内分所)を設置しました。

国内については、石油の海上輸送量が多い海域で年中無休・24

時間の操業を行っている製油所などに備蓄基地を設置し、万一の流

出油事故への対応に努めています。

海外については、中東産油国からわが国に至る“オイルロード”に

沿って、マラッカ海峡のシンガポールとマレーシア(ポートクラン)、イ

ンドネシア(ジャカルタ)、アラビア湾のサウジアラビア(カフジ)とア

ラブ首長国連邦(アブダビ)にそれぞれ基地を設置しています。

貸し出し事例

石油連盟では、1991年11月の国内第1号基地設置以来、2012

年4月までに26回(うち、国内16回)の資機材貸し出しを行いました。

主な貸し出し事例は、95年7月の韓国麗水沖でのタンカー座礁事

故、さらに97年1月の島根県沖の日本海公海上におけるロシア船籍

タンカーの流出油事故、同年10月のシンガポール海峡におけるタン

カー衝突事故、98年1月のペルシャ湾における大型バージ船沈没事

故、2000年10月のシンガポール海峡におけるタンカー座礁事故、

2010年5月のシンガポール海峡におけるタンカーと貨物船の衝突

事故などで、船主などからの要請を受けて、大量の大型オイルフェン

ス、油回収機、仮設タンクなどを貸し出しました。特に、ロシア船籍タン

カー・ナホトカ号の事故の際には、国内各基地の保管会社・維持管

理会社の協力を得て、資機材操作指導員を継続的に派遣するなど、

油濁防除活動に全面的に協力しました。

教育訓練

本事業の整備資機材は、外国製品を含めて大型・高性能の新機

種であることから、迅速、円滑な対応のためには、関係者がこれらの

資機材の使用に習熟する訓練が必要となります。石油連盟では、国

内基地設置地域の海上保安部および地域防災組織が実施する防災

訓練に積極的に参加する一方、各基地において周辺の石油連盟加

盟会社および関係会社の油濁対応担当者などを対象に、定期的に

資機材の操作を中心とするトレーニングコースを開催しています。

国内1号東京湾基地 海外4号基地

47 大規模な流出油事故に備えて

Page 49: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

実地操作訓練

また、現場指揮者などの専門家を養成するために、石油連盟基地関

係者などを対象に海外の油濁防除専門組織に派遣し、専門家を育成

しています。海外においても、基地設置国の国営石油会社などと合

同流出油防除訓練を実施しています。

油濁防除に関する調査研究

石油連盟では、万一の大規模流出油事故時において、迅速かつ

効果的な油濁防除作業の実施に資するための調査研究を行ってい

ます。

①流出油拡散・漂流予測モデルの改良および維持管理石油連盟は、1992年度から流出油拡散・漂流予測モデルの開

発に着手しました。これまでの間、予測対象海域の拡大、流出油の経

時変化データの追加、世界測地系への変更など、精度および利便性

の向上を目的に改良を重ねてきました。予測モデルは、石油連盟油

濁対策のホームページから誰でもダウンロードして使用することが

できます。

②油濁防除資機材輸送に関する調査わが国沿岸海域で発生する大規模油濁事故に対しては、国内に設

置された油濁防除資機材基地から事故地点に近い港湾まで、備蓄し

ている資機材を迅速に輸送することが重要です。

石油連盟では、1996年度に油濁防除資機材輸送に関する調査を

実施し、資機材基地から主要な港湾への輸送経路と所要時間を整理

しましたが、最近の実態に合わせ既存の経路情報データベースを最

新の道路網情報に基づき全面的に更新するとともに、データベース

の国内主要港湾数を143港に増強し、有用性をより高めました。

③衛星画像を用いた海上流出油自動認識システムの開発石油連盟は、2011年に海上流出油自動認識システムの開発を行

いました。本システムは、効果的かつ効率的な海上流出油防除体制を

早期に確立していくための必須条件である「油濁域の位置」や「拡散・

移動状況」を人工衛星観測情報から全天候下で自動検出するもので

あり、石油連盟油濁対策のホームページから利用が可能です。

本システムでは、過去の調査研究で対象となった油流出事故の油

濁域自動検出結果や技術資料、調査報告書、過去の事故事例の閲覧

が可能であり、また、「自動認識処理エンジン」を利用することにより、

ユーザが所有する合成開口レーダ衛星画像から油濁推定域の自動

検出を行うことができます。

国際会議の開催

大規模な油濁事故が発生した場合の対応事例や国際協力、油濁に

関する国際条約および油濁損害に対する補償制度とその改定の動き

等、最新の国際機関に係わる油濁関連情報の収集および技術開発動

向を把握するため、第一線の専門家を招聘して1995年から2012年

まで毎年国際会議(シンポジウム15回、ワークショップ2回)を開催し、

知識の吸収と人的交流の拡大を図るとともに、石油連盟の事業内容

とその意義について普及啓発を行っています。

2010年のメキシコ湾岸事故以降も中国の渤海湾、ニュージーランド

沖等国内外で多くの事故が発生していますが、関係者の努力や国際的

な取り組みにより、概観すれば大規模な流出油事故や壊滅的な被害は

減少傾向にあると言えます。2013年は、2010年のメキシコ湾事故

のその後について議論するため、「ディープウォーター・ホライズン‐

現在、そして将来」をテーマとした国際ワークショップを開催し、同事故

に関係した主要な機関より講師を招聘しました。

●石油連盟油濁対策のホームページ石油連盟の保有する資機材および貸し出し手続き情報、訓練情報、調査研究情報、国際会議等の最新情報を油濁対策のホームページに掲載しています。

http://www.pcs.gr.jp

48大規模な流出油事故に備えて

Page 50: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石 油 精 製 部 門 の 環 境 対 策

さまざまな環境対策

わが国の石油産業はクリーンな製油所を目指し、大気、水質、騒音、

廃棄物、緑化対策などに努力しています。

また、石油製品の使用に伴う環境負荷を低減するため、環境に配慮

した製品の供給を進めています。世界で初めて達成した全面無鉛化

ガソリンや軽油などがその例です。

さらに、石油産業は、製油所、油槽所における環境対策をより適切

に実施するため、環境管理体制の充実を図ってきました。

その代表的な例として、1996年9月に発効したISO(国際標準化

機構)の環境管理システム(同年10月、JIS(日本工業規格)として制定)

の取得があります。

石油各社は、国際規格「ISO14001」の認証取得および同等の環境

管理システムの構築に取り組んでいますが、この認証を取得すること

により環境改善活動が組織的に着実に実行される体制にあること

が、国際的に認められたことになります。

大気汚染対策

■硫黄酸化物(SOx)対策製油所では、ボイラーや加熱炉などの燃料(自家燃料)として硫黄

分の少ない精製ガス(オフガス)や低硫黄重油を使用し、SOxの排出

低減を図っています。また、排煙中の硫黄化合物を排煙脱硫装置で

回収しています。

重油脱硫装置や灯油・軽油・潤滑油水素化精製装置など製品の

硫黄分を低減する装置から発生するガスは、多量の硫化水素を含ん

でいるため、ガス洗浄装置で硫黄化合物を取り除いた後、自家燃料と

して利用されます。硫黄化合物は硫黄回収装置で処理し、硫黄を回収

します。回収しきれなかった少量の硫黄化合物は、テールガス処理装

置で処理しています。

■窒素酸化物(NOx)対策製油所のボイラーや加熱炉から発生するNOxを削減するため、低

NOxバーナー、二段燃焼など燃焼方法の改善に努めるとともに、排

煙中の窒素酸化物を排煙脱硝装置で除去しています。

■ばいじん対策製油所では、自家燃料として各装置から副生される石油ガスを可

能な限り利用しているため、ばいじんの排出量は非常に少なくなって

います。流動接触分解装置(FCC)、石炭や重油を燃料とする大型ボイ

ラーなどにはサイクロン、電気集塵機を直列二段に設置する等、ばい

じんの排出防止に努めています。

■揮発性有機化合物(VOC)対策VOCは、蒸発して大気中に放出されると、SPM(浮遊粒子状物質)

や光化学オキシダントに変化するといわれています。製油所では主に

貯蔵タンクや出荷設備から発生します。

このため、原油タンクやガソリンタンクなどは炭化水素ベーパーの

蒸発を抑制するため、密閉構造のフローティングルーフ式あるいはイ

ンナーフローティングルーフ式となっています。また、タンク車、タン

クローリー、船出荷時に発生する炭化水素ベーパーは、ベーパー回収

装置により回収されています。

石油連盟では2010年度までに2000年度比30%削減を目標とし

た自主行動計画を策定し、VOC排出抑制に取り組んでまいりました。

2010年度の排出量は2000年度比31%の削減となり、その後も取り

組みを継続し、2011年度の排出量は2000年度比32%の削減とな

りました。 

排煙脱硫・脱硝装置

49 石油精製部門の環境対策

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■わが国の環境規制と石油業界の設備投資額

出所:石油連盟

設備投資

環境規制

1970 1980 1990 2000 2010

重油脱硫 約5,500億円

ガソリン無鉛化 約3,000億円

軽油低硫黄化 約2,000億円 ガソリン・軽油の低硫黄化等約3,000億円(試算)

ベンゼン低減化 約1,400億円

四日市公害訴訟判決(1967~1972年)

自動車排ガス規制(1978年)

軽油の低硫黄化(2004年末)(50ppm)

ガソリンの低硫黄化(2004年末)(50ppm)

新長期排ガス規制(ガソリン、ディーゼル…2005年)

環境省設置(2001年)

軽油の超低硫黄化(2007年)(10ppm)

ガソリンの超低硫黄化(2008年)(10ppm)

ディーゼル排ガス規制短期…1993年長期…1997~1999年

環境庁設置(1971年)

ベンゼン環境基準設定(1996年~2000年)

(      )

2008 2009 2010 2011年度末

2007200620052000199519901985198019751973

単位:千バレル/日 ( )内は装置基数■重油脱硫装置能力の推移(各年度末現在)

出所:石油連盟

1,509(43) 1,451

(40)

862(29)

1,200(37)

1,441(44) 1,387

(41)1,267(40)

194(5)

289(7)

459(12) 459

(12)415(12)

616(16)

668(24)

911(30)

982(32) 928

(29) 852(28)

893(27)

550(14)

901(26)

1,460(40)

550(14)

910(26)

1,460(40)

550(14)

910(26)

1,449(39)

550(14)

899(25)

1,448(40)

548(14)

900(26)

1,447(40)

548(14)

899(26)

1,447(40)

548(14)

899(26)

1,358(40)

500(14)

858(26)

直接脱硫装置

間接脱硫装置

50石油精製部門の環境対策

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有害化学物質対策

化学物質による環境汚染対策は、少数の個別物質による比較的高

濃度の汚染に起因する健康問題を中心に進められてきましたが、大

気汚染防止法の改正によって、1997年4月よりベンゼンなどの有害

化学物質が法規制の対象とされました。

石油産業は、ベンゼン排出抑制対策を進めるため、96年10月「有

害大気汚染物質に関する自主管理計画」を策定(01年7月に改定)し、

ガソリン中のベンゼン含有量を2000年から1%以下とするなど品質

面での所要の対策を実施する一方、VOC対策を進めることにおい

て排出面からの対策も行っています。

また、99年7月には「特定化学物質の環境への排出量の把握等お

よび管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法※)が公布され、これに

対応して石油産業では特定化学物質の環境への排出量、移動量の把

握報告を行っています。※PRTR:Pollutant Release and Transfer Register (化学物質排出移動量届出制度)

水質保全、産業廃棄物対策など

■水質保全製油所では、冷却用として多量の水を使用していますが、冷却水は

石油と直接接触しない間接冷却水となっています。工業用水は、循環

再利用により、使用量および排水量を低減し、海水を利用している場

合は、万が一にも油分が環境中に排出されないように厳しいチェック

を行っています。

さらに、プロセス上生じた排水はオイルセパレーターで排水から

油分を回収し、凝集剤による化学処理、活性汚泥、活性炭処理など高

度の排水処理装置によって処理された後、ガードベースン(最終排

水口の前にある貯留池)を経てクリーンな水にして排出しています。

■騒音対策製油所では、生産・出荷段階および動力設備から種々の音が発生

しています。石油各社は、タンクを防音壁として活用するなど製油所

レイアウトの工夫や低音バーナーの設置、吸音材の取り付け、遮音壁

の設置など、最適な騒音対策を行っています。

■産業廃棄物対策製油所では、廃油、汚泥、廃酸、廃アルカリや電気集塵機の捕集ダス

トなどの廃棄物が発生します。

石油各社は、廃油は再精製し、汚泥、捕集ダストはセメントなどの原

材料用に、廃アルカリは水硫化ソーダにするなど可能な限り廃棄物を

再資源化し、再資源化できないものは適切に廃棄処分しています。

2011年度の最終処分量は0.2万トンとなり、1990年度に比べ約

98%の大幅な減量を行いました。

■緑化対策石油各社は、事業所内とその周辺の緑化に努めています。製油所

では敷地面積の約10%を緑地とし、樹木や芝生を植え地域環境に配

慮しています。製油所の緑地面積の割合は、一般の製造業に比べて

高い水準となっています。

脱ベンゼン装置 排水処理施設

51 石油精製部門の環境対策

Page 53: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

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20102009200820072006200520042000 2011年度

6.145.49 5.36

4.944.26 4.194.404.61

5.65

■VOC排出量の推移

出所:石油連盟「VOC排出抑制自主行動計画」

(注):石油連盟「VOC排出抑制自主行動計画」目  標: 2010年度の排出量を2000年度比で30%削減(達成済み)対  象: 原油、ナフサ、ガソリンの貯蔵、出荷に係わるVOC排出量主な対策: 製油所ローリー出荷設備へのベーパー回収装置の設置 固定屋根式タンクの内部浮屋根式タンクへの改造

単位:万t /年

目標 : 30%削減実績 : 31%削減(目標達成)      (2000年度比)

0

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2011年度

201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990

0.2万t

■製油所の廃棄物最終処分量の推移と目標

出所:石油連盟「地球環境保全自主行動計画」

単位:万t

最終処分量

52石油精製部門の環境対策

Page 54: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

自 動 車 燃 料 等 の品 質 向 上 に 向 け て

■品確法強制規格(2013年4月現在)ガソリン

現行の規格 規格値鉛 検出されない硫黄分 0.001質量%以下MTBE 7体積%以下ベンゼン 1体積%以下灯油混入 4体積%以下メタノール 検出されない実在ガム 5mg/100ml以下色 オレンジ色酸素分※1 1.3質量%以下エタノール※1 3体積%以下

※1 E10対応自動車として道路運送車両法の登録または車両番号の指定を受けている自動車用のガソリンについては、酸素分は

「3.7質量%以下」、エタノールは「10体積%以下」として認められている。

軽 油現行の規格 規格値セタン指数 45以上硫黄分 0.001質量%以下蒸留性状 90%留出温度360℃以下トリグリセリド 0.01質量%以下脂肪酸メチルエステル(FAME)※2 0.1質量%以下

灯 油現行の規格 規格値硫黄分 0.008質量%以下引火点 40℃以上色 セーボルト色+25以上

※2 上記は現在日本で一般的なFAMEを混合しない軽油の場合。 FAMEの混合は品確法強制規格として0.1質量%超5.0質量%以下として認められており、 その場合、メタノール(0.01質量%以下)、酸価(0.13mgKOH/g以下)、ぎ酸・酢酸・プロピオン酸(合計0.003質量%以下)、 酸化安定性(規定の試験法で酸化安定度65分以上または酸価の増加0.12mgKOH/g以下)の規定がある。

■品質表示制度(SQマーク) Quality certification system品質のうち、「性能」面については、強制規格項目を設けず、標準的な品質を満たしている製品については、販売業者が「SQ(Standard Quality)マーク」を表示できることになっている。対象はガソリン(レギュラー、ハイオク)、軽油、灯油。

燃料品質改善への取り組み

■ガソリン、軽油の品質改善1970年代のモータリゼーションの急激な進展により都市型の大

気汚染問題が発生したため、石油産業は燃料側からの対策を推進し

てきました。

四アルキル鉛は、ガソリンのオクタン価を高めるために使用されて

いましたが、レギュラーガソリンについては75年2月から、プレミアムガ

ソリンについては86年12月から世界に先駆けて使用を中止しました。

90年代以降は自動車の排ガス浄化装置の高度化に対応し、これら

の能力を低下させないためにガソリン、軽油の硫黄分の低減を進め、

05年1月からは品質規制に先駆けて自主的にサルファーフリー(硫

黄分10ppm以下)としました。

この他、有害化学物質であるベンゼン低減のために、ガソリン中

のベンゼン含有量を品質規制に対応して2000年1月から1%以下

に低減しました。また、光化学スモッグの原因となる大気中の炭化水

素を削減するため、01年から夏期のガソリンの蒸気圧低減に自主

的に取り組み、05年以降は夏期のガソリン蒸気圧を65kPa以下と

しています。

■灯油の低硫黄化暖房用の灯油は、室内で燃焼させても支障がないように硫黄分は

0.008%(80ppm)以下となっています。これは世界でもトップクラ

スの水準です。

揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)

1996年4月に石油製品の輸入が自由化されました。このため、す

でに世界的に高水準であったわが国のガソリン、灯油、軽油の品質を

維持するために、従来の「揮発油販売業法」は「揮発油等の品質の確

保等に関する法律」(品確法)に改正されて、環境・安全面からの法的

規制として品質基準(強制規格)が設定され、石油精製業者や販売業

者にそれらの維持義務が課されました。また、強制規格以外に性能面

の項目も加えて標準的な品質を満たしていることを示す品質表示制

度として、SQマークが導入されました。

当初、強制規格は、ガソリンについて8項目、軽油について3項目、

灯油について3項目でしたが、以降必要に応じて追加されています。

石油製品の輸入自由化以降、さまざまな輸入業者が新規参入する

中で、当初想定されていなかったため規制対象となっていなかった高

濃度アルコール含有燃料(全体の50%以上をアルコール分が占め

る)がガソリン自動車用の燃料として販売され、エンジン発火等の事

故が発生しました。このため、経済産業省は2003年8月、アルコール

混合燃料についても品確法の対象とし、酸素分1.3%以下、エタノー

ル3%以下の2項目をガソリンの強制規格に追加し、一般のガソリン自

動車用として高濃度アルコール含有燃料を販売することを禁止しま

した。

近年、バイオ燃料の実証的な取り組みが各地で行われていること

から、07年3月末には、バイオディーゼル燃料の利用環境整備の一

環として、軽油の強制規格に脂肪酸メチルエステル(FAME)、トリグ

リセリド他4項目が追加されました。また09年2月、エタノール、

ETBE等を揮発油(ガソリン)等へ混和する事業者の登録制度・品質

確認制度が創設されました。

このように、今後も燃料の適正な品質が維持されるように品確法

を適宜改正する等の対応が必要です。

53 自動車燃料等の品質向上に向けて

Page 55: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

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2009年200820072006200520042003200220012000

■わが国の 軽油 中に含まれる硫黄分の現状

わが国の規制

単位:ppm

単位:ppm

石油業界の自主的取り組み

50ppm

10ppm

50ppm50ppm

500ppm

100ppm

10ppm

わが国の規制

石油業界の自主的取り組み

3年前倒し

21ヵ月前倒し

2年前倒し

2005年1月~(全国供給開始)

2005年1月~(全国供給開始)

■わが国の ガソリン 中に含まれる硫黄分の現状

ガソリン・軽油のサルファーフリー化について

ディーゼル車などから排出される窒素酸化物(NOx)やすす・粉

塵などの粒子状物質(PM)による大気環境の悪化が大きな社会的

問題となったため、1989年にディーゼルトラックやバスから排出さ

れるNOx、PMを短・長期的に削減していく排ガス規制の強化が打

ち出されました。ディーゼル車に導入された排気浄化システム

(EGR・酸化触媒など)を円滑に機能させるため、石油業界は、それ

まで0.5%(5,000ppm)以下であった硫黄分を92年から0.2%

(2,000ppm)以下、97年10月から0.05%(500ppm)以下まで

低減、高性能の「軽油深度脱硫装置」を新設するなど約2,000億円

の設備投資を行いました。その後更なるPMの軽減のため、2007

年から05年に実施が前倒しされた新長期規制によってDPF(ディー

ゼル微粒子除去装置)等の後処理装置の導入が必要となった結果、

2000年11月、04年末までに硫黄分を0.005%(50ppm)以下と

する規制が設けられました。また、東京都は99年8月から都独自に

「ディーゼル車NO作戦」を展開し、05年からの国の規制に先駆け

て、03年10月より、自動車メーカーに対し新たなPM対策を採用し

たディーゼル車の市場投入と、東京都の排ガス規制によって使用過

程車に対するDPFの装着を義務付けました。

そこで、石油業界は、ディーゼル車の排出ガス低減対策の緊急性お

よび社会的要請に鑑み、03年10月から硫黄分0.005%(50ppm)

以下の低硫黄軽油を部分供給することを決定しました。しかしなが

ら、大阪府、愛知県などの地方自治体や軽油ユーザー(トラック、バス

業界など)からの早期供給の強い要請があり、また、東京都からは環

境確保条例の円滑な実施のため4月から前倒し供給することや全国

供給についても要請がありました。これを受けて、設備投資の前倒し

実施などによる努力の結果、国の規制(04年末)より1年9ヵ月早い

03年4月から50ppm軽油の全国供給を自主的に開始しました。

更なる低硫黄化については、環境基本計画(02年1月、東京都)で

「遅くとも2008年までにガソリン・軽油中の硫黄分を0.001%

(10ppm)以下に低減することを求める」とされ、03年6月の石油製

品品質小委員会でも「ガソリンについては08年、軽油については07

年よりサルファーフリーとすることが適当」とする答申が示されまし

た。ガソリン、軽油中の硫黄分を10ppm以下とするサルファーフリー

化は、大気汚染対策としての自動車排ガスのクリーン化に効果がある

だけでなく、サルファーフリーの特性を活用した排ガス処理装置を装

備すればエンジンの燃費性能を最大限引き出して燃費の向上に効果

を発揮し、地球温暖化対策としてのCO2削減につながります。

そのため、石油業界は、ガソリン・軽油のサルファーフリー化の早期

実現に向けて、約3,000億円を投じて新技術の研究開発や脱硫設備の

新設・改造等を推進してきました。その結果、04年9月、石油連盟は

「05年1月より、世界に先駆けてサルファーフリーガソリン・軽油を全

国に向けて供給開始する」ことを決定・公表し、大気汚染対策に先進

的な取り組みを進める東京都を訪問して石原知事と会談しました。

石油業界としては、環境対策の推進のため、大気汚染対策と地球

温暖化対策(CO2削減)に大いに貢献するサルファーフリーガソリン・

軽油の効果が最大限発揮されるよう直噴エンジン、高性能排ガス処

理装置のより一層の普及促進を期待しています。

54自動車燃料等の品質向上に向けて

Page 56: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

地 球 温 暖 化 問 題 と 石 油

15.6%第2約束期間参加国

1997年(京都議定書採択時)

世界全体227億トン

2010年世界全体300億トン 25.4%

第1約束期間参加国

米国24%

米国17.7%

EU12.1%

豪州 1.3%その他 2.2%※1

ニュージーランド 0.1%日本 3.8%ロシア 5.2%カナダ 1.8%

中国24.0%

インド5.4%

その他26.5%

その他12%

その他24%

中国14%

インド4%

EU17%

日本 5%

■世界のCO2排出量と京都議定書のカバー率

削減義務対象国59%

41%

①米国は議定書を批准せず②中国等途上国の排出量増加

※1 ウクライナ、ノルウェー、スイス、クロアチア、アイスランド、ベラルーシ、リヒテンシュタイン、モナコ

※2 第1約束期間に参加せず第2約束期間に参加している国がある(カザフスタン等)

※3 四捨五入の関係により合計が一致しない場合がある

出所: IEA CO2 Emissions from Fuel Combustion 2012

地球温暖化問題の国際的動向

国際的な地球温暖化対策の枠組みは、大気中の温室効果ガスの濃

度を安定化させ、現在および将来の気候を保護することを目的とする

「国連気候変動枠組条約」と、同条約に基づく「京都議定書」を中心に

議論が行われています。

1997年に採択された京都議定書は、08年から12年までを第1約

束期間として、日米欧等の先進国に対し温室効果ガスの削減義務を

課しましたが、米国が01年に京都議定書の不参加を決定、また排出

量増加が著しい中国やインド等を含む途上国には削減義務が無いこ

とから、第1約束期間参加国のカバー率は約4分の1にまで低下して

います。

わが国としては、13年以降も排出削減の取り組みは継続するもの

の、現在の京都議定書の枠組みでは、すべての主要排出国が参加す

る公平かつ実効性のある国際枠組みの構築に資さないとの立場か

ら、京都議定書第2約束期間に参加しないことを表明しました。20年

を目標年次とする第2約束期間は、欧州を中心に、世界の排出量の約

15%をカバーする国々で推進されていきます。

地球温暖化を巡る国内動向

■温室効果ガス排出量の推移11年度のわが国の温室効果ガス排出量(速報値)は、東日本大震

災による火力発電比率の上昇等により、京都議定書第1約束期間の

基準年(90年度)と比べ3.6%増加となりました。しかし、森林吸収源

対策や京都メカニズムクレジット(政府及び民間分)を反映した排出

量は、08年度から11年度の4年平均で90年度比9.2%減少してお

り、京都議定書第1約束期間のわが国の目標(90年度比6%減)を下

回っています。

11年度の部門別に見たエネルギー起源CO2排出量(速報値)は、

産業部門が90年度より10%以上排出量を減少させた一方、業務そ

の他部門や家庭部門は基準年より50%近く排出量を増加させてい

ます。

■産業界の取り組み経団連を中心とした産業界は、97年に、京都議定書第1約束期間の

対策として、各業種が自らの特性に応じて原単位やCO2排出量等の

目標を設定し、その達成を社会的公約と捉え、進捗を毎年度フォロー

アップする「経団連自主行動計画」を策定しました。このような産業界

の主体的取り組みは、着実に成果をあげ、政府が掲げる国内対策の

中で、産業界における対策の中心的役割を果たしていると位置付け

られました。

こうした経験を踏まえ、経団連及び主要産業界は、2009年12月、自

主行動計画に続く取り組みとして「低炭素社会実行計画」を公表しま

した。石油業界も、製油所の省エネルギー対策を中心とした「石油業

界の低炭素社会実行計画」を策定しています。

55 地球温暖化問題と石油

Page 57: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

6 9 127 10 138 11 14 15

京都議定書第1約束期間目標

2011年(速報)

2010年

2009年

2008年

1990年(基準年)

年度上段:排出量下段:基準年比

■わが国の温室効果ガス排出量の推移

出所:環境省

温室効果ガス排出量(億トン)

11.5▲8.8%

10.87▲13.8%

12.61±0.0%

12.81+1.6%

12.06▲4.4%

11.34▲10.1%

12.58▲0.2%

12.09▲4.1%

13.07+3.6%

11.86▲6.0%

森林吸収源・京都メカニズムクレジット(政府分・民間分)を考慮した場合

平 均▲9.2%

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

2011(速報)100806040200989694921990

年度

■わが国の部門別エネルギー起源CO2排出量の推移

出所:環境省・経済産業省

産業部門製造業(工場)、農林水産業、鉱業、建設業

運輸部門

排出量

自動車(自家用車を含む)、船舶、航空機、鉄道

業務その他部門事務所、ビル、サービス業等

エネルギー転換部門発電所・製油所等

家庭部門家庭における燃料・電力の使用(自家用自動車は除く)

482百万t

217百万t

164百万t

127百万t

68百万t

420百万t(基準年比▲12.8%)

230百万t(基準年比+5.8%)

247百万t(基準年比+50.6%)

189百万t(基準年比+48.1%)

86.1百万t(基準年比+26.8%)

(注): 発電および熱発生に伴うCO2排出量を 各最終消費部門に配分した排出量

単位:百万tCO2

■製油所における省エネ対策の例省エネ対策例

塔槽および配管の保温・保冷の徹底加熱炉の効率改善各種熱交換器の設置・洗浄フレアーガスの回収加熱炉の空気量低減精製装置間の相互熱利用プロセスタービン設置(圧力エネルギーの回収)ポンプの容量最適化(インペラーカット)コンピューター制御の推進運転管理値の見直しモーター化、コンプレッサー改良等、動力系の効率改善高効率機器の導入スチームトラップの管理強化、蒸気使用量の削減ボイラー空気量低減コージェネレーションの導入

石油業界の取り組み

石油産業は、05年にサルファーフリー自動車燃料の供給を開始

するなど、常に環境対策のトップランナー「環境先進産業」として、

積極的に地球温暖化対策にも取り組んでいます。経団連自主行動

計画の着実な実行を中心に、自らの事業活動において省エネルギー

を推進するとともに、石油製品の消費段階にあたる運輸部門、民生・

業務部門における排出削減にも積極的に貢献しています。

■「石油業界の地球環境保全自主行動計画」石油連盟では、経団連の呼びかけに応え、97年2月に「石油業界の

地球環境保全自主行動計画」を策定し、2012年度まで、「製油所エネ

ルギー消費原単位」の改善の数値目標達成に取り組んでいます。

製油所の省エネルギーの指標である「製油所エネルギー消費原

単位」は、熱回収の高度化、設備の効率化・最適化等の推進により、

11年度には90年度比16%改善されましたが、引き続き省エネの取

り組みを推進しています。なお、07年10月には、取り組みの進捗状

況と、今後の石油需要の減少による影響等を踏まえ、目標値を90年

度比10%から13%改善へ上方修正を行いました。

■製油所における省エネ対策製油所では広い範囲で省エネルギー対策を実施しており、製油所

における省エネルギーはこれら多数の個別対策の積み上げとして成

り立っています。

その対策内容は、装置間の相互熱利用拡大や廃熱・廃エネルギー

の回収、最新の制御技術・最適化技術の導入による運転管理の高度

化、高効率装置や触媒の採用、設備の適切な維持管理等、多岐に亘り

ます。以下に一例を示します。

56地球温暖化問題と石油

Page 58: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■政府支援補助事業、コンビナートルネッサンス事業に 採択された省エネ技術・対策の例

導入された省エネ技術

1 可変速ガスの圧縮機の導入

2 スチームトラップ排出蒸気回収による排熱回収

3 高性能トレイへの更新による加熱炉使用エネルギーの削減

4 デスーパーヒーター設置によるスチーム回収

5 廃熱ボイラーの設置

6 産業用ヒートポンプシステムを組み込んだ省エネ型プロピレン精留装置の設置

■省エネルギー優秀事例全国大会・ 省エネ大賞(組織部門)受賞状況

省エネルギー優秀事例全国大会

(90年〜08年度合計受賞件数)

省エネ大賞(09年度受賞件数)

省エネ大賞(11年度受賞件数)

経済産業大臣賞 5件 1件 —

資源エネルギー長官賞 12件 1件 —

経済産業局長賞 29件 — —

省エネルギーセンター会長賞 20件 — 1件

審査委員会特別賞 — — 1件

これらの取り組みは、(一財)省エネルギーセンター実施の「省エ

ネルギー優秀事例全国大会」(2008年度まで実施)、「省エネ大賞

(組織部門)」において、各社の製油所が次の通り受賞し、評価されて

います。

政府が行っている省エネルギーに関する補助支援事業を積極的

に活用し、先進的技術を導入して省エネルギー対策に努めていま

す。また、複数の製油所が、隣接する工場群(石油コンビナート)の高

度な一体運営を目指したコンビナート・ルネッサンス(RING)事業※

に参加し、直接的な省エネルギーに限らず、原料融通、副生物の利用

や生産管理面も含めた効率化を図り、プロジェクト全体としてのエ

ネルギー消費削減に取り組んでいます。

※石油産業および化学産業に関連する企業が、単独企業のみでは達成困難なコンビナート域内の省資源、省エネルギーの向上を図るため、石油コンビナート全体の横断的かつ高度な運営機能の融合を行うための技術開発事業。

これら地道な省エネ努力の積み重ねにより、日本の製油所は世界

でも最先端の効率を達成しています。

■CO2対策としてのサルファーフリー自動車燃料サルファーフリー(硫黄分10ppm以下)のガソリン・軽油は、大

気汚染対策としてのNOx・PM排出量の削減に貢献するだけでな

く、燃費向上に役立つためCO2排出削減効果も期待でき、温暖化対

策としても有効です。石油業界では、国の規制に先立ち、05年1月

からサルファーフリー自動車燃料の全国供給を開始しました。

■技術開発や国際協力の推進温暖化対策は、技術開発によるブレークスルーが重要です。石油

各社も、環境負荷の小さい燃料電池や水素SSの実証等、未来技術

の開発を進めています。また、石油各社は、地球規模での温室効果

ガス削減、途上国への技術協力推進等の観点から、海外プロジェク

トや各種炭素基金への参画など、国際的取り組みも推進していま

す。特に、CDM(クリーン開発メカニズム)については、石油連盟

会員の4社5件のプロジェクトが日本政府承認済みです。

57 地球温暖化問題と石油

Page 59: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

【概要】石油業界の低炭素社会実行計画   ~石油の高度・有効利用によるエネルギー安定供給と温暖化対策の両立~

2020年度に向けた具体的な取り組み

革新的技術開発

基 本 方 針石油業界は、地球環境の保全や循環型社会の形成、わが国経済社会の持続的発展に積極的に貢献することを基本理念として、①石油の高度利用かつ有効利用、②持続可能な再生可能エネルギーの導入に取り組むことで、低炭素社会の形成を目指すとともに、エネルギー政策の「3E」(安定供給の確保、環境への適合、経済性)の同時達成を追求していく。

石油製品の製造段階(製油所)

■重質油の詳細構造解析と反応シミュレーションモデル等を組み合わせた「ペトロリオミクス技術」開発■二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)

国際貢献

■世界最高水準のエネルギー効率を達成したわが国石油業界の知識や経験を、途上国への人的支援や技術交流で活用

■既存最先端技術の導入や近隣工場との連携推進等により、世界最高水準のエネルギー効率の維持・向上を目指す

■2010年度以降の省エネ対策により、2020年度において原油換算53万Sの省エネ対策量を達成する※1,2,3

※1 約140万tCO2に相当 ※2 政府の支援措置が必要な対策を含む※3 想定を上回る需要変動や品質規制強化など業界の現況が大きく変化した場合、

目標の再検討を視野に入れる。2015年度には目標水準の中間評価を行う

【省エネ対策】① 熱の有効利用(高効率熱交換器の導入等)・・・・・・・・・・・・15万S② 高度制御・高効率機器の導入(運転条件の最適化等)・・・・ 6万S③ 動力系の効率改善(高効率モーターへの置き換え等)・・・・ 9万S④ プロセスの大規模な改良・高度化(ホットチャージ化等)・・23万S

石油製品の輸送・供給段階■物流の更なる効率化(油槽所の共同利用、製品の相互融通推進、タンクローリー大型化等)■給油所の照明LED化、太陽光発電設置 等

石油の消費段階①バイオ燃料の導入■LCAでの温室効果ガス削減効果、食料との競合問題、供給安定性、生態系への配慮など持続可能性が確保され、安定的・経済的な調達が可能なバイオ燃料を導入していく■エネルギー供給構造高度化法で示された目標量、2017年度に原油換算50万S※4の着実な導入に向け、政府と協力しつつ持続可能性や供給安定性を確保しながらETBE方式によるバイオ燃料の利用を進めていく※4 約130万tCO2の貢献

②クリーンディーゼル乗用車普及への働きかけ

③高効率石油機器の普及拡大■潜熱回収型高効率給湯機(エコフィール)の普及拡大に取り組む

④石油利用燃料電池の開発普及■既存の石油供給ネットワークを活用可能な石油利用燃料電池の普及拡大(LPGなどにより水素を供給)

⑤燃費性能に優れた潤滑油の普及(ガソリン自動車用)

120

115

110

105

100

95

90

日本 先進アジア諸国(注2)

西ヨーロッパ(15ヵ国)

米国・カナダ

100 101103

113

高効率↓

■石油製品1Sを作るのに必要な エネルギー消費指数(注1)の比較(2004年度実績)

Solomon Associates社の調査結果を基に作成(注): 1. 同社独自の指標で、換算通油量を用いており、自主行動計画で採用している エネルギー消費原単位と類似した性質を持つ 2. 韓国・シンガポール・マレーシア・タイが対象。中国は含まない

(日本=100として比較) 0%

5%

10%

15%

20%2011

年度

201020092008200720062005200420032002200120001999199819971990

製油所エネルギー消費原単位

対1990年度改善率

■1990年以降の製油所の省エネルギー実績 (エネルギー消費原単位の推移)

目標:13%改善

2011年度16%改善

58地球温暖化問題と石油

Page 60: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

地球温暖化問題と石油

ディーゼルシフトについて

ディーゼル乗用車はガソリン車に比べ燃費が優れ、地球温暖化防

止の観点からCO2削減効果が高く、欧州では新車販売台数の約5割

をディーゼル乗用車が占めています。欧州の最新のディーゼル車は

1990年代後半以降の技術革新等によって大幅な性能向上と排ガス

のクリーン化が進んでいますが、わが国での販売比率は0.1%という

状況です。これは欧州に比べて厳しい排ガス規制(NOx規制)が定め

られていること、車両価格が高いこと、イメージが悪いといったことが

主な普及の阻害要因となっています。最新のディーゼル車は技術開

発の進歩により、高出力化や排ガスのクリーン化が図られ、静寂性が

格段に向上しているにもかかわらず、消費者の認知度が極めて低い

というのが現状です。

このような状況の中で、2004年9月に経済産業省に「クリーン

ディーゼル乗用車の普及・将来見通しに関する検討会」が設置され、

05年4月にまとめられた報告書では、ディーゼル乗用車の普及

(ディーゼルシフト)は運輸・産業部門のCO2排出量削減に効果的で

あることが明らかになりました。例えば、ガソリン車に比べて燃焼効率

が優れたディーゼル車の保有台数比率が全体の10%にまで増加し

た場合、その優れた燃費性能によって運輸部門におけるCO2削減効

果は200万t-CO2/年と試算されています。さらに、わが国の製油所

の装置体系や製品生産構成を前提としたシミュレーションをしたとこ

ろ、ガソリンの製造時に排出されるCO2の方が軽油の製造時に排出

される量よりも多いため、軽油需要の10%(400万S)分がガソリン

から軽油へシフトした場合は、製油所におけるCO2削減効果は170

万t-CO2/年にも上ることが明らかになりました。また、05年4月に閣

議決定した京都議定書目標達成計画において、「…将来、ガソリン乗

用車と遜色のない排出ガス性能を有するクリーンなディーゼル乗用

車が開発される場合に、その普及について検討する」こととされてい

ます。

07年2月には、改定されたエネルギー基本計画において、ディーゼ

ルシフトは運輸部門における省エネ対策のひとつとして明確に表記

され、わが国の運輸部門におけるCO2対策として注目を集めていま

す。そうした中で、5月には「次世代自動車・燃料イニシアティブ」が

取りまとめられ、地球温暖化とエネルギーセキュリティ、さらには国際

競争力強化の観点から、最新の排ガス規制を満たしたクリーンディー

ゼル車の早期本格導入を目指すことが提言されました。

石油業界は、かねてから自動車の排ガス処理能力を向上させるた

め、約3,000億円の設備投資を行い、05年1月には、世界に先駆けて

サルファーフリー軽油の全国供給を実現しました。そしてこの高品質

な燃料を生かした燃費性能に優れるディーゼル車の普及に期待をし

ていました。近年わが国でも関係方面の審議・提言を受けてクリー

ンディーゼル車が大気環境対策と温暖化対策の両面から再評価さ

れ、その政策的位置付けは大きく変化しています。

08年1月、「次世代自動車・燃料イニシアティブ」の提案を受け、ク

リーンディーゼル車の本格普及に向けた環境整備を目的として、政

府、自治体、自動車業界、石油業界が参画する「クリーンディーゼルに

関する懇談会」が設置されました。懇談会ではCO2対策に貢献するク

リーンディーゼル車の普及、イメージ改善、高コストへの対応、ディー

ゼル技術の将来展望のあり方などが検討され、08年6月、「クリーン

ディーゼル普及推進戦略」および「クリーンディーゼル普及推進方策

(戦略詳細版)」が取りまとめられました。その中で、クリーンディーゼ

ル車について、改めて運輸部門のCO2排出削減に寄与し、地球温暖

化対策に大きく貢献することなど政策上の意義が確認されるととも

に、イメージ改善戦略や税制優遇措置が講じられました。また、ディー

ゼルのイメージ改善に向けた情報発信、地域特性を活かした普及促

進策として、ディーゼルに適した都市構造でディーゼル比率も高く、

環境産業が盛んであるなどの地域特性を持つ北海道では、7月に開

催された洞爺湖サミットで展示会や試乗会など、各種イベントが展開

されました。

低炭素社会に向けて、ハイブリッド車、電気自動車とともに、短中期

的な自動車の環境対応策として中心に位置付けられているクリーン

ディーゼル車は、サルファーフリー軽油の供給という環境整備はすで

に整っており、CO2削減効果の観点から、その市場創出・普及拡大

が重要です。次世代自動車として税制優遇も措置されていますが、今

後も、政府、自治体、自動車業界との連携のもと、本格普及に期待して

います。

59

Page 61: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

地球温暖化問題と石油

■ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの燃費比較 ■ディーゼルシフトによるCO2削減効果(試算)

高速燃費(R/100km)

ガソリンエンジン

市街地燃費(R/100km)

E240(AT)

E270 CDI(AT)

7.8

5.3

6.2

4.4

6.6

4.9

-32%

-29%

-26%

14.8

9.8

10.7

7.2

10.6

7.5

-34%

-33%

-29%

①運輸部門におけるCO2削減の効果

200万トン-CO2の削減(日本自動車研究所試算)

出所:クリーンディーゼル乗用車の普及・将来見通しに関する検討会(2005年4月)

MB-Eクラス

1.8T(MT)

1.9TDI(MT)

VW-GOLF

2.0G(MT)

2.0D(MT)

アベンシス

ディーゼル乗用車保有比率が10%アップすると、

②製油所におけるCO2削減の効果

170万トン-CO2の削減(石油連盟試算)

軽油需要の10%(400万S)分がガソリンから軽油へシフトすると、

ディーゼルエンジン

19900

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

91 92 93 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04年

イメージ改善策、普及促進策の具体化について検討

軽油代替新燃料の開発・導入の促進策の具体化について検討

クリーンディーゼルの将来展望について検討

■日欧のディーゼル乗用車販売比率の推移

欧州

日本

出所:世界自動車統計年報

単位:%

イメージ改善・普及促進WG(専門家会合)

新燃料検討WG(専門家会合)

将来展望WG(専門家会合)

クリーンディーゼルに関する懇談会(大臣級会合)(政府、自治体、自動車業界、石油業界)

検討指示報告

■クリーンディーゼル車の普及支援策

①クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(平成24年度: 292億円) 本格的に市場投入される電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、クリーンディーゼル自動車の導入および充電設備の設置に対する補助を行い、普及促進を図る。

(1)補助対象車両等  ●自 動 車 : 電気自動車、プラグインハイブリッド車、クリーンディーゼル自

動車  ●充 電 設 備

(2)補助率 ●自 動 車 : 通常車両との価格差の1/2以内  ●充 電 設 備 : (本体価格の)1/2以内

● クリーンディーゼル乗用車は、省エネルギー・省CO2に資することから、「低炭素社会づくり行動計画(平成20年7月閣議決定)」にて、次世代自動車として位置づけられ、その普及促進について政策的に重要な位置づけをしているところ。

● クリーンディーゼルの初期需要の創出に向けては、ガソリン乗用車との価格差、ディーゼル商用車の新規制対応のためのコストアップに対応するため、導入支援や税制優遇(エコカー減税)などの普及支援策を実施。

< 導 入 補 助 制 度 >

条 件(対象者、対象行為、

補助率等)国 申請者民間団体等

補 助 補助(1/2以内等)

①自動車重量税・自動車取得税の時限的減免措置(新エコカー減税) 環境性能に優れた自動車に対し、自動車重量税(平成24年5月1日~平成27年4月30日)・自動車取得税(平成24年4月1日~平成27年3月31日)を時限的に減免する。

< 税 制 優 遇 措 置 >

クリーンディーゼル乗用車(平成21年排ガス規制適合車)

自動車重量税…

自動車取得税…

①新車・新規検査:② 2 回 目 車 検:

③新 車:④中古車(控除額):

免税50%軽減

非課税(中古車購入時の取得価額から)45万円控除

60

Page 62: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

バ イ オ マ ス 燃 料 へ の取 り 組 み

「バイオガソリン」の販売

農作物や木材等を原料とするバイオマス燃料は、燃焼時に発生す

るCO2の排出量が計上されないカーボンニュートラル効果の点か

ら、地球温暖化対策に効果があるエネルギーとして各国で注目を集

めています。わが国においては、京都議定書目標達成計画(2005年4

月)の中で、輸送用燃料において50万S(原油換算)のバイオマス由

来燃料の導入目標値が定められています。

石油業界は、資源エネルギー庁の要請に基づき、06年1月、この

計画の実現に協力するため、「2010年度において原油換算21万S

(バイオエタノール約36万S)のバイオエタノールをバイオETBEと

してガソリンに配合する」ことを目指すことを決定しました。

バイオマス燃料の導入に際しては、「消費者優先」「安心・安全・公正」

「国産国消」を基本方針に据え、責任ある燃料供給者として、国からの要

請およびエネルギー供給構造高度化法(以下、高度化法)に定められた

導入量を遵守するため、着実に準備を進めてきました。07年1月には

石油連盟加盟各社でバイオETBE等の共同調達を行うための組合

(JBSL:バイオマス燃料供給有限責任事業組合)を設立したほか、07年

度は関東圏50ヵ所のSSで、08年度は大阪、宮城を含む100ヵ所のSS

でバイオガソリン(バイオETBE配合)の試験販売を実施しました。バイ

オガソリンの試験販売(国の補助事業)は08年度をもって終了し、石連

加盟各社は「10年度のバイオETBE84万Sの導入」を円滑に進めるた

め、本格導入の前年である09年度は20万SのバイオETBEの導入を

開始しました。

さらに、バイオETBE配合率など適正な情報提供を行うため、表示ガ

イドラインを策定しました。これは、石連加盟の元売系列のSSにおい

て、バイオETBEをガソリンに配合した「バイオガソリン」の名称とマー

クを表示して販売する際の取り扱いを定めたものです。消費者の皆様

に安心してご利用いただけるよう環境整備に努めています。現在(13

年2月時点)は、約3,130ヵ所のSSでバイオガソリンが販売されており、

原油換算21万Sの導入を完全達成いたしました。

また、バイオマス燃料の導入については10年6月に改定されたエ

ネルギー基本計画において「2020年に全国のガソリンの3%相当以

上の導入を目指す」こととされており、同計画を受け、10年11月に

施行された高度化法において、17年度には原油換算50万S(バイ

オエタノール約82万S)のバイオエタノールをガソリンに直接、もし

くはバイオETBEとして混和し、自動車用燃料として利用することが定

められました。

しかしながら、バイオマス燃料として注目されているバイオエタ

ノールについては、国内生産には耕作地や生産コスト面の限界があ

る中で世界的に輸出余力があるのはブラジル一国のみであること、

さらに天候や食料品価格などの影響を受けずに安定供給が可能か

(供給安定性)、原料が農産物であるためコストが高く、熱量がガソリ

ンに比べて3割程度低いこと(経済性)などの課題があります。

また、バイオエタノールを直接ガソリンに混合すると、少量の水分

混入でも油とエタノールの相分離が生じ、燃料品質の変化(オクタン

価の低下)、流通・販売施設や自動車部材の劣化など、安全性を脅

かすことになります。また、直接混合はガソリン蒸気圧の上昇も引き

起こすため、光化学スモッグの原因となるHC(ハイドロカーボン)な

ど有害物質の排出量増加が考えられます。バイオエタノールに関し

ては、CO2対策ばかりが強調されている面がありますが、その一方

で大気汚染対策をどうするかも忘れてはなりません。

一方、バイオETBE方式はこのような問題が発生することはありま

せん。また、従来通り製油所(生産段階)でガソリンとバイオETBEを配

合して出荷されるため、ガソリン税の脱税や粗悪ガソリンが流通する

こともありません。従って、石油業界ではバイオエタノールを自動車

燃料として利用するにあたっては、消費者の安全・安心を確保するた

め、引き続きバイオETBEとしていく予定です。

バイオ燃料の持続可能性基準について

バイオ燃料に対しては、当初、温室効果ガスの排出削減のための有

効な手段として大きな期待が寄せられましたが、最近では食料との競

合、生態系等の環境への影響の問題が指摘されています。こうした現

状を把握するため、石油業界は各国の取り組み・問題点・課題等に

関して調査を野村総合研究所に委託し、07年12月、「バイオ燃料に

ついて」を取りまとめました。

また、08年当初より、食料価格の高騰の原因のひとつとして世界

的なバイオ燃料利用の拡大が指摘されたことから、バイオ燃料の食

料競合問題が大きくクローズアップされました。世界的にバイオ燃料

利用が拡大する中で、欧米諸国や国連においてもバイオ燃料の利

用・開発における食料競合や森林破壊等の環境問題、ライフサイク

ル全体での温室効果ガスの削減効果など、持続可能な利用・開発に

向けた議論、基準の策定が進められています。こうした動きを受け、

08年10月より、経済産業省は農林水産省、環境省、内閣府の参加を

得て、「バイオ燃料持続可能性研究会」を設置、調査・検討が開始され

ました。ここでは、わが国でバイオ燃料を導入拡大していくにあたり、

持続可能性と供給安定性を考慮することが重要との観点から、欧米

61 バイオマス燃料への取り組み

Page 63: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

100%

80%

60%

40%

20%

0%

エタノール消費に占めるシェア(非燃料用含む)

米国(2008)

米国(2017)

EU(2008)

EU(2017)

ブラジル(2008)

ブラジル(2017)

日本(2007)

1%

99%

9%

91%

40%

60%

19%

輸入国産

81%

100% 100% 97%

3%

■主要国のバイオエタノール自給率

出所:バイオ燃料持続可能性研究会(2009年4月)

500 100 150 200 250 300

■LCAのバイオエタノールの温室効果ガス削減効果

出所:バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会-中間とりまとめ(2011年3月)

(注): 1. 多収量米①は水管理状況の変化を伴う水田、多収量米②は水管理状況の変化を

伴わない水田で栽培した場合の試算結果

2. ガソリンのライフサイクルGHG排出量は81.7gCO2/MJと想定。

3. 地産地消型利用の場合、燃料輸送工程の排出は0となる

ブラジル産

サトウキビ

国産(参考値)

ガソリン

既存農地

草地からの転換

森林からの転換

多収量米①

多収量米②

MA米

規格外小麦

余剰てん菜

建設廃材

廃糖蜜

ガソリン比50%

土地利用変化原料栽培原料輸送燃料製造燃料輸送

g-CO2/MJ

ガソリンよりもCO2排出が少ない← →ガソリンよりもCO2排出が多い

40%

340%

70%72%

54%49%

10%67%

ガソリン比60%減

ガソリン比30%減

ガソリン比14%減ガソリン比240%増

ガソリン比11%増

ガソリン比28%減

ガソリン比46%減

ガソリン比33%減

ガソリン比51%減

てん菜(目的生産) 75% ガソリン比25%減

ガソリン比90%減

86%

111%※

①LCAの温室効果ガス削減効果(ガソリン比50%以上)

②食料価格への影響 (食料競合)の回避③生態系への影響の回避

石油業界のバイオ燃料の取り組み(バイオETBEの導入)

流通実証事業(注)

①輸入一次基地の整備

(注):2007年度から2年間は国の補助事業(流通実証事業)として実施した

2008年夏:契約 利用開始

②外航船の調達2008年夏:契約

2008年7月 2009年9月

ブラジルにて覚書締結。米国会社とETBE購入契約。 国産エタノール取引開始

運航開始

③内航船の調達2008年冬:契約 運航開始

2007年度 SS:50ヵ所2008年度 SS:100ヵ所

バイオETBEの供給

国内インフラの整備

バイオガソリンの販売バイオETBEの導入

2007年4月~2009年3月 試験販売 2017年度 普及拡大(最終)

2009年度 導入拡大

2010年度 本格導入開始

原油換算50万SバイオETBE194万S[  ]

原油換算21万SバイオETBE84万S[  ]

バイオETBE20万S[  ]

バイオ燃料の持続可能な利用の確保に向けた対応を推進・強化

諸国の動きや運用方法などを調査し、バイオ燃料の温室効果ガス削

減効果、バイオマスの栽培に伴う土地利用変化、食料との競合、供給

安定性などのあり方といった、わが国の基準策定の際に備えるべき

課題について取りまとめがなされています(「日本版のバイオ燃料の

持続可能性基準の策定に向けて(2009年4月)」)。

その後、わが国としての具体的な基準策定と運用実施に向けて、7

月には「バイオ燃料導入に係る持続可能性基準等に関する検討会」を

設置、検討が開始され、10年3月の中間取りまとめにおいて、①わが

国の具体的なバイオマス燃料の持続可能性基準のひとつの方向性と

して、「ガソリンのGHG(温室効果ガス)排出量に比較し、LCA※の

GHG削減効果を50%以上」とすること、②バイオマス燃料のエネル

ギーとしての供給安定性について、上記持続可能性基準を満たすバイ

オマス燃料が、現時点でブラジルからの輸入や一部国産の燃料に限定

され、エネルギーセキュリティの観点からも、高い自給率を目指すこと

が必要であること、③食糧との競合について、関係省庁が連携し、原因

分析と対処法を検討していくことが必要であること等が示されました。

また、高度化法に基づき導入されるバイオマス燃料の持続可能性基準

も、同中間報告で示された方向性を踏襲するものとなっています。

無資源国である日本のエネルギー政策は、3E(供給安定性、環境

適合性、経済性)の同時達成が基本です。バイオマスを自動車燃料と

して利用するにあたってもそれは例外ではありません。今後バイオ燃

料の普及拡大を進めるにあたっては、「安定供給」に対する配慮が極

めて重要であるとともに、長期的には、食料と競合しない草木植物な

どを原料とする低コストの生産技術の開発が重要です。石油業界は、

上記中間取りまとめを踏まえて決められた持続可能性基準を遵守し、

バイオエタノールを食料や環境にマイナスの影響を与えない範囲

で、再生可能なエネルギーとして有効に活用していきたいと考えてい

ます。そのために実現可能性を踏まえた地に足のついた取り組みを

今後とも続けてまいります。※Life Cycle Assessment: ライフサイクル全体(生産・使用・廃棄)の環境影響(必要とするエネ

ルギー・素材資源量や発生する環境負荷(二酸化炭素、SOx、NOxなど))を、評価する手法。

62バイオマス燃料への取り組み

Page 64: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石 油 の 有 効 利 用

■IGCCの特性

IGCC BTG(従来の石油火力発電)

46% 39%発電端効率

598g-CO2/kwh 706g-CO2/kwhCO2排出量

◎ ○排ガスレベル

(注): 1. BTG=Boiler Turbine Generator 2. 排ガスレベル:NOx、SOxの排出量で比較

■石油残渣ガス化複合発電(IGCC:Integrated Gasification Combined Cycle)

窒素

空気

蒸気

蒸気

アスファルト

発電機

廃熱ボイラーガスタービン排気

蒸気タービン

ガスタービン電気

空気分離設備

ガス化設備

複合発電設備酸素

空気

触媒上昇管

触媒の流れ

触媒再生塔

再生触媒保持塔

再生用空気

原料油

ダウンフロー反応器

生成物(高オクタンガソリン、プロピレン)

■HS-FCCのプロセススキーム

ガスタービン

水素+

一酸化炭素

分解ガス

石油製品の有効利用

石油業界では、発電用や産業用の基幹エネルギーとして利用され

てきたC重油需要の減少に対処するため、重油からガソリンなどを生

産する分解設備などの装置を増設してきました。しかしながら、重油

需要は今後も漸次減少していくことが見込まれるため、この抜本的対

策が求められており、石油業界としてもC重油を含めた石油残渣の有

効活用を目的とした技術開発に取り組んでいるところです。

中でも、IGCCは石油残渣をクリーンかつ効率的に利用すること

が可能な技術として最も有望な技術であり、わが国のみならず世界

的にも注目されています。IGCCは、付加価値の低い石油残渣(アス

ファルト)のガス化技術を活用し、生成される分解ガスを発電用燃料と

して利用し、その際発生する蒸気の複合タービンから効率よく発電す

るシステムをベースにしています。また、ガス化の過程で燃料に含ま

れる硫黄分など不純物を容易に除去することが可能であり、硫黄酸

化物や窒素酸化物などの大気汚染物質を極限まで低減できます。

一方、ガスタービンと蒸気タービンの複合発電によって高い熱効率

(46%)が可能となり、CO2排出削減効果(石油火力比▲15%)を達

成することができます。わが国では、2003年6月より、石油残渣(ア

スファルト)を燃料としたガス化複合発電(IGCC)として、電力卸供給

事業の営業運転を開始しています。

また、石油業界はサウジアラビアとの共同研究によりHS-FCC(高

過酷度流動接触分解)の開発を進め、03年にはサウジアラビアで、

11年には日本国内に装置が建設され、実証化運転が行われていま

す。これは重質油を分解し、ガソリン得率を高めるとともに、石油化学

原料として付加価値の高いプロピレンを効率よく生産する技術です。

プロピレンは、汎用プラスチックであるポリプロピレンの原料として、

アジアを中心に需要が拡大し続けており、石油精製からの供給増加

が期待されている高付加価値製品です。現在、HS-FCCの商業化に

向けた検討が行われており、その進展が期待されています。

63 石油の有効利用

Page 65: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

0

20

40

60

80

100

120

140

■低NOx化を実現 ■経済性

排ガス中のNOx濃度(ppm)

NOx濃度50%の削減 NOx濃度62.5%の削減

排ガス中のNOx濃度

従来機 環境対応型高効率ボイラ

環境対応型高効率ボイラ(A重油燃料)

環境対応型高効率ボイラ(灯油燃料)

従来機種

換算蒸気発生量

〈A重油2.0tボイラ〉 〈灯油2.0tボイラ〉

2.5t/h 2.0t/h 1.5t/h 1.0t/h

65ppm 65ppm 55~65ppm60ppm

45ppm

130ppm

130 ppm 65 ppm 120 ppm 45 ppm

130ppm 120ppm 120ppm

45ppm 35~45ppm40ppm

従来機 環境対応型高効率ボイラ

(ppm)

(R)

(万円)

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

年間燃料消費量(R/年)

年間燃料代(万円/年)

273,200 R 258,800 R 2,028 万円 1,921 万円

〈計算条件〉●従来品(ボイラ効率:90%、2tボイラ)の燃料消費量:136.6R/時●環境対応型高効率ボイラ(ボイラ効率:95%、2tボイラ)の燃料消費量:129.4R/時●稼働時間:2,000時間(定格燃焼) ●A重油単価:74.24円/R ●低位発熱量:8,770Z/R

年間14,400Rの節約 年間107万円の節約

石油消費段階での有効利用

石油業界では、家庭・業務用(民生用)石油消費部門を中心に、地

球温暖化問題への対応として省エネルギーの推進、利便性の向上を

図るため、1993年度より、石油を効率的に利用するための石油シス

テムの普及・開発に取り組んできました。

■「灯油等民生用燃料に関するアクションプログラム」 (1993年度)

同プログラムでは、石油連盟として取り組むべき課題をメニュー化

し、石油コージェネレーション、石油暖房・給湯システムなどの普及方

策の検討や地域熱供給システムの提案活動を行いました。

■信頼され、選択される石油エネルギー石油は、その手軽さから消費者にとって、最も馴染みの深い暖房・

給湯用エネルギーとして親しまれてきました。しかし、世界的な環境

意識の高まり、原油価格の高騰などを背景に、より環境にやさしく、よ

り経済性の高い石油燃焼機器システムの普及が必要となりました。

石油業界は、石油が消費者に信頼され、選択されるエネルギーであ

り続けるため、環境にも家計にもやさしい高効率な石油機器の開発

と普及に努めています。

● 環境対応型高効率業務用ボイラーの開発と普及促進

● 高効率家庭用給湯機「エコフィール」の開発と普及促進

● 「ホット住まいる」(石油セントラル暖房給湯システム)の普及促進

● 災害対応能力に優れた石油利用機器の普及促進

■環境対応型高効率業務用ボイラーの開発と普及促進環境省による石油ボイラ−に関する「小規模燃焼機器の窒素酸化

物排出ガイドライン」が2000年度より強化されたことを受けて(株)

石油産業技術研究所と(一財)石油エネルギー技術センターが共同

で開発した低NOxバーナーを使い、A重油焚きで排出ガス中の

NOx濃度が70ppm以下、しかも高効率(効率95%)の環境対応型高

効率ボイラーが開発されました。

石油連盟は、ボイラーメーカー団体である(公財)日本小型貫流ボ

イラー協会、日本暖房機器工業会と協力し、普及促進に努めていま

す。

環境対応型高効率業務用ボイラー

64石油の有効利用

Page 66: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

低いささやき 20dB

静かな公園 40dB

エコフィール 49dB

普通の会話 60dB

昼間の繁華街 80dB

列車の通過するガード下 100dB(dB:Aレンジ)

約200℃約60℃

熱効率が大幅にアップ!

従来までは捨てていた高温の排気を有効利用。

83%

95%

水水灯油100 湯83 湯95灯油100

排熱約200℃ 排熱約60℃

排気温度が低下!

燃焼効率もよく乾燥した排気で冬場の白湯気排気も低減。

排水

中和器

従来の石油給湯機 エコフィール給湯機

1次熱交換器 2次熱交換器

※図は排熱利用のイメージ。実際の構造とは異なる。

1次熱交換器

■CO2排出量:石油の場合

1年間で

削減

従来タイプ

※CO2排出係数石油(石油市場平均):2.51kg-CO2/R出典「温室効果ガス排出係数一覧」環境省H14年度/H12年度報告書

1,560kg-co2 1,363kg-co2

197kg-co2

杉の木なら1年間で本分のCO2削減効果14※杉の木1本あたりのCO2吸収量は、1

年で平均して約14kgとしている(「地球温暖化防止のための緑の吸収源対策」環境省/林野庁より試算)※給湯使用条件(4人家族想定、入水温度は通年で18℃) ・ふろお湯はり:200R×42℃ ・シャワー:12R/分×5分/人×4人 = 240R×40℃ ・洗 面:6R/分×2分/人×4人 = 48R×40℃ ・台 所:8R/分×3分/回×3回 = 72R×37℃

■「エコフィール」の開発と普及促進灯油代が節約でき、しかも地球温暖化の原因のひとつといわれる

CO2の排出量も削減できる高効率家庭用石油給湯機「エコフィール」

が開発され、2006年12月より発売が開始されました。

石油連盟は、機器メーカーの団体である(一社)日本ガス石油機器工

業会と連携し、共通名称とロゴマークを設定しました。全国石油商業組

合連合会の協力も得て、エコフィールの普及促進に努めています。

排熱を利用することで効率アップを実現従来は排気とともに空中に放出していた熱エネルギーを再利用す

る、新しいタイプの熱交換器を採用することで、給湯機の熱効率を

95%にまで高めました。熱効率が高くなることにより、使用する灯油

の量も大幅に節約できます。

灯油の使用量を節約し、CO2の排出量も削減従来の石油給湯機(効率83%)と比較して、灯油の使用量を12%、

CO2の排出量を12%削減します。

不快な臭いも騒音も低減燃焼効率の高い比例制御バーナーを採用することで、温度ムラが

少ない安定した湯温を保ちます。しかも通常使用領域でON/OFFを

繰返さないため、音と臭いを低減。また、排気温度が低いのでさらに

臭いが抑えられます。

■「ホット住まいる」(石油セントラル暖房給湯システム)の普及促進

住宅性能の向上(高断熱・高気密)、冷暖房の安全・環境面への

関心が高まる一方、灯油の給油作業の煩わしさが灯油離れのひとつ

65 石油の有効利用

Page 67: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

電気(従量電灯)

電気(昼間)

電気(夜間)

都市ガス

LPガス

灯油 1.00

1.95

1.42

0.97

2.86

2.29

23時~7時

7時~23時

0.0 0.1 0.2 0.3 0.50.4

電気(CO2クレジット反映後)

電気(実排出係数)

都市ガス

LPガス

灯油

0.244

0.213

0.180

0.510

0.476

■エネルギー別コスト比較<1kWh当りのエネルギーコスト(税込み)>

■エネルギー別二酸化炭素排出係数<kg-CO2/kWh>

出所: 石油情報センター、都市ガス会社全国平均、電力会社全国平均 (2013年1月時点)

出所: 環境省、経済産業省(平成22年6月温室効果ガス排出量算定・ 報告マニュアル Ver. 3.0)、2011年度 電気事業連合会資料

<灯油を1とした場合>

■電気の廃熱・送電ロス

発電所一次エネルギー

総合エネルギー効率

利用していない廃熱や送電ロス

37%

63%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

その他都市ガス電気LPガス灯油

52.3

36.9

23.5

9.417.2

■震災直後に使用できたエネルギー

(n=1000)調査対象者全体

灯油は調査対象者全体の52%の方が震災直後から使うことができた。

33

〔灯油〕52%灯油は災害時に最も使用できたエネルギーである!

の要因となっていました。こうした課題を解決するため、石油業界は、

「ホット住まいる」(石油セントラル暖房・給湯システム)の普及促進に

取り組んでいます。

「ホット住まいる」は、灯油のボイラーで作った温水を住居内に供給

することで、家庭の暖房と給湯を行うシステムで、室内の空気を汚す

ことのない快適なシステムです。戸建住宅だけではなくマンション、

アパート等の集合住宅でも利用できます。

また、消費者への親しみやすい広報活動を展開するため、石油連盟

は(一社)日本ガス石油

機器工業会と共同で

「ホット住まいる」という

共通名称と右記のロゴ

マークを設定しました。

■環境にも家計にもやさしい灯油私たちの身近なエネルギーには、灯油のほかガス、電気など、さま

ざまなものがありますが、灯油のCO2排出量は、実は電力よりも少な

いのです。これは電気が発電所から各家庭に届くまでに送電や排熱

によるロスが63%も発生するからです。

CO2排出量が多いと思われている灯油は、実は環境にやさしい

“エコ”なエネルギーなのです。

また、1kWあたりの灯油価格は、昼間の電力料金の約3割、都市ガ

スの約6割です。灯油はほかのエネルギーと比べて経済的で家計に

もやさしいエネルギーです。

■灯油は災害対応能力に優れた分散型エネルギー灯油は、タンクに貯蔵することのできる分散型エネルギーなので、

万が一の災害で電力・都市ガス等のライフラインが寸断された場合

でも、使うことのできる災害対応能力に優れたエネルギーです。

東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の成人男女1,000人を

対象としたアンケート調査でも全体の52%の方が震災直後から使う

ことができたと回答しています。

避難所施設では、避難住民の暖房機器として石油ストーブが大活

躍しました。

また、病院施設でも石油の自家発電設備等が被災した方々の命を

お守りするのに役立ちました。

東日本大震災後の防災意識の高まりを受けて、石油連盟は、「石油

システム普及に係るアクションプログラム」(2012年度)を策定し、災

害発生時に避難所施設となる小中学校等の公共施設に対する石油

機器(石油暖房機、給湯器、発電機等)の導入提案を積極的に推進し

ています。

66石油の有効利用

Page 68: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

技 術 開 発 に 関 す る 取 り 組 み

約30%削減

■CO2排出量の比較

従来システム火力発電+

従来給湯器

家庭用燃料電池コージェネレーション

システム

CO2

CO2

※CO2排出量、削減量は家庭によって異なります。

商用電力

戸建て

温水

灯油LPG

燃料電池

貯湯槽

連系盤 照明

シャワー

給湯 調理

冷蔵庫

エアコン

テレビ

電気

風呂

■定置用燃料電池システムの設置例

水素

酸素

電極(水素極)

電解質 電極(空気極)

電流

(空気)

H+ H+

発電原理 システム構成

水素

空気(酸素)

貯湯槽

制御系補機類

直流電力

温水電力

インバータ灯油/LPG

スタック

燃料改質器(水素製造装置)

固体高分子形(PEFC型)の場合

燃料電池への期待

燃料電池は、効率が高く、環境への負荷が少ないため、家庭や自動

車等への新しいエネルギーの供給形態として期待されています。

今後の普及に向けて、技術開発や実証事業など国を挙げた取り組

みが進められており、石油業界でも、CO2削減に貢献し、かつ石油系

燃料を有効に活用できる新しいエネルギーシステムとして、石油系燃

料電池の開発、普及への取り組みを進めています。

定置用燃料電池システム

■仕組み定置用燃料電池システムは、灯油やLPGなどから作った水素と空

気中の酸素を利用して発電します。発電と同時に発生する熱は、温水

として回収し、キッチンや風呂の給湯として使用することができます。

■特徴(1)省エネ……発電と同時に発生する熱も使用できるため、石油系

燃料のエネルギーを効率よく利用できます。

(2)環境にやさしい……石油系燃料を効率よく利用するため、

CO2の排出量を削減できます。また、水素と酸素を使った電気化学反

応による発電のため、酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx)や硫黄

酸化物(SOx)をほとんど発生しません。

■石油系燃料を用いるメリット(1)発電に使用する水素は、LPG、天然ガス、灯油などさまざまな

燃料から作ることができます。中でも、灯油やLPGなどの石油系燃料

は、全国に供給インフラが整っており、また貯蔵や輸送が容易なこと

から水素源として適しています。

(2)阪神・淡路大震災や新潟県中越地震でも証明されましたが、

灯油やLPGは災害に強く、災害時のエネルギー供給システムとして期

待できます。

■石油業界の取り組み状況石油業界では、長年にわたり、石油系燃料から水素を製造するため

の高度な技術や取り扱いについてのノウハウを蓄積してきました。こ

のようなノウハウや全国に整った燃料供給インフラを活かし、一般家

庭へLPGや灯油などの石油系燃料を用いた燃料電池システムを設置

し、実証を進めてきました。その結果、2009年には、家庭用燃料電池

は名称「エネファーム」*として一般販売が開始され、石油系燃料とし

てまずLPGを用いるものが登場しました。

*「エネファーム」および「ENE・FARM」は、登録商標です。

67 技術開発に関する取り組み

Page 69: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

■水素供給インフラの 先行整備のイメージ図

高速道路への配備

4大都市圏への先行配備

※導入以降、全国的な FCV導入拡大と 水素供給インフラの 整備に取組む

■燃料電池の普及に向けて東日本大震災を機に、災害時の停電への備えや節電対策に対する

社会的な関心やニーズは高まっており、これらに応えるためにも石油

業界は積極的に燃料電池の普及促進に取り組んでいきます。

●技術開発……従来の固体高分子形(PEFC型)を上回る、定格発電

効率45%を実現した固体酸化物形(SOFC型)家庭用燃料電池の

販売を2011年10月より開始しました。

今後も災害に強い石油系燃料の特徴を活かした災害対応型燃料

電池システムの開発を進めます。

●実証試験……技術開発の成果を反映させつつ、一般家庭や業務用

施設における石油系燃料を用いる燃料電池システムの実証試験を

積極的に進めます。

●普及基盤整備……規制緩和要望、JIS基準・国際基準の策定、そ

の他各種基準の作成を進めます。

燃料電池車への水素供給

石油業界では、水素と空気中の酸素を反応させて作った電気で

モーターを回して走る、地球にやさしい燃料電池車の普及に向け

て、燃料電池車向けの水素製造技術を開発するとともに、燃料の水

素供給インフラである水素ステーションの実証を進めています。

石油各社は、JHFC/NEDOプロジェクトや水素供給・利用技術

研究組合(HySUT)への参加を通じて、国の実証事業として各種タイ

プの水素ステーションを運用してきました。2011年1月には石油各

社、自動車各社、ガス各社の計13社が燃料電池車の15年国内市場

導入と水素供給インフラ整備に向けた声明を共同で出しました。

石油各社は水素供給事業者として、水素供給インフラの先行整備

を目指していきます。また、自動車各社、ガス各社と共同で燃料電池

車の普及拡大、供給インフラ網整備に取り組むとともに、これらの実

現に向け、普及支援策や社会受容性向上策等を含む普及戦略につ

いて官民共同で構築することを政府に要望してまいります。※ また、SSで灯油から水素を製造・供給する設備の技術開発も

行っています。08年度からは、灯油を原料とする膜型反応分離プロ

セスを用いた水素製造技術開発を実施しています。

※ (一財)石油エネルギー技術センターが実施する将来型燃料高度利用研究開発事業の一環として実施

家庭用燃料電池「エネファーム」(出所:JX日鉱日石エネルギー)

東京・杉並水素ステーション

68技術開発に関する取り組み

Page 70: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

SHED研究設備 全天候シャシダイナモメーター

中型ディーゼルエンジンベンチ

石油関連技術への取り組み

より高効率な石油利用技術や、より高品質な石油製品の開発など、石油業界の共通技術課題に取り組むため、石油連盟加盟会社は、1990年12月に(株)石油産業技術研究所(石油技研)を設立し、自動車用燃料、業務・家庭用燃料、石油システム・機器および石油精製・貯油設備の保安管理に係わる調査・研究等に取り組んでいます。

また、1991年度には千葉市に同社土気研究所(千葉市緑区大野台)を建設し、(一財)石油エネルギー技術センター(JPEC)の石油基盤技術研究所と協力して、各種の試験研究を実施しています。

■自動車用燃料に係わる調査・研究環境問題等の社会的ニーズに応えるには、自動車の省燃費性向上

と排出ガス低減に寄与する燃料品質の方向性を見極めることが重要となっています。

石油業界は国の支援を得て、自動車業界との共同研究として「大気改善のための自動車排出ガス浄化技術の研究(JCAPⅠおよびJCAPⅡ)※1」を実施しました。そのひとつの成果として、ガソリン、軽油の低硫黄化による排出ガスのクリーン化および燃費向上効果を確認し、石油業界はその結果を踏まえ、世界に先駆け、サルファーフリーガソリン・軽油の供給を実現しました。

また、2007年度からは、大気環境保全とさらには地球温暖化、エネルギーセキュリティ対応を視野に入れ、「CO2削減」、「バイオマス等燃料多様化」、「排出ガス低減」という3つの課題を同時に解決する最適な自動車・燃料利用技術の確立を目指した新しいプロジェクト

(JATOP※2)を実施しました。主な成果としては、①バイオマス燃料利用に関する影響評価:国内石油業界によるバ

イオETBE配合ガソリン(バイオガソリン)の導入(2010年度に原油換算21万S/年のバイオマス利用)のためのデータベースとしての活用

②将来のディーゼル燃料に関する研究:今後導入が見込まれる非在来型石油や分解系軽油留分などの各種軽油用基材を利用した燃料について、ディーゼル車の各種性能に及ぼす影響と課題の検討な

どが挙げられ、各取り組みに反映されています。さらに、2012年度からは、JATOPで得られた成果を踏まえて、

原油から得られる各留分を余すところなく活用することにより、原油処理を最適化し、原油処理量の削減、CO2排出量の削減を実現することを目的にしたプロジェクト(JATOPⅡ)が開始されています。この研究では、石油精製における残油の分解等で得られる留分について、自動車燃料としての利用等を想定し、環境面・安全面で問題なく使用できるよう、自動車を用いて燃費・運転性に与える影響の評価、排出ガス等による環境負荷の影響評価等が行われています。※1 : Japan Clean Air Program、JCAPⅠ:1997〜2001年度、JCAPⅡ:2002〜2006年度※2 : Japan Auto-Oil Program、JATOP:2007〜2011年度

■石油システム・機器に係わる調査・研究石油連盟では「石油システム21世紀普及基本方針」(2001年2月

策定)に基づき、民生・業務分野における石油利用システム・機器の本格普及に取り組んでいます。

石油技研ではこのための実証データ取得や、各種の調査・研究により、「ホット住まいる(石油セントラル暖房・給湯システム)」などの性能や快適性を評価し、普及促進に活用しています。

■石油精製・貯油設備の保安管理に係わる調査・研究石油業界は自主保安の推進を目指しています。そのために石油精製設備や貯油設備の非破壊検査技術など効率

的な設備保全技術の導入に関する調査研究を行っています。使用中の設備に関しては、検査で得られたデータに基づき、その設

備が現在保有している強度や余寿命を判断する供用適性評価基準についてAPI(全米石油協会)やASME(米国機械工学会)と連携をとりながら取りまとめを進めています。

また、わが国が地震国であることに鑑み、長周期の地震動が貯油設備に与える影響について地道にデータを取得し、将来の貯油設備の安全管理に資するための調査研究を進めています。

●分解系軽油留分の自動車技術としての利用に関する研究●ガソリン蒸発ガス低減対策の評価●新技術搭載車両を用いた燃料性状変化に対するポテンシャル評価●大気環境改善検討および評価技術

●効率的保全技術導入のための調査・研究●保安技術基準策定のための調査・研究●長周期地震動の影響に係わる調査・研究

地震データ

●エコフィールのドレン水に関する水質調査●石油給湯器の省エネ性能検証調査●灯油型HEMSの構築調査●石油温水暖房機に関する省エネ性能検証調査

マンションなど集合住宅への灯油自動給油システムと組み合わされて使用される高機能微流量灯油メーターの集中検針盤

69 技術開発に関する取り組み

Page 71: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

出光(北海道) 140,000JXエネルギー(室蘭) 180,000

出光(徳山) 120,000

JXエネルギー(水島) 380,200

南西(西原) 100,000

JXエネルギー(仙台) 145,000

コスモ(千葉) 220,000極東(千葉) 175,000出光(千葉) 220,000富士(袖ケ浦) 143,000

鹿島(鹿島) 252,500

東燃ゼネラル(川崎) 335,000東亜(京浜) 65,000JXエネルギー(根岸) 270,000

出光(愛知) 160,000コスモ(四日市) 175,000

昭和四日市(四日市) 210,000

コスモ(堺) 100,000東燃ゼネラル(堺) 156,000大阪国際石油精製(大阪) 115,000東燃ゼネラル(和歌山) 170,000

太陽(四国) 120,000コスモ(坂出) 140,000

西部(山口) 120,000JXエネルギー(大分) 136,000

単位:バレル/日

出所:石油連盟(注):会社名は略称(製油所名)

常圧蒸留装置能力 合計447万4,700バレル/日(製油所数:26ヵ所)

JXエネルギー(麻里布)127,000

原油・石油製品輸入金額わが国総輸入金額に占める石油の割合(21.76%) 1,921億ドル(2011年度)

(15兆1,650億円)

16社(2013年3月現在)資本金総額 5,630億円(2012年3月末現在)

年間売上高 25兆5,536億円(2011年度)

従業員数 約19,500人(2011年度末)

原油・石油製品(燃料油)輸入量

石油の輸入依存度 99.6%(2011年度)

2億4,655万S(2011年度)

企業数

石油産業の規模(石油精製・元売会社)

製油所の所在地と原油処理能力(2013年3月現在)

70製油所の所在地と原油処理能力 /石油産業の規模

Page 72: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

     

災害時を含めた最終消費者までの石油安定供給

東日本大震災の経験と教訓

東日本大震災において、電気や都市ガスの供給が止まる中、石油は、病院の非常用発電燃料、避難所の暖房(灯油ストーブ)用燃料、緊急車両の燃料など、利便性・貯蔵性・運搬性に優れた、災害に強い自立型・分散型エネルギーとして大きな役割を果たしました。

その一方で、出荷基地(製油所・油槽所)や給油所も大きな被害を受け、東北・関東に立地する9製油所のうち6ヵ所が稼働を停止(停止能力日量140万バレル/日、わが国の精製能力の約3割)、東北太平洋岸の油槽所もほとんどが出荷不能に陥りました。そのため、全体として在庫は十分であったにもかかわらず、港湾や道路等の社会インフラの麻痺と相まって、ロジスティクス上の障害により、一部地域では一時的に石油製品の供給が十分に図れない事態も発生しました。

このように、災害時を含めた最終消費者までの安定供給の実現に向けた、サプライチェーン(供給網)の維持・強化は、現在の石油業界にとって、大きな課題となっています。

緊急時対応力の強化

震災の教訓を踏まえ、現在、石油業界では、設備と体制の両面において、緊急時対応力の強化を進めています。

まず出荷基地において、耐震補強工事、電気設備の防水対策、緊急用電源の配備などに順次着手しています。ドラム缶出荷は、平時にはロットが小さく効率的ではないとして、従来縮小されてきましたが、震災では緊急支援物資としての要請が多かったため、ドラム缶充填設備の維持・増強も行われています。給油所でも非常用電源の設置、手動ポンプの配備、あるいは非常用物資の備蓄、避難場所の提供等、災害対応化の取り組みが始まりました。

次に体制面では、石油各社と出荷基地の間で震災時に情報収集に時間を要したことを踏まえ、通信・連絡手段の確保を強化するとともに、災害時には石油連盟に石油各社の情報を集約する体制を整備するため作業を進めています。

国・地方との連携

震災時、被害が比較的軽微で規模が大きかった宮城県の塩釜油槽所は、県や国土交通省など当局の尽力により、震災6日後の3月17日には在庫による出荷が、10日後の21日にはタンカー受入が再開したことから、2社の施設を元売5社で共同利用し、会社の枠を超えた協力体制を構築しました。さらに石油連盟には、首相官邸や経済産業省からの緊急支援要請の窓口としてオペレーションルームを設置し、約1400件の要請に対応しました。

こうした経験や教訓に基づいて、政府においても、災害時の石油供給体制強化を目的として石油備蓄法を改正し、石油元売会社に対し、

全国10地区毎に協力して被災者に供給するための「災害時石油供給連携計画」の策定を義務付けました。

また同時に、ガソリンや灯油などを対象とする国家石油製品備蓄を本格的に開始するため、同法の改正により、その管理の民間事業者への直接委託が可能となりましたが、石油各社ではこれに積極的に協力して行くこととしています。

震災時に病院等の重要施設に緊急支援物資として燃料を輸送した際、重複配送や油種の間違い、給油口とカップリングの不一致などのトラブルが一部で発生しました。そのため石油連盟では、各道府県に政府への緊急支援物資要請を前提として、石油連盟が窓口となる、防災拠点等への確実な輸送を確保するための情報共有の覚書締結を提案しているところです。石油連盟では、覚書締結を通じて緊急時の防災拠点等をデータベース化する予定で、すでに埼玉県、山形県、群馬県、青森県、佐賀県、宮城県と同覚書を締結、さらに数県と協議中です。なお、東京都とは2008年に首都圏直下型地震を想定した燃料供給協定を締結しています。

石油の安定需要の確保

石油業界では、こうした取り組みを通じ、消費者に安心してご利用頂けるエネルギーとすべく努力するとともに、色々な提案や要望の活動を行っています。すなわち、これらの活動を通じて消費者に選ばれるエネルギーとして、平時から安定的な石油需要を確保して行くことは、安定供給の前提となるサプライチェーンを維持・強化して行くためにも、極めて重要であると考えています。

まず、石油が優位性を発揮できる給湯・暖房部門で高効率な石油利用を提案しています。例えば、停電時にも使用可能な自立型石油給湯機をメーカーとともに開発し、導入を推進しています。また、学校・公民館等、避難所として利用が想定される公共施設においては、平時からの石油系暖房設備の活用が有効であることから、石油連盟では寒冷地域の地方自治体に対する提案活動を展開しているところです。

さらに発電部門においても、石油の緊急時対応力を十分に発揮するためには、平時から一定の石油火力発電所の稼働が必要であることは言うまでもありません。また、今後のエネルギー政策においては、消費者利益を重視すべきであり、市場における消費者の効率的なエネルギー選択をゆがめるような税制や補助金等の制度は是正されるべきです。そうした観点から、競合エネルギー間では公平な競争条件の整備が期待されています。

電力向け出荷の増加など震災による「特需」や政権交代による景気回復への期待はあるものの、石油消費の構造的な減少基調は変わっておらず、石油業界を取り巻く環境は、引き続き困難な状況にありますが、緊急時を含めた最終消費者までの石油安定供給を実現すべく最大限取り組んで参りたいと考えています。

71 災害時を含めた最終消費者までの石油安定供給

Page 73: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

     

2011年3月12日午前1時30分頃 仙台市若林区七郷中学校【提供:河北新報社】

震災時の被災地を行くミニローリー 2011年5月 陸前高田

塩釜油槽所の機能回復・共同利用3月21日よりタンカー受入・輸送力の飛躍的拡大

石油連盟オペレーションルーム政府要請に基づく緊急支援に対応【提供:NHK】

青森一部のみ出荷

秋田一部のみ出荷

東京近郊 油槽所一部のみ出荷

新潟出荷可能

酒田出荷可能(制限あり)

八戸出荷停止・不可能

盛岡出荷停止

小名浜出荷不可能

日立出荷不可能

釜石出荷不可能

郡山出荷停止

気仙沼出荷不可能

塩釜出荷停止

仙台稼働停止

鹿島稼働停止

京葉(千葉)一部製油所稼働停止

京浜(神奈川)一部製油所稼働停止

東 日 本 の 殆 ど の 拠 点 が 通 常 出 荷 不 可 能

油槽所

稼働:3ヵ所/停止:6ヵ所

出荷可能:6ヵ所停止(制約あり):23ヵ所      (東京近郊除く)

/停止:6ヵ所

製油所

働:3ヵ所/ヵ所/

地震直後 3月12日精製能力

312万バレル/日

秋田自動車道

磐越自動車道

上越自動車道

山形自動車道

東北自動車道

青森出荷可能

秋田出荷可能

東京近郊 油槽所出荷再開

新潟出荷可能

酒田出荷可能

八戸1油槽所…出荷再開(3/21)(出荷制約あり・海上受入不可)

盛岡出荷再開

小名浜出荷不可能

日立出荷不可能

釜石出荷不可能

郡山出荷再開

(在庫出荷)

気仙沼出荷不可能

塩釜2油槽所…出荷再開(3/17・20)その他2油槽所は再開に向け作業中

(大型船入港不可)

仙台稼働停止

鹿島稼働停止

京葉(千葉)一部を除き稼働再開(3/17)

京浜(神奈川)稼働再開(3/17・21)

太平洋側の拠点が一部再開、東京近郊は一部を除き出荷可能

油槽所

稼働:6ヵ所/停止:3ヵ所

出荷可能:18ヵ所停止(制約あり):11ヵ所      (東京近郊除く)

/停止:3ヵ所

製油所

働:6ヵ所/ヵ所/

3月21日精製能力

400万バレル/日

秋田自動車道

磐越自動車道

上越自動車道

山形自動車道

東北自動車道

■東北・関東地方の製油所・油槽所の稼働状況

東日本大震災への対応

○ 稼働中の製油所の生産体制の強化(能力増強・稼働率アップなど)○ ガソリン等の緊急輸入・製品輸出の停止(国内供給増加)○ 西日本や北海道から被災地への石油製品の転送(内航タンカー・タンク車・タンクローリー)○ 被災地における全社協力体制の実施(油槽所の共同利用など)○ 西日本からタンクローリーを被災地へ投入(約300台の臨時投入)○ 被災地のSS営業情報提供等、被災地における消費者の不安心理解消に向けた広報活動

3/21震災後タンカー初入港(塩釜)

3/20被災地向けドラム缶出荷(千葉)

72災害時を含めた最終消費者までの石油安定供給

Page 74: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石油業界関連 国内政治・経済 海外関連

1月

12

12

19

29

石油連盟天坊会長、イラン原油の輸入についてコメントを発表コスモ石油、稼動を停止していた千葉製油所の一部精製装置で稼動を開始したことを発表

石油連盟、「石油のサプライチェーンの維持・強化のための石油の安定需要確保に向けて」(3次提言)および「コスト等検証委員会報告書への意見」を発表

東燃ゼネラル石油(株)、エクソンモービル(有)の持分の99%を取得し、エクソンモービルと新たな提携関係に移行する予定であることを発表

12

13

24

米ガイトナー財務長官、イランへの制裁措置強化等をめぐり安住財務相と会談

野田改造内閣発足

第180回通常国会召集(会期6月21日まで)

14

22

△23

リビア石油相、同国の原油生産量が100万バレル/日に達したと発表。また、今後の見通しとして2012年の第1四半期に130万バレル/日、2012年後半までには150万バレル/日まで増産可能であると発表

アラブ連盟、デモ弾圧を続けるシリアのアサド大統領に権限を副大統領に委譲するよう求める仲介案を発表(カイロ)EU外相理事会開催。核開発疑惑が強まるイランに対する制裁強化措置として、同国産原油の輸入を既存の契約分を含めて7月1日から完全に禁止することを決定

2月

17

(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、経済産業省の「わが国におけるメタンハイドレート開発計画」フェーズ2の事業を受託し、2月に愛知県渥美半島沖合いで掘削を開始することを発表

石油連盟、「石油の安定需要確保による石油のサプライチェーンの維持と石油火力の位置付け向上」(4次提言)を発表

8

10

14

2011年度第4次補正予算案可決政府、「災害時における石油の供給不足への対象等のための石油の備蓄の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定第12回総合資源エネルギー調査会基本問題小委員会開催。石油連盟、電気事業連合会、(一社)日本ガス協会、日本LPガス協会、(株)エネット等エネルギー供給事業者・団体にヒアリング。石油連盟からは天坊会長が出席

14

米国財務省、昨年末に成立したイラン制裁法を運用する上でのガイドラインを発表。イラン中央銀行などと取引のある外国金融機関を制裁対象から外す条件であるイラン産原油輸入の大幅な削減の基準については、削減量や比率、将来の契約の解除など、当該国の努力を考慮すると規定

3月

9

21

29

30

石油連盟、地球環境自主行動計画第14回フォローアップとりまとめ石油連盟、「第15回油流出に関する国際シンポジウム」を開催(〜8日、東京)JX日鉱日石エネルギー、東日本大震災の影響で停止していた仙台製油所の本格生産の再開を発表

昭和シェル石油、イランに関わる日米政府間の決定内容を尊重し、国際的な原油需給情勢を見極めながら、石油製品の安定供給に支障をきたさぬよう取り組んでいく旨のコメントを発表石油連盟、地方自治体との「災害時の重要施設に係る情報共有に関する覚書」の第1号として埼玉県と締結コスモ石油、東日本大震災の影響で停止していた千葉製油所の生産再開を発表

19△

20△ 東ティモールのグスマン首相来日。野田首相と会談

クウェートのサバハ首長来日。枝野経済産業相と会談(21日)

20

米クリントン国務長官、核開発を続けるイランからの原油輸入量を大幅に削減したとして、日本と欧州10カ国を制裁措置の対象から除外すると発表

4月

2

6

10

12

△20

出光興産、イエローハットと業務、資本提携に関する契約を締結したことを発表極東石油工業、5月21日付けで組織形態を株式会社から合同会社に変更することを発表太陽石油、昭和シェル石油、GS Caltex社(韓国)、パラキシレン事業に関わる新規プロジェクトの基本覚書締結を発表東燃ゼネラル石油、現エクソンモービル(有)の持分の99%を6月に取得することに伴い、エクソンモービル(有)の社名を5月21日付けでEMGマーケティング合同会社に変更することを発表

コスモ石油、昨年3月11日に稼動を停止していた千葉製油所の第1常圧蒸留装置(10万バレル/日)の稼動を開始したことを発表。本年3月30日に稼動を開始した第2常圧蒸留装置(12万バレル/日)に続くもの

1

11

経済産業省 揮発油等の品質の確保等に関する法律施行規則を一部改正し、E10対応ガソリン車用の燃料規格等を規定

バーレーンのハマド国王来日。野田首相と会談

17

30

米オバマ大統領、原油価格の高騰に対応するため、原油市場での価格操作の罰則強化を柱とした新たな市場取り締まり策を発表

日米首脳会談(ワシントン)

5月

18

28

30

昭和シェル石油、地域のエネルギーサービス拠点としての役割を将来も担って行くために必要な、次世代に対応したSSの検証を開始したことを発表

石油連盟、新会長にJX日鉱日石エネルギーの木村康社長が就任したことを発表JX日鉱日石エネルギー、株式会社一光およびグループ会社3社の議決権のある株式の全部を、7月2日に取得することについて合意したことを発表

18

19

政府、電力需給に関する検討会合とエネルギー・環境会議の合同会議を開催。企業や家庭に7月から3ヵ月間の節電を要請することを決定関西電力、今夏の電力不足に対応するため、家庭や企業に対して2010年夏に比べて15%以上の節電を要請すると発表

18

仏大統領選挙で社会党のオランド氏、現職のサルコジ氏を破り当選ギリシャ総選挙。EUからの金融支援と引き換えに緊縮財政を進めてきた連立政権が過半数割れロシア大統領就任式。3月の大統領選で当選したプーチン首相が4年ぶりに大統領に復帰

主要8ヵ国(G8)首脳会議(米キャンプデービッド、〜19日)

6月

13

20

石油産業技術研究所、2011年度成果報告会開催石油連盟、総合資源エネルギー調査会総合部会天然ガスシフト基盤整備専門委員会(第5回)にて、ガス事業の規制改革につき意見陳述

石油連盟、(社)セメント協会、電気事業連合会、(一社)日本電子情報技術産業協会、(一社)日本化学工業協会、

(一社)日本ガス協会、(一社)日本自動車工業会、日本製紙連合会、(一社)日本鉄鋼連盟の9団体、『「エネルギー・環境会議」から提示されるシナリオに対する産業界の要望

(共同要望)』を発表

16

19

20

26

野田改造内閣発足

政府、関西電力大飯原子力発電所3、4号機の再稼動を決定資源エネルギー庁、総合資源エネルギー調査会第27回基本問題委員会において、2020年及び2030年における石油製品需要の見通し(素案)を発表参議院、イラン産原油輸送タンカー特措法(特定タンカーに係る特定賠償義務履行担保契約等に関する特別措置法)を可決、成立

衆議院、社会保障と税の一体改革関連法案を可決

14

17

20

24

第161回OPEC定例総会開催。昨年12月に決議した加盟12カ国で3000万バレル/日の生産上限を遵守することを決定ギリシャ再選挙。緊縮推進派が第1党になり、ユーロ離脱懸念が後退

国連持続可能な開発会議(リオ+20)開催(リオデジャネイロ、〜22日)エジプト大統領選挙。イスラム原理主義組織ムスリム同胞団傘下の自由公正党のムハンマド・モルシー党首が当選

石 油 関 連 日 誌 (2012年1月~12月)

73 石油関連日誌

Page 75: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

石油業界関連 国内政治・経済 海外関連

7月

19

20

昭和シェル石油、子会社のソーラーフロンティアと道東電機株式会社、北海道江別市に大規模太陽光発電所の建設などを共同で進めていくことを基本合意

石油連盟、「今後のエネルギー政策に望むこと」(5次提言)を発表石油資源開発(株)、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で秋田県内のガス油田におけるタイトオイルに係るエンジニアリングスタディを実施中であることを発表

1

1

23

27

再生可能エネルギー固定価格買取制度開始大飯原子力発電所3号機再稼動。5月5日に北海道電力泊原子力発電所の3号機の停止後、国内全ての原発が停止していた状況からはじめての再稼動政府の節電要請期間開始(8月13日〜15日を除き、9月28日まで)

政府事故調、東京電力福島第1原子力発電所事故の最終報告書を公表。民間事故調(2/27公表)、東電事故調

(6/20公表)、国会事故調(7/5公表)、に続く4つ目の報告書経済産業省、平成25年度税制改正要望に関するヒアリングを開始( 〜8月3日)。石油連盟からは、8月3日に森川副会長から要望

1

16

EU、核開発をめぐるイランに対する追加制裁として同国産原油の禁輸措置を発動

UAE、ホルムズ海峡を迂回し、UAEのハブシャンとフジャイラ港を結ぶアブダビ原油パイプライン(ADCOP)を使って初めて原油を輸出

8月

14

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29

JX日鉱日石エネルギー、2013年1月より仙台製油所で、同年3月より下松事業所でメガソーラー発電事業を開始することを発表

コスモ石油、坂出製油所を2013年7月に閉鎖することを発表JX日鉱日石エネルギー、2012年11月にベトナムに潤滑油製造販売会社を設立することを発表

10

29

29

参議院、消費増税関連8法案可決、成立。2014年4月に消費税率8%、2015年10月に10%に引き上げ(景気条項付)

参議院、石油備蓄法改正案可決、成立内閣府中央防災会議、南海トラフ地震の被害想定を発表

16

国連安全保障理事会、19日で期限を迎える国連シリア監視団の解散を合意

9月

1

4

28

石油連盟、東京都防災訓練に参加出光興産、コスモ石油、JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル石油、4社で共同展開している電気自動車向け充電サービス「EVサービスステーションネットワーク」において、2012年10月より住友商事、日産自動車、NEC、昭和シェル石油で構成するジャパンチャージネットワーク(株)とEV充電会員の相互乗り入れを開始することを発表

石油連盟木村会長、「エネルギーに関する今後の重点施策」についてコメントを発表

14

19

19

△19

△21

26

経済産業省、平成25年度における概算要求と税制改正意見等を公表第180回国会閉会(1月24日開会、6月22日からは延長国会)

エネルギー・環境会議、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定

原子力規制委員会、原子力規制庁発足政府、今後のエネルギー・環境政策について閣議決定LNG産消会議開催(東京)民主党代表選挙。野田首相が再選

自由民主党総裁選。安倍元首相が新総裁に選出

11

13

 

22

 27

APEC首脳会議開催(ウラジオストック、〜9日)駐リビア米国領事館襲撃事件発生米連邦準備制度理事会(FRB)、住宅ローン担保証券

(MBS)を月額400億ドル(約3兆1千億円)追加購入する「量的緩和第3弾」を14日から実施することを発表

ロシア、世界貿易機関(WTO)に正式加盟

日・イラン外相会談(ニューヨーク)

10月

15

26

石油連盟海水油濁処理協力機構、第32回中央情報交換会開催(札幌)石油連盟、山形県と「災害時の重要施設に係る情報共有に関する覚書」を締結

1

9

25

29

地球温暖化対策税(環境税)として石油石炭税を増税。原油・石油製品は250円/S、LNGは260円/t、石炭は220円/tの増税(3段階引き上げの初回)IMF(国際通貨基金)・世界銀行年次総会開催(東京、〜14日)

石原東京都知事、知事を辞任して新党を結成、国政に復帰する意向を発表

第181回臨時国会召集(会期11月30日まで)

7

29

ベネズエラ大統領選挙。現職のウゴ・チャベス大統領が4度目の当選

大型ハリケーンサンディ、米国東海岸上陸

11月

2

△5

14

14

14

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30

JX日鉱日石エネルギー、室蘭製油所について、2014年3月末に原油処理を停止したうえで、同年6月より、石油化学製品の製造および石油製品の物流拠点として事業を再構築することを発表コスモ石油、双日㈱が保有する双日エネルギー㈱の株式を譲受することについて、双日と株式譲渡契約を締結したことを発表石油連盟、全国石油商業組合連合会、石油増税反対総決起大会を憲政記念会館にて開催東燃ゼネラル石油、子会社のEMGマーケティングが保有する東燃ゼネラル石油の株式の全てを取得することを発表石油連盟、群馬県と「災害時の重要施設に係る情報共有に関する覚書」を締結

石油連盟、(社)セメント協会、電気事業連合会、(一社)電子情報技術産業協会、(一社)日本化学工業協会、

(一社)日本ガス協会、(一社)日本自動車工業会、日本製紙連合会、(一社)日本鉄鋼連盟の9団体、COP18に向けた産業界の共同提言「国内外のエネルギー・環境政策に向けた産業界の提言」を発表JX日鉱日石エネルギー、同社SS運営子会社の一光と鈴与商事の子会社である鈴与エネルギーの事業統合を発表

1

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改正石油備蓄法施行

衆議院、赤字国債発行法案等可決衆議院解散

6

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26

米国大統領選挙。現職のオバマ氏が再選中国共産党大会開幕(〜14日)

中国共産党中央委員会第1回総会開催。習近平氏が総書記として選出された他、新指導部が発足ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議開催(プノンペン)ASEANプラス3(日中韓)首脳会議開催(プノンペン)東アジア首脳会議(ASEANプラス日米中豪)開催(プノンペン)

国連気候変動枠組条約(COP18)開催(ドーハ、〜8日)

12月

10

11

17

27

出光興産、バイオエタノール製造・販売事業を推進するため、2012年12月7日に、プノンペン市にてカンボジア政府

(農林水産省ほか)と、バイオエタノール燃料開発に関する覚書を締結したことを発表コスモ石油、子会社のアブダビ石油がアラブ首長国連邦アブダビ首長国最高石油評議会(SPC)と締結した新利権協定が2012年12月6日に発効し、既存3油田の30年間の利権更新と新鉱区を取得したことを発表

出光興産、豪州の独立系燃料油販売会社であるFreedom社を買収したことを発表

JX日鉱日石開発、アラビア石油より同社の人材等を対象資産として新設分割される株式会社の発行済株式のすべてを譲り受けることについて合意したことを発表

4

6

16

26

衆議院選挙公示低炭素建築物認定基準(正式名称:建築物に係るエネルギーの使用の合理化の一層の促進その他の建築物の低炭素化の促進のために誘導するべき基準)告示公開

衆議院選挙投開票。自民党が294議席、自公で325議席を獲得

第182回特別国会召集(会期12月28日まで)。第2次安倍内閣組閣

12

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第162回OPEC定例総会開催

韓国大統領選挙投開票。保守系与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンへ)候補が当選

東シベリア・太平洋(ESPO)石油パイプライン(全長4756km、タイシェト〜コジミノ間)全面稼働

74石油関連日誌

Page 76: は じ め にには120ドル台に達しました。その後4月に入ると、徐々に原 油価格は下がり、欧州債務問題の再燃などから6月下旬には 一時90ドルを割るレベルにまで下落しました。しかし、6月末

〒100-0004 東京都千代田区大手町1-3-2(広報グループ)TEL (03)5218-2305  FAX(03)5218-2321

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2012年4月