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量子アニーリング解説 1 2012/10 @_kohta

量子アニーリング解説 1

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Page 1: 量子アニーリング解説 1

量子アニーリング解説  1

2012/10  @_kohta  

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アウトライン

•  量子力学入門  –  状態、純粋状態、混合状態  

•  古典力学の世界と量子力学の世界  •  量子力学の世界  

– 純粋状態と混合状態  

•  機械学習への応用  –  クラス分類問題  

•  量子アニーリングによる最適化  

•  to  be  con1nued  

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量子力学入門

background  image  :  h9p://personal.ashland.edu/rmichael/courses/phys403/phys403.html

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状態、純粋状態、混合状態

•  古典力学の世界  

•  量子力学の世界

粒子の状態 (x, p)位置と運動量を決めれば  古典的な粒子の状態は完全に決まる

粒子の状態

位置と運動量を同時に決めることができない  (不確定性原理)    物理的に可能な限り情報を指定し尽くしたとき  「指定の仕方」が、あるベクトル空間の元となる  (複素ヒルベルト空間)  

| i : 状態ベクトル  

:  相空間の座標  

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状態、純粋状態、混合状態

•  純粋状態  –  前述の「物理的に可能な限り情報を指定し尽くした状態」

を純粋状態と呼ぶ  –  普通の量子力学で扱う対象で、シュレディンガー方程式  

  に従う    

–  Hamiltonianは状態ベクトルに対する(エルミート)演算子で、(有限次元の場合)行列で書くこともできる  •  要するに行列Hの固有値問題  

H| i = E| i

系のHamiltonian エネルギー固有値

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状態、純粋状態、混合状態

•  純粋状態  –  具体的に計算するときは、何らかの基底で「表示」する必

要がある  •  ベクトルの成分を計算することに対応する  

•  (例えば)「座標」表示 →    シュレディンガー方程式の左から を作用  

h�|| i

:  ブラ・ベクトル (ケットに作用してスカラー複素数を返す)

:  ケット・ベクトル

h�| i :  2つのケット と    の内積 |�i | i

hx|

hx|H| i = Hx

hx| i = Ehx| i座標表示のHamiltonian  (微分演算子)

座標表示の状態ベクトル  (波動関数)

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状態、純粋状態、混合状態

•  純粋状態と確率  –  (例えば)座標表示の波動関数 が    わかると、 「粒子が位置x~x+dxにある確率」は                となる(ボルン則/量子力学の確率解釈)    –  状態が「位置演算子」の固有状態になっているときは、確

率密度はδ関数となる  •  可換な演算子の組は同時対角化可能で、それらの値を同時に正

確に決定することができる  •  xとpは非可換なので同時に決定できない  

–  「非可換の度合い」が不確定性の大きさを決める

hx| i ⌘ (x)

P (x) = | (x)|2dx

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状態、純粋状態、混合状態

•  混合状態  –  純粋状態は、具体的な表示で見ると  

         などとなり、固有状態の重ね合わせ(様々な位置にいる            状態が同時に混在している)となっている。    –  一方、複数の純粋状態の「古典的な重ね合わせ」を考え

たい場合もある  •  統計力学では、多数の粒子のあり得る配位についての確率的な

平均を考える  •  それぞれの配位は物理的に干渉する訳ではないので、古典的な

重ね合わせとなる  •  そのような状態を混合状態と呼ぶ

| i =X

x

|xihx| i =X

x

(x)|xi

Page 9: 量子アニーリング解説 1

状態、純粋状態、混合状態

•  混合状態  –  定義から、純粋状態 を確率的重み                   で混合した混合状態に対して、物理量Aの          確率分布は        となる。  

| 1i, · · · , | kip1, · · · , pk

物理量Aが固有値aをとる状態のブラベクトル

P (a) =X

i

pi|ha| ii|2

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状態、純粋状態、混合状態

•  混合状態  –  そのような混合状態を表すために、以下の密度演算子を

考えると便利  

–  密度演算子が与えられると、物理量Aの確率分布は  

       と書け、期待値は              と書ける  

⇢̂ =X

i

pi| iih i|

P (a) = ha|⇢̂|ai

X

a

aP (a) =X

a

aha|⇢̂|ai =X

a

ha|⇢̂A|ai ⌘ Tr(⇢̂A)

⇢̂ =X

x,x

0

|xihx|⇢̂|x0ihx0|

密度演算子の行列表示(密度行列)

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機械学習への応用

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量子アニーリング

•  混合状態の量子力学の確率論的な枠組みを応用  –  (純粋状態の理論で定式化する流儀もあるらしい)  

•  クラス分類問題  –  N個のデータをK個のクラスに分類する  

•  kNN法を始めとして色々やり方がある  

–  変分ベイズによる方法に量子効果を導入する  •  Issei  Sato,  et  al.  “Quantum  Annealing  for  Varia1onal  Bayes  Inference”    

–  クラスタリング  •  Kenichi  Kurihara,  et  al.  “Quantum  Annealing  for  Clustering”  

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クラス分類問題と密度行列

•  クラス分類問題  –  データ をK個のクラスに分類する

問題  •  単一データ のクラス割り当てを以下のように書く  

•  N個のデータ全てに対するある割り当ては  

       となる。  –  K=N=2のとき、 なら  

x = x1, · · · , xN

xk

�̃k = (0, · · · , 0, 1, 0, · · · , 0)T

K次元

� = ⌦Nk=1�̃k

�̃1 = (1, 0)T �̃2 = (0, 1)T

�̃1 ⌦ �̃2 = (0, 1, 0, 0)T

A⌦B =

0

B@a11B · · · a1lB...

. . ....

ak1B · · · aklB

1

CA

クロネッカー積

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クラス分類問題と密度行列

•  例えばK=N=2の場合  –  4通りの状態をとる確率が のとき、次の

ような密度行列を考える  

–  量子力学とのアナロジーを考えると  

p1, p2, p3, p4

diag(p1, p2, p3, p4) =X

i

pi�(i)�(i)T

�(i) 2 {(1, 0, 0, 0)T , (0, 1, 0, 0)T , (0, 0, 1, 0)T , (0, 0, 0, 1)T }

�(i)状態ベクトル(ケット):

diag(� log p1, · · · ,� log p4)Hamiltonian:

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クラス分類の量子力学的定式化

•  以下のようなHamiltonianを考える  

–  Hamiltonianに量子効果を入れる  

log p(x) = log Tr{e�Hc}

Hc = diag(� log p(x,�(1)), · · · ,� log p(x,�(NK)

))

Hq

=NX

i=1

�xi

,�⌦i�1

j=1EK

�⌦ �

x

⌦�⌦N

l=i+1EK

�x

= �(EK

� 1K

)

H = Hc +Hq

後の鈴木-­‐Tro9er展開で  うまく計算できる形になる

H =

0

BB@

� log p(x,�(1)) �� �� 0

�� � log p(x,�(2)) 0 ��

�� 0 � log p(x,�(3)) ��

0 �� �� � log p(x,�(4))

1

CCA

イメージ

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密度行列と古典的確率

•  Hamiltonianが対角なら、問題は(通常の)古典的な確率モデルと完全に一致する  –  密度行列を用いることで、Hamiltonianの非対角項に量子論的

効果を入れることができるようになる  –  量子アニーリングでは、非対角項を使って局所最適解から抜

け出すことを考える  

•  一般的な処方箋  –  データと状態について、対角要素が古典的確率となるHamiltonianを設計する  

–  適当な量子効果を入れた相互作用Hamiltonianを追加し、鈴木-­‐Tro9er展開を用いて対角な(サンプリング可能な)確率モデルの積として近似する  

–  量子効果を徐々に弱めるアニーリングを行いながらサンプリングし、最適解を求める  

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変分ベイズ法とクラス分類

•  変分ベイズ法の枠組み  –  隠れ変数σ、パラメータθがある観測変数xの確率分布      –  観測xに対するσの事後分布  

                 を求めたいが、厳密に計算するのは難しい    

•  クラス分類問題  –  観測変数x(データ)と、隠れ変数σ(データのクラス分類)

に対して、データxに対するσの事後分布を求める問題

P (x,�, ✓)

P (�, ✓|x)

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変分ベイズ法とクラス分類

•  変分ベイズ法の枠組み  –  xについての周辺尤度が  

       と書け、等号が のときに成り立つ          ことを利用する    –                   を最大化するqを変分的に求め、それを事後分布と

見なすことができる(F[q]を変分自由エネルギーと呼ぶ)  •  そのままではqを求めることができない

logP (x) =

X

Zd✓q(�, ✓) log

P (x,�, ✓)

q(�, ✓)

+ KL(q||P (�, ✓|x))

�X

Zd✓q(�, ✓) log

P (x,�, ✓)

q(�, ✓)

⌘ F [q]

q(�, ✓) = P (�, ✓|x)

F [q]

Page 19: 量子アニーリング解説 1

変分ベイズ以外の方法

•  MCMCなどを用いて、なんとか       からサンプリングする方法もある  –  クラスラベル空間全体から一度にサンプリングするのは

難しい  –  1変数を残して他を固定してサンプリングする過程を繰り

返す、ギブスサンプラーの方法を使える形にしたい

P (�, ✓|x)

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量子的Hamiltonianの取り扱い

•  量子効果を入れたHamiltonianはまともに計算することができない  

–  非対角な行列のexp??  •  鈴木-­‐Tro9er展開  

•  Hamiltonianの非対角部分を計算可能な形に近似し、MCMCサンプリングなどを行う  

•  mが一つの独立な対角Hamiltonianに対応する形となり、実装的にはm個のシミュレーテッドアニーリングを走らせることになる  

exp

X

l

Al

!=

Y

l

exp

✓Al

m

◆!m

+O

✓1

m

logP (x) = logTr{e�(Hc+Hq)}

Page 21: 量子アニーリング解説 1

アニーリング

•  温度項の導入  

•  アニーリング  –  シミュレーテッドアニーリング  

•  βを徐々に増加(温度を低下)させながらサンプリング  

–  量子アニーリング  •  βを徐々に増加させ、量子Hamiltonianの係数Γを徐々にゼロに近

づけながらサンプリング

logP (x) = logTr{e��(Hc+Hq)}逆温度(物理的には1/kBT)  

Γ

T

SA QA

SA SA

QA QA

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実験結果(文献より)

•  変分ベイズの方法  –  対数尤度値で見て、SAに比べ分類性能が10%程度改善し

たらしい  –  SAに比べ、局所解に陥りにくくなる性質があるらしい

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