View
230
Download
2
Embed Size (px)
Citation preview
確率と統計- 確率2回目 -
平成 18 年 11 月 1 日
2
今日の内容1. 確率の復習(再整理)2. 加法の定理3. 乗法の定理へのイントロ
確率と統計 2007 3
ある質問 イタリアのある貴族が Galileo(1564-
1642) にこう尋ねた。「3つのサイコロを投げるとき、その目の和が9になる場合と、10になる場合の数は等しいと思っているので、そのどちらに賭けても同じであると気にしなかったが、実際には10になる方が少し多く感じられるのはどうしたことか?」
Galileo に代りあなたは答えられますか?
確率と統計 2007 4
自由研究 Galileo 問題 3個のサイコロを投げるとき、その目の
和を T とする。このとき、 P(T=10) = P(T=9) ? P(T=10) < P(T=9) ? P(T=10) > P(T=9) ?
実際にサイコロを投げて調べてみよう。(理論値は次週説明します。)
確率と統計 2007 5
試行 標本点 標本空間 事象
確率と統計 2007 6
X + Y + Z = N
N=9,10
確率と統計 2007 7
X + Y + Z = 10 のとき(6, 3, 1) (4, 5, 1) (3, 6, 1) (2, 6, 2) (1, 6, 3) (6, 2, 2) (4, 4, 2) (3, 5, 2) (2, 5, 3) (1, 5, 4)(6, 1, 3) (4, 3, 3) (3, 4, 3) (2, 4, 4) (1, 4, 5)(5, 4, 1) (4, 2, 4) (3, 3, 4) (2, 3, 5) (1, 3, 6)(5, 3, 2) (4, 1, 5) (3, 2, 5) (2, 2, 6)(5, 2, 3) (3, 1, 6)(5, 1, 4) 27 通り
確率と統計 2007 8
X + Y + Z =9 のとき(6, 2, 1) (4, 4, 1) (3, 5, 1) (2, 6, 1) (1, 5, 3) (6, 1, 2) (4, 3, 2) (3, 4, 2) (2, 5, 2) (1, 4, 4)(5, 3, 1) (4, 2, 3) (3, 3, 3) (2, 4, 3) (1, 3, 5)(5, 2, 2) (4, 1, 4) (3, 2, 4) (2, 3, 4) (1, 2, 6)(5, 1, 3) (3, 1, 5) (2, 2, 5) (2, 1, 6)
24 通り
確率と統計 2007 9
27/216 = 0.125 24/216 = 0.111
約 1.4% の差!(人間はこれを知覚できるようだ)
10
それでは今日の話
11
確率の定義(再考) 試行 標本点 ω: a, b, c, …, z 標本空間 Ω={ a, b, c, …, z } 事象系 F: (事象の集合)
F={ φ, {a}, {b}, …, {a,b}, {a,c},…, Ω } 確率関数 P:
P: F x ∋ → P(x)
12
加法の定理( No.1)
例:1つのサイコロ• 試行:1つのサイコロを投げ、出る目を記録• 標本点 ω : 1, 2, 3, 4, 5, 6• 標本空間 Ω= { 1, 2, 3, 4, 5, 6 }• 事象系
F={Φ,{1},{2},{3},{4},{5},{6},{1,2},{1,3},{1,4},{1,5},{1,6},
{2,3},{2,4},{2,5},{2,6},{3,4},{3,5},{3,6},{4,5},{4,6},{5,6}}
13
加法の定理( No.2)
確率関数(確率の割り当て): P(Φ)=0 P(Ω)=1 P({1})= P({2})= … =P({6})=1/6
それ以外のもの ( 事象 ) は?
定義
等確率の原理より(等確率の仮定より)
14
加法の定理( No.3)
P({1,2})=? P({1,2,3})=? P({1,2,3,4})=?
どうやって計算する?
15
加法の定理( No.4)
事象の意味の確認: 事象とは、…
• 標本空間の部分集合• 事象系の要素
16
加法の定理( No.5)
事 象 解釈(意味 ) 備 考{1} 1の目が出る 単一事象
{1,2} 1の目が出るか2の目が出る
複合事象
{1,2,3} 1の目が出るか2の目が出るか3の目が出る
複合事象
17
加法の定理( No.6)事 象 確率 備 考
Φ P(Φ)=0 空事象
Ω (={1,2,…,6})
P(Ω)=1 全事象
{1}, {2}, {3},
{4}, {5}, {6}P({1})=1/6 etc. 単一事象
{1,2},{1,3},…, {2,3,4,5,6}
???
(ここが問題!)複合事象
18
加法の定理( No.7)
確率の計算とは、数学的には、測度(曲線の長さ、面積、体積)の計算と同等である。
(注)詳しくは、「ルベーグ (Lebesgue) 積分」
あるいは「測度論」に関する参考書を参照 のこと。
つまり、...
19
加法の定理( No.8)
各部分の図形の面積が P({k}) になっている。
{1}
{2}
{6}{3}
{4}
{5}
20
加法の定理( No.9)
したがって、 図形 {1,2} の面積は図形 {1} と図形 {2} の和
として求められる。つまり、 P({1,2}) = P( {1} {2} )∪
= P( {1} ) + P( {2} )
=1/6 + 1/6 = 2/6 = 1/3 P({1,2,3}) = P( {1} {2} {3} )∪ ∪
= P( {1} ) + P( {2} ) + P( {3} )
= 1/6 + 1/6 + 1/6 = 1/2
21
加法の定理( No.10)一般に、
A= w1∪w 2∪ w 3 …∪ ∪ w n Ω⊂
かつw1∩w 2 = Φ (互いに排反)
(2つの図形に重なり合う部分がない)のとき、P(A) = P( w1∪w 2∪ w 3 …∪ ∪ w n )
= P( w1 ) + P( w 2) + … + P( w n)
これを加法の定理という。
22
加法の定理( No.11) 重なり合う部分があ
るときは?
全体の面積 = 2つの図形の面積
-2つの図形の重なり部分の面積
23
加法の定理( No.12)
加法の定理(一般形)P(A B) = P(A) + P(B) - P(A∩B)∪
P(A B C) = P(A) + P(B) + P(C) ∪ ∪- P(A∩B) - P(B∩C) - P(C∩A)
+ P(A∩B∩C)
24
加法の定理( No.13)
事象 解釈(意味 ) 確率{1} 1の目が出る 1/6
{1,2} 1の目が出るか2の目が出る
2/6
{1,2,3} 1の目が出るか2の目が出るか3の目が出る
3/6
したがって、
25
練習問題箱の中に、赤球が2個、白球が 2 個、青球が 3 個入っている。(1)箱の中から無作為に球を1つ取り出すと
き、赤球が取り出される確率はいくらか?(2)箱の中から無作為に球を2つ同時に取り
出すとき、2個とも赤球となる確率はいくらか?
26
考え方:• 試行• 標本点• 標本空間• 事象系• 確率の割り当て:
• 空事象・全事象の確率は定義より OK• 単一事象の生起確率を決める• 複合事象は計算で求める
27
答え:標本空間を作り、単一事象の確率を求める。あとは単なる計算。(1)球は全部で 2+2+3=7 個
Ω={ 赤 1, 赤 2, 白 1, 白 2, 青 1, 青 2, 青 3}
P({ 赤 1}) = 1/7 (等確率の原理より)P({ 赤 1, 白 2})=P({ 赤 1})+P({ 白 2})
=1/7 + 1/7 = 2/7
28
赤か白が取り出される確率: 赤か白が取り出される事象:
• 赤が取り出される:• 赤1が取り出されるか、赤2が取り出される• { 赤 1, 赤 2}
• 白が取り出される:• 白 1 が取り出されるか、白 2 が取り出される• { 白 1, 白 2}
{ 赤 1, 赤 2, 白 1, 白 2} P({ 赤 1, 赤 2, 白 1, 白 2})=1/7 + 1/7 + 1/7 + 1/7
= 4/7
29
(2) Ω={{ 赤 1, 赤 2},{ 赤 1, 白 1}, { 赤 1, 白 2}, { 赤 2, 白 1},{ 赤 2, 白 2},{ 赤 1, 青 1}, { 赤 1, 青 2}, { 赤 1, 青 3},{ 赤 2, 青 1}, { 赤 2, 青 2}, { 赤 2, 青 3},{ 白 1, 白 2}, { 白 1, 青 1}, { 白 1, 青 2}, { 白 2, 青 3},{ 白 2, 青 1}, { 白 2, 青 2}, { 白 2, 青 3},{ 青 1, 青 2}, { 青 1, 青 3}, { 青 2, 青 3}} (21個の事象)
30
これらの事象が等確率で起きるなら、P( 2つとも赤 )=P({ 赤 1, 赤 2})=1/21
31
乗法の定理( No.1)
先ほどまでは、「ある出来事 A が起きるか、または、他の出来事 B が起きる確率」を考えた。
今度は、「ある出来事 A が起き、引き続き他の出来事B が起きる確率」を考えよう。 =>(乗法の定理をめざして)
32
例:1個のコインを 1 回だけ投げる• 試行:コインを投げて出る面を記録• 標本点 ω : H,T• 標本空間 Ω={H,T}• 事象系 F={Φ, {H}, {T}, Ω}• 確率: P(Φ)=0, P(Ω)=1,
P({H})=P({T})=1/2 (等確率の原理)
33
例: 1 個のコインを2回投げる• 試行:コインを2回投げて、出る面を順に記録• 標本点 ω : HH, HT, TH, TT• 標本空間 Ω={ HH, HT, TH, TT }• 事象系 F={Φ, {HH}, {HT}, {TH}, {TT},
{HH, HT}, {HH,TH}, {HH,TT}, …, Ω} (16 個 )• 確率: P(Φ)=0, P(Ω)=1,
P({HH})=P({HT})= P({TH})=P({TT})= 1/4
(等確率の原理)
34
例: 1 個のコインを3回投げる• 試行:コインを投げ出る面を順次記録• 標本点 ω : HHH, HHT, HTH, HTT, THH, THT, TTH, TTT• 標本空間
Ω={{HHH}, {HHT}, {HTH}, {HTT}, {THH}, {THT}, {TTH}, {TTT}}
• 事象系 F={Φ, {HHH}, {HHT}, {HTH}, {HTT},…, Ω}(256
個 )• 確率: P(Φ)=0, P(Ω)=1,
P({HHH})=P({HHT})= … =P({TTT})= 1/8 (等確率の原理)
35
表が2回、裏が1回となる確率は:• 表裏の出方: HHT, HTH, THH の3つ• したがって、
P({HHT, HTH, THH })
= P({HHT})+P({HTH})+({THH})
(各事象 {HHT}{HTH}{THH} は同時には起き得ない、つまり、
互いに排反)= 1/8 + 1/8 + 1/8 = 3/8
36
この考え方で、一応計算はできる。
でも、場合によってはもっと便利で発展性のある考え方がある。
それが乗法の定理である。
が、時間切れなので次回。
37
これ以後の内容 加法定理から乗法定理へ 事後確率の話し(ベイズの定理) 独立性とは N個の確率変数の期待値と分散 確率論による統計学の基礎付け
(この辺からまた統計に戻ります。)
38
付録 その他の確率の定義
(確率の定義にはいろいろなものがあります。どれが本当は正しいのでしょうか? これは定義の問題です。)
39
経験的確率 サイコロをずっと振り続けると、どの目
も同じ程度に現れる。 だから、
P( ) = P( ) = … = P( ) = 1/6① ② ⑥
40
測度論的確率 確率空間 M =<Ω, F, P>
ただし、 Ω :標本空間 F: σ- 加法族
2P F ∋ は無限回の集合演算に関して閉じている。
P: 確率関数(測度関数)P(Ω)=1
<注 >F は事象の集合( Ω の集合族の部分集合)