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平成30年度第1回NEDOTSC Foresight』セミナー
森 則之
平成30年7月13日
技術戦略研究センター (TSC)
再生可能 エネルギーユニット
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)
TSC Foresight
風力発電
TSC RE / Energy system & H2 Unit
風力発電
2
目次
1. 導入動向2. 風車の概要3. 発電コスト4. 課題と開発の方向性
TSC RE / Energy system & H2 Unit
風力発電の導入(世界)
世界の風力発電導入量は、2017年末時点で年間で52GW、 累積で539GW2017年の導入量は中国:20GW、米国:7.0GW、ドイツ:6.5GW欧州、米国、中国を主とするアジアの三地域が市場をけん引
3
(1) 年間導入量(2) 累積導入量
図 風力発電が導入されている地域図 2017年の各国の年間導入量
出所:GLOBAL WIND REPORT 2017(GWEC, 2018)
図 風力発電の導入量の推移(世界)
出所:GLOBAL WIND REPORT 2006 ~ 2017(GWEC)を基に技術戦略研究センター作成(2018)出所:GLOBAL WIND REPORT 2017(GWEC, 2018)
中国
米国ドイツ
インド
イギリス
欧州
北米
アジア
その他
TSC RE / Energy system & H2 Unit
導入風車のIECクラス
4
風車クラス Ⅰ Ⅱ Ⅲ S基準風速 50 42.5 37.5
設計者が規定する数値(年平均風速)
(基準風速 x 0.2)10 8.5 7.5
欧州、アジア、北米とも、基準風速(極値風速に対する設計基準)、年平均風速が低い規格での風車導入割合が増加傾向
図 地域別のIECクラス別風車の導入割合出所:JRC Wind Energy Status Report 2016 Edition(2017)
(m/s)
0
10
20
30
40
50
60
70
0 2 4 6 8 10 12年平均風速 (m/s)
クラスⅡ
クラスⅠ
クラスⅢ
極値
風速
(m/s
)
IECの風車設計規格は風速と乱流パラメータによりクラスを分けている
TSC RE / Energy system & H2 Unit
洋上風力発電の導入(世界)
洋上風力発電の導入量は2017年末時点で、累積で19GW(全導入量の3.5%程度)、年間で4.3GW(近年の伸び率は陸上風力発電よりも大きい)これまでの導入量は欧州が大半を占め、英国(38%)、ドイツ(29%)、中国(15%)など
5出所:GLOBAL WIND REPORT 2017(GWEC, 2018)
図 洋上風力発電の導入量の推移(世界)
中国
ドイツ
イギリス
デンマーク
オランダ
TSC RE / Energy system & H2 Unit
風力発電にかかわるメーカーのシェア
6
図 軸受メーカーのシェア図 風車メーカーのシェア(2016年)
風車では欧米のグローバルメーカーが高いシェアを占め、中国メーカーのシェアは中国市場拡大にともない高くなっている日本メーカーには、軸受や炭素繊維などの風車部品で高い世界シェアを獲得(10~20%前後)しているものがある
出所 : Navigant Research ホームページ(2017)<https://www.navigantresearch.com/blog/2016-reshuffles-the-top-10-global-wind-turbine-manufacturers>
出所 : 「World Wide陸上/洋上風力発電市場の現状と将来展望 2017」(富士経済,2016, 2015年実績・数量ベース)
A1社
25%
A2社
22%A3社
18%
その他
35%
(1)主軸用
B1社
23%
B2社
20%
B3社
17%
その他
40%
(2)増速機用
TSC RE / Energy system & H2 Unit
風力発電の導入(日本)
7
図 日本導入された風車のメーカーシェア
出所:「日本における風力発電設備・導入実績」(NEDO,2017)を基にNEDO 技術戦略研究センター作成(2018)
出所 :NEDO 「データベース/ ツール」を基にNEDO 技術戦略研究センター作成(2018)<http://www.nedo.go.jp/library/shiryou_database.html>
61
170 152
218 249
160
407
186 213
306 290
91 88 68
238
182
251
153
050
100150200250300350400450
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
新規
導入
量(M
W)
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
累積
導入
量(M
W)
割合
(%)
国産機 海外機 累積導入量
*1: Renewables Portfolio Standard の略、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を電気事業者に義務付け
出所 :「再生可能エネルギー大量導入• 次世代電力ネットワーク小委員会 第3回配布資料」(経済産業省, 2018)
2003年開始のRPS*1制度、2012年導入のFIT(固定価格買取制度)等を通じ着実に導入2017年度までの累積導入量約3.5GW、その内約30%が国産機2017年3月時点で、FIT認定量は6.9GW(内、0.8GW導入)であり、認定量規模の導入がなされれば、FIT前導入量2.6GWとあわせて、風力発電は2030年ベストミックスをほぼ達成特に、洋上風力発電では、4.3GWが環境アセス手続き中
図 風力発電の年間導入量の推移(日本)
図 洋上風力発電の導入状況及び計画
TSC Renewable Energy Unit
風車の概要
8
風車が受ける風力エネルギー量は風速の三乗に比例し、受風面積に正比例風力発電の設置場所は、陸上と洋上の二か所に大別される
2017年時点で洋上風力発電では、着床式が商用段階、浮体式は実証段階
図 風車の設置場所と基礎の種類
出所:「洋上風力の調達価格に係る研究会取りまとめ報告書」参考資料(経済産業省, 2014)/及びFloating Offshore Wind Vision Statement(Wind Europe, 2017)を基に技術戦略研究センター作成(2018)
m:質量(kg)ρ:空気密度(kg/㎡)A:受風面積(㎡)V:風速(m/s)
受風面積 A
2 2 312
12
12
風力エネルギー P (W)
= mV= (ρAV)V= ρAV
TSC Renewable Energy Unit
風車の構成要素
風力発電機の部品は約1~2万点と多岐にわたる
9
構成要素 概要
ローター系 ブレード 回転羽根、翼
ローター軸 ブレードの回転軸
ハブ ブレードの付け根をローター軸に連結する部分
伝達系 発電機軸 ローターの回転を発電機に伝達する
増速機ローターの回転数を発電機に必要な回転数に増速する歯車(ギア)装置(増速機のない直結ドライブもある)
電気系 発電機 回転エネルギーを電気エネルギーに変換する
インバーター 発電機の出力周波数を調整し、系統周波数に合わせる
変圧器 発電機の出力電圧を昇圧し、系統電圧に合わせる
運転・制御系 出力制御 風車出力を制御するピッチ制御あるいはストール制御
ヨー制御 ローターの向きを風向きに追従させる
ブレーキ装置 台風時、点検時などにローターを停止させる
風向・風速計 出力制御、ヨー制御に使用されナセル上に設置される
支持・構造系 ナセル 伝達軸、増速機、発電機等を収納する部分
タワー ローター、ナセルを支える部分
基礎 タワーを支える基礎部分
出所:NEDOホームページ<http://www.nedo.go.jp/fuusha/kouzou.html>
TSC RE / Energy system & H2 Unit
風車技術の進展と発電コストの推移
風車技術の大幅な進展(ローター直径は30年間で約6倍に大型化)及び市場の拡大に伴うコスト削減効果(量産効果、サプライチェーンの最適化・効率化等)により、発電コストは世界的に大幅に低減日本でも発電コスト低減は図られているが、世界平均の約1.6倍の水準
10
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
350,000
400,000
450,000
500,000
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
0.60
0.70
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
累積
導入
量(
MW
)
LCO
E(EU
R/kW
h)
累積導入量(世界) LCOE(世界(中国を除く))
約8.8円/kWh
出所:The future cost of onshore wind( Bloomberg New Energy Finance, 2015)、IEA Wind Task 26 “The Past and Future Cost of Wind Energy(IEA, 2012)を基にNEDO技術戦略研究センター作成(2016)
図 発電コストの経年推移(世界)
17m75kw
30m300kw
50m750kw
70m1,500kw
100m3,000kw
上段:ローター直径下段:設備容量
凡例
約13.9円/kWh日本
約73円/kWh(121.9円/ユーロ換算)
80m1,800kw
TSC RE / Energy system & H2 Unit
日本の発電コストの海外との比較
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資本費[円] + 運転維持費[円]発電コスト =
運転年数内総発電量[kWh]
資本費の主要な構成要素である風車価格は約1.4倍、工事費・電気設備費等は約1.6倍国内の運転維持費では、特に修繕費が高い
発電コスト 要因資本費 <風車>
・日本への導入量が少なく、国内の風車メーカーが量産効果を発揮するに至っていない
・海外メーカーからの調達において、FIT価格が設定されていることから、十分な価格交渉力(バーゲニングパワー )を発揮できていない<工事費、電気設備費>
・平均的なウインドファーム(Wind Farm)の規模が
小さく、欧州や米国と比べて近隣地での集積が生じていない
・山岳設置が多いことによる土地造成・建設費用の増大、僻地への設置によるアクセス道路の工事費の増大、系統接続の費用の増大
・国内の工事が諸外国よりも総じて高い
運転維持費 ・風力発電設備の運用管理と保守メンテナンスに関する産業基盤が整っていない
・メンテナンス人材の不足・国内での部品供給・ストック体制の未整備
・保険制度を通じた適切なインセンティブ付与不足
出所: H1 WIND LCOE OUTLOOK(Bloomberg New Energy Finance 2016)及び FIT年報データを基にNEDO技術戦略研究センター作成(2016)
出所:H1 2016 Wind LCOE OUTLOOK(Bloomberg New Energy Finance 2016)
及びFIT年報データを基にNEDO技術戦略研究センター作成(2016)
図 国内及び海外の資本費内訳
図 国内(7,500kW以上中央値)及び海外の運転維持費内訳
出所:「風力発電競争力強化研究会報告書」(経済産業省,2016)を基にNEDO 技術戦略研究センター作成(2018)
表 国内の発電コストが高い要因
修繕費
TSC RE / Energy system & H2 Unit
運転年数内総発電量に比例する設備利用率
日本では設備利用率が低い設備利用率は、修理などで止まっている年間での割合と運転中に出力できる発電量出力量(高い年平均風速の方が大きい)に依存することから、日本の設備利用率の低さはこれらに起因している
12
図 国内及び海外の設備利用率比較出所 :Bloomberg New Finance 資料を基にNEDO 技術戦略研究センター作成(2016)
TSC RE / Energy system & H2 Unit
技術開発の動向と最近のNEDOの取組み
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風車の技術開発の方向性として、「大型化」、「O&M の高度化」、「洋上進出」 があげられるNEDOでは、日本の風力発電技術の開発を先導し、現在、「風車運用高度化技術開発」、「着床式洋上ウインドファーム開発支援事業」、「次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究」などを実施
1984198619881990199219941996199820002002200420062008201020122014
17m75kw
30m300kw
50m750kw
70m1,500kw
100m3,000kw
上段:ローター直径
下段:設備容量
凡例
80m1,800kw
図 風車の大型化
図 O&M の高度化(スマートメンテナンス技術研究開発:2013~2017年)
図 洋上進出(次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究:2014~2022年)
出所:NEDOホームページ<http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100939.html>
出所:NEDOホームページ<http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100970.html>
出所:The future cost of onshore wind( Bloomberg New Energy Finance, 2015)、IEA Wind Task 26 “The Past and Future Cost of Wind Energy(IEA, 2012)を基にNEDO技術戦略研究センター作成(2016)
TSC RE / Energy system & H2 Unit
日本の風況
日本の風況の特徴 : 「低い年平均風速」、 「台風などによる高い極地風速」など
JISでは高い極地風速に対応した風車設計規格を設定し、IECへ提案*
14図 JISの風車設計規格
基準風速 57(平均風速) 10 8.5 7.5
(m/s)
0
10
20
30
40
50
60
70
0 2 4 6 8 10 12
年平均風速 (m/s)
クラスⅠ(基準風速 50m/s)
クラスⅡ(基準風速 42.5m/s)
クラスⅢ(基準風速 37.5m/s)
クラスⅠ,TクラスⅡ,TクラスⅢ,T
極値
風速
(m/s
)
日本の気象官署で観測された極値風速と年平均風速の関係
クラス T(基準風速 57m/s)
クラスTの基準風速と年平均風速
低い年平均風速対応クラスT風車
洋上対応クラスT風車
*:2018年3月時点で最終段階審議中
TSC RE / Energy system & H2 Unit
日本の風況に対応する風車技術
「低い年平均風速」でも発電量を増やすために、ブレードの長大化、ハブ高さの高高度化が進行「高い基準風速」への対応には、強風に対する耐久性向上が求められる低い年平均風速、高い基準風速に対応できる風車が日本では必要同様の気象条件の国々でのニーズも高いと思われる
15
出所:日本風力エネルギー学会誌 第40巻 第2号(2016)、日本エネルギー経済研究所定期レポ「台湾:洋上風力発電導入に向けた取り組みが進展」(2014)を基にNEDOが作成
図 日本の風況に対応する風車のイメージ例(長いブレードが風でしなる風車)
国 導入目標(GW) 目標時期
フィリピン 2.3 GW 2030年
ベトナム 6.2 GW 2030年
タイ 3.0 GW 2036年
台湾 5.2 GW 2030年
表 風力発電の導入目標(東南アジア)
ダウンウインドアップウインド
TSC RE / Energy system & H2 Unit
導入促進に向けた課題
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「土地利用規制」、「系統連系制約」などの法規制面での対応「発電コストの低減」、「産業基盤・国際競争力の強化」、「立地制約の克服による市場の拡大」の3 点を同時に達成していくことが必要
表 風力発電に関する法規制面の課題
図 日本の風力発電分野における課題と対応の方向性
大型化
洋上進出
O&M
高度化
制度 課題
環境影響評価法 ●開発期間長期化リスク、それに伴うコス増
建築基準法
●支持構造物の審査が厳しい●電気事業法とのダブルスタンダード●特殊仕様の風車・タワーによることで初期
費用が高くなる恐れ
系統連系制約
●接続容量の問題●接続に際してのコスト問題●接続に時間がかかるという予見可能性の
問題
電力保安規制
●電気事業法改正により定期検査が義務化される管理体制充実化により風車事故件数は減る可能性があるが、一方でそれに伴う人件費増の可能性
土地利用規制●農地法、自然公園法、森林法、緑の回廊
等による利用地の規制
保険制度●保険制度に適切なインセンティブが働いて
ない●保険事故が儲かるビジネス化
港湾・一般海域利用調整 ●権利関係の調整が複雑
TSC RE / Energy system & H2 Unit
まとめ
風力発電の導入促進に向けて以下が重要
・低い年平均風速、台風などの強風に対応できる風車開発
・「風車大型化」、「O&M の高度化」、「洋上進出」 を進めることで、発電コストの低減、競争力の強化、設置場所の拡大を目指す
・「系統連系制約」、「環境アセスの短期化」などの課題解決を着実に進める
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