28
クラウド時代の 翻訳サービス 次世代の勝者はここから生まれる 特集 #276 一般社団法人 日本翻訳連盟 機関誌 日本翻訳ジャーナル March / April 2015

日本翻訳ジャーナル 2015年3/4月号

Embed Size (px)

DESCRIPTION

 

Citation preview

クラウド時代の 翻訳サービス次世代の勝者はここから生まれる

特集

#276

一般社団法人 日本翻訳連盟 機関誌 日本翻訳ジャーナル

翻 訳 の 未 来 を 考 え る

March / April 2015

SDLでは優秀な人材を募集しております!・プロジェクトマネージャー・翻訳コーディネーター / 翻訳者・ローカリゼーションエンジニア・DTPスペシャリスト・ビジネスディベロップメントマネージャー・アカウントマネージャー

詳細は下記 URLをご覧ください。http://www.sdl.com/jp/

3

c o n t e n t s

無断転用禁止 Copyright©2015 Japan Translat ion Federation

一般社団法人 日本翻訳連盟〒104-0031

東京都中央区京橋 3-9-2 宝国ビル 7F

TEL. 03-6228-6607 FAX. 03-6228-6604

E-mail. [email protected] URL. http://www.jtf.jp/

一般社団法人 日本翻訳連盟 機関誌日本翻訳ジャーナル

2014年 3月/4月号 #276

発行人●東 郁男(会長)編集人●河野 弘毅

特集:クラウド時代の翻訳サービス 4 Gengo ロバート・ラングCEOインタビュー ● 河野 弘毅

6 「クラウド」に見る翻訳業界の現い ま

在と今後の展開 ● 古谷 祐一

9 CAT/TMSツールにおけるデスクトップ型とクラウド型の比較 ● JTFジャーナル

10 クラウド型翻訳支援ツールMemsource(メムソース) ● 加藤 じゅんこ

イベント報告 12 2014年度 第4回 JTF翻訳セミナー報告

あなたの翻訳は大丈夫?~翻訳者による品質保証を考える~ ● 齊藤 貴昭

14 2014年度 第3回 JTF関西セミナー報告

「機械翻訳と向き合うときが来た ̶ MTをもっと身近に、現実的に考える ̶」 ● 生田 明子/中岩 浩巳/栄藤 稔/森口 功造

翻訳会社の声 16 創立21周年目を迎えるにあたって ● 川原 早霧

連載コラム 18 「新米の上り坂、中堅の曲がり角」拾遺 ● 高橋 聡

20 しなやかな翻訳スタイルを目指して進化中 ● 倉田 真木

22 WildLight というツール (JTFセミナー補足 ) ● 齊藤 貴昭

24 フリーランス翻訳者への道~翻訳経験ゼロのサラリーマンの挑戦~ ● 加藤 康之

「ロバート ラングさん(手前)マシュー ロメインさん(後ろ)」

ロバート ラング…Gengo共同創業者兼 CEO、1979年オーストラリア生まれ。オーストラリアとイギリスの二重国籍を持ち、幼少時代から様々な国や地域で過ごす。海外での経験を通し、言葉の壁にとらわれず、誰もが様々な国の人とコミュニケーションを円滑に行えるようなシステムの必要性を感じ、Gengoのサービスを思いつく。趣味はマラソンと旅行。アイコンは、シンプルで洗練されたデザインを追求する Edward TufteとDieter Rams。あらゆる人が、あらゆる言語のコンテンツを理解・発信できるような世界を構築すべく、日々サービス作りに取り組んでいる。

マシュー ロメイン…Gengo共同創業者兼CTO、1979年アメリカ生まれ。アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれ、幼少時代からアメリカ東北部、ロンドン、東京といった都市で日本語と英語を使い分けながら生活。海外での経験を通し、言語の壁にとらわれず、誰もが様々な国の人とコミュニケーションを円滑に行えるようなシステムの必要性を感じ、Gengoのプラットフォームを思いつく。日本のグローバル化をサポートできるようなプラットフォームを提供すべく、日々開発に没頭している。

表 紙 の ひ と

撮影:世良武史

March / April 2015 #276

4

特集

—今後数年間の翻訳市場において Gengoはどのようなサービスを提供していく予定ですか?

ここ数年はプラットフォームの改良とクラウドソーシングの管理の習熟に時間を費やしてきました。信頼性、速度、品質のすべてが5年前と比べて大きく改善されています。その情報は当社のウェブサイトでも公開しています。プラットフォームはGengoのサービスの中核技術ですので、この点での強みを今後も維持しながら、このプラットフォームが持つ利点を活かしたサービスの展開を考えています。その他に今は翻訳メモリ機能の改善に取り組んでいます。これまでの翻訳メモリはデスクトップツールで使われてきましたが、まだまだ大多数の翻訳者が利用する機能となっていません。翻訳をはじめて依頼する顧客も翻訳メモリについてはまず知りません。私たちは、翻訳メモリをもっと多くの人が簡単に使えるようにしたいと思います。複雑な仕組みを理解しないと翻訳ができないという現状は必然的ではないはずで、翻訳はもっとシンプルかつパワフルな作業に変えていけるはずです。

新人の翻訳者にとっても事情は同じですから、Gengoのワークベンチは翻訳メモリのようなパワフルな機能をできる限りシンプルな使い方で提供する必要があると思います。今後数年間に Gengoは、これまでに構築してきたサービスをより強化していくことになります。翻訳メモリであれ用語集であれスタイルガイドであれ、できる限りシンプルに使えるようにします。

—機械翻訳にはどのように対応しますか?

機械翻訳(MT)については、顧客からの要望に応じてパートナーと提携して提供します。機械翻訳を使うにしてもクラウドソーシングがわれわれの強みの源泉であるという点には変わりなく、アプローチを大きく変更する必要はないと考えています。今後は機械翻訳の重要性が増していくと思いますが、人間の翻訳者をすぐに機械に置き換えるようなことは考えていません。機械翻訳は翻訳者を支援するツールであり、その生産性を伸ばすものと考えています。その他に注目しているのは社内に蓄積さ

れているコーパスです。一般的な翻訳会社に蓄積されるコーパスは法律や医薬のよう

に専門性の高い業務文書が中心だと思いますが、Gengoに蓄積されるコーパスはツイートや Facebookのメッセージのような個人ユーザーの日常会話であるという点がとてもユニークで興味深いところです。他に類をみないこのデータベースは将来的に機械翻訳に活用できる可能性があります。

—膨大なコーパスがすでに蓄積されていると思いますが、分野別に整理はできるのでしょうか?

その点はまだ不十分です。取り組むことはできますが、当社の強みになっているとはいえません。とはいえ、改善してはいきたいと思います。分野は E コマース、トラベル、カジュアルメディアなどになるでしょう。

—数年後に Gengo が目指す翻訳市場におけるポジションはどのようなものですか?

(同席したマシュー・ロメイン CTOからのコメント)「我々は人々がコミュニケーションをとることを支援する会社であるということを忘れないことが重要だと思います。

Gengo ロバート・ラングCEOインタビュー2015年2月3日 於 Gengo(渋谷) 聞き手:河野 弘毅

クラウド時代の翻訳サービスi n t e r v i e w

Gengo は、ワンクリックで言語の壁をこえ、全ての人が世界中の情報を理解・発信できるようにサポートをするクラウド型の人力翻訳プラットフォームです。厳しい翻訳テストに合格した約14,000人ものトランスレーターが、37ヵ国語・63言語ペアもの翻訳に対応しています。

5

現在プラットフォームを使っているのは翻訳者ですが、最終的にはユーザーや顧客からのメッセージの発信を支援することが目標です。当社にない技術に対しても対立するものとは考えず、おたがいを補いあう関係であると考えます。」

指摘したいもうひとつの点は、顧客だけでなく翻訳者もまた Gengoが提供する新しいサービスの対象であるという点です。多くの翻訳者が Gengoを通じて仕事をすることの軽快さと柔軟性を感じています。Gengoのプラットフォームで仕事をすれば、売上を請求する手間、不払いの顧客に悩まされるリスク、価格交渉の負担などから解放されます。Gengoのサービスは、顧客に対してだけでなく翻訳者に対してもユニークなものであるといえます。我々にとってクラウドソーシングは比べようもないほど重要な技術なので、そこに参加してくれる翻訳者に支持されることをとても重視しています。

—Smartling, Memsource, memoQなどがクラウドに対応した翻訳プラットフォームを提供していますが、彼らのサー

ビスは Gengo と競合しますか? Gengoも彼らのような翻訳業界向けの翻訳プラットフォームを提供するプランがありますか?大きなプロジェクトも対象にしますか?

プロジェクトの規模でいえば、すでに売上1億円に達するプロジェクトも受注しています。(ツールについては)クラウドソーシングが我々のコアであり、普通の翻訳者が誰でもアクセスできるようにする必要があります。プロフェッショナル向けの複雑な翻訳支援ツールを開発することには関心がありません。memoQや SDL Tradosとは競合するつもりがないのです。Gengo

のツールはクラウドの特性を活かしたものであり、新人の翻訳者が5分間で使い方を理解できるようなものを目指しています。これは Tradosでは考えられないことだと思います。この関係は iPhoneのカメラアプリと一眼レフカメラの違いにたとえることができます。たとえば、Memsourceとは提携を結んでいます。すでにMemsourceのプラットフォーム上から Gengoに翻訳を依頼できるようになっています。

(マシュー・ロメイン CTO)「それぞれの翻訳支援ツールは Gengoと相互補完的な関係にあると考えています。ユーザーはMemsourceを通じて Gengoの機能を呼び出すことができます。Smartlingとの連携も同様にできます。」

—10~20年後に翻訳業界と翻訳市場はどうなっていくと考えますか?

第一に、翻訳市場の将来は明るいと思います。我々が注目しているトレンド指標はいずれも市場の継続的拡大を予測しています。なかでもEコマースの伸びは重要です。Paypalによると、国境を越える Eコマースの売上は今後3年間で3倍になると予測しています。翻訳市場もこのトレンドを受けて確実に

成長するでしょう。興味深いのは、これまで顧客とこまやかな関係を結んで営業してきた多くの伝統的な小規模の翻訳会社がな

くなるわけではないという点です。そういう会社はこれからも存続していきますが、それとは別の新しいタイプの翻訳市場が急速に拡大すると考えています。したがって、Gengoの成長が翻訳業界において他の人の仕事を奪うことにはなりません。Gengoは他の翻訳会社の顧客を奪っているのではなく、たとえば5,000件の顧客レビューを翻訳する必要があるとか、毎週100件ほどのツイートを翻訳しなければならないというような新しい顧客から売上を得ています。小規模の翻訳会社ではそのような需要に応じることはできませんし、そのような仕事をやりたくはないでしょう。でも、我々はそういう仕事こそぜひやりたいのです。それこそ成長市場です。市場サイドの視点からはこのように整理できると思います。一方で翻訳者サイドの視点からは、急成

長する日常的なコンテンツを翻訳するために新しい翻訳者をおおぜい必要としています。これまで翻訳をやったことがない人に翻訳者として働いてもらう必要があるわけです。新人翻訳者に最初の仕事の機会を提供するという点では、Gengoはとてもよい役割を果たせていると思います。Gengoで翻訳という仕事を初体験してみて、「翻訳の仕事は楽しい、もっとやりたい」と感じた人のなかからフルタイムのプロ翻訳者になる人や翻訳会社をはじめる人がでてくるかもしれません。そのような人たちが最初に踏み出しやすい小さな一歩をGengoが提供していると思います。

GALAのカンファレンスや LocWorldで出会う多数の小規模な翻訳会社が将来消えていくとは思いません。Gengoは(そのような会社から市場を奪っているのではなく)新しい市場を開拓しているのです。個人翻訳者でとくに専門性の強みがない

場合は、翻訳の発注元と直接に取引することは今後ますます難しくなっていくでしょう。品質の高い翻訳ができて専門性がある人、たとえばゲームの翻訳者として卓越しているとか最高の技術翻訳者であるという人の場合は、今後の翻訳業界でも高いレートが期待できると思います。

特集クラウド時代の翻訳サービス

6

翻訳業界における「クラウド」とは?

まず、1つ目の 「クラウド」 は、クラウドソーシングという意味で用いられている。群集(Crowd)と業務委託(Sourcing)を組み合わせた造語で、特定の人々に業務をアウトソーシングすると対比される。クラウドソーシングは狭義では不特定多数の人間に業務を委託するという新しい雇用形態を指し、広義では、必ずしも雇用関係を必要とせず、不特定多数の人間により共同で進められるプロジェクト全般を指す場合もあり、その場合は、「Wikipedia」 や「Facebookの多言語プロセス」が代表例として挙げられる。狭義のクラウドソーシングでは、当該ビ

ジネスモデルで急成長を果たした企業が数社存在している。翻訳産業の枠組みを超えて説明するのであれば、2014年9月18日に株式会社リアルワールド、2014年12月12日に株式会社クラウドワークスが相次いで上場を果たしている。クラウドソーシングの市場規模は2018年には1,800億円になるといわれており、日本の翻訳市場に迫る勢いだ。クラウドソーシングは、デザイン、Web

作成、ライティング、翻訳、動画作成といったありとあらゆる仕事を、クラウド(大衆)にアウトソースし、発注側と受注側をインターネット上で結び付け、手数料をとるビジネスモデルである。特筆すべき点としてはそのサービスの領域に 「翻訳」 というカテゴリーが存在しており、翻訳を依頼したいクライアントと翻訳作業者のマッチングが既に行われている。海外では、「Elance」や 「oDesk」 が有名だが、実はこの2社は2013年12月18日に合併し、約30億円の資金調達に成功している。1年間にフリーランスに支払われた報酬は900億円を超えており、新たな市場が確実に形成されたといっても過言ではない。クラウドソーシングが将来性のあるビジ

ネスモデルであることは間違いないが、多種多様な業態を取り扱っているだけに、各サービスの品質レベルを強化するには限界があり、品質が作業者に依存しているというマッチングビジネスの弱点を克服していくことが今後の課題になるだろう。

「クラウド」に見る翻訳業界の現

い ま

在と今後の展開古 谷 祐 一 GMOスピード翻訳株式会社 代表取締役社長F u r u y a Y u i c h i

島国である日本だからこそ、歩み寄るべき市場がある。言うまでもなくそれは世界市場である。Smartlingや Gengoのサービスにおいて日本は世界の中の1つの市場でしかなく、彼らは最初からワールドワイドな市場で良質なシェアの獲得を目指している。インターネットやスマートフォンの普及、IoTなどを背景に劇的に増えていく新たな言語サービス市場のシェアを高めるために、常に技術革新やマーケティングに経営資源を集中している。そしてその狙いは間違っていない。その証拠として、Smartlingは First Round Capitalや Harmony Partners など合計12社の投資機関から総額6,310万ドル、Gengoはインテルキャピタルや Atomico (英国 )、NTTドコモ・ベンチャーズなど合計18社の投資機関から1,880万ドルの資金調達に成功している。世の中の投資機関は彼らに何を期待したのだろうか?キャピタルゲインを得られる確証はどこにあるのだろうか?その答えは、「クラウド」 というキーワードに隠されている。ここで誤解が生まれないように翻訳業界における 「クラウド」 とは、どのような意味で使われているのかを整理しておこう。最初に説明をしておきたいのが、翻訳業界において 「クラウド」 は 「クラウド

ソーシング」 と 「クラウドコンピューティング」 という2つの側面を持ち、それぞれの 「クラウド」 を用いた企業は翻訳産業のプロダクトライフサイクルにおいて成長期にあることは言うまでもない。驚くべき事実として、Smartlingが6,310万ドルの資金調達を果たした最大の理由は、「クラウド」 の2つの側面を融合したことが最大の要因だと私は理解している。今回、執筆の機会をいただいたので、後半はSmartlingのビジネスをモデルケースとして説明していきたい。

7

特集クラウド時代の翻訳サービス

クラウドコンピューティングとは?

クラウドコンピューティング(Cloud

Computing)とは、ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービスなどの構成可能なコンピューティングリソースの共用プールに対して、便利かつオンデマンドにアクセスでき、最小の管理労力またはサービスプロバイダ間の相互動作によって迅速に提供され利用できるモデルのひとつである。従来のコンピュータ利用は、ユーザー(企業、個人など)がコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データなどを、自分自身で保有・管理していたのに対し、クラウドコンピューティングでは「ユーザーはインターネットの向こう側からサービスを受け、サービス利用料金を払う」形になる。クラウドサービスの代表例としては Googleが無料提供する 「Google ドキュメント(旧名 Google

Docs)」 が有名である。ウェブブラウザ内で動くオフィスソフトで、文書(ワープロソフト)、スプレッドシート(表計算ソフト)、プレゼンテーション(プレゼンテーションソフトウェア)、図形編集の4つの機能が提供されている。ドキュメントはいずれも Googleのサーバー上に保存されるが、他形式とのインポート・エクスポートも可能である。また、他のユーザーとのドキュメント共有をサポートしている。

翻訳に特化したクラウドソーシング

翻訳に特化したクラウドソーシングとして代表的なサービスとして日本国内であれば、「Gengo」 や 「Conyac」、海外であれば、「One Hour Translation(米国)」 や「Translated(イタリア)」、「Transfluent

(フィンランド)」 などのプレイヤーが新たな市場を開拓している。最初のケーススタディとして紹介したいのが、「Transfluent」だ。同社は、アメリカ大統領選挙でバラク・オバマ氏の公式 Twitterのスペイン語翻訳を手がけた事で、その名が世の中に知れ渡った。「翻訳者」と定義するかどうかの議論は別として、登録翻訳者数は5万人を超えており、80カ国の言語に対応している。ソーシャルメディア、ウェブ、アプリ、EC事業者向けに人力翻訳を APIで提供しており、Facebook、Twitter、WordPress、ウェイボー、Magento、Zendesk、Unity

といったサービスと連携している。ソーシャルメディアの投稿や商品説明、ユーザーレビューなどの翻訳は、リアルタイム性が求められるが、同社のサービスでは当該コンテンツがほぼリアルタイム(短い文章なら数分程度)で翻訳される。こういった人力翻訳 APIは Transfluentだけが突出しているわけではなく、事例は山のようにある。「Gengo」 と 「Translated」 は、YouTubeと API連携し、字幕翻訳をリアルタイムに依頼できるサービスを2年前から開始しているし、「Conyac」はバリュープレスと提携し英文プレスリリースの作成と海外300メディアへ配信可能なサービスを開始している。日本経済新聞では、全世界のクラウドソーシングの市場規模は13

年に約2,000億円、18年には1兆円超に拡大すると予測を出している。伸び行く新規市場の中で、彼らは今後どのような展開をしていくのであろうか。今後の成長に期待したい。

翻訳業界におけるクラウドコンピューティングとは?

現在の翻訳業界では、翻訳支援ツールを利用する際にクライアント端末に翻訳ソフトやツールをインストールするスタイルが一般的だ。その証拠として世界中のプロ翻訳者の80%以上に使用されている SDL Trados Studioはデスクトップ製品である(SDLのウェブサイト参照。)また、ロゼッタの 「TraTool」、東芝ソリューションの翻訳ソフト 「The翻訳」 も例外ではない。このような背景の中、ここ数年で新たなトレンドが生まれている。MultiLingual

社が発行する 「MultiLingual」 は世界中の翻訳エージェントが購読している業界雑誌だが、当該雑誌の広告枠に新たな企業の顔ぶれが増えたことからもトレンドを読むことができる。代表格である 「SDL」、「STAR Group」、「Lionbridge」 は常連客だが、新たなシステムを提供するベンダーが急激に増えている。「memoQ」、「Smar tl ing」、「Memsource」、「XTM

Cloud」、「Wordbee」 はその代表格だ。「Memsource」 や 「memoQ」 について

は日本国内でも利用者数が増加しているので、ここでは 「Wordbee」 のビジネスモデルについて少し触れたい。

8

クラウドベースのCATツール

Wordbeeはブラウザからログインするだけで、一般的な CATツールに備わっている機能や翻訳のプロジェクト管理を簡単に行うことができる。最近の傾向として UI(ユーザーインターフェイス)はユーザーフレンドリーかつシンプルでなければならないが、この点においてWordbee

の UIは優れている。利用できる機能としては、翻訳エディタ、翻訳メモリ、機械翻訳などが備わっており、「機械翻訳による事前翻訳」を「人による訳文チェック」を通じて品質向上させて、「翻訳結果を翻訳メモリに蓄積」して再利用できる環境も用意されている。また、翻訳のプロジェクト管理については、専門分野やスキル別に翻訳者グループを作成することができ、当該グループに打診して最初に応答のあった翻訳者に自動的に翻訳を発注することができる。また、複数の翻訳者を予め選択しておけば共同作業も可能だ。Wordbeeを導入したニコン精機(Nikon Precision)の役員、 アンドリュー・ジョーンズ氏は「ウェブに基づいたいくつかの翻訳ツールを検討した結果、日本語への対応の優れたWordbee

を採用しました」と語っている。ここで紹介した基本的な機能は、クラウドを基盤とした CATツールベンダーにおいては標準機能である。クライアント端末にソフトやツールをインストールするのが日本のスタンダードだが、諸外国に関してはクラウドベースの CATツールを利用する翻訳者や翻訳エージェントは確実に増え始めている。

Smartlingのビジネスモデル

今までクラウドソーシングとクラウドコンピューティングを様々なモデルケースをベースに紹介してきたが、最後に取り上げておきたいのが Smartlingである。同社は2009年に設立、 本社はニューヨークだ。主に扱っているサービスは、ウェブサイトやモバイルアプリ、ドキュメントの翻訳で、同社は当該サービスをエンタープライズ向けに提供している。もちろん APIも用意されており、リアルタイムに大量のコンテンツを翻訳することも可能だ。ここまでの説明であれば、クラウドソーシングのモデルケースで説明した Transfluentや Gengo

とそこまで違いは見られないが、同社の場合は業務委託(Sourcing)の部分が他社と異なる。今まで説明したモデルケースのSourcing先は当該 LSPに登録する翻訳者が大前提にあったが、Smartlingの場合、クライアントが求める品質レベルに応じて機械翻訳、ポストエディット、クラウドソーシング翻訳、ないしは翻訳エージェントを選択して利用することができる。つまり、Sourcing先に翻訳エージェントを加えたことで、当該プロセスに限ってはクラウドソーシングの最重要課題である品質管理の問題を見事に解決したことになる。その証拠として全世界で160社以上の翻訳エージェントがパートナーとして Smartling

の翻訳ソリューションを通じてあらゆるコンテンツを翻訳している。2012年にCommon Sense Advisory が発表した世界の言語市場規模は、335.23億ドルとなり年率12.17%で成長。また、TechNavio

- Infiniti Research Ltd の調査によれば、2014年~2018年にかけて年率5.72%で成長する予測が出ている。

クラウドソーシングとクラウドコンピューティングの違いから様々なモデルケースを通して「クラウド」に見る翻訳業界と今後の展開を説明してきたが、過去の常識にとらわれない斬新なビジネスモデルで良質な市場の獲得を目指しているプレイヤーに共通している点を最後にお伝えしたい。すべての企業に共通している点は、彼らはすべて「クラウド」という強力な武器を持っていることだ。

GMOスピード翻訳株式会社(東証1 部上場 GMOインターネットグループ)の代表取締役社長。社団法人日本翻訳連盟理事。翻訳支援ツール委員長。新たな翻訳需要の開拓に向け、国内ほとんどの大手ポータルサイト(@nifty、OCN、So-net、livedoor、楽天、アリババマーケティング、Yahoo! 知恵袋等)との提携やアスクル、プラス株式会社ジョインテックスカンパニーなどの提携により新たな市場を開拓。また、翻訳業界では取得が難しいと言われている国際規格 ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)を取得。GMOスピード翻訳としての雑誌・メディア取材実績としては2011年夏版(イカロス出版)通訳・翻訳ジャーナルや

2012 年(アルク)翻訳辞典、2014年日経トレンディ (TRENDY)などがある。

P R O F I L E

F u r u y a Y u i c h i古 谷 祐 一

9

特集クラウド時代の翻訳サービスCAT/TMSツールにおける

デスクトップ型とクラウド型の比較作成:JTFジャーナル参考文献:Andrzej Zydroń “Cloud translation process, current and future” MultiLingual #141 Jan/Feb 2014

比較のポイント デスクトップ型 クラウド型

価格と支払方法

数万円ないし数十万円のソフトウェアを購入。数年に一度、アップグレードされるためいずれはアップグレードの経費がかかる。翻訳会社だけでなく翻訳者も自己負担でツールを購入するのが一般的。

毎月一定の金額(サブスクリプション)を支払ってログイン権限(アカウント)を購入する。翻訳会社が経費を負担して翻訳者は無料で利用できるツールも多い。アップグレードはサーバー側で自動的におこなわれるため通常は追加コストは発生しない。

翻訳対象文書のながれ

発注元、翻訳会社、翻訳者がそれぞれデスクトップ環境にファイルをコピーし、必要な処理を施す。ファイルをやりとりするときは、メールに添付するか、ファイル共有サービスを利用する。

発注元、翻訳会社、翻訳者が同一のプラットフォーム上の同一のドキュメントにそれぞれの権限でアクセス可能。翻訳対象ファイル、翻訳メモリ、用語集を1箇所に集積しやすい。

表現や用語の統一性構造的に翻訳メモリや用語集が各作業者のデスクトップに分散される傾向があるため、大きなプロジェクトになればなるほど表現や用語の不統一が起きやすくなる。

構造的に翻訳メモリや用語集が1箇所に集中しているため、プロジェクトの規模が大きくなっても表現や用語の統一を保ちやすい。

顧客指定ツールへの対応

自分で購入しないといけないが、プロジェクトが終了したら同じツールをまた使う仕事が次に来るとは限らない。ツールがなくて仕事がうけられないリスクと買ったツールをあまり使わなくなるリスクの間で購入判断することになる。

受注したプロジェクトの期間だけ指定されたツールにログインして使用し、プロジェクトが終了したらライセンスを解約すれば余計なコストはかからない。

バージョン派生の問題使用バージョンを顧客から指定される場合はライセンスの追加購入が発生するケースがある。

すべてのユーザーが常に最新バージョンを使うため、バージョン派生の問題は原則として発生しない。

サポートにかかるコスト購入2年目以降もサポートを受けたい場合は別途契約が一般的。

月額固定の使用料に含まれる。

(翻訳会社の場合)仕事量の増減への対応

購入するライセンス数の見極めがむずかしい。不足すると業務が停滞するが余らせるとムダな資産になる。翻訳支援ツールはソフトウェアとして固定費(固定資産)になる。

作業量にあわせてアカウント数を調節できる。翻訳支援ツールはサービスとして変動費(必要経費)になる。

翻訳作業開始までの労力パソコンへのインストールが必要。初心者にとっては操作方法やファイル形式が複雑で、最初にそれなりの学習時間がかかる。

サービスにログインしてすぐに使える。初心者でも短時間で理解しやすいシンプルなUIと構造になっているツールが多い。

パソコン必要。それにともなう出費、環境構築、環境整備が必要になる。ウィルス感染への対策が必要。アプリケーションをたくさんインストールすると処理速度が遅くなる。

ブラウザが動作する環境であればどこからでも使える。Windows、Mac、タブレットなどの選択肢から自分に合った環境を選べる。

10

私がMemsourceと出会ったのは今からおよそ2年半前。2012年5月に育児休暇から復職して間もなく、上司に「これをやれ」と言われたことが発端でした。聞いたこともなく、正直見た目もぱっとしないツールでした。ホームページをみると、会社として設立したのは2010年。

有料版は2011年にリリース。売り始めてからまだ一年弱の翻訳支援ツール・・不安がよぎりました。とりあえず使ってみたところ、当然ながら不具合はありました。2バイト文字に絡むものもあり、当時は、まだアジア圏でそれほど使われていないことを物語っていました。マニュアルを探しても、オンライン上のかなり大雑把な説明以外見当たりません。仕方なく手さぐりで使っていきました。しかし、こういった不安な気持ちは、次に驚きに変わりました。ひとつ目の驚きは、その操作性のシンプルさです。マニュアルが大雑把でも使えてしまうということは、言ってみればものすごく操作性がよいのです。特に翻訳を行うエディター部分のオプションは最小限におさえられており、なんとなく動かしても使えてしまう。ふたつ目の驚きは、その開発スピードの速さです。今のMemsourceは2年半前とはまるで違うものです。短

期間の間にどんどん新規機能が追加されていったのです。新機能のなかには、ドメイン・サブドメインを可能にする設定・変更履歴機能の追加など、こちらがリクエストしたものも含まれています。言いかえれば、当時はこういった基本機能も備わっていなかったのです。しかし、それとは対照的に、各種機械翻訳エンジンや API

への対応など最新機能は搭載されていて、このアンバランスさが印象的でした。Memsourceの視点は、従来の翻訳支援ツールではなく、すでに未来を見つめている気がしました。この気持ちは社長の David Canek氏とお話しした時に確

信に変わりました。Davidさんの目指すものは、今より良いツールを作ること

ではなく、「未来の翻訳プラットフォームを作ること」。

David Canek氏来日時

この分かりやすくぶれのない方針があり、社員一丸となってこの目的に突き進んでいるからこそ、Memsourceは短期間のうちに急成長をとげたのだと思います。ではここで、Memsourceの特徴をいくつかご紹介します。

2つのエディターが利用可能

クラウド型というとWebブラウザ上でしか使えないイメージですが、Memsourceは通常のエディターとウェブ上のエディターの両方を提供しています。

【通常のMemsource エディター】

【Webエディター】

有料ライセンス1個ごとに10個の無料ライセンスがついてくる

いくつかエディションがありますが、Team Startエディション以上であれば、有料アカウント1個につき、10個の翻訳者用アカウントがついてきます。翻訳会社としては、翻訳者の皆様に無料でツールを使って頂くことが可能な便利な料金体系です。

Memsource上で翻訳者への仕事依頼メール送信まで行うことができる

翻訳者との原稿、参考資料の受け渡しはMemsourceサーバーを通じて行います。さらに仕事依頼メールもMemsource

クラウド型翻訳支援ツール

Mメムソース

emsource株式会社 翻訳センター 業務推進部

加 藤 じ ゅ ん こ

11

特集クラウド時代の翻訳サービス

上から送信することができます。従来の原稿をメールに添付して翻訳者とやりとりする方法に比べ、安全性も高く、効率の良いフローです。

あらゆるステータスの変更が自動メールで通知される

翻訳者が翻訳を終えたとき、ステータスを変更すると、プロジェクトマネージャー宛てに自動的にメールが送られます。翻訳の後に校正のワークフローを設定している場合には、担当校正者にも自動的にメールが届くように設定することができるので、タイムロスなく業務を進めていくことが可能です。

業務の共有がしやすい

各ワークフロー(翻訳・校正)の進行状況は、プロジェクトマネージャーと、そのプロジェクトに関わる翻訳者全員が同じ画面で確認することができます。

【進行状況はパーセンテージで表示】

完了した翻訳は分節ごとに、随時 Memsourceクラウドサーバー上に保存されていくので、翻訳者・校正者全員で最新の翻訳メモリを共有することが可能です。

クラウドテクノロジーが可能にしたものは、作業環境の共有化ですが、「翻訳」は共有化によって大きく効率化がもたらされる作業のひとつです。今後テクノロジーの進化とともに、ますます大きな変化が起こると予想されますが、これを実現するのは、Memsourceのような未来をみすえた翻訳支援ツールだと思います。

早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。㈱翻訳センター

業務推進部にて、翻訳支援ツールの教育 /サポート業務・社内ツール開発業務にあたる。Memsource については導入当初より、社員および社外翻訳者教育・マニュアルサイト構築・不具合検証・Memsourceとの交渉等を行う。Memsource に関する知識と経験にかけては日本で3本の指にはいると自認。

P R O F I L E

K a t o J u n k o加 藤 じ ゅ ん こ

SEMINAR

12

Event R

epo

rt 01

Tokyo18Dec.2015

2014 年度 第 4 回 JTF 翻訳セミナー

日 時 ● 2014年 12月 18日(木) 14:00 ~ 16:40

開催場所 ● 剛堂会館

テーマ ● あなたの翻訳は大丈夫? ~翻訳者による品質保証を考える~ 講 師 ● 翻訳コーディネーター・社内翻訳者 齊藤 貴昭 S a i t o T a k a a k i

報告者 ● 松本 かおる(翻訳者)

2 0 1 4 年 度 第 4 回 J T F 翻 訳 セミナ ー 報 告

今回のセミナーでは、製造メーカーで品質保証業務に15年以上携わった齊藤貴昭氏が、翻訳の品質保証についてお話しくださった。

セミナーの内容は、翻訳者は翻訳の「職人」であれ、翻訳

会社は「商人」として翻訳のプロであれという基本的考えが元になっている。

品質とは?

翻訳の「品質」とは、翻訳物の「質」(特性・条件)と「よしあし」(基準)である。そして品質管理とは、特性と条件を洗い出し、それぞれの基準を決め、そのばらつきを抑える作業だと言える。そのアプローチはさまざまあるが、今回は、特性・条件・基準を5W2H(Who、When、Where、What、Why、How、How many)で捉え、具体的な項目に落とし込んでいく機能分解的アプローチを紹介された。たとえば、Who(誰が読む、誰が評価する)は、翻訳会社のチェッカーやクライアントの担当者、最終読者が想定される。以下、翻訳者を含めた4者をベースに話を進める。

翻訳物の品質保証上の問題

翻訳の品質保証とは、発注者の要求品質の保証である。ところが、最終読者が求めるものと翻訳の発注者が求めるものが違い、さまざまな問題が発生する。当然、このギャップは埋めなくてはならな

い。翻訳者は、1)誰が、どこで、何のために、どのような機会に使用する文書なのか、2)どのような項目をどのようなレベルで求められているかを発注者に確認する必要がある。同時に、発注者(翻訳会社/クライアント)は、これらの内容を的確に把握し翻訳者に伝達しなくてはならない。

翻訳物のチェック

翻訳物のチェック項目は、「翻訳文の質」と「作業チェック(ヒューマンエラー)」の2つに分類できる。まず、翻訳文の質とは、「訳文の読みやすさ、流暢さ、スタイル」である。しかし、主観的で基準を設定しにくいのが実状である。また、恣意的なものや好みも含まれるが、これは翻訳会社がリスクをとるべきであり、翻訳者に責任はない。これに対してヒューマンエラーは、素人でも明確に指摘できる「翻訳不良」であり、罪は重い。職人である翻訳者は「不良ゼロ」が当たり前と考えるべきである。本セミナーの前に SNSを使い、「翻訳物の品質を向上/保証するために何をしていますか」というアンケートを実施したが(回答者はほぼ翻訳者とチェッカー)、翻訳技術向上ほどヒューマンエラーは真剣に捉えられていないようである。しかし、多くの顧客はヒューマンエラーがあると「翻訳の品質が悪い」と判断するため、翻訳者は翻訳技術の研鑽と同様に、ヒューマンエラー撲滅にリソースを割く必要がある。

SEMINAR

13

Event R

epo

rt 01

精密機器メーカーで設計から製造、市場に至るまでの品質保証業務に通算20年以上従事。その間、5年の米国赴任を経験後、6年間の社内翻訳・通訳の経験を経て、2007年より某翻訳会社で翻訳コーディネーター・社内翻訳者として従事している。製造業の品質保証経験を翻訳品質保証に生かす手法を日々模索している。また、自作ワードマクロ「WildLight」を使用した翻訳チェック術の普及に努めている。・ブログ「翻訳横丁の裏路地」・翻訳勉強会「十人十色」主宰メンバー・JTF日本翻訳ジャーナル編集委員

P R O F I L E

S a i t o T a k a a k i齊 藤 貴 昭

ヒューマンエラー対策

対策の基本は、「後でチェックして直せばよい」ではなく、「最初からミスしない」というアプローチである。具体的には、次の4段階で対策を考える。

1)翻訳環境:「発生しにくい工夫」 ミスが発生しにくい環境を整備(例:複数または大型のモニタ、品質の高いメガネ、タイピングしやすいキーボード、タイピングの訓練、運動記憶の利用など)

2)翻訳前:「発生させない工夫」 事前準備でミス発生を抑制(例:資料やスタイルガイドの確認、あいまいな点を翻訳会社に確認、事前調査、原稿の加工など)

3)翻訳中:「発生させない工夫」 ミスしない工夫と直ぐにミスに気付ける工夫(例:コピペ、校正機能、音読、数字キーの音声発声、専門用語や固有名詞の調査など)

4)翻訳後:「流出させない工夫」 ミスを検出しやすくする(例は後述)

ヒューマンエラー対策を以下の6つのアプローチで可能なだけ多くリストアップする。

1)無しで済ます2)やり方/手順を変える3)道具を変える4)やり直し可能にする5)致命傷を回避6)問題を逆手に取る

そして具体的なアクションを考え、効果の高い順に並べる。次に例を示す。

1)気を付ける:必ず再発するので、これは対策ではない。

2)コピペと上書き:訳抜けや転記ミスの防止で有効である。

3)自己多重チェック:同じフィルタをかけているだけなのでミスは流出する。

4)Easy to Notice:チェックのポイントを絞り込み、集中的にチェックできるので効果が高い。

5)他者多重チェック:フィルタが変わ

るのでミス流出を抑制できる。6)機械化:ミス流出防止の究極の方法であり、理想的。

翻訳後のチェックは、1)チェック対象を絞って精度を上げる、2)チェックポイントを絞る、3)人間の知覚(聴覚、運動記憶、色認識、パターン認識)を利用する、がポイントとなる。翻訳者単独で行う場合、上記の4まで

が実行可能であり、特に Easy to Notice

が高い効果を期待できる。

では、具体例をアンケートから紹介する。

「チェックシート」:「チェックせずマークだけ付ける」という状況に陥らないように注意が必要だ。チェック項目リストとして位置付ける。

「自己多重チェック」:寝かせる、印刷する、気分転換、音読などがあるが、このタイプのチェックは、客観性を演出し自意識をチェックモードへ切り替えるとともに、五感の総動員、認知/認識能力の導入がポイントになる。

「Easy to Notice」「機械化」: 市販、自作、エージェント支給などさまざまなツールが挙がった。「機械化」(自動検査 )

の注意点は、検出精度の検証が必須。また、翻訳者の能力伸長へマイナスに働くこともあるので、使い方をよく考える必要がある。

自分の品質保証フローを作る

自分の品質保証フローを作る上で大切なのは、顧客へ翻訳不良が流出しない確信が持てる基準で、全数検査を行うことである。まず、翻訳物には幅広いチェック項目

(訳文の読みやすさ、流暢さ、スタイル、専門用語・定型訳の統一と適用、文法、用語集の適用、訳抜け、転記ミス、コメント等の不要情報の除去、スペルミスやタイポ、スタイルガイド、環境依存文字の混在、スペーシング、全角文字の混入、フォント指定など)があるので、これに基づいて自分の品質フローを決める。フロー決めでは、一石二鳥を目指す、自己鍛錬をうまく盛り込む、修正で触った部分は後でチェックする、がポイント

となる。そして、チェックフローを決めたら、それを絶対に崩さないことが大切だ。納期短縮を目的にチェックを省いてはならない。品質が保証されないと、あっという間に信頼は失われてしまう。

品質保証の責任領域だが、純然たる翻訳における瑕疵となる部分と、合意された翻訳仕様に基づいた作業については翻訳者の責任である。ヒューマンエラーはすべて翻訳者が保証すべきだ。対して翻訳会社の責任は、顧客へ流出

した全ての問題と翻訳文の恣意的差異/好みの問題、そして原文が多様な解釈ができ、その解釈に基づいた顧客からの指摘問題である。

感想

ポカミスによって翻訳物の品質は瞬時に低下してしまう。ミス対策を体系的に把握し、より効果的な方法を模索していた私にとって、今回のセミナーは大いに役立った。チェック項目や方法についてかなり整理できたと思う。セミナーではWildLightの概要が紹介されたが、講習会にも是非参加してポカミス根絶を目指したい。

SEMINAR

14

Osaka30Jan.2015

Event R

epo

rt 02

2014 年度 第 3 回 JTF 関西セミナー

日 時 ● 2015年 1月 30日(金)10:30~ 17:00

開催場所 ● 大阪大学中之島センター

テーマ ● 機械翻訳と向き合うときが来た ̶ MTをもっと身近に、現実的に考える ̶ パネルディスカッション「医薬分野で機械翻訳は本当に使えないのか?」 パネリスト ● 生田 明子 I k u t a A k i k o(武田薬品工業株式会社 ワクチンビジネス部)

中岩 浩巳 N a k a i w a H i r o m i(アジア太平洋機械翻訳協会 会長、名古屋大学大学院 情報科学研究科 特任教授)

栄藤 稔 E t o M i n o r u(株式会社みらい翻訳 代表取締役社長)

モデレーター ● 森口 功造 M o r i g u c h i K o z o(株式会社川村インターナショナル 執行役員・ゼネラルマネージャ)

報告者 ● 辻 美帆子(株式会社 アスカコーポレーション)

2 0 1 4 年 度 第 3 回 J T F 関 西 セミナ ー 報 告

機械翻訳(MT)の技術革新はめまぐるしく進み、関心や期待は高まっている。しかし、とりわけメディカル翻訳の現場においては、MTがどの程度活用できるレベルに達しているのか、メディカル翻訳に携わる者はどのようにMTを活用すればよいのかについて検証されていない。研究者、クライアント、翻訳会社から3名のパネリストをお招きし、MTの現状を伝え、ビジネスへの可能性を探るべく議論した。

生田氏からはクライアントである製薬会社の立場から、「MTへの期待」についてお話いただいた。

2013年度に発生した翻訳会社への外注費の推移をグラフで示し、ワクチンビジネス部を含む会社全体として翻訳発注費用は年々増加傾向にあり、今後も需要は増すばかりである。生田氏は、文書の種類によってスピー

ド、ボリューム、コスト、品質の4つの選択基準から翻訳会社を選択している。加えて重要視しているのが「情報漏洩の問題」である。上市前の開発情報を外部の者に知られないためにMTを使うことで情報が外に出ないなら使う意味は大きい、と。また社内で翻訳したい資料は膨大にあり、もしすぐに、そして安価で、またはその都度の費用が発生しないならMTへの期待は大きい、ともお話しいただいた。

中岩氏からは、アジア太平洋機械翻訳協会の活動および「機械翻訳の基礎と動

向」について発表いただいた。MTは、ある言語のテキストや音声を自動的に別の言語やテキストへ変換する技術のことだ。MTには「ルールベース機械翻訳」と「統計的機械翻訳」の2種類がある。「ルールベース機械翻訳」とは、原言語を解析して構文構造を決定し、人手作成の辞書や規則を用いてこれを目的言語の構文構造に変換し、目的言語を生成する技術。「統計的機械翻訳」は対訳データから統計モデルを学習しMTを実現する技術。そのためには、人手や大量のデータが必要であるが、今後は「統計的機械翻訳」が主流となるだろうと中岩氏は予測している。その理由には、商用利用が増加しており、Googleや eBay

などがビッグデータやワークフロー最適化のためにMTを積極的に活用していることが挙げられる。大きく語順が異なる言語に対しては、まだまだ精度は低いが、技術進歩はめまぐるしいため、今後数年間で現在懸念されている問題は改善されるだろうと語った。

栄藤氏からは「みらい翻訳のビジョンと翻訳業界への取り組み」についてお話しいただいた。みらい翻訳は、昨年10月に設立され、

MT技術により世界中の誰もが国境を越えて自由に交流する社会を実現するとともにMTによる産業の活性化、および新たな産業(イノベーション)の創生に貢献するビジョンを持っている。このビジョンを実現するために、カス

タマイズ可能な書き言葉の機械翻訳や、

SEMINAR

15

Event R

epo

rt 02

話し言葉機械翻訳、またWEBサイトの翻訳ツール、安全でスケーラブルなクラウドソリューションを提供していきたいと語った。これらのサービスを提供するためには、他企業やユーザーと連携することで翻訳の精度を向上していきたいとお話しいただいた。

以上の3名のショートプレゼンテーションが行われたのち、実際にMTを使用したサンプル文書の精度と品質を検証した。

照会事項と CIOMSを題材に、MTのサンプル文書とすべて人力で翻訳した文書を比較した。確かに人力翻訳した文書のほうが、わかりやすいし文面も美しい。しかし、驚いたことにMTにおいても専門的な内容を正確に翻訳されていた。つまりMTの特徴である、専門的な用語や文構造がシンプルなものであれば、うまく翻訳が可能であるということだ。生田氏からも、社内でのみ閲覧する文書は何を書いているのか理解できれば十分なので、このサンプル文書の品質で十分役に立つケースもあると語った。MTを導入する場合、構文だけでなく情報の構造をシンプルにすれば、十分な品質の翻訳文を生成することは可能である。よってクライアント側とMTサービスプロバイダ側が協力して構文・情報の構造を工夫できれば、MTでより一層効果をあげられるということだ。ただ、国に提出しなければならないような、原文が長くて解釈が難解な文書では工夫が難しく、スピードよりも品質が求められる文書の場合は、まだまだMT

では処理しきれない。また、MTした場合のポストエディットの質や人材確保も課題である。

MTは適さないと考えられていたメディカル分野の翻訳においても、使い方次第では十分活用できる可能性が見いだせたといえる。MTの課題に一つ一つ取り組むことで、今後ますますMTへの活用とメディカル翻訳への応用が進むのではないか。

ご多忙の中、貴重な時間を提供くださったパネリストの生田様、中岩様、栄

藤様、そしてモデレーターの森口様に心よりお礼申し上げます。

I k u t a A k i k o

P R O F I L E

E t o M i n o r u

P R O F I L E

栄 藤 稔

M o r i g u c h i K o z o

P R O F I L E

森 口 功 造

N a k a i w a H i r o m i

P R O F I L E

中 岩 浩 巳

生 田 明 子

3年毎にやることが変わる技術屋。学生時代は Z80で並列コンピュータ試作する計算機研究。パナソニックに就職と共にデジタル VCR試作。3年後 ATRに出向。役に立たない非単調推論、知識構造表現を研究。ATRから大学に行き、パターン認識研究を2年間。これで学位取得。パナソニックに戻りMPEG標準化のリーダー。2000年にドコモに転じ、モバイルマルチメディアを担当。そのとき Appleと組んで定めたファイル形式がMP4。自称 iPodの外祖父。2002年末にシリコンバレーに異動となり、モバイルインターネット。一方で、標準化活動でMPEGのエミー賞受賞に貢献。2005年に日本に戻り、分散音声認識を商用化。2007年にデータマイニングを立ち上げ、並列分散ペタバイトデータベースを構築。twitterなどストリーム処理を含めた自然言語処理応用をデータ量と並列計算システムで解決するアプローチを実践。これは「しゃべってコンシェル」で具現化。イノベーション統括部長と NTTドコモベンチャーズ社長を兼務し新規事業創出に情熱を燃やしている。twitter IDはmickbean。詳しい略歴はこちらを参照のこと。

品質管理担当として株式会社川村インターナショナルに入社後、チェック、翻訳、プロジェクトマネジメントなどの制作業務を経験し、2011年からは営業グループを含めた業務全般の統括として社内の管理に携わっている。JTFの ISO検討会では機械翻訳後のポストエディットの規格策定にも関わっている。TC37 SC5国内委員。

1987年名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程修了、2002年名古屋大学博士(工学)。1987年日本電信電話 (株 )(NTT)入社、英マンチェスター大学客員研究員 (1995年~1996年 )、国際電気通信基礎技術研究所 (ATR)研究室長(2002年~2004年)を経て、2014年 NTT退職。現在、名古屋大学大学院情報科学研究科特任教授。NTT入社以来、機械翻訳、文脈処理、意味辞書の研究開発に従事。 人工知能学会理事(2008年~2010年)、言語処理学会会長 (2012年~2014年 )、アジア太平洋機械翻訳協会 (AAMT)会長(2012

年~現在)、国際機械翻訳協会 (IAMT)次期会長(2013年~現在)。 主な受賞は、日本電信電話 (株 )社長表彰(1998年)、電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)(2002

年及び2006年)など。

神戸大学教育学部卒業。武田薬品工業株式会社で最もグローバル化が進んでいる部署の一つであるワクチンビジネス部にて、この春まで日英・英日翻訳及びコーディネーター業務を担当。現在は同部門でグローバルビジネスオペレーションズのメンバーとして、グローバル共通に適用する部門規則の策定に取り組んでいる。 神戸ソフィアで通訳翻訳技術を学び、幼少期からの海外生活経験や客室乗務員として培った異文化コミュニケーション力を生かし、英語企業研修や大学でのキャリアアップセミナー講師等の仕事にも携わる。

翻訳会社の声Found in Translation Company

16

株式会社ウィズウィグ メディカルドキュメント事業本部 翻訳部 部長

川 原 早 霧

部)のコーディネータに求められることは、ひとつひとつの案件で異なるニーズを間違いなく把握し、社内の各工程に関わる担当者のスケジュールを調整し、クライアントのニーズと翻訳者さんをしっかりと繋いでいくことです。コーディネータ業務の知識とし

て必要である基本的な事項や、受注してから納品するまでのフローは文書として用意されていますし、翻訳を確認する際にどういう点を気を付けなければならないのか、ということはチェックリストとしてまとめてありますので、それで業務の大体のことはカバーできます。しかし、コーディネータの養成にあたっていちばん大変なことは、文書のなかには含まれない余白部分を教えていくことであり、また、決して急ではないけれども、日々変わっていくクライアントからのニーズに対して微調整を図っていくことなのではないかと思います。私たち翻訳部では2

週間に一度を目安としてコーディネータ会議を行います。そこでは

弊社は昨年、創立20周年を迎えました。いろいろなご縁が重なって医・薬学の翻訳を取り扱う翻訳会社となり、この節目を無事に迎えることができたことは弊社にとって大変意義深いものでした。昨年は私が在籍する翻訳部でも、例年になく人の動きが多く、社内の異動はもちろんのこと、産休に入る者、産休から戻ってくる者など、慌ただしい年となりました。どこの翻訳会社もそうなのかも

しれませんが、コーディネータを養成することは大変な時間と労力を要します。たとえば、市販後の安全性業務を行う部署のコーディネータは毎日膨大な案件数を取り扱います。受注から納品までを数時間以内に行うという、極めて厳しい制限時間の中で対応しなければならず、ひとつの手配の遅れが全体の流れを滞らせることもあります。そのため、コーディネータには処理能力、機転、集中力が不可欠となります。一方、承認申請関連文書の翻訳を行う部署(翻訳

クライアントからのクレームや翻訳者さんからの希望などを話し合います。また、これも非常に重要なことなのですが、コーディネータ会議は決して情報共有の場で終わらせてはならず、翻訳部の全員が業務に対して、同じ方向性を持っているかどうかを確認し、時にはその方向性を少しずつ調整していく場であるともいえます。

コーディネータの調整力

翻訳が発生するのかどうかも分からないにも関わらず、なぜか納期だけは確定していて、しかもその納期が短い案件というものがあります(しかも割と頻繁に)。翻訳会社としては、案件が発生した場合のために翻訳者さんを確保しておかなければならないし、実際に案件が発生してくれれば何の問題もありません。しかし、実際にはスケジュール通りには動かないこともありますし、最悪の場合には翻訳そのものがキャンセルになることもあります。そのときに、翻訳者さんにキャンセルになった案件の代わりとなる案件を可能な限り用意しておく、という翻訳者さんへの配慮は必要ではないかと私は思います。もちろん、場合によっては代わりとなる案件がない場合もあるのですが、そうであってもコーディネータにはその配慮と他のコーディネータとの調整能力は必要です。そしてコーディネータが育つ最

大の要因は、やはりクライアントと翻訳者さんからのメールではないかと思います。コーディネータ自身は何を翻訳者さんにお願いしたいのかということを分かっているので、説明が不足してしまったり、逆に説明が多すぎて翻訳者さんを混乱させてしまったりすることがあります。そのときに、翻訳者さんから「これはこういう意味でしょうか」というメールをもらうと、自分の説明の何が分かりづ

創立21周年目を迎えるにあたって

翻訳会社の声Found in Translation Company

17

ペンシルバニア州立ミラーズビル大学心理学部卒。前職において通訳会社に通訳の手配を依頼した際に、はじめてコーディネータという職種に触れ、興味を持つ。その後、株式会社ウィズウィグに入社。現在は同社において翻訳コーディネータとして勤務。http://www.wysiwyg.co.jp/

K a w a h a r a S a g i r i川 原 早 霧

らいのかという客観的な視点でもみることができるようになります。翻訳を依頼したい箇所や参考資料が複雑になればなるほど、コーディネータの説明も熱を帯びてくるため、翻訳者さんとしては「もっとシンプルに説明してほしい」と感じることもあると思います。そのようなときは一度「こういうことですよね?」と確認していただければ、次回以降のご依頼の際の内容に反映されるのではないかと思います。

翻訳者さんへ

年末年始になると、翻訳者さんへの応募が増える気がします。新しい年を迎えて「翻訳者になろう」と思われる方も多いのでしょうか。新しく翻訳者としての道を踏み出した方のなかには、いきなり即戦力になる方もいますが、多くの場合はそうではありません。すでに翻訳者さんとして活躍されている方の壁はやはり高く厚いものがあります。よく、「翻訳者として独立できそうであれば、今の仕事を辞めたい」という方からメールをいただくのですが、独立できるだけの仕事量があるかどうかを知るひとつの方法として、今のお仕事を続けながらある一定期間、フリーランスの翻訳者さんと同程度の仕事量を受けてみるという方法があると思います。そうは言っても、それを実行するのは本当に大変なことですが、たとえば1日に3500文字分の翻訳量というのが平均的な分量であれば、それと同じだけの翻訳を毎日受けてみる。そうやって、先ずは現在活躍されている翻訳者さんたちと同じラインに立ってみなくては、独立できるかどうかの判断はできないように思うのです。弊社で翻訳をお願いしている A

さんは、会社に勤務されながらフリーランスの翻訳者として独立できるのかどうかを、1年ほど模

索していました。仕事から帰った後すぐに翻訳を行う、それもふつうのフリーランスの翻訳者さんと同じだけの分量を処理することをご自身に課していたようでしたので、必然的に、翻訳が終わるのは毎日夜中過ぎになっていました。しかしながら、それだけの翻訳量をこなすことができたため、お仕事をお願いできる機会も順調に増え、Aさんはフリーランスの翻訳者さんとして独立されました。今では長いお付き合いとなった Aさんですが、その頃の Aさんの意気込みと努力は、私どもの胸を打つものがありましたし、何よりそのお仕事ぶりは「こうやって仕事を取っていくことも必要」ということを私たちに教えてくれました。

翻訳者さんへ ~翻訳業を中断されるとき~

医・薬学分野の翻訳において、クライアントから求められるものが以前とは変わってきたということは、よく言われることです。ただ、実際の現場にいると、その変化は毎日の業務のなかでそうとは気づかないうちに起こっており、突然何かが変わるわけではありません。「1年前とは求められるスピードが変わった」と思うことはあっても、どの時点で変わったのかということを示すことはできません。ご自身や周囲のいろいろな事情でお仕事を続けることができなくなったとき、翻訳者としていつか復帰することが選択肢としてあるのであれば、コーディネータと業務について相談されてみるのもいいかもしれません。復帰したときに翻訳を取り巻く環境が大きく変化している場合、翻訳以外の部分で戸惑うこともあると想像されますので、事情が許すようでしたら細かい案件でもいいのでお仕事を継続されていた方が、よりスムーズな復帰に繋がるように思います。

最後に

年明けの業務初日には「今年も無事に仕事が終えられるように」といきなり年末を思って不安になるのですが、今年もすでに1ヵ月が過ぎました。20周年という節目の年を終えた今年は、弊社にとっても大事な1年になることと思っております。この1年を新たなスタートとして漕ぎ出すにあたり、弊社スタッフ一丸となって自社の発展のみならず、クライアントの皆様、翻訳者の皆様のニーズに叶った成果を上げられるよう、努力して参ります。

18

P R O F I L E

M I S S I O N S T A T E M E N T

Column 01OwnerC

olu

mn

01

「意外と知られていないフリーランス翻訳者の素顔をさぐる」ために始まったこのシリーズも今回で丸3年。まだしばらくは続きそうですが、フリーランス翻訳者の実態も「けっこう知られるようになってきた」ので、次回からもフリーランス翻訳者に焦点を当てることは変わりませんが、すこし視点を変えた内容にすべく計画しているところです。もともと、最終回は自分が書こうと決めていたのですが(2013年11月の名古屋レポートは除く)、方向性を変えようかという節目なので、今回はコラムオーナー自らが図々しく筆をとりました。

高 橋 聡T a k a h a s h i A k i r a

CG以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活を約10 年、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生活を約8 年経たのち、2007 年にフリーランスに。現在は IT・テクニカル文書全般の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種 SNS の翻訳者コミュニティに出没。

■ブログ「禿頭帽子屋の独語妄言」 http://baldhatter.txt-nifty.com/misc/

「新米の上り坂、中堅の曲がり角」拾遺

翻訳者

高 橋 聡

このタイトルは、ご存じの方も多いと思いますが、昨年11月の翻訳祭で Facebook勉強会「十人十色」のメンバーが登壇したときのセッション名です(簡単なレポートが、JTFジャーナルの前号に掲載されています)。

「十人十色」のメンバーである庄野彰さん、井口富美子さん、松浦悦子さんをパネリストに迎え、私自身はモデレーターを務めました。セッション公募に「十人十色」として応募したのですが、企画当初は「井口耕二にはなれないけれど」という、かなり受けを狙ったつもりのタイトルを付けていました。ご本人にもご承諾いただいて、なかなか良いタイトルだと自負していたのですが、さすがに待ったがかかって、それで付けたのがこの「新米の上り坂、中堅の曲がり角」という無難なタイトル。

第二案ではあったものの、これも実はなかなかいいタイトルだったかもしれないと、翻訳祭の前日に思い当たりました。

新米(駆け出し)のうちというのは、いろんな意味で上り坂です。自分の翻訳力あるいは収入が目に見えて上がっていく時期である反面、一歩一歩しっかり歩き続けないと足が止まってしまう、へたをすればすべり落ちてしまう時期でもあります。それでも、上っていくのは辛いけれど上りきれば達成感がある。なにより、上る方向は分かっているし、顔を上げれば坂の先には目標が見えているはずです(勾配がきつすぎて顔を上げる余裕すらないとしたら、それは最初から上る坂を間違えていたのかもしれません)。

一定の高さまで坂を上りきって、ようやく一息つけるようになったら、そこは中堅が立つプラトー。すこしくらい歩みを止めても、転がり落ちる心配は少なくなります。ところが、ここからは上り坂にあったような分かりやすい方向性も目標もなくなってしまいます。何も道標がないだだっ広い野っ原かもしれないし、見通しのきかない迷路のようなところかもしれない。曲がり角の先になにが待っているのかも、まったく予測できません(業界についての土地鑑のようなものが身についている可能性はありますが)。

そんなことを考えながら、このコーナーにこれまでご執筆いただいた方のことをあらためて振り返ってみて、気づいたことがあります。それは、上り坂でも曲がり角でも、みなさん闇雲に歩き回っているのではなく、ちゃんと道標を見つけたり(ときには自分で立てたり)、曲がり角の向こうを見すえるためにしっかり対策を立てているということです。

第1回の鈴木立哉さんは、「筋トレ」と称して、原書と訳本の音読や書き写しを毎朝1時間くらいずつ続けています。産業翻訳と出版翻訳を両立しているその見事なフリーランス生活の基盤はそこに

19

Co

lum

n 01

くさんいらっしゃいます。関西の翻訳者仲間は、概して元気で、迷っているくらいならとにかく突き進むとでも言うようなパワーがあるようです。年に一度はあちらに行って、そんなパワーをもらってきたいと思っています。

名古屋レポートの特別編をはさんでお願いした第11回のセランド修子さんは、翻訳だけでなく通訳でも活躍。日々その言語感覚を磨いています。詩人であり翻訳者でもあるご主人(エリック・セランドさん)にも、いつかこのコーナーに登場していただきたい。

第12回からは、JTFほんやく検定の合格者が続きます。第12

回は、翻訳祭のプラザでもおなじみになった中村泰洋さん。この方が同じ位置にじっとしていないことは、翻訳の指導を続けていたり、会社として翻訳者向け PCを開発したりという活動の広さからもうかがえます。名刺の作り方に端的に表れている、彼の営業力にも注目です。第13回は、「半農半翻」の大久保雄介さん。私は、こういうのも新しい翻訳者のあり方だと思っているのですが、もちろんそれだけではありません。ほんやく検定で英日に続いて日英でも1級を取得するという、その真摯な取り組み方はおおいに見習いたいところです。第15回の三浦朋子さんは、検定に2級で合格した段階で仕事を始めますが、その後1級も取得。努力家です。こうして検定に合格した方々を見ると、上り坂をのぼるときの目標設定のうまさを感じます(もうひとり、検定合格者でどうしても執筆をお願いしたかった人がいるのですが、彼も最近、自分で設けた目標を見事に突破したという近況を目にしています)。

こうして振り返ってみると、過

あるのだと思います。そもそも、このコーナーを思いついたきっかけが、この鈴木さんの「筋トレ」の話でした。第2回の大光明宜孝さんは、私などとは違って生活のリズムをきちんと保っていますし、作業環境の改善にも常に気をつかっています(現在のディスプレイ数はなんと4面)。第3回は今回のパネリストもお願いした庄野彰さん。生活リズムは崩れがちだそうですが、庄野さんは情報の収集と発信という点で翻訳者仲間のなかでも飛びぬけています。三人いずれも、中堅というよりむしろベテランに近い方たちですが、目標のない平野を漫然と歩いているわけではけっしてありませんでした。

第4回の仙野陽子さんは、映像翻訳者の仲間うちで、もう10年以上も勉強会を続けています。第5回のマーナー摩美子さんは、上り坂の途中で大きく方向転換したとも言えますが(詳しくはバックナンバーをお読みください)、最初の坂でつちかった経験が方向転換後にも大きく活きているようです。第6回の松丸さとみさんは最近、訳書ではなく著書まで手がけました(『世界は犬たちの愛で満ちている』泰文堂)。彼女たちはいずれも「中堅」かもしれませんが、勉強会という道標を自ら作ったり、曲がり角にひるむことなく一歩を踏み出したりしています。

第7回の渡部優一さんは、そもそも生活拠点を移すという思い切りのよさですし、新しい分野にも次々と挑戦を続けています。第8

回の国枝史朗さんは、上り坂とその長さを自分で設定しましたし、その後の勤勉さには曲がり角などものともしない勢いを感じます。第9回に登場した青山万里子さんは、マイペースと言いながら、次々と資格を取得して新しい世界に自ら飛びこんでいます。この3回は関西編でしたが、関西からはまだまだ登場していただきたい方がた

去3年間のこのコーナーの連載記事も、「新米の上り坂、中堅の曲がり角」で触れたあちこちに通じるものがあったように思います。そういう内容を続けてこられたのも、毎回、興味深い内容をご寄稿いただいたみなさんのおかげです。

これからも、いろいろなフリーランス翻訳者の方にとって、上り坂の道案内に、曲がり角のナビゲーターになるような、そんなコーナーを続けていきたいと思います。何か書いてみたい、という方がいらっしゃいましたら、ぜひ帽子屋に一声おかけください!

通称「帽子屋」。法人の屋号は(株)帽子屋翻訳事務所。オンラインネームは baldhatter。http://baldhatter.txt-nifty.com/misc/

高 橋 聡T a k a h a s h i A k i r a

20

Co

lum

n 02

M I S S I O N S T A T E M E N T

矢 能 千 秋Y a n o C h i a k i

P R O F I L E

Column 02Owner

しなやかな翻訳スタイルを目指して進化中

出版翻訳者

倉 田 真 木

翻訳との出会い

翻訳の仕事との最初の出会いは“お茶事”でした。茶道は大学時代、外国人に説明できる程度に日本の文化を学んでおかなくちゃと思って始めたのですが、その奥深さに引かれ、社会人になっても続けていました。ある日、青森の友人宅での“茶事”に招待されたのですが、その会には某大手出版社の敏腕女性エディターの姿が。後日、彼女の部下とおぼしき女性から連絡があり、「ある美術展に先立ち、美術論文の抄訳をしてもらえないか」と依頼されました。どうやら青森市内の「善知鳥神社」を私が“うとうじんじゃ”と正しく読めたことが女性エディターの印象に残っていたようなのです。でもじつを言うと、茶事の少し前に能楽のパンフレットに並んでいた「善知鳥」という演目をたまたま目にしていたんですけどね。

仕事としての翻訳への目覚め

その幸運な巡り合わせを機に翻訳の世界へと歩みを進めて……い

ければよかったのですが、なにせ当時は翻訳を仕事にしようという考えがありませんでした。おまけに、相手になめられてはいけない、となぜか思った私はすでに翻訳の仕事をしている知人に連絡してアドバイスを求めました。知人は「個人ベースで請け負う

ときは、報酬額をきちんと取り決めておくように」と助言してくれました。それに従って「どれくらい頂けるのですか?」と問い合わせたところ、しばらくして「今回はご縁がなかったようで……」との返答。最初の翻訳仕事になるはずだったその話は流れてしまいました。今なら想像がつくのですが、出

版業界ではこういった場合、事前に報酬額を取り決めたくても決められないことがままあります。画集や解説本など一連の出版物の刷り部数や単価が確定しないと、関連経費を捻出しにくいという事情があるからです。でもこのときは、先方にしたら「せっかくトライアルのつもりで声をかけてあげたのに。仕事をほしがっている翻訳者は他にいくらでもいるのよ」と言いたかったにちがいありません。今だったら迷わず「喜んでやらせて頂きます」と答えるところですが、当時は先方の配慮にこちらの思いが至りませんでした。ちなみに、アドバイスをくれた知人は実務翻訳者。当然のことながら、実務翻訳の現場での助言をくれたのでした。大学卒業後は政府系シンクタン

クに勤め、研究助手として国際会議のオーガナイズをしたり専門家の政策提言書をまとめたりしていました。ですが、キャリアアップするには修士号や博士号が必要でした。とはいえ、いまさら大学に戻るのも……と悩んでいるうちに、「子どもの頃から大好きだった本を翻訳したい」という気持ちが募ってきました。抄訳の話から月日は経っていましたが、あらためて「翻訳」と向き合うことにしたのです。が、前回のように仕事

University of Redlands卒。サイマル・アカデミー翻訳者養成コース本科 (日英 )修了。NPOえむ・えむ国際交流協会 (代表 :村松 増美 )事務局を経て、現在フリーランス15年目、JAT会員11年目。JAT

ではアンソロジー委員会、ウェブサイト・コンテンツ委員会に所属。英語ネイティブ校正者とペアを組み、スピーチ、ウェブコンテンツ、印刷物、鉄道、環境分野における日英・英日翻訳に従事。2012年よりサン・フレアアカデミーにてオープンスクール講師。

■ Twitter: @ChiakiYano

■ブログ : http://chiakiyano.blog.so-net.ne.jp/

■ http://jat.org/translators/4596

フリーランス翻訳者になり15年目に入りました。最初の10年はがむしゃらに走ってきました。10年後、20年後の翻訳者としてのキャリアを模索し、いろいろな方のお話を伺ってきました。向こう10年、20年、30年の翻訳者としてのキャリアプラン、ライフプランを立てる上で、業界で活躍されている翻訳者の方々のお仕事ぶりを拝見したい、と思い、このコラムでは、2000字、翻訳、というお題に対して映し出される「人間翻訳者」の方々の「仕事部屋」を拝見したいと思います。皆さん方の「機械翻訳」に負けない「人間翻訳者」としてのキャリアの一助となれば幸いです。

21

Co

lum

n 02

K u r a t a M a k i倉 田 真 木

チュアル、恋愛小説、ビジネス寓話、ビジュアル事典、国際関係、恋愛心理、子育て、等々。一見ばらばらに思えるかもしれませんが、いずれも私の好きな分野です。数年前から、これまでに頂いた“ご恩”を“恩送り”したいという思いに背中を押され、翻訳学校で講座を持たせていただいています。その他、月1回開催の自主勉強会では、ノンフィクション・フィクション作品の翻訳の研究のみならず、ときおり仕事のシェアもしております。最後になりましたが、JTFさんとご縁がつながりこの場をいただけたことに、心から感謝します。ありがとうございました。

最近の訳書・翻訳協力書:

『メディカルハーブ事典』  http://goo.gl/Db3OdK

『リー・クアンユー、世界を語る』  http://goo.gl/kc6wms

『ビジュアル 教養大事典』  http://goo.gl/T9JCWF

『恋に落ちる方法』  http://goo.gl/IVvvq0

まで降ってくるわけではないので、ネットや雑誌で情報を探し、まずはフェローアカデミーの通信基礎講座を、続いて週一回、平日夜の通学講座を受講しました。

充実した翻訳学校通学時代

通学講座の受講生は仕事をしながら翻訳者を目指す人ばかりで、授業は毎回白熱していました。やがて、受講生の自主勉強会に参加するようになります。カフェに集まり、トライアルなどを課題にしてお互いの訳文を検討しあいました。自分の訳文を指摘してもらうことで、気づいていなかった癖が発見できました。また、メンバーそれぞれに得意な分野があるので、「IT情報については○○のサイトが信頼できるよ」とか「こういうときに使う重機は○○って言うのよ」、「男女のこういう絡みには○○という表現を使うのが一般的よ」といった情報交換ができました。今振り返ってみても、知的刺激にあふれた通学時代だったと思います。ノンフィクション講座修了後

は、日本語の表現力によりいっそう磨きをかけたくて、亀井よし子先生の特別ゼミで学習を続けることに。そして、先生のはからいでチャールズ&スージー・ハーヴェイ著『月と太陽でわかる性格事典』(ソニーマガジンズ、新版ウイーヴ)を鏡リュウジ氏の下訳としてゼミ生4人で分担するチャンスをいただきました。その結果、同じ出版社から『男は火星人 女は金星人』(ソニーマガジンズ)で共訳者として翻訳者デビューすることができたのです。

念願の翻訳者生活へ

やがて、年に2~3点ペースで出版翻訳のお仕事をいただけるようになります。ジャンルは、映画のノベライズ、ディズニーアニメの小説、評伝、自己啓発、スピリ

出版翻訳者。幼い頃から歩きながら読むほどの本好き。夢中になった作家はアガサ・クリスティーやアストリッド・リンドグレーンやトーベ・ヤンソン。人生初映画は『長靴下のピッピ』。ピッピに憧れ、小中学生時代、押し入れ上段にふとんを敷いて寝起きし、ささやかながら“気分”に浸っていた。東京育ち。上智大学外国語学部卒業。現在、翻訳学校フェローアカデミー講師、自由が丘翻訳勉強会主宰(問い合わせは[email protected]へ)、神楽坂「洋書の森」ボランティア。趣味はチェロとヨガ。

倉田真木 翻訳作品一覧(Amazonより):http://astore.amazon.co.jp/tamausagiemu-22

Facebook:https://www.facebook.com/maki.kurata.372

22

Co

lum

n 03

M I S S I O N S T A T E M E N T

「翻訳横丁の表通り」には色々な人々が往来するようになりました。このコーナーでは、翻訳者さん達に

「翻訳横丁の表通り」に出店して頂き、自身が持つ翻訳への「こだわり」を記事にして頂きます。「想い」であったり「ツール」であったり、「翻訳方法」であったり「将来の夢」であったり、何が飛び出るかは執筆者の翻訳への「こだわり」次第。ちょっと立ち寄って、覗いていきませんか?

今年度最後の記事は、昨年と同様、私自身で書くことにしました。昨年12月18日に行った JTF

セミナーの報告記事が今号に掲載されていますが、誌面の関係からWildLightに関する説明を割愛しています。そこで、当コーナーにWildLight記事を掲載し、セミナー記事を補完する形にいたします。記事中に登場するファイルは、すべて WildLight Library (https://

app.box.com/wildlight) からダウンロードできます。

Easy to Notice ツールとしてのWildLight

個人翻訳者がひとり完結で品質保証を行う上で一番効果的なチェック方法として提案している「Easy to Notice」。拙作のワードマクロ「WildLight」の開発動機は、チェック項目の設定に高い汎用性を持った「Easy to Notice」ツールが欲しかったためです。

WildLightの機能を簡単に言えば、事前に準備したテキスト形式の定義ファイル (辞書ファイル )

から検索・置換条件を順に読み出すことによって、ワードの検索・置換処理をバッチ処理し、その結果に蛍光ペンを付けるという単純なもの。ただし、ワイルドカード

とWildLightの特殊コマンドを利用する事で、チェックのみならず文書加工や置換翻訳など、翻訳周辺業務の自動化、簡略化にも使用できます。

チェックツールとして使う

一番簡単な使い方は、チェックすべきポイントをハイライトすることで、意識を集中する箇所を分かり易くするというアプローチです。例えば、自分の癖からくる間違い易い単語や、過去の案件で問題となった要注意用語/表現をずらずらと羅列した辞書ファイルを準備し、WildLightで処理する事で翻訳文書中の注意すべき箇所に蛍光ペンを付け、そこを重点的にチェックします。

チェック辞書を作成する上での考え方

1. 間違いを検出する辞書を作る最初に目指すべきは「間違いを

検出する」チェック辞書です。つまり、間違い箇所へ色付けがされ、判断することなく明確に間違いを認識できる方法です。例として、化学式に見られる下付処理の忘れを検出する辞書 (WLDIC_ECHK_

化学式チェック .txt)がこの方法に当たります。この辞書では、下付処理を忘れた「CO2」といった化学式に蛍光ペンが付きます。

2. 間違いを検出し易くする辞書を作るワイルドカードやWildLight特殊コマンドを駆使しても「間違いを検出する辞書」を実現できない場合は、Easy to Notice のアプローチを取ります。つまり「間違いを検出し易い」辞書作成をします。Easy to Notice は、人間の意識をチェックポイントへ集める

WildLightというツール (JTFセミナー補足)

ワードアドインマクロ「WildLight」開発者

齊 藤 貴 昭

P R O F I L E

Column 03Owner

S a i t o T a k a a k i齊 藤 貴 昭

電子機器メーカーにて開発/製造から市場までの品質管理に長年従事。5 年間の米国赴任から帰国後、社内通訳・翻訳者を6 年間経験。2007 年から翻訳コーディネータ兼翻訳者として従事。「翻訳者 SNS

コーディネータ」として業界活動に精を出す。ポタリングが趣味。甘いもの好き。Twitter や Blog「翻訳横丁の裏路地」にて翻訳に関する情報発信をしています。

■ Twitter:terrysaito

■ Blog:http://terrysaito.com

23

Co

lum

n 03

齊 藤 貴 昭S a i t o T a k a a k i

ワードアドインマクロ「WildLight」開発者

WildLight Blog :

https://wordwildlight.wordpress.com/

東京ほんま会:https://tokyohomma.wordpress.com/

(焦点を合わせる)ことで集中力と検出力を上げ、それを持続させることを目的にしています。また、チェック方法として、視覚や文字認識のみに頼らず、人間の持つ五感と色々な認識力を複合的に組合せてチェックがされるように辞書を作ります。

ポイント:1)チェック項目を性質別に分ける。まず、自分が行っているチェックがどのような知覚と認識能力を使ってチェックされているかを解析します。例えば、「文章を読み、理解する」ことと「数字を認識して照合する」というふたつの事は、使う思考プロセスが違うので同時実施すると抜けが発生し易いのです。したがって、分けて別々にチェックするというアプローチを取る必要があります。このように、チェック項目別に性質的分類をし、それに基づいてチェック辞書を分けるようにします。

2) 一度にチェックするポイント数は多くし過ぎない。

Easy to Noticeは、チェックポイントを目立たせる事で意識集中し、検出力を上げようとしているので、一度にチェックするポイント数が多過ぎると意味をなさなくなります。どれくらいの数が適切であるかは個人差があるため、実際にチェック作業を行って自分なりの適正チェックポイント数を探しましょう。

3) 色を効果的に使う。複数の知覚と認識力を組み合わせるのが Easy to Notice の手法ですので、色付けの機能を有効に利用し、文字認識だけではなく、色認識や色パターン認識を併用する

チェック辞書を作成します。

上記のポイントを反映している辞書が「WLDIC_CHK_数チェック .txt」です。この辞書ファイルは、数と英略語の転記ミスをチェックするために作成されました。この辞書は、視覚による数字/文字の認識に加え、色認識と色のパターン認識を使って間違いの検出力をあげることを特徴としています。文字が認識できる蛍光ペン色数には限りがあるため、0~9までの数値を5色に分けて色付けするようにしています。(これは辞書の書き方で自分の好みに変えられます)例えば、2月と Februaryには

同じ色の蛍光ペンが付きます。それぞれの数字にはそれぞれの色が付くので、連続した文字列の場合、図のようなカラーパターンが形成されます。したがって、パターン認識でも判断することができます。この例ですと、電話番号の下4桁に転記ミスが発生していることが一目瞭然です。(図1)

その他、辞書作成のポイント

1) 100%を目指さない。自分特化にする。この手のツールを使う上での注

意事項は、100%を目指さないということです。妙な事を言うように聞こえるかもしれませんが、私は常にこの姿勢でツールと付き合っています。「100%できないから使えない」と考えるより、「30%は使える」と考えた方が、遥かに用途が広がり、結果的に自分の仕事の効率や精度を上げてくれるからです。

WildLight辞書も汎用性を考えると、あれこれとチェック項目を

盛り込んでしまいたくなります。しかし、それではあまり重要でないものにまで目を通してチェックすると言うムダが生じてしまいます。辞書は、自分の間違い癖に特化した専用辞書という位置付けで考え、自分のミスを確実にチェックできるものを作る事が大切です。

2) チェックフローに従って、辞書内容を決める。どのような順番で何をチェック

するか?は、翻訳者の考えによって、まちまちです。そのフローによって、各チェック時のチェックする項目と深さが変わってきます。つまり、WildLight辞書に盛り込む内容も、フローによって変える必要があるということです。

最後に

WildLightは以下の URLにあるWildLight Blog を参考にしてください。WildLight Blog :

https://wordwildlight.wordpress.com/

また、WildLightセミナーは、東京ほんま会 :

https://tokyohomma.wordpress.com/

にて不定期に開催されますので、興味のある方はご出席ください。

図1 数チェック辞書適用例

24

Co

lum

n 04

P R O F I L E

Column 04Owner

M I S S I O N S T A T E M E N T

遠 田 和 子E n d a K a z u k o

日英翻訳の傍ら翻訳学校での講師、またプレゼン研修の講師をしています。著書に、「英語なるほどライティング」、「Google英文ライティング」、「eリーディング英語学習法」、「あいさつ・あいづち・あいきょうで3倍話せる英会話」(講談社)があります。趣味は読書・映画・旅行です。また英語スピーチの練習、バレエのレッスンを続けています。それぞれ少しでも上手くなるため、地道に努力しています。

*Website:WordSmyth英語ラボ  http://www.wordsmyth.jp

* Facebook Page:WordSmyth

  http://www.facebook.com/wordsmythlab

* e-readingブログ:One Chapter Reading Club

  http://minamimuki.com/fun-and-free

WordSmyth Caféは、翻訳に関わるさまざまの人々が集う「誌上カフェ」です。当コーナーでは、毎号異なる執筆者にご登場願い、翻訳を含む言語に関わるさまざまなテーマを取り上げます。名前のWordSmyth (ワードスミス)は、wordsmith (言葉の職人)とmyth(神話=お話)を組み合わせた造語です。「言葉の職人として、さまざまな物語を紡ぎたい」という店主の願いを表しています。

「お前のストレスを   俺のせいにするな!」

リーダーとして提案したチーム改善案を一向に実行してくれないことを問い詰めたとき、マネージャーから冷たく投げかけられた一言が、サラリーマンを辞め、翻訳者を目指すきっかけとなりました。

当時私は35歳でした。外資系企業に勤めていたこともあり、普段から仕事で英文を書く機会が多く、また個人的に TOEICや工業英検などの資格を取得するなど日英翻訳にも興味をもっており、キャリアを変えるにはちょうど良い機会かと考えました。しかし、翻訳者を目指すと言っても、実際にはどうすれば翻訳者になれるのかまったく分からない状況でした。とりあえず、社内翻訳者に転職するのが手っ取り早いのかと何件か応募しましたが、見事にすべて書類選考で落とされました。英語力には自信はありましたが、や

はり翻訳者としての経験がゼロだったので当然と言えば当然の結果。そこでインターネットや雑誌で調べ、スクールに通い、資格試験(トライアル)に合格すればフリーランス翻訳者になれるという方法もあると知り、40歳になるまでの約4年間で「実力」そして「経験」を身に付けてプロの翻訳者になる、という長期的な目標を立て、私のフリーランス翻訳者への挑戦が始まりました。

勉強を開始したものの、やはり休日の勉強だけでは時間が足らず、平日の時間も充てることに。職場でのランチは自前の弁当を持参し座席で済ませ、休憩時間はカフェで勉強するという日々。さらには、与えられたテキストだけでは物足りず、色々な参考文献も徹底的に読み込みました。こうした地道な努力のおかげか、スクールの講座を修了し、また資格試験も回数はかかりましたが、無事合格することができました。そこまで約2年半でした。

ようやくプロ翻訳者としてのスタートラインに立ち、しばらくは副業という形で経験を積みたいと考えたのですが、トライアルに受かって翻訳者登録しても、仕事の依頼はいくら待っても来ません。ある程度の「実力」はついたのかもしれませんが、またしても「経験不足」が壁となったのでしょうか。しかし、仕事がもらえない限り経験は一生得られません。さすがにどうしたらよいのかわからなくなったのですが、悲しいことに相談する相手がいません。「スクールに通い」と言いましたが、シフト勤務という仕事の関係上、決まった時間に通学することはできず、通信講座での一人学習だったため、翻訳者や翻訳学習者の知り合いが一人もいなかったのです。これはもしかしたらフリーランスの仕事も同様で、一人で、頼る人もいない、そんな厳しい世界なのかと不安が募り始めました。

フリーランス翻訳者への道~翻訳経験ゼロのサラリーマンの挑戦~

翻訳者

加 藤 康 之

25

Co

lum

n 04

専修大学文学部英米文学科卒業後、趣味を活かすため楽器屋に就職。しかしブラックな面を知り挫折。米シアトルのコミュニティカレッジに留学し、卒業後は現地のローカライズ会社でテスターとして働く。帰国後、外資系 IT会社にてサポートエンジニアを12年経験したのち、2013年にフリーランス翻訳者として独立。ITマニュアルを中心に日英翻訳を手掛けている。洋画、洋楽、そしてイチローをこよなく愛する長野県生まれ、三重県育ち。

加 藤 康 之K a t o Y a s u y u k i

そういった中で巡り合ったのが、遠田先生のセミナーでした。セミナー後、先生に翻訳関係の知り合いがいなくて困っているという旨を伝えると、いろいろな情報が得られるはずだと、翻訳者のオフ会を紹介されました。当時は顔見知りがまったくいない状況でしたが、思い切って参加することにしました。オフ会はほとんどがプロの翻訳者で、私のような駆け出しの翻訳者は相手にされないかと思いきや、すべての人が親身になって、自身の体験を踏まえながら、私の悩み・質問に答えてくれました。仕事が来ない件に関しては、「その検定試験に合格したのなら、他のトライアルも受かるはず。日英翻訳者を探している会社はたくさんあるはずだから、もっとトライアルを受けてみたら?」とのアドバイスを受けました。また経験については「ボランティア翻訳」を勧められました。そこで、友人の義父が経営する会社に英訳する機会がないかを尋ね、小さい案件でしたが仕事を何度か頂き、翻訳経験として履歴書に記載するようにしました。その後、十数社のトライアルを受け、8割以上合格することができたのです。そして、仕事も徐々に頂けるようになりました。やはり業界で働いている経験者の言葉は私にとって心強く、不安を打ち消してくれるものでした。(ちなみに、先に書いた社内翻訳者職で落とされた会社も、フリー転身後は書類選考を通過し、トライアルも合格することができ、リベンジを果たしました!結局のところ、やはり「経験」なのでしょうか…)

それにしても不思議だったのは、オフ会では、翻訳者同士、本来なら仕事を奪い合うライバルであるはずなのに、そこにはそういう姿はなく、有益な情報を交換し助け合い業界を盛り上げようとする雰囲気が感じ取れたことでした。同じオフィスにいても、派閥があったり、互いに口を聞かな

かったり、また同じ部署なのに上司が部下を助けないという社内環境を見てきた私にとって、これは驚きでした。フリーランサーは、一企業の社員同士よりもある意味深くつながっている。そう、「フリーランス翻訳者は一人で闘うのではなく、協力して闘っている。これならやっていけるかも」と確信した瞬間でもありました。

そして、約1年の「2足のわらじ」期間を経て、当初の目標通り、40歳になる1か月半前にフリーランス翻訳者として独立することができました。フリーになった今も、SNSやオフ会で他の翻訳者の知恵を借り、何とか翻訳業界を生き延びています。本当に皆様には感謝をしています。また、こうやってフリーランサーとして活動している今、自分の新しい可能性を引き出す契機となった言葉を掛けてくれたマネージャーにも感謝しかありません。本人は何気なく放った言葉かもしれませんが、私の人生を大きく変えるほどの影響力がありました。少し意味は違いますが、翻訳という仕事も、文字や表現によって人の人生を左右する可能性があり、言葉は慎重に選ばなければいけないと教えてくれたような気がします。

最後になりますが、こうした私の無謀な挑戦に付き合ってくれた嫁にも感謝です。嫁の協力なしに今の自分はありません。まだまだこれから先には大きく激しい戦いが待っていますが、翻訳者の皆様と、そして嫁と共闘して頑張っていきたいと思います。

26

次号予告

募集 広告募集のおしらせ特集記事の掲載に合わせて関連する広告を募集しています。お気軽に JTF事務局までお問い合わせください。

Next Issue

翻訳メモリや用語集といった言語資産は顧客・翻訳会社・翻訳者の間で共有されることによって効果を発揮します。デスクトップ上で動作する従来の翻訳支援ツールでは同一プロジェクトの言語資産が顧客・翻訳会社・翻訳者のそれぞれの作業者の手元に分散されることになりがちですが、クラウド対応の翻訳プラットフォームではクラウド上に唯一の言語資産が存在し、関係者は各自の役割に対応するアクセス権限を通じてそれを利用する形になるため、管理が簡単で精度の向上も期待できます。また、クラウド型の翻訳支援ツール(CAT/TMS)は初期の CATツー

ルと比べて格段にシンプルかつ洗練されたユーザーインターフェイスを備えるようになってきており、はじめて翻訳支援ツールを使う初心者にとってわかりやすい作業環境になっています。ユーザーは複雑な設定に煩わされることなく、翻訳メモリ(TM)はもちろん APIを通じて各種の機械翻訳(MT)エンジンも利用できます。市場ではそもそも TMを使った従来型の CATツールすらすべての翻訳分野で受けられたとは到底いえない状況にありますが、クラウド対応の TMSツールのほうが、ユーザーからみてわかりやすい分だけスムーズに市場に受け入れられるのではないでしょうか。つまり、新しいユーザーは従来型の CATツールを経験することなく最初からクラウド型のTMSプラットフォームで翻訳フローを学び、その環境から TMやMT

を利用するのが当たり前、という時代になるでしょう。翻訳支援ツールにおいてもデスクトップからクラウドへのシフトは必

然と思われ、クラウド型の翻訳プラットフォームにいったん移行したら、そこから機械翻訳の下訳利用へは本当にプロジェクトマネージャがスイッチひとつ切り替えるだけで移行可能です。新しい翻訳環境は、すぐそこまで来ています。

河 野 弘 毅K a w a n o H i r o k i

編集長

一般社団法人 日本翻訳連盟 機関誌日本翻訳ジャーナル2015年 3月/4月号 #276

発 行 ● 2015年 3月 13日

発行人 ● 東 郁男(会長)

編集人 ● 河野 弘毅

発行所 ● 一般社団法人 日本翻訳連盟 〒104-0031東京都中央区京橋 3-9-2 宝国ビル 7F TEL. 03-6228-6607 FAX. 03-6228-6604 E-mail. [email protected] URL. http://www.jtf.jp/

企画・編集 ● ジャーナル編集委員会

校正協力 ● 菊地 清香、豊田 麻友美、松浦 悦子、矢能 千秋

表紙撮影 ● 世良 武史

デザイン ● 中村 ヒロユキ(Charlie's HOUSE)

印刷 ● 株式会社 プリントパック

May / June 2015 #277

モバイル機器やクラウド基盤の普及の上に機械翻訳が新しい花を咲かせつつある一方で、グローバル化の進展にともなう経済格差や環境破壊の問題には出口が見えず、

隣人への寛容さが失われた地域では戦争や紛争が続いています。次号では、キーマンへのインタビューを通じてこれからの世界のために翻訳が果たすべき役割に迫ります。

ご期待ください。

特集 「翻訳の未来を語ろう」

2015年5月8日発行予定※発行日や内容は変更になる可能性があります。

27

51年目のスタート。

翻訳・ローカリゼーション・ドキュメンテーションサービス

Communications for a global marketplace

<新住所> 〒141-0031 東京都品川区西五反田7丁目25番5号 オーク五反田ビル TEL 03-5759-4353(代表) FAX 03-5759-4375

本社移転のお知らせOur office has moved >>>営業開始日: 2014年4月21日(月)

51十印は、ますます激しくなる時代の変化に迅速に対応するため、

機械翻訳をはじめとした技術革新を目指します。2014年、更なる進化を求めて、

新オフィスで51年目をスタートしました。

4月13日(月)第1回

10:30~13:00スタイルガイド入門講師:高橋 聡(フリーランス翻訳者)スタイルガイド(翻訳仕様書)とは何か。使うことにどんなメリットがあるのか。お客さんから指定されたスタイルガイドはどんな点に注意して参照すればいいのか─スタイルガイドの基本をお伝えする講座です。

第2回14:30~16:30翻訳会社としての品質向上への取り組み  ~スタイルガイドの活用事例を中心に~講師: 伊藤良裕(テクニカルトランスレーター)

野崎由美子(プロジェクトマネージャー)[共に株式会社シーブレイン所属]

クライアントと翻訳者の橋渡し役という立場から見えてくる、翻訳品質の管理にまつわるヒントを実例を交えて説明。スタイルガイドを1つの切り口とし、クライアント・翻訳会社・翻訳者が三位一体となって翻訳品質を維持、向上させるためのご提案。翻訳品質向上に取り組むすべての方へ。

一般社団法人 日本翻訳連盟(JTF) 事務局 TEL:03-6228-6607 FAX:03-6228-6604  〒104-0031 東京都中央区京橋3-9-2 宝国ビル7F  E-mail: [email protected]  http://www.jtf.jpご記入いただいた個人情報は、本セミナーおよびその他翻訳情報の提供目的のみ使用し、第三者への提供・預託は行いません。なお、ご提供いただいた個人情報のお問い合わせ、または、開示・訂正・削除のご請求は上記事務局までご連絡をお願いいたします。

連続講座JTFスタイルガイドセミナー本セミナーは、日本語スタイルガイドと日本語の表記について学習したい方を対象とする連続講座です。翻訳用スタイルガイドの基本的な読み方から、品質管理に役立つ活用方法まで幅広く学べます。本格的な文章校正・リライトのテクニックやチェックツールを使って表記ゆらぎを検出する方法を学ぶ講座もあります。第一線で活躍中の専門家が、翻訳ワークフローの改善と効率化の手法とツールについて基本から手ほどきします。

4月24日(金)第3回

10:30~12:30プロが教える日本語文章の校正・リライトのテクニック講師:磯崎博史(校正者/リライター)文字中心のメディアに深くかかわる立場にある翻訳者たちには、文章をよりわかりやすいものに仕上げる力が強く求められています。文意をしっかり保ちながら自然でこなれた日本語に仕上げるブラッシュアップのポイントを身につけるための講座です。

第4回14:00~16:30第一部 JTF日本語スタイルチェッカーと正規表現の基礎講師:西野竜太郎(翻訳者/ソフトウェア開発者)ウェブブラウザー上で手軽に利用できるJTF日本語スタイルチェッカーの使い方と基礎的な正規表現について、実習を交えながら解説します。

第二部 スタイルガイドのカスタマイズ実習講座 ~ワイルドカードを徹底活用~講師:新田順也(ブログ「みんなのワードマクロ」管理人)Wordで動く翻訳チェックツール「色deチェック」を用いて、日本語表記のチェックを自動化するコツを紹介。Wordの正規表現(ワイルドカード)を初心者にもわかりやすく解説します。

2015年4月13日(月)、4月24日(金)          50名 明治薬科大学 剛堂会館 東京都千代田区紀尾井町3-27 TEL:03-3234-7362 【1講座あたり】 JTF会員 3,600円 JTF非会員 5,100円 [いずれも税込価格] 全4講座にお申し込みいただく場合は参加費を割り引きします。 【4講座セット料金】 JTF会員 12,600円 JTF非会員 17,900円 [いずれも税込価格]

日 程 定 員

会 場

参加費

連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座連続講座JTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナーJTFスタイルガイドセミナー

全4回

お申し込み方法「JTF標準スタイルガイド検討委員会」のウェブページからお申し込みください。1. JTFのトップページにアクセス http://www.jtf.jp/2. トップページの「JTFスタイルガイド」リンクをクリック

I N F O R M A T I O N #276 March / April 2015

一般社団法人

日本翻訳連盟

機関誌

日本翻訳ジャーナル

2015年

3月

13日発行

頒布価格 

540円(税込)