34

Click here to load reader

クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

  • Upload
    ngonhi

  • View
    396

  • Download
    18

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

0

日本クレーン協会規格

J C A S 1 1 0 1 - 2 018

平成元年 5 月制定

平成 30 年 XX 月改正

クレーン耐震設計指針(2018 年改正案)

Guideline for seismic design of cranes

目 次 序 文 ······································································································ 1 1 適用範囲 ································································································ 2 2 引用規格 ································································································ 2 3 用語及び定義 ·························································································· 2 4 耐震設計の概念 ······················································································· 3 4.1 修正震度法 ························································································ 3

4.2 応答スペクトル法 ·················································································· 4 4.3 時刻歴応答法 ························································································ 4

5 修正震度法による地震荷重の算定 ································································ 5 5.1 一般 ································································································· 5 5.2 設計水平震度 KHの計算 ·········································································· 5

5.2.1 一般 ······························································································· 5 5.2.2 基本水平震度 Abgの算定 ·································································· 6 5.2.3 地盤種別補正係数 β2の算定 ····························································· 6 5.2.4 加速度応答倍率 β3の算定 ································································ 7

5.2.4.1 一般 ······················································································· 7 5.2.4.2 基本加速度応答倍率 β3* ····························································· 7 5.2.4.3 減衰による補正係数 η ································································ 8 5.2.4.4 支持構造物による応答増幅率 δ ···················································· 9

5.3 設計鉛直震度 Kvの計算 ········································································ 11 5.4 耐震設計荷重の計算 ············································································ 11

5.4.1 地震加速度の計算 ············································································· 11 5.4.2 地震荷重の計算 ················································································ 12

6 応答スペクトル法による地震荷重の算定 ······················································· 12 6.1 一般 ································································································· 12 6.2 地震応答の総和(TRS)の計算方法 ·························································· 13

7 地震と地震以外の荷重との組合せ ································································ 14 7.1 一般 ································································································· 14 7.2 静的強度の照査:JIS B 8833-1 による荷重の組合せ ··································· 14

7.2.1 重み付き絶対値和法 ······································································· 14 7.2.2 リスク係数 γn ················································································ 15

7.3 静的強度の照査:SRSS 法による荷重の組合せ ········································ 16 7.4 全体安定度の照査 ·················································································· 16 7.5 性能照査 ······························································································ 17

8 時刻歴応答法に基づく地震荷重の算定 ·························································· 17 8.1 レベル1地震動による地震荷重の算定 ···················································· 17 8.2 レベル2地震動による地震荷重の算定 ······················································· 17

8.2.1 地震動の設定 ················································································ 17 8.2.2 安全性の検証 ················································································ 17

9 免震・制震クレーン ·················································································· 17 10 移設クレーンへの対応 ············································································· 18 附属書 A(情報)耐震設計フローチャート ······················································· 19 附属書 B(情報)設計加速度 ········································································· 20 附属書 C(情報)地盤種別補正係数 β2の算定 ··················································· 22 附属書 D(情報)応答スペクトル法 ································································ 24 附属書 E(情報)時刻歴応答法及び応答スペクトル法・修正震度法との比較 ·········· 27 附属書 F(情報)基本地震動と Mercalli and Richter scales との関係 ····················· 30 附属書 G(情報)鉛直震度影響係数 ································································ 31 附属書 H(情報)クレーンの固有周期の簡易計算 ·············································· 32

Page 2: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

1

序 文 この規格は,クレーンが地震を受けたときの地震荷重と荷重の組合せについて定めたもので

ある。

一般にクレーンはスレンダーな構造物であるので,地震時に構造部材の塑性変形による地震エネル

ギ吸収能力が建築構造物等に較べて少ないと考えられる。この点がクレーンの耐震設計を行う上で留

意すべき重要な点である。

地震による損傷を防ぐための経済的な手法として,使用限界状態(SLS, Serviceability Limit State)

と極限限界状態(ULS, Ultimate Limit State)の2つの設計限界状態の照査を考える。これらは稼動

中に遭遇する可能性のある中地震動と設置場所で発生しうる大地震動を受けたときの応答を限界値と

比較することにより行う。この規格では,地震エネルギ吸収能力が少ないクレーンの特徴を鑑みて,

使用限界状態に対する照査を行うための地震荷重算定を基本とし,極限限界状態に対してはオプショ

ンとする。また,使用限界状態に対する照査は,中地震動に対する修正震度法に基づくことを基本と

する。

Page 3: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

2

1 適用範囲 この規格は,JIS B 0146各部に規定されている全てのクレーン(移動式クレーンを除く。)

を適用範囲とする。

この規格はクレーンの構造部分と機械要素に対して,クレーンが地震を受けたときの荷重及び荷重

の組合せを規定する。性能照査に関しては,この規格に示す事項に従って,限界状態設計法 JIS B 8829

に依ること。

この規格は,クレーンが設置されている地域の地震に対する特性と地盤の状態及びクレーンとクレ

ーンの支持構造物を考慮して地震を受けたときのクレーンの動的応答を評価する。さらに,クレーン

の運転状態と地震によるクレーンの損傷に対するリスクも考慮する。

2 引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これ

らの規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。

JIS B 0146各部 クレーン-用語

JIS B 8822-1 クレーン-分類及び等級-第1部:一般

JIS B 8833各部 クレーン-荷重及び荷重の組合せに関する設計原則(限界状態設計法)

JIS B 8829 クレーン-鋼構造部分の性能照査(限界状態設計法)

3 用語及び定義

地震:地震波の発生源である断層運動

地震動:地震波が伝わってきたある地点での地表や地中の揺れ

使用限界状態(SLS, Serviceability Limit State):クレーン稼働寿命期間に据付場所で遭遇する可能

性のある中地震動(レベル1地震動)を受けたときにクレーンの機能を損なわず継続して使用する

ことに影響を及ぼさない限界状態

極限限界状態(ULS, Ultimate Limit State):クレーンが設置場所で発生しうる大地震動を受けたと

きにクレーンが塑性化しても,クレーン構造物の倒壊や構造的不安定,脱輪,つり荷やクレーン部

品が落下しない,運転者や作業員,公共物などの安全が保たれる限界状態

レベル1地震動:施設の供用期間中に発生する確率の高い中地震動,使用限界状態を検討する地震動

レベル2地震動:施設の供用期間中に発生する確率は低いが,大きな強度を有する大地震動,極限限

界状態を検討する地震動

震度:地震動の揺れの大きさを重力加速度に対する比として表したもの

刺激係数:多自由度系とみなした各振動モードがクレーン全体の応答にどれだけ寄与しているかを表

す係数。刺激係数の大きさによって地震時にどの振動モードが支配的となるかがわかる。

Page 4: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

3

この規格で用いる主な記号を表1に示す。

表1 主な記号

記号 説明

HK 設計水平震度

VK 設計鉛直震度

bgA 基本水平震度

sgA 地表面の基本震度

conf 変換係数

2β 地盤種別補正係数

3β 加速度応答倍率

*3β クレーンの減衰定数(減衰比)0.025 の場合の基本加速度応答倍率

nγ リスク係数

η 減衰による補正係数,減衰定数の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数

δ 支持構造物による応答増幅率

ζ 減衰定数(減衰比)

c 鉛直震度影響係数

HF 水平地震設計荷重

VF 鉛直地震設計荷重

RVRH,FF つり荷の地震荷重(水平及び鉛直)

4 耐震設計の概念

耐震設計に用いる応答解析は修正震度法,応答スペクトル法,時刻歴応答法の3つの主な方法があ

る。

4.1 修正震度法

修正震度法は,クレーン構造物を1自由度系とみなして,その振動特性から得られる震度とクレー

Page 5: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

4

ン質量の積として計算される地震荷重をクレーンの構造物に作用する静的な荷重として用いる。震度

はクレーン設置場所とその地盤特性,クレーンの動的特性すなわち3方向(鉛直と水平2方向)の固

有周期又は固有振動数及び減衰などにより評価される。

この規格では,クレーンの構造特性や設置される地域及び地盤性状などを勘案したレベル 1 地震動

に対して,修正震度法に基づく弾性域内での応力設計(限界状態設計)を行うことを耐震設計の基本

とする。この方法は比較的簡便(箇条 5 参照)で,その手順は附属書 A のフローチャートに示すよう

に設計過程の一部となる。

修正震度法に基づく応力設計を行った場合,クレーン構造部材が弾性的な応答を示す場合であって

も,機種や構造によっては1次振動モード以外の応答が無視できないことや免震・制振装置を設置し

たときなどにおいて適切な検定ができないことがある。このようなケースにおいては,有限要素法

(FEM)などを用いて詳細な解析モデルを構築し,応答スペクトル法,または適切な地震波を用いた時

刻歴応答法による解析を行い,応力・変位等を算定し,その結果を設計限界応力等の許容値と比較す

ることにより,耐震性を照査するような設計方法を選択できるようにした。これを,動的応答解析に

基づく応力設計と呼ぶ。

クレーン設置場所の地盤特性を考慮して作成されたレベル1地震波が得られて,時刻歴応答法

などで安全性と機能が評価できる環境が整っていれば,機能を損なわない範囲で構造物が局所的

に降伏応力を越え塑性域に入ることも考慮してもよい。この場合,局所的に若干の塑性化が発生

しても,クレーンの基本的機能と安全性が維持されることなどの適用する要求性能は使用者と設

計者が協議して定める。

4.2 応答スペクトル法

応答スペクトル法(箇条 6 参照)は,クレーン構造を多自由度系とみなして,地震応答に影響する

複数の振動モードの振動特性からクレーンの地震応答を算定する方法であり,次のときに使われる。

-修正震度法によるものより詳細なクレーンの地震応答を必要とするとき

-コンピュータを使用した解析が経済的に許容されるとき

線形システムに適用でき,応答特性に非線形性があってもそれが省略可能である非線形システムなら

ば適用できる。応答スペクトル法はクレーンの固有周期又は固有振動数と各振動モードの形状を計算

することから始める。地震応答はクレーン構造物の選択した振動モードから最大応答加速度(クレー

ン設置場所の地盤特性とクレーン構造物の減衰特性を考慮した応答スペクトルから選択される),モー

ド形状,振動数/周期及びクレーンの質量分布を用いて計算する。

4.3 時刻歴応答法

時刻歴応答法(箇条 8 参照)は,クレーン構造物を有限要素法(FEM)などによりモデル化した上

で,地表面に時間とともに変化する地震動を与え,クレーンの地震応答を求める方法であり,次のと

きに使われる。

-クレーンの詳細な地震応答を求める必要がある場合(附属書 E参照)

-非線形性(塑性変形,応力による材料特性又は隙間,摩擦,車輪のレールからの浮上り及びワイ

ヤロープの緩みなどの非線形動特性など)があって,これを考慮する必要がある場合

Page 6: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

5

-コンピュータ使用による高い費用が許容される場合

時刻歴応答法では,クレーン設置場所において代表とされる地震動を入力することによってクレーン

構造物とクレーン支持構造物の運動方程式を数値的に解くことによって得られ,時刻ステップ毎の集

積による地震応答を評価する。

5 修正震度法による地震荷重の算定

5.1 一般

地震時に励起されるクレーンの振動モードの内,最も重要な1次振動モードに着目して震度を求め,

それに対応した慣性力をクレーン自重等の荷重と組合せることによって,部材に生じる応力や変位等

を算定し,設計限界応力等の許容値と比較検討することにより耐震性を検証する。その手順を附属書

Aに示す。

ただし,修正震度法に基づく応力設計を行わない場合は,合理的な根拠がある場合に限って,例え

ば適切な入力地震波を用いて動的応答解析を行うなどの修正震度法に基づく応力設計以外の方法を選

択することができるものとする。

しかしながら,修正震度法に基づく応力設計以外の方法を選択した場合にあっても,必ず修正震度

法に基づく応力設計を行い,その結果とこのような方法で得られた結果を比較しながら,両者の間に

差異が生じた要因を分析して,このような方法で得られた結果の妥当性を評価しなければならない。

クレーンに働く地震荷重又は加速度は水平と鉛直の設計震度 KH と KV を用いて計算する。クレーン

のリスクに応じて,箇条 7に記載されている 1以上のリスク係数γnを適用する。

5.2 設計水平震度 KHの計算

5.2.1 一般

設計水平震度 KHは(1)式から求める。

con3sgcon32bgH fAfAK ××=×××= βββ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (1)

ここで,

bgA …基本水平震度(5.2.2参照)

sgA …地表面の基本震度

2β …地盤種別補正係数(5.2.3参照)

3β …加速度応答倍率(5.2.4参照)

fcon は変換係数である。再現期間 475年相当(5.2.2参照)の地震動を,クレーンが耐えられる使用

限界状態(SLS)としての再現期間 72年相当の中地震動に変換すること,及びリスク係数を考慮す

ることで fcon =0.16としている。

基本震度 Abgと Asgの方向は,他の地震学的な考慮がない場合は,任意と考える。すなわち,クレー

ン構造物への影響が最大の方向の地震を適用する。

地震荷重の作用する方向がレールと平行(以下「レール方向」という。)で,クレーンが基礎地盤

等に拘束されていない場合は,以下とする。

Page 7: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

6

HK =0.3×総車輪数

制動車輪数 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (2)

なお,比較的背が高く,かつ両脚の制動車輪数が等しくないクレーンにあってはモーメントを考慮

してHK を決定する。

ただし,設計水平震度HK の最小値は 0.10とする。

5.2.2 基本水平震度 Abgの算定

基本水平震度 Abgは 附属書 Bにより与えられる。

gaA gbg = ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (3)

ここで

ag 最大水平基本加速度[m/s2]

g 重力加速度[m/s2]

5.2.3 地盤種別補正係数β2の算定

地盤種別補正係数β2 は地震動が基盤から表層地盤を伝わって地表面に達する間の増幅と周期の

影響を表す。図 1 に影響の原理を示す。

記号

1 地表面の震度(記録された震度),この規格では Asgに代表される

2 岩盤

3 軟質から中間堅さの表層地盤

4 堅い表層地盤

5 基本水平震度 Abg(基盤の震度)

図 1 地盤種別補正係数β2の図解

4

Page 8: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

7

表 2 の地盤種別は,深さ 30m までの地盤の平均せん断波速度 Vs,30によって分類される。クレーン

設置場所の地盤種別により,この表からβ2の値を選択する。(附属書 C 参照)

表 2 β2の決定と値

種別 地盤の種類 せん断波速度

Vs,30 [m/s] 2β

地盤種別 0 第三紀以前の岩盤 Vs,30 > 800 1.0

地盤種別 1 岩盤が砂,砂利,堅い粘度により覆われた堅

い砂地の土壌により構成される堅い地盤,

360 < Vs,30 ≤ 800 1.4

地盤種別 2 地盤種別1と3の中間 180 < Vs,30 ≤ 360 1.6

地盤種別 3 沖積層又はその深さが 30m 以上の中間から柔

らかな土壌により構成される中間から柔ら

かな地盤

Vs,30 ≤ 180 2.0

5.2.4 加速度応答倍率 β3 の算定

5.2.4.1 一般

加速度応答倍率 β3は以下によって決まる。

- 適用するクレーン設置地盤の動特性

- 地震に励起される振動モードのうちクレーンの方向を考慮して最も重要な固有周期又は固有振

動数

- 振動モードの減衰定数(減衰比)

- クレーン設置場所の地盤分類

クレーンの最も地震の影響を受ける震動モードの固有周期又は固有振動数として,計測かコンピ

ュータを使用した計算で得られる1次の振動モードに着目する。

β3は(4)式から求める。

δηββ ××= ∗33 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (4)

ここで

β3* 基本加速度応答倍率(5.2.4.2参照)

η 減衰による補正係数(5.2.4.3参照)

δ 支持構造物による応答増幅率(5.2.4.4参照)

5.2.4.2 基本加速度応答倍率 β3*

β3*は減衰定数(減衰比)を 0.025としたクレーン構造物の加速度応答倍率である。

クレーンの固有周期又は固有振動数とクレーン設置場所の地盤種別による値を図 2 に示す。

Page 9: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

8

天井クレーンやコンテナクレーン等の橋形クレーンの固有周期は,附属書 H による簡易計算法を用

いてもよい。

記号

1 地盤種別0又は1

2 地盤種別2

3 地盤種別3

X1 クレーン構造物の固有周期 Tc [秒]の軸

X2 クレーン構造物の固有振動数 fc [Hz]の軸

Y 基本加速度応答倍率 β3*の軸

図 2 基本加速度応答倍率 β3*(クレーンの固有周期又は固有振動数とクレーンの地盤種別による)

5.2.4.3 減衰による補正係数 η

式(4)の減衰による補正係数 ηは,クレーン構造物の減衰定数(減衰比)ζ により表 3 から求める。

表 3 減衰補正係数η

減衰比 ζ 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03 0.04 0.05 0.1

η 1.24 1.15 1.06 1.0 0.94 0.87 0.80 0.62

Page 10: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

9

部材の応力が弾性限度内にある構造物の減衰定数(減衰比)の代表的な値は,溶接構造物に対して

ζ=0.025,ボルト接合に対してζ=0.04,溶接とボルト両方の接合に対してζ=0.03である。

材料が弾性限界に近い応力で使われる場合は減衰定数(減衰比)を割増してもよい。

減衰定数(減衰比)は以下の方法によっても得ることができる。

- 計測

- 構造部材の非線形挙動又は摩擦接合部の摩擦力変位関係のヒステリシス評価

5.2.4.4 支持構造物による応答増幅率 δ

地表面又は地表面上に敷かれたレール上で運転されるクレーンの支持構造物による応答増幅率 δ=

1とする。

支持構造物上(建築物,埠頭,岸壁等)上で運転されるクレーンのδは式(5)で求める。

( ) 11

171.0

222

2

≥⋅−+

+×=κλλ

λδ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (5)

ここで

λ 表 4 で与えられるクレーン構造物と支持構造物の固有周期比に関する係数

κ 図 3 で与えられるクレーン構造物と支持構造物の相互作用における減衰効果に関する係数,

ζはクレーン構造物の減衰定数(減衰比)(5.2.4.3参照)

表 4 クレーン構造物と支持構造物の固有周期比に関する係数

周期比率 λ

9.0/ ≤PC TT ( )2

2P

2c

pc

81.0

8.111

⋅+⋅⋅

⋅−−TT

TTθ

1.1/9.0 ≤< PC TT θ

1.1/ >PC TT ( )2

2P

2c

pc

21.1

2.211

⋅+⋅⋅

⋅−−TT

TTθ

ここで

smm

m

+=

c

cθ クレーン構造物と支持構造物の質量比率

Page 11: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

cm

sm

cT

pT

クレーン全体の質量

支持構造物全体の質量

支持構造物を剛体とした場合のクレーン構造物の

クレーン構造物を剛体とした場合の支持構造物の

図 3

10

クレーン全体の質量

支持構造物全体の質量

支持構造物を剛体とした場合のクレーン構造物の

クレーン構造物を剛体とした場合の支持構造物の

係数κ

支持構造物全体の質量

支持構造物を剛体とした場合のクレーン構造物の

クレーン構造物を剛体とした場合の支持構造物の

支持構造物を剛体とした場合のクレーン構造物の

クレーン構造物を剛体とした場合の支持構造物の

支持構造物を剛体とした場合のクレーン構造物の固有周期

クレーン構造物を剛体とした場合の支持構造物の固有周期

周期

周期

Page 12: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

図 4

をパラメータとした

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

お,鉛直

ため水平方向ほど地震動が増幅されないと考えられる。

5.3 設計鉛直震度

設計鉛直震度

vK

ここで

KH

5.4 耐震設計荷重の計算

5.4.1 地震加速度の計算

4 に減衰定数(減衰比)

をパラメータとした

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

鉛直方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の

ため水平方向ほど地震動が増幅されないと考えられる。

設計鉛直震度 K

設計鉛直震度 Kvは式

HKc×= ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

ここで

この規格の

5.2.1式(1)の設計水平震度

は δ=1を用いる

震設計荷重の計算

地震加速度の計算

図 4 式(5)による

減衰定数(減衰比)ζ

をパラメータとした場合の支持構造物による

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の

ため水平方向ほど地震動が増幅されないと考えられる。

Kv の計算

は式(6)により求める。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

この規格の鉛直震度影響係数

の設計水平震度

を用いる(図 4

震設計荷重の計算

地震加速度の計算

による δの TC/T

ζ=0.025とし

場合の支持構造物による

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の

ため水平方向ほど地震動が増幅されないと考えられる。

により求める。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

鉛直震度影響係数は 0.5

の設計水平震度 ただし,

4 参照)。

11

C/TPによる変化

とし,クレーンとクレーンを含む

場合の支持構造物による応答増幅率

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の

ため水平方向ほど地震動が増幅されないと考えられる。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

0.5とする(詳しくは

ただし,KV用に KH

変化

クレーンとクレーンを含む

応答増幅率 δの変化

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の

ため水平方向ほど地震動が増幅されないと考えられる。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

とする(詳しくは附属書

Hを算出する際の支持構造物による応答

クレーンとクレーンを含む支持構造物

を示す。クレーンと

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合

方向に十分な剛性がある支持構造物では,一般に支持構造物の鉛直方向の固有周期が短い

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

附属書 F参照)

を算出する際の支持構造物による応答

支持構造物との質量比

クレーンと支持構造物の

固有周期が近接し,かつ支持構造物の質量がクレーン質量より相当大きな場合δ が大きくなる。

方向の固有周期が短い

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

を算出する際の支持構造物による応答

質量比 θ

支持構造物の

が大きくなる。な

方向の固有周期が短い

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (6)

を算出する際の支持構造物による応答増幅率

Page 13: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

12

最大水平地震加速度 aHと最大鉛直地震加速度 aV は(7)(8)式により,設計水平震度 KHと設計鉛直震度

KV から計算する。

gKa ×= HH ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (7)

gKa ×= VV ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (8)

5.4.2 地震荷重の計算

クレーンの各要素や部材に働く水平地震設計荷重FHと鉛直地震設計荷重Fvは(9)(10)式により計算

する。

cHH WKF ×= or cHH maF ×= ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (9)

cVV WKF ×= or cVV maF ×= ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (10)

ここで

Wc クレーンの各要素や部材の自重(力単位)

mc クレーンの各要素や部材の質量

つり荷による地震荷重は鉛直と水平それぞれ FRV と FRH で与えられる。水平力が省略可能である

としても,鉛直力だけは考慮する必要がある。

RHRH WKF ××= χ or RHRH maF ××= χ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (11)

RVRV WKF ××= χ or RVRV maF ××= χ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (12)

ここで

χ つり荷への地震の影響係数

WR クレーンのつり上げ荷重

mR つり上げ荷重の質量

注 χ は 0.0~1.0の範囲で JIS B 8822-1のクレーン分類に従って選択する。χ の値は以下の表 5 に

依って選択できる。

表 5 つり荷への地震の影響係数χ

クレーン分類

(JIS B 8822-1) A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8

χ 0.0 0.14 0.28 0.43 0.57 0.71 0.86 1.0

6 応答スペクトル法による地震荷重の算定

6.1 一般

Page 14: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

13

応答スペクトル法はクレーンを多自由度系とみなしたモデルの地震応答に関係する振動数範囲にお

ける複数の振動モードを包含した範囲でクレーンの地震応答を計算する方法である。

実際のクレーン構造物は無限な自由度をもつが,有限要素解析(FEA)他の認知された方法により,

多自由度系の質点-ばねモデル法を使った有限な自由度の動的システムに離散化して,クレーンの主

要な振動特性を得ることから応力計算を開始する。

構築したモデルを固有値解析することにより各次の固有周期又は固有振動数,振動モードの形,モー

ド刺激係数を計算する。

クレーンの応答は通常3方向(鉛直と水平直角2方向)別々に計算し,各次の振動モード応答は,

モードの振動数/周期,減衰,モードの有効質量に対応した応答スペクトルから得られる最大応答加

速度又は変位として計算される。

この規格では,鉛直応答スペクトルは水平応答スペクトルの 50%として計算する。水平2方向のス

ペクトルが異なる場合は,大きい方の値から鉛直応答スペクトルを計算する。

3方向それぞれの応答は,以下の認められた方法によって各次の振動モード応答を重合せて得られ

る。

-全ての値の合計

-ルート平均(二乗平方根法)(SRSS)

-CQC(Complete Quadratic Combination)法

3方向それぞれの応答はクレーン構造物の地震応答の他に,クレーンのつり荷質量による影響も考慮

する。

応答スペクトル法による地震応答解析の主要なステップを附属書 表 D.1に示す。(そこでは X 方向

の地震動のみが例として示される)

この方法は弾性範囲及びクレーン構造物の地震応答が線形であると仮定しているが,解析に用いる

振動モードの数が増えれば精度は向上する。

6.2 地震応答の総和(TRS)の計算方法

6.1で述べた応力の重ね合せについて,この規格では SRSSを振動モードと地震荷重の方向の重ね合

せの標準方法とすることとし,修正震度法を準用して必要なパラメータを求める。

有限要素解析(FEA)などを使用して,クレーン構造物のモデル化を行う際の応答スペクトル法は以下

の手順で行う。

- 剛体限界の振動数を 30Hz以上として,それ以下のクレーンの全ての固有周期又は固有振動数を計

算する。

- クレーン設置場所の地盤種別から図 2(加速度応答倍率を示す3つのカーブ)にて適切な設計カー

ブを選択し,適切な基本加速度応答倍率β3* を求める。

- 何次までの振動モードを使用するか定める。各振動モードの有効質量の合計が,全質量の 90%を

超えることを目標とする。但し,堅いサドルのある天井クレーン,バラスト上のクレーン,大き

なつり荷があるクレーンの場合はその値は達成できない。

- 解析モデルの打ち切った振動モードの質量に 30Hzの β3*を乗じて加える。

- 基本加速度応答倍率 β3*に以下を乗じて各振動モードの最終設計スペクトル加速度を計算する。

Page 15: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

14

- 変換係数 0.16(式(1)参照)

- クレーン設置場所による基本水平震度 Abg(5.2.2参照)

- 地盤種別補正係数 β2(5.2.3参照)

- 減衰補正係数 η(5.2.4.3参照)

-3方向(水平 X,鉛直 Y,水平 Z 方向)の地震動それぞれに対して,最終設計スペクトル加速度と

刺激係数を各振動モードの要素部材の内力,応力,節点変位等を計算するための入力として使用す

る。そして3方向の振動それぞれに対して,全ての振動モードの要素部材の計算結果を SRSSにて

重合わせて合計値[respt(X),respt(Y)又は respt(Z)]を計算する。

-3方向の計算結果 respt(X),respt(Y)及び respt(Z)を SRSSにより重合せて要素部材の地震応答の合計

(TSR)を計算する。

222 )()()( ZrespYrespXrespTSR tttSRSS ++= ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (13)

SRSSに代わる方法としては,3方向の計算結果を以下2つの方法により重合わせる。

- 100-40-40法

‥‥‥‥‥‥‥ (14)

- 全て組合せの絶対和

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (15)

7 地震と地震以外の荷重との組合せ

7.1 一般

静的強度と弾性安定に関して,地震と地震以外との荷重の組合せについて 7.2 の方法と 7.3 の方法と

の2つの方法を示すが,この規格では 7.2 を推奨とする。

7.4 ではクレーンの全体安定度を扱う。

7.2 静的強度の照査 JIS B 8833-1 による荷重の組合せ

7.2.1 重み付き絶対値和法

箇条 5 で計算される耐震設計荷重は JIS B 8833-1 の特殊荷重相当の扱いとなる。荷重の組合せ C

で示されるものは定常荷重,非定常荷重及び特殊荷重の組合せを対象としており,耐震設計荷重は

表 6 による組合せが適用される。

)(0.1)(4.0)(4.0

)(4.0)(0.1)(4.0

)(4.0)(4.0)(0.1

4040100

4040100

4040100

ZrespYrespXrespTSR

orZrespYrespXrespTSR

orZrespYrespXrespTSR

ttt

ttt

ttt

⋅±⋅±⋅±=⋅±⋅±⋅±=⋅±⋅±⋅±=

−−

−−

−−

|)(|0.1|)(|0.1

|)(|0.1|)(|0.1

YrespZrespTSR

orYrespXrespTSR

ttabs

ttabs

⋅±⋅±=⋅±⋅±=

Page 16: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

15

表 6 耐震設計荷重の組合せ

荷重 荷重の組合せ

C1 C2

クレーン質量 1 1

つり荷の質量 1 1

鉛直方向のクレーン基礎振動に

よる: VF , FRV 1 0,4

水平方向のクレーン基礎振動に

よる HF , FRH 0,4 1

水平力 FH,FRHはどの水平方向へもかけることができ,検討中のクレーン要素の方向は最も不利な方向

となるように選択する。

注 1. JIS B 8833-1 はリスク係数γnを人や環境が脅かされる特別なケースについて増加するよう

に設定している。耐震計算のリスク係数は 1.0~2.0 の範囲として,クレーンの構造部材や機械毎に

又はクレーンの全体安定(7.4 参照)に対して別々の値として選択する。1.0 より大きなリスク係数

γnを選択するときは表6の Fv,FRV,FH,FRHにγnを乗じる。

つり荷の位置や可動部品(トロリ,ジブ,移動するカウンタウエイトなど)により荷重条件が変化

するときは,最大の影響を考慮する。

7.2.2 リスク係数γn

リスク係数γnは,1.0~2.0 の範囲で,想定されるリスクの大きさにより決めるものとする。 なお,リスク係数は,使用者,購入者と製造者の間で協議して決定する。表 7 にリスク係数の基本

的考え方を示す。人的被害が想定される場合のリスク係数は 1.2 以上にすべきである。

表 7 リスク係数の考え方(参考)

リスク レベル

クレーン倒壊による被害 リスク 係数γn

例 人的被害の可能性 2 次被害の可能性

Ⅰ 重大災害となる可能性

が極めて高い

施設外への人的被害の

可能性が高い。また,環

境・経済へ及ぼす影響が

大きい。

1.5~2.0 高炉用クレーン タワークレーン(人口密

集地域)

Ⅱ 重大災害となり得る。

2 次被害が発生する可能

性は高いが,範囲は当該

施設内に止まる。 また,環境・経済へ及ぼ

す影響は限定的である。

1.2~1.5

コンテナクレーン(港湾

法による耐震強化施設) ゴライアスクレーン(造

船所)

Ⅲ 人的被害の可能性はあ

るが,重大災害となる

可能性は低い。

2 次被害の発生する可能

性は低い。 1.2

Ⅳ 極めて低い 極めて低い 1.0

※ 重大災害:不休も含む一時に 3 人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害。

Page 17: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

16

※ 算出されたクレーンの修正水平震度が,支持構造物の設計水平震度を上回る場合,リスク係数

は支持構造物の設計水平震度を超えない範囲で設定する。ただし,1.0 を下回ってはならない。 ※ クレーン設置場所の震源と地盤特性を考慮しサイト毎に設定される地震動相当の地震波を用い

て,時刻歴応答解析により照査を行う場合には,リスク係数は 1.0 としてもよい。

7.3 静的強度の照査:SRSS 法による荷重の組合せ

6.2 の SRSS による計算結果に対する荷重ケースは,以下の表 8 により他の荷重と組合せられる。

表 8 SRSS 法による耐震設計荷重の組合せ

荷重 荷重の組合せ

C3 C4 C5 C6

クレーン質量 1 1 1 1

つり荷の質量 1 0 1 0

地震応答の総和(SRSS) –荷重を

つったクレーン

1 0 -1 0

地震応答の総和 (SRSS) – 無荷

重クレーン

0 1 0 -1

つり荷や稼動部分(トロリ,ジブ,カウンタウエイトなど)の位置の変化による荷重の大きさは最大

の影響を考慮する。

7.4 全体安定度の照査

地震荷重を含む全体安定度は JIS B 8833-1 に基づく他の荷重と以下の表 9 により組合される。

表 9 地震荷重を含む全体安定度に対する荷重の組合せ

荷重 荷重の組合せ C1

クレーン質量, 不利方向 a 1.05

クレーン質量,有利方向 a 1

つり荷の質量 1

地震荷重合計 1

a荷重の組合せとクレーン姿勢についての安定度を計算するとき,クレーンの各

部の質量によって検討中の支点からの転倒又は浮き上がりに対する荷重影響が

増加(不利)する,又は減少(有利)する方向。

1.0~2.0 のリスク係数γnは表 9 の地震荷重にのみ掛けるが,クレーンの不利な方向に作用する質量

にも考慮する必要も考えられる。

水平力 FHと FRHはどの水平方向へも働くが,方向はクレーンの安定度で最も不利な影響となる方向

を選択しなければならない。

検討している安定度の条件が明確である荷重の組合せを除いては,地震時の安定度を確認するとき

は全てのつり荷の大きさとクレーンの姿勢を考えなければならない。

Page 18: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

17

7.5 性能照査

限界状態設計法による性能照査は JIS B 8829 に依る,一般抵抗係数γmは 1.0 とし,座屈の評価が

微小変形理論ではなく,構造のたわみ,初期不整などの変形が及ぼす影響を考慮した“2 次オーダーの

弾性理論”(EN 1993-1-1 Design of steel structures. General rules and rules for buildings 参照)に基づい

た計算を必要に応じて考慮する。

8 時刻歴応答法に基づく地震荷重の算定

8.1 レベル 1 地震動による地震荷重の算定

時刻歴応答法による解析を行う場合には,クレーン設置場所の地盤特性を考慮して作成された適切

なレベル1地震動を用いる。鉛直方向の地震動が示されないときは,修正震度法により求めた地震荷

重を用いる。クレーンに対する地震の影響の評価は,修正震度法による場合と同様にして行うが,機

能を損なわない範囲で構造部分が局所的に降伏応力を越え,若干の塑性化が発生することについて,

要求性能を使用者と設計者が協議してあらかじめ設定してもかまわない。塑性化を許容した部材以外

は弾性域にあり,クレーンの使用性と安全性が維持されることを確認しなければならない。

8.2 レベル 2 地震動による地震荷重の算定

8.2.1 地震動の設定 クレーン設置場所の震源と地盤特性を考慮したサイト毎のレベル2地震動が作

成できることが前提となる。ただし,地震動を一波で代表させるときは十分な吟味をする必要がある。

8.2.2 安全性の検証 レベル 2 地震動による地震荷重に対して,使用者と設計者が協議してあらかじめ

設定する要求性能として,クレーン構造物の崩壊や倒壊などの構造的不安定,脱輪,つり荷やクレー

ン部品の落下がないことがある。また,運転者や作業員,公共物など安全が保たれることなどがある。

さらに,地震後につり荷を地上へ降ろせること,すぐにクレーンが可動できることは要求されないが,

修復により機能を回復できること,などがあり信頼性がある合理的な方法により検証する。

9 免震・制振クレーン

レベル 2 地震動は大きいため構造部材が塑性域に入ることが想定されるが,クレーンは構造的不安

定に対する余裕が少ないため,安全性と経済性を両立させるために免震装置などが採用されている。

レベル2地震動対応として採用されることが多いが,レベル1地震動に対しても機能を損なわず継

続して使用でき,車輪の浮上りがなく,脱輪しないことが要求される。免震・制振クレーンの耐震設

計に当たっては,クレーンと免震・制振装置との連成モデルを構築し,複数の適切な地震動に対して

時刻歴応答法による解析を行うなどにより,免震装置が働き出す地震荷重(トリガー荷重)を算定し,

クレーンの主要構造部材が弾性範囲内に収まる応力設計を行うことを原則とする。ただし,設計水平

震度HK の最小値は 0.10とする。

また,免震装置等の変形が過大にならないように十分配慮しなければならない。

採用する免震構造または制振構造に非線形性が存在する場合には,これを適切な方法によって解析

モデルに組み込むものとする。

Page 19: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

18

10 移設クレーンへの対応

移設クレーンは,自立の条件で耐震設計を行うものとする。ただし,躯体上設置やステー支持で

使用される場合の条件を設計時に設定することができるものは,その支持条件で耐震設計を行う。こ

の時,地域別補正係数及び地盤種別補正係数は,最大値を採るものとする。

Page 20: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

19

附属書 A

(情報)

耐震設計フローチャート

図 A.1 は修正震度法によるクレーンの耐震設計のフローチャートを示す。

図 A.1 修正震度法によるクレーンの耐震設計のフローチャート

Page 21: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

20

附属書 B

(情報)

設計加速度

B.1 一般

基本水平震度 Abg はクレーンが設置されている地域の地震発生評価に基づき決定される。ISO11031

における基本水平震度 Abg は再現期間 475 年に基づく。これは 50 年 10%の発生確率(1 年に 0.2%)に

一致する。

本規格では,基本水平震度 Abg に fcon を掛けて再現期間 72 年相当の水平震度に変換することを念

頭に,地震発生度が相対的に低い地域の水平震度が極端に小さくなることが無いように配慮した。す

なわち,再現期間 475 年相当の基本水平震度 Abg を SA,A 地域で定め,B,C地域の Abg を A 地域の 0.9

倍,0.8 倍となるように設定した。本規格における Abg の分布を図 B.1 に,表 B.1 に地域区分毎の Abg

の値を示す。

なお,地表面の基本震度 Asg は地盤種別補正係数β2(表2)を Abg に乗じた値である。

この附属書に含まれるより明確なデータがない場合はこれを使用する。

Page 22: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

21

Key

地域 C

地域 A

地域 B

地域 CA

図 B.1 — 日本の地域区分

表 B.1 — 日本の基本水平震度

地域区分 基本水平震度, Abg

g

CA 0,45

A 0,36

B 0,33

C 0,29

日本以外の各国の Abgは ISO11031 の Annex B を参照のこと。

Page 23: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

22

附属書 C

(情報)

地盤種別補正係数 β2 の算定

C.1 表層地盤の種別によって定められる。これは,地震動が基盤から表層地盤を伝わって地表面に

達する間に増幅される程度の違いを表している。この規格では,埋土又は沖積層の厚さによって地盤

を 4 種類に分類した。地盤種別0は第三紀以前の堅固な岩盤が露頭している岩盤の種別である。

表層地盤に地盤改良を施した場合には,地盤の剛性は高まるものの地震動増幅の低減効果は評価し

難いことから,改良前の地盤をもって地盤種別を評価するものとした。ただし,地盤改良の一種では

あるが,軟弱層を広範囲に除去した場合には新たに露出させた地盤を地表面として表層地盤を評価し

てよいと考えられる。

表層地盤の固有周期が地震動の卓越周期と一致し共振する場合を除いて,実例によると基盤での地

震動は,表層地盤で 1.5~2.0 倍程度増幅される。(高圧ガス保安協会「コンビナート保安・防災技術指

針」(1974)による。)そこで,他基準を参考に係数を設定した。

また,周期の長い地震波ほど深い地盤構造の影響を受けるため,周期 2s 以上のいわゆる長周期地震

動に関しては,沖積層の厚さのみで増幅の程度を推し量ることが適当か否かは今後の課題である。長

周期のクレーンの設計時には,設置予定地点が長周期地震動の発達しやすい地点かどうかを十分に検

討する必要があろう(注参照)。

注 消防法における屋外貯槽の設計基準では,長周期地震動が発達する可能性の高い地域に対して,

卓越周期を考慮した応答倍率が個別に設定されている。

C.2 地盤種別の判定は,ボーリングによる土質調査,又は,地震観測や常時微動観測により行われ

るが,後者の場合は地震工学の専門技術者の判断によることが必要となる。

ひとつの目安として,区分別の地盤の平均周期と卓越周期を解説表 C.1 に示す。

解説表 C.1 地盤の区分と周期

地盤分類 平均周期 卓越周期

地盤種別1 0.2 秒以下 0.1 秒以下

地盤種別2 0.1~0.8 秒 0.3~0.6 秒付近

地盤種別3 0.6 秒以上 1.0 秒付近

C.3 標準貫入試験等の地盤調査が行われている場合,地盤種別は,解説表 C.2 によって算出できる

ものとする。なお,地表面が基盤面(クレーンが設置される地点を含む十分広い領域に広がる, N 値

50 以上の地層の上面もしくはせん断弾性波速度が 400 m/s 以上の地層の上面)と一致する場合は地盤

種別 1 とする。

解説表 C.2 地盤調査が行われている場合の地盤の特性値

地盤分類 地盤の特性値 TG 概略該当地盤

地盤種別1 TG<0.1 良好な地盤

地盤種別2 0.1≦TG<0.6 中間的地盤

地盤種別3 0.6≦TG 軟弱地盤

Page 24: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

23

地盤の特性値 TGは次式で算出される。

∑=

=n

i si

iG V

HT

1

4

ここで,

TG : 地盤の特性値(s)

Hi : i 番目の地層の厚さ(m)

Vsi : i 番目の地層の平均せん断弾性波速度(m/s)

粘性土層の場合 : 3

1

100 isi NV =

砂質土層の場合 : 3

1

80 isi NV =

Ni : 標準貫入試験による i 番目の地層の平均 N 値

i : 該当地盤が地表面から基盤面までn層に区分されるときの,地表面から i 番目の地層の番号。

Page 25: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

24

附属書 D (情報)

応答スペクトル法

応答スペクトル法による地震荷重の算定のステップを 表 D.1 に示す。

表 D.1 — 応答スペクトル法を用いた一方向の地震応答の手法[“resp (dir)”の算出]

Step 1 — 振動モード,固有周期/振動数の計算

部材を多質点によりモデ

ル化 振動モード 1 振動モード 2 振動モード 3

Step 2 — 選択した振動モードについて検討する方向の応答スペクトルから地震による加速度の決定

β(T)*

β(T3)*

β(T2)*

β(T1)*

Page 26: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

25

表 D.1 (続き)

Step 3 —振動モードの全ての節点の地震荷重, Fji, の計算

Fj1

振動モード1のときの節点jの地震荷

Fj2

振動モード2のときの節点jの

地震荷重

Fj3

振動モード3のときの節点jの地震荷重

注 選択した振動モードについて,全ての節点の地震荷重は刺激係数とモードの応答スペクトルにより計算

する。

Step 4 —振動モード iの全ての節点 jにおける部材の内力 Nji (軸力), Vji (せん断力) 及び Mji (曲げモーメン

ト) の計算

例 振動モード 1, 2 及び 3 の節点 jの曲げモーメント要素 MzL,j,x o が X 方向の地震荷重により発生した場合

MzL,j,x,1

節点jの振動モード1のときの局

部軸zLに関する曲げモーメント

(地震荷重方向 X)

MzL,j,x,2

節点jの振動モード2のときの局部

軸zLに関する曲げモーメント

(地震荷重方向 X)

MzL,j,x,3

節点jの振動モード3のときの局部軸zL

に関する曲げモーメント

(地震荷重方向 X)

Page 27: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

26

表 D.1 (続き)

Step 5 —振動モード iの全ての節点 jにおける Step4 により計算した内力 N, V 及び Mによる地震応答 resp

(dir) (応力,変位)の計算

例 曲げ応力 σb,zL,j1,x,i,,は振動モード 1, 2 及び 3 と選択された刺激係数に対する節点 j1のローカル座標 ZL

まわりの曲げモーメントによる応力(地震荷重方向 X)

resp1 (x) = σb,zL,j1,x,1

節点j1の振動モード1のときの

局部軸zLに関する曲げモーメン

トによる応力

(地震荷重方向 X)

resp2 (x) = σb,zL,j1,x,2

節点j1の振動モード2のときの局部

軸zLに関する曲げモーメントによ

る応力

(地震荷重方向 X)

resp3 (x) = σb,zL,j1,x,3

節点j1の振動モード3のときの局部軸

zLに関する曲げモーメントによる応

(地震荷重方向 X)

Step 6 —地震荷重方向に対する要素部材の地震応答の合計(TSR)を計算する。振動モードを SRSS により

合計する。(全ての節点の応力,変位)

+++= 23

22

21 )()()()( dirrespdirrespdirrespdirrespt

例 地震荷重方向 Xによる節点j1の曲げ応力の合計σb,zL,j1,x,i,,は振動モード1, 2 及び 3についてCtep 5で計算

した局部軸zLまわりの曲げモーメントによる応力を合計する。

2

3,,1,,2

2,,1,,2

x,1j1,zL,b,xj1,zL,b, xjzLbxjzLb σσσσ ++=

Page 28: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

27

附属書 E (情報)

時刻歴応答法及び応答スペクトル法・修正震度法との比較

E.1 一般

時刻歴応答法は,耐震設計について非常に詳細な評価が必要とされる,あるいは非線形挙動が許容

されるときに,地震荷重の計算のための修正震度法および応答スペクトル法に代わるものとして用い

られる。

時刻歴応答法は,非常に詳細な方法だが,入力として使用する地震動は特定の時刻歴入力波形とな

る。考慮中のクレーンに多かれ少なかれ影響する 1 つの応答スペクトルからスペクトル適合波と呼ば

れる複数の時刻歴入力波形を生成することができるので,同一の応答スペクトル曲線となる,少なく

とも二つ,できれば三つの統計的に独立した時刻歴入力波形が使用されることが重要であり,そうで

なければ信頼性に欠ける結果を招く可能性がある。クレーン設置場所の震源と地盤特性を考慮しサイ

ト毎に設定される地震波を用いる場合も,想定する断層や地盤特性を十分に吟味する必要がある。

時刻歴応答法を修正震度法及び応答スペクトル法と比較して表 E.1 に示す。

表 E.1 — 耐震応答解析3方法の特徴

複雑さ

難しさ

構造解析の範

地震による加

速度の詳しさ

地震荷重の詳

しさ 応答の特徴

修正震度法

扱いやすく簡

単,コンピュー

タの使用が推奨

されるが必須で

はない

弾性範囲で線

形 近似

近似だが安全

側を目指す

クレーンの固

有周期/振動数

からの応答ス

ペクトル及び

推定値に依存

応答スペクト

ル法 (6章と

附属書D参照)

より複雑でコン

ピュータの使用

が要求される

弾性範囲で線

高精度ではあ

るが,地震加速

度の最大値だ

けを使用する

方法の限界内

高精度である

が,地震荷重と

クレーン応答

の上限推定値

しか得られな

使用の応答ス

ペクトルに依

Page 29: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

28

時刻歴応答法

( E.2 参照)

複雑でコンピュ

ータ使用が必須

弾性,塑性,線

形,非線形

実際の地震加

速度を入力に

使用した詳細

なシミュレー

ション

地震動による

地震荷重に対

するクレーン

応答の詳細な

シミュレーシ

ョン

使用する地震

波に依る

E.2 時刻歴応答法による地震応答

E.2.1 一般

地震の加速度記録は,地震荷重の入力として使用され,これらは過去に発生した地震の記録又は人

工的にあるいはシミュレーションとして合成したものである。

人工的な加速度記録は,コンピュータにより作成され,これらは地盤の最大加速度の設計値と加速度

記録の持続時間との関係を示す応答スペクトルに合わせて作られる。

加速度記録は,地震動を物理的にシミュレートして作られており,異なる加速度記録を地震動の異な

った方向用として使用しなければならないことがある。

時刻歴応答法には以下の2つのオプションが利用可能である。

— 直接積分法は,システム数式のフルセットにステップバイステップの積分値を適用する。これは,

二つの方法のうちより強力であり,非線形性のすべてのタイプを扱えるが,コンピュータとエン

ジニアリングの両方に対してコストがかかる。

— モード重合せ法は,固有値解析から選択したモード形状毎のステップバイステップの積分値を求

めそれを重合せて,地震応答の時刻歴とする。これは,直接積分法よりも簡便であるが,非線形

性取扱い能力には限界がある。

時刻歴応答法に基づく1方向の地震応答解析のステップを図E.1に示す。

Page 30: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

29

Step 1

Step 2

Step 3

Step 4

記号

Ctep 1: クレーン構造のモデル化,有限要素解析等によって質点-ばねモデルとする。

Ctep 2: 入力する地震動の選択,地震の加速度記録(人工,実績又はシミュレート)を用いる。

Ctep 3: クレーン応答の計算,地震動と他の非地震荷重,例えば自重,つり荷重を入力とし,時間領域でシステム方程式の

時間ステップ毎の積分を用いた節点に於ける時間変化に伴う加速度の算出。

Ctep 4: 構造部材の節点に於ける時間変化に伴う内力の計算と最大値の決定。

1 最大加速度

2 最大せん断力

3 最大曲げモーメント

X 時間

Y 加速度

図 E.1 — 時刻歴応答解析のステップ (一方向)

Page 31: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

30

附属書 F (情報)

基本地震動とMercalli and Richter scales との関係

表 F.1 — 基本地震動と Mercalli and Richter scales との関係

Richter scale 基本地震動

ag [m/s2]

Approximate

Mercalli equivalent

<3.5 <0.01 Ⅰ

3.5 0.025 Ⅱ

4.2 0.025 Ⅲ

4.5 0.10 Ⅳ

4.8 0.25 Ⅴ

5.4 0.50 Ⅵ

6.1 1 Ⅶ

6.5 2.5 Ⅷ

6.9 2.5 Ⅸ

7.3 5 Ⅹ

8.1 7.5 ⅩⅠ

>8.1 9.8 ⅩⅡ

Page 32: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

鉛直震度

経験的減衰式から得られた応答スペクトルの

囲で約 0.4

鉛直震度

図 G.1-

震度影響係数 c が

経験的減衰式から得られた応答スペクトルの

0.4〜0.7の範囲である(

震度影響係数 c を

-経験的減衰式からの応答スペクトルと地震の周期成分との

が,鉛直および水平の

経験的減衰式から得られた応答スペクトルの

の範囲である(図

を 0.5に設定することを推奨とする。

経験的減衰式からの応答スペクトルと地震の周期成分との

附属書

鉛直

および水平の震度

経験的減衰式から得られた応答スペクトルの

図 G.1 参照)。

に設定することを推奨とする。

経験的減衰式からの応答スペクトルと地震の周期成分との

31

附属書 G(情報)

鉛直震度影響係数

震度 KV および

経験的減衰式から得られた応答スペクトルの鉛直方向加速度と水平方向加速度の比は

参照)。

に設定することを推奨とする。

経験的減衰式からの応答スペクトルと地震の周期成分との

G

震度影響係数

および KHに関係する。

方向加速度と水平方向加速度の比は

に設定することを推奨とする。

経験的減衰式からの応答スペクトルと地震の周期成分との鉛直

に関係する。

方向加速度と水平方向加速度の比は

鉛直の水平に対する比

方向加速度と水平方向加速度の比は,0.1〜

の水平に対する比 [V/H]

〜5 秒の範

[V/H]

Page 33: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

32

附属書 H

(情報)

クレーンの固有周期の簡易計算

クレーンの固有周期は,対象とするクレーンと同型のクレーン挙動を測定して求めるか,又は,

骨組構造の固有値解析により求める。

天井クレーンやコンテナクレーン等の橋形クレーンの固有周期は,次式による略算結果に替えて

もよい。

(ⅰ) 天井クレーン

走行方向固有周期 : Tz (s)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (H.1)

(ⅱ) 橋形クレーン

横行方向固有周期 : Tx (s)

x2 ・α= cx mT π ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (H.2)

走行方向固有周期 : Tz (s)

zlzs

zlzscz mT

+αα

・αα・= π2 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (H.3)

(H.1),(H.2),(H.3)式において

mc : 天井クレーンガーダ片側の質量,又は橋形クレーンの脚部を除く全質量(kg)

zα : 天井クレーン走行方向ガーダの水平たわみ係数(s2/kg)

xα : 橋形クレーン横行方向 1架構の水平たわみ係数(s2/kg)

zsα : 橋形クレーン走行方向海側架構の水平たわみ係数(s2/kg)

zlα : 橋形クレーン走行方向陸側架構の水平たわみ係数(s2/kg)

( xα 及び zsα , zlα は各々図 H.1 及び図 H.2 に示す位置に単位水平力P=1N を与えたときの

その点の水平変位)

図 H.1 橋形クレーンの横行方 図H.2 橋形クレーンの走行方向

1N 1N

zz 2 ・α= cmT π

Page 34: クレーン耐震設計指針 (2018 年改正案) · 0 日本クレーン協会規格 jcas 1101-2018 平成元年 5月制 定 平成 30年xx 月改正 クレーン耐震設計指針

33

図 H.3 横行方向

図 H.4 走行方向

これらの式において,水平たわみ係数 ax,azは以下の式で与えられる。

横行方向,水平たわみ係数 : xα 図 H.3 に

示す曲げモーメント図を参照して

( )

+×+

⋅ dbcx kkIE

m 1

2

32

6

3

=α

⋅⋅

+

⋅+

mA

nA

s

h

AE

m

d

c

c

12

2

ここで,

E : ヤング係数

mI

sIk

c

bb=

mI

nIk

c

dd=

cA , cI : 下部柱の断面積及び断面二次モー

メント

dA , dI : 上部柱の断面積及び断面二次モー

メント

bI : はりの断面二次モーメント

であり,断面積及び断面二次モーメントの添え字は図中の部材記号を示す。

走行方向 水平たわみ係数 : zα 図 H.4 に示す曲げモーメント図を参照して

+

⋅+

+

⋅ 22

2

2

32

111

31 2

12

12

12 h

h

k

k

IE

h

h

h

kIE

h

b

c

cbcz=α

ここで,

h

k

kkkkkkh

k

kkkh

c

bccbbc

c

bbc

+

−+

++

+

++−

2

222

2

212

2

2121

116

1310.112

116

116

116

12 hhh −=

1

22

c

cc I

Ih = 1cI , 2cI :各々下部及び上部柱の断面二次モーメント

hI

lIk

c

bb

1

11= 1bI , 2bI :各々下部及び上部梁の断面二次モーメント

hI

lIk

c

bb

1

22=

1N

1N