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東東東東東東東東東 “東東”東東東東東東 ― 東東東東東東東東―

東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

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Page 1: 東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

東大科学哲学ゼミ第6回“責任”の所在を問う

―科学は神聖なのか―

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科学は何でも知っている?ラクイラの大災害委員会と東大地震研の事例から

2012/11/20 東大科学哲学ゼミ 2

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1.地震予知失敗で禁固6年… ?

2009年4月に起きたラクイラ(伊)地震の被害拡大に責任があるとし、諮問委員会メンバーの科学者に禁固6年の有罪判決

→ 予知に失敗したことではなく、群発地震が観測される中「大きな地震が起きる前に、安全宣言を出した」ことが訴追された。

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2.ラクイラの事例前年からの半年間続く「群発地震」

予知情報の錯綜でパニックが発生

3 .30にM6 .3の地震を観測

3 .31に大災害委員会が招集(ラクイラ)

委員会後の会見で「安全宣言」

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3.ラクイラの事例

比較的強い揺れを観

測し、パニックに

なっている市民を落

ち着かせるために、

科学者お墨付きの

「安全宣言」を出す

ことが委員会開催前

に決定されていた!

なぜ安全宣言になったのか?

Cf. BSE問題における「サウスウッド委員会」報告書

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4.東大地震研の試算

「首都直下型 4 年内 70 %地震活発 切迫度増す」

東京大学地象研究所の教授への取材をもとに、東大地震研の研究チームが M7 クラスの地震が発生する確率を試算した。(読売 2012. 1 .23 付 1面) cf: 情熱大陸:地震学者大木聖子

ところが、これは地震研の公式発表ではなかった!

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5.問題の波及

• 〈試算は、 2011 年 9 月の地震研究所談話会で発表されたもので、その際にも報道には取り上げられました。それ以降、新しい現象が起きたり、新しい計算を行ったわけではありません〉

• 〈この試算は発表以外に専門家のレビューを受けていません。また、示された数字は非常に大きな誤差を含んでいることに留意してください〉

• 〈このサイトに掲載されたからといって、地震研究所の見解となるわけではまったくありません〉

4年以内70% というショッキングな数字が独り歩き…各メディアで大々的に扱われ、ネットには「1月 25日に東海大地震」という予知夢などのデマが飛び交うなか、火消しに奔走。

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6 . 二つの事例から

• 科学について語ることができるのは誰か?

 (科学者・政治家・市民・科学論者)

• 責任をとるのは誰か?

• 科学者は明確な態度をとらなければいけないのだろうか?

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公衆と科学知識クーンの相対主義から科学技術社会論まで

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科学技術社会論 STS

• SSK 、実験室の人類学で開かれた科学と社会のチャンネル

• 科学、技術、社会の相互関係• 社会科学のあらゆる道具を使用• 科学教育、科学コミュニケーション、規

制科学、遺伝子組み換え食品、リスク

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科学は現場で

   

起こっ

てるんだ!!

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クーンのパラダイム論

• 理論の共役不可能性incommensurability–相対主義的科学論⇒科学知識の社会学 SSK

• 科学者共同体 scientific community 研究–実践的活動としての科学⇒実験室の人類学

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Page 13: 東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

科学知識の社会学 SSK科学者の社会学 20c前半~

マートン etc.科学者の行動様式研究

科学知識の社会 学ブルアのストロングプログラム科学知識そのものの社会学的分析

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ストロングプログラム

• ブルア『数学の社会学』–ミルの心理主義とフレーゲの論理主義の間の

社会性ストロングプログラム①因果性 causality②不偏性 impartiality③対称性 symmetry④反射性 reflexivity

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SSK の失敗と成果

• 科学と社会という問題体制の確立• 合理性の極端な破壊という危険性• 行き過ぎた相対主義とサイエンスウォーズ

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実験室の人類学と「科学の実践」

• 実験室への参与観察• 事実の社会的構成• 社会構成主義の物質性と行為遂行性–物質性materiality–行為遂行性 performativity• ※次スライドにてくわしく

• 懐疑主義の克服

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物質性と行為遂行性

• 再現実験の成功は単にその理論が正しいから??–実験装置の出来、実験者の腕といった的確な条件を前提

–ほかの実験室・実験室外部で成功するためには:技術やテクニックの「標準化」

–「世界の実験室化」:さまざまな人・モノの支援が必要⇔実在と理論にこだわり現実と理論の関係が顧みられてこなかった旧来の科学哲学

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Page 18: 東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

ラトゥール・ウールガー『実験室生活』

• カリフォルニア・ソーク研究所• 75~77 年• 甲状腺刺激ホルモン TRF の研究• インスクリプション–図表、グラフ、方程式などの記録物–測定器などが「インスクリプション装置」

× 「自然そのもの」○「文書作業 literary work 」

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「科学者と混沌の間には、書庫やラベル、プロトコール、図表、紙からなる壁以外の何もない。しかし、この文書の塊こそがより多くの秩序を創造し、マクスウェルの悪魔のように、一か所にたくさんの情報を集める唯一の手段なのである。」( LW,245-246 )

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実験室生活:論争的言明操作

• 闘争場 agonistic field• 他の言明の引用・結合・否定等を通じ事実らし

さ status of fact を高めたり失ったり• 事実らしさの高まり方– 「 A は B である」と鈴木は示唆した– 「 A は B である」という証拠は多くある/殆どない– 「 A は B である」は三年前に鈴木によって初めて証

明された– 「 A は B である」– 表だって主張されない暗黙の前提

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実験室生活:言語論的転回

• 科学活動の言語論面に注目;言語論的転回–テクスト分析や記号論との接近–物質的・実在的側面も無視せず

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クノール=セティナ『知識の制作』

• 科学者はどのように実験装置などをうまく使い研究成果をあげているのか

• どの様に先行する事象・意思決定から現在の活動のための情報を引き出し意思決定しているのか

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クノール=セティナ『知識の制作』

• 選択の選択性 selectivity of selections–選択の基準は先行する何らかの選択の産物–決定基準は普遍的なものでない

×簡潔さ  × 問題解決能力  ×合理性

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パラダイム間の優劣

• パラダイムの選択は不合理?• クーン「実験や観察との一致」「内部の無矛盾性、確立された他の理論との整合性」「応用範囲の広さ」「単純性」「豊穣性」

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クーンのパラダイム間の比較基準(第二回)

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クノール=セティナ『知識の制作』

• 意思決定の基準の状況依存性contingency–基準の適応は具体的な状況に基づく(アドホック)• 利用可能な実験装置や方法• 研究材料• 予算、人員• 実験動物の逃亡

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ラトゥール・カロンアクターズネットワーク理論

• クノール=セティナの貢献– 実験室内部だけでなく装置メーカー、研究助成機関、行政、産業界、出版社などとの関わり

• 超―科学的な 場 の分析• 科学が社会に影響を及ぼす構造• アクター:人間、機械、物質、技術、化学法則、論文…脱人間中心主義

• 翻訳:自己を中心にネットワークを形成– 問題化:問題解決に自分の方法を提案

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実験室研究の前提と成果

• すでに終わった科学から活動中の科学へ– 論争研究

• 理論”知識”でなく実験”活動”へ– 実験の方法論(再現実験、対照実験、二重盲検法 etc )でなく、具象的行為としての実験

– 自然と社会、両方に介入、制作する「共生成」• 真理への無関心さ:記述的転回– 真理やその正当化の結果でなく、それに至るプロセスの記述を重視

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Page 28: 東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

クーン以降の英米系科学論の成果

• 科学の柔軟性– 相対論 vs 実在論のなかでうまれた考え– 「科学の真偽は自然ですべて決定されるほど確実でな

いが、社会ですべて決められるほど不確かではない」• 科学の共生成

– 実験装置を使用した個々の観察だけでは確実な知識は得らない

– 実験室内外の科学者集団で吟味され重みづけられ広められなければならない

– 実験の遂行には研究資金の裏付けも必要– 社会からの相互作用の必然性

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科学技術社会論 STS

• SSK 、実験室の人類学で開かれた科学と社会のチャンネル

• 科学、技術、社会の相互関係• 社会科学のあらゆる道具を使用• 科学教育、科学コミュニケーション、規

制科学、遺伝子組み換え食品、リスク

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Page 30: 東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

Publicと科学ラクイラの大災害委員会と東大地震研の事例の考察

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Page 31: 東大科学哲学ゼミ第6回  責任の所在を問う~科学と公衆~

1.公共( Public )とは

• 公共圏( public-sphere )は社会学者、ハーバマスによって提唱された概念。

• 私的領域(家族)、経済的領域(民間社会)、政治的領域(国家)からも独立した自律的領域

• エドワーズ(1999)によって、「科学の意思決定が行われる 場 」へ応用

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2. STS における公共空間の意義

科学者=決定者モデル+テクノクラティックモデル

• 市民=天下り的決定の受容

公共空間モデル

• 科学者‐政策立案者の仲介としての公共(市民)

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3.科学の妥当性保障と公共性

妥当性の保障=専門家の閉じた判断

公共性=すべての人に開かれた判断

「 Science, The Endless Frontier 」から、 「 Society, The Endless Frontier 」へ

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4.グレーゾーンに手を下す

STS における意思決定問題

• 科学者には答えられないが、     「今、現在」社会的合意が必要!• 不確定要素を含むが、     「今、現在」社会的合意が必要!

→ 科学に聞いても言いけど、科学だけでは答えられないことがあるんだよ。

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二つの事例から(ディスカッション)

• 科学について語ることができるのは誰か?

 (科学者・政治家・市民・科学論者)

• 責任をとるのは誰か?

• 科学者は明確な態度をとらなければいけないのだろうか?

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5.ラクイラの事例

• 委員会の構成は?–市民の不在(州の防災担当・ラクイラ市長は傍聴)

• 委員会後の会見内容–会見は常例ではない。メンバーの地震学者はローマに戻っていたため、会見を知らなかった。

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6.地震研の事例

• 地震研が地震発生の確率を独自に公表する意味とは?(公表≠アウトリーチ)

• 情報を受け取った我々のリアクションはどうあるべきか?–リスクを伝えること=「煽り厨」?

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