73
個個個個個 個個個 個個 個個個個個個個個個個個 個 10 個 個個個個個個個個個

個体と多様性の 生物学

  • Upload
    toya

  • View
    42

  • Download
    5

Embed Size (px)

DESCRIPTION

個体と多様性の 生物学. 第 10 回 神経伝達とその修飾. 和田 勝. 東京医科歯科大学教養部. 伝導と伝達. 2)軸索を伝導して. 3)ここから伝達物質を放出. 1)ここで活動電位が発生. シナプスの構造. シナプスは、シナプス前膜、シナプス間隙、シナプス後膜から構成されている. 神経伝達物質の放出. 神経軸索末端まできた電気的信号によって、どうして神経伝達物質アセチルコリンの放出がおこるのだろうか. いくつかの膜タンパク質が関わっている. 順を追って説明していこう. 伝達物質の放出 1. インパルスが軸索末端に到着. 伝達物質の放出 2. - PowerPoint PPT Presentation

Citation preview

Page 1: 個体と多様性の 生物学

個体と多様性の生物学

個体と多様性の生物学

和田 勝和田 勝

東京医科歯科大学教養部東京医科歯科大学教養部

第 10回 神経伝達とその修飾第 10回 神経伝達とその修飾

Page 2: 個体と多様性の 生物学

伝導と伝達伝導と伝達

1)ここで活動電位が発生1)ここで活動電位が発生

2)軸索を伝導して2)軸索を伝導して

3)ここから伝達物質を放出

3)ここから伝達物質を放出

Page 3: 個体と多様性の 生物学

シナプスの構造シナプスの構造

シナプスは、シナプス前膜、シナプス間隙、シナプス後膜から構成されている

シナプスは、シナプス前膜、シナプス間隙、シナプス後膜から構成されている

Page 4: 個体と多様性の 生物学

神経伝達物質の放出神経伝達物質の放出神経軸索末端まできた電気的信号によって、どうして神経伝達物質アセチルコリンの放出がおこるのだろうか

神経軸索末端まできた電気的信号によって、どうして神経伝達物質アセチルコリンの放出がおこるのだろうか

いくつかの膜タンパク質が関わっているいくつかの膜タンパク質が関わっている

順を追って説明していこう順を追って説明していこう

Page 5: 個体と多様性の 生物学

伝達物質の放出 1伝達物質の放出 1

インパルスが軸索末端に到着インパルスが軸索末端に到着

Page 6: 個体と多様性の 生物学

伝達物質の放出 2伝達物質の放出 2

電位依存型Caチャンネルが開いてCaイオンが流入電位依存型Caチャンネルが開いてCaイオンが流入

Page 7: 個体と多様性の 生物学

伝達物質の放出 3伝達物質の放出 3

シナプス小胞がシナプス前膜と融合して開口分泌で伝達物質を放出

シナプス小胞がシナプス前膜と融合して開口分泌で伝達物質を放出

Page 8: 個体と多様性の 生物学

伝達物質の放出 4伝達物質の放出 4

神経伝達物質アセチルコリンはシナプス間隙を拡散し、受容体と結合

神経伝達物質アセチルコリンはシナプス間隙を拡散し、受容体と結合

Page 9: 個体と多様性の 生物学

伝達物質の放出 5伝達物質の放出 5

受容体は開口し、Naイオンが流入受容体は開口し、Naイオンが流入

Page 10: 個体と多様性の 生物学

伝達物質の放出 6伝達物質の放出 6

アセチルコリンは分解され、小胞膜はリサイクルされるアセチルコリンは分解され、小胞膜はリサイクルされる

Page 11: 個体と多様性の 生物学

神経伝達物質の放出神経伝達物質の放出神経軸索末端まできた電気的信号によって、神経伝達物質アセチルコリンの放出がおこる

神経軸索末端まできた電気的信号によって、神経伝達物質アセチルコリンの放出がおこる

シナプス前膜から放出されたアセチルコリンはシナプス間隙を拡散して、シナプス後膜のアセチルコリン受容体と結合する

シナプス前膜から放出されたアセチルコリンはシナプス間隙を拡散して、シナプス後膜のアセチルコリン受容体と結合する

Page 12: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン結合から活動電位アセチルコリン結合から活動電位 アセチルコリ

ン受容体アセチルコリン受容体

アセチルコリン結合アセチルコリン結合

チャンネル開チャンネル開

Naイオン流入Naイオン流入

電位変化(小)電位変化(小)

電位依存型Naチャンネル開電位依存型Naチャンネル開

電位変化電位変化

電位依存型Naチャンネ

電位依存型Naチャンネ

このサイクルを繰り返す

このサイクルを繰り返す

活動電位発生活動電位発生

Page 13: 個体と多様性の 生物学

電位依存型Naチャンネルと  アセチルコリン受容体

電位依存型Naチャンネルと  アセチルコリン受容体どちらもNaイオンを通すチャンネルを有すどちらもNaイオンを通すチャンネルを有す電位依存型Naチャンネルは、電位変化で開口し、アセチルコリン受容体はアセチルコリンが受容体に結合すると開口する

電位依存型Naチャンネルは、電位変化で開口し、アセチルコリン受容体はアセチルコリンが受容体に結合すると開口する電位変化の影響を受けず、アセチルコリンの量に比例して開口し、全か無かの反応ではなく、段階的反応

電位変化の影響を受けず、アセチルコリンの量に比例して開口し、全か無かの反応ではなく、段階的反応

Page 14: 個体と多様性の 生物学

リガンド連結型受容体リガンド連結型受容体

リガンド連結型受容体は、チャンネルであるとともに受容体という、二重の性格リガンド連結型受容体は、チャンネルであるとともに受容体という、二重の性格

一般的に、アセチルコリンのように受容体に結合できる分子をリガンドと呼ぶ一般的に、アセチルコリンのように受容体に結合できる分子をリガンドと呼ぶ

1)リガンドに対する特異性1)リガンドに対する特異性2)チャンネルとしてのイオン選択性2)チャンネルとしてのイオン選択性

Page 15: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリンの分解アセチルコリンの分解アセチルコリンはシナプス間隙でアセチルコリンエステラーゼによって分解されるアセチルコリンはシナプス間隙でアセチルコリンエステラーゼによって分解される

上:分子全体、右:酵素部分上:分子全体、右:酵素部分

Page 16: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン受容体アセチルコリン受容体それでは、アセチルコリン受容体の本体は?それでは、アセチルコリン受容体の本体は?

いきなりシビレエイが出てきたが、、いきなりシビレエイが出てきたが、、

ダイバーのための海水魚図鑑よりダイバーのための海水魚図鑑より

Page 17: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン受容体アセチルコリン受容体シビレエイの電気器官からmRNAを取り出し、cDNAをつくり、アミノ酸配列を推定

シビレエイの電気器官からmRNAを取り出し、cDNAをつくり、アミノ酸配列を推定

電気器官:筋細胞の特殊化した電気細胞が、積層電池のように重なって高電圧をつくれる

電気器官:筋細胞の特殊化した電気細胞が、積層電池のように重なって高電圧をつくれる

アミノ酸の疎水性の度合いを計算して、横軸にアミノ酸番号を、縦軸に疎水性度をとってプロット、こうしてタンパクの構造を推定

アミノ酸の疎水性の度合いを計算して、横軸にアミノ酸番号を、縦軸に疎水性度をとってプロット、こうしてタンパクの構造を推定

Page 18: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン受容体アセチルコリン受容体

Page 19: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン受容体アセチルコリン受容体

サブユニットは、 α、 β、 γ、 δからなり、 αは2個で、 α 2 βγδという構造サブユニットは、 α、 β、 γ、 δからなり、 αは2個で、 α 2 βγδという構造

4回膜貫通型のモノマーが、5つ会合した五量体である4回膜貫通型のモノマーが、5つ会合した五量体である

サブユニット αにアセチルコリン受容部があるサブユニット αにアセチルコリン受容部があるアセチルコリンが2個、結合できるアセチルコリンが2個、結合できる

Page 20: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン受容体アセチルコリン受容体

Page 21: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン受容体の性質アセチルコリン受容体の性質

パッチクランプ法によるパッチクランプ法による

Page 22: 個体と多様性の 生物学

終板電位終板電位ナトリウムイオンが流入すれば電流が流れ、局所的に電位が脱分極に向かうナトリウムイオンが流入すれば電流が流れ、局所的に電位が脱分極に向かう

ガラス電極を終板のシナプス後膜側に刺入して、この電位変化を測定することができるガラス電極を終板のシナプス後膜側に刺入して、この電位変化を測定することができる

この電位を終板電位( endplate potential、 EPP)というこの電位を終板電位( endplate potential、 EPP)という

EPPは活動電位とは異なり、全か無かの法則にはしたがわないEPPは活動電位とは異なり、全か無かの法則にはしたがわない

Page 23: 個体と多様性の 生物学

シナプス後電位シナプス後電位ニューロンが次のニューロンとシナプスをつくる場合も、終板電位と同じように、シナプス後膜側に微小な電位が発生する

ニューロンが次のニューロンとシナプスをつくる場合も、終板電位と同じように、シナプス後膜側に微小な電位が発生する

この電位をシナプス後電位( postsynaptic potential、 PSP)というこの電位をシナプス後電位( postsynaptic potential、 PSP)という

リガンドの種類によっては、塩素イオンを通して膜電位を過分極側に振ることもあるリガンドの種類によっては、塩素イオンを通して膜電位を過分極側に振ることもある

Page 24: 個体と多様性の 生物学

シナプス後電位シナプス後電位

● 塩素イオンを通して膜電位を過分極側に● 塩素イオンを通して膜電位を過分極側に

●Naイオンを通して膜電位を脱分極側に●Naイオンを通して膜電位を脱分極側に

興奮性シナプス後電位( EPSP)興奮性シナプス後電位( EPSP)

抑制性シナプス後電位( IPSP)抑制性シナプス後電位( IPSP)

Page 25: 個体と多様性の 生物学

シナプス後電位シナプス後電位

EPSPの時間的加算EPSPの時間的加算

Page 26: 個体と多様性の 生物学

シナプス後電位シナプス後電位

EPSPの空間的加算EPSPの空間的加算

Page 27: 個体と多様性の 生物学

シナプス後電位シナプス後電位

IPSPIPSP

Page 28: 個体と多様性の 生物学

シナプス後電位シナプス後電位

EPSPと IPSPの加算EPSPと IPSPの加算

Page 29: 個体と多様性の 生物学

1つのニューロンは、他のニューロンからの多数のシナプスを、細胞体部と樹状突起上につくっている

1つのニューロンは、他のニューロンからの多数のシナプスを、細胞体部と樹状突起上につくっている

シナプス入力の統合シナプス入力の統合

これらの入力は、時間的、空間的に加算されて軸索丘ヘ伝えられ、軸索丘で閾電位を越えれば、活動電位が発射される

これらの入力は、時間的、空間的に加算されて軸索丘ヘ伝えられ、軸索丘で閾電位を越えれば、活動電位が発射される

シナプス後電位は段階的だが、軸索丘では全か無かの反応→アナログデジタル変換シナプス後電位は段階的だが、軸索丘では全か無かの反応→アナログデジタル変換

Page 30: 個体と多様性の 生物学

シナプス入力の統合シナプス入力の統合

2)ここで活動電位が発生2)ここで活動電位が発生

3)軸索を伝導して3)軸索を伝導して

4)ここから伝達物質を放出

4)ここから伝達物質を放出

1)ここで多数のシナプス入力が統合

1)ここで多数のシナプス入力が統合

Page 31: 個体と多様性の 生物学

シナプス入力の統合シナプス入力の統合EPSPはナトリウムイオンチャンネルが開くためEPSPはナトリウムイオンチャンネルが開くためIPSPは塩素イオンチャンネルが開くためIPSPは塩素イオンチャンネルが開くため

どうしてその様な差が生じるか? どうしてその様な差が生じるか? 

Page 32: 個体と多様性の 生物学

リガンド依存性チャンネルリガンド依存性チャンネル

リガンド依存性チャンネルは、チャンネルであるとともに受容体という、二重の性格

リガンド依存性チャンネルは、チャンネルであるとともに受容体という、二重の性格

1)リガンドに対する特異性1)リガンドに対する特異性2)チャンネルとしてのイオン選択性2)チャンネルとしてのイオン選択性

Page 33: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリン ナトリウムイオンチャンネル 開口アセチルコリン ナトリウムイオンチャンネル 開口

GABA 塩素イオンチャンネル 開口GABA 塩素イオンチャンネル 開口

リガンド依存性チャンネルリガンド依存性チャンネル

EPSPが発生EPSPが発生

IPSPが発生IPSPが発生

Page 34: 個体と多様性の 生物学

シナプス電位と活動電位シナプス電位と活動電位EPSP、 IPSPの総和は段階的シナプス電位EPSP、 IPSPの総和は段階的シナプス電位

軸索丘で閾電位を越えれば活動電位が発生軸索丘で閾電位を越えれば活動電位が発生

次のニューロン(あるいは筋肉などの効果器)へ伝えられる次のニューロン(あるいは筋肉などの効果器)へ伝えられる

Page 35: 個体と多様性の 生物学

介在ニューロン介在ニューロンもっとも単純な神経系は、感覚ニューロンと運動ニューロンからなるもっとも単純な神経系は、感覚ニューロンと運動ニューロンからなる

神経系が発達すると感覚ニューロンと運動ニューロンの間に、介在ニューロンが入る

神経系が発達すると感覚ニューロンと運動ニューロンの間に、介在ニューロンが入る

中枢神経系は介在ニューロンの集合で、ここでいろいろな処理が行なわれる中枢神経系は介在ニューロンの集合で、ここでいろいろな処理が行なわれる

Page 36: 個体と多様性の 生物学

感覚ニューロン感覚ニューロン

運動ニューロン運動ニューロン

介在ニューロン介在ニューロン

Page 37: 個体と多様性の 生物学

介在ニューロン介在ニューロン

介在ニューロンの数が増え、介在ニューロン同士が複雑な連結をするようになる介在ニューロンの数が増え、介在ニューロン同士が複雑な連結をするようになる

介在ニューロンによる神経回路が、中枢神経系内につくられる介在ニューロンによる神経回路が、中枢神経系内につくられる

特定の神経回路が定型的行動パターンに対応する特定の神経回路が定型的行動パターンに対応する

Page 38: 個体と多様性の 生物学

早いシナプス伝達早いシナプス伝達

さて、すでに話したように、アセチルコリンや GABAは、リガンド連結型受容体と結合

さて、すでに話したように、アセチルコリンや GABAは、リガンド連結型受容体と結合

受容体に結合すると、チャンネルが開いてシナプス後電位を発生受容体に結合すると、チャンネルが開いてシナプス後電位を発生

これを早いシナプス伝達というこれを早いシナプス伝達という

Page 39: 個体と多様性の 生物学

早いシナプス伝達早いシナプス伝達

アセチルコリンγアミノ酪酸( γ-aminobutyric acid、 GABA)グリシン( glycine)グルタミン酸( glutamic acid)

アセチルコリンγアミノ酪酸( γ-aminobutyric acid、 GABA)グリシン( glycine)グルタミン酸( glutamic acid)

早いシナプス伝達に関わる主な伝達物質早いシナプス伝達に関わる主な伝達物質

このうち、アセチルコリンとグルタミン酸は興奮性、 GABAとグリシンは抑制性このうち、アセチルコリンとグルタミン酸は興奮性、 GABAとグリシンは抑制性

Page 40: 個体と多様性の 生物学

グルタミン酸受容体グルタミン酸受容体

パッチクランプの結果

パッチクランプの結果

4個結合するらしい4個結合するらしい

Naイオンを通すNaイオンを通す

Page 41: 個体と多様性の 生物学

GABA受容体GABA受容体

Clイオンを通す

Clイオンを通す

Page 42: 個体と多様性の 生物学

早いシナプス伝達早いシナプス伝達ここまでは早いシナプス伝達のお話ここまでは早いシナプス伝達のお話

早いシナプス伝達は、比較的単純早いシナプス伝達は、比較的単純

神経系の多様なはたらきを作っているのは、もう一つのシナプス伝達様式があるから神経系の多様なはたらきを作っているのは、もう一つのシナプス伝達様式があるから

Page 43: 個体と多様性の 生物学

遅いシナプス伝達遅いシナプス伝達アセチルコリンの発見アセチルコリンの発見

カエルの心臓をリンガー液中に入れ、迷走神経を刺激すると心拍数が下がる

カエルの心臓をリンガー液中に入れ、迷走神経を刺激すると心拍数が下がる

リンガー液を別のカエルの心臓に作用すると、この心臓の拍動は抑制される

リンガー液を別のカエルの心臓に作用すると、この心臓の拍動は抑制される

迷走神経から液性物質が分泌される迷走神経から液性物質が分泌される

Page 44: 個体と多様性の 生物学

遅いシナプス伝達遅いシナプス伝達この物質がアセチルコリンであると同定されるこの物質がアセチルコリンであると同定される神経筋接合部にアセチルコリンがあることが確認され、神経伝達物質であると認定される

神経筋接合部にアセチルコリンがあることが確認され、神経伝達物質であると認定される神経筋接合部でのアセチルコリンのはたらきはこれまで話したとおりである神経筋接合部でのアセチルコリンのはたらきはこれまで話したとおりである

それでは、このアセチルコリンがどうやって心臓の拍動を抑制するのだろうかそれでは、このアセチルコリンがどうやって心臓の拍動を抑制するのだろうか

Page 45: 個体と多様性の 生物学

アゴニストとアンタゴニストアゴニストとアンタゴニスト薬理学ではいろいろな薬物を使い、生理反応を代替できるか、あるいは阻害するかという研究をおこなう

薬理学ではいろいろな薬物を使い、生理反応を代替できるか、あるいは阻害するかという研究をおこなう

代替できる薬物をアゴニスト( agonist)、阻害する薬物をアンタゴニスト( antagonist)と言う

代替できる薬物をアゴニスト( agonist)、阻害する薬物をアンタゴニスト( antagonist)と言うアゴニストは受容体に結合して本来の作用を起こすことができるが、アンタゴニストは受容体に結合はするが、本来の作用は起こさず、場所を塞いでしまう

アゴニストは受容体に結合して本来の作用を起こすことができるが、アンタゴニストは受容体に結合はするが、本来の作用は起こさず、場所を塞いでしまう

Page 46: 個体と多様性の 生物学

アゴニストとアンタゴニストアゴニストとアンタゴニストアセチルコリンの場合アセチルコリンの場合

神経筋接合部では、アゴニストはニコチン、アンタゴニストは矢毒であるクラーレ神経筋接合部では、アゴニストはニコチン、アンタゴニストは矢毒であるクラーレ

心臓の迷走神経では、アゴニストはムスカリン、アンタゴニストはベラドンナの成分であるアトロピン

心臓の迷走神経では、アゴニストはムスカリン、アンタゴニストはベラドンナの成分であるアトロピン

Page 47: 個体と多様性の 生物学

アセチルコリンのアゴニストアセチルコリンのアゴニスト

ここで回転できるので両方の受容体に結合ここで回転できるので両方の受容体に結合

ニコチン受容体と呼ぶニコチン受容体と呼ぶ

ムスカリン受容体と呼ぶムスカリン受容体と呼ぶ

Page 48: 個体と多様性の 生物学

ムスカリン受容体ムスカリン受容体アセチルコリンが迷走神経の節後繊維から放出されて抑制的にはたらくのは、アセチルコリンがムスカリン受容体と結合するため

アセチルコリンが迷走神経の節後繊維から放出されて抑制的にはたらくのは、アセチルコリンがムスカリン受容体と結合するためこの受容体は、ホルモン受容体のところで述べたGタンパク質連結型受容体この受容体は、ホルモン受容体のところで述べたGタンパク質連結型受容体

1 11 21 31 41 51 1 MNNSTNSSNN SLALTSPYKT FEVVFIVLVA GSLSLVTIIG NILVMVSIKV NRHLQTVNNY 60 61 FLFSLACADL IIGVFSMNLY TLYTVIGYWP LGPVVCDLWL ALDYVVSNAS VMNLLIISFD 120121 RYFCVTKPLT YPVKRTTKMA GMMIAAAWVL SFILWAPAIL FWQFIVGVRT VEDGECYIQF 180 181 FSNAAVTFGT AIAAFYLPVI IMTVLYWHIS RASKSRIKKD KKEPVANQDP VSPSLVQGRI 240 241 VKPNNNNMPS SDDGLEHNKI QNGKAPRDPV TENCVQGEEK ESSNDSTSVS AVASNMRDDE 300 301 ITQDENTVST SLGHSKDENS KQTCIRIGTK TPKSDSCTPT NTTVEVVGSS GQNGDEKQNI 360 361 VARKIVKMTK QPAKKKPPPS REKKVTRTIL AILLAFIITW APYNVMVLIN TFCAPCIPNT 420 421 VWTIGYWLCY INSTINPACY ALCNATFKKT FKHLLMCHYK NIGATR

ヒトムスカリン受容体(青い部分は膜貫通ドメイン)ヒトムスカリン受容体(青い部分は膜貫通ドメイン)

Page 49: 個体と多様性の 生物学

ムスカリン受容体ムスカリン受容体副交感神経迷走神経末端から放出副交感神経迷走神経末端から放出

心臓のアセチルコリン(ムスカリン)受容体と結合

心臓のアセチルコリン(ムスカリン)受容体と結合

Gタンパク質を活性化Gタンパク質を活性化

Kチャンネルを開くKチャンネルを開く

Page 50: 個体と多様性の 生物学

交感神経と副交感神経交感神経と副交感神経副交感神経である迷走神経の節後繊維から放出されたアセチルコリンが、心臓に抑制的にはたらくのは、ムスカリン受容体と結合するため

副交感神経である迷走神経の節後繊維から放出されたアセチルコリンが、心臓に抑制的にはたらくのは、ムスカリン受容体と結合するため

それでは、交感神経が興奮性にはたらくのは?それでは、交感神経が興奮性にはたらくのは?

交感神経の節後繊維からはノルアドレナリンが分泌される交感神経の節後繊維からはノルアドレナリンが分泌される

Page 51: 個体と多様性の 生物学

交感神経の節後繊維からはアドレナリンが分泌される交感神経の節後繊維からはアドレナリンが分泌される

交感神経の心臓への作用交感神経の心臓への作用

心臓ではアドレナリンは受容体に結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化して cAMPを産生する

心臓ではアドレナリンは受容体に結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化して cAMPを産生する

1 11 21 31 41 51 1 MGAGVLVLGA SEPGNLSSAA PLPDGAATAA RLLVPASPPA SLLPPASESP EPLSQQWTAG 60 61 MGLLMALIVL LIVAGNVLVI VAIAKTPRLQ TLTNLFIMSL ASADLVMGLL VVPFGATIVV 120 121 WGRWEYGSFF CELWTSVDVL CVTASIETLC VIALDRYLAI TSPFRYQSLL TRARARGLVC 180 181 TVWAISALVS FLPILMHWWR AESDEARRCY NDPKCCDFVT NRAYAIASSV VSFYVPLCIM 240 241 AFVYLRVFRE AQKQVKKIDS CERRFLGGPA RPPSPSPSPV PAPAPPPGPP RPAAAAATAP 300 301 LANGRAGKRR PSRLVALREQ KALKTLGIIM GVFTLCWLPF FLANVVKAFH RELVPDRLFV 360 361 FFNWLGYANS AFNPIIYCRS PDFRKAFQGL LCCARRAARR RHATHGDRPR ASGCLARPGP 420 421 PPSPGAASDD DDDDVVGATP PARLLEPWAG CNGGAAADSD SSLDEPCRPG FASESKV

1 11 21 31 41 51 1 MGAGVLVLGA SEPGNLSSAA PLPDGAATAA RLLVPASPPA SLLPPASESP EPLSQQWTAG 60 61 MGLLMALIVL LIVAGNVLVI VAIAKTPRLQ TLTNLFIMSL ASADLVMGLL VVPFGATIVV 120 121 WGRWEYGSFF CELWTSVDVL CVTASIETLC VIALDRYLAI TSPFRYQSLL TRARARGLVC 180 181 TVWAISALVS FLPILMHWWR AESDEARRCY NDPKCCDFVT NRAYAIASSV VSFYVPLCIM 240 241 AFVYLRVFRE AQKQVKKIDS CERRFLGGPA RPPSPSPSPV PAPAPPPGPP RPAAAAATAP 300 301 LANGRAGKRR PSRLVALREQ KALKTLGIIM GVFTLCWLPF FLANVVKAFH RELVPDRLFV 360 361 FFNWLGYANS AFNPIIYCRS PDFRKAFQGL LCCARRAARR RHATHGDRPR ASGCLARPGP 420 421 PPSPGAASDD DDDDVVGATP PARLLEPWAG CNGGAAADSD SSLDEPCRPG FASESKV

アドレナリン受容体 β1(青い部分は膜貫通ドメイン)アドレナリン受容体 β1(青い部分は膜貫通ドメイン)

Page 52: 個体と多様性の 生物学

交感神経の心臓への作用交感神経の心臓への作用cAMPは PKA(Aキナーゼ)を活性化し、心臓では PKAは電位依存性カルシウムチャンネルを開くことによって、興奮しやすくして心臓の鼓動を早めている

cAMPは PKA(Aキナーゼ)を活性化し、心臓では PKAは電位依存性カルシウムチャンネルを開くことによって、興奮しやすくして心臓の鼓動を早めている

心臓に対する交感神経系と副交感神経系の拮抗的なはたらきは、このような仕組みで達成されている

心臓に対する交感神経系と副交感神経系の拮抗的なはたらきは、このような仕組みで達成されている

Page 53: 個体と多様性の 生物学

自律神経系と運動神経系自律神経系と運動神経系

Page 54: 個体と多様性の 生物学

シナプスは薬物の作用点シナプスは薬物の作用点伝達物質の受容体は毒や薬物の標的であり、これを利用すると薬を開発することができる

伝達物質の受容体は毒や薬物の標的であり、これを利用すると薬を開発することができる

クラーレはニコチン受容体に作用して、筋肉を弛緩させるが、ムスカリン受容体には作用しないため、心臓には影響しない

クラーレはニコチン受容体に作用して、筋肉を弛緩させるが、ムスカリン受容体には作用しないため、心臓には影響しない

Page 55: 個体と多様性の 生物学

シナプスは薬物の作用点シナプスは薬物の作用点

benzodiazepin “tranquilizers”や barbiturate drugsは、 GABAとともにそれぞれ異なる受容部に結合し、低い GABA濃度でチャンネルを開くように作用し、 GABAの作用を増強する

benzodiazepin “tranquilizers”や barbiturate drugsは、 GABAとともにそれぞれ異なる受容部に結合し、低い GABA濃度でチャンネルを開くように作用し、 GABAの作用を増強する

向精神薬は、中枢のシナプスに作用する向精神薬は、中枢のシナプスに作用する

Page 56: 個体と多様性の 生物学

シナプスにおける伝達シナプスにおける伝達早いシナプス伝達は信号を伝える早いシナプス伝達は信号を伝える

遅いシナプス伝達によって 信号の伝わり、方が修飾される遅いシナプス伝達によって 信号の伝わり、方が修飾される

早いシナプス伝達には興奮性伝達と抑制性伝達がある早いシナプス伝達には興奮性伝達と抑制性伝達がある

遅いシナプス伝達もある遅いシナプス伝達もある

Page 57: 個体と多様性の 生物学

伝達の修飾伝達の修飾 リガンド依存型チャンネルによる早い伝達は、チャンネルとリンクしていない細胞表面受容体により修飾される

 リガンド依存型チャンネルによる早い伝達は、チャンネルとリンクしていない細胞表面受容体により修飾される

 このような遅い効果は神経修飾( neuro-modulation)とも言う このような遅い効果は神経修飾( neuro-modulation)とも言う

 交感神経のところで述べたように、Gタンパク質連結型受容体を介している 交感神経のところで述べたように、Gタンパク質連結型受容体を介している

Page 58: 個体と多様性の 生物学

Gタンパク質の作用の仕方Gタンパク質の作用の仕方● Gタンパク質はアデニル酸シクラーゼを活性  化、あるいは不活性化し、 cAMPのレベルを調  節。 cAMPはPKA( Aキナーゼ)を活性化し、チャ ンネルをリン酸化

● Gタンパク質はアデニル酸シクラーゼを活性  化、あるいは不活性化し、 cAMPのレベルを調  節。 cAMPはPKA( Aキナーゼ)を活性化し、チャ ンネルをリン酸化

● Gタンパク質はイノシトールリン脂質系を活  性化し、これがPKC(Cキナーゼ)を活性化し、 カルシウムイオンをストアサイトから放出。これ らがチャンネルをリン酸化

● Gタンパク質はイノシトールリン脂質系を活  性化し、これがPKC(Cキナーゼ)を活性化し、 カルシウムイオンをストアサイトから放出。これ らがチャンネルをリン酸化● Gタンパク質は直接あるいは間接的にイオン チャンネルを開閉● Gタンパク質は直接あるいは間接的にイオン チャンネルを開閉

Page 59: 個体と多様性の 生物学

平滑筋平滑筋

 平滑筋は血管、消化管、膀胱、子宮などの内蔵器官の管壁を構成し、血管の太さ、消化管運動(蠕動運動)、膀胱や子宮などの泌尿生殖器の機能などの調節、瞳の大きさの調節など、多くの生体反応に重要な役割をはたす

 平滑筋は血管、消化管、膀胱、子宮などの内蔵器官の管壁を構成し、血管の太さ、消化管運動(蠕動運動)、膀胱や子宮などの泌尿生殖器の機能などの調節、瞳の大きさの調節など、多くの生体反応に重要な役割をはたす

 平滑筋は、骨格筋と違って不随意筋で、自律神経の支配を受けている 平滑筋は、骨格筋と違って不随意筋で、自律神経の支配を受けている

 ここでちょっと平滑筋の話 ここでちょっと平滑筋の話

Page 60: 個体と多様性の 生物学

平滑筋平滑筋

ヒト十二指腸の平滑筋( http://www.med.toho-u.ac.jp/anat1/anatomy/t13.html)より

Page 61: 個体と多様性の 生物学

平滑筋平滑筋

Page 62: 個体と多様性の 生物学

平滑筋の特徴平滑筋の特徴 平滑筋にもアクチンとミオシンがあり、中間径フィラメントによって細胞膜と結合。Z膜もT管系もなく、 dense bodyによってアクチンフィラメントの端が束ねられている

 平滑筋にもアクチンとミオシンがあり、中間径フィラメントによって細胞膜と結合。Z膜もT管系もなく、 dense bodyによってアクチンフィラメントの端が束ねられている

 筋小胞体の発達は悪く、カルシウムイオンは筋小胞体からも放出されるが、大部分はカルシウムチャンネルを通って細胞外から流入

 筋小胞体の発達は悪く、カルシウムイオンは筋小胞体からも放出されるが、大部分はカルシウムチャンネルを通って細胞外から流入

Page 63: 個体と多様性の 生物学

平滑筋の特徴(2)平滑筋の特徴(2)

 トロポニンは存在せず、ミオシンが修飾される。カルシウムイオンはカルモジュリンと結合し、カルシウムイオン-カルモジュリン複合体となって、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンをリン酸化してアクチンと結合できるようにする

 トロポニンは存在せず、ミオシンが修飾される。カルシウムイオンはカルモジュリンと結合し、カルシウムイオン-カルモジュリン複合体となって、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンをリン酸化してアクチンと結合できるようにする

 交感神経系のアドレナリンと、副交感神経系のアセチルコリン(ムスカリン様)の二重支配を受け、細胞内メッセンジャーがチャンネルタンパク質を修飾して、カルシウムイオン濃度が調節される

 交感神経系のアドレナリンと、副交感神経系のアセチルコリン(ムスカリン様)の二重支配を受け、細胞内メッセンジャーがチャンネルタンパク質を修飾して、カルシウムイオン濃度が調節される

Page 64: 個体と多様性の 生物学

平滑筋の特徴(3)平滑筋の特徴(3) 平滑筋の中には、他の信号分子の修飾を受けるものがある 平滑筋の中には、他の信号分子の修飾を受けるものがある

 たとえば子宮の平滑筋は、脳下垂体神経葉のオキシトシンによって収縮 たとえば子宮の平滑筋は、脳下垂体神経葉のオキシトシンによって収縮

 ということは、子宮の平滑筋には、オキシトシンの受容体がある ということは、子宮の平滑筋には、オキシトシンの受容体がある

このようなメカニズムで平滑筋は複雑な反応をおこなうこのようなメカニズムで平滑筋は複雑な反応をおこなう

Page 65: 個体と多様性の 生物学

中枢神経系での修飾中枢神経系での修飾 このような修飾は中枢神経系でもおこっている このような修飾は中枢神経系でもおこっている 特にモノアミンが重要 特にモノアミンが重要

 アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、 オクトパミン、ヒスタミン、セロトニンなど

 アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、 オクトパミン、ヒスタミン、セロトニンなど たとえば、ノルアドレナリンは橋の青斑核に細胞体のあるニューロンの伝達物質 たとえば、ノルアドレナリンは橋の青斑核に細胞体のあるニューロンの伝達物質

Page 66: 個体と多様性の 生物学

中枢神経系での修飾中枢神経系での修飾

Page 67: 個体と多様性の 生物学

中枢神経系での修飾中枢神経系での修飾

ラット脳内のアドレナリン作動性ニューロンの走行ラット脳内のアドレナリン作動性ニューロンの走行

Page 68: 個体と多様性の 生物学

中枢神経系での修飾中枢神経系での修飾

ラット脳内のドーパミン作動性ニューロンの走行ラット脳内のドーパミン作動性ニューロンの走行

Page 69: 個体と多様性の 生物学

中枢神経系での修飾例中枢神経系での修飾例カエルの交感神経節節後ニューロンカエルの交感神経節節後ニューロン

Page 70: 個体と多様性の 生物学

3種類の EPSP3種類の EPSP

ニコチニック受容体ニコチニック受容体 ムスカリニック受容体ムスカリニック受容体

LHRHの受容体LHRHの受容体

Page 71: 個体と多様性の 生物学

Late, slow EPSPは LHRHでLate, slow EPSPは LHRHで

電気刺激による EPSP電気刺激による EPSP

LHRHを与えるLHRHを与える

Page 72: 個体と多様性の 生物学

Late, slow EPSPは LHRHでLate, slow EPSPは LHRHで

電気刺激による反応の後でも、 LHRHのアンタゴニストによってEPSPは抑制される

電気刺激による反応の後でも、 LHRHのアンタゴニストによってEPSPは抑制される

Page 73: 個体と多様性の 生物学

Achと LHRHの関係Achと LHRHの関係